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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年前期編
95/376

3-21

属性めっちゃ出てきてたのをまとめました。

学園の土地として、王都から少し離れたところに森がいくつか存在している。ロキたちはそのひとつへと足を踏み入れていた。


「ここに居る魔物たちは危険度が低い奴が多いが、中にはグリフォンみたいに危険度の高い魔物も存混じってるからなぁ。特に蛇系とは目を合わせないようにしろぉ? 幼生とはいえ、バジリスクもいるからなぁ。Dランクのゴブリンの群れもあるぞぉ。手は出すなよぉ。生徒だけじゃ対処できないくらい強いぞぉ」


引率のハインドフットの言葉を受けて、ここに居る群れは1つなんだな、とロキは思う。

風が吹き抜け梢を揺らし、葉を巻き上げて精霊が躍る。ロキが視線をゼロとシドに向けると、彼らは小さく頷いた。


「グリフォンが慣れるまでは、こうやって巣から離れたところでうろうろしてるだけが良いぞぉ。今の段階で近付いていってもグリフォンも警戒するだけだからなぁ」


固唾を飲んで間延びしたハインドフットの言葉を聞いている同級生たちを眺めながら、ロキはこれからの予定を組む。グリフォンに近付くだけでも命とりな気がするが、リガルディア王国ではよくあることらしい。


「んじゃ、一旦解散! 怪我をしないように気を付けろよぉ!」

「「「「「はーい」」」」」


生徒達の返事と同時に散っていく元気な男子とゆっくり歩きだした令嬢たち。

ロキはゼロとシドを連れて森の奥へと踏み込んだ。


気配を消して、なるべく森の者たちを刺激しないようにと気を配りつつゆっくりと進むロキを、シドとゼロは追う。皆のためにと、皆が向かいにくいであろう森の奥へと先に向かうロキを止めることはない。


ロキはどうあがいてもこういうところのある男だ。気が付けなくて臍を噛むことも多いが、だからこそ自分にできる範囲で皆の危険を遠ざけようと行動する。例えば、人刃特有の、生物に恐れを抱かせる刺々しい質の魔力を、似たような魔力を持っている者が多少なりともいる環境で解放するにとどめようとしたり。


(――意味、無いけどな)


シドはそう思いながらロキが足を止めるのを待った。

ロキ以外にもこの場に人刃血統はごろごろいるのだ。ロキがいくら力が強いからと言ったって彼しかやらないんじゃ意味がない、そのことに気付いていない上に、彼は気配りの上にこういう行動をとっているわけではないのだから。


なんとなく、こっちの方が面白そう、その結果の上で最善解を掴み取っていくロキに付き合わされて、面白くない時間はシドにはなかった。

そして。


(――これ、未経験ルートなんだけど。なんかあるってことか?)


もしかしたら本当はどこかのルートで何かあるのかもしれないが、少なくとも現時点でのシドには分からなかった。


ゼロも何も言わずロキに従うだけ。ロキを止める者が近くにいないという状況は存外、シドたちも羽を伸ばせる環境になるものだ。シドは肩の力を抜いた。

じきに開けた場所に出て、ロキはその景色に足を止める。


細い木と蔓の絡んだ垣のような見た目の場所だ。茂っているように見える葉はそこまで多くないのか、日光が差し込んで影がほとんど気にならない。若葉が多いのか、葉を透過した緑の淡い光が地面に落ちている。


幻想的と言ってしまえば一言で済んでしまうが、ト〇ロにあったなこんな景色、とシドは思う。ロキが軽い足取りで歩いていくのを見て、結構上機嫌だな、と判断した。

周囲をカラフルな光が飛び交う。精霊たちがロキの傍に寄って来ていることが伺えた。ロキはたまに顔の前を払っているので、顔の前に精霊たちが来ると前方が見えなくなっていると考えられる。


「ホント、精霊に好かれやすいやつだよお前は」

「俺の目を覗き込んでいるらしいね。よくぶつかるよ」


ロキの言葉に、理由に思い当たった。


「お前の目綺麗だからな。ラズベリルだと思ってたらアレキサンドライトみたいに変色するしよぅ」

「……自分ではどうしようもないんだ」

「知ってる」


案外アレキサンドライトのメタリカが混じったのかもしれないな、とシドがなんとなく呟けば、可能性は高い、とゼロが引き継いだ。


「そもそもロキの御婆様は先々王の妹殿下だったんだろ。人刃血統とドラゴン血統が結婚するような国で、多少上位精霊が混じろうがどうしようが驚くほどのことではないだろう。何も変わらない」

「まあ、むしろ不仲なはずの死徒とドラゴンが結婚してる方が異常か」

「ああ」


旧帝国の分裂前の歴史が本当なら、死徒列強たちと竜種が仲が悪くなる理由はいくらでもある。一般的に言われているのは、ヒューマンに限らず、人間が竜種との約束を盾にしているから列強は襲ってこないのだ、という説だ。


死徒は竜種によって人間への侵攻を阻まれたので不仲だ、というこの説は、事実とは少々異なる。出なければ竜種との約束を取り付けた本人であるリーヴァは列強になっていないだろう。リーヴァが列強に並べられているということは、人間にとって何か不利な、もしくは人間にとって受け入れがたい何かがリーヴァにあった可能性が高い。列強というものは人間たちが定めているもので、いつの間にか18人にまで膨れ上がっていました、というトンデモな代物だ。彼らは確かに恐れられるが、普通にどこそこに店を構えていたり、特権的ではあっても現在の法整備の中で概ね行動してくれている。一部どうしても受け入れがたい生態の関係でどうしようもないロルディアやクーヴレンティなどの例外はいるが。


少し考えれば一般的に言われている部分は間違っている可能性が高い部分になるのだが、都合がいいのかそのままになっている。竜種をこれ以上交渉ごとに引っ張り出したくないというリーヴァの意向が汲まれていると考えている者は一定数いる。


共に列強入りを果たしている人刃とイミットだが、これまでの慣例的なものもあってドラクル大公が列強の席を継いでいるだけなので、今の列強にどれくらい意味があるのかは判断しかねる部分ではあるが。


ゼロがロキを眩しいものを見るように目を細めて見つめているのをみて、シドは小さく息を吐いた。イミットは基本的に竜種の特徴のひとつである、光物が好き、という性質を持っている。断じて寿司ネタの意味ではない。キラキラした宝石やら金属やらが好きなのだ。そしてそれを自室に持って帰るところまでセットだ。そして一度持ち帰ったら執着がパワーアップするので取り返すのが難しい。


ゼロのロキへの執着はまだ誰にも迷惑をかけるレベルではないので許容されている部分ではあるが、いずれそうはいかなくなってくるだろう。しかしロキという人刃の宝を守るにはこれ以上ない適役だ。


人刃はもともと宝石質の瞳を持っている。ロゼたちだってガラス質の光沢をもつ瞳を持っているのでちゃんと仲間である。ロキはただの先祖返りだ。シドはそれをゼロに伝えようとは思わない。ゼロだって竜種だ。光るものが好きなのだ、ロキの瞳を欲したゼロのことをシドは知っている。ロキはゼロにそれだけは許さなかったし、今もゼロがロキに絶妙に執着しているのはそのブレーキのおかげだとシドは思っている。


アーチを抜けきったロキとシドとゼロは、大木の前に出た。エルフとかいそうだなどとそんなことを考えたロキはその付近の木を見て、座り込んだ。


「ここ結構日光が差しこんでるみたいだな」

「ああ」


コケもあまりないな、とロキは続け、ロキが止まったのをいいことにわんさか寄ってきた幼い精霊にその身を預けた。緩やかに解放されていく魔力に精霊たちはしばらく震え、それでもロキに擦り寄っていく。


死徒がその種族として持っている属性は種族ごとに様々だが、人刃が持っているのは基本的に軍神に関係する属性であるため、軍事に必要と判断されたモノの大半は人刃が数名集まれば網羅されることが多い。稀にロキのように直接軍事とは関係なさそうな属性だったり、異常な数の属性だったりを内包している者もいるが、軍事程技術の最先端を行くものも無い。人刃族だけでほぼすべての属性を網羅できるのはそこに起因する。


細かく属性を見ていくと、基本四属性(火・水・風・土)双極属性(光・闇)以外にも攻撃属性やら複合属性やらと呼ばれるものも存在している。

基本的には属性といったら基本四属性と双極属性を指すが、極稀に、ロキのように、何らかの効果だけを集約したような属性も発生することがあり、これを希少属性と呼ぶ。


精霊が存在するのは基本四属性と双極属性、それらの複合属性のみであり、希少属性の精霊は存在しない。それはどちらかというと神霊の領分である。


攻撃属性は、適性武器に関係する属性で、主に斬撃属性、打撃属性、貫通属性、捕縛属性の4つが存在し、主に刀剣、戦棍や戦鎚、弓矢、罠の適性を左右する。人刃族は特にこの攻撃属性の振れ幅が大きいため、攻撃属性をかなり気にするらしい。


ロキの場合、ハルバードと刀やレイピアの適性が高いため、斬撃属性と貫通属性が特に高いのではないかと考えられるわけだ。槍は斬撃属性と貫通属性を併せ持った武器として人刃では区分されるため、いわゆる複合属性という扱いになる。


これに加えて、フォンブラウの火属性とメルヴァーチの氷属性の適性が入り、加護によるものと思しき闇属性がある。変化属性は闇属性に区分される。ロキ神は火を表す名前を持つ霜の巨人(ヨトゥン)であるため、火属性と氷属性にはさらにブーストがかかっているとみて間違いないだろう。ロキの髪が赤っぽいにしろ青っぽいにしろ、おかしい話ではないと思われる。


フレイの継承権を脅かしかねないところにいるらしいロキの話は、聞いていて飽きないものがあった。


きらきらと光を受けて煌めくロキの髪を整えているのはシドである。絹糸のように触り心地の良い髪は傷みやすいはずなのだが、痛むなど、従者となったシドが許すはずもない。


うっすらとプリズム効果のかかる髪のせいで、ロキが神聖なものに見えてくる。その髪はところどころだが赤っぽい所があり、メッシュが入っているようにも見えた。


髪の色は遺伝的なものが強いが、それは属性に由来する。ロキは銀髪なので分かりにくいが、赤い髪のアーノルドと青い髪のスクルドの遺伝子が色濃いこと。白銀の髪に落ちる影は赤っぽい影と青っぽい影とがある。概ね青紫なのだが、今は陽光が強いのか赤っぽい色が強く見えた。


瞳と髪の色にはいくつか種類があり、ロキの場合は瞳が血統的なものに左右されているようであるため、髪の色に強く影響が出ているとみていい。シドは土属性といいながらどこにも面影が無い、金目に黒髪なので、完全に上位者の色だ。ゼロは、大陸のイミットに多い黒髪と、光属性の黄色い瞳、火属性の赤い瞳であるため、一番属性の影響を受けているのはゼロかもしれない。


赤い髪は基本的に火属性を表すが、火属性でも扱える系統によっては青い髪の子供が生まれる場合もあると言い、十中八九完全燃焼時の炎の色に起因すると見える。青い髪の火属性のみの魔術師は恐ろしく火力が高いことで有名であったりする。アーノルドは赤い髪でも同じようなことができるので、絶対的な基準ではないようだが。


「お」


魔物がふらふらと寄ってくるのにロキが気付いた。蛇型のバジリスクだった。バジリスクには蛇型と雄鶏型の2つの形態があり、生活様式によって変わるとか、強いか弱いかでも変化するとか言われている。冒険者ギルドで出されるバジリスク単体の討伐依頼は、蛇型である場合はDランク、雄鶏型だとCランクで扱われている。


「バジリスクって、木の上で生活すると蛇型に、地上で生活すると雄鶏型になるんだったよな」

「雄鶏型のは息を直接掛けられない限り生身の人間でも死なん。ロキも問題ないだろ」

「まあ、石化しても俺が全力で守ってやるし? 問題ねーよ」


自信に溢れた従者たちの言葉にロキは淡く微笑んだ。バジリスクたちを見やると、ひょこ、と顔を出している雄鶏型のバジリスクがいた。実はバジリスクは基本的にBランクの魔物として扱われるが、理由はこれだ。意外と群れていることが多い。そこには蛇型と一緒に雄鶏型が混じっていることもままあるのだ。

ちらり、と雄鶏型のバジリスクよりも一回りほど大きな雄鶏の頭が見えた。


「あ、あれ、コカトリスじゃね?」

「コカトリスは確か、」

「Bランクの魔物だな。……流石に狩っていくか」

「俺がやろう」


コカトリスは下級ドラゴンに分類される。竜種と一口に言っても色々居るのだが、基本的には人間と言葉を交わせるものが上級竜種、言葉を交わせないものが下級竜種となる。その為、同じ種族、例えば、通常下級竜種、家畜を襲うので討伐対象になることがあるワイバーンであっても、人語を介し人間と意思疎通が図れる個体は上級竜種扱いとなるのだ。竜とドラゴンの呼び分けの基準は人間に害を為す意思を持つか否かで、人間を害そうとする竜種を特にドラゴンと呼ぶ。


ゼロはイミットである。亜人にも半竜人にも竜種にも分類できてしまうのでイミットはイミットである。ファンタジックな種族をきっちり分類するだけの研究はそこまで進んでいないので致し方ない。


ゼロのコカトリスを狩ります発言は、本来ならば容認されるべきものではないが、シドが止めないので良いのだろうとロキは思ってそのまま放置した。


コカトリスは単体でBランクの魔物である。グリフォンもBランクなのでこの地に他にBランクがいてもおかしくはない。ロキは静かに息を吐くと、ドゥーの名を呼ぶ。


「ドゥー」

『はーい!』


元気な声が響き、闇属性の精霊が姿を現す。艶やかな黒髪と真っ白な肌、人外級に美しく整った顔。ラベンダーアメジストの瞳がロキの呼びかけを嬉しく思っていることをありありと伝えてくる。


幼い精霊たちはずっと上級に成長した人工精霊の登場に驚いてぶわりと舞い上がる。吹き飛んでいきそうな光はロキが胸に抱えて守った。


「近くにゴーゴンはいないか探ってくれ」

『はーい!』


ふわりと姿を消したドゥンケルハイトを見送り、ロキは立ち上がる。

ゴーゴン、というのは、メドゥーサ的な、石化能力を持った蛇女たちのことである。亜人よりも魔物に寄っているが、一応言葉は通じる。石化能力を持つ魔物たちを従えていることも多いので、ロキはそれを警戒したのだろう。


「お初と思ってたらなんかやばいことになってそうだな?」

「お初か。難儀だな」

「ま、人刃にもメタリカにもイミットにもバジリスクだろうがコカトリスだろうがゴーゴンだろうが石化は効かねえ。やるなら俺たちが一番だろうな」


シドの言葉を聞いたロキが、思い出したように言う。


「そう言えば俺『状態異常無効』ってなってんだけど」

「……マジ? 俺が知ってるお前『状態異常軽減』までしか持ってなかったのに?」


シドがロキに詰め寄る。ロキはデスカルから聞いたものだと知った経緯を説明する。


「はぁー!? 女将何で教えてくれなかったんだよっつか、ロキ、ソレ最高! 今までのループのロキの死因の遠縁が半分くらい潰せる!」

「待て、半分しか潰れないのかよ」

「半分潰れるだけでもすごくねえ??」

「確かにすごいけれども」


人刃を動けなくするとするなら毒物系はよく使われる手だ。ロキにはその毒が効かないようなのでこれほど守りやすい主もそう居るまい。シドの発言が本当ならば、ループによって変化するのは記憶の一部引き継ぎのみではないということになる。


「精神干渉とかも効かないぞ。……ちょっと待てよ、お前が自分を信じるってやたら自信ありげに言うのってそれの所為か……?」

「さあ、な」


シドの言葉にロキはくっ、と口端を上げて笑ってみせる。


「でも、シドがそうかもしれないと思ったのなら、そうかもしれないよ?」

「解釈にお任せしますってか。それが一番手が付けられないんだっつの!」

「だって俺にはシドのようなループの記憶はないんだぜ」

「うぐ」


それを言われては困るのだ。シドは確かにある程度のループを覚えているが、ロキはループの記憶がなくてもこの自信。


「……無理、好き」

「ん」

「んんんんん……!!」


シドの限界っぷりにロキが両腕を広げた。今は人目が無いので、今だけ、とシドは内心言い訳をして、ロキに抱き着く。


「シドは、変わらない、と言われて俺だからな、と俺が返す時だけやたら自信ありげなんだよなあ、って考えてるのがバレバレの顔してるのに気付いてる?」

「はっ、そんな顔してんの俺!?」

「分かりやすくて毎度笑いを噛み殺させてもらっているよ」

「うぇえええ恥っず!!」

「――嘘だよ」

「…………死ねえええええ!!」


正確なツッコミは存在しない。死ねと言ってる割にシドはロキを抱きしめたままだし、ロキは苦しいくらいのシドの腕を払おうとはせず、シドの頭を撫でた。

ゼロが先に行く、と言って走り出したので、2人も流石に漫才をやめる。


「ゼロを追うぞ」

「ちくしょおおおおお」


フォンブラウ家で鍛えられた者たちに、王都付近の魔物など取るに足らない。ゼロの心配をしているわけではないが、2人は森のさらに奥へと足を踏み入れた。


属性について言いたかったこと。

「ロキは火と氷と闇と変身魔法的なサムシングが得意な戦闘民族だよ!」

以上です。

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