5-閑話2
ネタをぶち込みました。楽しかったです。反省はしている。
「はっぴーはろうぃん!」
ハロウィンというのはもともとケルトの祭りである、という聞きかじった程度の知識しかなかったロキにとって、こちらなりのハロウィンを楽しむために本を大量に読み漁ったのはいい経験になったといえる。
準備からまず大変だった。それは、そう、本格的なコスプレ衣装を作り始めたから収拾がつかなくなってしまっただけなのだけれども、便乗したカルとエリオ、セト、ソルによって上流貴族にコスプレ衣装が配られるという混沌を巻き起こした。
ロキ自身はネタに走りたがったのだが吸血鬼やってろとソルに押し付けられたので仕方がないからとマントに魔力を通して羽のように広げるなど妙なところに凝った作りにしている。
ソルはゴスロリをロキに押し付けられた。お前がフリフリ嫌いなのは知ってるからなあ、と意地悪くロキが笑った時、なんでそんなに生き生きした表情を悪役顔でするかなあ! とレインに突っ込みを入れられたのは御愛嬌。
カルはネタを着たがったので本当にネタに走られた。
♢
「ねえロキ」
「……」
「なんであんたカル殿下にこれを着せたし」
「本人が着たがったからな」
ソルとロキの目の前には醤油のパッケージのデザインをそのまま移した服を着たカルがいる。赤いキャップのアレである。
「……魚の方がよかったか?」
「魔物に寿司のコスプレさせといてそこまで求めるの」
「だってカルの魔物白いんだぞ? コメに見えないか?」
「見えてなかったらこんな突っ込みいれねえよ!!??」
ちなみに当のカル本人は楽しそうなのでよしとロキは勝手にほかのメンツのもとへ行ってしまう。ソルは慌ててそれを追いかけた。
「セト、お前はこの一式を着てこれを被れ。後で俺も似たような恰好するから」
「おー」
「セトがレゴの人に」
「よしバルドル、メイクは終わってるな。後はこれを咥えてこれを被れ。Wanted!」
「うぉんてっど!」
「某有名海賊団!? ほかのメンツは!?」
「クルト、バンダナ巻いてこれ持て。お前の握力と顎に期待してる」
「ものすごく語弊がある気がする!」
「2人目いた!」
「シスカ、もうそこまで着てたのか。じゃああとこれを被せる」
「いつまでかがんでればいいの?」
「ジャンプ以外での移動は許さん」
「話聞け」
「PIX〇Rのライト!? もはや顔すら出てない!」
「ロキ様これつけてー」
「了解。これは良い死体が出来上がりそうだな」
「背中に包丁、まさかヴァルノスそのネタをユリウス様にやる気なの……!?」
「さあロゼ、これを着ろ」
「私にこんな色の薄い妖精みたいな服似合うわけないでしょおおおお!!」
「カメラが欲しい!」
「ソルの裏切り者おおおお!?」
「モンスターの仮想組が増えてきた」
「そうだな、レイン、これを着ろ」
「何着せる気、暑いこれもこもこしすぎ!」
「ここでなぜ羊」
「レオンはこれ」
「目の前が黄色いんだが!」
「ガ〇ダム!」
「エリス、頼まれてたやつ」
「わーい! ありがとうロキ様、これでホットドッグができる!」
「ロキより強烈な子がいた!」
突っ込みが追い付かなくなりそうだとソルが言う。途中で放棄したくせにとはロゼの言である。
エリスの魔物はネタに走られてホットドッグにされていた。ばっちり記録を残されているあたりエリスはその手のネタにも強かったのだろう。
あとは、と言ってロキはエリオのもとへ向かった。カルとともにタリスマンを作っているのだが、皆の無病息災を願って、そして来年の豊穣を願って。
「皆で一個大きいのを作るとかは?」
「色紙の寄せ書きみたいなのか?」
「そうそう」
ソルの提案にロキはふむ、と言って少し考えると、アイテムボックスから木を取り出した。
「これ?」
「ああ、霊木だ。ちょうどよかろう」
「じゃあ私からいいわね?」
「無論だ」
ロキは皆に呼び掛けてくるといって去っていった。ソルは魔力で小さく家紋を刻む。願いを思い描きながら。
♢
願いを書くなんて七夕みたいねと誰かが言って、前世がある人結構いるわねとソルがつぶやいた。そうだがとロキが返せば、知り合いだったんかいと突っ込みを入れる。
平穏無事な一年を、願い、歩もう、と、カルが言った。
「……殿下、良いセリフ言ったところ悪いんですが、そのかっこじゃネタにしかならないです」
誰かこの醤油殿下をとめろ。