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Imitation/L∞P  作者: ヴィラノ・エンヴィオ
中等部1年夏休み編
105/368

4-5

2023/07/06 大幅に話の内容を削っています。

「ロキ、すぐに登城できるか」

「問題ないよ」


カルとロキが登城の為の手続きを始めたのは、エリオと別れて割とすぐの事だ。すぐにでも奏上するべき案件、としてカルが判断したのは、結界に関してジークフリートも何か考えていたということに他ならない。


「結界って誰の担当になるんだ?」

「担当はマイルフォー侯爵補佐だが結界が一番得意なのはロギア公だ」

「うわ」


担当と一番得意な人が別人、とロキは呟いた。こればっかりはな、とカルは苦笑する。最も得意としている者が担当になれるとは限らないし、担当を替えるにしても引き継ぎやなんやらの問題も発生するのでそうそう簡単に担当を替えられるわけではないのだ。


「てことは、陛下とロギア公が待ち構えている感じかな」

「ああ、ロギア公からマイルフォー侯爵補佐に提案する形になると思う」

「そっちがいいや」

「ああ、俺たちは結界や魔道具の専門課程を学んでいないからな」


子供の知識でどうこうできるほど世界は甘くない。発見したものはより見識の広い大人にぶん投げるべきだとロキは思っているし、カルもそんなロキを見て大人を頼ることへの抵抗を段々と無くしているようだった。



王宮に到着し、少し待つと謁見の間に通される。謁見の間は大小2つあり、今回は小さい方である。入場し頭を下げて片膝を着いて待っているとジークフリートが入場してきた。傍にはロギアの姿もある。


「面を上げよ」


最上級の礼をとっていた2人に声を掛け、ジークフリートは2人が唐突に訪れたことを驚いている旨を話し、少し雑談をする。


「2人が揃って俺の許へ来るとは珍しいからな。長期休暇に入ったのにほとんど話しかけてもくれなかったし」

「陛下は御多忙の御身ですから」

「……ロキは、晶獄病の完治おめでとう」

「ありがとうございます」


素直に礼を述べたロキはカルを見る。カルは小さく頷いた。


「陛下、本題をよろしいでしょうか」

「ん、いいぞ」

「エリオが、結界の改良に成功したようでございます」

「ラグナ!」

「はっ」


一瞬で周囲に防音結界が一回りほど強力なものと張り替えられた。

張り替えたのは近衛騎士団長のラグナ・ノノックである。騎士団長のゲブ・バルフォットとは永遠のライバルらしい。ロギアと顔を見合わせたノノック近衛騎士団長は視線をカルとロキに映した。


「真か」

「はい。6属性結界を組んでおりました」

「……よもやそのようなことが」


この世界で全属性――火、水、土、風、光、闇の6属性を指してこう呼ぶのだが、これを扱える人間はほとんど存在しない。

理由は、元々その身に宿すマナの属性の相性によって反発し合うことがあるためである。

こればっかりは品種改良の形でいろいろと変えていくほかなく、長い時間の末に火属性だったフォンブラウは水を取り込み、土だったロッティは火を、水だったソキサニスは風を、風だったゴルフェインは土を取り込んだ。

元々は属性的な弱点を補うための策であった。


種族ごとに持っているマナは様々だが、明確に相性が悪いのが、所謂弱点属性と呼ばれる属性である。火属性は水に弱い、というやつである。その弱点克服のために長年苦手属性に適性を持つ血統と婚姻を繰り返しているわけなのだが。


通常は外見の特徴に出た髪や目の色が属性を表すが、これは基本的に耐性を表すものとなっている。その属性が効きやすいか効きにくいかの指標だ。耐性を持っているが魔術としては扱えない場合もあり、その逆も然りである。耐性を持っていない属性魔術を扱うことは推奨されないが。


エリオは赤毛に黄色い瞳なので火属性と光属性の耐性があるであろうことを表している。なお、エリオの魔術適性は火属性のみだ。しかし今回エリオが手掛けたのは6属性ということで、火以外に水、風、土、光、闇の4属性を組み込んだ術式を組み上げたということになる。


魔法陣を刻む魔力は術者の魔力内に含まれるマナによって属性が決まる。エリオが6属性結界を組んだということは、マナ同士の反発を起こさない術式を作り上げたのだということに他ならなかった。


「また、ロキがその術式を簡易的なものに改良してしまいまして。これが現物です」


カルの懐から取り出された5つの石をジークフリートに見せた後、カルの周りに置き、魔力を流したロキは結界の発動を確認してジークフリートに向き直った。


簡易化しても同じ術式ならば同じ魔術の媒体として機能する。簡易的な術式にされていても同じ効果を持っていることから見てまず間違いなく同じ術式だったものであることが分かる。


「……これ、は」

「エリオはすぐにでもいくつも用意できる状態のようです」

「……エリオの魔力操作が尋常じゃないレベルで高かったとか6属性結界造るとか天才かよとか学校の結界これに替えていいかなとかいろいろ過ぎ去ったんだが」

「前者2つはどうぞエリオ殿下を褒めて差し上げてください。後者1つは私たちが早急に御耳に入れたかった原因ですね」


ここだけの話な、とジークフリートは苦笑した。


「正直言って、今使っている結界って1000年くらい前に張られたものだから、もういい加減張り替えなきゃならなかったんだよ。属性の数が多いほど強固になるのはどの魔術も同じだ」


今の結界は脆い。夏季休暇終了までには結界をこれに替えることができれば、とジークフリートも思ったらしい。


「ただ、起点には少々強度に問題があるようです。なので、通常の魔石ではなく、俺の生成した魔力結晶を使っていただきたい」

「どれほどの物かな?」

「カルがたまに枕にしてるやつです」

「あれか」

「ちょ、何でバレてんだっ」

「初等部から使ってたくせによく言うわ」

「2年も保ってるのか」

「はい」


自分自身驚きですよとロキは笑う。通常魔力結晶はそこまで長い間もつものではない。中に込められた魔力量によって変わりはするが。ノノック近衛騎士団長もロギアも驚いた表情を浮かべている。

そしてふと、ロキは思い出した。


「……殿下が、俺がもらおう、と言っていたので魔力を何層にも重ねた記憶がありますね」

「そのせいだ」

「これから生成して間に合うか?」

「エリオ殿下がどれくらいの時間であの魔法陣を刻むのかわからないから何とも言えないが……1日に30が限界だ」

「あのレベルを30も出せる方がすごいぞ?」

「あ、いや、時間が掛かって」

「お前の魔力は底なしだな?」


カルのツッコミを見てジークフリートが肩を揺らして笑いだす。早く結界を解けと言い出したカルに、ロキは魔力を纏わせた手で石に触れた。


「【解除(オフ)】」


結界が消え去った。


「後の改良点といえば、直接攻撃を受けないために起点を地中に埋めるか、結界を起点の外側に張るようにするか、といったところでしょうか」

「ふむ。研究所よりよっぽどエリオの頭の中の方がやること早そうだな」

「それには同感です」



――結局、ロキ、カル、エリオで結界の開発、量産を急がねばならなくなった。しかしロキには実はもう1つ考えているものがある。そちらはカルに試作機を渡しているためこんなまったりしているのだが。


カルに渡したのは、いわば通信機の類である。ソル命名、リンクストーン。石に刻んだからってどこぞのネトゲで出てきた真珠じゃないんだからとはヴァルノスの言葉である。


普段は透明な水晶と変わらないのだが、通信相手によって色が変わる。魔力を登録しておくことで色の変化を出す。これは携帯の着信音を変えられるところからの発想であると同時に、防犯目的もある。


ロキはタンザナイト、カルは淡い金色である。他に登録しているのはセトの緑と黒、レインのセルリアンブルー、レオンのブルーグレー、ソルの朱、ルナの蜜柑色、ロゼの薔薇色、ヴァルノスの胡桃色、ゼロの黒、シドの金、ナタリアのピンクパール、エリスの桃色となっている。


いかんせん使った術式の改良もまだまだなので、試作機はおそらく最も安全な王宮にいるカルの元となった。ロキとしてはもう少し改良を重ねてから、ソルたちには渡すつもりでいる。


どちらにせよ、これからやることが山積みだ。やりたいことと言ってしまえばそれまでだが。

時間を知らせに来たカル付きの侍従に促され、ロキは王城を辞した。

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