【第六章】ヘレトーア進軍篇ⅩーRecumptionー
「【天雷】」
ルバートが技の名を言うと広範囲に渡り、雷が落ちて来た。
蒼は雷を凍らせるがあまりにも雷が多すぎて捌き切れなかった。
蒼は身体中に切り傷を負った。
「凄いね…それが…【天使】の力…雷が駄目なら…火だね。【火炎花火】」
今度は炎の花火が蒼を襲った。
蒼の【氷水天皇】は氷属性である為、ルバートはその弱点を突いて来たのだ。
「【聖水刃】」
蒼の刀から巨大な水の刃を飛ばした。その水により、ルバートが発生させた炎を打ち消した。
ルバートは大変愉快そうな顔をしていた。
「水属性も使えるんだ…しかもこんな高レベルな…じゃあ、今度は…【風魔之一撃】」
ルバートは今度は風を巨大な竜巻を発生させた。
風は地面を抉るほどの破壊力であった。
しかし、蒼は大きく息を吸った。
「【霊呪法第八九八番【滅却乱舞】!」
蒼は息を凄まじい勢いで吐き出した。その息が全て業火となりルバートの発生させた風と激突した。
風はやがて炎に飲まれ、炎の勢いは更に増加し、ルバートに襲い掛かった。
風は炎に弱い。風は炎に飲み込まれ、更にデカい炎となったのだ。
「【霊呪法第七百五番【水神旋風】!」
風属性と水属性の複合霊呪法だ。
どうやら、ルバートも霊呪法を使う事が出来る様だ。
炎と水は打ち消し合い、完全に消えた。
「術と術のぶつかり合い…」
「なんて戦いだ…」
美浪と一夜がそう呟いた。
インベルと一夜、美浪、プロテアも敵の兵と戦闘中であるが、圧倒的な術のぶつかり合いに目が行ってしまっていたのだ。しかし、それは敵兵も同じの様だ。
「ふふふ…楽しいよ…蒼君…久し振りにね」
「悪いがお前の遊びに付き合ってる暇は無い」
「君、天使だよね?天使なら『聖歌』があるのに何でわざわざ霊呪法を使うの?」
「人の話を…」
「それに、霊呪法も属性技が大半だからそんな色々な種類の霊呪法を使えるのは結構珍しいし、使えたとしても全ての霊呪法をフルに力を発揮させるのは無理な筈…なのに君はあらゆる属性の霊呪法を使いこなしてる…これは凄い事だよ!」
ルバートは蒼の話を全く聞いていない。完全に知的好奇心に駆られている。
ルバートの言う事は正しい。霊呪法にも属性は存在する。まったく属性が無い攻撃を所謂無属性と言うのだが、霊呪法はこの無属性攻撃も多く存在する。
しかし、それでも属性攻撃が圧倒的に多く、全ての霊呪法を扱えたとしてもその一つ一つの性能をフルに発揮する事はまず不可能に近い。
人によって得意属性はある程度決まっており、例えば一夜は雷属性の霊呪法は使えず、それ以外の霊呪法は全く扱えない。
澪も全ての霊呪法を使う事が出来るが、彼女の得意属性は光属性の派生属性である星属性であり、全ての霊呪法の力を完全に弾出せていないのが現状だ。
ルバートの【魔術師】はあらゆる魔法を使い操る能力の為、彼女は例外としても蒼があらゆる霊呪法を使いこなせているのには違和感があったのだ。
ルバートは完全に蒼の話を聞いていない。このままでは全く事が動かないまであった。
「…俺はハーフエンジェルなんだよ…だから『聖歌』は使えねぇ。色んな属性の霊呪法を使えるのは俺自身、七元属性全てにそれなりに適性があるからだ」
「成程…それで…でも七元属性全てに適性がある者なんて聞いた事無いな…君にはどうやら「何かある」ね」
ルバートは訝し気に蒼を見た。
そう、七元属性全てに適性を持つ者など聞いた事が無い。恐らく、フローフルはいくつか使えない属性もある筈だ。
だがそれでもルバートはますます蒼に興味が湧いた。
「このまま術比べを楽しみたかったけど…気が変わったよ。君を殺して君の身体を徹底的に調べるとするよ、楽しみだ」
「な!?」
蒼はルバートの豹変ぶりに驚いた。成程、彼女は確かに自身の知的好奇心のみで動いている様だ。
だが、彼女の場合はただの知的好奇心が完全に狂気へと変わっていた。
蒼はこの手の者の考えは非常に分かりづらい為、苦手としている。
「僕は『二十二式精霊術』の力であらゆる属性を扱える訳だけど…得意属性は本当は一つだけなんだよ。僕の得意属性は光属性」
ルバートはそう言うとルバートの身体が徐々に変化していっていた。
ルバートの身体が巨大な兎の姿へと変わった。
その兎は金色の輝きを放っていた。兎の頭部からルバートが浮き出て来た。
ルバートの身体は両手のみが金色の兎と接続されており、それ以外は分離されていた。
「あれは…!?」
一夜がそう叫んだ。
無理も無い、巨大な兎は全長五メートルは超えていた。その巨体ぶりに驚くなと言う方が無理だ。
驚いているのは一夜のみでは無く、その場にいた者たち全員が驚いていた。
「【光照大兎】…僕の身体に宿っている太陽神だよ。そして、三大宗教の宗教神でこのヘレトーアに元から住んでる唯一の神だよ」
ヘレトーアの三大宗教のセクラム教、イシュガルド教の神はこのヘレトーアには住んでいなかった神だ。セクラム教の神、ケルビエルは神聖ローマにいた天使であり、イシュガルド教の神、ダーラマランは偽名であり、本当の名はイシュガル・ポセイドン・パルテミシアでありイシュガルはそもそもこの世界には住んでいない。
セクラム教の神、グノウェーはこのヘレトーアに住んでいる唯一の神だ。太古の昔からこの国にあがめられていた。
だが、性格はグータラで物臭な性格であり、アラルガンドが接触するまではヘレトーアに干渉する事は無かった。
しかし、八十年程前にアラルガンドにより、体内にグノウェーを封印された。
その時に偶発的に『二十二式精霊術』が発現し、【魔術師】を会得した。
「マジかよ…神が相手とか…」
ヘレトーアの唯一神だけあり、相当な霊力を宿していた。
ここら一帯を灰にする事など訳ないだろう。
これがセイント教の神官、ルバートの本気という訳だ。
正直、ホストクラブで戯れていた頃の彼女の面影は全く無かった。そこにあるのは全てを破壊しつくす巨大な兎のみだ。
「【光明】」
【光照大兎】の両目から光のレーザーが発射された。
蒼は片目からの光は凍り付かせたが、もう片方のレーザーは回避した。
しかし、レーザーは追尾してきた。蒼はそのレーザーも凍らせた。
「【光輝大砲】!」
【光照大兎】の口から光の光線が放たれた。
先程のレーザーは陽動だ。このままでは攻撃が当たってしまう。
「くそが!」
「【炎帝爆殺】」
巨大な炎で巨大な光の光線を消し飛ばした。
「!?」
「…誰だい?」
ルバートがそう言うとルバートの前に一人の人影が現れた。
白髪のオールバックの男であった。
蒼はその男に見覚えがあった。
「申し遅れましたね、ルバート卿。私は常森厳陣です」
「君が…常森厳陣…でもおかしいな。君の【太陽】は日中じゃないと力を出せない筈だ」
「あれから五十年経ってるんですよ。私とて少し位の修練は積んでおります。とは言え、確かに日中の方が力を使えるのも事実ですがね」
厳陣はそう言った。
厳陣はイシュガルドの血を継いでいる人間だ。故にイシュガルドが扱う『二十二式精霊術』を扱う事が出来る。
先程使用した『二十二式精霊術』は【太陽】と言い、日が昇っている時に使う事で力を使う事が出来る能力だ。
だが、それは五十年前の話である。今では夜でも力を使う事が出来る。それでも日中に使った方が威力は出るのだが。
「でもショックだね~。僕の一撃が本来の破壊力では無い【炎帝爆殺】とほぼ互角の威力なんて…」
「ご謙遜を…あなたはまだまだ本気で戦っておられない。しかし、心配なさらないで下さい、本気で戦わせて差し上げますよ」
「ふぅ~ん、大きく出たね、常森厳陣。なら、楽しませてよね!」
ルバートがそう言うと【光照大兎】が咆哮を上げた。
「常森さん…」
「時神君、君は速く先に行きなさい」
「分かった」
蒼が厳陣に言われ、【第二解放】を解き、先に進もうとする。しかしー
「「分かった」…じゃ無いわよ馬鹿!」
「がっ!?」
蒼は突如頭に激痛を覚えた。何者かが蒼の頭にドロップキックを加えた。
薄紫の髪と瞳を持った白い軍服を来ていた可憐な少女であった。
蒼はその少女に見覚えがあった。
「アポロ!?何でここに…」
「細かい話は後よ!まったく…どんだけ心配したと思ってんのよ!」
「…悪い…」
「そんなんで済めば警察は要らないわよ馬鹿!まったく…あなたは後先考えずに行動して…このポンコツね!」
「いくらなんでもその言い草はねぇだろ!」
「事実を言っただけよ!この馬鹿!」
「何だと…」
「まぁまぁ、二人共…落ち着いて…」
インベルが蒼とアポロの前に突然現れた。
恐らく二人が接触してる事に気付いてここに来たのだろう。
「「お前は黙ってろ(て)!」」
「へぶっ!」
蒼とアポロはインベルを殴り飛ばした。
インベルは二人の喧嘩の止めに入ったのにこの仕打ちはあんまりである。
しかし、インベルはめげずに立ち上がった。
「まぁ、折角の再開で舞い上がって本当は嬉しくて素直になれない気持ちは分からないでも無いんだけど今は戦闘中だ。思う所はあると思うけどここは仲良くー」
インベルが話してる途中で蒼とアポロは思いっきりインベルを蹴り飛ばた。
蒼とアポロはとてつもなく息が合っていた。
「誰が嬉しくて素直になれねぇだ!ふざけんなこの頭お花畑!」
「つくならもっとマシな嘘をつきなさい!このクソハゲ!」
その後、地団駄を踏むように二人はインベルを踏みつけまくった。
「いいか?俺は別に会えて嬉しいとかそんなんじゃねぇ。むしろ忌々しいぐらいだ」
「成程、アポロ、フローフルはこう言ってます。あなたと会えて嬉しい。ずっと君の事が好きでした付き合って下さい」
「言ってねぇわ!」
「何言ってんのよこの溶岩頭!」
蒼とアポロは再びインベルの顔面を殴り飛ばした。
だが、インベルはそれでも折れずに今度はアポロの通訳をしようとした。
だが、アポロは短銃を取り出し、インベルの眉間を打ち抜こうとした。
「アポロさん…?」
「通訳なんか必要ないでしょ?それが私の答えよ、それ以上変な事言ったらアンタ殺すから」
アポロが恐ろしい表情でインベルを見ていた。流石のインベルも心が折れそうだったがめげなかった。
インベルは相当タフなメンタルの持ち主である事が伺える。
「アポロ…そんなにフローフルの事が好…」
「はい、処刑」
アポロはインベルに銃弾を連射した。
インベルはどうにかそれを全て回避した。本気で撃ち殺しに来ていた。容赦無さ過ぎである。
というかいつの間にかアポロの標的が蒼からインベルへと変わっていた。無慈悲である。
「戦闘中に…舐めやがって!」
そう言って兵士たちが蒼たちに襲いかかった。しかし、アポロが兵士を銃弾で撃ち抜き、蒼が追撃し、兵士を一瞬で倒した。
更に蒼とアポロの後ろに数人の兵士が襲って来たが、それはインベルが剣で兵士を切り裂き、薙ぎ倒した。
「全く、蒼とアポロが二人の時は俺がいないとダメだな。すぐ喧嘩する」
「「お前なんか要らないんだよ(のよ)とっとと帰れ」」
「お前ら実は仲良いよね!?」
敵兵が襲ってくるが蒼たちは悉く打ち倒していった。
息の合った連携で蒼たちは次々と敵を薙ぎ倒していった。
「喧嘩する程仲が良いとは良く言ったものだね」
「全くだ」
ルバートと厳陣は蒼とインベルとアポロを見て、呆れる様にそう呟いた。
「なぁ、月影…俺、あの中にどうやって入ればいいか分かんねぇんだが…」
「私も…」
屍と慧留は蒼たちを見ながらそう呟いた。
「一気に道を開くわよ!【死滅天使】!」
アポロの銃が銃剣へと変化した。
「【天使強化】!」
アポロがそう言って右手を掲げるとと蒼とインベルの霊圧が上昇した。
アポロの『天使』である、【死滅天使】の能力はアポロの領域内にいる味方を強化する能力だ。
更に自身も強化出来、サポートと戦闘両方こなせる万能の『天使』だ。
「え?それって完全に私の上位互換じゃ?」
美浪はアポロの能力を見て、そう呟いた。
美浪も【身体強化】を使えるがあくまでも自身の強化しか出来ないし、霊圧を上げる事も出来ない。
完全に美浪の【身体強化】の上位互換である。
まぁ、美浪には【神掛】があるので差別点はあるのだが。
「【氷魔天刀】!」
「【炎天血剣】!」
「【死滅銃剣】!」
蒼は氷の刃を、インベルは炎の剣を、アポロは紫色の刃を放った。
兵隊は一気に吹き飛ばされた。相当な破壊力であった。
「フローフル!先に行きなさい!ここは私たちが何とかするわ。…借り一つね」
「そう言う事だ。速く行け、仲間が待ってんだろ?」
「デケー借りを作っちまったな」
アポロとインベルが蒼にそう言うと蒼は少し嬉しそうにそう言った。
蒼はアポロとインベルの元気そうな顔を見て、少し安心していたのかもしれない。
「後、アンタは回復!」
アポロは蒼を銃剣で切り裂くと蒼の身体中の切り傷が回復した。
アポロの【死滅天使】は切った者の傷を回復する能力を有している。
「ありがとう。インベル、アポロ!」
蒼はそう言って二人から去っていった。
「お前もフローフルも素直じゃねーな」
「うるさいわよ、インベル。…後で覚えときなさいよ」
「…お…おう…」
蒼は先に向かって行った。
すると、蒼を追ってプロテアと屍、慧留が来た。
「お前ら…」
「あなた一人では危険よ。付いていくわ」
「そー言うこった」
「止めに行こう!蒼!」
「ああ!」
蒼たちは先に進んでいった。
暫く走った後、大きな城が見えてきた。
「あれが…『精霊城』…」
「デカイ…」
「…行くぞ」
蒼たちは城の中に入ろうとしていた。しかし、警備がかなり厳しく戦闘は避けられないだろう。
「さて…と…乗り込むか」
「正面から?」
「ああ、正直、裏口から侵入すんのは無理だ。どこもかしこも敵だらけ。なら、いっそ、正面から突っ込んだ方がいい」
蒼はそう答えた。
実際、蒼たちだけで敵を掻い潜りながら城内に入るのは無理だ。
一夜がいれば何とかなったのかもしれないが、彼は向こうのサポートをしている。
「ふー、相変わらず行き当たりばったりだな。時神蒼」
黒い軍服を着た白と黒のオッドアイの黒髪ストレートヘアーが特徴の青年がいた。
彼はドゥームプロモ・ドラコニキル。USWのアンタレスの長である。
「ドラコニキル…お前も来てたのか…」
「ああ、だが、予想以上に敵兵が多い。この作戦の為に兵力を蓄えていたのだろう。全く、面倒な事だ」
ドラコニキルは忌々しげにそう言った。
彼がここまで渋面な表情をする事は敵の数がそれ程までに多いという事だ。
恐らく兵士の数だけなら四大帝国の中で最も多いのは確実だろう。
「そう言えばスープレイガはどこだ?」
「あいつは…先にこの中にいる筈だ」
「…そうか、なら速く行った方がよさそうだな」
ドラコニキルがそう言うと皆はコクリと頷き、『精霊城』の正面入り口に立った。
どうやら、ドラコニキルはスープレイガの身を案じているようだった。
「行くか…」
「そうですね」
「うん!」
「ふー、面倒だがやるしかないな」
「皆、死ぬなよ」
蒼がそう言うと皆は『精霊城』へと侵入した。
敵兵も彼らがここに侵入してきた事に気が付き、迎撃体制を取った。
「侵入者だ!迎え撃て!」
敵兵たちが蒼たちに襲い掛かってきた。
蒼たちはすぐに迎撃体勢を取った。
「喰らえ!」
屍はアルダメルクリーから無数の爆弾を造り出し、それを無造作に投げた。
爆弾は爆発し兵士たちを倒していった。
屍の持つ小型の武器はアルダメルクリーと言い、屍の霊力を喰って別の物質へと錬成する道具である。
美浪は【神掛】を使い、殴り倒していた。
「【拒絶王女】!」
慧留は敵兵の銃撃を「巻き戻し」、無効化して蒼たちを後方でサポートをしていた。
「【鉄王剣】!」
プロテアは白兵戦で敵をバタバタ斬り倒していた。
ドラコニキルも同様に長剣を駆使して敵を斬り倒していた。
「【氷水天皇】!」
蒼は氷の刀で敵を斬り倒していた。
敵の数は圧倒的だが蒼たちはどうにか今の所は無傷である。
「やれやれ、ここは私が迎え撃つしか在るまい」
薄ピンクのオールバックの男が突然現れた。
他の兵たちとは明らかに違うもは想像に難くなかった。
美浪はオールバックの男に殴り掛かった。
しかし、男は平然と攻撃を回避した。
「ほう、このピステルと相手をするとは…愚かだな」
「御託はいいからさっさと倒れるか通して」
「それは出来ないね、ああ、君はあのリーゼント頭の仲間か?成程な…」
「スープレイガさんの事を知ってるの!?」
ピステルが妖しい笑みでそう言うと美浪はピステルに言及するがピステルはそれ以上何も答えなかった。
更に敵の増援が現れた。流石にこれ以上多くなると蒼たちでも捌ききれない。
「くそ…数が多すぎる」
「数の暴力とか酷い話だ…」
「全くね、大人げないわ」
蒼と屍とプロテアは愚痴を溢しながらそう言った。
すると、屍と蒼の頭上付近から砲撃が放たれた。
蒼と屍は溜まらず吹っ飛ばされてしまった。
しかし、幸いにも二人共怪我は無かった。
「何だ!?」
「ふー、漸く来たか」
蒼が声を上げるとドラコニキルが待ちくたびれたと言わんばかりにそう言った。
そう、空に空母が三隻程浮かんでいた。
どうやら、ドラコニキルの口振りからUSWの増援の様だ。
空から何人かの人影が降ってきた。
黒かかった赤い髪と瞳が特徴の黒人の大男と緑色の髪と瞳、紫の長い髪とダークメタルな服を着ている男性とそして、黒かかった茶色のセミロングとワンピースが特徴の女性であった。
「グリトニオン、グリーフアルト、アルビレーヌ!」
蒼が彼等の名を呼んだ。
そう、彼等はUSWの『七魔王』のメンバーだ。
ウルオッサのみが姿を確認できない。
「ウルオッサは…留守か」
「ええ、どっちにしても『七魔王』を全員連れて行けないのと彼から志願したから」
「ふっ…あいつらしいな」
アルビレーヌの言葉を聞き、ドラコニキルは呆れた様に呟いた。
「つかふざけんなよ!危うくお前らの攻撃に当たっちまうとこだっだろ!」
「当たらなかったからいいでしょ?」
「いやそれ結果論だろ!?」
蒼と屍はアルビレーヌに文句を言っていた。
直撃しなかったから良かったもののもし攻撃が当たっていたら割とシャレにならなかった。
「細かい事を気にしてると禿げるわよ」
「いや細かく無いよね?命の危機に瀕してたのに細かい事気にするなってそれ暴論だよね?」
アルビレーヌの言い草に蒼は突っ込まずにはいられなかった。
「いい?蒼、屍、世の中はね、ちょっとした事で事が傾く程繊細なの。それを全て一々気に留めていたらキリが無いでしょ?」
「話が極端過ぎるわ!つか今は世の中の話なんてしてねぇ!話を反らすな!」
アルビレーヌの暴論に屍も突っ込みを入れた。
アルビレーヌのめちゃくちゃな物言いに二人はかなり切れていた。
とは言え、アルビレーヌの暴論に何も反論するなという方が無理な話だが。
「速く先に行きなさい。ここは私達が抑えとくから」
「ふー、そう言う事だ。行くぞ」
ドラコニキルがそう言うと蒼とプロテアはドラコニキルと共に城内へと入って行った。
屍はこの場所に待機していた。
「よっしゃ!じゃ、始めるか!」
グリーフアルトが高いテンションでそう言った。
そんなグリーフアルトを面倒臭そうにアルビレーヌとグリトニオンは見ていた。
「USWからの増援か…思ったより速かったな」
「随分余裕ですね」
美浪は挑発気味にそう言った。
しかし、ピステルは余裕の表情をしていた。
「私の『二十二式精霊術』は貴様には破れまいて!」
ピステルの周辺から大量の砂が出現した。
どうやら、ピステルは砂を操る能力を持っているようだ。
「私の…【砂漠教皇】の前ではな!」
砂が美浪に襲い掛かってきた。
彼が扱う霊術は砂属性のものである。砂属性は土属性の派生属性であり、弱点は土属性とは違い、水属性である。
砂が…というよりは砂漠が美浪に襲い掛かる。
「くっ…!」
美浪は上空へ飛んで回避しようとしたが、砂は何処までも追い掛けてきた。
やがて、砂は美浪を捕らえ、美浪を地面に叩き落とした。
美浪はどうにか砂から脱出出来たが砂は物凄い速度で何処までも追いかけて来る。
美浪で無くとも回避しきるのは至難の業だ。
「まだまだ行くぞ」
砂は美浪を正確に追尾してくる。
美浪は今の所は大したダメージを負ってはいないがこのままでは美浪は砂に捕らわれ砂に押し潰されるだろう。
美浪は進路方向を変え、ピステルに急接近し、ピステルに殴り掛かった。
しかし、ピステルの砂がオートでピステルの身を守り、美浪の攻撃を通さない
「私の砂は攻撃と防御を同時に行う。貴様では私には勝てぬ!」
砂は再び美浪に襲い掛かってきた。
砂は美浪の左手を捕らえ、その瞬間、美浪の左手はとてつもない圧力に襲われた。
「【砂漠圧殺】」
「ぐっ!?」
美浪は強引に砂を引き剥がし、脱出した。しかし、左手は完全に使い物にならない。
左手からは大量に血が流れており、骨が完全に砕けていた。
「まずは左手か…今度は全身を押し潰す」
砂は更に量が増していた。
この砂の量では逃げ切れない。
「死ね【大砂漠圧殺】」
ピステルは大量の砂を美浪に襲い掛からせた。
回避する事は不可能。このままでは押し潰されるのみだ。
美浪は回避する事を止めた。この砂を回避するのは不可能。なら、迎え撃つ。
美浪は自身の身体を纏っている霊力を全開にして砂に突撃した。
しかし、砂の圧力は圧倒的で美浪は砂に押し潰されてしまった。
「ふふふ…やはりこの程度…」
ピステルがそう言うと目の前に美浪がいた。
「何!?」
砂がオートでピステルを守る。しかし、砂がピステルを守る前に美浪はピステルを殴り付けていた。
「がはっ!?な…何故だ…まるで…」
そう、まるで「時間が跳んだ」かの様だ。
ピステルは腹を思いっきり殴られそのまま吹き飛ばされた。
ピステルは土煙から姿を表したが口から大量の血が流れていた。
更に肋骨もやられたようで美浪の一撃で相当のダメージを受けていた。
「はぁ…はぁ…」
美浪は地に両足を着いた。恐らく、先程の攻撃で相当霊力を消耗してしまったのだろう。
ピステルは砂で足場を作り、そのまま上空へと浮遊した。
美浪はは再び立ち上がり、大きく跳躍し、ピステルに肉薄した。だが、砂のオートガードは健在で美浪の攻撃を防ぎ、美浪を地面に叩き落とした。
「く!」
「さっきの妙な力は気のせいだったか…まぁ、いい。終わりだ!」
ピステルは再び砂を大量に発生させ、美浪にぶつけようとした。
しかし、美浪は再び立ち上がった。その瞬間、ピステルは悪寒が走った。
ーさっきの力…もう一回使えば…
美浪はそう言って再び空中へ跳んだ。そして、砂が美浪と激突する直前、美浪の姿が「掻き消えた」。
「な!?がっ…!!!」
ピステルが驚いたのと同時に美浪はピステルの脇腹を殴り付けていた。
間違いない、ピステルは美浪の力を確信した。だが、気が付いた所で遅いし、気が付いた所で対策のたてようが無い。何故なら…
「時間を…飛ばした!?」
「【狼砲】!」
美浪は右拳にありったけの霊力を乗せ、ピステルを叩き落とした。
ピステルは血塗れの状態で気を失っていた。
美浪は空から落下し、そのまま倒れた。どうにか意識は保っていたが身体を動かせない。
美浪が突如発現した力は「時間を飛ばす」能力だ。
美浪は数秒間だけ時間を飛ばしたのだ。数秒とは言え、時間が飛んでいるので端から見たら美浪が突然消えた様に見えるのだ。
何故この力が美浪に発現したのかは分からないが、結果、勝つ事が出来た。
「な!?あいつ…ピステル様を!」
敵兵たちが、ピステルがやられた事に気が付き、美浪に襲い掛かる。
しかし、美浪は左手を潰されているのも勿論だが、それ以上に霊力を完全に使い果たしており、指一本動かせない。
「【黒閃光】!」
「【時崩】!」
突然、兵士たちの動きが止まった。いや、兵士たちは止まっていない。
止まっているのは兵士たちの武器だ。更に発砲された銃弾も止まっていた。
屍は物質の時間を止める事が出来る。物質の時間を永続的に止める事も途中解除も可能な能力だ。
強力な能力であるが霊力の消耗が激しいのは勿論だが、物質のみしか時間を止められないので癖の強い能力でもある為、能力以上に扱い辛い。
アルダメルクリーを媒介にする為、発動させるのも若干時間が掛かってしまうのも欠点である。
「どうなって…武器が動か…ぎゃあ!」
屍は隙を同様の隙を突いて殴り倒し、アルビレーヌは【黒閃光】で兵士たちを吹き飛ばした。
美浪はどうにか無事である様だ。
「月影慧留の所へ行って頂戴」
「言われなくても分かってるよ」
アルビレーヌが屍に指示を出すと屍は美浪を慧留のいる場所まで運んで行った。
「月影!」
「うん!」
慧留と屍は合流した。
その後、慧留は【拒絶王女】の力を使い、美浪の時を巻き戻し、美浪の傷を負う前の時間に戻した。
「ありがとう、慧留ちゃん」
「霊力は回復出来ないから、暫く休んで」
「うん」
慧留はあらゆるものの時間を巻き戻せるが霊力は戻せない。
霊力は放出されると残留せず、そのまま消える。無いものを巻き戻すのは慧留でも無理なのだ。
戦局は五分五分であった。しかし、ヘレトーアの戦力が未知数である以上、慧留たちが不利である事には変わり無い。
USWの介入でどうにか戦えているが城内にもまだまだ敵がいる筈だ。
蒼とプロテアとドラコニキルだけでは恐らく数の力で押し負けてしまうだろう。
その為、一刻も速くここの戦いに決着を着け、蒼たちの増援へ向かわなければならない。
しかし、先程も言った通り、戦局は五分五分で拮抗している。
この均衡を崩すにはまだまだ時間が掛かりそうである。
慧留も戦線へと出たかったのだが、慧留は負傷者を回復させる役目がある為、戦う事が出来ない。
今は負傷者たちの治療に専念するしかないのだ。
「俺は行くぜ」
「うん、気を付けてね」
「ああ、あいつが戦ってる以上、俺も戦う…」
屍はそう言って再び戦場へと戻っていった。
思えば屍は蒼に最も影響されている人物と言える。
普段はあまり表には出さないが、屍は蒼の事を友として見ていた。
慧留も蒼と共にいる時間はそれなりに長くなってきたが、屍のそれとはまた違う気がした。
慧留も蒼の事は信頼している。だが、何故だろう。今回ばかりは嫌な予感がしてならない。
それは恐らく、この戦争が慧留が経験した戦争とダブっているからだろう。
慧留は神聖ローマから逃亡した理由は戦争で友を失ったからだ。
その戦争と何となく今回の戦いは似ている気がしたのだ。
「蒼…」
慧留は戦いを見つめ続けた。この、戦争を…
To be continued




