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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第八章】天使追憶篇
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【第八章】天使追憶篇ⅢーThe past frozen end 3ー

 フローフルとアポロ、インベルは『天使城(セラフィム・ヴァール)』で修行していた。

 アポロはインベルとフローフルの二人掛かりを相手に圧倒していた。


「ぐあ!」

「ぐっ!?」

「二人ともその程度?」


 アポロはぶっちゃけ、メチャクチャ強かった。

 アポロの天使(エンゲリアス)は【死滅天使(サリエル)】という銃剣型の天使(エンゲリアス)であった。

 銃撃でインベルを牽制し、剣術でもフローフルを圧倒していた。


「やっぱりアポロは強いな~」


 ミルフィーユはそう呟いた。


「ミルフィさん、私とお願いします!」

「うん、じゃあ、始めようか」


 アポロとミルフィーユが向かい合った。


「アポロ強いな~。俺ら二人掛かりでも相手にならないなんて…」

「くっそ~。絶対に倒してやる!」


 フローフルはミルフィーユとエリシア以外には喧嘩で負けた事が無く、同年代どころか大人にだって負けた事が無かった。

 それなのに…同年代…更に女に負けたとなればフローフルが悔しがるのも当然なのかもしれない。


「【死滅天使(サリエル)】!」


 アポロのは銃を使う天使である。

 そして、彼女の天使(エンゲリアス)は解放すると銃口の下の部分から刀が飛び出す銃剣である。

 これにより、遠距離だけでなく接近戦でも強く、実際、剣術でフローフルを圧倒していた。


「【風騎士皇(ラファエル)】」


 ミルフィーユとアポロが戦い始めた。

 アポロは遠距離から銃撃を放っていた。


「【死滅銃弾(サリエル・バレット)】!」


 アポロの使う【死滅銃弾(サリエル・バレット)】は無数の【死滅天使(サリエル)】の銃弾を放つ技でありアポロの基本技の一つだ。

 ミルフィーユは風と自身の剣術でアポロの銃弾を全て防いでいた。

 更にミルフィーユは剣圧をアポロ目掛けて放った。

 アポロはその剣圧を軽々と回避する。

 更にアポロは高速でミルフィーユに近付いた。


「【死滅銃剣(サリエル・デーゲン)】!」


 アポロはミルフィーユに極大の一撃を放った。


「すっげ…ミルフィさんと互角にやりあってる…」

「ちぃ!」


 インベルは感心しながらそう言っていた。

 それに対してフローフルは非常に悔しそうな顔をしていた。

 明らかにフローフルとインベルが二人懸かりで戦っている時よりもやりあっていた。

 それがフローフルにとって悔しくて仕方なかった。


「やるね…」


 ミルフィーユがそんな事を呟いた。

 しかし、アポロの剣はミルフィーユの左手で容易く止められていた。

 そして、ミルフィーユはアポロに自身の剣を放った。


「【風聖剣(ヴイント・デーゲン)】」


 アポロは風の刃により吹き飛ばされた。

 アポロは壁まで吹き飛ばされ、激突した。


「ぐっ…」

「あっ…いっけね…強くやり過ぎた…」


 ミルフィーユがそう言った。

 インベルとフローフルがアポロの前に駆け込んだ。


「大丈夫か?」

「大丈夫よ…これくらい…自分で直せるし…」


 アポロがそう言って銃剣を上に掲げた。


「【天使回復(サリエル・ヒール)】」


 すると、アポロの傷は完全に治っていた。

 それどころかフローフルとインベルの傷も治っていた。


「便利な能力だな…てかありがとな。俺らまで治してくれて」

「ついでよ」


 アポロが余裕そうにインベルにそう言った。


「一端休憩にしようか」


 ミルフィーユがそう言って弁当を持ってきていた。

 四人で弁当を食べる事になった。


「それにしても、アポロは腕を上げたね~」

「いえ…そんな事は…まだまだです」

「いやいや、俺とフローフルが二人で戦うより強いしやっぱお前すげーよ!」

「それはどうも」


 アポロはミルフィーユに対しては謙虚であったが、インベルに対してはぞんざいだった。


「なぁ?アポロってあれだよな?プライド高いな」

「………」


 インベルがアポロに聞こえない声でフローフルに言ったがフローフルは無言であった。


「ねぇ、アポロ?もう少し、インベルやフローフルと仲良くしたら?」

「必要ありません。私は力を付けに来てるんです。馴れ合うつもりはありません」

「ははは…そうか…」


 ミルフィーユは参ったなと言った顔をしていたのだがアポロは気付いていなかった様だ。

 確かにアポロは強い。ぶっちゃけ、フローフルとインベルの二人分以上の強さだ。

 フローフルもインベルもアポロに対してライバル意識を持っている様だし一見、いい刺激になっている様にも見える。

 しかし、こうなってくると問題となってくるのはアポロ自身だ。

 アポロは思い込みか激しく自分の気に入らないモノは一方的に拒絶するきらいがある。

 それではアポロ自身の為にはならない。

 ミルフィーユはぶっちゃけ、教え方が上手い訳では無い。

 このままではアポロが更なる成長を望めない。

 一応、アポロはミルフィーユの弟子である訳だからミルフィーユとしてはアポロもちゃんと強くなって欲しいのだ。


「てめぇ…マジで調子に乗んなよ?」

「はぁ?二人懸かりであんな体たらくな戦いする奴に言われたくないわ」

「何だと…」

「お前ら止めろよ!」

「はぁ…」


 フローフルとアポロがまた喧嘩を始めそうになったのでインベルが止めた。

 ミルフィーユは溜め息を吐いていた。


「仲良くね…後、昼になったら再開するからね」


 ミルフィーユはそう三人に連絡した。




 しばらくして休憩時間が終わり、授業を再開する。


「さて、順序が多少前後しちゃったけど、これから属性の適正を測ろうか」

「属性?」


 ミルフィーユがそう言うとインベルが疑問符を浮かべていた。


「あなたたちの得意な属性をこれで調べるのよ」

「エリシア!?」

「エリシア先生」

「先生…何でここに…?」


 エリシアがフローフル達の後ろから現れ、魔法陣が書かれていた紙切れをだしていた。


「ええ、ミルフィーユに頼まれてね。私じゃ座学とか知識を教えるのは無理だからって」

「…余計な事は言わなくていいんだよ!エリシア!」

「はいはい…じゃ、皆これ持って」


 エリシアはフローフル達に紙切れを持たせた。

 ついでにミルフィーユも紙切れを持っていた。


「これに霊力、あるいは魔力を込めるとどの属性が得意か分かるわ」

「ふ~ん」


 フローフルはそう言って霊力を込めた。

 すると、紙がびしょびしょに濡れた。


「フローフルは水属性に適正があるみたいね」

「え?でもフローフルは氷を使うぞ?」

「その説明は後でね」


 インベルの疑問の答えをエリシアは後回しにした。

 次にインベルが紙に霊力を込めた。

 すると、紙はメラメラ燃えて崩れ落ちた。


「インベルは火属性ね」

「まぁ、そりゃそうだろうな」


 インベルは対して驚いていなかった。

 まぁ、それも当然だろう。インベルの天使(エンゲリアス)…普通に火だし。


「次は私ね」


 アポロが霊力を込めた。

 すると、紙は黒ずんで消えていった。


「アポロは闇属性ね」

「や…闇…」


 アポロはどうやらお気に召さなかった様だ。


「へぇ~見た目とお前の内面をよく現してるじゃん」

「お…おい!フローフル!」


 フローフルがアポロを煽るとインベルは諌めようとしたが遅かった。

 アポロはキレ気味であった。


「言うわね、雑魚」

「誰がザコだ!ああ!?」


 インベルが二人の喧嘩を止めようとする。


「えー、コホン!」


「「!?」」


 エリシアがそう言うとフローフルとアポロがビクッとしながらエリシアの方を見た。


「二人とも、止めなさい、ね?」


「「すみませんでした」」


 エリシアが笑顔で二人を諫めると二人は素直に喧嘩を止めた。


「因みに風なら紙切れるよ~」


 ミルフィーユはそう言いながら霊力を紙切れに込めた瞬間、スパッと紙が切れた。


「じゃあ、授業を始めるわよ」

「え?」

「実践じゃないのか?」


 インベルとフローフルが疑問を浮かべていた。

 まぁ、それもそうだろう。二人はてっきり戦うとばかり思っていたからだ。


「実戦だけじゃ無くて勉強も大事だよ。バカなだけじゃ、強くはなれないよ」

「そう言う事よ。まぁ、ミルフィーユが言っても説得力皆無だけど」

「そっ…そんな事無いし!?」


 こうして、エリシアの授業が始まった。

 エリシアが今回行った授業は主に七元属性についてであった。

 アポロとフローフルはある程度は知っていた様だがインベルは全く分からなかった様でよく混乱していた。

 どうもインベルは勉強が嫌いな様だ。

 アポロもフローフルもそれなりに勉強は出来る為、エリシアの授業内容も余裕で理解出来ていた。

 そんな二人を見てインベルは「何で性格にこんな問題があるあいつからがあんなに頭いいんだよ」と思った。

 インベルはバカという訳では無く、要領がいいのだ。

 しかし、頭を使うのは苦手の様で二人に比べるとやはり相対的にバカに見えてしまう。


「座学だけで一日終わったな…」

「そうだな…」

「まぁ、たまにはこういう日も必要だよ」


 インベルとフローフルが草臥れた様にそう言った。

 ミルフィーユが二人にフォローした。

 アポロはさっさと帰っていった。

 フローフルは勉強自体は出来るのだが、ぶっちゃけ好きでは無い。


「じゃ、オレも帰るわ。じゃあな」

「ああ」


 インベルはフローフルにそう言って帰っていった。


「楽しそうだったわね、フローフル」

「どこがだよ?」


 エリシアに茶化されるとフローフルは少し怒っていた。

 フローフルはやがて天使城(セラフィム・ヴァール)に戻っていった。


「フローフル、明日もサボらない様にね」


 エリシアはそう言ったがフローフルはエリシアを無視した。






「くそ…アポロの奴…あいつにだけはゼッテー負けねぇ!」


 フローフルは城内を歩きながらそう言った。

 もう少しでフローフルの部屋に着く。

 しかし、部谷の前で見慣れない人影がいた。


「あっ!あなたがフローフル?」


 ボサボサのピンク色の長い髪と黄色い瞳を持つ少女であった。

 肌の色が異常に白く、血色も悪い。にも関わらず非常に元気そうな少女であった。


「お前は?」

「初対面の人をお前呼ばわりなんて礼儀知らずだね!」

「ああ、悪かったよ。アンタは?」

「そんなに変わって無い気もするけど…まぁ、いいや。私はジェラート!ジェラート・ファイ・ローマカイザー!宜しくね!フローフル!」


 ジェラートはそう言ってフローフルに握手を求めてきた。

 陰気そうな見た目とは裏腹にとても元気な少女であった。


「アンタが…ローマカイザーの第二皇女か」

「んー、まぁそうだね。君が四人目だよね?会えて嬉しいよ」

「アンタ…何か変だぞ?」

「初対面の…しかも女の子に変って言うなんてデリカシー無いよ?」

「そう意味じゃねぇよ。何か…他のローマカイザーと比べて物腰が普通っていうか…」


 そう、フローフルが思っていた事が正にそれであった。

 アポロはフローフルに対して相当ぞんざいであり、これは説明不要だろう。更にプライドが高く、傲慢な性格をしている。

 ルミナスはルミナスで独特な雰囲気をまとっており、フローフルに対しては普通に接してはいるがやはり独特な雰囲気を感じずにはいられなかった。

 それのにジェラートにはそういったモノが一切感じない。

 そう、ジェラート「普通」なのだ。

 普通故に彼女等とは違った異質さを感じるとも言える。


「あー、アポロとルミナスの事を言ってるんだね~。二人とも私の事あんまり好きじゃないみたいなんだよね~。私は好きなのに…」

「ルミナスはともかく、あんな性格してるアポロが好きだと?」

「あー、確かにアポロは性格悪いよね。プライドも高いし。けど、案外かわいい所もあるんだよ?私はどっちかって言うとルミナスの方が怖いかな~。無垢すぎるし。まぁ、そこが可愛いんだけどね」


 ジェラートは二人の事を語りだした。

 どうやら、ジェラートは二人の事を溺愛している様だ。

 しかし、ルミナスもアポロもジェラートの事が苦手である様だ。

 まぁ、フローフルは何となく察しはついていた。

 何せ、二人ともジェラートの話を一切してないししたがらなかった。

 その時点で二人がジェラートに対して苦手意識を持っている事が容易に想像が着く。

 しかもジェラートは頭が悪そうに見えて、意外と鋭そうだ。


「で?何でわざわざ僕に会いに来たんだよ?」

「特に理由は無いよ?可愛い可愛い弟に会う為だけじゃ理由にならないかな?」

「何だよそれ…」

「私の部屋に来て来て!!」

「お…おい!」


 フローフルはジェラートに引っ張られてジェラートの部屋まで連れてこられた。


「暗いな…」

「うん、暗いのが好きだから」

「電気付けてくれねぇか?これじゃ見えない…」

「えー?」


 ジェラートの部屋は非常に暗く何も見えない。

 これでは動きづらくて仕方がない。


「明るいのがダメなのか?」

「ダメでは無いけど…好きじゃない」

「天使のクセに変わってんな」

「私は半分悪魔だからね」

「デモンエンジェルって奴か?」

「へぇ~、フローフルデモンエンジェル知ってるんだね?」

「まぁ、エリシアから教えて貰ったし…てか、速く電気付けて」

「仕方無いな~」


 ジェラートは電気を付けた。

 そして、ジェラートの部屋が露になった。

 色々な物が置いており、散乱していた。


「何だよ…これ…」

「置いてあるのは黒魔術に使う道具が多いわね。後…ホラ!弓矢もあるよ?」

「弓道とかやるのか?」

「弓矢の扱いには私、結構自身あるんだよ?フローフルもやってみる?」


 ジェラートはそう言ってフローフルに弓矢を渡してきた。


「意外と重いな…弓矢」

「そう!結構重いし意外と大きいから持つのだけでも割りと苦労するよ」

「へぇ~」


 フローフルは弓を持ち上げ、矢を引き絞った。

 そして、フローフルは矢を近くにあった的に放った。

 的には当たらなかったが壁に突き刺さりはしていた。


「あっ!上手くいかないな…」

「そんな事無いよ!普通初めてならあんなに上手く刺さらないよ!普通は刺さりすらしないし!フローフルもしかしたら弓矢使う才能があるかも!」

「そ…そうか…?」

「うん!一緒に練習しよ!」


 ジェラートがそう言いながらもう一個の弓矢を持ってきた。


「マーブルもやってみてくれよ」

「うん、いいよ」


 ジェラートは矢を引き絞った。

 病的に白い身体に細い身体だというのにジェラートの矢を引き絞る様は非常に力強かった。

 ジェラートは矢を放った。

 ジェラートの矢は的のど真ん中に当たり深くめり込んでいた。

 フローフルより正確且つ、威力も高かった。


「すっげ~」

「ふふん!そうでしょ!」

「でも、ここ部屋だよな?弓矢なんか使っていいのか?」

「大丈夫だよ~。ここら一帯は私しかいないから。壊れてもこの部屋は時間が経てば修復してくれるし」


 ジェラートがそう言うと確かに壁の破壊された痕がみるみる消えていく。

 この城の造りが少しフローフルは怖くなった。

 壊しても勝手に治るのは便利な機能だがそれを間近で見るのは不気味で仕方無かった。


「しばらく弓矢の練習をしようよ!私も丁度相手が欲しかったんだ!私が手取り足取り教えるからさ!」


 ジェラートがそんな提案をしてくる。

 フローフルはミルフィーユの元で修行している。

 授業を初めてから半年、剣の腕もそれなりに上がった。

 しかし、ミルフィーユどころか、アポロにすら勝てない始末だ。

 剣ではまだアポロとはマシな勝負が出来るが、アポロが銃撃戦をしてくると、フローフルは成す術無くやられてしまう。

 試しに弓道を学ぶのもいいかもしれないと思った。


「分かった。弓道、教えてくれ」

「そう来なくっちゃ!」


 フローフルはジェラートと共に弓道を始めた。





「なぁ?何か最近フローフル来なくなったな…」

「まぁ、その程度の男だったって事よ」


 フローフルがミルフィーユの修行に来なくなってから三ヶ月が過ぎていた。

 最初は体調が悪いだけかと思っていたがどうもそうでは無いようだ。

 学校にも来なくなっていた。


「そもそもあいつ、元から学校にも全然来てないじゃない。軟弱者ね」

「何か理由があるんだよ。きっと…」

「なら、その理由ってなんなの?」

「それは…分からないけど…」


 インベルとアポロが学校でそんな話をしていた。

 フローフルは元から学校に来る方では無い…というより、フローフルが来てから九ヶ月経つが学校に行った回数は十回も無い程フローフルは学校に来ていない。


「あなた…何でフローフルと一緒にいるのよ?あなたは協調性あるしもっと友達いるでしょ?」


 アポロはずっと疑問に思っていた。

 インベルは協調性があり、フローフル以外にも友人はいる。

 にも関わらず、インベルはフローフルといる事が多い。

 アポロは正直、フローフルが気に入らない。

 生意気だし、性格曲がってるし、短気だしで挙げるとキリが無い。


「ほっとけないんだよな~、あいつ。危なっかしいっていうかさ」

「…あなたはフローフルの母親か何か?」

「それに…あいつは君が思ってる程悪い奴じゃ無いよ。前もオレ、あいつに助けて貰ったし」

「ふ~ん、そんな風には見えないけど」


 アポロはインベルは相当な変わり者だと思った。


「さてと…これが終わったらまたミルフィーユの修行だな」

「そうね」


 アポロはフローフルとは不仲であったがインベルとは普通であった。

 というより、インベルがアポロに合わせているといった方が正しいのかもしれなかったが…





 インベルとアポロは天使城(セラフィム・ヴァール)にやって来た。

 すると、ミルフィーユ以外に見慣れた男がいた。


「フローフル!?」

「何であなたが…」


 フローフルはインベルとアポロの方を向いた。


「いや、僕は戻って来ただけだぞ?ミルフィーユの修行に来たんだよ」

「だったら何で今までいなかったんだよ!」

「いや、ちょっとな…別の修行をしてたんだよ」

「別の修行?」

「ああ、そうだ。アポロ、お前、一対一で僕と勝負しろよ」


 フローフルがそう言うとアポロは少し驚いていた。

 インベルも驚いていた。


「何言ってるの?あなた一人で私に勝てるとでも?」

「ああ、そう思ってる」


 アポロはフローフルの態度が気に入らなかったのかかなり怒っていた。


「いいわ、あなたのその態度と驕り…叩き直してあげるわ」

「それはこっちのセリフだ」


 インベルは頭を抱えていた。

 何で二人は会ったらこんなにも喧嘩をするのか。


「いいね、面白そうだ。インベル、私と一緒に観戦しよ」

「…分かりましたよ」


 ミルフィーユとインベルはフローフルとアポロから距離を取った。

 フローフルは刀を抜き、アポロもホルスターから銃を取り出した。


「【氷水天皇(ザドキエル)】」

「【死滅天使(サリエル)】」


 フローフルとアポロの戦いが始まった。

 フローフルは接近し、アポロに斬りかかった。

 アポロは銃剣でフローフルの攻撃を防いだ。

 更に銃剣をズラしてフローフルに照準を合わせ、


「【死滅銃弾(サリエル・バレット)】」


 アポロは至近距離から銃弾を発射した。

 フローフルは突如として姿が消えた。


「!?」


「霊呪法第六十四番【瞬天歩(しゅんてんぽ)】」


 アポロはうしろを振り向き、フローフルの刀を防いだ。


「あなた…霊呪法なんか使えたの!?」

「僕は半分人間だ。だから人間にしか使えないこの力が使える」


 フローフルは独学で霊呪法を習得していた。

 この三ヶ月間の間、フローフルとて遊んでいた訳でな無い。

 強くなる為に一度、ミルフィーユから離れて修行していたに過ぎない。


「【死滅銃剣(サリエル・デーゲン)】!」


 アポロは銃剣から剣の刃を飛ばした。

 フローフルは攻撃を刀で受け止める。

 すると、フローフルの刀が水色から赤色に発光していた。


「【氷神業火(ザドキエラフランメ)】!」


 赤い氷の刃がアポロの斬撃を防いだ。

 どころか赤い氷がアポロに襲い掛かる。

 アポロはフローフルの攻撃を回避し、距離を取った。

 アポロは接近戦は不利と判断し、遠距離からの攻撃に切り替えた。

 アポロは銃剣から無数の弾丸を放った。


「【死滅銃弾(サリエル・バレット)】!」


 いくら今のフローフルでもこれだけの銃弾は対処出来ない。

 フローフルは刀を振り回して銃弾を防ごうとするが銃弾を全て叩き落とせる筈も無く、アポロの銃弾がヒットした。


「くっ!?」


「これで…終わりよ!」


 アポロが止めの一撃を放った。

 しかし、フローフルはその攻撃を瞬天歩でどうにか回避した。


「逃げ足だけは速いわね」

「悪い悪い…今のは当たったらヤバかったからな…やっぱり遠距離攻撃に持ち込まれると勝てないな…」

「ようやく負けを認めたようね」

「誰も降参なんて言った覚えはねぇぞ」

「何ですって?」

「まだまだ…だ…」


 フローフルの刀の形状が変化していた。

 刀から弓へと姿が変わっていた。


「フローフル!?」

「どうやら、本当にただただ遊んでいた訳じゃないみたいだね」


 インベルとミルフィーユがそんな事を言っていた。


「何をするつもり?」

「弓を作ったんだから矢を放つに決まってんだろ」


 フローフルがそう言うとフローフルの弓から氷の矢が装填された。

 そして、フローフルは氷の矢を放った。


「【霰矢(ハーゲルプファイル)】」


 フローフルは氷の矢はアポロ目掛けて飛んでいった。

 アポロは銃剣から銃弾を放った。

 しかし、アポロの銃弾は氷の矢により凍らされてしまった。


「な…何て威力なの!?」


 アポロも流石に驚いた様でフローフルから更に距離を取り、銃弾を発射した。


「【死滅銃弾(サリエル・バレット)】!」


 アポロは再び無数の【死滅天使(サリエル)】の銃弾を放った。

 しかし、フローフルも無数の氷の矢を装填し、対応した。

 アポロの銃弾は全て凍り付いた。


「嘘…」


 アポロが怯んでいる隙にフローフルは瞬天歩で間合いを取り、アポロの首筋に刀を突き付けた。


「なっ…」

「勝負ありだ」


 フローフルがそう言うとミルフィーユは立ち上がった。


「はい!そこまで!フローフルの勝ちだね」


 ミルフィーユがそう言うとアポロが倒れ込んだ。

 フローフルの殺気にやられた様だ。


「はぁ…はぁ…」


 アポロは息をかなり切らしていた。


「スッゲーよ!フローフル!アポロに勝つなんて!」

「いや…マグレだ…」

「笑いなさいよ…あんだけ啖呵切って負けた私を…笑いたいんでしょ?」


 アポロがそう言った。

 しかし、フローフルは決して笑いはしなかった。


「お前に勝てて嬉しいけどお前を見下すつまりはねぇよ。さっきも言ったがマグレだ。悔しいけど…お前は強かった…今度も…負けねぇ…」


 フローフルは後ろを振り向きながらそう言った。


「しかし、霊呪法なんて独学で修得出来るモノでも無いでしょ?」

「ああ、ルミナスに教えて貰ったんだ。でも、殆ど独学だな」

「弓道は?」

「ジェラートに教えて貰った」

「な!?姉様達に教えを!?」


 そう、フローフルはルミナスに霊呪法を教わり、ジェラートから弓道を教わっていた。

 アポロはフローフルの新しい戦術に怯んで負けた…という理由が強い。

 フローフルがマグレ勝ちと言った理由が正にそれだ。


「いや~、エリシアから逃げながら修行するのは大変だったな~」


「そうね、もう気が済んだでしょ?」


「え?」


 フローフルは後ろを振り向いた。

 すると、そこには怒りに燃えているエリシアがいた。


「さて…三ヶ月も学校サボっておいて更に逃げ続ける…なんて事はしないでしょうね?」

「い…嫌だ!…僕は学校になんか行きたくない!」

「何をバカな事を言ってるの!」


 エリシアはフローフルに思いっきり頭を殴り付けた。

 すると、フローフルの身体が地面に沈んだ。

 とてつもない怪力である。


「いってーーー!!!!!」

「ミルフィーユ、そう言う訳だからこの子は今日の所はもう私が連れて帰るわね」

「あ~、うん。お疲れ~」


 エリシアは気絶しているフローフルを引きずりながら帰って行った。

 そんなエリシアの姿をアポロとインベルは呆然としながら見ていた。


「エリシア先生…メチャクチャつえ~」

「当然よ。あの人はセラフィム騎士団内でも上位の強さなのよ」

「二人とも、今日は私達も帰ろうか。また、明日ね」


 ミルフィーユがそう言うと今日の修行はこれで終わりを迎えた。




 それから、三ヶ月後ー


「そんな…ヤハヴェラ様が…」


 そんな声が城に聞こえてきた。

 そう、ヤハヴェラ・アークキエル・ローマカイザーは死を迎えた。

 とうとう、ヤハヴェラの身体が限界を迎え、死んだ。

 妻も既に無くなっており、こうなってしまった以上、ルミナスが皇帝になるしか無かった。


「しかし…ルミナス様は今年でまだ十三…後継者にするのはあまりにも速いのでは…」

「その心配は無用よ」


 やって来たのはセラフィム騎士団団長、フラン・ヴェルニケル。

 そして、もう一人がエクレア・パイルペンドラーだ。

 フランは白を基調とした金色の軍服を纏い、金色の長い髪に瞳が特徴の女性だ。

 もう一人のエクレアはセラフィム騎士団の副団長であり、彼女も同様に白を基調とした服を着ている。

 だが、彼女の場合は紫を基調としており、紫色の長い髪と瞳を持ち、童顔で可憐な少女の姿をしていた。


「フラン様…不要とは?」

「彼女には十分、王としての器がある。と言っているのだ」

「私もそれには賛成。ルミナスが皇帝になっても問題ないと思うわ」


 フランはセラフィム騎士団の団長であり、四百年以上の時を生き、神聖ローマの黎明期からいる古株である。

 対してエクレアは天使として長く生きてはいるものの、セラフィム騎士団に入隊したのは三年前とかなり最近である。

 だが、彼女がセラフィム騎士団に入隊したのはルミナスの存在が大きい。

 だからこそ、エクレアはルミナスに絶対的信頼を置いている。

 実力も申し分無く、たった三年で副団長に任命されている辺り、彼女の実力の高さを表していた。


「しかし…」

「まだ言うか!仕方無い…ルミナス様!」


 フランがルミナスな名を呼ぶとルミナスは皆の前に現れた。

 白い宗教服を来ており、子供ながらその姿は威風堂々としていた。

 今年で十三歳とは思えない程、気品と貫禄に溢れていた。

 フランとエクレアを始め、いつの間にかこの部屋にいた皆がルミナスに膝まずいていた。


「…ルミナス様」

「ええ、そうね。父が死んだ今、私が皇帝となる…私が…この神聖ローマを治めるわ…当面の目標は…ローマ統一!」


「な…!?」


 ルミナスの言葉に皆が動揺していた。

 ただし、フランとエクレアは動揺せずに普通に聞いていた。


「しかし、それを達成させる為には…それなりに時間がいるわ。その手始めとして…セラフィム騎士団を一新する!」


 ルミナスは高らかにそう言った。

 フランとエクレア以外の者達は動揺しているのは当たり前の事だ。

 この神聖ローマは内部の統率が極めて困難な状況にある。

 それはこの神聖ローマ黎明期からそうなのだ。

 土地がとてつもなく広いため、統率が取りにくいのもそうなのだが、反乱軍が非常に多く、常に玉座を狙おうとしている。

 反乱軍の数と規模もかなりのものであり、それによってローマ統一は多くの者達が志してはいたが、未だに叶えた者はいない。

 ルミナスはそんな難しい事を軽々と言ったのだ。

 ヤハヴェラ・アークキエル・ローマカイザーは病に伏す前は悪逆皇帝の汚名を着せられていた。

 だが、裏では反乱軍をどうにか治めようと画策していたのだが、それは叶わなかった。


「神聖ローマよ…私に力を貸しなさい!さすれば必ず、ローマを統一する!」


 ルミナスは高らかにそう宣言した。

 彼女のローマ統一が完成されるのは今から七年後の事であった。

 そして…この一件がローマ聖戦が起こるきっかけとなった。

 ローマ聖戦が起こるのは…この日から丁度二年後である。





To be continued

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