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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第五章】イシュガルド殲滅篇
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【第五章】イシュガルド殲滅篇ⅤーRevenger 3ー

 イシュガルドの人間たちはガランドのあらゆる場所で戦いの準備をしていた。宣戦布告を受け、彼らは戦いに備えているのだ。

 暴動が起こってから随分経つ。ヘレトーア軍も流石に本腰を入れてきたようだ。

 しかし、イシュガルドたちは降伏する気はなかった。最後まで戦い、この国を変える。

 ジャイアは戦う彼らを統轄していた。ここまで来てしまっては戦うしかないとジャイアも判断したのだ。


「そろそろ、ヘレトーアが攻め込む頃だが…」


 そう呟いた瞬間、空から何かが落ちた。そして、近くにあった建物が一瞬で吹き飛んだ。

 このたった一撃で数名の人間が死んだ。死体は粉々になっており、血だまりだけが残っていた。


「な!?何だ!?これは!?」


 イシュガルドの人間たちが混乱していた。間違いなく敵襲である。

 しかし、この能力は…


「【二十二式精霊術(アルカナ)】だと!?」


 そう、イシュガルドの人間しか使えない筈の【二十二式精霊術(アルカナ)】の力を使っていたのだ。

 裏切り者がいる事を考えたが、どうも違う。

 確かにこの力は【二十二式精霊術(アルカナ)】だが、こんな力を使える者はイシュガルドにはいない。

 間違いなく外部の人間だ。外部の人間に【二十二式精霊術(アルカナ)】が使える者がいる。

 術を放ったと見られる男が歩いてきた。その男は百人程兵を率いていた。

 恐らく、術を放ったのは一番前にいる黒髪のオールバックの男、常森厳陣だ。


「これより、イシュガルド殲滅を開始する」


 厳陣が宣言するとまたもや、上空から隕石が落下した。隕石は地上に容赦なく降り注いだ。

 しかし、イシュガルドの人間たちは【二十二式精霊術(アルカナ)】で対処した。

 さっきは不意打ちを喰らって犠牲者が出たが今回はまだ、対処が出来た。


「かかれーー!!!」


 イシュガルドの人間たちは武器を持ち、厳陣たちを殺しにかかった。

 しかし、数名が動きを止めた。


「な…何だ!?これは!?」

「人は影を持っています。いえ、全ての生物には、物には、影があります。その影を操るのが私の力」


 片眼鏡の男がそう呟いた。黒宮大志だ。彼はこの世界にある影を自在に操る事が出来る。

 黒宮は自身の影を鋭利な刃物に変え、動きを止めていた数名のイシュガルド人の首を一瞬で吹き飛ばした。

 残った胴体はそのままガクガクと震えながら倒れた。切られた首の先からは鮮血が流れていた。


「せめて、苦しまずに殺して差し上げます」


 黒宮のその呟きはまるで悪魔、いや悪魔などという表現では生温い、魔王のようであった。


「怯むな!殺せ、殺せええええええ!!!!」

【おおおお!!!】


 多くののイシュガルドの人間が厳陣たちに襲いかかった。恐らく、人数は万を越えている。

 数的には厳陣側が圧倒的に不利だが、厳陣たちは一人一人の戦闘力が彼らよりも数倍高い。


「……【太陽(ザ・シャイン)】」


 厳陣は右手を上げる。すると、空から炎の隕石が大量に落ちてきた。一つ一つがまるで夜を照らす太陽のようであった。

 隕石たちはイシュガルド人たちを蹂躙していく。


「ぎゃあああ!!」

「がああ…!!」

「た…助け…ぎゃあああ!!!」


 隕石はイシュガルド人を容赦無く踏み潰していった。隕石の落下した場所には血だまりが大量に発生していた。

 黒宮も影の力で次々とイシュガルド人を殺していた。他の兵士たちも次々とイシュガルド人を蹂躙していった。

 イシュガルド人がどんどん死んでいく。しかし、厳陣側の被害はゼロだ。

 やがて、血の臭いが腐臭に変わっていき、厳陣の身体に染み込んだ。

 嫌な気分だ。自分が人を殺しまくっている事を嫌でも実感するからだ。

 血の臭いだけではない。辺りは大量の隕石落下と兵器の使用により、辺りは焼け野原になっていた。

 耳をつんざく人々の悲鳴、怒りの声、悲しみの声、一つ一つが厳陣の心に突き刺さる。


「…くっ!」


 しかし、厳陣は手を止めなかった殺し続けた。自身の正義の為に。


「へっぷ!」

「ぎゃはっ!」


 厳陣は手で作り上げた小さな隕石を敵に投げ飛ばした。相手の身体には大穴が空き倒れる者、頭が吹き飛び倒れる者様々であっが、共通しているのは、相手が死んでいる、という事だ。

 厳陣は徐々にガランドの包囲網を突破した。しばらくすると小さな子供たちがいた。

 包囲網を突破した事により、子供たちが避難している場所まで辿り着いたようだ。

 恐らく、子供がいる場所はここだけでは無いだろう。厳陣は子供を殺そうとした。

 今回、下された命令は殲滅だ。女子供関係無く皆殺しにしなくてはならない。

 しかし、厳陣の手が微かに震えていた。人は何人もこの戦いの前に殺してきた。しかし、子供は殺した事は無い。

 これからを生きるであろう未来の子供たちを殺す事に厳陣は躊躇いが生じてしまったのだ。

 イシュガルドの兵士は厳陣の隙を見逃さなかった。


「死ねええええ!!!!」


 敵は怒りの形相で厳陣に斬りかかってきた。厳陣は不意を突かれてしまい、動けない。このままでは厳陣がやられてしまう。

 敵は太刀を厳陣に振り上げる。しかし、その前に敵の五体がバラバラに解体された。


「へぎゃあ…」


 そんな断末魔を上げて、力尽きた。手足はバラバラになっており、胴体も上半身と下半身で分断されており、頭も真っ二つに切り裂かれていた。


「厳陣に手出しする事は許しません」


 やったのは黒宮だ。まったくもって容赦が無かった。いや、変に躊躇うより一思いに殺す方が優しさなのかもしれない。

 厳陣は黒宮が敵を殺した事で覚悟が決まった。………イシュガルドの子供を殺す、という覚悟をだ。

 厳陣は空に隕石を出現させた。後は落下させるだけ…


「助けて!」

「いや!いやだよ!」

「あああ!!」


 子供たちが泣き叫ぶ、しかし、厳陣は目を瞑り、隕石を落下させた。

 隕石は子供たちをまるでクッキーを潰すかのように押し潰した。


「……」

「厳陣…」


 辺りのイシュガルドたちは全滅していた。まだ、数はいるだろうが、この辺りは完全に制圧した。

 燃え盛る炎、血と鉄の臭い。黒い煙が青空を覆い尽くし、まるで魔界のようであった。

 そして極めつけは、夥しい量の屍……泣きながら死んでいる者もいれば、怒りの形相で死んでいる者もいた。

 更には死体からは虫が集り始めていた。最早これは戦争とすら呼べない。

 ただの一方的な殲滅だ。公開処刑と何も変わらない。まったく、ヘレトーアも大人気が無さすぎである。

 たかが、一つの人間の一族を滅ぼす為に四大帝国を投入するなんて……

 一方的な虐殺ほど、自身を虚しくさせるものはない。そう、今の厳陣にあったのは怒りでも悲しみでも無かった。

 そんなもの、今までの戦争で多く経験してきた。体感してきた。それらの感情を今、持てたのであれば、どれだけ楽であっただろう。

 今の厳陣にある感情、それは、途方も無い、虚無であった。


「今までの戦争で一番アホらしくなったよ」

「………まったくです。話になりません、戦争にすらなってませんよ、これ。私も多くの戦を経験してきましたが、トップクラスで酷いですよ」

「なぁ、俺たちのやろうとしている事は…本当にこれだけ多くの屍を作ってまで成さねばならない事なのだろうか?」

「怖じ気づきましたか?」

「そうじゃない!そうじゃ…」

「なら、断言します。ここで折れたら、あなたが今までやってきた事が無駄になります!それこそ、死んだ者たちが報われません。私たちは多くの骸を積んできた。それを蔑ろにする事は許されません!何かを成すには犠牲とそれに絶える覚悟がいるのです」

「…ああ、そうだな。だが、そう簡単には割り切れない!」

「理解はしているが、納得は出来ない…と、つくづく人間とは面倒臭い生き物ですね。頭では分かっていても躊躇いが生じてしまう」

「何百年も生きてきたお前だ。俺のこの迷いなど、ちっぽけな事なのかもしれんな」


 そう、黒宮は厳陣とは比べ物にならないほど生きている。だからこそ、厳陣より、多くの戦争を経験しているし、厳陣より物事を客観的に見れる。

 素直に割り切る事が出来る。こればっかりは厳陣が簡単に身に付くような事では無い。

 人は頭では理解していても、実際に割り切る事が非常に難しい生き物だ。

 いちいち、些細な所で立ち止まる。自分が考えていた事と逆の事をしてしまう。

 戦争がいい例だ。戦争はそもそも、誰かを守る為、己の信念を正義を守る為に起こる。

 しかし、結果的にはお互いに失う物の方が大きい。お互い奪い合い、そして、最終的には双方とも失う。

 人は矛盾な生き物なのだ。思いと行動が必ずしも一致しない。人間の厄介な性である。


「そうですね、ですが、私だって何も考えていないわけではないです。勿論悩みはある。この不老不死の身体…この身体は厄介です。死にたくても死ねない。死ねるのが羨ましいです」

「不老不死ならではの悩みか」

「ええ、正直に言いますと、この世界は私にとっては暇潰しです。悠久の時を生きる私にとっては」

「その割りにはやけに人間臭い気もするが?」


 黒宮はこの世界は暇潰しというが、それにしては他者を哀れんだりする事が目立つ。割りと怒ったり毒を吐いたりもする。

 ただの暇を持て余す吸血鬼とはとても思えなかった。


「あなたと出会ってからですよ。私がおかしくなったのは」

「おいおい、その言い草はないだろ?」

「事実ですからね。私はあなたに可能性を感じた。だからこそ、ここにあなたと共にいる」


 黒宮は決めたのだ、厳陣と共にあると。厳陣の剣になると、彼の弱さを全て黒宮が補う。

 厳陣と出会い、共に誓ったあの日から、黒宮はそう決めていた。


「行きましょうか、ここの殲滅は完了しました。次に移りましょう」

「ああ」


 厳陣と黒宮は兵を率いて、この場所を後にした。ここだけで、数万人は死んだ。

 しかし、厳陣側の被害はゼロ。本来なら喜ぶべきなのかもしれない。

 犠牲無く勝利する事に越した事は無い。しかし、この一方的な殲滅に対して喜んでいる者は一人もいなかった。

 むしろ、心を痛めている程であった。この戦いに嫌気が差していたのは厳陣や、黒宮だけでは無かった。

 厳陣と黒宮はこの地獄なんて生温い光景を忘れる事は無いだろう。








 舞は十二支連合帝国の拠点で待機していた。彼女が攻め込むのは夜中だ。

 それまで、傷ついた兵士たちを治療するのが、今の舞の役目であった。

 しかし、傷ついた兵士はあまりいなかった。どの場所もこちらが圧倒しているようだ。

 四大帝国全てをイシュガルド殲滅に投入しているのだ。当たり前と言えばそうなのかもしれない。

 舞はふとプロテアの事を思い出した。彼女は無事なのだろうか?

 それとも、もう…殺されてしまったのか…今回の目標はイシュガルド完全殲滅。

 一匹残らず叩き潰す。それが、今回の戦だ。プロテアが生き残る可能性はゼロに等しい。

 出来れば、彼女とは会いたく無かった。もし、会ってしまったのなら、殺さなくてはならないからだ。


「四宮中佐!負傷者です!」

「分かったわ、すぐ行く」


 舞は負傷兵の元に行き、治療を始めようとした。舞は銃を持ち、負傷兵に銃口を向けた。


「【命神(カネ)】」


 舞の身体からピンク色の小さな蝶が現れ、その蝶が舞の銃に収まった。

 そして、舞はそのまま引き金を引いた。すると、負傷兵の傷が治癒していった。

 舞はUSWの四大神を体内に宿している。今、舞は生命の神、カネの力を使った。

 カネは生命の神の異名の通り、傷を癒す力を持っている。まぁ、逆に力を使いすぎると超回復により、肉体が壊れてしまうが。


「ありがとうございます。中佐」

「…礼はいらないわ」


 兵士は再び、戦いに向かった。舞はそんな光景を見ながらこう思った。


「また、傷つくのね…」


 そう、いくら舞が傷を治しても、再びその治した者たちは再び戦争に参加する。

 そして、また傷つく。それの繰り返しだ。治した所でまた傷つく。治す意味があるのか?むしろ、舞が治す事で却って争いを大きくしている気すらした。

 傷を治す。それは本来、誰かの心を癒す事の筈だ。なのに、戦争では再び争いの駒として使われる。

 皮肉以外の何者でもない。明らかにやっている事が矛盾している。

 そもそも、この戦いに意味があるのか?イシュガルドを殲滅して、何になるというのだ。

 国の都合で一つの一族を滅ぼす。そんな事が許されるのか?誰かの都合で破壊していいものなのか?


「私も人の事を言えた立場じゃ無いわね。この戦争に参加している以上…」


 いくらこの戦争に批判的に見ていても、舞自身が戦争に参加している。

 自分がどれだけ違うといっても、向こうから見れば、舞もここにいる人々も同じなのだ。

 被害者から見れば、加害者も傍観者も同じなのだ。むしろ、高みの見物をしているだけの傍観者の方がよっぽど性質(たち)が悪いとすら思う。

 間違っているのは国であり、舞自身ではない。そんな詭弁を取り繕った所で結局は同じだ。

 舞は出来れば、プロテアが無事でいて欲しいと思っている。しかし、どんなに願った所で誰かが彼女を助けなければ時期に彼女は殺されてしまう。


 この世界は無情だ。待っているだけでは、願っているだけでは、何も変わらない、変えられない。

 自分を変えるのは、願いを叶えるのは、いつだって自分自身だ。

 舞が祈った所で、プロテアは助からない。

 何かを得るには何かを犠牲にしなければならない。等価交換とはよく言ったものだ。

 等価交換といえば、プロテアも口にしていた。舞の方が、プロテアより長く生きているというのに、プロテアの方が物事の本質に理解していた。

 何が教師だ。結局、舞はプロテアより無知だったのだ。そんな、者に何かを与える資格など、無かったのかもしれない。

 世界とはこんなにも大きく広く、無情で非常で冷酷で残酷なのだ。


 世界というシステムは何故こうも、不条理なのだろうか?何故、戦わなくてはいけないのか、傷つけ合わねばならないのか、喰らい合わなければいけないのか。

 そもそも、生きるという事は他者を喰らう事…なのに、人間だけがそれから逸脱しようとしている。

 それこそ、烏滸がましい事なのかもしれない。そして、魔族たちもそれは同じだ。

 叡智、それは人が生きていく上で必要な力であると同時に世界の法則を壊す危険すらある諸刃の剣だ。

 しかし、舞がこんな事を考えた所で何かが変わる訳でもなかった。

 だから、舞はこれ以上考えるのを止めた。


「四宮中佐!」


 声が聞こえた。恐らく、また怪我人だろう。舞はくたびれそうになった。身体がではなく心が、だ。

 舞は呼ばれた声のした方に向かった。









 プロテアは一人で隠れ家に籠っていた。一人だった。いや、この隠れ家にはいくつか部屋があって、プロテアはその一つの部屋の中に籠っていた。

 耳を澄ませば聞こえてくる。銃声の音が、聞こえてくる人々の悲鳴が、爆発の音がプロテアの耳をつんざく。

 この悲鳴はイシュガルドの人間たちの悲鳴である事をプロテアは何となく分かっていた。


 相手は国である、どう考えても、一一族だけでは相手になる筈もない。

 しかも、相手は他国からも援助してもらっているという。戦力差は歴然だ。

 さっさと降伏していればこんな事にはならなかったのかもしれない。

 しかし、そんな事をプロテアが考えた所で仕方がない。今のプロテアに出来る事など無いのだ。

 今ほど己の無力さを呪った事は無いだろう。今のプロテアは仲間が死んでいく悲鳴を聞く事しか出来ない。

 この戦いで恐らく、イシュガルドは全滅する。多分、女子供関係なく殺される。


 向こうは本気でイシュガルドを殺りにきている。プロテアは他の子供たちと比べて落ち着いていた。

 いや、落ち着いているように見えた。プロテアは冷静に自身の行く末を悟ったからだ。

 このまま家族もろとも殺されて終わる。それが分かっていた。死は恐ろしくない、といえば嘘になる。恐怖はある。

 しかし、これから死ぬ事に対して嘆いた所で無駄である事をプロテアは子供たちの誰よりも理解していた。してしまっていたのだ。


 弟が、イデスが死んでからプロテアは鉄の花を作らなくなった。作る気が起こらなかった。

 もう少しで全て完成する所でイデスは死んだ。鉄の花は家に置いてきた。

 きっとあれも破壊されてしまうだろう。どうせ、全て消えてなくなるのだ。

 何を気にした所でしょうがない。プロテアは虚無の感情に支配されていた。

 今の彼女は身体に魂が入っていない人形の様な状態だ。もう、何もかもがどうでもいい。

 プロテアは家族といるだけで幸せであった。そんな、些細な幸せすらも無情にも国は奪い去った。

 プロテアは虚しさを感じていた。怒り狂っていればどれだけ楽であったのだろう。


 プロテアは虚ろな瞳で天井を眺めていた。ここは地下であり、辺りにも窓などある筈もなく、電気をつけなければ真っ暗だ。

 しかし、プロテアは電気をつけていなかったので真っ暗な天井を眺めた。

 幸せから不幸に、愛が憎しみに変わる事がこんなにも容易い。しかし、プロテアはそれをとうに通り越していた。

 怒り、憎しみ、悲しみ、それらの先にある感情、それはただの虚無だ。

 プロテアは家族の事を思い出していた。無邪気に笑うイデス、それを微笑ましく見守っているジャイアとリリー。

 しかし、あの頃にはもう、戻れない。イデスはもう、この世にいない。リリーは心が壊れてしまった。

 ジャイアは息子の死と妻の精神崩壊、そして、プロテアの虚ろな瞳を前にえいえんに苦しみ続けるだろう。

 そう、もう戻れない、止まれない、進めない、変えられない、忘れる事すら出来ない。

 この絶望を変えたい、止まらず、真っ直ぐ進みたい、本当は楽しかった思い出も忘れたくない。そして…


         ーあの頃に戻りたいー


 戻りたい、やり直したい、運命を変えたい、世界を変えたい、世界の法則を無視してでもやり直したいのだ。

 世界のルールを破る事がそんなにいけない事なのか?皆が楽しく暮らせるなら、ルールのせいで人々を不幸にしているのならー


    ーそんなルール壊してしまえばいいではないかー


 プロテアは出来もしない妄想をした。そんな妄想をしたところでそもそもプロテアには世界を変える程の力もない。

 プロテアは一人で天井を眺め続けた。特に、意味もなく…………












 厳陣と黒宮は夜になって、十二支連合帝国の拠点に戻ってきた。そして、すぐに舞を発見した。


「四宮君!」

「常森さん…黒宮さんも…」

「ああ、……夜は君も参加するのだろう?」

「…はい」

「覚悟は出来ているか?」


 舞は厳陣と黒宮と共に戦場へと向かった。暫くすると、イシュガルドの人間を見つけた。

 どうやら、休憩中のようだ。殺すには絶好のチャンスだ。


「四宮君」

「分かってます」


 舞は銃を構えた。そして、狙いをイシュガルド兵に定めた。微かに手が震えていた。


「【豊神(ロノ)】」


 舞の身体から牛の化け物が出現し、そして、銃に収まった。後は引き金を引くだけ。

 だというのに、躊躇いが生じていた。彼らが何かをしたのか?罪も無い人間を易々と殺していいものなのか?

 人は何かの理由付けをしなければ行動を実行に移す事が難しい生き物だ。

 理由を付けなければ、いざという時に動けなくなるからだ。舞は人を殺すのはこれが初めてではない。

 多くの犯罪者たちを殺してきた。だが、それは相手が犯罪者だから、という理由があったから実行できたものなのだ。

 しかし、彼らはどうだ。犯罪者でも、舞自身に何かをしたわけでもない。

 なのに、殺さなくてはならない。国側の身勝手な理由で。


「四宮さん、無理なら私が…」


 舞では彼らを殺す事は無理だという事を悟り、黒宮が舞に声をかける。

 だが、舞はその黒宮の声により、自分は彼らを殺さなくてはならないという事を実感した。

 もし、ここで舞が相手を殺す事を止めてしまえば、自身の正義が揺らぐ事になるからだ。

 舞は厳陣と黒宮によって導かれた。それに報いなければならない。

 本来なら魔女になったあの日から舞はどうなっていたか分からない。それを助けてくれたのは彼らなのだ。

 舞は震えを止め、再び銃をイシュガルド兵に狙いを定めた。相手は三人程だ。舞は引き金を引いた。


「がはっ!」

「な!?」

「どうした!?」


 イシュガルドたちが狼狽する。

 その瞬間、撃ち抜かれたイシュガルド兵の身体から植物が発生し、それは瞬く間に樹木へと変わり、撃ち抜かれたイシュガルド兵は植物に食い潰された。

 更に、樹木は根を張り、地面から無数の蔦が出現し、残りの二人の脇腹を貫いた。


「がっ!」

「ぎぇえ!!」


 そして、二人は樹木に養分を吸いとられ、干からびながら死んでいった。

 舞はその光景を目に焼き付けていた。目を反らす事など許されない。自分がやった事なのだから。


「四宮君、大丈夫か?」

「…大丈夫です。覚悟は、決まりました」


 舞は真顔でそう言った。厳陣と黒宮は微妙な顔をしていたが、今は舞の言葉を信じるしかない。


「この先にイシュガルドたちがいる筈だ。ただちに、全滅する」

「「分かりました」」


 厳陣が命令を下すと舞と黒宮は返事を返した。

 厳陣たちは目的地まで進んでいく。見えた、ここがイシュガルドの拠点の一つだ。

 ここを殲滅すれば、こちらの勝利に大きく近づく。厳陣は手を上に上げた。


「【狂月光(ザ・ルナティック)】」


 空の月が赤く染まった。イシュガルドの人々は月が赤くなった事に気が付き、空を見上げた。


「なんだ?あれは?…………が!」

「うがあああああ!!!」

「いぐううう!!!」

「だずげ…ぎあああああ!!!!」


 赤い月を見た瞬間、イシュガルド人たちは発狂した。そして、目から血が吹き出し、ピクピクっと痙攣をして、倒れた。


「あの月を見るな!敵の術だ!」


 イシュガルド人の一人がそう言うと誰も赤い月を見なくなった。すると、彼らは厳陣たちの存在に気づいた。


「奴等だ!奴等の仕業だ!殺せえええ!!」


 イシュガルド人たちが厳陣たちに襲い掛かった。

 厳陣が使った【狂月光(ザ・ルナティック)】は月を月を赤く見せる幻覚系の【二十二式精霊術(アルカナ)】であり、赤い月を見た者を幻術世界に強制的に送る術だ。

 そして、幻術に掛かった者は目から血が吹き出し、身体を痙攣させながら死に絶える。

 非常に恐ろしく、強大な術だ。しかし、この術には制約がいくつか存在する。

 まず、一つ目に月を見なければ術に掛かる事は無い。二つ目は夜にしか発動する事が出来ない。逆に【太陽(ザ・シャイン)】は昼にしか発動できない。

 三つ目の制約は術の発動中、術者は無防備になってしまう。最後に四つ目は敵が自分の視界に入る場所でしか発動できない。

 つまり、強力な能力ではあるが、その分、制約が大きい。故に、厳陣はこの力を一人の時は使わない。

 今は黒宮と舞がいる。厳陣を含めるとたったの三人だが、一人一人の戦闘力が図抜けているので、問題は無い。


「行きますよ、四宮さん」

「…………はい!」


 黒宮と舞は月を見てない者を徹底的に倒していった。

 黒宮は影を使い、敵たちを影の刃で突き刺し、串刺しにした。

 舞は四大神の一体である【戦神(クー)】の力を使い、相手を爆殺していった。

 敵は厳陣に一切近付けなかった。何故なら、厳陣には舞と黒宮という最強の盾と矛がいた。

 やがて、敵は全滅した。たったの数十分で数万の敵を殲滅した。

 人はこうも簡単に壊れてしまう。消えてしまう。死んでしまう。


「常森小将…黒宮大佐…私たちに…正義はあるのでしょうか?」

「…それは、君が決める事だ」

「そうですね、正義なんて人それぞれです。自身の正義を信じるしかありませんよ。ま、皮肉にもそれが原因で戦争は起こるのですが」


 舞は自分の歩む道が正しいものだと思っていた。しかし、それは間違いであったという事をこの戦争を通じて嫌という程気付かされた。

 この世界に絶対など無いのだ。人はそれぞれ、色んな考えを持っている。それぞれの思い、信念を持っている。

 戦争とはその片方の正義を一方的に否定し、踏みにじる行為なのだ。

 舞は今の凄惨な状況を見て、自分の過ちを突き付けられた。

 回りにあるのは死体と鉄と血と絶望だけだ。それ以外は何もない。

 臭いは鉄臭く吐きそうになる、ズタズタにされた死体の山が舞の瞳には地獄に見えた。


「行きましょう。今日はもう、終わりです。恐らく、殲滅戦もこのまま行くと一週間程で完全決着するでしょう」


 黒宮がそういうと、舞と厳陣はこの血みどろの場所から離れた。

 しかし、どんなに遠く離れても、あの凄惨な光景は頭から離れてはくれなかった。











「ははは!イシュガルドも大した事無いね!」


 青掛かった黒髪に瞳、黒い法服を着た男がそう言った。彼の名はカーシス・ベルセルク。USWの光明庁長官であり、USWを事実上掌握している男だ。

 カーシス・ベルセルクとは彼の仮の名前だ。本名はクリフォト・ユールスナールといい、USWの創設者だが、今は訳わってこの地位にいる。

 ここはヘレトーアの基地であり、円卓部屋だ。ここにはヘレトーアの幹部たちと四大帝国の総帥たちがいた。

 だが、カーシスは勿論の事、神聖ローマも総帥ではなく代理のセラフィム騎士団団長、フラン・ヴェルニケルである、白い服に長い金色の髪と瞳が特徴の美女である。

 現皇帝陛下であるヤハベラ・デラ・ローマカイザーは内乱を沈めている為ここにはいない。


「四大帝国で攻め込んでいますからね。余裕でなくては困ります」


 青色の長い髪に青い瞳、灰色の宗教服を着た男がそう言った。彼の名はアラルガンド・セクラム。

 セクラム教の神官である。彼はヘレトーア最強と謳われている騎士でもある。


「君も容赦ないねぇ。イシュガルドを滅ぼす為に我々を投入するなんてさ」

「カーシス卿。軽口が過ぎますよ」


 諌めたのはフランであった。彼女は厳格な性格ゆえ、カーシスの軽い態度が気に食わなかったのだろう。


「ああ、済まないね。あまりにキナ臭いと思っていたからね~。君たち、どうしてそこまでイシュガルドを滅ぼそうとする?」

「カーシス卿、あまり我々の詮索をしないで頂きたい。こちらはこちらであなたたちにはイシュガルドの人間の死体を報酬としているのです」

「そう!それが疑問なのさ。確かにイシュガルドの力を欲しがる者たちはいるし、取り引きとしては成立している。だが、しかし、何故、そこまでする?」


 カーシスはヘレトーアに対して質問をする。カーシスからすれば、疑問を尋ねているだけに過ぎない。


「答えるつもりはありませんよ」

「釣れないね~」

「カーシス卿、関係の無い話は慎んで頂きたい。これからの話をしましょう」


 カーシスがあまりに関係の無い話をしていたので閻魔が割って入った。

 しかし、そんな閻魔に対してカーシスは楽し気にしていた。


「ははは、そうだね。どこの国でも、黒い話の一つや二つ、あるよね?エンマゲンチ君」

「何か言いたげだな」

「思い込みはよくないよ、エンマ君」


 最後までカーシスはしたたかを貫いていた。しかし、閻魔はカーシスに若干乗せられ気味であった。

 カーシス・ベルセルク…つくづく喰えない男である。


「とにかく、後、一週間もすれば、殲滅は完遂出来るでしょう」

「そうだな、報酬は必ず頂くぞ」

「がめついね、エンマ君」

「黙れ、悪魔め」


 フランが仕切り直そうとするが、閻魔とカーシスは未だに鍔迫り合いをしていた。

 まぁ、カーシスは余裕の態度を崩していないが。


「悪魔ね…酷いなぁ、これでも一応、人間なんだがね」

「数百年以上生きる人間がいるか」

「それをイシュガルドに対して言えるのかい?」

「貴様はイシュガルドではない」

「二人とも止めてください、カーシス卿もお喋りが過ぎますよ」


 アラルガンドが二人を諌めた。仕方なく、二人は黙った。


「まぁ、いいか」


 カーシスは能天気にそう言った。どうも、彼はこの会合すら茶番としか見ていない節がある。


「それで?今回の話はここで終わりかい?」

「いえ、イシュガルドの者がここに来たので。交渉がしたいようで………まぁ、受け入れるつもりはありませんが」

「この会議に参加させるだけで交渉には応じるつもりは無いと、随分酷い事をするんだね、アラルガンド君」

「その場で殺さないだけマシです」

「でも、いずれは殺すんだろ?」

「殺す殺さないなどどうでもよい、速く済ませた邦楽よいのでは?」


 閻魔は速く進行を進めるよう、促した。どうも、カーシスと同じ席にいるのが不快で仕方なかった。

 それに、カーシスはこの会議を掻き回す事を楽しんでいるように見える。

 それが、不快でならなかった。彼は小物を装っている。質が悪いこの上ない。


「そうですね、速く済ませましょう。とはいえ、決定をするのはアラルガンド様とルバート様だが」


 アラルガンドの隣にもう一人、宗教服を着た人物がいた。ルバート・セイント。セイント教の神官である。

 赤黒い髪と瞳が特徴の吸血鬼を思わせるような人物だ。寡黙故、あまり多く話す事はない。

 しかし、彼はアラルガンドと双璧を成す程の力を持つ魔道師でもある。


「さて、そろそろ来る頃だ」


 扉からイシュガルドの族長、ジャイアが入ってきた。他の者たちは高いところからジャイアを見下ろしていた。


「何のようかな?」


 カーシスが尋ねた。用件は分かっているのだが、このままでは話が進まない。


「降伏します。ですから、他の者たちを…せめて、命だけは…」

「残念ですが、それは受け入れられません。我々の目的は殲滅です。お帰り願います。まぁ、この場であなたを殺すのが手っ取り早いのは事実ですが…今回は特別に見逃してあげますよ。どうせ、すぐに死ぬ」

「お願いです!どうか…どうか…」


 ジャイアはそれでも食い下がる。すると、カーシスがジャイアに助け船を出した。


「ふぅ~ん、こんなに必死なら条件を飲んでもいいんじゃないかな?」

「カーシス卿!何を…」


 アラルガンドが声を上げるが、カーシスは手を上げた。


「アラルガンド君、話を最後まで聞きたまえ。…このまま彼の命一つで残りのイシュガルドを助けようなどと思っていないさ。勿論、助けるのは一人だけだ」

「そんな…」

「それでも認められん!殲滅だ!」

「そうかね?面白いと思うのだがね?彼が誰の命を選択するか…例えば、そうだね。君の妻子…とかね?」

「!?」

「まぁ、最終的に決定を下すのはヘレトーアだからね。私が口を挟んだ所で仕方ないね」


 カーシスはすぐに掌を返した。まぁ、カーシスからすれば、他国の問題の為、そこまで知ったことでもない。

 ジャイアはこれ以上抗っても結果は変わらないと判断し、引き下がらざるおえなかった。


「下がりたまえ」


 アラルガンドがそう言うと、ジャイアは扉から出ていった。ジャイアの抵抗は無情に終わった。


「これで、用件は済んだな、私はここから去らせて貰うよ。後、ヘレトーアよ、報酬は忘れぬよう」

「随分、イシュガルドの力に拘るんだね?」

「…ギリッ!」


 閻魔はカーシスに見えない様に歯軋りをした。カーシス・ベルセルク…彼はいずれ殺すと閻魔は心に決めた。閻魔はそのまま去っていった。


「さて、私も出ていくとしよう」


 カーシスはそう言って部屋から出ていき、その後ろに続いてフランも出ていった。


「ルバート、貴様も少しは喋れ!」

「……僕は、あまり喋るの好きじゃない」

「お前の好き嫌いなどどうでもいい…まったく…」


 アラルガンドは呆れながら息を吐いた。どうも、ルバートは自分の興味のある事以外は話そうとしない。

 アラルガンドはルバートと仲良く出来そうに無いなと思った。









 カーシスは一人で歩いていた。USWの拠点に戻る為だ。目の前には『七魔王(セブン・ドゥクス)』のリーダーであるシェパードがいた。


「お疲れ様です」

「ああ、シェパード、御苦労だったね」

「会議の内容はある程度把握してますよ。また、会議を引っ掻き回していたようですね」

「狂言回しも時として必要だろう?」

「あまり、軽率な行動は控えた方がよろしいかと」

「それもそうだね、これからは気を付けるよ」


 カーシスは自身の非を認め、シェパードにこれから気を付けると言った。

 カーシスは元より、この世界の行く末などどうでもいい。

 彼がこの戦争に参加したのもイシュガルドが目当てではなく、もっと別の物が目当てだからだ。

 カーシスとシェパードはそのまま拠点に戻った。皆、カーシスとシェパードに敬礼をしていた。


「ああ、固くならなくていいよ。君らも疲れたろう。速く身体を休めたまえ」


 カーシスはそう言って自室に向かった。シェパードはカーシスの後ろ姿に敬礼をした。

 彼は『アンタレス』内では多くの者たちに信頼されている。『アンタレス』とはUSWの軍の総称であり、特殊暗殺部隊でもある。

 カーシスはそれらを事実上統率している。『七魔王(セブン・ドゥクス)』はその『アンタレス』の幹部クラスの者たちだ。

 カーシスはそのまま自室に入っていった。


「やれやれ、さて、繋がるかな?聞こえるかい?「アザゼル」?」


 カーシスは虚空に向かってそう言った。すると、頭の中に言葉が入ってくるのが分かった。


『カーシスか…久しいな』

「ああ、君はシノミヤマイの身体を乗っ取るのに随分苦労しているようだね」


 カーシスが話しかけている者はアザゼル。USWの三賢人(グリゴリ)の一人にして最強の悪魔である。

 彼は今から50年前、USWの四大神を奪う為、暗躍していた。しかし、四宮舞に邪魔をされ、アザゼルは四宮舞の身体に憑依するハメになった。しかも、舞を未だに乗っ取れていない。

 カーシスは念話でアザゼルに語りかけていたのだ。念話ならなんとか話せる。

 カーシスが何故、アザゼルに話し掛けたのかというと、彼の進捗情報を聞くためだ。


「で?彼女を完全に乗っ取るにはどれくらい掛かりそうなんだい?」

『恐らく、後、五十年は掛かる』

「そうか、つまり、それまでに私は《特異点》を見つけなければならないわけか」

『僕の悲願と…』

「私の悲願と…」

『どちらが先に…』

「叶うか…」

「『楽しみだね』」


 カーシスとアザゼルはお互いに違う目的を持っている。

 どちらかの目的が達成されると一方の目的が達成されない。

 アザゼルの目的は四大神を我が物とし、この世界を冥界に変え、『世界宮殿(パルテノス)』の呪縛から解放される事。

 一方で、カーシスの目的は《特異点》を見つけ出し、この世界に変革をもたらし、自分の生きる意味を見つけ出す事。

 カーシスもアザゼルも『世界宮殿(パルテノス)』を変えようとしているが、カーシスの場合、それはついでに過ぎない。

 カーシスは自分が生きている証を、未だに探し続けているのだ。

 この二人は不可侵同盟を結んでいる。

 お互いの目的に一切干渉しないという盟約であり、どちらが先に達成されても恨みっこなしというわけだ。

 故に、お互いの情報を共有しているのだ。お互い、平等にする為だ。一言で言えば、余興だ。


『ところで、君はどうなの?』

「駄目だね、イシュガルドの人間に《特異点》はいなかった。まぁ、期待出来る者はいたけどね」

『ほう?期待出来る者とは?』

「イシュガルド族長、ジャイアの娘だよ」

『ああ、プロテア・イシュガルドか…』

「彼女を知っているのかい?」

『四宮舞の知り合いだよ。私は舞の中で見てたからね』

「なるほど…彼女は化けるよ…生き残れれば、だけどね」


 アザゼルが喋り方や一人称が一定しないのはアザゼルは肉体を持たない幽体であり、相手に取り憑いて身体を乗っ取らなければ生きていけない。

 故に、男女関係なく身体を乗っ取り続けてきた結果、話し方が一貫しなくなってしまった。

 カーシスはアザゼルの事を知っていたので特には気にしなかった。


『という事は今回の戦争で得たものは両者とも無かったと…』

「そうなる…悲しいがね。まぁ、時間は無限にある。焦らずに行くとするよ」

『私より速く目的が達成されるといいわね』

「そうなる事を祈るばかりだよ。《特異点》は数百年に一人生まれると言われている。君に先を越される可能性の方が高いからね」


 カーシスは穏やかな口調でそう言った。そんなカーシスをアザゼルは少し、おかしく思った。


『私に先を越される可能性の方が高い割にはお前はあまり焦っていない様に見えるが?』

「特異点は近い内に現れる…そんな気がするのさ」

『楽天的だな』

「案外、そっちの方が上手くいくものだよ」

『…まぁ、いい。話はこれで終わりだ』

「そうだね、せいぜい…お互い死なない様にしたいね」

『死ぬ気満々の人間様がよく言う…』

「ははは…」


 カーシスは愉快に笑っていた。そして、念話はそのまま途切れた。


「死ぬ気満々…か…」


 カーシスは呟いた。実際、アザゼルがカーシスに言った事は当たらずとも遠からず、と言った所だ。

 だが、悲願が達成されるまで、死ぬ気はない。


「まだまだ、楽しくなりそうだ」












 殲滅戦も終盤に入っていた。こちらの兵力はそこまで減らなかった。

 せいぜい、百人程度犠牲になった程度だ。セラフィム騎士団に至っては犠牲者ゼロだ。

 イシュガルドは何度も幸福宣言をしたが、ヘレトーアは断固として受け入れず、殲滅を続けた。

 そして、今日をもって、殲滅戦を終了する。たった一週間弱の期間であったが、この戦争は多くの人々にとって爪痕を残す事となった。

 この戦争を機に軍人を辞めた者が多かった。大量の人間を虐殺した事でそれに耐えきれなくなったのだ。

 中でも十二支連合帝国の者が軍を止めた者が多かった。USWの軍の大半は悪魔であり、神聖ローマは天使の集団だ。

 しかし、十二支連合帝国は人間の集団だ。十二支連合帝国の者たちが深い傷を負うのは必然であった。


「四宮くん…」


 厳陣は舞に声をかける。しかし、舞は返事が出来なかった。瞳は虚ろになっており、髪もどこかやつれているようであった。

 厳陣と黒宮は比較的大丈夫であるようだが、それでもこの戦争には堪えるものがあった。黒宮ですらこの戦争は胸糞悪いと思うくらいだ。


「時間です、行きますよ、厳陣、四宮さん」


 黒宮が声をかけると厳陣と舞が黒宮の後ろに付いていった。そして、最後のイシュガルド殲滅戦が始まった。

 やはり、戦況は一方的であった。どんどん人が死んでいく。そして、悲鳴や銃声、血が迸る音、耳をつんざく破壊音、全てが舞たちの心を抉る。


【やだあ!!】    【助け…ぎゃあああああ!!】

 【どけよ!邪魔なんだよ!】  【殺せええ!!!!】

【死ね死ねシネシネ死ね死ね!!】【殺さないと!】

 【俺たちが何をしたって言うんだ!】【終わりだ…】【死ね!】

【誰か…たずげて…】 【皆殺される!】 【あああああ!!】

 【僕が守らないと、皆死んじゃうだろおおおおお!!!!】

【戦わないと守れない!】 【消えろおおおおおお!!!】

 【来るなああああああ!!】 【ぐぎゃあ!!!】

【おい!何やってんだ!こっちに来るな!】 【嫌だ!死にたくない!!】 【殺す…!殺してやる!!】 【殺殺殺殺殺殺!!】

 【廢廃敗琲批!!!】 【殺すぞ!!消えろ!!】

【俺を助けろよぉ!!】 【やだやだやだやだややだ!!!】

【おい!何とかしろよ!】 【どけよ!シネ死ね死ね!!】


 十二支連合帝国の軍人の一部が動きを止めてしまった。イシュガルドはその隙を見逃さなかった。

 数人がかりで押さえつけ、銃で撃ち抜く、刃物で切り刻む、至近距離から爆弾を投げる、殺し方は様々であったが、凄惨な殺し方である事には変わり無かった。


「ぎゃあああああ!!」

「くっ…こいつら…生き残れない事を分かっていて特攻しているのか!?ぐぎぇあ!」


 軍の人間がここに来て殺られ始めた。今のイシュガルド人たちはただの殺意の塊だ。

 相手はこちらが相手を殺す事に躊躇っていようが、向こうには関係ない。

 圧倒的殺意により、理性が完全に吹き飛んでいた。彼等イシュガルド人はもはや、相手を殺す事しか頭に無かった。

 理性のタガが外れた人間は一時ではあるが超人的力を発揮する。

 しかし、それは一時でしかない。いずれは彼等の殺意の炎は鎮火するだろう。


「【太陽(ザ・シャイン)】」


 空から炎の隕石が落下する。イシュガルド人たちが次々と倒れていく。


「ぎゃあああああ!!」

「ぐうええええ!!!」

「ぎょええええ!!!!!」


 厳陣が放った隕石たちは彼等の死体すら粉々に焼き払った。これ以上、彼等の死体を厳陣は見たくなかった。気がどうにかなりそうである。


「【影境界(シャドウ・オーバー)】」


 黒宮の周囲の地面が黒く染まる、全てが黒宮の影だ。その影を踏んだ者が悉く影に吸いとられ、バキッグキュッと音を立てた。

 影の中で身体を磨り潰されているのだ。

 黒宮の【影境界(シャドウ・オーバー)】は黒宮の影を広範囲に展開し、影を踏んだ者を影で包み込み、磨り潰す技だ。黒宮もこの戦いを速く終わらせたいようであった。

 厳陣や舞の様にあまり表面的には表していないが、黒宮もこの戦には相当嫌気が差していた。


「ここは…」


 舞はこの場所に来た覚えがあった。そう、この場所はプロテアの家の周辺であった。

 しかし、今となっては面影が無かった。今、ここにあるのは血と死体と業火だけであった。

 舞は一人、プロテアの家に走っていった。


「四宮君!一体どこに…」


 厳陣が舞を追おうとするが敵が行く手を阻む。


「厳陣、取り敢えず今はここを何とかしましょう。なに、四宮さんはそう簡単には殺られませんよ」


 黒宮は厳陣と共に敵を薙ぎ倒していった。黒宮は本心で舞は大丈夫だと言っている。

 黒宮はなんだかんだで舞を信頼している。戦友の一人なのだから。








 舞はプロテアの家に辿り着いた。何故だろう、ここに来なければならない気がしたのだ。

 現在この場所も混戦状態であったがプロテアの家は何とか無事のようであった。

 家の中に入る。中に人がいるとは思えなかったが、舞は取り敢えず家の中に入った。

 そして、二階に上がり、プロテアの部屋に辿り着いた。そこには鉄の花があった。

 全部で四つあった。それらの花に舞は見覚えがあった。全てプロテアという花であった。

 リリー・プロテア、ジャイアント・プロテア、プロテア・キナロイデス、そして、キングプロテア…鉄で作られた花だ。

 四つ…プロテアの家族と人数が一致している。プレゼントを作っていたのだろう。見たところ、作りかけだ。完成する前に戦争が起こってしまった。


「プロテアは優しい子だ。私たちの為にずっとそれを作っていた」

「!?」


 舞は驚き、後ろを振り向いた。そこにいたのはジャイアとリリーだ。


「やはり、あなたは軍の人間であったのですね」

「……」

「ふっ…もはや、我々が消えるのは避けられぬ様だな」


 ジャイアがそう呟いた。舞はジャイアとリリーを見つめていた。


「これまでです。降伏してください。降伏すれば…」

「いや、ヘレトーアはどの道、我々を処刑する。それは、君も分かっているのだろう?」


 ジャイアとリリーは虚ろな目をしていた。舞は二人の顔を見る事で胸を締め付けられる気分になった。

 わかっている、どの道この二人は殺されてしまう。だが…


「四宮殿…約束…覚えてますか?」

「!?」


 舞はちゃんと覚えていた。しかしー


「お願いします…娘を…」


 ジャイアは頭を下げた。しかし、それは軍の規範に背く事になる。

 舞は葛藤した。自分はどうするべきなのか。誰かが守ってくれる。そんな甘えた事を舞は考えていた。

 誰も守ってなどくれない。誰かを守るのも生かすのもそれは自分自身にしか出来ない。

 舞は選択しなければならない、このまま軍の命令に従ってプロテアもろともジャイアとリリーを抹殺するか、それとも、彼等の望み通りプロテアを助けるか。

 軍の命令か、小さな家族の細やかな願いか、どちらを取るか…いや、気持ちは決まっているだが………行動が起こせない。

 舞の頭の中にプロテアやジャイアやリリーの事が浮かび上がった。過去の記憶でしかない。

 彼等は幸せだった筈だ、その細やかな幸せすら、舞たちは奪い去ったのだ。

 次に舞は軍人としての記憶が過った。黒宮や厳陣の記憶だ。頭の中で記憶がごちゃごちゃになっていった。


「ああああああああああ!!!!」


 舞は頭の中がぐちゃぐちゃになり、銃を乱発した。舞の今の銃には【戦神(クー)】の力を帯びている。

 乱発した場所が爆発していく。そして、プロテアたちの家は破壊されていった。




 プロテアは何となく家に向かっていた。どうせ死ぬなら家で死にたい…そうプロテアは思った。

 歩いていく、しかし、あったのはただの業火と死体と血だけであった。

 並の人間がこんな光景を見れば激しい嘔吐感が襲われる筈だが、プロテアは怯むどころかずっと、家に向かって歩き続けた。

 いや、プロテアはとんでもない吐き気、悲しみにも襲われていた。しかし、それでもプロテアは進み続けた。

 幸い、プロテアのルートには敵がいなかったのでこのまま行けば、家に辿り着ける。

 そして、プロテア自分の家「だった」場所に辿り着いた。


「何?これ…」


 辺りは焼け野原になっていた。今までの焼け野原とは比べ物にならない。

 軍人たちが彷徨いていた。そして、イシュガルドの人々を虐殺していた。

 これはもはや、戦争ではない。ただの一方的な粛清である。予想はしていた。しかし、ここまで酷いとは想像していなかった。

 プロテアは周囲を見渡した。すると、数メートル先にジャイアがいた。家があった場所だ。しかし、家は殆ど消し飛んでしまっていた。

 プロテアは走り出す。父はまだ、生きている助けなければと思った。





 プロテアの家は舞によって消し飛ばされてしまった。ジャイアとリリーは辛うじて助かっていたが、ジャイアは両足が下敷きになっていた。リリーは脇腹と心臓が木材の破片が貫いていた。

 もはや、彼等はもう、虫の息だ。もう、助からない。


「わ…私は…」


 舞は虚ろな瞳になっていた。自分はとんでもない事をしてしまった。


ー教え子の親を…殺すなんて…


「四宮殿…我々の命は差し上げます……娘を頼みます」

「…私たちは…一足先に逝きます。大丈夫です…私たちの苦しみはあなたやプロテアと違い、すぐに終わります…」


 ジャイアとリリーがそう言うと、舞は二人の覚悟に心を打たれた。

 覚悟が足りていなかった。舞は正義の味方を気取っていたに過ぎなかった。

 ここで中途半端な事をすれば、それは正義どころか悪以下だ。舞の意志はもう、決まった。


「………分かりました」

「これで…安心して……………」


 リリーは息を引き取った。ジャイアと舞はそれを静かに見守った。


「四宮殿…」


 舞はジャイアの頭に銃口を押し当てた。そしてー


「ありがとう…」


 舞は引き金を引き、ジャイアを撃ち殺した。


 プロテアは舞がジャイアを殺す瞬間を見た。そして、忘れていた感情が蘇った。

 そう、これは溢れでる憤怒。怒りの感情だ。舞はどこか、虚ろな目をしていた。しかし、そんな事、プロテアはどうでもよかった。


「殺す…殺してやる………!」


 プロテアは目を血走らせながらそう呟き、舞に接近した。

 しかし、プロテアは一瞬動きを止めた。何故なら…舞が涙を流していたからだ。


「何で…何で泣いてるのよ!」

「………プロテア…」


 舞はプロテアと遭遇した。してしまった。


「あなたは!殺す!絶対に!!」


 プロテアは右手から鉄の剣を顕現させた。そして、舞に襲い掛かった。

 舞は攻撃を回避した。しかし、プロテアの猛攻は止まらなかった。

 舞はプロテアの足を狙うが、動きが速すぎて捉えきれない。銃弾を放つが悉く避けられる。

 プロテアは舞の後ろに回り込み、一太刀浴びせた。


「……くっ!」


 舞は距離を取る。すると、プロテアの事に気づいた軍の者たちがプロテアを包囲した。


「奴もイシュガルドだ!殺せ!!」


 軍の者たちが銃弾を一斉に放った。しかし、プロテアは弾丸を全て叩ききった。

 子供とは思えない驚異的な身体能力だ。プロテアは姿が消えた。すると一人の軍人男の腹に鉄の剣を突き刺した。


「がっ!?」

「おおおおおおお!!!」


 プロテアが剣を相手な突き刺した瞬間、男の体から鉄が飛び出し、血飛沫が舞った。

 更にプロテアは左手からも剣を顕現させ、地面に突き立てた。すると、地面から無数の鉄の剣が出現し、軍人たちを殺していく。

 舞はどうにか攻撃を回避した。しかし、プロテアは既に数百人の軍人を殺している。

 怒りによって戦闘力が増大しているのもあるだろうが、プロテア自身の潜在能力が非常に高い。故に強大な力で軍人たちを薙ぎ倒していっているのだ。

 周囲は赤く染まっていた。言うまでもなく、血の色だ。


「……お願い…止めて…プロテア!!」


 舞はジャイアとリリーと約束したのだ。プロテアを助けると。ここでプロテアを殺す事など、赦されないのだ。


「【冥海神(カナロア)】!」


 舞の身体から鮫の化け物が出現し、舞の銃に収まった。そして、銃弾をプロテアに放った。銃弾は掻き消え、衝撃波となった。

 プロテアは吹き飛ばされ、樹に激突した。プロテアは血を吐き、倒れた。身体の何本かの骨は確実に折れていた。しかし、プロテアはまだ、立ち上がる。


「四宮君!」

「四宮さん!」


 厳陣と黒宮が舞の元にやってきた。しかし、その瞬間、プロテアが厳陣たちを睨み付けた瞬間、プロテアの血が鉄に変化し、厳陣、黒宮、舞に襲い掛かった。

 三人は何とか攻撃を回避したが、今度は空から鉄の雨が降り注いだ。


「あの少女は何者なんですか!?」

「分からん!だが、精霊の力を使っているようだ。間違いなく【二十二式精霊術(アルカナ)】…イシュガルド人だ!だが、霊力は並のイシュガルド人の比ではない!」


 黒宮と厳陣が驚愕していた。まさか、イシュガルドにここまでの化け物がいたとは。しかも、その化け物があんなに小さな少女だなんて。


「四宮さん!ここは撤退です!」

「いいえ、この子は私が…」


 舞はプロテアに接近した。


「仕方ない!大志!手を貸すぞ!」

「分かってますよ!」


 厳陣と黒宮は舞のサポートに回った。厳陣は小型隕石で、黒宮は影でプロテアの作り出した鉄を迎撃していった。

 舞はプロテアの額に銃口を当てた。


「一回死んで頂戴、プロテア」


 舞は引き金を引いた。そして、プロテアはそのまま倒れた。即死だ。


「やりましたね、ほぼ捨て身でしたけど」

「常森少将と黒宮大佐は事態の収束を行った方がいいかと、ここは…後は私一人で大丈夫です」

「そうだな、行くぞ、大志」

「…分かりました」


 黒宮と厳陣はそのまま去っていった。そして、舞は厳陣と黒宮がいなくなってから、プロテアを抱えてこの場所から遠く離れた。

 舞は軍の手の届かない場所まで移動していた。しかし、もはやここを逃げ切るのはほぼ不可能に近かった。

 しかし、ここで諦める訳にはいかない。舞は約束したのだ。必ずプロテアを逃がすと。


「探せ!イシュガルドは皆殺しだ!」


 軍隊がイシュガルドに生き残りがいないかを探していた。恐らく、ほぼ全てのイシュガルドを殲滅した。

 しかし、彼等は完全殲滅を確信するまで引かないだろう。このままでは舞とプロテアは見つかってしまう。

 そうなれば、下手をすればプロテアが殺されるだけでなく、舞まで裏切り者として見られてしまう。

 そして、舞と関係の深い厳陣や黒宮にまで疑われる可能性がある。

 ただでさえ、彼等は、特に厳陣は疎まれているのだ。あの年で少将まで上り詰めている厳陣は周囲からの見えない圧力に襲われていた。

 黒宮に関してはは彼が吸血鬼の真祖だと知っている人物は十二支連合帝国の上層部と厳陣と舞だけだ。

 しかし、周囲からは若手と見られている為、彼も厳陣程ではないにしろ、周囲からの軋轢は強い。

 厳陣は十二支連合帝国の今の独裁政治を変えるべく、総統を目指している。舞の私情でそれを邪魔するわけにはいかなかった。

 舞はここからどうにかして逃げ切る方法を考えたが思い浮かばない。

 今のプロテアは仮死状態だ。カナロアの力でプロテアを一時的に殺した。暫くすれば、目を覚ます。

 舞はプロテアが目を覚ます前にこの状況を打破しなくてはならない。


「くそ…このままじゃ…」


 舞は拳を地面に叩き付けた。しかし、結果は変わらない。どんなに足掻いても今のままでは間違いなくプロテアと舞は捕まってしまう。


「お困りのようだね、手を貸そうか?」


 舞の後ろからそんな声が聞こえた。舞は慌てて後ろを振り返った。

 そこにいたのはオレンジの意匠をしている白い軍服を着ていた。オレンジの髪にミディアムパーマが特徴の女性であった。

 舞はその女性に見覚えがあった。いや、会うのは勿論始めてだ。しかし、彼女は神聖ローマの者だ。彼女の名はー


「ミルフィーユ・ペテルギウス!?」


 そう、そこにいたのは神聖ローマ最高戦力である『セラフィム騎士団』のメンバーの一人、ミルフィーユ・ペテルギウスであった。

 このままではまずい、舞は今プロテアをおぶっている状態だ。明らかにプロテアを…イシュガルド人を匿っているように見える。他国の者とはいえ、これは不味い。


「私も有名人なんだね~。…ああ、そう身構えなくてもいいよ。言ったでしょ?手を貸そうかって」

「!?」


 舞がミルフィーユの言葉に驚いている中、ミルフィーユは妖しい笑みで嗤っていた。




 To be continued

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