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とうとうこちらを投稿させていただくことになりました。
三人称視点はなかなか書き慣れず会話だけで足早に進む箇所もあるかと思います。読みやすい文章を目指します。よろしくお願いします。
――ロキ。
「ふぇええ、ふぁあああ!」
リガルディア王国の、王都。とある、公爵邸にて。
1人の、銀髪の子供が生まれた。
「……奥様、元気な女の子ですよ」
産婆が赤子を取り上げ、ぬるま湯で清めて柔らかなおくるみに包み、母親に渡す。
母親の髪は群青で、瞳は瑠璃色。
母親は赤子を抱きしめて微笑んだ。
「スクルド!」
「スクルドちゃん!」
「いけません旦那様、メティス様!」
扉を開けて勢いよく入って来た、燃えるような赤毛と炎のように揺らめく紅い瞳の男と、くすんだ水色の髪とエメラルドグリーンの瞳の女。
2人はメイドの制止も聞かずに母親――スクルドに駆け寄る。
元気な女の子、と3人は顔を見合わせて笑う。
赤子はスクルドから男――アーノルドへと手渡された。
「ふぇええ……」
「おお、よしよし。ああ、元気な子だ……」
その目は少しばかり悲しげに細められていた。
銀の髪。特別な色。
その色を宿した彼女を、彼は手放しでは喜べなかったのだ。
「名前は、どうする」
アーノルドが小さく呟くと、スクルドは少しばかり悲し気に目を伏せ、告げる。
「この子の名は――ロキ」
悪神、嘘を吐く、国の転覆をはかる、など。
良い噂を聞かぬ名だ。
それでもこの名に決まるのだ。
なぜならそれは、神霊の名。
神々に許された、名であるから。
「ロキ――ロキ、うん、ロキ。スクルド、アーノルド、落ち込んじゃ駄目よ。だって、どうせ国に何もなければロキの名前は役目を果たさないのだから」
女――メティス、と現在名乗る彼女はそう告げる。男――アーノルドは瞑目する。わかっている、子供は何も悪くない。けれども、この子はきっと、苦しい思いをたくさんすることになる。それだけが悲しい。
スクルドとアーノルドは小さく頷いた。
この、赤子は。
実に実に、数奇な運命を辿ることになるのだが。
まだこのとき彼らは、知る由もなかった。
(――え、何コレちょっと、俺、え? ラノベ的展開、マジ? 転生、した?)
この子供が、転生者であることを。
――お前の名は、ロキ。その生涯に、幸多からん。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。