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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年後期編
139/368

5-22

2024/06/17 加筆修正しました。

翌日、村の屋台にて携帯食料などを買い込んだロキたちは村を出ていよいよ山道を登り始めた。他国ではリガルディア王国の不可思議な風習として知られるのだが、荷物を持つのはもっぱら空間属性魔法【アイテムボックス】が使える者であり、必然的に貴族が荷物持ちをすることになるのだ。


今回ロキに関しては単独で全員分の荷物を持つことも可能であることが分かっていたためむしろ最後に荷物を回されていた。ソルやルナ、エリスも空間属性に適性があるため分かりづらいが、空間属性自体は光と闇属性のどちらかに適性が僅かでもあれば基本的には持つことが可能であるものの、本来は闇属性に含まれている。その為、闇属性に適性が振り切っているナタリアや、セト、さらに魔力量でゴリ押ししているロキは【アイテムボックス】の容量が多いのだ。


荷物を担いで移動する必要が無いというのは移動において大きな利点となる。

山道を歩いていくにあたっては魔物の出現の危険もある。フェンは最後尾を付いてくることになった。戦闘は基本的にリズやルガルのパーティが行うことになっており、生徒たちが戦闘することは基本的に想定されていない。


「ということで、最後尾にはルガルのパーティとロキ様のフェンが、先頭は私のパーティが行くことになります。遅れるのはルガルたちがいるからいいけど、私たちの前には出ないこと。そんなに高くないけど落ちたらおしまいだからね」


リズは言い聞かせるように生徒たちに声を掛けて、山道を登り始めた。

ちなみに、そこまで高くないといっても600メートルほどはあるため、十分死亡の可能性は高い。死なないのはそれこそゼロやシドくらいなものであろう。あとは飛行ができる数名か。


「フリオ兄は結界張るのを重点的にやってくれ」

「分かってるぞぉ。ルガルも気を付けるんだぞぉ」


ルガルとリズからすると生徒たちに仕事はないらしい。が、ハインドフットがチラッとロキを見たので、ロキは何となく察した。


(これ俺も結界張った方が良いんだろうな……)


ロキは結界の準備をする。いろいろ準備するに越したことはない。


一方ハインドフット。


(あらら、フォンブラウのやつ、何もしてない確認をしたらなんか始めちまった)


アイコンタクトなんて、ロキだってできないのであった。




目の前に魔物が現れれば素早くリズのパーティが切り捨てる。基本的には彼女らは採集をメインにこなしているパーティであるため、戦力的に考えるとそこまで強くないが、そこはアイテム等で補ってリズたちは立ち回っていた。


ロキだって伊達にフォンブラウ領でブートキャンプに参加していたわけではない。そこんじょらの冒険者に後れを取るほど弱くも判断力が鈍いわけでもないのである。言ってくれればサポートに回ろうかとも思っていたのだが、そこは大人を舐めるなと言わんばかりにロキが何かする前にリズたちが自分たちで動いた。ここまでしてくれるなら安心だと思ったロキも、構えていたのは最初の方だけで、途中から他の生徒に混じってリズたちを観察していた。


山道でよく遭遇したのは灰岩狼(グレーロックウルフ)という魔物である。灰岩狼(グレーロックウルフ)という魔物は、岩場に棲むことに特化した狼型魔物だ。非常に硬く、剣は通らないので基本的に殴打が最も有効である。


現れた灰岩狼(グレーロックウルフ)にリズが舌打ちした。


「またかい!」

「素材は高いけどなあー」

「そんなこと言わないの」


素材にできるように倒すことが難しいため、素材は高額なのである。しかも防御に秀でた素材のため、求める客は多いという状態。これが剥ぎ取れないのは実にリズたちからすれば辛い事だった。生徒の護衛がメインのため、今回は剥ぎ取りの時間などは一切見積もっていないのだ。


「……剥ぎ取りをしたいのですか?」

「ロキ様、気にしなくていいわ。ちょっと最近魔物が強くてギルドのショップではポーション買えなくてフリーマーケットに足伸ばしたらロキの店に当たったっていうか何言ってんだ私」


ロキはふ、と笑みを浮かべる。ロキたちの店にリズが当たったのはそういう事情があったためらしい。ソルたちからすればいい金蔓だろう。ここはロキ的にはリズのやりたいように手伝うのもやぶさかではなかった。


「リズさん、剥ぎ取りできるようにしておけばいいんですよね?」

「えっ」

「はい!」

「あ、こら!」


ロキの提案に戸惑ったリズと、乗ったパーティメンバー。ロキはリズたちが相手している魔物たちを見た。灰岩狼(グレーロックウルフ)の6匹の小さな群れであり、しかしその1頭1頭の身体は2メートルほどある。


「ロキ君」

「すぐ終わりますよ」


フォンブラウ領には灰岩狼(グレーロックウルフ)の亜種である黒鉄狼(アイアンウルフ)がごろごろしている。群れの数も大規模で30匹から50匹ほどを率いるのが常である。

ロキも見たことがあるが、ものの見事にアーノルドに焼き払われていた。群れは危険だからだ。


狼型の魔物は基本首自体はそんなに硬くない。ロキの剣速であればおそらく切り飛ばすことができるだろう。虚空から刀を取り出したロキはゆっくりと踏み出し、リズたちより前に出た。


「ロキ」

「すぐ終わる」


カルが呼び止めるがロキはそのまま灰岩狼(グレーロックウルフ)に近付いて行った。リズが一度押し返して距離を取ったところで、灰岩狼(グレーロックウルフ)は動きを止め、ロキを睨みつける。


「……」


リズたちが灰岩狼(グレーロックウルフ)に対して決定力に欠けるのも事実なのだが、そもそも灰岩狼(グレーロックウルフ)は良い状態の素材の入手が難しいことで知られる。ロキが何をしようとしているのか分からないリズは群れから目を離さず構えていた。

リズの獲物はショートソードと丸盾で、堅実な立ち回りを目指していることが伺える。


ロキが鞘から刀を抜き去った。

直後、灰岩狼(グレーロックウルフ)が1頭、ロキに噛みつこうと跳びかかる。ロキは口端を上げて笑んだ。

刀が一瞬で振りぬかれ、ロキに跳びかかった灰岩狼(グレーロックウルフ)の首が飛ぶ。


それだけではなく、他の5頭の灰岩狼(グレーロックウルフ)の首も飛んだ。それを見たハインドフットが苦笑した。

ここまで簡単に首の骨を断つなど、どれほどの力があればできるのかという話だ。


「な――」

「すごい……」


ロキはあっさりと6頭の灰岩狼(グレーロックウルフ)を仕留めると、血抜きなどはせずにそのまま骸を【アイテムボックス】で亜空間に仕舞い込んだ。


「……お待たせしました」

「……はは。流石にフォンブラウ出身はすごいな……」


リズも苦笑を浮かべる。フォンブラウ公爵領には強い魔物が多いので、そこで生活する冒険者も化け物揃いと聞くけれど、時には彼らを率いて出撃する貴族はさらに化け物のような強さを誇ると聞く。


「あの母とあの父の子ですので」


父親の方が実はヤバい代物だったりするのだが、ロキはまだそのことは知らなかったのでここでは置いておく。

スクルドの方は有名なので、王都に滞在していれば一度は話を聞くことができる人物である。


「目的地に着いてから解体を行うということでいいですか?」

「ええ。ていうか、分けてくれるのね」

「繋ぎ賃だと思っていただければ」


ロキの強さの一端を見せつけられたカルやセトはぽかんとロキを見つめていた。ソルやロゼに押されて再び歩き始め、ゆっくりと再び歩を進め始める。


フェンがいる時点でなんとなく皆分かってはいたけれども、ここまで凄まじいものだったとは。

大体魔術の時間だって武術の時間だって、彼はトップの成績を誇って前期を修了している。その実力は伊達ではなかったということだ。


「……まだまだ俺たちは、ロキの実力の氷山の一角程度しか目にしていないのかもしれないな……」

「最終形態ラグナロクの時点でお察しですよ?」

「ラグナロクって言っても別に世界を滅亡させるわけじゃないんだからそこまでは……」

「ファンブックにはロキがものすごく力を抑えた結果だって書いてあったけどね」


転生令嬢たちはそんな言葉を交わし始めた。

カルはそんなロゼたちの声を聴きながら、息を吐く。


そこからは一度も歩みを止めることなくロキたちは鋼竜の巣にまで辿り着いた。


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