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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年前期編
80/376

3-6

前の話を改稿しました。かなり話の内容が変わっているので、一度お目通しくださいませ。


2023/04/05 加筆修正しました。

「――つまり、ロキは魔導人形(オートマタ)が一番器として都合が良いと考えているという事だな」

「そうなるね」

「それについては反対はしない。どうせ父上も御存知だろうし」

「だねえ」


アーノルドがリンブルと協力して魔導人形(オートマタ)の制作をしていたことを知っているのは国王ジークフリートと公爵たちと実際に関わっている貴族家ぐらいなものだろう。ロキはデスカルから告げられていたこともあり、下準備として器になりそうなものを探していたら魔導人形(オートマタ)に行き当たった。『イミドラ』のルートによっては敵ユニットとして登場していたこともあり、どこかに原型がありはしないかと探し回った結果である。


所謂トゥルーエンド確定時点で登場する敵ユニットであるため、リガルディアにあるだろうとロキは踏んでいたのだ。父親が開発者の片割れだったとは思っていなかったようだが。


「人に見立てるなら人形(ひとがた)、ってね」

「黒魔術かなんかか?」

「俺黒魔術の本見たことないよ」


カル、セト、レイン、そしてレオンの4人に情報を共有して、ロキは少し考える。

リガルディア王国内部で魔導人形(オートマタ)がどういった目的で開発されていたのかにもよるが、アーノルドが関わっている時点でジークフリートの耳にも入っていると考えるべきだし、他にもいくつか研究開発に噛んでいる貴族家があった。これはどちらかというとアーノルドとリンブルが仲間内でやっていた研究というよりも、何らかの目的があって表向き伏せ気味になっていた国家プロジェクトの可能性がある。


そうなってくるとたった1機であっても使用許可はアーノルドではなく国王ジークフリートもしくはこのプロジェクトを管轄している役職持ちということになるのだが、誰が担当か皆目見当がつかない。


「……とりあえず父上に相談かなぁ」

魔導人形(オートマタ)って単に魔導省の管轄じゃないのか?」

「魔道具研究所の方の可能性が」

「魔導具の方じゃないの」


とりあえずどこに話を持って行けばいいのか自分たちが把握していないことを把握したのでやはりアーノルドに相談だ、という結論が出た。


「……でも、結局持ってくるにしても列強の力を借りないといけないんでしょ?」

「今あの辺冒険者も立ち入り禁止だからな」

「マジ? このままだと俺今年も実家帰れないんじゃね?」

「セトの実家隣接してるから可能性あるな」


セーリス男爵領は未だに立ち入り禁止の危険区域に指定されている。魔導人形の試作品があるのはアーノルドに聞いていたので、それを持ち出せるかどうかにかかっていると言っても過言ではない。他の入れ物なんて言われたって、人間の魂を移し替えて破損しない入れ物を魔術的に作るだけでも大変だ。


「……まあ、最悪の場合ロード・カルマに依頼する形になるかも」

「いくら取られるかわかったもんじゃないな」

「金じゃないもので払えたらいいなぁ」


希望をとりあえず口にするロキだが、その目はなんだかロード・カルマが関わることを最初から予感しているような雰囲気がある。レインがそっとロキの肩に手を懸けた。


「?」

「ロキ、あんまり無理はしないでよ。ただでさえお前の考えが理解できなくて四苦八苦してるんだから」

「おー、振り回して悪いね」


経験が何か言っている。でもロキにそれは聞こえないので、行こうと思った方向に行くだけだ。レインが不安げに瞳を揺らしているのを見て、ロキはなんだかくすぐったい気持ちになってきたので立ち上がる。


「でもまあ、ループで散々列強には借りを作っているみたいだから、今更1つ増えたってなぁとは思うよ」

「今更感は確かにあるけど」

「どうやって返すんだよその借り」


レオンの言葉にロキは笑った。


「……皆で一緒に返していこ?」

「「「逃げて良い?」」」

「セト以外逃げやがった(笑)」


冗談だよ、とロキが笑うとそこは普通に頼れ、とカルから言葉が飛んできた。ロキが少し目を丸くしたのでレインがロキの頭に手を伸ばす。撫でようとしていることを悟ったロキがレインの手の届く位置に頭を持ってくると、レインはロキの頭を撫で始めた。


少しして、そろそろ移動するかとカルが席を立つ。ロキは思い出したようにブローチを虚空から取り出した。日光を受けて、紫色に光る、リーヴァのブローチ。


『ぬお? どうした、ロキ』

「リーヴァ。少々聞きたいことがあるんだ」

『なんだ?』

「セーリス領に魔導人形の試作品があったはずなんだけど、どうなってるかな?」

『あー』


リーヴァは歩いているらしく、少しの間ヒール音のみが響き、リーヴァは口を開いた。


『あれは、ロードが持って行った』

「……待って、ロードが?」

『ああ。使えるものにすると言って持って行ったぞ』

「……いままでにもこの経験が?」

『いや、初めてのはずだが』


ドアの開く音がした。


『あとは直接ロードに聞け。ロード、聞いておったであろ?』

『ええ。聞いていたわ。ロキ、直接つなぎなさい』

「……俺が貴女を苦手に思っていることを分かったうえで言ってくるので貴女はたちが悪い」

『仮にも神代から生きる私に向かってきっぱりそこまで言うお前もかなりたちが悪いと思うわ』


やめろ、俺たちのHPが削れる、とセトが呟いた。ロキはブローチを取り換える。どうせ巻き込まれるのだから無駄な抵抗はしないでほしいとセトに視線を向けると、目を逸らされた。


「それで、ロードが持っているということは、俺の状態を知っていたということだよね?」

『……貴方、軍神に相当する上位者を知っていて?』


ロードの言葉にカルたちはロキを見た。ロキは何か思い出したように「あー……」と小さく声を発する。


「デスカルとアスティウェイギアとドルバロムだね」

『あなたの家にお世話になってまーすってメッセージカードが送られてきたのだけれど』

「いつ送ったのあいつら」


そもそもドルバロムは全ての状況を知っているはずにもかかわらずロキに伝えていない。いや、ロキがそもそもドルバロムに何も聞かなかったのが悪い。

ドルバロムは自分から尽くすタイプではないし、ロキ自身それを頼んではいないので致し方ないといえばそうであろうが。


『その内そっちに届くと思うわ。もう調整は終わったから送ったの』

「……それは、誰だ? クラウン殿か? リリアーデ殿……は、動かないな。シグマ?」

『残念。ついてからのお楽しみよ』


ああこれは教えてはくれないなとロキは諦めた。


「……礼は後日改めてさせてもらいたいところだけれど、何故こちらへ送ったの……」

『ああ、仕方ないわ。なんとなく貴方の状態から見て()の足ではギリギリになりそうだったから』

「徒歩移動……マジかよ……」


本当なら父上の所へ送って欲しかった、とロキは呟く。こればっかりは致し方ない。ロードなりの気遣いで学園へ直接向かっている誰かに預けて送っているというのだ。その足で王宮に向かって欲しい。切実に。

では、とロキは言ってブローチを虚空へ放り込んだ。


「……どうなるんだ?」

「……分からない。誰が来るのかわからない以上は……ただ、」

「ただ?」


ロキが蒼褪めているように見えたのはレインだけではなかろう。カルがそっと尋ねれば、ロキは呟くように告げた。


「ロードの配下ではないと思う。ロードの所には幼女しかいないから……」

「何故こう、死徒列強はどいつもこいつも自分の性癖を暴露してるんだ?」

「……それはカガチのことを言っているのか」

「話が通じて何よりだ」


ロードが一番分かりやすいだけである。

では誰だろうと首を傾げつつも、ロキたちはそろそろ食堂に行かねばならないとレオンが口にしたため、移動することになった。



「閣下ー!」

「あん?」


2メートルはある巨漢が森の中を歩いている。暗い森の中で横の銀髪だけが光っている。

後を追って来た青年は棺桶を背負っていた。


「ンだそれは?」

「ロードが取りに来いって言ってた操り人形ですよ!」


青年が棺桶を重そうに引きずりそうになったり木にぶつけたりして追ってくるのを見て、男は小さく息を吐いた。

ひょい、と棺桶を取り上げれば青年がキラキラした目で男を見上げた。


男――グレイスタリタスは棺桶を虚空に放り込む。

全く以ってなぜこの従者は自分も【アイテムボックス】を使用できるのに使おうとしないのか。そんなの魔力総量が低い上に食糧類を詰め込んでいるからに決まっているのだが、その辺で魔物を狩っていれば生きていけるグレイスタリタスにはあまり問題にならない。


青年――ロイはグレイスタリタスの横に並んで歩き始める。

ロイの身長は177センチと平均的だが、まあグレイスタリタスがそもそも204センチにハイヒールを履くという謎構造をしているので小さく見える。

ハイヒールでなんでそんなに早く歩けるんですかとはいつもロイがグレイスタリタスに向けている疑問の一つ。


「でも、ロードの眷属に有利にしかならないのによく作ろうとか思いましたよね、操り人形」

「作ってたのがフォンブラウなンだろ。だったら話は早え」

「?」

「下級ドラゴン殴り殺す一般農民が蔓延ってる土地柄だ。操り人形を使えるやつを選抜してそいつらを鍛えりゃ魔物を討伐するだけの戦力なんざ大量に作れるだろうが。どうせどいつもこいつも人刃と半竜共の眷属ばっかだ」


フォンブラウの事情を予想以上に主人が知っていて驚いたらしいロイは苦笑を浮かべる。

紺色の髪が風に揺れた。

グレイスタリタスの髪も紺色だが、これは彼らがそういう種族であることを表しているに過ぎない。


グレイスタリタスが足を止めた。

ロイも足を止める。


「ダガー貸せ」

「はい」


ロイが虚空からダガーを2本取り出す。グレイスタリタスに渡すと、グレイスタリタスが走り出した。

ロイは丁寧に自分に対して魔術障壁を編み上げる。


風が木々の梢を揺らした。

ざあっ、枝を離れた葉が宙を舞う。


「散れ」


ギャインッ


グレイスタリタスの声の後、魔物の断末魔が響き始める。

群れにいつの間にか囲まれていたらしい。

周囲を一周するころ、グレイスタリタスは戻って来た。


黒い衣装が血飛沫で赤く染まっている。

ロイは虚空から杖を取り出し、魔物の血を取り、祈る。

血は解けて消えていった。


「行きましょうか」

「ああ」


2人は再び歩を進める。


「ここから王都に行くにはソキサニス領を突っ切った方が早いみたいですね」

「ならそっちだな……この辺の魔物は体高が合わん」

「フォンブラウならバイコーンとかゴロゴロしてるみたいですけどねー」


ああ、ところでと小さくロイが問う。


「ロキ君のこと、壊さないでくださいね?」

「……それを決めンのはアイツだ。アイツがオレを頼ればアイツを殺してその魔力全乗せでアイツの敵を殺す」


わあ、全く狂戦士なんですからとロイは苦笑を浮かべる。


「だからオレは『狂皇』なンだろう?」


狂戦士の皇。

そうですね、とロイは言って、2人は森の中に消えていった。


面白かったら評価よろしくお願いします。

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