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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
幼少期編
18/368

1-17

2021/07/21 大幅に修正しました。

「……こんなもんかしら?」

「そうですね」

「ふむ」


ソルとヴァルノスが持っている情報をある程度共有してもらい、今後に備える。ロキは今後の事に思いを馳せた。


「いつでも連絡が取れるようにしておきたいですね」

「お母様たちに転移ゲートを設置してもらうのは?」

「そんなことして大丈夫かしら?」


子供たちの会話が大体終わったことを察した母親たちが近付いてくる。それに気付いたソルとヴァルノスが早速母親に飛びついた。


「お母様、転移ゲートで行き来がしたいです!」

「ロキ様の今後の為にも、お願いします」

「まあ、なんてことを言うの」

「うちは大丈夫だけど、フォンブラウ家の意向を先に聞かなきゃだめよ」


えーっ、とソル言いつつもロキの方を見る。ロキは母親に抱き締められていた。ロキは正面から抱き締めて来る母親を見上げている。


「えっと、母上?」

「……ロキちゃんの事情を分かってくれる子たちだったのね」

「……はい」

「よかった」


ロキをそっと離し、スクルドはヴァルノスとソルを見る。ロキはスクルドが少し晴れやかな顔をしていることに気付く。ああ、心配してくれていたんだな、と――やっと、肌で感じられた気がした。


「カイゼル夫人、セーリス夫人、子供たちの言う通り、転移ゲートを設置しましょう。タウンハウスだけなら、問題はないと思うわ」

「それもそうですね」

「そうですね。でも、私あまり魔力操作は得意ではございません」

「そこは大丈夫、私がやるわ」


母親たちは大体同世代だ。カイゼル夫人がこの中では一番年上だが、それでもスクルドの3つ上、王立学園出身者が大半である貴族は大体が先輩後輩にあたる。カイゼル家が伯爵家なので、集合場所はカイゼルに決定し、転移ゲートを設置して茶会は解散した。



カイゼル家との茶会から数日後、ロキはアンリエッタから魔力判定をしようと言われて、きょうだいと共に庭に出ていた。フレイとプルトスが魔力を発現した話は聞いていたので、上に合わせたのは分かる。スカジもそろそろ魔力を発現するころだとロキは覚えているので、丁度良い時期なのかもしれない。


中庭でプルトスとフレイが既に待っていた。ロキがやってくると、フレイはロキに笑いかけ、プルトスはふいと顔を背ける。ロキは別に気にしていないが、使用人たちはハラハラしているようだ。


アンリエッタの授業はまだまだ始まったばかりだが、呑み込みが一番早いのはロキだった。ロキが転生者であることを知ったアンリエッタは、ロキについては自由学習を多めにしつつ質疑応答形式で授業を行っている。プルトスよりも進みが早く、フレイやスカジよりも魔術的なセンスに優れていることが伺えるロキ。アンリエッタとしては、公爵になってしまったことで研究をする暇が無くなってしまったアーノルドのようにはなってほしくないと思うのだ。


ロキは理解が早いので、ついでにアーノルドとの思い出も聞かせている。ロキは、本当に、アーノルドの事を慕っていた。プルトスは自分の母親が第2夫人であることに納得がいっていないのか、はたまた単純にロキの加護と相性が悪すぎるだけなのか、とにかくロキに絡むのだ。しかも、喧嘩絡みで。


フレイがいるときはあまり絡まないのだが、スカジがいるとこれまた絡む。スカジはどちらかというと善なる神の加護持ちであるため、プルトスの意見に流されやすいらしい。ロキはそれも理解していたため、スカジとの関係を壊さないようにうまく立ち回って余計プルトスとの仲が拗れていた。


「お待たせしました。それでは、魔力の属性判定をしましょう」


アンリエッタが庭に出て来ると、魔力判定をするために呼ばれたプルトス、フレイ、スカジ、ロキと、見学のトールとコレーが並ぶ。プルトスとスカジが青い髪、フレイが赤い髪、ロキが銀髪、コレーが茶髪であるのを並べてみると、フォンブラウ家が火を扱う家門であるというのに赤毛の子供が少ないことが分かる。大体は髪の色で使える属性がはっきりしているのだ。ただし、実際に発現するかどうかは、属性判定をするまでわからない。


アンリエッタが虚空から無色透明の石を取り出した。フレイとプルトスは既にそれが何であるのか聞いているようで、スカジがあれは何とフレイに問いかけて、属性判定の魔石だとフレイが答えた。


「プルトス様、フレイ様、スカジ様、ロキ様には魔力の属性判定を受けていただきます。属性による優劣はありません。この透明な魔石に魔力を流すことで判定を行います」


魔力の扱い方を知らないはずのロキがこの場に居ることに疑問を抱いたのはプルトスだったようで、ロキの方を見て、フレイに何か問いかける。フレイは何か答えてロキの方へ歩き出した。


「ロキ、お前はもう魔力が使えるの?」

「いいえ、使えませんよ」

「魔力が使えなくても属性の判定はできるのか……」


フレイは興味深そうにロキを見ている。ロキは自分の状況をある程度理解しているのでフレイが何を見ているのかは分かっているのだろう――アンリエッタはそう思った。


「というより、ドウラ公の封印って結構雑なんだと最近分かってきました」

「ああ、うん、それは思った。イミット族は魔術苦手だって聞いてたけど、本当なんだな」


10歳前後の子供と6歳になったばかりの子供の会話とは思えない言葉が飛び交い、アンリエッタは苦笑を浮かべる。ロキは転生者だからまだ理解の範疇にあるとしても、だ。フレイは純粋に10歳の子供のはずなのだが、魔術に対しての理解度が異常に高い。流石フレイ神の加護持ち、という事だろうか。アンリエッタは属性判定の準備を終えて、プルトスに声を掛けた。


「準備ができましたよ。まずはプルトス様、魔力を魔石にかざしてください」

「流し込むのではなく?」

「フォンブラウ家の、というかアーノルド閣下のお子さんたちの魔力量に耐えられるような高級品ではありませんので」

「流すとどうなりますか」

「砂になりますやめてください」


クスッとロキが小さく笑う。アンリエッタには十分な資金が与えられているはずだが、倹約家なのは悪いことではない。アンリエッタは平民出身だ。今までもそこまで魔力量の多くない子供たちの指導に当たってきたのだろう。


「本来は魔力を石に流すのですが、プルトス様やフレイ様の魔力量だと属性判定用の魔石が先に壊れてしまいます。多分ですがスカジ様もでしょうね」

「壊れたら新しいの買ったら?」

「ひとつ大金貨1枚分するものをそう簡単には買えません」


プルトスの言葉にアンリエッタが答える。ロキは驚いた。大金貨と言えば、100万に相当する金額だ。アンリエッタが買い渋るのも分かる――フォンブラウの子供には、多分この感覚は分からないが。


「大金貨1枚なら、壊しちゃった奴のお小遣いから出せば?」

「ヒエッ……」


公爵家の子供のお小遣い怖い、とアンリエッタがぼやく。ロキは少し考えた。

プルトスとフレイの周りからの評判をガルーやリウムベルから聞いたことがあるが、その時はプルトスが魔術の天才、フレイが剣の天才と呼ばれていた。アンリエッタはあまり出費を出したくないのだろう。ならば、煽って誘導してやればいい。


「あらあら、プルトスお兄様ったら、アンリエッタ先生の私物をわざわざ壊したいと言っているようにしか聞こえませんよ」

「はあ??」

「壊さないでって遠回しに言っているのに、壊れたら買えだなんて、財力自慢ですか、富の神の加護持ち様?」

「なッ……!」


ロキの言い方にカチンときたらしいプルトスがロキに怒鳴り返す。


「なんだその言い方は!? 僕は思ったことを言っただけだ! 一意見でしかないのに何故そこまで言われなければいけないんだよ!?」

「話聞いてますかぁ??」


ロキは口元に手を軽く当てて、あからさまに軽蔑した視線をプルトスに向けた。


「アンリエッタ先生は、属性判定用の魔石は高価なものだと仰いました。大金貨1枚って価格まで出してくださいましたよ? アンリエッタ先生にとってはこれが高価なものなんです、まずそこを理解してくださいね?」

「ッ……」


プルトスも頭では分かっているのだろう。ただ、ロキが煽ってしまったから引っ込みがつかなくなっただけだ。アンリエッタは流石にロキを止めに入る。


「ロキ様、そこまで言わずとも」

「駄目ですよアンリエッタ先生。これで学園に行って苦労するのはプルトス兄上なんだから! 加護持ちが加護に振り回されるってわかってたって、どこまで加護の所為って皆が思うかどうか」

「それは……」

「しかも、フォンブラウ家って結構厳格なんでしょう? こんな叩きやすい案件大人だってほっとかないです。俺、父上の足引っ張るやつ大嫌いなんで」


ロキが男の口調を隠さず言ったことでアンリエッタはロキが割と本気でプルトスのためを思ったうえでアーノルドの事も天秤にかけていることを悟った。頭がかなり回るのだろう。そしてついでに思考がかなり散らかるのだろう。ロキは自分にできることをやろうとして、自分自身が結構加護に振り回されていることに気付いてもいないようだ。こんな嫌味な言い方しなくたってと思えるから、そこが恐らく加護に振り回されている部分なのだ。ロキもかなり加護のランクが高いとアーノルドから聞いているので、ロキは大事なところでこんな調子なのだろう。


「……プルトス様、プルトス様の言う事も尤もですが、私としては、この魔石は壊さないでいただきたいです」

「……分かりました」


ロキに完全に論破された形になってしまったが、プルトスもここが落としどころと考えたのだろう。アンリエッタの言葉に乗ってそのまま話題を終わらせた。


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