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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部2年前期編
204/377

7-35

2025/01/20 新年あけましたおめでとうございます。加筆修正しました。

最も高い点数を叩き出したカルの班。そりゃそうであろうなあとロキは他人事のように考えていた。


あれだけの魔物を倒していたのである。

ちなみにだが、金額換算によるポイント以外にも、雇った冒険者の証言などから点数を当てたりもしている。ロキたちはその点で言うならかなり辛辣な審査員がいたことになるのだが――それでもやはりトップを爆走していた。それだけだ。


ロキたちの持って来た素材の大半が魔物との戦闘によって得られたものである。それだけ戦闘力の高いパーティだったことを示す。

カルはほとんど戦闘を行っていないため少々不服そうではあるが、そこは王族、耐え忍んでもらわなくては。


学園に戻ってきた数日後、夏季休暇前の終業パーティの場で、ロキはぼんやりとそんなことを考えていた。


解散後すぐに国許へ戻ると言い出したオレイエは、かなり女子から残って欲しいと願われていた。それを彼がにべもなく振ったのは記憶に新しい。


――俺が戻らなければ、まだ11歳の弟が魔物との前線に立たされる。あの子は弓使いであり、神々から恩恵を多大に授かってはいるが、それでもまだ、幼いのだ。俺は帰る。親友も待たせている。


この弟は11歳というところから間違いなくブランを指しているだろう。ブランと一緒に居たいなどとは思ってもいないし、ブランの安否をオレイエが心配するほど深い仲でもないという。けれど彼はやはり、幼い子供が前線に立つべきではないと考えているようだった。


「……」


自分は、立っていたくせに、自分のことを棚に上げてんじゃねえ、と。

ロキは、思うのだ。


現在のロキの服装は、白いレース付きのシャツ、黒地で袖口に金の刺繍のはいったコートを羽織り、黒のスラックス。ブーツではなくローファーを履いている。


オレイエに転移が使えるようにとあらかじめ用意していた転移用の魔導石を渡せば、そんなものは身に余ると受け取らなかった。

その代わり、万が一約束が果たされた時は受け取ろう、とも。

仕方がなかったので彼の目の前で転移術式を発動させるための魔力をこめた魔力結晶を買ってやった。きっとロキが作ったものは受け取ってくれない。購入した魔力結晶は受け取ったのでそのままオレイエはその結晶を使用して国へ転移で帰ったと思われる。


「……ロキ、辛気臭い顔するな」

「……セト」


セトはロキの傍までやって来て、その肩を軽く叩いた。

ロキが気落ちしているのはけしてオレイエが居なくなったからだけでないことを彼は知っている。


「まあ、ほら。親戚皆に挨拶回りだろ? 頑張れよ?」

「……はァ……」

「幸せが逃げるぞー」


ロキが頭を悩ませ、今もこうして現実逃避をしていた理由。

それは、ひとえに、夏休み中に親戚を回るぞとアーノルドからお達しが来てしまったためである。


それほどロキにとって苦痛なのか。ほとんど従姉妹に会ったことなどないだろうに、ともセトは思ったが、おそらくロキの中では面倒なことに分類されているのであろうことは想像に難くない。

恐らく、だが。

ループ中に何かに巻き込まれた結果であろう。


「ま、親戚そう多くねえだろお前?」

「ああ、うん、まあね。だが嫌なものは嫌だ。また変なもの抱えそうな気がするよ」

「それはご愁傷様」


ロキの方へちょこちょこと寄ってきたオートがそのままロキに突撃をかました。


「――!」

「チッ」


背中に跳び付こうとしたらしいが、足音で丸分かりである。ロキは一瞬早く振り返って、オートを抱きとめた。


「舌打ちされるいわれはないんだけど、オート?」

「ロキが気落ちしているから元気づけてやろうと思ってだなあ!」

「そしてあわよくばロキの手触りの良い絹のような髪に触ってみたかった?」

「なななな何を言ってるのかなセト君!! そんなわけないじゃないか!」


あ、そうなんだー、とロキが生温かい視線をオートに向けた。

ちなみに、ロキの髪の触り心地がいいというのは全く以って否定できていない。つまりそういうふうに見られているということか、とロキは思った。


「言えばいつでも触らせてあげるよ?」

「ほんと!?」

「ああ」


やったー、と喜ぶオート。やはり小人族だなあとロキは思う。彼らは総じてキラキラしたものが好きである。


「そういやロキ、今日髪上げてるんだな」

「……ああ、うん」


今日のロキの髪型。

いつもは髪を下ろしている。オールバックが好みというロキを何とかシドが説き伏せて髪を下ろさせているのだ。ロキの髪をオールバックにしてしまうととにかく顔が良いことが前面に出て来るのでシドが髪を下ろして可愛らしく見せるよう尽力しているのである。


何と言っても、ロキの目はツリ目だ。そしてその目が恐らく切れ長になりそうな雰囲気が既にある。顔立ちはアーノルドに似ているので精悍な顔になりそうな予感がある。ロキもシドも将来のロキの顔を知っているので超絶美形の悪役顔になると知ってはいるのだが。


その雰囲気は既にあるのでちょっとシドによって甘めに仕上げられているのが普段のロキなのである。前髪は長めに切ってあった。


それを今日は前髪を一部残してのオールバックにしているので、少し甘めの悪役顔が前面に出てきている。いつもよりも迫力があるのは、前髪で隠れることが無くなったロキのぎらついた瞳がよく見えるからかもしれない。


「……ロキの威圧感やっばーい」

「……そんなに?」

「うん、言葉遣いと顔が合ってない」

「それは酷くね??」


オートの軽口にロキは笑いながら返す。

ロキが顔立ちの関係で口調をあえて柔らかくしていることを知っているので、余計に。


「……でも、なんかそっちの方が似合ってるよ!」

「……それは、素直に嬉しいよ」

「なんかね、しっくりくる!」

「……はは、なんだそれ」


オート・フュンフは回帰を覚えていないらしい。きっと回帰についての記憶か何かに触れての発言なのだろうが――ロキは苦笑で返した。


ロキの周りにいた者たちが驚いていた。あのロキ様が笑った、と小さく驚嘆の声を上げる女子生徒もいる。ロキは普段表情を作っていた。今は、純粋な感情の露出をそのまま表に出している。

かつかつかつとヒールの音を響かせながら近づいてくる者がいた。それが誰なのかロキはよく知っている。


「ロキ兄様、こんにちは」

「こんにちは、トール」


紫色の髪の少年が瑠璃色の瞳を向けて笑った。服は少し可愛らしい装飾に纏められているが、トールの顔を思えばよい塩梅の可愛らしさ。と、後ろにぞろっと見覚えのある人間を連れていたのでロキは驚いた。


「トール、()()とは知り合いか」

「ええ、生徒会に入ることになったので、先に顔は合わせておりました」


トールの後ろにいたのは、ホークジェガだった。というかその後ろにはホークジェガの赤よりずっと色の薄い、桃色にさえ見える髪の少年がいた。おそらく兄弟である。顔立ちがよく似ていた。


「書記のホークジェガ殿と、会計のイーグルヴェット殿です。先輩、こちらは兄のロキです」

「……よう」

「はぁ……僕は3年のイーグルヴェット・ツァル。弟が申し訳ございませんロキ様」

「2年のロキ・フォンブラウです。気にしておりませんのでお構いなく」


ロキはホークジェガを見て小さく笑みを浮かべた。

気にしていない。ああ、まったく。

気にするものか。なんといっても気に入っているのである。


「……弟がご迷惑をおかけしてないといいのだが……」

「大丈夫だと思いますよ? ロキ兄様の目が玩具を見つけたときのような目なので」


トールもズバズバ言うように育ったなあとロキは思う。ホークジェガは恐らくロキの事を好ましく思っていないが認めてやらんこともないというくらいに見ているのではないかと考えている。

それはつまりホークジェガもかなりプライドが高いことを指す。同い年なのにホークジェガの反応の薄さがちょっと寂しいものだが。


「ロキ様、御歓談中失礼しますー」

「……あ、エドガーか」

「どうも」


ロキは灰髪の少年を見る。エドガーの灰髪はライオンか何かかと思うほど立っていた。これは、とロキは笑みを浮かべる。


「属性がいよいよ強く出てきたようだね」

「はい。もう金属製の櫛じゃないとぶっ壊しますね」

「大変そうだね。魔力が髪にいきすぎているんだろう。魔力操作を重点的にやってみて」

「はい」


エドガーは挨拶をしに来ただけなのだろうか、はて、とロキがエドガーに視線をちゃんと合わせるとエドガーは小さく笑って、これを、とロキに何か差し出した。


「……これは」

「……思い出させてしまって申し訳ないのですが、先日の合宿で、奇怪な巣のようなものに出くわしました。その一部です。術式を避けて取って来たので手掛かりになるかはわかりませんが」

「……いや、むしろありがたい。御苦労だったね。けど、あまり無理はしないように。エドガー、君は打撃に極端に弱いんだから」

「はい、お気遣いありがとうございます」


ロキはトール、イーグルヴェット、ホークジェガに挨拶をしてエドガーと共に壁の近くへと向かった。エドガーとはそのまま喋ってパーティを過ごすことになりそうだ。ソルが近付いてきたのでエドガーが挨拶をして、ロキがソルにダンスを申し込んだ。


中央に出るとウェンティが踊っていた。目が合ったので軽く挨拶だけして、曲が始まる。


小気味よい明るい曲に合わせて生徒たちは踊った。曲が終わった後別の生徒と踊る。ロキはまた目が合ったのでウェンティと踊ることにした。


「ウェンティ、シャルウェーダンス?」

「あはは! いいよ!」


リガルディア王国は男女のパート分けをあまり正確にはしていない。というか、男女両方のパートを踊れる者が多いのだ。ウェンティと踊っている最中、ソルが踊っているのが見えた。


「「あ」」


横目で確認した時、ロキとウェンティの声が重なる。つい顔を見合わせてしまった。曲が終わって互いに礼をして、ロキはソルの許へ向かう。


「ソル、ちょっと休まない?」

「そうね」


ロキがソルに声を掛けると、ソルはそれに応じてきた。ソルの歩みはしっかりしている。

壁際に来て中央を見やると、ダンスを踊る生徒はまだまだいるようだ。ちょうどユリウスがヴァルノスにダンスを申し込んで中央に出て行くのが見えた。


「……ロキはもう踊らないんだ?」

「足を捻っておいてよく言う」

「あら、いつバレたのかしら」


互いに笑い合って、お互いをダンスパートナーに誘いに来る生徒からの盾にして残りの時間を過ごした。

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