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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
初等部編
58/377

2-21

なんかシリアスとギャグ混じってる……(´・ω・`)


2023/03/18 改稿修正しました。

自分たちの血統を知ることって思ったより大事な事だったんですね、という人刃の血を引く侯爵令嬢の一言で、オリヴァーは最初の7日間ほど授業時間を自分たちの種族を知りましょう週間と名付けた。特に種族に関してはついうっかり間違えただけで人が死にかねない。


特に、()()()()()()なんて危険物が混じっている学年だから細心の注意を払わなければならない。


「……まさか、皆の親はこんな重要なことを把握していない?」

「というか家で皆も死徒ですって教わらなかったのかな? 少なくとも去年までに教えるのが普通だと思うけど? 皆の家ってどうなってるのかな?」


カルとレインの言葉に1組の新たな生徒たちは蹲っていた。こんなことも知らなったのかと上流貴族の子供に言われたら中流以下の貴族子弟は震えるしかない。自分たちの種族ではなく周りの者たちの種族の事を知っておかねばならなかった。多分親たちは悪くない。真っ当に自分たちの種族の話をしていたら、カドミラ教に中指を突き立てることになるから矛盾しないように何も言わなかっただけだとロキは思っている。


少なくとも去年の3組の最後の凍り付いた空気の理由が解消したらしい元3組の生徒がロキに絡むようになったのはオリヴァーにとっても悪い展開ではない。


ただ、今年のクラスには珍しく純粋な人間が混じっている。


「灰がかった茶髪のやつだけは純血のヒューマンだけどな」

「魔力が低すぎて魔術も使えないんでしたっけ」

「どうやって学校入ったんだよ」

「金じゃね」

「勉強できるんだろ」


リガルディア王国は、純血のヒューマンよりほかの種族の血が混じった者の方が圧倒的に多い。

灰がかった茶髪にグレーの瞳の少年が不服そうな表情でクラスメイト達を見ている。


「純粋な人間……ヒューマンじゃ悪いんですか」

「悪くはないけど魔術の授業大変じゃないかって話だろ」

「うぐ……」


少年の呟きをロキが拾って返した。少年は実際座学は成績優秀だが、魔術に関してはからきしだった。ロキも去年の成績は似たようなものなのでどうこう言うつもりがないのは見て取れる。オリヴァーは少年のために捕捉してやった。


「種族ごとにこんな髪の色がベースだよってのは決まってるんだ。そこに魔力の影響の出やすさが関係してきて皆の髪の色が決まるような感じだな」

「……オリヴァー先生は?」

「俺は吸血鬼で基本はブロンド。でも大体闇属性が強いからお前たちの想像する吸血鬼は俺みたいに黒髪だ」

「……」


吸血鬼の祖先たちは日差しがそこまで厳しくないエリアに住んでいた頃の影響で色素が薄いものが多かったらしい。オリヴァーの肌も少々生白いが、先祖からの特徴と思えばまあ悪い気はしないのである。


「オリヴァー先生、『吸血姫』は美しい藤紫の髪でしたけど」

「あー、あの方は雷属性が強く出てるんだよ」

「あれ雷なんですか」

「フォンブラウの弟も似たような色じゃねーか」

「加護の所為かと。“紫”のトールらしいので」

「あー、“黒”のロキの弟ならさもありなんか」


色付きの神格の話もしなきゃなあ、とオリヴァーは頭を掻いた。吸血鬼でも闇属性以外を持っている人がいると今の話で分かったので皆顔を見合わせる。


「そ、そういえばフォンブラウ君は? 人刃の所にいたけど」

「人刃は肌の色は薄めから濃いめまで様々、髪は基本黒か焦げ茶だったはずだよ」


日本人のカラーリングまんまなのだが、転生者くらいにしか分からないし、色だけで日本人を連想するのもまあ難しいものだ。


「……フォンブラウ君って、色素全部抜けたん……?」

「色素は目以外死んだと思う」

「色素って死ぬの!?」


普通の言葉遣いなら言わないからねとロキは笑った。色素は生き物だった……?と震えている少年の様子を見て笑いながら、ロキは言葉を続ける。


「ちょっと変な言い回しをしたよ。俺は神子だから、シヴァ神の加護の神力に中てられて、髪と肌の色は白くなってるんだ」

「ああ、フォンブラウ君って神子だったんだ……え?」


少年、ロキの隣の席にあたっていたのだが、ますます震え始める。神子なんてほとんど出て来るものでもないので、男爵子息である彼の反応は概ね正しい。ロキは髪を指先に巻き付けて遊びながら彼の反応を待った。


「……教会に行ったけど君はいなかった」

「俺は教会の庇護下にはいないよ。ところで教会に子供を奪われる貴族ってどう思う?」

「……」


オリヴァーは気付いた。一部の伯爵家以下の貴族はカドミラ教を信仰していることが多く、ロキは教会からすると庇護下に置かねばならない存在である。しかし10年ほど前にフォンブラウ公爵家が中心となって教会とバチバチやってた時期があったような。


「フォンブラウ、もしかしてお前の家の事情って共有してないのか」

「大人がどうかは知りませんが、クラス単位程度の共有しかしてないですよ」

「マジか」


オリヴァーの仕事が増える増える、レイヴンもきっと同じ道を通ったことを悟りながら、オリヴァーは子供たちに資料を作ろうと考え始めた。


ところで、この灰がかった茶髪の少年は名をフレッド・アネモスティ。フレッドの家族は皆灰がかった茶髪をしている。魔力は家族も皆一様に低く、魔道具での生活を余儀なくされるため、なかなか生活にもお金がかかっている。


「……ねえ、フォンブラウ君」

「なんだい?」

「……僕は、家族が魔道具頼りの生活じゃお金がいくらあっても足りないって思ったから、政治の道に進みたくて初等部から学校に通い始めた。今の生活に魔道具が浸透しすぎてるって思ったから」

「……随分難しいことを考えるね」


フレッドの目標がそこにあったのなら、なかなか頭の良い子ではなかろうか、とロキは思った。まだたかだか12歳。それでここまで考えて行動しているのなら、明確な目標があるのなら、フレッドの未来は明るいだろう。後は、擂り潰されないように、魔力を持たない彼らを守ってくれる庇護者が必要なくらいか。


「……でも、今、何で魔道具が生活に浸透しているのかが分かった気がするから、もっと勉強しなくちゃいけないなって思ったよ」

「素直だねぇ」

「?」

「何でもないよ」


ロキは本音を漏らした。この子は傍に置いておきたいかもしれないなとぼそっと呟いたのが聞こえたのは、近くに居たオリヴァーぐらいだったろう。


フレッドとロキが喋っている間にも生徒同士の会話というか言い合いは進んでいく。


「公爵家以外は基本的にこの国の成り立ちを知らないのですか?」

「政治体制が人間に寄りすぎてるんじゃないのか」

「すぐ我が物顔するくせに自分たちは弱者だとこちらを縛ろうとする動きも昔あったみたいですしね」


いずれも上流貴族子弟の言葉だが、ヒューマンではない意見であるのは明らかだった。ヒューマン自体が少ないから其方に配慮をしている暇はないのだが、そんなことを言ったところで子供が理解するかと言われればそこは疑問が残る。


オリヴァーは捲し立て始めた上流貴族子弟を諫める為に口を開いた。


「そういうのは普通中等部で教えるもんだ。しかも死徒に対して偏見の目を持っている生徒に限定的にな。捲し立てたところで相手も反発したくなるの分かるだろ」

「だって先生、あんまりです」

「人刃を受け入れられていないのでは話になりませんよ!」

「物事を分かるようになってから教えればいいなんてそんな悠長なことは言ってられないって思ったから、オリヴァー先生も動いたんでしょう?」


ああ言えばこう言う!

家庭教師を雇って多少なりとも人間の思考に慣らされた人刃のなんと厄介なこと。オリヴァーは内心舌打ちをしながら言い募る3人を自分の方に寄せる。


「じゃあお前たちは数が少ないヒューマンが、自力で身を守れない奴が、虐められてもいいっていうのか?」

「そうは言っていませんわ」

「ヒューマンばっかり守ろうとする考え方はよくないと思います」

「それこそ虐めの主犯を隔離すればいいじゃないか」

「埒が明かんな!?」


何あれ、とフレッドが呟き、ロキは先生が先生なりに人刃からアネモスティ君たちを守ろうとしているんだよと返した。


「要は問題になってるのはどこなの? フォンブラウ君がいじめられた話から始まってたよね?」

「人刃とかがヒューマンを守ってあげてるうちにヒューマンがヒューマン以外の種族そのものを嫌がるようになったからヒューマンを怖がらせないように自分たちの種族を隠すようになったらとたんにヒューマンが我が物顔で闊歩するようになった、って話じゃないの」

「でも実はヒューマンは魔力がほとんどないから魔術が使えるヒューマンイコール何かの混血ってことで、その認識がこのクラスには足りなかったってことでしょう」


大体それで合ってると思うよ、とロキが一言。

ここ数日間の話題を素晴らしくまとめたクラスの誰かは平民の商家の子弟だった。先日父親が人狼の血統に連なる末席、的なことを言っていたとフレッドは記憶している。


「ねえフォンブラウ君」

「なんだい、アネモスティ君」

「カル殿下が大人しい理由は何?」

「彼は俺を守りたいんじゃなくて、俺がいじめられた事実を周りに知らせたかっただけだよ。俺が隠しちゃったから気にくわなかったんだろうね」


幼馴染って大変なんだね、とフレッドが呟くと、ロキは柔らかく笑みを浮かべた。


「理不尽が許せない、優しい王様になるよ、彼は」


ロキの言葉にフレッドは、そんなものなんだねと曖昧に返すしかなかった。それは確かに明かしたくなるかもしれない。フレッドだったら、友達が虐められた結果怪我までして、その事実を隠して、虐めた相手がのうのうと学校に出てきていたらブチギレするかもしれない。カルにちょっと同情した。


何とか3人を説き伏せ切ったらしいオリヴァーが戻ってくると、フレッドは手を挙げた。


「オリヴァー先生、どうして自分たちは死徒だってはっきり教えなくなったのかにも疑問が残ります。リガルディア王国って昔から死徒って上から下までいたんですか?」

「あー、外国とリガルディアでは少し事情が違う。リガルディアは王家と公爵、侯爵家までに死徒を固めてたんだよ、元は。でも平和になってくると外国の人間との結婚も増える。その過程で死徒は恐れられるものという認識から、子供たちに教えなくなっていった、ってのが一般論だ」


オリヴァーの言葉に納得したらしいフレッドはメモを取って、逆にロキ達は自滅じゃん、と元も子もない言葉を吐いた。

今までの認識をぶち壊された生徒たちはまだ混乱しているが、大体状況は飲み込めたらしく、ロキの方を見る。


「ロキ君はそれをどこで知ったの?」

「……魔力の暴発で半転身して自覚を伴ったかな。骨格から変わって痛いんですよ、あれ」

「――半転身?」


オリヴァーが声をあげた。


「何年前の話だそれ」

「えーと、7年くらい前でしょうか」

「……資料に書いてなかったぞ?」

「皆ビビるじゃないですか。兄弟からもドン引かれましたし?」

「あー……浮草病治りにくかったんじゃねお前さん……」


オリヴァーは首をフルフルと振った。ロキは想定外が多すぎて少し配慮が届かない。ロキは笑顔でオリヴァーに答える。


「はい、なので竜人に焼いていただきましたよ!」

「去年の騒動はそれだな!? 瀕死の重傷を今まで何度負っているのかゆっくり数えろ!!」


ついオリヴァーが声を荒上げ、ロキは真剣に数える。


「……4回ですね」

「お前今幾つ?」

「まだ11です」

「3年に1回死にかぶってる計算でいいか?」


ちなみに最初は何だよとカルに問われ、魔力暴走と知らなかったのだが高熱を出して寝込んだと伝えると、殴られかけたので避けた。


「下手したら死んでるじゃないか!!」

「その時は何も知らなかったんだ仕方ないだろう!」

「早く魔力の流れを視認できるようになれ!!」

「え、ロキ様そんなこともできないの」

「ええ、お恥ずかしながら」


ロキとカルの会話にクラスメイト達が反応する。現状成績優秀であるロキがまさか魔力の視認ができていないとは皆思っていなかったらしく、驚いた顔をする。ロキはといえば、ループのことまで話す気はないらしく、静かに頷いただけ。カルたちは不安げに見ていたが、そのうち静かにレインが口を開く。


「ロキは、調整が難しいと思う」

「え?」


レインは小さく息を吐いた。ロキのように魔力が多い者は、基本的にあまり微調整は得意ではないのだ。


「ロキに限らずフォンブラウの人間はもともとあまり微調整が得意なタイプではないらしいんだ。もともと魔力量が多いっていうのが一番の原因みたい。このあいだアーノルド伯父上に尋ねたんだ、魔力感知はどうしているのかと」

「何故だ」

「やたらと魔術を放つ範囲が広いんだ。だから」


レインもレインでいろいろと調べて回っているんだなとカルは思った。ロキは軽く肩をすくめる。


「結果は」

「『その辺だろう?』って。たぶんあんまり感知が精密ではないんだと思う……」

「あー、それ、“フォンブラウの持病”出てるな」


オリヴァーが苦笑を浮かべた。


「フォンブラウの持病、ですか」

「そう呼ばれてるだけで、別に病でもなんでもないんだがな。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()的なあれだ」

「「「あー」」」

「なんでそう元1組2組の奴らばっかり覚えがあるわー的な反応になるんだ?」


オリヴァーは小さく息を吐いて、ふとロキの方を見る。もともとわかってはいたのだ、ロキの魔力量が異常である、なんてことは。


ただ、それを垂れ流しにしないために必死で去年訓練を積んだと聞いている。

魔力結晶を生成する時間をなるべく増やしてやらねば、寝ている間に関節部分から魔力結晶が突き出る可能性がある――などと言われた日には、その異常なほどの魔力量は何だと問い返したほどだ。


ロキはまだ、晶獄病が治っていない。


魔力が溜まっているのががロキの右肘部分に見えて、オリヴァーは問う。


「フォンブラウよぉ」

「なんでしょうか」

「魔力結晶を生成する時間をどれほどとっていたのか、レイヴンは教えてくれなかったんだが。どれくらいの時間だ?」

「学校にいる間ずっとですよ」

「この2、3日やってないよな?」

「姉上が鍛錬に付き合ってくれると言っていたのでそちらでこなしました」


今日は?

まだです。


ぶわ、と。

シャツに赤が広がった。


「!?」

「ッ!?」

「ロキ、右肘!」

「机退かせ、一波来る!」


カルとレインがすぐに対応を始める。ルナとクルトが机を退け始める。

筋力強化魔術をさらりと使用して運び始めるあたりが憎らしい。


「ほら立って早く」

「何、何なの」

「ロキ、隅っこに行ける?」

「ああ、問題ないよ」


オリヴァーは思う。

レイヴンがロキを自分のクラスから離されたとき、なぜ自分に指名を寄越したのか、思い至った。


「去年はいつも何をしてたんだ」

「鍛錬を……俺が魔力結晶を出して、皆に砕いてもらったり、あとは割と本気でバトったりしてましたね」

「あー、だる、なんじゃそりゃ……」


オリヴァーは息を吐き、時間割表を見に行く。

第2訓練場が空いている。よし、とオリヴァーはパンと手を叩いた。


「皆を巻き込まないとか言ってたが具体的にはどういう意味だ?」

「皆を俺の魔力に中てないようにするという意味ですが」

「そうか、当たっても何か悪影響が出るとかは」

「属性が変わっちゃったやつが何人かいます」

「よし、そんなのはまだ基礎しかやってないやつらには関係ない。お前ら全員第2訓練場に向かえ」


突然出された指示にロキとカルは顔を見合わせた。


「先生が言ってたのはこれか……」

「レイヴンが?」

「この先生なら大丈夫、って言ってたんですよ」

「……あー、そりゃ、経験者じゃなきゃこんなのは対処なんざわからねえな」


オリヴァーはほらさっさと行きやがれとロキたちを急かす。


「魔術使用許可を」

「へいへい」


ぺらりとロキが虚空から取り出した書類にサインをして送り出すと、ロキが割とあっさりと魔法陣(コード)を発動させる。

同時進行、ものの3秒ほどで発動させたそれは空間転移で、それだけでも馬鹿みたいに魔力を食うはずなのに、加えてカル、レオン、レイン、ルナ、クルトの5人も一緒に引っ張っていったようである。


「……おっそろしい魔力量だな……」


この日、第2訓練場は半壊した。主に、地面が。



ほらやっぱりね、と職員室にて、レイヴンが言った。


「ロキ君を僕のところから離すなら覚悟してくださいと言いましたよね?」


職員室、職員会議中。

議題、フォンブラウの嫡子について。


「そもそもあんな魔力爆弾みたいな子よく今まで学校に居たな?」

「僕としてはその傍にいた闇の人工精霊が気になってただけなんですがね」


オリヴァーはこの1週間を振り返る。

ロキは授業中にはあまり魔力結晶を生成するのはよくないと考えていたらしく(子供たちも魔力の流れが見えているので結晶を作ると視界が揺らぐため気になる子が多い)、その影響もあって授業が3倍速くらいで進んでいたのに、それを教員側が無理に引き裂いてしまった形になっていた。わざわざ終わった部分の授業をもう一度聞かされる羽目になる元2組の子供たちは可哀そう過ぎない?とはアビゲイルの言である。


なお、カルとロキをはじめとする元2組の生徒は嫌そうな顔をすることなく真面目に終わった内容の授業でもちゃんと出席していた。その代わり、午前の授業終わり頃になると魔力暴発を起こしかけるため、魔力使用量の多い飛行だの転移だのを繰り返し、午後の授業には出てこない。


「ロキ君は自分が人刃であることを明かしているようだが……」

「そうじゃなきゃあの魔力量は信じられませんね。あと、おそらく何か別の()が混じってるせいでああなってる。きっと混じってる方が停止しかかってるんですよ」


吸血鬼族であるオリヴァーの目に狂いはない。魔力感知に優れた専門の魔術師でもいればまた話は別かもしれないが、そんな者がいるなら初等部ではなく高等部だろう。レイヴンが口を開く。


「それについては僕も去年フォンブラウ公爵とお話をさせていただきましたよ」

「結果は」

「上位者が解決法を探している、という回答でした。ロキ君を中心にするか、別の軸として考えて授業をした方がいいです。カル君とレオン君のいるクラスにロキ君を入れた以上、後者はもうできないと思いますがね」


結局面倒は全部俺かよ、とオリヴァーは息を吐いた。

何だってこんな面倒なことになったのだ。


「では、どうすればよかったというのかね」

「去年フォンブラウを怪我させた生徒とフォンブラウを同じクラスに入れるなんて馬鹿なことを貴方がやらかしたせいでこっちが迷惑被ってんですよ。フォンブラウと戦ってみろ、アイツ俺の全身強化一撃で全部崩壊させやがった」


オリヴァーの言葉に初等部を任されている教員らが騒めく。彼の魔力結晶硬いでしょう、とレイヴンが笑った。オリヴァーは小さく息を吐いて頷く。


「あれが普通なのか」

「普通ですよ。僕の場合は精霊魔法でやっていたのでノーダメージですが」

「くそ、先輩担任代わってくれよ!」

「無理ですね」


ロキが死徒に関する歴史書を簡潔にまとめて読みやすくした別大陸の書物を所持していたためそれを借りる羽目になったオリヴァーである。

ただ、ロキの行動を見る限り何か悪巧みをしているわけでもない。オリヴァーはもうなるようになれと放り出したくなっていた。


「そんなに問題があるのでしょうか……」

「二次被害出したくなかったらフォンブラウは本当に大事にしてくれる人間のところに置いとかなきゃダメだろ……なんだよあの魔力結晶生成装置は」

「ええ、でもアーノルド卿とスクルド様の息子ですから、むしろあのスペックがいてもおかしくないと思いますけどね」


2人はそう言いつつふと時間を見る。


「ああ、そろそろ行かないとロキ君たち勝手に始めますよ」

「殿下が最初に動きやがるからほんと収集つかねーんだけど?」

「わざとですよ、ロキ君への愛ゆえですって」

「それファンブラウに言ってみろ」

「ロキ君じゃなくて殿下に燃やされるのでパスですね」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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