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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
セネルティエ王国留学編 1学期
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11-26

2025/05/07 編集しました。

「……そんなことが」


ロキの話を聞いた各々の反応は様々である。あまりのロキの淡々とした反応に驚いている円卓加護勢、プラム、アレス、アテナ。カミーリャとタウアも苦虫を噛み潰したような表情を浮かべており、ロキは首を傾げた。


「まあ、仕方ないだろう。あの時は赤子だったから、その内に教会に連れて行きたかったのだろうよ」


教会が神子を集めているのは知っている、が、命まで脅かされてはたまらなかっただろう。それをよくもまあ、守り切ったものである。

話を聞いていたゼロが、すさまじいな、と呟いた。


「すさまじい、とは?」


ゼロの呟きを拾ったカミーリャが問いかける。ロキは何のことを指しているか分かったらしく、目が合ったカルに対して肩をすくめた。


「……族長が出て来るのは、余程の事だと、思う」

「そう、なのですね。俺は、イミット族長ともあろう方が銃を使ったことに驚いてます」


ロキはふとああそうか、と2つの意味で納得する。


「恐らくだが、ムゲン殿はループを知っているよ、ゼロ」

「えっ」

「強力な竜種は覚えていることもあるのだそうだ。あの日出て来たのは確かにドウラ・ドラクルだった。俺は彼が弱いとは思わないよ」


ロキの言葉に納得したらしいゼロが大人しくなる。ロキはそれを見届け、カミーリャに視線を向けた。


「カミーリャ、お前銃知ってたんだな」

「対巨人族用だったり、対ドラゴン用に辺境の部族が持っていることがあったんです。俺は父についてそれを見ていただけです」

「話だけで銃だと分かるだけですごいですよ」

「ありがとうございます」


カミーリャが銃を知っていたのは各地を飛び回っていた父親の影響。破裂音がしてモノが吹き飛ぶ、魔物にダメージを与えられる、という状況だけ説明するとボウガンに近い部分もあるのだが、銃と呼んだということは、カミーリャは間違いなく銃を知っている。


「……ちなみにカミーリャ、銃の形で別の呼び方があったりするのか?」

「いえ、銃としか聞いたことはありませんね。ロキ君は銃に射程が何種類かあることは知ってそうだね」

「知ってますよ。ちなみにこの時ドウラが使っていたものがどんな銃かは予想つきます?」

「リロードが中折れ式のタイプかと思ったんだけど、散弾が撃てるタイプかな?」


カミーリャが笑う。ロキは苦笑を返した。


「擬音使っただけで予想中てて来るの怖いな」

「銃は色々と種類がありますが、リロードの音が分かればある程度絞れるかな。あとは、強力な蜘蛛の魔物だと言っていたから、弱点を撃ち抜くんじゃなく、吹き飛ばす方だと思った」


物語調に話したつもりだったロキは、カミーリャがある程度状況をはっきりと想像してくれていたことに感嘆を零す。

そんなロキとカミーリャを眺めていたソルが口を開いた。


「ロキ、つまりドウラ・ドラクルは、あんたたちの目の前でショットガンをぶっ放したってこと?」

「はは、状況理解が早くて助かる。ついでに言うと二連装のやつだ。いや、シェロブの再生が止まった時はビビったな」


弱点が腹とはいえ、再生力が高い魔物として知られるシェロブが腹を吹き飛ばされて再生が完全に止まってしまったということは、弾丸の方も何か仕込みがあったのだろうが、それにしても異常なまでに威力が高いのは否めない。

プラムはどういうこと、とアレスに問い、威力を解説されて蒼褪めた。


「散弾て、いくらなんでも、イミットがそんなもの使うとは思えない。竜族が飛び道具なんて、そもそも何で持ってるの」

「案外、俺たちがあそこで魔物に追っかけ回されて、瀕死に陥るのまで想定内で、どうにかしてやろうっていう魂胆で持ってきてたとしたら、いろいろと説明が楽なんだがな」


プラムの言葉にはロキが答えた。一番ありえなさそうだが、一番綺麗に当てはまるのがその可能性であることが、ドウラ・ドラクルがループを知っていることの証明足り得るのではないかと、プラムは思った。


「ロキ、ゼロ。ループをドラクル公が知っている場合、そもそも竜種の上層がループを知っている可能性は?」

「あー。それはあり得ますね。バハムートも知ってるようでしたし」


ロキがあっさりと肯定し、今度はカルが呻いた。イナンナが苦虫を噛み潰したような表情の円卓加護勢を覗き込んで、ベディヴィエールが視線を上げる。


「リガルディア王国で一体何が起きているのですか……?」

「正直言って、我々もよく分かりません」

「えっ」


答えたのはナタリアだった。


「だって当のロキがループのこと覚えてらっしゃいませんし?」

「ナタリア、俺に不満があるのであればはっきりと口に出してもらって構わないけど」

「圧力すごいのでやめときますねー」


ナタリアが何か思うことがあるのは、プラムにも分かる。話を聞く限り言ってはなんだがナタリアも頭がいかれつつある中の内の1人だし。

カミーリャが再び口を開く。


「彼らは、ループ、の結果、ロキ君を狙った、という認識なのですか」

「恐らく合っています」

「ロキって魔力量がめちゃくちゃ多いらしいから」

「そうなんですか」

「2年前の時点で俺の5倍ほどあったぞ」


カミーリャは魔力量を自力では測れないため、タウアを見るが、タウアの顔からは表情が抜け落ちていた。それほどまでに恐ろしい魔力量なのか、とカミーリャは認識したが、タウアが口を開いたことで違ったことを理解した。


「2年で、ここまで魔力総量が伸びるはずがない」

「えっ」


なんだかやたら驚く回数が多い気がするのは私だけかしら、とプラムが言う。


「ロキ様、貴方の魔力総量を教えていただいてもよろしいかしら?」

「さて、もともとフォンブラウ家の人間は宝石をさざれに変えるほどの魔力を持っているそうですから、加味して中級竜族くらいには匹敵するのでは?」


あながち外れてもいないだろうと思われる辺りを口にすれば、プラムは惚け、タウアはそんなもんじゃねえ、と言わんばかりに目を剥いた。


「タウア殿の見立ては?」

「……そうですね。鬼、には、匹敵するかと」


鬼、というのは、ゴブリンが進化によって小鬼と呼ばれる型を越え、物理的な肉体の型を越え、霊的生命体になった姿であり、いわゆる精霊化したゴブリンやオーガの最終進化系というか、究極系というか、そういった物の類である。


その鬼に匹敵するというのだから、タウアの見立てが正しいのなら、ロキの魔力量は尋常ではないことになる。プラムが失礼します、と小さく声を掛けて、アテナとアレスにロキに解析及び鑑定を掛ける許可を取る。この場合断らねばロキはレジストする可能性が高いのだ。


「構いませんよ」

「ありがとう」

「では失礼して」


アテナとアレスがロキに鑑定を掛ける。2人は目が潰れると言わんばかりに視線を逸らした。どうしたの、とプラムが問いかける。


「意味が分からない」

「なんだこれ意味わかんねえ」


双子なだけあって似たような反応をしている2人に、ガウェインが問いかけた。


「できれば教えていただけませんか?」

「いいか」

「ああ」


アレスが短くロキに問いかけ、ロキは小さく頷いた。アレスとアテナは紙に書き出し始め、そこに書かれてゆくロキのステータスをガウェインとランスロットが目を皿のようにして読み始める。


「待ってください、体力と魔力のバランスがぶっ壊れているんですが!」

「そうなのか?」

「普通こんなの晶獄病で倒れます! どうやって動いていらっしゃるんですか!? 体力の50倍以上の魔力量なんて、死んでしまいます!」


ガウェインの絶叫に近い鋭い声にロキがけらけらと笑った。


「晶獄病でしたら一応完治いたしました!」

「なんですと」

「ではこのやたらと高い魔術防御と差があり過ぎる物理防御は」

「俺ステータス見れないんでその辺は知りません!」


おいおい、と漸くセトが口を開いた。


「ロキだって人刃だぞ? 物理防御が高いのが当たり前じゃね?」

「あっ――」

「そういやロキって何回か進化してるんだったっけか。だったらこの魔力量の高さと物理防御と魔力防御は分からなくはねえな。それにしても差がでかい」


アレスたちがステータスが見れるのは軍神の加護故だろうな、とロキは思う。自分のステータスを自分で見る気になれないのは、きっと何らかの事情があるか、単に嫌なだけなのか。人刃という種族的なことを考えるとあまりロキが頑丈ではない、というのはアレスの見立てであった。


「ロキって、もしかして身体弱いのか?」

「そうなのか、ロキ?」

「ええ、俺は生まれつき身体が弱いですよ――人刃にしては。ブライアンが言っていた欠陥個体、間違いありませんから」


人間の基準で考えたら虚弱ではあるけれどしっかり動ける人間くらいです、とロキが言う。それがどれだけのステータスダウンなのか、わかるのは軍神の加護持ちくらいなものだろう。アレスとアテナの目が大きく見開かれ、アテナが慌てて本を取り出していろいろと調べ始める。


「おや。アテナ嬢、その本は?」

「ああ、リガルディアにはないのだろうな。古代から続く種族の図鑑だ」


図書館にもあるから読んでみると良い、とアテナは言って、ここだ、とページを繰った。種族的な特徴を読み上げる。


「『人刃族。鋼鉄の種族。身体を武具に変化させる種族固有スキルを持ち、主を決めることで契約の種族としての人間を軍事的な面で支えてくれる。瞳は魔石よりも魔力保存上限が高く、ガラス質の光沢を持つ。魔術防御よりも物理防御に秀でる。現在確認されている種類は曲刀、直刀、短刀』――以上だ」

「アテナ嬢、その本古くないか」

「ああ、最も古く、一番信頼が置ける」


タイトルは擦り切れているが、ロキがタイトルを聞けばロキが知っている本の底本にもなっているタイトルだったので、原本が読めるのはいいなあ、とロキは呟いた。


「しかし、この記述から行くと、やはりロキの物理防御はかなり低いみたいだな」

「あんなに硬いのにか」

「恐らくだが、加護持ちだったからそこそこ硬く、そして魔術防御が高くなっているんじゃないか」

「そういや状態異常無効とかあったんだが」

「だから俺が毒見役だ」


アテナとアレスの言葉にロキが笑って言う。プラムが簡単にメモをして、ロキの生い立ちを簡単に整理する。プラムは泣きそうな顔をしていた。


「プラム?」

「……ロキ・フォンブラウってキャラクターの生い立ちがこんなのだったら、なんで彼女は悪役令嬢になったんでしょうか。いい子だなとはずっと思ってましたけど、あの子が悪役である意味が分からないですよね」

「ソルたちに何度も言われてきたよ、それは」


ロキ・フォンブラウという男が自分の生き方を卑下しないのは、ゲームの中の令嬢の姿を知っているせいだった。高村涼の目に気高く映った彼女の名を持つ自分が、あの名の生き方を、穢すことは許せなかった。


「それはともかく。教会を叩くための材料は父上に揃えていただきましたので、これを使って教会を抑え、トリスタン殿と教皇猊下を監禁状態から解放するのが第一目標ですね」

「そうなりますね」


ロキが話しを切り替えた。すぐそれにランスロットが乗り、モードレッドが小さく息を吐く。ロキ・フォンブラウ、触れられたくないところはスルーしていくスタイルらしい。


「決行はいつになりますか」

「プラム殿下、およびアテナ嬢とアレスが話し合い班、ロキ様を含めた突入班で教会に突入してトリスタンたちを開放する、というのが理想形ですね。そのためには最低でも1週間は必要かと」

「わかりました」


材料が揃ったなら、あとは、実行するだけだ。予想以上に派手な強行軍になりそうなのは、この際隣に置いておく。


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