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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第七章】海王の花嫁篇
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【第七章】海王の花嫁篇Ⅶーinverterー

 蒼はアポロに…イシュガルは慧留に治療されていた。

 蒼とイシュガルの決闘が終わり、二人は傷を癒していた。


「な!?最初から結婚はする気は無かっただと!?」

「ああ、断られた時点で既に結婚はする気は無かった」


 イシュガルの口から衝撃的な事実を告げられた。

 どうやら、アスディアはその事を知っていた様で驚いてはいなかったがそれ以外は驚いていた。


「俺はお前に決闘を申し込みはしたが、「俺が勝ったらプロテアを貰う」とは一言も言ってないぞ?君達が早とちりしただけだ」

「いや、それ屁理屈だろ…誰だってあの状況だったらイシュガルが勝ったらプロテアはそっちに行くって思うだろが」


 屍が最もな事を言った。

 つまり、決闘を受けようが受けまいが結果は変わらなかった訳だ。

 とんだくたびれ儲けをしてしまった。


「それな何で決闘なんか申し込んだんだよ?」

「それは君の…プロテアが惚れ込んだ君の力を見たかったからだ」

「別に惚れ込んでなんかいないわ」

「そう言う事にしておこう」


 プロテアがイシュガルの言葉に否定するがイシュガルはスルーした。


「とは言え、君が暴走した時は本気で君を殺さなければならないのではないかと焦ったよ。結果的にはそうはならなかったがな」

「いや~、あの時のイシュガルはテンパり過ぎてて傑作だったな~、完全に取り乱してたし」


 アスディアはケラケラ笑いながらそう言った。

 確かに慧留とアポロがイシュガルを止めようとしていた時も問答無用で二人に攻撃しようとしていたし相当取り乱していた事が伺えた。


「うるさい…」


 イシュガルは少し拗ねた様にそう言った。


「で?アンタの目的は何だ?」


 蒼はアスディアに問い掛けた。

 今回の戦い…明らかにアスディアが仕組んだモノだと蒼は確信していた。


「…行っておくが…決闘については僕が仕組んだ事では無いよ。確かにこうなる事は予測していたけどね…」

「それで?貴様は時神蒼を使って何をしようとしている」

「プラネット・サーカス…そのリーダーを倒して貰う事が目的だよ」

「ああ…あのピエロ共か…」

「イシュガルはちゃんと覚えてたみたいだね」

「当たり前だ…あんな忌々しい存在を忘れられるか」

「何だよ?そのプラネット・サーカスって…」

「君達はそのメンバーの一人に既に会っている…神混髏奇(こうまるく)…あの男がプラネット・サーカスのメンバーで幹部格だよ」

「な!?」


 どうやらプラネット・サーカスという組織はとてつもなく大きい組織の様だ。


「そのプラネット・サーカスって何だよ?」

「彼等は王…つまりリーダーであるオーディンと呼ばれる者を台頭に作られている組織でこの世界の黎明期…つまり、千年前から存在している謎の組織だよ」


 屍の質問にアスディアが淡々と答えた。

 そんな大規模な組織であるのならば蒼達が知らないのは少し不自然な気がするが…


「そいつらの目的は何なんだよ?」

「それは分からない。彼等はとにかく大きな戦争や争いに必ずと言っていいほど関与している…イシュガルドの内乱もその一つだ」

「つまり、そいつらがいる限り何らかの面倒事が起きると?」

「そう言う事だね。しかも、彼等は最近になって水面下で活動している。組織の全体像は不明。かなり厄介だよ…」

「お前らで手は打てねぇのかよ?」

「僕らは基本的に戦う事を禁じられてるんだよ。この世界の意思によってね」

「なら、何でフローフルとイシュガルは戦えたんだよ」

「それはフローフルがイシュガルの決闘を受けたからだよ。ぶっちゃけ、あそこで断っておけばフローフルは戦わずに済みました」

「………」


 アスディアのどや顔に蒼は腹パンを入れたくて仕方なかったが話を黙って聞く事にした。

 どうやら、アスディア達の言う、プラネット・サーカスは想像以上にヤバイ組織の様だ。


「なら、お前らが出張って決闘を受けたからだよ。申し込めば…」

「だからインベル…組織の全体像はおろか、ボスがどんな奴かも分からないんだ。誰もいない所に決闘なんか出来ないだろ?」

「それに…僕らが決闘を申し込まずに戦えるのはこの『世界宮殿(パルテノス)』が攻め込まれた時と現世や冥界が滅ぶ恐れがある時だけだ」

「つまり、プラネット・サーカスは世界を滅ぼす程の存在では無いって事か?」

「いや、そうじゃない。彼等は敢えて動かないんだ。僕らにマークされない為にね」


 どうやら、プラネット・サーカスは相当なアンダーグラウンドな組織の様だ。

 水面下で暗躍し、肝心な時は身を隠す。掴み所の無い、厄介な組織だ。


「ただ、一つ分かっている事がある」

「それは何なんですか?」


 イシュガルの言葉に美浪が耳を傾けた。


「彼等の主要メンバーは数名から数十名の幹部で構成されていてその幹部は全員、僕らに準ずる力を持っている。それこそ、組織そのものが四大帝国のひけを取らない処か…はっきり言って、四大帝国の総力よりプラネット・サーカスの方が上だ」

「な!?」


 イシュガルの言葉に蒼達が絶句した。

 それもそうだ。なんせ、たったの一組織の総力が四大帝国全軍より上と言われればそりゃ驚く。


「いやいや…流石にそれは…」

「残念ながら…事実だよ…彼等はそれぐらいヤバイ組織なんだよ」

「だから時神蒼を鍛えたと…そう言いたいのか?」

「そゆこと~」

「貴様の言い分は分かった。確かに俺達では手は出せないからな」


 イシュガルはアスディアの目論みに納得した様だ。


「………」

「何だい?ガルデア…?まだ僕を疑ってるのかい?」

「いや…少し考え事だ」

「あまり深く考え過ぎない方が上だよいいよ?老けるよ?」

「黙れ」


「おやおやおやおやおや~???賑やかですな~」


「「「「「「「「!?」」」」」」」」


 蒼達は後ろを振り返った。

 すると、そこには見覚えのある男がいた。

 黄色の髪に赤と黄色のオッドアイ右頬に黒色の涙のペイントがついており、派手なピエロ衣装を着ていた。

 彼の名は神混髏奇(こうまるく)。アスディアが危険視している男の一人だ。


「やぁ(・∀・)ノ元気してたかい?君達?」


 髏奇はそんな陽気な声で蒼達に話し掛けた。


「てめぇ…」

「アウス達はどうした!?」

「ああ、彼等は置いてきた(キリッ)流石の僕もパルテミシア十二神三人を相手にするのはきつすぎるんごだからねぇ…(ToT)」


 どうやら、アウス達は無事で髏奇は彼等から逃げて来た様だ。


「何しに来た!?」

「いや、大した用じゃあ、無いよ。君とイシュガルの決闘を見に来たのさ?」

「俺の…?」

「ああ、そうさ」


 蒼の問いに髏奇はそう答えた。


「何が目的なんだい?」

「目的?そんかモノは無いっネ!ただ僕は面白そうだったから来たのさ。いや~、イシュガルの戦いを見れて楽しかったね~。最近のヘレトーアの戦いも面白かった!」

「ふざけないで!あなたのせいで…私の家族は…」

「まあ!それはそれはれごっしゅう~しょさま~\(^o^)/同情するよ( TДT)」


 髏奇が露骨にプロテアを挑発していた。

 しかし、こんな安っぽい挑発に乗る程、プロテアも直情的では無かった。

 髏奇はかつて、ヘレトーア軍になりすまし、イシュガルドの子供を殺害した。

 それを気にイシュガルド内乱が始まった。しかも、その殺された子供はプロテアの弟である。

 つまり、イシュガルド内乱の元凶とも言える男であった。

 プロテアは宿敵を前に血が滲む程に拳を握り締めていた。

 今のプロテアがどんな気持ちなのかは察するにあまりある。


「何で俺達の前に現れた?わざわざ殺される為に来たのか?」

「まさか(`´)そんな筈無いよ!プンスカプンスカ( ̄^ ̄)だから何度も言ってるだろ?僕は…面白い事が好きなのさ。そして…面白い事が起きそうなら僕は何だってするよ!戦争とか殺し合いとか…最っっっっっ高のスパイスなのさ!やはり退屈を紛らわして楽しく過ごす為には外からヤジを飛ばすしたり傍観したりするのが一番楽しいからねぇ!」

「ふざけた奴だ…」

「全くね…器が小さいとかそれ以前のレベルね。こればかりは屍と同意件ね」


 屍とアポロが珍しく意気投合し、髏奇を睨み付けていた。


「おうおう…怖い怖~い\(^o^)/幸せ過ぎて怖いわ~(*´ω`*)」

「何だ?こいつ…」


 派手に動きながら意味の分からない発言をしていた髏奇に対してインベルは彼を不気味に思った。

 端から見ればただの頭のおかしい狂人だ。だが、インベルはそんな髏奇を不気味に思わずにはいられなかった。


「イシュガルと時神蒼が戦った…この戦いはとてもとてもと~ーーーてぇもぉう!見所だくさんたくサンタ!でした!o(^o^)o……

だが…いけなかった…」


 髏奇がふざけた態度から一変、一気に真面目な表情に変わっていた。


「まさか…時神蒼がここまで強くなってしまうとは…本当に予想外だった…(--;)お陰で僕は日々君に怯えて過ごさなくならなくなっちゃったじゃないか…」


 そう、髏奇は最初は楽しむ為だけにここに来ていた。

 だが、蒼が力に目覚め、覚醒し、その力が髏奇の想定を遥かに上回っていたのだ。


「だから…僕決めたよ…時神蒼……この世界をカオスにするとね!」

「何ですかそれ…普通…蒼を殺す事にしたとかいう所でしょそこ」

「突っ込んでくれてありがとう!そこの美少女!(*´ω`*)」


 美浪の尤もな突っ込みをされ、髏奇はとても喜んでいた。


「それは…どうも…」


 こんなに嬉しくない誉め言葉は初めてだと美浪は思った。

 普通、誉められると嬉しいモノなのだが、どうも、髏奇は美浪を煽っている様にしか見えなかった。


「いや~、まぁ、確かにヤバイ事態にはなったけど…それだけで「僕ら」を潰す事は出来ないよ?」

「プラネット・サーカスってやつか…」

「おやおや?僕の事を少しは知ったみたいだね。そう、僕はプラネット・サーカスの幹部。『童話(グリム)』の一人さ」

「てめぇらは何を企んでるだ?」

「そうだね…敢えて言うなら…楽しい事かな?」

「楽しい事?」

「そう!この世はサーカスさ!この世界の狂乱を!カオスを!戦争を!奪い合い!闘争!それらを楽しまないと損だろ?」

「だから、自分達でそれを起こすと?」

「ああ!その為なら僕らは舞台にだって上がるさ!面白い事が無いと…生きる価値無・!だからね!!」


 髏奇はケタケタ嗤いながらそう言った。


「一つ分かったのはてめぇらは頭おかしいって事だな」

「最高の誉め言葉ありがとん!………でもねぇ?君ら三人も相当頭おかしいと思うよ?だってたった一人の人を助けようとして万の命を無駄にしたんだからぁ…」


 髏奇は蒼とインベルとアポロの三人にそう言った。

 すると、三人の表情が明らかに変わっていた。


「黙りなさい…」

「いや、黙らない。君達は彼女を助けようと数千人の仲間を引き連れ、ローマに喧嘩を売った挙げ句、その争いが大きくなり…ローマ全土にも渡る大戦争になった…それが…五年前に起こったローマ聖戦だ。あの戦いで何を得た?誰が特をした?君達は自身の仲間を皆殺しにしたも当然だよ!だいたい…あんなカス女助けようとするなんてバカな事をしたもんだね君達も…あっ!あんな謀反人を救おうとした君らもバカバカか?そりゃあんなに人を死なせるわけだ!ヽ(・∀・)ノ」

「おい、クソピエロ…俺達を侮辱するだけならまだしも…エリシアや仲間達を侮辱するのは許さねぇ…」


 アポロもインベルも既にキレかけている。

 蒼も無論同じ気持ちであった。自分達を侮辱されるのは当然の事だ。

 しかし、エリシアやその仲間達が侮辱されるのは我慢なら無かった。


「何々?何偽善者ぶってんのさ!バッカじゃないの!?ああ、そう言えば…エリシアの最後は傑作だったね~何たって…」


 髏奇が言い掛けると眼前に迫った蒼が髏奇の首を斬りかかった。

 髏奇は蒼の攻撃を難なく回避し、後ろに下がった。


「怖い怖い怖いわ~(>_<)何をするのさ?」

「もう、それ以上喋る必要はない…てめぇは…俺が殺す…」


 蒼は水色の刀、【氷水天皇(ザドキエル)】と黒刀、【黒時皇帝(ザフキエル)】を重ねた。


「【χ第二解放(カイザー・エンゲルアルビオン)】」


 蒼は【χ第二解放(カイザー・エンゲルアルビオン)】を発動。

 蒼は黒色の衣に黒い氷の翼、更に両手にはギリシャ文字のχ(カイ)の字をあしらった籠手が着いていた。

 刀は漆黒の氷の刀に変化していた。


「うわぁ~、改めて見るととんでもない霊圧……てっちょ!」


 蒼は髏奇が言葉を言い終える前に髏奇に斬りかかった。

 髏奇は攻撃を回避するが蒼の動きに辛うじて付いていけている状態であった。


「【赤竜天皇(カマエル)】!」

「【死滅天使(サリエル)】!」


 インベルは炎の剣をアポロは銃剣を持って、髏奇に攻撃を仕掛けた。

 アポロが銃弾を発射した。髏奇はその攻撃を回避した。だが、その時に隙が生じた。


「「死ね!」」


 蒼とインベルが同時に髏奇を切り裂いた。

 インベルは髏奇の首を切り落とし、蒼は髏奇の胴体を切り裂いた。

 無駄の無い、完璧な連携であった。


「やった!」


 美浪がそう言う。しかしー


「誰がやったって?」


「!?」


 いつの間にか、美浪の後ろに髏奇がいた。


「時神蒼君とインベル君が切ったのは僕特性の人形だよ?良くで出来てるでしょ?すり替えて置いたのさ!(ドャア)」


 髏奇はどや顔をしながらそう言った。


「何て奴だ…」


 屍は髏奇の力に驚いていた。

 ただの雑魚では無い。幹部を自称するだけあって相当な力の持ち主である事が分かる。


「まぁ、ここでしばらく遊んでてもいいんだけど…お仲間が来てしまった様だね♪」


 髏奇がそう言うと三人の人影が現れた。

 アウス、ランクル、ジェネミの三人だ。


「もう逃がさねぇぞ!侵入者!」

「アウス…その台詞を言うのはあまり良くないぞ。そう言う時は大概逃げられる」

「ジェネミの言う通りだよ?何で君はそれが分からないかな~?」

「お前ら後で覚えとけよ…」


 何やら三人は言い合っている様であった。


「うーん。これは僕が分が悪いね~。数の暴力とか反則だからね?まぁ、いいや。僕はここでトンズラさせて貰うよ」


 そう言って、髏奇は虚空に黒い穴を開けた。

 『黒門(ニゲルゲート)』と少し似ているがどうも別物である様だ。


「逃がすかよ!」


 アウスが髏奇に突撃した。


「ああ!そうだ、君達にはプレゼントがあるんDA☆これで遊んでね」


 髏奇が開けた黒い穴から巨大な白い生物が出現した。

 その生物はタコの様な見た目をしており、全身に触手があった。

 非常に不気味で異形の姿をしていた。


「何だ!?こりゃあ!」


 アウスがそんな声を上げた。

 驚くのも当然である。何せ、恐らく全長数十メートルは下らない大きさを誇っている。


「僕のかわいいペットさ!さぁ!ジズさん!やっておしまい!」


 ジズさんと呼ばれる巨大なタコが触手を振るって攻撃してきた。

 皆、その攻撃を難なく回避するが、どうやらただの時間稼ぎだった様だ。


「それでは~、帰るヽ(・∀・)ノ!」


 髏奇はそう言って、黒い穴に入り込み、姿を消した。

 完全に取り逃がしてしまった。


「クソが!」


 蒼はジズさんの攻撃を回避しながらジズさんの触手を切り落としていった。

 更に黒刀に氷をまとった一撃を放った。


「【氷菓神刀(クリスタシア・デーゲン)】!」


 蒼は氷の一撃を放ち、ジズさんを凍り漬けにした。


「やったか?」


 しかし、ジズさんはすぐに氷から脱出した。

 更に蒼が切り落とした筈の触手が既に修復されていた。

 超速再生だ。あのタコの化け物には超速再生能力が宿っている。


「……ちっ…面倒だな」


 アウスはそう言って、耳に付けていたピアスを変形させ、十字架の剣に変えた。

 その瞬間、周囲の空気が一斉に発火した。

 更にはジズさんの体内まで発火していた。


「何だ?あれは…?」

「アウスは錬金術の神でね。今のは空気を炎に錬金してあの化物の体を焼き払ってるんだよ。で、更に内蔵も炎に錬金している」


 ジズさんは内部から崩壊を起こしていた。

 あれでは超速再生は不可能である。いくら超速再生を持ってしても再生する場所まで発火されては再生できない。


「終わりだな…」


 ジズさんはやがて燃え尽き、粉々になって消えた。

 しかし、地面から突然、触手があった、出現した。


「もう一匹いやがったのか!?」


 一匹はアウスが完全に消滅させていた。

 髏奇はあらかじめもう一匹のジズさんを地中に仕掛けていたのだ。


「まぁ、関係ねぇけどな…」


 アウスは再び、さっきと同じ術を放とうとする。


「待て!こいつは俺がやる」


 声の主は屍であった。


「あ?何言ってんだ!?こいつは無限に再生するんだぞ!?てめぇが何とか出来んのかよ!」

「やれるさ…試したい事もあるしな」


 そう言って、屍はアウスの前に立った。

 そして、腰から長四角い石盤の様な物を取り出した。

 『アルダメルクリー』…屍が錬金術を扱う際に扱うデバイスだ。

 しかし、『アルダメルクリー』は屍の錬金術を使う補助をするだけだ。

 この道具が無くても屍は十分錬金術を扱える。

 屍は『アルダメルクリー』をジズさんにかざした。

 すると、『アルダメルクリー』は輝いた。


「成る程な…あの化物の体構造は把握した。なら、こいつはもういらねぇ…」


 屍は『アルダメルクリー』を腰にしまった。

 そして、素手で突撃した。


「な!?あいつ…素手で!?」


 アウスは驚き、屍を追おうとするが、意外にもアスディアがアウスを止めた。


「アスディア!?」

「まぁまぁ…彼にやらせてみようじゃないか…」


 アスディアは何も蒼にしか眼中にないという訳では無い。

 当然、蒼の仲間にも注目しているし、彼等の力には興味がある。

 戦力になるか…ならないか…アスディアはそれを見定めようとしていた。


「行くぜ…」


 屍はジズさんの体に思いっきり殴った。

 しかし、屍の拳がジズさんの体にめり込み、飲み込まれようとしていた。


「屍!」


 蒼が声を上げ、屍を助けようとする。しかしー

 蒼が屍を助ける事は無かった。何故ならー


「な!?」

「ほう…」


 アウスとアスディアはそんな声を上げた。

 何故なら、ジズさんの体が突如粉々に砕け散ったからだ。

 更にアウスと違い、屍はジズさんの体を木っ端微塵にした訳では無く、破片も残っている。

 しかし、超速再生は発動しなかった。


「一体…何を…」


 アポロはそう呟いた。

 確かに屍にあんな能力は無かった筈だ。

 触れただけで相手をバラバラにする能力など屍は使えなかった筈だ。


「まさか…屍…錬金術以外に何か技を…?」

「いや、今のも錬金術だぜ?いや、厳密には錬金術の一歩手前だな」

「え?」


 一夜の質問に答えた屍だが、美浪を始め、アスディアとアウス以外は屍の言葉を理解出来ていなかった。


「成る程ね、「崩壊で止めた」んだね」

「そう言う事だ」

「どう言うこと?」


 ランクルがアスディアの言葉の意味が分からず、アスディアに聞いてきた。

 しかし、解答したのはアウスだった。


「錬金術を成功させるには三つの段階があるんだよ。「理解」、「崩壊」、「再構築」の三段階だ。そこのガキは再構築の前の段階である二段階目の崩壊で止めたんだ。そうすれば、相手の体はバラバラになる。しかも、そこのガキは見た感じかなり格闘スキルも高いな…うってつけの能力って訳だな」


 そう、アウスが言うように錬金術には三つの段階を経て、初めて成功する。

 一段階目の「理解」は錬金する対象の構造を理解する事だ。構造を理解しなくては作り替えようが無い上に錬成陣も構成できない。これは錬金術を成功させる為の最低重要条件だ。

 二段階目の「崩壊」。これは物質を再構築するに辺り、一度バラバラにして新たな物質を作るというのが錬金術の仕組みの為、必然的に行われる。

 三段階目の「再構築」を経て、錬金術は初めて発動する。


「しかも…てめぇ…俺と同じで錬成陣無しで錬金出来るのか…」


 一段階目の「理解」…これを完全に得る為に錬成陣を作成する必要がある。

 しかし、屍とアウスは例外であり、錬成陣無しで錬金術を発動させられる。

 尤も、それでも錬金する体構造を把握しなければ錬金は不可能だが。


「俺も驚いた…まさか俺以上の錬金術師がいるとはな…」

「俺も驚いた…錬金術なんて使いづらい古代術を使う奴がいるとはな…」

「自分の使う術をそこまで卑下しなくても…」


 アウスが言うように錬金術は戦闘において、非常に扱いにくい。

 その理由は錬成する際に、錬成陣を書く必要があり、高速戦闘において非常に不利だからだ。

 その為、身体に錬成陣を取り付けて戦闘するのが主流であったのだが、それでも錬成陣を破壊されると無力化する為、戦闘では使われなくなった。

 更には科学が元から発達していた為、錬金術はかなり初期の段階で形骸化している呪術であり、使う者などほぼいないといってもいいだろう。


「錬金術師は身体能力が低い傾向にあるが…てめぇは相当高いな…あんなやり方はお前ぐらいにしか出来ねぇよ」


 アウスがそう言った。

 アウス含め、錬金術師は身体能力があまり高くない傾向にある。

 勿論、中にはそれなりの身体能力を持つ者もいるのだが、それでもたかがしれている。

 何故なら、錬金術は物質を錬成して戦うという性質上、遠くから離れて戦う傾向があるからだ。

 屍の様な超接近戦タイプの錬金術師は非常に珍しい。


「それはどうも…」

「やれやれ…お前…俺の元で鍛える気は無いか?」

「!?」


 アウスの突然の誘いに屍を始め、ここにいる全員が驚いていた。


「お前には素質がある。どうだ?」

「…光栄な事だが…今はまだいい。だが、いずれアンタの元で鍛えたい」

「ああ、待ってるぞ」


 どうやら、アウスは屍を高く評価している様だ。


「まぁ、これで一件落着ってとこかな?」


 ランクルがそう言う。


「何を言っている?決闘は終わったがまだ完全に終わった訳では無いぞ」


 今まで無口だったジェネミが口を開いた。

 すると、イシュガルとプロテアが向かい合った。


「プロテア…」

「イシュガル…ご免なさい…」

「いや、いい。それが君の選択ならば…俺は素直に引き下がるさ。………まぁ、いつでも待っているがな」


 イシュガルは笑いながらそう言った。

 イシュガルが笑顔でいる事は珍しいらしく、アスディアはニヤニヤしながら聞いていた。


「時神蒼…おれに勝った以上、プロテアを任せるぞ」

「言われなくてもだ!」

「なら、いい。貴様と戦えた事、誇りに思うぞ。また機会があれば…」

「断る!」

「………」

「お前と戦うなんて二度と御免だ!今回勝てたのはまぐれだ。勝ち逃げさせて貰うぜ」


 蒼はイシュガルと戦うのは二度と御免だった。

 今回はイシュガル側が多くのハンデを背負った上で蒼は何とか勝てたのだ。

 なので蒼はもうイシュガルとは戦いたく無かった。


「そうか…」


 イシュガルは少し残念そうであった。


「じゃあ、君達はもう帰るって事かな?」

「そうだな…ようやくお前らとおさらばだ」

「全く…フローフルはツンデレだな」

「死ね」

「ねぇ?そのシンプルな一言が一番傷付くんだよ!?」


 アスディアは蒼の暴言に溜まらず叫んでしまった。


「……あの…あなたが預言の神…ですね…」


 一夜が突如、ジェネミに声をかけた。


「そうだが…私に何か用か?」

「もしあなたと会えたら…お話がしたいと思っていました」

「…そうか…で?話したい事とは何だ?」

「済まない…皆。僕はこの人と一対一で話したい。だから、君達は先に帰っていてくれ」

「一夜?」

「頼む」


 一夜がそう言うと蒼は「分かった」と言って一夜の意思を尊重した。


「いいの?」

「一夜があそこまで言うのも珍しいしな…よっぽどの事なんだろ」


 蒼がそう言うと皆は納得した様だ。


「じゃあ、一夜君以外はここから帰る…て事だね?ああ、一夜君ならジェネミとの話を終えたら僕が君達のいる場所へと転送するよ。さぁ、皆集まって集まって」


 アスディアがそう言って、一夜以外の七人が集まり、彼等の足元に魔法陣を作った。


「じゃあ!転送するよ!それ!」


 アスディアがそう言うと蒼達は虚空へと姿を消した。


「僕達もいない方がいいかな?」

「お願いします」

「分かったよ。イシュガル…」

「ああ、分かっている。今だけはここにいてもいい」


 この世界はイシュガルがいる世界だ。

 だが、イシュガルは寛容だ。こういった事もある程度融通が利く。ガルデアは利かないが…


「皆、行くよ!」


 そう言って、一夜とジェネミ以外の神々が去っていった。


「で?話とは何だ?」

「あなたは…預言を司る神…なんですよね?」

「ああ」

「僕に…あなたの力を教えて下さい」


 一夜はジェネミにそう言った。




To be continued

 【第七章】海王の花嫁篇終了です。今回のストーリーは恐らく二番目に短いですね(一番短いのは二章の四大帝国会議篇)パルテミシア十二神はこれからのストーリーの核心に迫るキャラ達ですのであまり深く書けなかったですね。

 因みにパルテミシア十二神に関してですがアスディアはかなり初期の方からキャラが固まってたんですがほかのキャラ…特にアウスとジェネミとランクルはこの話になるまで全く固まってませんでした。

 残る話は残り四章です。大分終わりが見えてきましたかね?ぶっちゃけこんなに長くやる予定は無かったです。

 次回はお察しの片もいるかもしれませんが過去篇です。今までキャラクターの過去を断片的に描写する事は多くあったんですが一章丸々書くのは今回が初ですね。今まで明かされなかった謎が多く分かる(筈)です。

 それでは次回お会いしましょう!

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