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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年夏休み編
107/377

4-7

2023/07/18 加筆修正しました。

「フレイより切り口が目立つ。やり直し」


「プルトスより処理が下手。やり直し」


「スカジより踏み込みが浅い。やり直し」


「ロキより思い切りが悪い。やり直し」


「トールより体重が乗っていない。やり直し」


「コレーより数が少ない。やり直し」


アーノルドは獄炎騎士団のメンツとロキたちが狩って来た魔物を並べて眺めている。

テウタテスとアーサーも一緒にそれを眺めていた。


「フレイは技術、プルトスは解体、スカジは度胸、ロキは判断力、トールは身体の使い方、コレーは総合した速度。それぞれの手本にされて可哀そうな子たちだが、皆嬉々として昨日までのブートキャンプに行っていたんだろう?」

「そうです父上。あの子たちはやはり良くも悪くも脳筋ですね」

「魔術脳筋がいつから物理脳筋になったのやら……」


それはきっとアンタの世代だ、とアーサーに言う事はしないロキである。

フレイはその切れ味の悪いはずのバスタードソードですさまじい切れ味を出す。おそらく斬属性が突出しているのであろう。これは純粋な切断技術に補正を掛けてくれるだけのものであるため、元々フレイの技術が卓越していることを表している。


プルトスは杖で戦う、つまり魔術メインの後衛なのだが、解体が兄弟の中で最も手馴れている。主にフレイのせいだが。フレイは切り捨ててそのまま次の獲物に行ってしまうことが多いので致し方ない。


スカジは言わずもがな、その一点集中型の攻撃は女性であろうともなかなかの威力を乗せたものになる。


ロキは兄弟の中で最も切れ味がよく、さらに重量がかなりかかる武器であるため重さで斬ると見せかけて当たっただけですぱすぱ切られる魔物も多かった。ロキは魔物の骨に当たって刃が止まるようなへまはしない。


トールはハンマーを横薙ぎに振っていることが多いにもかかわらずすさまじい威力を見せつけ、さらに雷を纏うことで殺傷に特化している。


コレーに関しては小物の魔物ばかり狙いつつも解体も手早く済ませていく判断力やら技術やらが総合的に高いと評価を受けていた。


ロキは優先的にランクの高い魔物を処理していたため、個体数は多くない。30体前後である。

プルトスも解体ばかりやっていたのでフレイと合わせて92体ほど。スカジは53体、トールは雷で焼失したものも合わせると60を超えているだろう。コレーは小型の物ばかり狙っていたので100を超えていた。

コレーより数が少ないと言われていた騎士には瞑目するほかなかったロキたちである。


「というかロキ、お前全部ハルバードで捌いとったな」

「……学校にバルフォットの子息がいまして。ナイフを扱うのはすべて彼に任せておりました」

「ああ、バルフォットか……」


領地が近いこともあるだろうが、若くして騎士団長になったセトの父親を知っているのだろう。アーサーが遠い目をする。

そんなアーサーたちの所へ、目元を隠す仮面を着け、オレンジの髪をなびかせた上位竜人の少年が姿を現した。


「アーサー、テウタテス」

「ああ、ルルジスか」

「どうした」

「ロキを借りたい」

「……」


アーサーたちがロキを見る。ロキは首を傾げてみせる。構わない、という意思表示とちゃんと受け取ったアーサーがルルジスに頷く。

ルルジスは仮面を外してロキの方へやってきた。


「やあ、ロキ」

「お久しぶりです、ルルジス殿」

「そう畏まるな」


ルルジスの金色の瞳を見てふとドルバロムを思い出したのは御愛嬌というもの。ロキは小さく笑んでみせる。


「リオよりも赤いんだね、その目」

「へえ。見えるんだ」

「色を見るのは得意でね」


ロキの言葉に、ルルジスは笑みを返し、ロキを抱きしめた。


「?」

「無事に帰って来た。生きている」


ルルジスにとってはとんでもなく心配する何かがあったのだろうな、とロキは思う。でなければこの対応はあまりにも。


「ドルバロムから、ヘルハウンドの群れがいると聞いた時には恐ろしくて敵わなかったぞ」


あ、それ皆で狩りました。

ロキはそんな言葉を飲み込んだ。


魔物の危険度表記は種族の指定ランクと個体のランクを並べて呼称する。個体が多い場合は種族のランクや条件がある種族ならばその条件に照らし合わせてランクには多少の変動が起こる。


ヘルハウンドは個体はCランクの魔物なのだが、群れの大きさからいっておそらく今回狩って来たものはCAランクほどだったはずである。


ものともせず水属性の広域殲滅魔術をプルトスとスカジと共にドカドカ撃ちまくっていたことについてロキは口をつぐんだ。


「ルルジスは光と雷だから、トール君が無事なら伝わるはずなんだけどなぁ」


リオ、もといドルバロムの言葉にルルジスが小さく舌打ちした。ロキは苦笑を浮かべる。上位竜人にしては下位世界の人間の機微に聡いのが光竜と呼ばれる種であることをロキはドルバロムやアスト、デスカルから聞いて知っていた。


「ドルバロム、余計なことを」

「いやー、だってさー? ルルジスがハラハラして見守ってるの見てて笑えたんだもの」

「闇竜であるにもかかわらず人間と言葉のキャッチボールが上手くいくことを恨めばいいです」


ルルジスがその手に大きな長柄斧を振りかぶったのを見てドルバロムが逃げの態勢に入った。


「やっぱり上位者同士だと効くの?」


ドルバロムに問いかければ首を左右に振ってドルバロムは答える。


「空間断裂でもしない限りダメージはないよ」

「その余裕がムカつくのだ! さあ大人しく刻まれろノーダメージだろう!」

「ダメージは無くても痛いもんは痛い!」


上位竜人2人が追いかけっこを始めたフォンブラウ家の庭。

ロキはアーノルドの方へ歩を進めた。


「父上」

「どうした、ロキ」

「街へ降りてもよろしいでしょうか」

「む? 何をしに行くのだ」

「少々ギルドへ顔を出そうかと」

「ああ、ならば全部持って行きなさい」

「はい」


アーノルドはこの後みっちりこいつらを扱くのだ、と目を煌かせながら言い放ち、ロキはその言葉にびくついた騎士たちに慈愛の籠った視線を向けた。


「父上は最近魔物への対策や国防について精一杯気を張っておられました。ストレス発散に丁度いいではありませんか。御安心を、父上には俺たちのように一撃で半径10メートル範囲もの地面を陥没させる腕力はありません。お前たちはただでさえミスリルを身に纏うことで強化魔術を鍛えているのですから耐えきりなさい」

「「「「「はっ!」」」」」


騎士たちはロキに敬礼し、アーノルドの言葉を待つのみとなった。


「父上は魔術をお使いになられますか」

「ああ」


ロキは魔物の死骸を適当に虚空に放って収納していく。誰の分というのはある程度覚えているので、ギルドで換金してもらって報酬として騎士たちへ還元する。


「間違っても壁ごと破壊したりなさらないでくださいね」

「分かっている」


ぶわりと冷気が広がる。


「夏の訓練には丁度いいでしょう。――白銀に染まれ、【氷の庭(ホワイトガーデン)】」


庭中をパキパキと氷が覆い、壁の手前に氷でできた木が立つ。その木々に魔力で編んだ網が掛かっており、吹き飛んでもネットに当たるか氷に叩き付けられる程度で済むようになっている。


「融ける性質をかなり強い衝撃が加わると粉雪ほどに砕ける性質に変化させています。御存分にどうぞ」

「ありがとう。そちらも、気をつけて行くんだよ」

「はい」


ロキは兄弟に目を向ける。丁度フレイとプルトスとスカジはダンスレッスンの家庭教師がやってきてしまい、トールはコレーと共に昼寝をするとロキに告げてきた。

ロキは頷き返す。ならば仕方ないだろう。


「ゼロ、シド! 冒険者ギルドへ向かう。来い」

「「承知いたしました」」


人前に出ているときは完璧なのだなあとロキはあらためて思う。

ロキは普段着に着替え直してギルドへと足を向けた。


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