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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
セネルティエ王国留学編 1学期
276/378

11-8

2025/04/27 編集しました。

「俺と決闘しろ」

「お断りします」


ブライアンの言葉にロキは即答した。ロキに唐突に白い手袋を投げつけてきた別のクラスに在籍する侯爵令息の言葉にロキが拒否の声を上げたのは致し方あるまい。

一体何がどうしてこうなったのか、ロキは首を傾げた。あとついでにロキが今現在歴史の教材類を抱えて移動中であることも考慮してほしい所である。


「決闘を断るなんて、お前本当に貴族か?」


ブライアンの言葉にロキが困惑する。一体何の利があってロキは彼の挑戦を受けねばならないのだろう。あと、お前は誰だ。


「……つかぬ事をお聞きするが、君は一体どこの誰だい?」


いや、ロキは知っている。けれど名乗られたことも無いのでこう言うしかない。


「なっ……この俺を知らないだと? 貴様それでも貴族か?」

「ああ、残念ながら名乗られたことも無い人の顔と名前は一致しないのでね」


誰かと喋っていたらしいゼロが追い付いてきて目を見開く。その場で抜刀しようとして今は武装していないことに気が付いたようだ。チッと周りにも聞こえるくらいの舌打ちをして、ブライアンとロキの間に身体を滑り込ませた。


「なんだ無礼者!」

「アンタこそ何者だ」


ゼロに至っては本当に顔を知らないのだろう。不快感に顔を顰めている。ブライアンはロキを見やる。


「従者の躾もまともにできないと見える」

「これだけ接近してゼロの顔が見えるのに、種族の判別も出来ないほど目が悪いのですね。これは失礼いたしました、よっぽどアレスの方が目がよろしいようで」

「なんだとっ!?」


ロキが良い笑顔で言い放ったため流石に癇に障ったようで、ブライアンが顔を赤らめた。


「あの出来損ないと一緒にするな!」

「おや、アレスは最初から素晴らしい状況判断能力と思考力がありましたよ。アレスを出来損ないと仰るからには貴方は素晴らしい能力をお持ちなのでしょうね」

「決闘で示してやる」


ロキが饒舌に話し始めたためゼロがどうするか迷っている。近くを通りかかったアレスがとても困惑した瞳をぼんやりと3人に向けた。止めるべきなのこれ。


「決闘決闘って騒いでらっしゃいますけど、先に初等部の授業を覗きに行った方がいいのではありませんか。俺は貴方を存じ上げませんので、これ以上は控えますけれども、きっと背伸びして高等部に見学にいらっしゃったお子様なのでしょう?」

「!? 貴様っ!」

「はいそこまで」


とうとうロキが明確に毒を吐いたので流石にアレスも止めに入る。止めに入り切れなかったゼロを見て、イミットはこういう時主の思考を優先するのかとなんだか納得したアレスだった。


「アレス! この無礼者に説明しろ。俺はこいつに決闘を挑んだのに、こいつは受けないと言うんだぞ!」

「いやブライアン、留学生に決闘を挑むか普通……?」


アレスに対しても高圧的なその態度にロキはああなるほどと納得する。

ブライアン・フーリー、プラムたちの母方の従兄弟にあたる。所謂外戚というやつだ。だからアレスもあまり強硬な態度が取れないのだろう。


「俺が求めるものが手に入らないなんてことがあってたまるか。ロキ・フォンブラウ、ソルをかけて決闘だ」

「ブライアン! 人様の婚約者を賭けるとは何事ですか!」


プラムの鋭い悲鳴のような声が飛んできた。口下手なアレスでは収めきれないのもすぐにプラムは理解しただろう。そしてロキの目に火が灯ったのを感じ取ったアレスががっくりと項垂れた。


「ごめん、殿下」

「ああ……ロキ様、こんなのでも私の従兄弟です。どうか命だけは助けてくださいまし」

「すまんが俺はプラムの従兄弟殿の名は知っているが、()()()の名を知らんのでな。()()()が死んでも文句は言うな」

「うわあああああ何で名乗ってないのおおおお名乗れ今すぐ名乗れこの恥晒しいいぃ!」


プラムが暴走しつつある。アテナがやってきてブライアンに金的を喰らわせた後ロキに簡単に紹介を済ませて引き摺って行った。


「……ロキ、あれはどうすればよかった?」

「ああいうときはあのままでいい。ここも学校で身分の貴賤は態度には関係ないからな」


ゼロの問いにロキは答え、プラムを見やる。


「なあプラム、俺めっちゃセネルティエをディスった気がするんだけど大丈夫かね」

「あのバカの命を取らないところで相殺します」

「了解。あ、決闘は良いが学内決闘で受けるよ。セッティングはそちらに任せよう」


ロキの言葉にアレスが口を開く。


「立会人は」

「ソルでいいだろ」

「じゃあこっちは殿下かアテナを出す」

「ん」


おーい、ロキ早くしろー、とネメシスの声がする。授業の教材を運んでいたロキにブライアンが絡んだことを、プラムはネメシスに報告せねばならない。


「ロクでもない従兄弟を持ったものだね、プラム」

「あっはっはっは、昔私もああだったと思うとなんか腹立ってきた! 私もレイン様みたいな従兄弟が欲しかったよ!」

「はは、確かにレインは良い男だよ」


プラムが先に教室に戻り、アレスとゼロがロキが抱えていた荷物を一部取り上げる。これで歩きやすくなったろとロキに声を掛ければ、ああ、ありがとう、と彼は微笑んだ。



事の一部始終を見ていたナタリアがソルにこのことを告げた後、アテナからソルに学内決闘の立会人になるように招集がかかった。事前に知っていたので了承の意を伝えたが、いやはや、ロキに決闘を挑むとはブライアンは一周廻って笑えるくらいの馬鹿だ。


「ソル、この決闘どう思う?」

「ロキの圧勝でしょ。比べるべくもないわ」

「プラムも大変ね、従兄弟が愚か者だなんて」

「あ、語源それ?」

「そうよ。セネルティエの貴族って一部タロットから名前来てるから」


ナタリアとソルが2人で駄弁っていると、疲れ気味のカルが近くの席に着いた。


「カル、お疲れですね」

「ロキが学内決闘を受けたからな。俺も招集された」

「ソルを賭けての決闘だそうですよ」

「勝手に賭けんなっての」


ナタリアは笑った。カルも別にロキが負けるなんて思っていない。ロキがアーノルドのところまでこの問題を持ち込まないために学内決闘で早期決戦に持ち込んだことを悟っただけだ。


「そういえば、この時代もゲームになっているんだったか?」

「そうですね、一応」

「なんだその曖昧な言い方は」


カルが思い出したようにソルに問えば、ソルは肩をすくめる。


「攻略対象に惹かれなかったので放置してました。内容は一切知りません。由実子ちゃんなら知ってたかも」

「誰それ」

「勲――いまはハンジね。彼の前世の妹ちゃん。ロキが前世で考察動画作るときに情報集めに彼女の所まで行ってたわ」


前世でもかなりロキがフリーダムな人種だったことが見え隠れしているが、ソルの言葉にカルは苦笑いを浮かべるしかない。


「大まかな内容も知らないってこと?」

「うん、全く知らないわ。攻略対象の顔くらいならわかるかもだけど」

「なるほど。リガルディアの人たちはパッケには載ってなかった?」

「載ってなかったわね。顔が一致したのはアレスとエドワード、あとブライアンかな」

「あ、あの愚か者攻略対象? じゃあ俺様系かな」


何となくキャラクターの配置が分かってきたところで、彼女たちの前にも担任が現れたので、授業が開始される。3人とも会話を止めて、皆に合わせて礼をした。



「私は、ソルとロキの熱愛を知ってるからなぁ」

「ああ、そういえばナタリアからぜひ聞いてみたかったのよ。告ってくる前だったら絶対ロキが慌てたでしょうから何も聞かなかったけれど」

「いくらでもお聞かせしますよ。でも私が知っているロキはループの記憶をなくされた後なので、その周辺についてはわかりませんよ?」

「いいのよ」


学内決闘の準備が行われている。ソルとナタリアはそんなこと気にしない。どうせそのうち召集されるので今は気にしてもしなくても同じだ。本当はソルがどうにかせねばならないことではあるが、何分ソルの立場上どうこうするのが難しいのが現状である。きっと皆分かってくれるだろう。


ソルはナタリアに聞いてみたいことがあったのだ。今のうちに聞いておかなければ、きっと後回しになってしまう。


「昔のロキってどんな風に私に対応してたの?」

「そうですね、目に入れても痛くないってくらいに溺愛しておいででした」

「……それ、私先に死んだんじゃない? 嫌な予感しかしないんですけど」

「あ、ばれました?」


ナタリアのスれ方も相当だ。可愛らしい顔とは対照的に毒を大量にぶちまけるタイプに育っているあたり、裏側の真っ黒な事情を多く見てきたのだろうなと何となく察しが付く。


愛情に比例してソル様酷い死に方するので、ロキ様1回だけソル様とお付き合いなさらなかったこともありましたよ、とナタリアは言う。


「でも関係なさそうね?」

「はい、ソルの傍に居られないことがそもそもの死因ですから、ロキの関係者になるならないは関係なかったんですよね。それに気付くのに4回ほど使われました。もう死んでいくソルを見たくないと仰ってましたけれど、目を逸らすことだけはなさいませんでしたね」


ソルは知っている、ナタリアの抱えているループの記憶もなかなかにえげつないと呼べる類のものであることを。ロキは何も覚えていないと言うけれども、実際はそうではないのではないかと思ってしまうくらい夢がはっきりとロキの死を描き出すから、ソルもきっと何か知りたくてナタリアに問うているのだ。


「ロキは、いろんなものをソルに贈っておられました。アクセサリ、服、アミュレットや武器までそれはもう幅広く」

「願掛けに近そうね」

「そうですね。最初こそ遊びがありましたけれど、回を重ねるごとに実用的なものに変わっていって、飾り気のないものになっていきました。もちろんソルは何もお気付きになどならなくて、私も相談されたことがあります。なんでソルは記憶がないんだろう、って」


ロキもそんなに弱気になったことがあったのか、とソルは珍しいものを見るかのようにナタリアを見る。


「でも、こんな記憶なんてない方がいいなあ、とも仰ったんですよ。ソルのことを本当に大事になさってました。自分と同じ思いを抱いてほしいと願われた者と、そうではなかった者。私と貴女はそれだっただけです」

「……案外、私は覚えていたがったかもしれないけれどね」

「幸せを願われる人というのは、気付いてしまえばものすごい疎外感を感じてしまうものです」


私もそうでした、とナタリアが苦笑を浮かべる。きっとレオンとの一件のことであろう。


ナタリアの話によれば、ナタリアが知っている限りゲームでナタリアの情報が開示されたことはなく、けれど一部とはいえロゼたちは知っていた。そこの差はいったい何なのかについては置いておくとして、レオンとのことをこの段階で解決できたのは良かったとも言う。それが原因でレオンと敵対するというのなら、確かにさっさと知った方がよかったのかもしれない。


「ソル。貴女はとても恐ろしいことに、ロキという人間をいとも容易く変えられる。けれどそれは良い方向にではなくて、悪い方向に。貴女が死ぬことで何度もロキは変わってきた。仲間も亡くしたし家族を手にかけることもある。だからそれを知っている私は、たとえ貴女が嫌がっても言うわ。『生きなさい』」


ナタリアは知っている。きっと、ソルが知らないロキを知っている。ロキは人に頼るのが下手だと最初に言いだしたのは、誰だっただろうか。

ナタリアの本来の血筋を伺わせる圧に、やっぱりこの子はそういう立場をこなせる娘なんだとソルは改めて認識した。


「……逆に、ロキが死んだことで私はどうなったのかしら?」

「あー、まちまちですね。ロキが願ったからと言って国を最後まで見届けてやるんだと、賢者になったこともありました。その時は列強がだいぶ欠けていて、第8席に貴女が」

「わーお」


なんだかんだでどうあがいたって何かは変わってしまうのだろうなと、ソルは思った。

喜ばれる変化ではないかもしれないけれど、けれど、でも。


「……なんだかんだで愛情が重い?」

「その一言で締めくくるところ嫌いじゃないよ」


ソルの言葉にナタリアが笑った。


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