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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年前期編
75/376

3-1

2023/03/29 加筆修正しました。

「来ました、中等部!」


ソルの声にロキとロゼが顔を見合わせた。

ソルたちセーリスの領地ではぐれ死徒の一件があって以来、ふさぎ込んでいることが多かったソルとルナだが、やはりこの世界の生活に慣れていたというべきか、この国での暮らしと風土に馴染んで、死徒が来てしまったことは仕方がないと諦めたらしかった。


ロキの方はといえば、それどころではなかったとだけ、いえる。公爵家の子女を集め、王宮で開かれたちょっとした話し合いというべきものがあり、それに参加していたカル、ロキ、ロゼ、レオンはとある人物に会うことになった。



ジークフリートからの呼び出しで王宮を訪れたロキたちを待っていたのは、帝国からの使者と、リーヴァであった。


リーヴァの本拠地はガントルヴァ帝国に在る。ロキはちゃんとそれを知っていたため、なぜ彼がここにきているのかの意味もすぐに思い至った。


少なくとも、リーヴァという、死徒列強第4席などという実力者がこの場に出てきた原因はロキにある。彼らはロキの要請を受けて今回のはぐれ死徒とその被害者たちの一掃に直接手を下した側の者だ。リーヴァからすれば己の国から別れた国の子孫たちをその手に掛けたのだ、少なくとも何か思うところはあったであろうことは想像に難くない。


「よく来た、ロキ、ロゼ、レオン」


既にそこにゴルフェイン家のカイウスとソキサニス家のエミリオは来ており、意外なことにドラクル家の息子もいた。ただし、彼は現在9才であり何かできる立場にあるわけではない。面白そう、という理由で親に付いて来ているだけと見て間違いないだろうが――。


王宮で要職に就く大人の顔ぶれもある。アーノルドやロギア、ソキサニス公爵グラートやゴルフェイン公爵補佐の顔もあった。


今回はよりにもよってソルとロキという子供たちが決定を下した当事者だったわけであり、この場にソルがいないのはルナのためでもある。ソルには後々ロキたちから伝えられることとなった。


いくばくかの状況報告を受けたロキとロゼは、ずっと頭を下げたままの少年を見下ろす。

焦げ茶色の髪はあまり魔力がないことを示すが、頭頂部に向かうにかけて髪の色が薄く金色になっており、彼の魔力量がその辺りから急激に伸び始めていることを主張していた。


ロキは彼の名を知っている。

前世の記憶をあまり引き出さないようにしていても、それでも覚えている者は覚えているというもので、ロキは前世の記憶からはあまり離れられていないのかもしれない。


彼は、涼がプレイしていた『イミドラ』の主人公。


「俺はお前の話を聞きたいよ、ハンジ」


名乗っていないにもかかわらず名を呼ばれた少年は微かに肩を震わせた。

ここでは苦しかろう、といってジークフリートが小さな部屋を用意させ、ロキたちはそちらへと移る。ついて来い、とロキが呼んだのはハンジだけで、帝国側の騎士は声を上げようとしたが、アーノルドが黙らせた。


落ち着いた雰囲気の部屋へ子供たちだけで辿り着き、ロキが紅茶を淹れ、ハンジを椅子に座らせた。




恐縮したまま椅子に座ったハンジは俯いたまま混乱した頭で状況を整理しようとしていた。自分が何をしたのか、分かっている。それによる影響を考えるところまで頭は回っていないのだけれども。


「カル、レオン、カイウス、エミリオ、それと、ドラクルの、お前も少しだけ待っててくれ」

「ああ」


カルが代表して答えれば、ロゼはハンジの頭を撫で始めた。

ハンジは肩を震わせたが、少し視線を上げた。


「とりあえず、お疲れ様」


ロキは淹れた紅茶をハンジの前に置く。リーヴァが来ていた時点で、このハンジがただの子供だなんてロキたちは思っていなかった。ロキたちの立てた仮説が正しく、少なくとも彼は転生者であろうことは確実なものになった。


ハンジの横の椅子に座ったロゼとロキ。挟むような形にしたのは、他の皆にもさっさと座ってほしかったからだ。


「私はロゼ・ロッティ。ロッティ公爵家の娘です。よろしくね」

「俺はロキ・フォンブラウ。フォンブラウ公爵家の第四子だよ。よろしく」


2人の名乗りを聞いて、ハンジも流石に顔を上げた。精神的に不安定になっているハンジの苦しさを吹き飛ばすレベルの美人の登場にハンジが息を呑んだのは、許してやってほしい。


「は、ハンジ・グレイルです」

「ハンジというのね。さぁ、ここまで大変だったでしょう? お茶をどうぞ」

「さっきは先に名前呼んで悪かったね。君とゆっくり話がしたかったんだ」


ハンジは自分の前に置かれた紅茶に口を付けた。ハンジはよく考えたら今まで紅茶など飲んだことがなかった。けれど、紅茶は思ったよりもすっきりとしていて飲みやすかった。温かい飲み物を飲んで、ハンジが息を吐いたのは、漸く、詰めていた息を吐き出せたからだ。


ロキがよいしょとクッキーをアイテムボックスから取り出したのを見て、ハンジは固まった。ハンジの知っている貴族とここにいる子供たちは随分と雰囲気が異なっていて、懐かしい気持ちになる。ハンジを気にかけてくれていた令息を思い出す。余裕がなさ過ぎて、彼の手を振り払ってしまったけれど。


待てと言われているので話し掛けることも出来ずに視線だけで何か示し合わせているカルやカイウス、エミリオに対し、レオンはハンジを観察しているし、ロキとロゼはハンジが落ち着くまで待つつもりらしいことが分かる。待ってくれているのが、この貴族様たちは随分と優しいな、とハンジは思った。


ほう、ともう一度息を吐いて、ハンジはしっかりと視線を上げた。内心まだぐちゃぐちゃではあるけれども、少なくとも会話ができないほどではなくなった。ハンジの顔色を見て、話し掛けても大丈夫と判断したのだろう、ロゼが口を開いた。


「それで、貴方はだあれ? ()()()じゃないと思うけど」

「……!? え、えっ、な、何で」


ロゼの言葉にハンジの思考は混乱した。転生者であることは、家族にすら言っていない。だってこの村は将来ゾンビに襲われますなんてそんなこと言えるわけがなかった。それとなくやりたかった訓練なんかも大人に却下されてしまったし。ハンジの苦い思い出が一瞬脳裏をよぎったところで、ハンジは目の前の令嬢(ロゼ)に意識を戻す。前世の友人の名前が出て来たということは、名乗るのを待っているという事だろう。


転生者であることを、村によく来る魔術師に一度相談したことがある。その時魔術師は、隠した方がいい、と言った。突拍子もない事ばかり言ってしまうとますます痛い目を見るから、と。当時のハンジはその言葉を守り、それ以上誰にも転生者であることを告げることはなかった。


彼らに転生者であることを伝えても良いのか、とハンジが考えたのも無理はない。


――が、ロキが答えを告げた。


「高村涼」

「――」


ハンジは反射的に振り返って、ロキと名乗っていた令息の方を見る。


「俺の前世の名だ。お前、勲だろう?」


確定事項だというように告げてくる銀髪の少年の声音はどこか平坦で、話し方が、ハンジが知る親友兼悪友にそっくりだったから、ハンジの目に涙の幕が張った。


「う、ん……」


小さく頷いた。

心細かった。今後がどうなろうとも、今は、ただ、ハンジを気遣ってくれる彼らの存在がありがたかった。転生者であることを仮にも外国の将来重要なポストに就くであろう子供たちに思いっきり聞かれているが、それを気にすることは、今のハンジにはできなかった。


「だから、お疲れ様、だ」

「……」

「怖かっただろう? 死徒を追い払うのは」


ロキの言葉にハンジは小さく頷く。ロキが死徒、と呼んでいるのは、ハンジの故郷を襲ったゾンビの事で間違いない。


「さぁ、お前の話を聞かせてくれよ」


ロキの言葉に促され、ハンジは語り出した。



人間狩りよりも腐肉漁りの方に対して優秀であるはずのアンデッド型の死徒が人間を襲う理由などたった1つしかない。進化が近いのである。アンデッド型はタイプによって異なるが、おおよそ自分に近い姿をしたものの生き血や魂が必要な場合が多く、ゾンビならば血肉が大量に必要になる。故に村が襲われる。

はぐれ死徒は特にその傾向が強く、ハンジの村もその標的にされたのだった。


人型のゾンビは本来人間が発揮することのできない生物としての筋力を限界まで使うことができる。その筋力に負けて肉は千切れ骨は砕け吹き飛ぶことも少なくない。故にその身体の修復のために新たに殺した人間の体を使うのである。


一撃、当たれば吹き飛んで死ぬかもしれない。ゾンビの攻撃の中には、攻撃を受けて死んだ相手を自分の子としてゾンビ化するものがある。

ゾンビになるかどうかは“親”となる死徒(ゾンビ)の意思一つであり、全く以ってたちが悪い。それを相手取っていたのが、この少年たった1人だったことを、ロキは知っている。


ガントルヴァ帝国はもともと魔物が少ない土地に帝都を構えていることもあり、末端の町や村の方が魔物が強力になる傾向はあるのだが、それでも帝国領内の北東部以外のエリアはリガルディア王国に比べれば魔物の強さは格段に落ちる。そんな中、リガルディア王国内部で暴れまわれるレベルのゾンビなど発生したらどうなるか。


ただでさえ魔物に慣れていない村人たちは皆死徒(ゾンビ)に怯え、平和ボケした彼らはゾンビを打ち払う力を何ら持っていなかった。唯一、光属性の魔力を発現したハンジ以外は。


故にハンジは立ち向かわねばならなかった。たった1人で。

相手は男性型のゾンビだった。怖くてただ膝が笑っていた。噛みつかれても大丈夫なように腕に沢山の布を巻いて行けと村にいた魔術師に言われた。この魔術師は回復魔術の使い手として、医者の代わりをしていただけなので攻撃参加は望めなかった。


武器も碌なものが無くて、魔力を簡単に乗せられるようにと、魔力伝導率の良い銀の短剣を渡され、そんな短い武器でどうなるというのかと思いながらも、暗い森の中をひた走った。


村人が何人も噛まれた。足止めのためにと急激にゾンビ化されたそれらは大人たちが農具を引っ張り出してきて必死に頭を潰して対処した。

近所に住んでいた友達が噛まれた。

ゾンビ化した。

親によって頭を潰された友達の遺体を見たときのハンジの心中など、帝国からの使者としてついてきた大人たちに察せるはずもない。


自分が戻れば皆を救える可能性もあった。ゾンビ化される前ならばなんとかできることを、ハンジは、前世の記憶で知っていた。

だから早く他の皆がゾンビ化してしまう前に戻りたかった。


けれども。

思い出したことがあった。


『あー、なるほど。ここでハンジが追い払った死徒がセトの実家に入っちゃうんだね』

『これでセトは死徒大っ嫌いになる、と』

『まあ、母親も妹も、死徒が城壁の中に入ったからって城壁の中全部焼き払われたんでしょ? この世界観ではそれが推奨されてるとはいえ、リガルディア王国も思い切ったことするよね』


セト、というのは、『イミラブ』の攻略対象の名前である。

そして、『イミドラ』に出て来る協力ユニットの名前でもあった。


『でもやっぱイミドラとイミラブって世界線違うよねこれ。ここでセトの実家やられてたらイミドラの彼穏やか過ぎん?』

『バルフォット騎士団長が平気な顔してるのも気になるよね』

『てか、イミラブの設定がイミドラからの流用だとしたら、ハンジの扱い温すぎるだろ。平民1人死んだところで平気って感じの帝国上層部が庇う訳ねえだろうしな』


ちょっとばかり冷たい物言いの考察厨な幼馴染が言っていた。


『セトが居ないと攻略きついボスいるじゃん。その辺の兼ね合いとストーリーでこうなってるんじゃねーの』


この世界観を誰より好きと公言していた彼だが、言い方はまるで逆だったことも思い出した。そして、彼の言葉を聞いて納得したことも。


そしてハンジは――あの日、目の前の皆の事より、今後自分が戦わねばならない相手の事を考えてしまった。

目の前の、10年以上付き合ってきた皆より、今後の事を考えた。少し手も自分の戦闘を楽に進められるようにしたいと、思ってしまった。


セトの名は、『イミドラ』に登場する際は、ハッピーエンドルートとバッドエンドルートのエンディング近くのイベントにて登場する。リガルディア王国自体が、そもそも『イミドラ』で戦うラスボスと敵対していないので当然の結果である。


その中で、唯一個人的に力を貸してくれる一派が存在する。そこの代表のキャラクターがセトだった。


そも、『イミドラ』のラスボスである死徒列強第13席『魔王』バルティカ・ペリドスは、別に人間に対して敵対的な列強ではない。ただ、彼が束ねる彼の部族の居住地域を人間が侵したから、敵対しただけである。ハンジの行動によってもバルティカの反応は変わってくるので、ハッピーエンドとバッドエンドでは後味が雲泥の差である。某PルートとGルート並みの差がある。


バッドエンドでは、ハンジは死ぬ。それはもう酷い殺され方をする。死ねたらいいねと笑われて終わるとかいうホラー展開。流石同人ゲームえげつない。

死ねない呪いをかけられて、身体を千々に引き裂かれるのだ。なおこのちょっと前にパーティメンバーのメイン火力の格闘家の裏切りもあったりする。散々である。誰が好き好んでバッドエンドに進むのか。


だから、死にたくなかったから、苦しむのが嫌だから、未来を知ってしまっているから、死徒を追い回した。けれど見失った。愕然とした。ゲームのハンジにはできた死徒を殺す選択肢が、現実のハンジにはなかった。


本当なら助けられたはずの村人を見捨てる形になった。そのくせして戦果も挙げられなかった。

そしてハンジはボロボロの身体を引きずって村に戻った。

村人の大半は助かっていた。


そして、2週間ほど前に村に中央の人間がやってきて、ハンジを連れてリガルディアへ行くといってハンジを故郷の村から連れ去った。


「反対してくれた人もいたけれど、押し切られた。たかが平民だって」

「ヴェルナー伯の令息だろ」

「うん。……乱暴、されてないといいけど」

「彼の政治力ならきっと大丈夫と俺は信じてるよ」


ハンジを守ろうとしてくれた令息が誰なのか正確に言い当てたロキに苦笑を零す。お前ら会ったことないだろ、は今は言わないでおく。誰かの心配ができる程度には、ハンジも回復したらしい。


連れ去られたハンジは最低限身なりを整えられて、リガルディア王国行の使者の集団に組み込まれ、今に至る。


「あー……もう、疲れた……」


零れた本音。ずっと気を張っていたであろうハンジの態度に、ロゼが苦笑した。身なりを整えられたなどとハンジは言っているが、それほど重要視されていないことが伺えるのが、ロキは不服だった。何故なら、ハンジの身体は治療こそされているが、まだ傷が治り切っていないからだ。怪我をおして、転移魔法陣を使いながらでも馬車で1週間はかかる道中をハンジは越えてきたという事だ。よっぽどハンジの故郷の方がリガルディアに近い。この1ヶ月ほど、ハンジは傷の治療だけされて引きずり回されていたことになる。状況を理解したらしいカルやエミリオが顔を顰めていた。


その身体中の打ち身も、慣れない()()の使い過ぎでボロボロになった第2回路も、魔力やマナを見ることのできるリガルディアの貴族子弟には、隠せるものではなかったから。


「俺、頑張ったんだよ……?」


ハンジは語る。堰を切ったように、戦闘経験も無かった12歳の少年が、突然放り出された戦場の事を、語る。戦ではないのに、蹂躙されるばかりの村の事も、今生きている世界を、日常を一瞬でもゲームの世界と認識した自責の念も、ゲームと言いながら自分の直接向けられた剥き出しの殺気と死への恐怖に震えたことも。


足の腱を切られて動けなくなり、噛みつかれかけて吹き飛ばしたことも。

がむしゃらに短剣を振っても中らなくて、魔法を放つために使った掌がボロボロになって動かなくなり、握るのが難しくてスプーンすらまともに持てなくなったことも。


ゲームの世界ではただプレイしていただけだった。混ざる認識、目の前の現実、受け止めるにはハンジ・グレイルはまだ幼く、転生者としての認識が、彼を余計死への恐怖に駆り立てた。平和な世界で生きた記憶は、今のハンジにはあまりにも遠すぎた。


もう逃げ出せなかったのは、12年間育ててくれた親や一緒に過ごした友を思えばこそ。その繋がりすら、今回のゾンビ騒動で失われようとしている。ハンジを庇おうとしてくれた彼がまだハンジの事を覚えてくれていたことで、辛うじてハンジの縁はまだ帝国にあることを、理解しているぐらいで。


「も、やだ……このまま帝国の対死徒用の旗印になるとか笑えん! ふざけんな畜生!!」


未来を知っているからこそ否定の言葉を上げる。このままだと(生き残ると)ハンジは列強に連なる隣国各国との戦争の旗印にされる。勿論、敵対国家にはリガルディア王国も含まれる。そも人刃という死徒血統が貴族階級を務める国家だ。帝国の敵になる未来ならいくらでも想像できる。

ロキが叫ぶハンジを抱きしめた。


「生身の人間にしちゃ、頑張りすぎたんだよ、お前は」

「……う、ぇえええ……ぅぁああああああん!」


ハンジは声を上げて泣き出した。


国境を越えてゾンビを追い回したのは所詮まだ12歳の子供の行動だ、だから許してくれと。

帝国の取った態度はそれである。

無論リガルディアは賠償請求と、事を起こしたハンジの身柄の引き渡しを求め、それがなされた形になった。


親もとを引き離され、帝都内では罪人のように扱われた。

ハンジが幼いからだけではなく、平和に暮らしていた日本人()の感覚が抜けていなかった彼には、心身ともに強烈なダメージを残したのだ。


リガルディアのように死徒に対し多少なりとも理解のある国ならばまだしも。死徒など全部城壁の向こう側に追い出してしまっている帝都近くの大都市圏の者からすれば城壁を越えたちょっと先にいる魔物たちと何ら変わらないものと思われているのである。

人型の魔物などいない、居るわけがない、居ていいはずがない。そんなところだろう。


「……どういう、ことだい。そいつは転生者なのか?」

「そういうことだよ。ちょっと……強烈な目に遭い過ぎたみたいだが」


漸くといった様子でカイウスが口を開き、ロキはそれを肯定する。お前は大丈夫なのか、とカルがロキを心配したのは致し方ないだろう。


俺たちは直接皆が死ぬのを見ているわけではないから、とロキは言った。それで済まされるものではないことをロゼは知っていた。おそらく何かドラクルの息子も知っていたのか、何か言葉を紡ごうとしてロキに制されて口を噤んだ。



中等部からはごく一部だが平民も入ってくる。

ハンジもそれに紛れ込ませて一緒に入学、全寮制なので問題なしと判断されたらしい。


「とりあえず、私たちにできることをするしかないわね。ハンジも守らなくちゃ」

「ああ」


ロゼとロキは入学パーティで騒ぐ皆を眺めていた。

ロキにレオンの飛び蹴りが到達するまであと、1分。


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