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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
セネルティエ留学編 夏休み
333/377

12-3

2025/05/18 編集しました。

カミーリャがすっかりリガルディアの人間に打ち解けている。すげえ、とアレスは声を漏らした。何がすごいって、ロキが何度も話しかけに行く内にカミーリャがそれに慣れてちゃんと話ができるようになっているところだ。ロキの普段の薄い笑みはかなり威圧感があるのだが、それをものともしないカミーリャの様子に関心さえする。


あの後結局プラム御用達の店に戻ってジュエリーのデザインを決めてガーネットを渡して、加工する担当になった人間族の男は悲鳴を上げていた。こんな高そうな石どこで見つけたんですか、と。ドウェルグの店、とカミーリャが答えれば納得されていた。女物で作ればいいんですね、と最後に確認して男は工房へ戻り、カミーリャたちも学生寮へと戻った。


服をいろいろと組み合わせてみたり、茶会を開いてみたりと結構忙しく過ごしているのだが、ひまわり祭りを翌日に控え、最後の準備確認を行っているところだった。今日は俺もここで過ごすぞ、とカルがセトとオートの部屋に降りてきたので迎え入れて荷物を並べてみる。男子だけで集まって荷物の確認をしてみると、ロキは荷物が少なく、オートはなぜか荷物が多い。不思議なものである。


2泊3日の予定が組まれているひまわり祭りは、初日に移動して、夕食を摂り、宿で就寝。翌日朝からヒマワリの”花園”へと向かう。昼食はプラム側で準備してくれるとのことだったので、お言葉に甘える。夕食はまたプラムが手配してくれる宿で。翌日は帰還。この流れである。



旅行用に荷物をまとめ、それを持っているのはカミーリャとタウアだけだった。他の全員魔力がありますと宣言しているに等しい。ロキが持つぞ、と声をかけると、じゃあお願いします、とアイテムポーチを取り出して着替え類の入った荷物をロキに預けた。タウアもそれに倣うが、こちらはゼロに渡していた。


「え、なんかカミーリャ、ロキと仲良くなった?」

「寮でも同じ部屋ですしね。テスト勉強も一緒にさせていただきましたし、俺だけでは読めない本も一緒に読んでくださいましたよ」

「あれ、ロキもしかしてウチの貴族といるよりカミーリャといない?」

「かもしれん」


アレスには喧嘩腰になるし、エドワードは自主学習が忙しい、ランスロット、ガウェイン、モードレッド、ベディヴィエールはどいつもこいつもゴリラで、アキレスは恋愛相談を持ってくるので正直面倒くさいらしい。ブライアンは、話題にすら上らなかったので迷惑はかけていないという事だろう。


「アキレスどうなってんの……?」

「フローラ嬢は好みから外れてはいないがサンダーソニア嬢の方がストライクゾーンど真ん中だそうだ」

「それ地味に傷つくやつー」

「ナヨっとしたやつね。本当についてんの?」

「ちょ、殿下だめですよそんな下品な言葉使っちゃ!」


カオスである。

むしろ本当に男かどうかを疑われたアキレスに同情していそうな遠い目のリガルディア組に、カミーリャとタウアは顔を見合わせた。


今回の旅行に誘われたのは都合のついた留学生と公爵家と関係者のみである。そのため、主催者のプラム、補佐のアテナ、アレス、エドワード、ブライアン、婚約者のマーレ、ガントルヴァ人留学生のカミーリャ、タウア、リガルディア人留学生のカル、ロキ、オート、ソル、ナタリア、セト、ゼロ、ファーファリア人留学生の金色蝶(パピーリオ)、アカネ、アルテミスと総勢18名、大所帯だ。


「本当はシルヴァリアの留学生(パルディ)も誘ったんだけど、都合が悪いって言われちゃった」

「そうだったんだ。ていうか留学生多くない?」

「リガルディアの留学生を受け入れるときに他の国が捻じ込んできたらしいよ。て言っても、ソウジェナとかなんだけどね」

「ああ、向こうの人たちだったんだ」


ソルは既に接触したことがあるらしく、なるほど、と納得していた。


「ところで、ひまわり祭りって具体的にはどんなことしてるの?」

「植物精霊に感謝する、ってのが一番メインかな。舞子っていうのがいて、舞うの。多分日本の神楽みたいなものじゃないかな。4回あって、春はサクラ、夏はヒマワリ、秋はモミジ、冬はスギをイメージした衣装で踊るの」

「「「サクラ!?」」」


リガルディアのメンツが一斉にプラムの方を向いたのでプラムは驚いた。


「ど、どうしたの?」

「いや、その……すまん、リガルディアでサクラと言ったら1本しかなくてな……」

「こちらでは群生しているのか?」


ああ、なるほどとプラムは理解した。サクラを知ってはいるが、リガルディアではかなり貴重なものになっている、ということだろう。


「うん、群生。ヤマザクラと枝垂桜は確認したよ。ソメイヨシノみたいに一斉には咲かないけど」

「そめいよしの?」

「うん。前世ではサクラって言ったら有名なのはソメイヨシノっていう品種だったの」


本当はもっとたくさんあったらしいことは知っているが、専門家ではないプラムにはそこまでオートの問いには答えられない。ロキが口を開いた。


「……そもそも、ソメイヨシノは品種改良で出来上がったとても美しい花を咲かせる品種で、1本しかできなかったから接ぎ木で増やしたと聞くよ。いっぺんに咲くのは同じ木だからだ……とかな」


事実ではないにしろ、同じ品種であれば似たり寄ったりの時期に咲くのは頷ける。そしてプラムが言っているのはおそらく、花の後に葉桜になるのではなく、花と葉が一緒に出ているのだろうというのは簡単に予想がついた。


「春夏秋冬がはっきりしてるんだな。だからそんなに祭があるのか」

「基本的には貴族が躍るしね。毎年高等部の人が踊るんだよ」

「ああ、もしかしてひまわり祭りって金髪の人が踊るの?」

「はい、金髪は珍しいですからね。光の精霊とかけて華やかなお祭になりますよ」


金色蝶(パピーリオ)の言葉になんだろうと思ったプラムはすぐに気付いた。金色蝶(パピーリオ)は見事な金髪の持ち主なのである。本来ならば光属性の魔法を撃ててもおかしくないくらいの金髪だ。本人は魔力がないと言っているが、もしかしたら王家に伝わる魔法だけしか撃てない可能性もある。


「『留学生じゃなかったら!』って言われたわ」

「あー、そうですね。今年3年生には金髪の方いらっしゃいませんから」

「今年って1年生に2人だけよ?」


じゃあ今年のひまわり祭りは大変ですね、とプラムは苦笑した。代役を立てられないのかと問えば、光属性の人なんてそんなにいないんです、と返される。カルは自分の髪を見て、レオンとエリスとルナを思い浮かべた。ルナは少々赤みが強すぎるが、レオンとエリスは濃淡こそあれど美しい金髪を誇る。リガルディア王国は魔力を多く持つ民の集団である。だから男爵令嬢であるはずのエリスが金髪なのだ。兄のイザークは確かに火属性ではあるが、光も若干入っているのであろう、瞳は淡い桃色。エリスの話によればエリスの母方の祖母が金髪で光属性だったというから、金髪になる素養自体はある。


魔力が多くなければこのような問題は起こらない。小さく息を吐いて、馬車の外を眺める。人間に合わせた速度であるため、カルからすればとてもゆっくり進んでいるように感じるが、プラムからすれば十分馬車が揺れていてお尻は痛いのであった。



道中で何度か魔物に遭遇するも、無事に切り抜ける。護衛として派遣されてきた騎士は4人だけだったが、ロキがフェンを連れてきたためである。ついでにセトが本来は既に進化しているんだと言ってコウをころころとした玉状の身体から、肩に乗るには少し大きいくらいの鋼竜に姿を変えさせて、馬車の上にのせていたのも大きいとロキは言った。


フェンはリガルディアでも埋没しない程度には強力な魔物として進化を遂げているらしく、にもかかわらずロキに撫でられると犬のように尻尾を振り回しているのがなんとも愛らしい。コウは可愛らしさがどこかへ行ったとセトは言うが、どうやらまだ幼いため幼体の姿に擬態しているらしいことが分かった。鋼竜の資料などほとんどないに等しいのだが、アテナが知っていたために分かったことだ。


「いくら時間があっても足りないような興味深いものばかり持っているよね、リガルディアの人間って」

「そうか?」


楽し気に話しながら宿泊予定の宿に馬車を止めて、騎士たちも別の部屋に宿泊する。男女で大部屋を借りることになっていたため、気持ちと雰囲気はすっかり修学旅行だった。あながち間違っていないとはソルの言である。


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