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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年後期編
233/376

9-12

2025/02/27 ロキの従兄弟の名前が出てきます。

拝啓、我が親愛なる従兄弟殿へ


麦の穂が風に揺れる季節になりました。帝国での暮らしはどうですか。

リガルディア王国は魔物の大発生が頻発するようになって、結構大変らしいです。王都にいるのであまり実感はないけれど。


とりあえず、俺は人刃になったよ。お前たちは何も教えてくれないから、俺たちは俺たちなりに手探りでどうにかやっています。

呼び起こした記憶に、気になることが沢山あるんだ。本当はお前に確認するのは間違っていると分かっているが、グリムよりはお前の方がまだ余裕があると思う。だからグリムにこの手紙のことは知らせるな。燃やすように。


今はソルとロゼ、ヴァルノスがメインで今後の事に対応を検討中。

あと、カル殿下も、もしかすると何かやることになるかもしれない。その時はまた知らせるよ。


報告みたいな内容しか書けてないけれど、たまには文通もいいね! また気が向いたら送るよ。その時は、ちゃんとグリムとも読めるような内容でな。

じゃあ、またいつか。


敬具


――ロキ・フォンブラウ



親愛なる我が従兄弟殿


水路の水がひんやりして気持ちいい季節になってきたよ。

帝国の友人たちを、君に紹介したい。朧げに思い出してきてはいるけれど、やっぱりまだぼんやりとしている。いつちゃんと思い出せるのかな。


ロキは人刃になったんだね。俺には進化はまだよくわからないけれど、でも俺にとっての王様は、ロキとカルだよ。

そうだ、この間の模擬戦で、俺とグリムのこと馬鹿にしてきた奴ら、全員ぶっ飛ばしたんだ。やってやった、よ。俺の方が、グリムよりいっぱいぶっ飛ばしたよ。


あ、でも、カミールにはまた木剣を折られちゃったんだ。相変わらずの怪力。すごい。

セオドアには、勝ったよ。セオドアの方が俺よりデカくなっちゃう前に勝っとかないと、って思って。

いや、セオドアの方が俺よりデカくなるからって、俺より絶対強くなるってわけではないけれど。


あと、サラ、うんと綺麗になってるから、大きなパーティで是非探してみてね。


早く直接君に会いたいな


――コンフィテオル・フォン・マルディサンデ



「ロキ?」

「ん?」


シドの声にロキは振り返る。手紙を読んでいたらしいロキに、シドはあら、とちょっとバツが悪そうな顔をした。


「どうしたの?」

「あー、いや、お茶でも、と思ったんだけどよ、悪いな、手紙読んでるとは思わなくて」

「いいさ。テオの手紙は短いし、内容も薄いしね」


従兄弟からの手紙を愛おしげに眺めるロキを見て、シドは苦笑する。内容が薄いと言いつつもちゃんと読んでいるのは分かり切っている。


「で、コンフィテオル様は誰の自慢話を?」

「カミールとセオドアとサラ嬢だな。カミールってテオと仲いいのは知ってたけど」

「まあ、ほらぁ。コンフィテオル様のこと化け物とか呼ばずに正面からぶつかってるのアヴソルート派じゃん?」

「まあ、なぁ」


リガルディア王国とガントルヴァ帝国では、別れて2000年、文化にも多少の違いが出てきていた。その中の有名なもののひとつが、”ガントルヴァ帝国はヒューマン至上主義だ”というもの。故に、貴族はヒューマンがほとんどで、平民の中でもヒューマンは優遇される傾向にある。


コンフィテオル、ロキの従兄弟。ウルドの息子、次男坊。

彼は、ヒューマン至上主義のガントルヴァ帝国の中にあって、明確にヒューマンとはいえない人物だった。


そもそもガントルヴァ帝国には、生まれてすぐに連れて行かれる大きな教会が存在しているのだが、そこでは何と、その子供が何という種族であるのかを分類できる魔道具が稼働しているというのだ。

コンフィテオルにはグリムガルという双子の兄が居り、グリムガルの方はヒューマン、コンフィテオルの方は竜種と人刃の混じり物、と判別されて、そこから2人の扱いはだいぶ異なったものになっているとロキは聞いている。


何かとグリムガルは優先され、贔屓され、コンフィテオルは逆境に近い所に立たされている。ロキ的にはそんなのくだらないしどうでも良いと思うし何でコンフィテオルを差別するのかとも思うが、こればっかりは、ヒューマンの打たれ弱さや恐怖の価値観によるものだと言われてしまえばそこで引き下がらざるを得なかった。


因みに、帝都に存在する城壁の内側には、夜間は基本的にヒューマン以外の種族の者は滞在を禁じられている。どこかの家の使用人であれば、滞在は許可されるが外出はできないなど細かい法整備があってはいるらしいが。


コンフィテオル、及びウルドは実はこの城壁の中への滞在が認められてはいるものの、基本的には、城壁の外にある別邸に滞在しているとも聞いたことがある。

これが帝国か。なんて国だ。


ロキはどこかの時間軸で城壁の中で寝泊まりした記憶がなくはないが、まあ、景色はとても良かった。ベネチアってこんな感じなのかなと思いながら、魔力で点けられている街灯の火を水が反射しているのを眺めていた記憶があるような気がする。ぼんやりとしか思い出せないのは、シドが言うには、16歳になったらすべてわかるとのことなので、あと1年ちょっと時間があるらしい。


さて、自分たちは今後どうなっていくのか、向かいたい未来は決まっているから、あとはそこに向かうだけだと言いたいところではあるが、それもかなわない。協力者とまともに連絡をしっかり取ることができるようになるのは、もう少し先なのだろう。それで間に合うのかと思わなくもないけれど。


まあ、こういう事はロキだけで悩んでいても何も進まないので、とりあえずシドの提案通り、ゆっくりとお茶でもすることにする。


「シド、今日のお茶何?」

「ん、おう、新しいブレンド試してみたくってな。飲んでみてくれ」


シドのレシピって不味かったことないよなと思いながらロキは早速シドが淹れてくれた紅茶に口をつけた。


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