【第七章】海王の花嫁篇Ⅳーtodayー
蒼達は一夜の家に集まっていた。
蒼達がイシュガルの情報収集を始めて三日経ち、お互いに情報を共有していた。
「成る程ね…ちゃんとそれなりには調べたみたいだね」
「当然だろ?何せ、俺の命の危機だからな!」
「何で君が胸を張るんだい?」
蒼の態度に少しキレそうになった一夜であった。
そもそも今回の一件の原因は蒼がイシュガルに喧嘩を売ってしまったのが原因なのだ。
致し方無い事も多かったと言えば多かったのだが、流石に蒼の今の態度は一夜的にはあまりよろしく無かった。
「で?一夜は?さっき話した情報以外で何か分かった事はあったのか?」
「そうだね…君達が話してくれた内容は大体僕は把握していた」
「いや、それ俺達に情報収集させた意味無くね?」
「大有りだよ。こういう事は自分で調べた方が頭に入りやすいんだよ。特に蒼は話を聞いてるんだか聞いてないんだか分からないからね。それに情報を共有する事で僕の調べた情報と君達の調べた情報に齟齬が無いかの確認にもなる」
「いや、俺お前にどんだけ信用されて無いんだよ!?」
「逆に何で信用されてると思ったんだい?」
「全くね。あなたは後先考えずに行動するからその時のあなたは迷惑以外の何者でも無いわ」
「挙げ句面倒事は他人に押し付けるしな」
一夜が蒼に反論するとアポロとインベルも乗っかって来た。
まぁ、一夜以外で蒼に振り回されまくっているのはこの二人であるから言いたくもなるのだろう。
蒼は三人からの集中砲火を受け、仕方無く押し黙った。
「で?苗木、アンタはどんな事が分かったんだ?」
「ああ、イシュガルは海と大地を司る神だ…まぁ、この時点で察するとは思うが彼は七元属性の内の二つ、水と土、二つの属性を得意としている。つまり、彼を倒すには相性的に有利な雷と風属性が有効という訳さ」
「あー、確かにそうだな」
一夜の説明に屍が納得した。
しかし、蒼は一夜と同じ結論に至っていた様で特に反応は示さなかった。
「因みに蒼はどの属性が得意なの?」
「察しはついてるだろ?俺が得意な七元属性は水と闇だ。正確には俺は派生属性である氷と時属性が得意だ」
蒼は慧留の質問に淡々と答えた。
蒼の扱う天使、【氷水天皇】は氷属性、【黒時皇帝】は時属性を司る。
【氷水天皇】は一応、氷だけで無く、派生元の属性である水属性の力を扱えるし、光属性も微量に含んでいる複合属性ではあるがそれでも基本属性は氷である。
「氷の派生元は分かるけど時属性って闇の派生属性なの?」
「ああ、そうだな。時間や空間系統は闇属性の派生属性だ」
「まぁ、この機会だから属性について詳しくやっておくのもいいかもね」
そう言って一夜は説明を始めた。
「七元属性には火、水、雷、土、風の五大属性と光、闇属性の二極属性で構成されている」
「んで、火は風に強く水に弱い。水は火に強く雷に弱い。雷は水に強く土に弱い。土は雷に強く風に弱い。風は土に強く火に弱い。そして、二極属性である光と闇はお互いに強くお互いに弱い」
一夜が七元属性の説明をした後、蒼が七元属性の相性について説明を始めた。
更に、インベルが説明の続きを始めた。
「で、派生属性についてだけど、これは七元属性の属性性質を変えて使用するんだ。使える奴は希少だな」
「派生属性の代表的な属性がそれぞれあるわ。例えば、さっきも言ったけどフローフルの使う氷属性は水属性の属性を変質させた派生属性よ」
更にアポロが説明を続けた。
火属性の代表的な派生属性は爆破属性であり、四宮舞が使役している四大神である【戦神】がこれに該当する。
水属性の代表的な派生属性は氷であり、これは説明した通りである。
雷属性の代表的な派生属性はプラズマ属性であり、これは電気に強力な熱を帯びている属性である。派生属性の中でも使える者が少ない非常に珍しい属性である。
土属性の代表的な派生属性は鉄属性や草属性である。鉄属性はプロテアが使える。そして、草属性は舞が使役している四大神の一体である【豊神】が使える。
風属性の派生属性は音属性であり、周囲の音を自在に操る事が出来る派生属性である。この属性は音峰遥が使えていた。
闇属性の代表的な派生属性は時属性や空間属性である。闇属性はこの世界の概念に干渉する属性が殆んどであり、闇属性の派生属性もまた、使用者が非常に少ない属性でもある。
最後に光属性の代表的な派生属性は回復属性と幻属性である。回復属性はその名の通り、相手の傷を癒す属性であり、幻属性は相手を幻術に嵌める属性である。回復属性はまだしも幻属性が光属性の派生属性に違和感があるかもしれない。
慧留はその事に疑問を持ち、アポロに質問をした。
「ねぇ、アポロ、おかしくない?何で幻術は光属性に該当するの?」
「それは闇属性の派生属性は基本的にこの世界の概念…つまり、生物以外に干渉する能力。それに対して光属性の派生属性は基本的に生物に直接干渉する属性。だから、生物の五感を狂わせる幻属性は光属性に該当するのよ」
「あ~、成る程ね」
「因みに闇属性の派生属性を使える奴は希少だが、光属性の派生属性を使える奴はそんなに珍しく無い。むしろ、身体強化とかの強化系の能力も光属性に該当するから派生属性は光属性が一番一般的だな。逆に闇属性の派生属性を使える奴は希少も希少だ」
「まぁ、ここにいる人達は殆ど時属性が使えるんだけどね…使えないの僕とインベルとアポロだけだし」
インベルの付け加えの説明に一夜はさらに付け加えた。
確かにここにいるメンバーは殆どの者が時属性を使う事が出来る。
蒼は言わずもがな、【黒時皇帝】は時間を止めたり加速したり、時属性エネルギーまでも扱える。
慧留は時間の巻き戻しや【時黒王子】による過去改編の力を扱える。
屍は物質の時間を際限無く止める事が出来るし、美浪は時間を数秒飛ばす事が出来る。
そして、プロテアは時間の加速と減速を使え、更には時を渡ります過去や未来に飛ぶ事が出来る。
「何か…改めて考えるとヤバイ面子ですよね…このメンバー…」
美浪がそう呟いた。
美浪は自分で言うのもどうかと思ったがやはりそう思わずにはいられない。
「何か時属性を使える奴が珍しく感じなくなるなこりゃあ…」
「まぁ、あなたは使えないしね」
「うるせぇ!お前だって時属性は使えないだろ!?」
「まぁ、そうね」
インベルの言葉をアポロはさらっと流した。
「そして…基本的に魔族人間問わず、七元属性のいずれかには必ず適正がある。勿論適正のある属性やそれに近い属性も扱える」
「近い属性?」
「ああ、例えば闇属性に適正のある奴は大概光属性の適正もあるんだ。まぁ、これは個人差が激しいから何とも言えないけどな」
「へぇ~。その適正って確かめる方法ってあるの?」
「ああ、それはこれを使って調べられるわ?」
プロテアはそう言いながら紙切れに魔方陣を描いた。
「これは?」
「これは属性魔方陣よ。この陣に手を置く事で適正属性が分かるわ…例えば…」
慧留の質問にプロテアは淡々と答えながら紙切れに霊力を込めた。
すると紙切れはボロボロに崩れた。
「土属性に適正があるなら紙はボロボロになるわ。慧留、あなたも一応、やってみたら?」
プロテアは慧留に紙切れを渡した。
そして、慧留は紙に霊力を込めた。すると紙が黒ずんで消えていった。
「闇属性に適正があれば黒ずんで消えるわ。どうやら慧留は闇属性に適正があるみたいね。まぁ、時属性が得意だから察しはついてたけど」
「因みに火属性は紙が燃える」
「水は紙が濡れる」
「雷は紙に電流が走って紙が収縮するね」
「光属性は紙が光るんですよ」
「そして、風属性は紙が切れる」
アポロ、インベル、蒼、一夜、美浪、屍の順番で答えた。
「へぇ~。面白いね!って皆は知ってたんだ?」
「まぁ、訓練する時やらされるしな。お前は逆にやった事ねーの?」
「え~、言われてみればやった事があるような…無いような…」
慧留はどうやらやった事があるようだが、忘れていた様だ。
因みにこの属性魔方陣は霊術や魔術を会得する際に必ずと言っていいほどやらされる。
慧留一人がやった事が無い筈が無いのである。
「で?皆はどの属性が得意なの?」
「俺は水」
「俺は火だな」
「僕は雷だね」
「私はさっき見ての通り土よ」
「俺は光だ」
「私も屍さんと同じ光ですね」
「私はあなたと同じ闇属性よ」
慧留の質問に蒼、インベル、一夜、プロテア、屍、美浪、アポロの順番で答えた。
「でも、皆は複数の属性を使えますよね?」
「ある程度力を付ければ大体は二属性以上使える事は珍しく無いわ。流石にフォルテみたいに五つ使えるのはかなり珍しいけど、大概は二つあるいは三つは使えるわ」
「あー、成る程。蒼も攻撃系の霊呪法は全部使えるし複数使えるのは珍しい事じゃ無いんだ」
「ま、霊術法は仕組みが全然違うんだがな」
「どういう事?」
慧留は屍の言葉の意味が全く分からなかった。
「霊呪法は結構特殊でね…そもそも霊呪法は大気の霊力を取り込んで放つ技だから属性の適正が全く無くても大気の霊力を操る技術さえあればどの属性も使えるんだよ」
「そう何ですか!?」
「霊呪法は人間しか使えないからね。因みに美浪君が使えるのは彼女の先祖に人間がいたかららしいよ。それに…」
「私…霊呪法はそんなに使うのが得意じゃないんです…霊呪法を使ってたのはなるべく人間だと思わせる為で…でも今はそんな必要が無くなったので全く使ってませんね」
三年前まではこの十二支連合帝国の人間は魔族に対して差別的に見ていた。
だが、閻魔の独裁政治が無くなり、常森厳陣が総帥になってからは完全にそれが払拭されており美浪は自身が魔族である事を隠す必要が無くなったのだ。
元々は人間にしか扱えない力なので美浪があまり得意では無いのは当然であり、むしろ魔族でありながら霊呪法を使える方が異質であると言える。
「勿論、自身に適正のある属性の霊呪法の方が使いやすいし威力も出るよ」
「だから、俺は基本的に氷や水の霊呪法を多く使ってる」
「そうなんだ…」
「で?時神、お前、風属性と雷属性は使えるのか?」
屍は蒼に問い掛けた。
屍の問いは尤もな質問である。
イシュガルが水と土の二つの属性の使い手ならばそれに強い雷と風の属性を扱えるのが絶対条件な筈だ。
しかし、蒼は顔を曇らせた。
「一応、使えるには使える…だが、霊呪法はさっきも一夜が言ったが適正属性ほど威力が出る…俺は雷も風も使えない…霊呪法は大気の霊力によって左右されるから恐らくイシュガル戦では雷も風の霊呪法は使えない。使えたとしてもイシュガルと渡り合えるレベルはムリだ…」
蒼が扱える七元属性は水と闇であり、それ以外は霊呪法を使って周囲の霊力を取り込んで使わなければならない。
仮に霊呪法を使えたとしても威力は知れている。
「今すぐ風と雷属性の習得を…て、出来る訳無ぇよな…」
屍が言い掛けた所で屍自身も言葉を止めた。
属性の習得はかなりの時間を要する。しかも、自身に適正の無い属性を会得するのは結構な時間を要する。
というより、複数の属性を扱える者は珍しくないとは言ったが七元属性全てを扱える者はいない。あのフォルテですら五つの属性を扱えるのが限界なのだ。
複数の…しかも適正が全く無い属性を習得するのはそもそも不可能な事も珍しくない。
当然、イシュガル戦までに間に合う筈も無い。屍はそれが理解出来ているから途中で言葉を止めたのだ。
「確かフローフルって七元属性の中でも風と雷が特に苦手じゃなかったか?」
「そうね、フローフルは水と闇は勿論、火、土、光属性はある程度扱えた筈だけど雷と風は全然だったわ」
「…………」
インベルとアポロの指摘に蒼は顔が真っ青になった。
「蒼?」
「ああ、インベルとアポロの言ってる事は本当だ…プロテアが作った属性魔方陣より更に魔力の適正を測れる魔方陣があるんだ…俺とインベルとアポロはそれ使って適正を測った事があったんだ…火と土と光はある程度適正があったんだ…けど、風と雷は適正ゼロだったんだよ…」
「て事は…」
「俺じゃあそもそも風属性と雷属性の習得は愚か、まともに扱う事すら出来ねぇんだよ!」
「因みに俺はフローフルが使えない風と雷はある程度適正があるし一応使える」
そう、蒼は七元属性の中でも風と雷の扱いが非常に苦手であった。
インベルは逆に火、風、雷以外の適正はかなり低く使えない。
「という事は…蒼とイシュガルの相性は…」
「悪い…何てレベルじゃねぇ…最悪中の最悪だ…」
そう、イシュガルの弱点属性である風と雷の力を蒼は悉く使えない。
只でさえ、イシュガルの戦闘力は前回戦ったアラルガンドを遥かに凌駕していると言うのに更に相性まで最悪と来た。
「イシュガルはトライデントを使って大地と海を自在に操る。だが、全く同時に操る事は出来ない。これが勝利の鍵になるだろうね」
「結局分かったのは時神とイシュガルの相性が最悪って事だけじゃねーかよ…」
屍は落胆した表情をしていた。
それはほかの者達も同じであった。
しかし、一人だけ落胆していない者がいた。
「いや、全く勝機が無くなった訳しゃねぇ…」
「蒼?」
そう、落胆していなかった者は蒼だ。
「何か…手があるのかい?」
「賭けの様な方法だが色々調べて思い付いた事がある。この情報収集は無駄なんかじゃ無かったよ。皆、ありがとな」
蒼が礼を言うとアポロとインベルが衝撃的な表情をしていた。
「フローフルが素直に…御礼!?」
「信じられねぇ…あのフローフルが!?」
「俺が素直に礼を言ったら悪いのかよ!?」
「いや…だって…」
どうやらアポロとインベルにとって蒼が素直に礼を言った事が相当衝撃的な事であった様だ。
アポロとインベル以外はそこまで不思議そうな表情はしていなかった。
「逆にアンタ達は驚かねぇのか!?」
「いや、確かに蒼は素直じゃない時はあるけど…そんなびっくりする事でも無いよ?」
「そうだな、素直な時は意外と素直だぞこいつ」
「まぁ、確かに最初の頃の蒼だったなら僕もインベル達と同じリアクションだったかもだけど…今は違うよ」
「確かにそうかもしれないですけど今はそう思わないですね」
「フローフルはいつもまっすぐよ」
インベルの問いに慧留、屍、一夜、美浪、プロテアの順で答えた。
アポロ達が知っている蒼と慧留達が知っている蒼は違うという事を表していた。
「でも…私達が知らない蒼をいっぱい二人は知ってるんだね…」
「ちょっと、そこは羨ましいわね」
慧留とプロテアがそう呟いた。
慧留は蒼と出会って三年程、プロテアは会って数ヶ月しか経っていないのだ。
アポロとインベルはそれ以上に蒼と共にいる時間が長いのだ。二人はそんなアポロとインベルを少し羨ましく思ったのだ。
「この件が終わったら、あなた達にもちゃんと話すわ。大事な事から…下らない事まで…ね…」
アポロは優しい表情をしながらそう言った。
誤解され勝ちではあるがアポロは本来慈悲深い性格をしている優しい人物である。
蒼やインベルに対しては良くも悪くも遠慮が無いだけなのである。
逆に言えばアポロが蒼とインベルをそれだけ深い関係にある事も意味している。
「そうだな…俺達の苦労やどんな事があったのか…仲間のお前らに話さないと失礼だよな…お前らに」
インベルがそう言った。
インベルは蒼とアポロを繋げていた存在であった。
だからこそ、蒼もアポロもインベルに憎まれ口を叩きながらも信頼している、していられる。
「ああ…約束だ。この一件が終わったら…ちゃんと話す」
最後に蒼がそう皆に宣言した。
そう、蒼は話さなくてはならない。自分の過去を…そしてこれからを彼等と共に過ごす為には話さなくてはならないのだ。
「さてと…で?フローフル、お前が考え付いたイシュガルと対抗する為の方法ってのはどんなの何だ?」
インベルが訪ねると蒼は答えた。
「ああ、まぁ、そんなに難しい事でも無いんだけどな…」
蒼はそのまま説明を始めようとした。するとー
ズッン………
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
蒼達はこの世界の大地が揺れた気がした。
しかもただの地響きでは無い。強大な霊圧がどこからか感じ取れた。
しかし、どこから感じるのかまでは皆、捕捉出来ない様であった。
「何だ!?」
「この霊圧は…」
インベルと屍がそう呟いた。
「やっぱり、気のせいじゃ無いですね…」
「そうね…この霊圧は?」
美浪とアポロも無論、謎の霊圧を感じており、訝しげな顔をしていた。
「ただ事ではなさそうだね…」
「今まで感じた事の無い霊圧ね…」
一夜とプロテアは他の者達と比べて比較的冷静ではあったが動揺しているのは間違い無かった。
「蒼?」
慧留が声を掛けるが蒼は無言であった。
「おい…屍…お前…この霊圧に覚えは無いか?」
「何を言って…… !?」
蒼の言葉に屍が何かを理解した様な表情をした。
「いや、だとして何でだよ!?」
「さっきから蒼も屍さんも何の話をしてるんですか?」
蒼と屍の会話に他の六人が付いてこれていなかった。
堪らず美浪が二人に問い掛けた。
「この霊圧…よくよく探ってみたら…あいつの…あのガルデアとかいう奴の霊圧じゃねーか!?」
屍がそう言った。
「ガルデア?誰よ…?」
「ガルデア…ガルデア・ハーデス・パルテミシア…パルテミシア十二神の一人だ…」
「な!?」
プロテアの質問に屍は淡々と答えた。
屍と蒼はアザゼルが引き起こした事件である百夜亡霊事件でアザゼルを断罪する為にガルデアがやって来た所に出くわしている。
それにより、蒼と屍以外にこの中でガルデアと面識のある者はいない。
ガルデアの凄まじい霊圧は間違え様が無かった。
「だが、もう一方の奴は…?」
「恐らく…ゼウスだ…」
「「「「「「「!?」」」」」」」
蒼の言葉に他の七名が驚愕の表情を浮かべた。
蒼の話が事実ならばアスディアとガルデアが争っていると言う事になる。
「何であいつらが争ってるんだよ!?仲間なんだろ!?」
「俺が知るかよ!」
インベルが蒼に訪ねるが蒼とてパルテミシア十二神の事をそこまで知っている訳では無い。
何故、二人が争っているかなんて蒼に分かる筈も無い。
「だが、どちらにしても…どこにいるか分からない状態だ…僕らではどうしようも無い…」
一夜が言う事は尤もであった。
霊圧は感じるには感じるが霊圧が感じる場所が全く捕捉出来ない。
幸い、一般人の大半はこの霊圧を感じ取れていない様で極一部の者しか感じてはいない様だ。
これならばこちらにまで被害が来る確率は低いと言える。
「今は…様子を見るしか…無いみたいね…」
アポロがそう言うと皆はそれで納得するしか無かった。
場所が分からない以上、手の打ちようが無かった。
蒼達は霊圧が収まるまで様子を見る事にした。
アスディアとガルデアは突進し、拳を交えた。
アスディアとガルデアは『世界宮殿』で戦っていた。
拳が交わる事に『世界宮殿』が震撼する。
「どうした?こんなモノか?」
「冗談は止してくれよ?ガルデア…君こそこの程度だとしたら拍子抜けだよ!」
アスディアはガルデアの脇腹を蹴り飛ばした。
そして、アスディアは手から電撃を作り出した。
「【雷神撃】!」
アスディアはガルデア目掛けて電撃を発射した。
電撃はガルデアに直撃した。ガルデアの周囲に土煙が発生しており姿が見えなかった。
まぁ、この程度で倒れるなどとはアスディアは毛頭思っていない。
「甘いな…」
「………」
ガルデアの声が聞こえた。
ガルデアの身体から黒色の霊力で出来た巨大な鎧がまとわれていた。
「【暗黒兵器】か…」
「今度はこちらから行くぞ」
ガルデアが一瞬でアスディアの目の前に現れた。
「!?」
「【冥王剣】」
ガルデアは身の丈程の黒い大刀を生成し、アスディアに斬りかかった。
アスディアは自身の身体を電気に変え、高速で攻撃を回避し、逆にガルデアの後ろに回り込んだ。
しかし、ガルデアの黒い霊力の鎧は健在であり、アスディアの一撃がガルデアに届かなかった。
「バカが」
ガルデアは何の躊躇いも無くアスディアを切り裂いた。
アスディアはその衝撃により後方へと吹き飛ばされた。
「ぐっ!?」
「舐められたモノだな…貴様の雷如きにこの俺がやられるとでも?」
「そう言う君こそ…神具を使っていないじゃないか?」
「貴様如きに使う神具があるか?そう言う貴様も神具を使っていないだろう。使ってもいいんだぞ?」
「君が使うまで僕は神具を使う気は無いよ」
アスディアもガルデアも神具を使用していない。
パルテミシア十二神には神具と言われる自身の専用武器がある。
神具を使う事で何倍もの力を発揮する事が出来る。
しかし、どういう訳か、二人共神具を使おうとはしていない。
「そうか…好きにしろ…その前に俺が貴様を倒す」
「やれるモノならやってみなよ」
アスディアがそう言うとアスディアの回りに蒼緑の電撃が発生した。
これはアスディアが本気の時に使う電撃だ。
「プラズマか…ようやく本気と言う訳か?」
そう、アスディアが使っている電気はただの雷属性の電気では無い。
プラズマ属性だ。プラズマ属性は雷属性の派生属性であり、雷属性の攻撃力を拡張した属性だ。
攻撃性能だけで言えばプラズマ属性は完全に派生元である雷属性の上位互換であり、非常に強力な属性である。
故に使用出来る者が少なく非常に珍しい属性でもある。そもそも雷属性は七元属性の中でも攻撃速度が非常に速い属性であり、単純な攻撃力は七元属性の中でも飛び抜けて高い強力な属性でもあるのだ。
アスディアは雷属性と風属性と光属性を得意としており、イシュガルとは対の天を操る力を持つとされる。
対してガルデアは闇属性と火属性を得意としており、ガルデアは派生属性では無く、純粋な七元属性である火と闇を極めている。
アスディアと比べて特殊性はあまり無いがその分単純な膂力が非常に高い。
戦闘スタイルも真逆の性質を持っている。
ガルデアの【暗黒兵器】は闇属性の力であり、闇の霊力を固めた力であり、あらゆる闇の武器を使用する事が出来る。
【冥王剣】はその内の一つであり、一振りで大地を切り裂く程の破壊力がある。
「行くよ」
アスディアが上空を舞いながら手を上に上げると空が曇り、雲から無数のプラズマが落ち、ガルデアに襲い掛かった。
ガルデアは【暗黒兵器】で防御したが、たったの一撃でガルデアの闇属性の巨大な鎧が粉砕された。
「ちっ!」
「【蒼緑雷撃】」
無数のプラズマがガルデアに襲い掛かる。
先程までは完全にガルデアが優勢であったが、アスディアがプラズマ属性を使ってからはアスディアが優勢になっていた。
ガルデアは身体中に傷を負っていた。
アスディアも傷を負っていたがガルデア程では無かった。
総合的に見ればアスディアが押している様に見える。
「それで終わりかい?あれだけ威勢を吐いておきながら拍子抜けだね。神具を使ったらどうだい?」
アスディアはガルデアを煽る様にそう言った。
しかし、ガルデアは表情一つ崩さなかった。
「侵害だな…この程度で神具を使っていては面目が無い…アスディア…貴様こそ、あまり調子に乗るなよ?」
ガルデアは再び闇属性の鎧を生成し、今度は槍を生成した。
槍には紫色の炎が宿っていた。
「【冥府の槍】」
ガルデアが紫ハート槍を飛ばした。
するとアスディアの心臓部に槍が突き刺さった。
「がはっ!?」
ガルデアの【冥府の槍】は投げた瞬間に槍が急激に加速し、狙った相手にいつの間にか命中させる技なのだ。
ガルデアは自身の火属性攻撃は直接攻撃には使わず攻撃補助の際に使用する。
今のは火属性により、弾道を加速させ、闇属性攻撃を高めたのだ。
あくまでガルデアは闇属性を主体に戦う。
「俺の能力…忘れていた訳では無いだろ?」
「ぐっ!?」
アスディアは自身の心臓を押さえた。
すると、アスディアが先程負った傷が完全に消えていた。
アスディアは光属性も使用出来る。回復属性も使用可能である。
だが、回復属性全般に言える事だが、自分自身を回復する時はとにかく霊力や魔力の消耗が激しい。
相手はガルデアだ。次に回復する機会は無いと考えた方がいいだろう。
「油断したよ…空中にいれば何とかなると思っていた…君は接近戦が得意だ。だから遠距離にいれば問題無いと思ってたんだけどね…」
「貴様は昔からそうだ。すぐに油断する」
「そう言うガルデアは気を張り詰めすぎだよ。疲れないのかい?」
「黙れ」
「それはこっちの台詞なんですけど…」
アスディアとガルデアの口論が再び始まったが神同士とは思えない程低レベルであった。
「さてと…僕としてはそろそろ降参して貰いたいんだけどね」
「貴様を倒すまでは降りるつもりは無い」
「ねぇ?君は一応、僕の兄だよね?大人気無くないかい?」
「悪いな俺はそこまで大人じゃない」
「ははは…でもこれ以上戦いを続けると現世や冥界にも影響が出るよ?それだけ僕らの力は膨大なんだ…やたらめったら使うモノでは無いよ」
そう、アスディアとガルデアの戦いにより『世界宮殿』全域にかなり影響が出てしまっている。
よく見ればあちこちにヒビが入っているし、空間が捻れてしまっている箇所もあった。
しかも二人の戦いの余波はここだけに収まらず現世や冥界にも影響が出かけている。
そうなれば他のパルテミシア十二神も流石に感付いてしまう。
「それに…現世やここがヤバくなるだけならともかく、冥界にも被害が出たら…君が一番困るだろう?」
「ああ、確かにそうだな。ならば、話は簡単だ。すぐに貴様を叩き潰せばいいだけだ」
「僕の話を聞いていたかい?これ以上戦う事自体が危険なんだよ。それに僕らの力は今の所互角…すぐには決着は着かないよ?」
「互角?面白い事を言うな?」
ガルデアはそう言って宙を舞い両手に魔力を集束させ、アスディアに放とうとしていた。
アスディアは顔を真っ青にしていた。この一撃がそれ程までにヤバイモノであるからだ。
「ちょっ!?本気かい!?そんなモノを放つつもりかい!?」
「神具を使っていないだけマシだ!」
「そう言う問題じゃ無いよ!」
ガルデアはこの『世界宮殿』を吹き飛ばすつもりで極大の一撃を放とうとしている。
アスディアは流石にガルデアがそこまでするとは思っていなかったのでかなり動揺していた。
「不味いな…神具無しであれを防ぐのは骨が折れそうだ…」
アスディアは草臥れた様にそう呟いた。
ガルデアは手加減というものを知らない。
常に本気で容赦が無くて…それ故に誰よりも強くて…アスディアの憧れの存在であった。
ただ、ここまで容赦が無いと逆に少しは手加減というものを覚えて欲しいモノである。
「【闇破撃】」
ガルデアは闇の波動をアスディア目掛けて放った。
闇の波動は当たった物質を全て無に帰す破壊の一撃である。
しかし、アスディアはガルデアの攻撃を避けようとはしなかった。
それも当然だ。この攻撃を避けてしまえば『世界宮殿』が崩壊しかねない。
崩壊するだけならまだいいが、そのせいで現世や冥界にも影響が出てしまえばそれこそ不味いからだ。
恐らく、ガルデアはアスディアが避けないと分かっていたから攻撃をしてきたのだ。
「全く…参るよ…」
アスディアは身体中に電気を放電させた。
その電撃はやがて蒼緑へと変わり、更に白い霊力がまとわりついていた。
アスディアは光属性とプラズマ属性を組み合わせたのだ。
そして、プラズマ属性と光属性を組み合わせた極大の一撃を放とうとしていた。
「【白蒼緑雷】」
アスディアは白いプラズマをガルデアの放った闇の波動目掛けて放った。
二つの技は拮抗していた。しかし、やがてガルデアの闇の波動はアスディアの放った白いプラズマに押され始めていた。
「くっ…」
「リーダーに刃を向けた罰だよ。反省しないさい、お兄ちゃん」
白いプラズマは闇の波動を完全に消し飛ばし、ガルデアに直撃した。
「ぐはっ!?」
ガルデアはアスディアの一撃を喰らい、地上へと落下した。
しかし、ガルデアはすぐに立ち上がった。
「結構強めに打ったのにピンピンしてるね…全く…嫌になるよ」
アスディアは溜め息混じりにそう言った。
ガルデアは身体の節々に傷を負っていたがまだまだ動けそうであった。
「やれやれ…これ以上やるんだったら本当に神具を使わないと行けないねぇ…」
アスディアは異空間から神具を取り出そうとしていた。
ガルデアも同様に神具を取り出そうとしていた。
二人の戦いは更に激しさを増そうとしていたその時ー
「そこまでだ!」
「「!?」」
突如、そんな声が聞こえ、アスディアとガルデアが動きを止めた。
そして、アスディアとガルデアは声のした方向に視線を向けた。
そこにいたのはジェネミであった。
「全く…嫌な予感がすると思ってきてみれば…」
「未来予知で気が付いたのか?」
「これでも予言を司る神なんでね…」
ジェネミはガルデアに「やれやれ」と言いながら言葉を返した。
まだ戦いが始まってから五分弱しか経っていない筈だがすぐに察知するとは流石だとアスディアもガルデアも思った。
「流石だね♪ジェネミ!いや~助かったよ~」
「誉められても全くこれっぽっちも嬉しくないが…何があった?」
ジェネミが問いただす。
元はと言えば、ガルデアがアスディアに喧嘩を吹っ掛けて来たのだ。
立場的にはアスディアが若干有利であると言える。しかしー
「いや~、ただの言い争いから喧嘩に発展しちゃったんだ♪僕も少しカッとなっちゃってさ~」
「全く…お前たちの中の悪さは相変わらずの様だな…」
「ははは…」
「フン!」
アスディアが適当に誤魔化すとガルデアが腕を組ながらその場を収めた。
「二人の戦いで現世や冥界にも霊圧が響いていたよ!全く…喧嘩はしちゃダメってあれほどいったのに!」
「全く…何やってんだよ…」
更にランクルとアウスがやって来た。
イシュガル以外の十二神が揃い踏みになっていた。
「ゴメンって~。もうこんな「バカな事」はしないよ。ねぇ?ガルデア??」
「………ああ。そうだな、だが忘れるなよ?これに関しては「両方バカ」だと言う事をな」
「ああ、それもそうだね、両方、バカだね」
「あなたたち…いい加減にしなさいよ」
アスディアとガルデアの口論にジェネミが注意をすると二人は押し黙った。
どうやら、アスディアもガルデアもジェネミに対しては頭が上がらない様だ。
「ったく、イシュガルの決闘の前にこの有り様じゃあ、先が思いやられるな」
「帰す言葉も無いね~」
アスディアは頭を掻きながらそう言った。
ガルデアは無言のままであった。
「それにしても…イシュガルは何してんのかね?」
「さぁな、奴は一つの事に集中すると目の前以外が見えなくなるからな」
ガルデアがそう呟いた。
そう、イシュガルは何かに集中するとそれ以外の事に気が付かなくなる。
恐らく、ガルデアとイシュガルが喧嘩していた事にも気が付いていないだろう。
「つーか、戦う場所はどうするつもりなんだ?改めて思ったが戦うのは世界が危険なんじゃ無いか?」
「流石にそこまで頭が回らない程奴もバカでは無い。手は考えてあるさ。何かは知らんがな」
「まぁ、ガルデアが言うならそうなんだろうな」
ガルデアは誰よりも仲間達の事を把握している。彼の言葉に間違いは一度も無かった。
だからこそ、アウスも素直にガルデアの言葉にすぐに納得するのだ。
「何だ何だ?お前達…何故また皆集まってるんだ?」
そんの間の抜けた声が聞こえた。イシュガルだ。
イシュガルはアスディアに会いに来たのだがまさか自分以外のメンバーが集まっているとは思わず驚いていたのだ?
「イシュガル…?」
「そうか…お前の仕業だな、ジェネミ?俺がここに来るのを知ってここに集めたな?」
「確かにここで全員また集まる未来は予知したけれど私は何もしていない。アスディアとガルデアがここで大暴れしていたから止めに入っただけだ」
「大暴れ…て…あ…確かに色々場所が壊れてるな…全然気が付かなかった…」
「君の事だからそんな事だろうと思った」
イシュガルは本当に何も知らなかった様だ。
ジェネミは呆れながら溜め息を吐いた。
「で?何でここに来たんだい?ここに来たという事は…僕に会いに来てくれたんだろう??」
アスディアが嬉しそうにそう言った。
そんなアスディアを見てイシュガルは気持ち悪がってアスディアから距離を取った。
「何で距離を取るのさ!?僕の話を聞いてくれよ!」
「俺はお前に用件を伝える為にここに来たんだ!貴様の話を聞いてやれるか!」
「酷いよ~!」
「どうせ、またお前がガルデアの感に障る様な事をして怒らせたのだろう?短気なガルデアにも問題があるが貴様にも問題があるぞアスディア」
「ちぇ~」
アスディアは面白く無さそうな顔をした。
まぁ、確かに説教をされて面白い顔をする者などまずいないだろう。
「で?用件て何なの~」
ランクルが間の抜けた声でイシュガルに尋ねた。
「ああ、決闘の場所を決めたからな。その報告に来た」
「へぇ~、詳しく聞こうじゃないか」
イシュガルはアスディア達に説明を始めた。
To be continued




