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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第五章】イシュガルド殲滅篇
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【第五章】イシュガルド殲滅篇ⅫーDance in ecstasy pierrot 2ー

 ここは音峰家である。ここは一宮高校から北に進んだ先にある家である。

 ここに今いるのは音峰茜おとみねあかね一人である。父も娘も今はいない。

 茜は白髪の短めの髪と瞳が特徴の美女である。

 茜は一夜が経営している魔族が住むマンションである苗木日和なえきびよりを援助している。つまりは一夜とは協力関係なのである。

 茜は一人でガーデニングをしていた。そして、少し、昔の事を思い出していた。


「あれから…20年ね」


 遥は養子であり、茜とは血が繋がっていない。しかし、関係は良好であり、家族全体の中もいい。

 遥は生まれつき、異能の力を持っていた。故に、実の両親に煙たがれ、捨てられてしまったのだ。

 茜自身も子どもが出来ず途方に暮れていた所、遥と出会った。出会ったのはゴミ捨て場であった。

 そこで、赤ん坊であった遥は泣いていた。茜は子どもを拾い、育てる事にした。夫であった音峰風雅おとみねふうがも反対はしなかった。

 遥はその事実を小学生の頃に知る事になる。当時は割り切れない気持ちや悲しい気持ちがあった遥であるが、すぐに遥は分かってくれた。

 遥はそのまますくすくと真っ直ぐに育ってくれた。

 血の繋がりなど些細なものであると茜は思っていた。

 血の繋がりが無くともお互いを大切にできる家庭もあれば、逆に血が繋がっていても道具としてしか見る事の出来ない家庭もあるだろう。

 茜がそんな事を考えていると枯れている花を見つけた。この花はフクジュソウである。まだ、枯れるような時期ではない筈だ。

 にも関わらず枯れてしまっている。とても不吉であるなと茜は思った。

 茜がそんな事を考えていると雨が降って来た。しかも、雨はかなり勢いが凄く、雷まで鳴り響いていた。

 茜は慌てて家の中に避難した。雨はずっと降り続けていた。しばらくは止むことは無いだろう。

 そう言えば、もう少しで遥の21歳の誕生日である。誕生日の準備をしなくてはならない。


「あの子が戻ってくるまで、準備をしますか」


 茜はそう言って歩き出した。









「【星閃光(スターレーザー)】!」


 澪は光の閃光をコランに放った。コランはすかさずそれを回避した。

 コランはダッシュして澪に肉薄した。澪は【流星神速(スタードライブ)】でコランに突進し、コランを吹き飛ばした。


「【氷魔連刃(ひょうまれんじん)】!」


 澪は【氷魔連刃(ひょうまれんじん)】でコランの足を止めた。しかし、コランはナイフで瞬時に氷を切り捨て、脱出した。

 コランはさらに澪に接近し、澪の身体にナイフを切り付けた。


「くぅ!」


 澪は仰け反った。コランはさらに追撃を加えようとするが、澪は咄嗟に【星閃光(スターレーザー)】を放ち、コランの脇腹に命中させた。

 コランは明らかに疲弊していた。後一撃で恐らく倒せる。

 しかし、コランは再び、姿を消した。だが、今回はすぐに澪も捕捉する事が出来た。澪は後ろから攻撃をしてきたコランを捕まえた。


「【縛十光輪ばくじゅうこうりん】!」


 澪はコランを【縛十光輪ばくじゅうこうりん】で縛り付けた。


「これで、終わりだよ!【星崩落スター・レクイエム】!!!」


 澪は無数の光のレーザーを放ち、そのレーザーが全てコランに直撃した。

 コランは血を吐いた。しかし、コランは何故か嗤っているように見えた。

 コランはそのまま倒れた。


「はぁ…はぁ…やった……やっと……」


 澪はコランに近付く。


「………え???????」


 澪はそんな素っ頓狂な声を上げた。そう、そこにいたのはコランでは無かった。そこにいたのはー



-遥であった。



「何…で…?」

「いや~、どうなる事かと思ったよ。思惑通りで良かった良かった!!」


 澪の後ろにいたのはコランであった。コランは生きている。という事はやはり、澪が倒したのは…


「君がその子を殺した」


 コランがそう言うと澪は目の前が真っ暗になる感覚に襲われた。

 コランがまだ何か喋っていたが澪には何も聞こえない。何も聞きたくなかった。今この状況が幻である事を願いたかった。

 だが、現実は無常である。これは紛れもない現実なのだ。


「一体…いつから…力を……」

「ん?ああ、君が霊呪法を使って僕を縛る前だよ。あの時に【道化王冠(ザ・クラウン)】を発動させ、君たちの五感を狂わせた。いや~、さっきの君の攻撃を受けていたら流石の僕もやばかったね~。同士討ちが決まって良かったよ。てか、これしか勝ち筋無かったし」


 コランはケタケタ嗤いながらそう言った。コランは心底愉快な顔をしていた。

 まさに、してやったりと言った顔である。


「ねぇ?どんな気持ち?親友を自分の手に賭けた気持って………どぉんな気ィ持ちィ??ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」


 コランは狂ったように嗤った。心底面白そうにコランは嗤っていた。


「私…が……」

「うんうん!君が殺した!!ははははははははははははははははははははははは!!!!」


 澪は自責の念に駆られた。

 浅はかであった。もっと何とか出来たのではないか?

 逃げる事を優先すべきでは無かったのか?

 澪は全てが黒く塗り潰される感覚に襲われた。

 澪が………遥を殺してしまった…。

 澪にとってこれは残酷な現実であった。絶望するには十分すぎた。


「あ……あ………あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 澪から黒い光が出現し、大量に放出された。

 この黒い光はまるで澪の絶望を表すかのようであった。


「これは………【二十二式精霊術(アルカナ)】の暴走か!?ははは……流石にこれはやば………」


 黒い光が一瞬でコランを貫いた。

 コランは最早体力の限界が近かった。それに…


「プロテア…」


 そう言ってコランは澪と遥の元から去って行った。

 コランが去った後、澪の黒い光は少しだけ弱まった。


「ハ…ル…ちゃん…」


 澪は弱弱しい声で遥の名を呼び、遥の前に近付いた。全身に風穴が開いている。最早、治療は不可能だろう。

 それに何より、澪には回復の力が無い。


「み……お…………」

「!?ハルちゃん!?待ってて!今すぐ病院に…」

「はは……もう…無理……かな……私……もう……駄目……みたい………」

「もう喋らないで!今すぐ……」


 しかし、遥は澪の手を止めた。


「もう、いいの……自分の死くらい……自分で分かるわ。ごめんなさい…あなたに………辛い………思い……ばかりさせて…………弱くて……ごめんなさい」

「止めてよ!何で……何でハルちゃんなの!?私が………私が死ねば………私が………ハルちゃんを………」

「ううん、仕方………無かったのよ………どの道………あなたが………いなければ…私は……死んでいたわ」


 遥は徐々に死に近づいて行っていた。


「ハルちゃん!行かないで!!ハルちゃん!!!」

「私は………」


 遥は花が枯れるように…そっと息を引き取った。遥は地上から降り注ぐ雨に浴びながら安らかな眠りに就いた。


「ハルちゃん…逝かないで…逝かないでよ………逝くなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 澪の【二十二式精霊術(アルカナ)】の暴走は加速的に進行した。








 蒼はマンホールから地下水道を脱出した。蒼は周りをキョロキョロさせながら地上に出た。

 地上では雨が降っており、かなり強かった。


「蒼、大丈夫かい?」

「ああ、問題ない」


 蒼が安全を確認し、地上に出ると一夜と美浪も地上に出た。

 澪から逃げておよそ一時間ほど経過していた。何とか逃げ切ったようだ。


「これからどうします?」

「まずはプロテアを探す。あいつを…止める!」

「まぁ、その方が良いだろうね。だが、どこにいるかだ……が……」


 一夜は途中で言葉を止めた。蒼も美浪も異変に気が付いていた。


「何だよ!?これ!?」


 蒼と美浪と一夜は後ろを振り向いた。すると、黒い光の柱が見えた。あれは魔力の塊だ。あまりの魔力の大きさにより、柱が出来ているのだ。


「なんて魔力…」

「おいおい!ヤベェんじゃねぇか!?」

「そうだね…いや、ちょっと待てよ…あれは…あの方向は…」


 一夜がそう言うと蒼と美浪は一夜の言っていた事に気が付いた。


「まさか…」

「音峰さんと常守さんに何かあったんじゃ…」

「………蒼…」

「ああ、引き返そう」


 引き返そうとした時、マンホールから慌ててやってきた男がいた。董河湊だ。


「時神君、美浪ちゃん、苗木さん!」

「分かってる!戻るぞ!」


 蒼がそう言うと湊もコクリと頷き、一夜と美浪もそれに続いた。








「ふぅ~、やれやれ」


 コランはとある町のビルにいた。

 コランはプロテアを四神天城(シシンテンジョウ)から救出し、黒宮たちから逃げ切ったのだ。


「ははは…少し、遊びすぎたかな?」


 コランの身体から傷が浮かび上がってきた。

 先程、四神天城(シシンテンジョウ)にプロテアを助けに行った時は自身の変身能力で傷を隠していた。

 しかし、それも限界が来て、再び傷が浮かび上がってしまったのだ。

 コランはプロテアを地面に置いた。

 流石にこれ以上の移動は困難だ。

 だがしかし、焦る必要は無い。向こうは戦力の戦力の一人は殺した。これで向こうの士気をある程度落とす事も出来るだろう。

 まぁ、予想外の事もあったが…


「【二十二式精霊術(アルカナ)】の暴走…か…このまま共倒れしてくれればこっち側からしたらありがたいんだろうけど…さぁて、どう転ぶかな?」


 コランがそんな事を呟いていると後ろから人影が現れた。

 その男をコランはよく知っていた。セルリア・イシュガルドだ。


「お前たちにしては随分手こずったようだな」

「相手が予想以上のやり手でね」

「まぁ、いい。今の状況ではこちらも向こうも身動きが取れまい。しばらくは身を隠すぞ」


 セルリアはそう呟いた。彼は現在のイシュガルドの生き残りの中でもリーダー格の男であり、基本的に彼が作戦の指揮を取る事が多い。

 その彼が今は迂闊に動くのは不味いと言っているのだ。

 今、彼等を倒しに行くのは得策では無いという事だろう。

 そもそも、今の原因を作ったのは完全にコランであるのだが、余計な追求をされると面倒なのでコランは何も言わなかった。


「はいはい分かりましたよ」


 コランは素直にセルリアの指示に従い、三人は去っていった。








 澪の身体から黒いオーラが出ていた。

 そのオーラは留まる事を知らず、吹き出していた。

 そのオーラの余波により、地下水道の周囲の天井が完全に壊れており、雨水が澪の身体を濡らす。

 やがて、澪は目の光が消え、虚ろな瞳になった。

 そして、霊力の固まりが澪を完全に包み込み、澪は磔にされているような状態になっていた。

 更に、背中には八つの翼があった。霊力により作られた翼だ。

 完全に力が暴走していた。澪は周囲の壁を壊していった。このままでは町の中心部にまで被害が及ぶ可能性もあった。


 澪は進む。すると目の前に二人の人影が現れた。

 薊とくるだ。彼女らは神器を取り戻した後、一旦、寮に戻り、幻覚を作り直していたのだ。

 その時に巨大な魔力を感じたので、澪とくるはその魔力の発生場所に来たのだ。


「澪…」

「え?え?どうなってるの??」


 薊とくるは状況がイマイチ飲み込めていなかった。

 しかし、澪の侵攻は止まらない。次々と破壊している。

 薊とくるは何故、澪があんな状態になっているのかなんて分からなかった。

 しかし、一つ言えるのはこのまま彼女を放置していると町が危ない。


「くる!来るわよ!!」


 薊がそう言うと澪は攻撃を仕掛けてきた。

 魔力の翼からエネルギー砲が連発で放たれた。


「【星混沌旋風(スターカオスストリーム)】!?」

「しかも連射!?」


 巨大なエネルギー砲が五発ぶっぱなしてきた。

 薊とくるはどうにかして回避した。しかし、澪はくるの背後に突然現れた。


「な!?」


 澪は再び【星混沌旋風(スターカオスストリーム)】を至近距離で薊に放った。

 薊は【星混沌旋風(スターカオスストリーム)】に直撃し、吹き飛ばされた。


「薊ちゃん!」


 くるが叫ぶが澪は標的を今度はくるに定めた。

 くるは瞬時に【月読尊(ツクヨミノミコト)】を展開した。

 【蛾餓威亜(ガガイア)】を使い、澪を幻術に嵌めた。

 神騎兵と違い、相手は澪。生身の人間である。このまま幻術に嵌めて眠らせれれば…

 澪は一瞬、身体が動かなくなり、魔力も沈静化した。

 しかし、再び、魔力が迸り、くるの幻術を易々と解いた。

 魔力の翼が細く伸びてくるに襲いかかる。くるは攻撃を回避しきれず、翼に吹き飛ばされてしまった。


「はっ…はっ…一体何が…あなたをそんな…」


 薊は瓦礫の中から脱出しながらそう言っていた。

 【星混沌旋風(スターカオスストリーム)】により、薊は吹き飛ばされ、瓦礫の下敷きになっていた。

 今、何とか脱出出来たところなのだ。

 くるもすぐに立ち上がった。しかし、くるの額から血が出ていた。

 薊に至っては全身に傷がついていた。


「……なんで澪ちゃんこんな事に…」


 薊だって知りたいところであっただろう。

 しかし、今は原因を究明している場合ではない。何としても澪の暴走を止めなければならない。

 薊は【伊弉冉舞姫イザナミノマイヒメ】を傘に変形させ、傘から無数の針を飛ばした。

 澪に毒の針が命中した。すると、澪の動きが鈍くなっていった。

 澪の神器、【伊弉冉舞姫イザナミノマイヒメ】は相手と自身の致死量を操作する能力である。

 これにより、先程、澪が毒針を当てた事で澪の血液の致死量を薊が操作し、動きを鈍らせている。


「………」


 澪は身体を無理やり動かし始めた。澪の身体から血が噴き出している。【伊弉冉舞姫イザナミノマイヒメ】の力は機能している。それでも動くという事は…


「【星接続スターギプス】…無理矢理身体を動かしてるわね。しかも…ヤバいわね…」

「どういう事!?」

「澪の今の霊力が膨大過ぎて私の力では彼女の身体の致死量を調節しきれない。私の能力が完全に無効化されるのも時間の問題ね。それまでに止めないと…」


 【伊弉冉舞姫イザナミノマイヒメ】は強力な能力であるが、弱点は存在する。

 一つ目は操れる致死量は一種類だけだ。例えば、相手の霊力の致死量を操っている場合、他の人の霊力の致死量は操れない。

 二つ目は致死量を調節する容量に限界がある。その容量を超えると完全に相手に能力を無効化されてしまう。

 これらの弱点が存在する。基本的には一つ目の弱点を突くのがベターである。しかし、今の澪は魔力が化け物レベルにまで膨れ上がっている。

 これにより、【伊弉冉舞姫イザナミノマイヒメ】の致死量操作が容量オーバーを起こしている。


「【鴉鴉有幻(カラカラアルノマボロシ)】!」


 くるの周りに骨で出来た鴉たちが現れた。

 くるの能力は単純に幻術を使うだけでなく、自身の幻術を現実に再現できる。

 再現できるものには限界があるが、【月読尊(ツクヨミノミコト)】により、再現する力が増大している。

 鴉たちが澪に突進を仕掛けた。突進した瞬間、骨が澪に襲いかかる。

 澪にかなりのダメージを与えていた。しかし、澪はまったく怯まず、黒いレーザーを乱射した。

 くると薊は回避しきれず、脇腹を貫かれた。


「ぐぅ!」

「がっ!」


 くると澪は倒れるものの再び体勢を建て直し、薊は傘から針を飛ばした。

 澪に針が全身に突き刺さった。澪はそれを魔力だけで弾き飛ばした。

 だが、その瞬間、澪の動きが鈍った。


「あれだけ毒をブチ込めば少しは堪えるでしょ?」

「【極獄乃崩孔(ゴクゴクノホウコウ)】!」


 澪の地面からマグマが出現し、澪を吸い込みだした。

 澪の身体は半分以上、マグマに飲み込まれていた。


「ヤバイ!!これだけやってもまだ……!」


 澪はくるの技も無理矢理脱出しようとしていた。

 下半身はマグマに飲み込まれているが身体は魔力により守られている。

 今は薊の毒で動きが鈍っているため、脱出されずに住んでいるがこのままではすぐに脱出される。

 澪は魔力の羽を展開させ、魔力の槍を無数に飛ばした。


「「!?」」


 薊とくるは回避しようとしたが攻撃が速すぎて全弾命中してしまった。

 薊とくるは全身が血塗れの状態で横たわっていた。

 澪の圧倒的魔力の前に身体が軋んでしまっている。

 薊の毒もくるの幻術も完全に解かれている。


「ぐっ……澪……」

「目を…覚まして……」


 澪は薊とくるに攻撃を仕掛けようとした。



「【影縫(かげぬい)】」



 澪の身体に影が出現し、影が澪の身体を貫いた。


「黒宮…大志…」

「黒ちゃん!?」

「よく持ちこたえてくれましたね、二人共。後は任せて下さい」


 澪は黒宮の影から脱出しようとしたが、影の縛る力の方が強く、澪の行動を完全に抑制していた。


「これが…真祖の力…」


 黒宮は千年以上の時を生きる吸血鬼の真祖である。

 その戦闘能力は絶大であり、多くの戦で猛威を振るった。

 黒宮は次の技を出す準備をしていた。澪を気絶させる気だ。

 しかし、黒宮の技が発動する事は無かった。澪の身体を纏っていた魔力は突如、霧散した。

 今までの戦いで身体が完全に限界を迎えたのだ。


「澪…」

「澪ちゃん…」

「…澪さんを回収します。それと……音峰さんも……」


 黒宮が悲しそうな目で遥の遺体を見た。

 そう、遥は…死んでいるのだ。

 薊とくるは血相を変えて、遥の遺体の前に駆け寄った。しかし、身体は冷たく、息もしていなかった。全身には所々風穴があり、どう考えても生きているとは思えなかった。


「嘘…でしょ……」

「いや…いやだよ…なんで………」


 涙を流す薊とくるを黒宮はただ見ている事しか出来なかった。


「速く…回収しますよ」

「随分…淡々としてるんだね!遥ちゃんが!死んだんだよ!何も思わないの!?」

「くる…」

「………死んだ人間を一々哀れんでいたら、私の心はとっくに壊れてますよ。あなたたちは澪さんを運んで下さい。私が音峰さんを運びます」


 そう言って、黒宮は遥を抱き抱えた。遥の顔は穏やかであり、まるで眠っているようだ。

 しかし、心臓の音が聞こえない。呼吸音が聞こえない。脈の音も聞こえない。何も聞こえない。

 黒宮は同じような経験を何度もした。もう、慣れている。

 だが、薊とくるはそうじゃない。二人は黒宮から見れば赤子同然だ。心が痛むのは無理は無いと黒宮は思っていた。


「澪さんはまだ助かります。………今回の神器の無断使用については、不問とします。さぁ、行きますよ」


 黒宮がそう言うが薊もくるも動こうとはしなかった。いや、動けなかった。

 気持ちを察した黒宮は澪も一緒に運んだ。

 そして、黒宮はそのまま去って行った。


「薊!くる!」


 やって来たのは蒼と一夜、美浪と湊であった。

 四人共事態に気がついた様で戻ってきたのだ。しかしー


「遅いよ…遅いよ…蒼ちゃん…」


 くるがそう、力無く、呟いた。







To be continued

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