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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第一章】十二支連合帝国篇
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【第一章】十二支連合帝国篇Ⅵ-決戦前夜ー

 「アザミの花」の幹部、「十二神将」たちとの激闘が続いていた。一夜、遥は辛くも勝利を収めた。

 しかし、激闘は今あだに続いている。果たして、勝つのは蒼たち生徒会か?それとも、「アザミの花」か?

「遥さん!大丈夫ですか?すごいケガ…」

 慧留はそう言うと遥が答えた。

「大丈夫よ…けど…これ以上は戦えないわね」

「すぐ治療します!」

 そう言って、慧留は治療を始めた。

 遥と龍の戦いが終わり、慧留は遥の元へ向かっていたのだ。

 慧留は「時間回帰」と言う特殊な力が使える。この力はその名の通り時間を巻き戻す能力である。遥の傷がほぼ消えていた。しかし、戻すのは傷だけであり、霊力や体力を戻すことは出来ないのだ。

「あたしたちは美浪と湊に合流しましょう。さっきの戦いで大分二人から離れちゃったわ」

 遥がそう言うと慧留は首肯した。

「そうですね。行きましょう!」

 慧留と遥は湊と美浪の元へ向かった。


「向こうは終わったみたいだね。突風やら音波やらが発生しててとてもヤバそうだったな~。俺、あっちじゃなくてよかったよ」

 呑気な事を言う湊だったが、美浪はそんな湊に突っ込みを入れた。

「そんな呑気な事言ってる場合じゃないですよ!こっちも相当マズいんですから!」

 遥と龍の戦闘中の時もこの二人はずっと銀一山と戦っていた。銀は鎧の神器と巨大な体躯で攻撃するパワー型でその圧倒的力の前で二人は苦戦を強いられていた。今のところは二人とも躱すので精いっぱいだった。

「パワーが凄いだけじゃなくてものすごく速い。こっちは数的有利だが、そんなのお構いなしだな、この化け物は」

 湊が投げやりな態度でそう言った。そもそも湊は戦闘向きの能力者ではない。戦闘能力だけで言うと現生徒会最弱だろう。

 そもそも、湊は戦いが好きではない。速くこの場から逃げ出したいくらいなのである。

「我の攻撃をここまで凌ぐとは貴殿ら、中々やるな!なら!我も本気で戦うとしよう!」

 そう言って銀は神器の名を口にした。

「蹂躙せよ!【山大神オオヤマツミ】!」

「来ますよ!」

「分かってるよ!」

 美浪が言うと湊は返事をした。

 神器が解放されその姿が露わになった。その姿を見て、二人は驚愕の表情を見せた。

「「なっ!」」

 銀の身体が全長十メートルほどの大きさになっていた。

 これが【山大神オオヤマツミ】の能力だ。身体を巨大化させ攻撃力と防御力を増大させる鎧の神器だ。

 この神器は神器自体のギミック機能はあまりないが、その代わり使用者の体格を制限はあるが、ある程度コントロールできる。

「我は全力を持って貴殿らを叩き潰す!獅子白兎、例え相手が兎でも全力を持って、獅子の如く貴殿らを潰してやろう!」

 銀は話を終えると右拳を湊と美浪めがけて振り下ろした。幸い、巨大化している為速力は先ほどより落ちている。躱すのは容易だった。しかしー

「ぐわ!」

 湊が拳の衝撃の余波で吹き飛ばされてしまった。確かに攻撃速度は落ちたがその代わり攻撃範囲が凄まじく広がっている。これでは躱したところで完全に防ぎきれない。

「湊さん!」

 美浪は湊より速く攻撃を回避したため衝撃波の影響を受けていないが、それでも躱したのがギリギリだった。湊の元に駆け寄ろうとするが、今度は銀の左腕が美浪めがけて飛んできた。

「霊呪法第二一四番【虚神】!」

 湊は自身と美浪の周りに巨大な盾を展開する。しかし、その盾も一瞬で粉砕されてしまい、二人は吹き飛ばされてしまった。

「ぐあああ!」「きゃああああああああ!」

 二人は電柱に激突した。幸い、その電柱は二人とは逆方向に倒れたので何とか致命傷は避けられたが、ダメージが大きい。二人とも全身が血まみれになっていた。

「ははははははははは!無力無力無力!!我の圧倒的力の前では手も足も出まい!!!」

 銀は高らかにそう言い放った。

「くそっ…あの脳筋が…」

 湊は吐き捨てるように言い放つ。

「霊呪法第三〇〇番【大連空翔だいれんくうしょう】!」

 美浪が銀めがけて霊呪法を放つ。的が大きい分直撃した。しかしー

「我は先ほどよりも硬くなっておるわ!その程度の霊呪法は効かぬ!」

 そう言って再び右拳を二人にぶつけた。

「霊呪法第六四番【瞬天歩】!」

 美浪が再び霊呪法を唱えて銀の攻撃を回避した。そして、二人は安全な場所に隠れた。

「正攻法じゃ勝てないな。どうしたものか…」

 湊が面倒臭そうに言う。

「そうですね。湊さんの場合は正攻法じゃあの巨人を倒すのは無理ですね、弱いですし」

 美浪は湊に辛辣な言葉を言い放った。

「ねぇねぇ、君は俺の事嫌いなのかな?」

 湊がそう言うと美浪はそれを否定した。

「そんなことないですよ。事実を言ったまでです。とは言え、私もあんな巨体と力比べしたこと無いんでちょっとマズいな思っとるんですよ?これでも」

 美浪がそう言ってる間にも湊は考えていた。相手の神器の能力特性を分析し、考えていた。

 そして、湊は一つの答えに辿り着いた。

「美浪ちゃんはしばらくあのデカ物と相手をしてくれ。俺に考えがある」

「何か思いついたんですか?」

 美浪が聞くとすぐに港は答えた。

「だから、そう言ってるでしょ。作戦を伝えるよ」

 そう言って湊は美浪に耳打ちして作戦を伝えた。

「湊さん、こんなか弱い女の子をあんな巨人と戦わせる気ですか?」

 美浪が冗談交じりに言うが湊はそれを否定した。

「何がか弱い女の子だよ。君ならできるだろ?」

 湊がそう言うと美浪はバツが悪そうに返事をした。

「分かりました。仕方ないですね。では、行きますよ!【身体強化フィジカルエンチャント】!」

 美浪がそう言うと美浪の身体からオーラが出てきた。【身体強化フィジカルエンチャント】はその名の通り、身体能力を強化する能力だ。美浪はこの能力によって自身の身体能力を何倍にも向上させることが出来る。

 美浪は銀に突進を繰り出した。加速による力と、自身の怪力で十メートル以上ある銀の巨体を転ばせた。

「ぬぅ!何だと!?」

 銀はこの戦いで初めて驚愕の表情を見せた。倒れた時の振動の余波によって、周囲の建物は粉々になっていた。

「はぁ、はぁ、転ばせるのがやっとって…やっぱり、体重も半端無く重い…」

美浪がそう言うと銀は再び警戒態勢に入った。

「貴殿…我を転ばせるとは中々やるな!正直、貴殿を舐めておったぞ!ならば我も全力を持って貴殿を倒すとしよう!」

 銀は次の瞬間上体を起こし、蹴り技を使った。右足を思いっきり振り回した。美浪はそれをどうにか躱し、躱した瞬間、銀の腹めがけて突進をした。しかし、吹き飛ばすのが精一杯で神器には傷一つつかない。

「我を転ばすほどの怪力は認めるが、それだけでは我の神器は砕けぬわ!」

 銀はそう言うが、美浪は薄ら笑いを浮かべた。

「もう十分ですよね!湊さん!」

「何だと!?」

 美浪がそう言うと、銀は驚きの表情を浮かべた。

「うん、十分すぎるよ!お疲れ様、美浪ちゃん」

 湊がそう言うと、銀の真下に陣形が描かれていた。

「なっ…何だこれは!?」

 銀が疑問を浮かべる。

「説明はしないよ。自身の能力解説は負けフラグらしいからね!美浪ちゃん曰く」

 湊がそう言うと陣形の真上から粉の余蘊者が降ってきた。その粉が鎧の隙間に入り込む。すると、銀の皮膚が炎症を起こし、焼け爛れていた。

「ぐあああああああああああああああああああ!!何だこれは!?」

 銀が悶絶する。

 湊が使用したのは陣形結界の一つ、【白化鱗粉はっかりんぷん】。彼が持っている蝶の式神【銀蘭ぎんらん】の鱗粉を媒介にして陣形を作り出し敵に鱗粉を浴びせる結界術である。

 【銀蘭】の鱗粉は通常の蛾の鱗粉の数万倍もの濃度を誇り、並みの人間が浴びれば皮膚は腐り落ちる。神器の力で身体能力を強化された銀でさえ、皮膚が炎症を起こしている。

 このままでは数分もせずに銀の身体は腐り落ちてしまうだろう。

「小癪な!しかし!我は身体のサイズを自由に変えられるのだ!」

 そう言い放った銀は自身の身体を鱗粉が当たらないほど小さくした。そして、結界の僅かな穴を見つけ、そこから抜け出した。

 しかし、結界から抜け出せても、湊は冷静そのものだった。

「君の神器は身体のサイズを変化させる能力だと予測していた。勿論、サイズを大きくするだけでなく、小さくすることも出来ることは想定内だった。僕の結界は完璧じゃない。抜け穴は存在する。ならば、その抜け穴を一か所に集めればいい。そうすれば、お前の出現場所が絞れる!」

 湊がそう言った瞬間、抜け道の先に美浪が現れた。湊の作戦通り事が進んでいたのだ。

 美浪は【身体強化フィジカルエンチャント】だけでなく、五感も非常に優れている。その為、小さくなった銀の正確な位置を把握していた。

 焦った銀は元のサイズに戻ろうとするがもう遅い。身体を巨大化する前に美浪が銀を右拳で殴り飛ばした。

「うおりゃあああああああああああああ!!!」

「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 美浪が叫びながら、銀を殴り飛ばし、殴り飛ばされた銀は悲鳴を上げながら数百メートルほど殴り飛ばされた。

 神器は砕け散り、銀は元の大きさに戻っており、白目を向けて気絶していた。

 神器【山大神オオヤマツミ】の最大の欠点はサイズを小さくすると、所有者の速力を上げる代わりに、攻撃力と防御力を通常より落ちしてしまう。つまり、小さくなっている時の神器はかなり脆く、壊れやすいのだ。

「うわあ~、倒せちゃったよ。信じられない」

 湊がそう言うと、美浪は腰が引けて膝をつき、疲れた顔をしていた。

「もう、ヘトヘト…」

 先の戦いが終わった直後、遥と慧留が駆けつけて来た。

「大丈夫!?湊君、美浪ちゃん!」

 慧留が二人の安否を確認すると美浪はすぐに答えた。

「うん、何とか…ここから数百メートルくらい先に敵が気絶しとるわ…」

 美浪が答えると湊がさらに続けた。

「美浪ちゃんの馬鹿力で神器を粉砕しちゃったんだけど…大丈夫…だよね?弁償とか無いよね?」

 湊がそう言うと遥はそのことについて答えた。

「大丈夫よ、あたしも神器粉々にしちゃったし」

 遥がそう言うと湊はたまらず叫んだ。

「いやいや、大丈夫じゃないですよ!!何やってんですか!?」

 湊はたまらず叫んだ。

「まぁ、仕方ないわよ。そんな時もあるわよ」

 遥がそう言うと湊は呆れたように息を吐いた。

「えっと…治療しますね」

 慧留は湊と美浪を治療した。



「さてさて~。始めようかな~」

 澪は気だるげにそう呟いた。

 今二人がいる場所は生徒会室だ。勿論、生徒の避難は完了済みだ。

「ふざけたやつね」

 雛澤は吐き捨てるようにそう言った。

「真面目も真面目。大真面目だよ」

 澪は棒読みでそう言い放った。

「あたしは自分の正義のために戦う!あなたのようなふざけた奴には負けない!」

 雛澤はそう言うと澪は雛澤に質問をした。

「どうしてこんなことするの?恨み?復讐?」

「全てだ!あたしは報復する!この腐った世界を!」

 澪の質問に高らかに雛澤は答えた。

「まぁ、そうだよね。そう言う所から争いは生まれるからね。どちらも正しいと思い込んでる。だから戦争は起こる。あたしも皆を守る為に戦うよ」

 澪がそう言い放つと雛澤は戦闘態勢に入った。

「行くわよ。【黄泉凶神オオマガツヒ】!」

 雛澤は神器を解放した。神器は短い双剣でリーチはかなり短い。

 しかし、この手の武器は小回りが利き俊敏性がかなり厄介となる。

「どんな神器か知らないけどさっさと倒しちゃえば問題ないね!霊呪法第五〇九番【白雷諫叡びゃくらいかんえい】!」

 澪が霊呪法を唱えると、澪の掌から巨大な白い雷が発生し、雛澤に向かっていった。

 五〇〇番台の霊呪法はかなり強力であり、この学校くらいなら軽々吹き飛ばせるほどの破壊力だ。

「悪いけど効かないわよ。【黄泉凶神オオマガツヒ】!」

 雛澤が神器の名を叫ぶと右手の剣を前に突き出した。すると、【白雷諫叡】が剣に吸い寄せられるように消えた。

「え~。うっそ~」

 澪は驚きの表情を見せた。無理もない、五〇〇番台の霊呪法が吸収されたのだ。

「【吸収排出ドレインリバース】」

 雛澤の右手の剣から【白雷諫叡】が放たれた。しかも、澪がさっき放ったものより威力が高い。

「霊呪法第六四番【瞬天歩しゅんてんぽ】」

 澪が霊呪法を唱え、【瞬天歩】による高速移動で回避した。

「なるほどね~、相手の技を吸収して倍返しにする技ね。こりゃたまげたわ~。なら、体術はどう?」

 澪は雛澤に詰め寄り、体術戦に持ち込んだ。

 しかし、雛澤もかなりの体術使いのようでほぼ互角だった。しかも、澪は今、武器を持っていない。神器を持つ彼女の方が有利なのである。

「【重力縛中バインド・グラビティ】」

 雛澤がそう口にすると左手の剣が輝いた。

 すると、澪の身体が地面に叩きつけられた。【重力縛中バインド・グラビティ】は指定した一定範囲内の重力を重くする技だ。

「痛たたたたたたたたた!てか、重おおおおおお!何これ!?自分の身体じゃないみたい…」

 悶絶する澪だったが雛澤は何も言わずにそのまま切りかかった。

「霊呪法第六八番【浸食壁しんしょくへき】」

 澪が霊呪法を唱える。すると、澪の真上に防御壁が出現し、雛澤の剣を防いだ。

「ふぃ~~。危ない危ない。右手の剣で相手の技を吸収して倍返し、左手の剣で相手の身体を重くすると…厄介な力ね…その神器は」

 澪が面倒臭そうにそう言った。

「私の【黄泉凶神オオマガツヒ】は誰にも負けない。この力さえあれば、全てを変えられる!」

 雛澤がそう言うと澪はそれをあっさり否定した。

「力だけじゃ何も変わらないよ?確かに力は必要だとは思う。けど、それだけじゃ駄目だよ。君たち「アザミの花」の言い分も分からないでもないよ。でもさ、君たちがやってることって、迫害してる人と変わらないよ?力で相手を貶めてるだけ」

「あなたに…あなたに何が分かるのよ!」

 雛澤は吠えた。しかし、澪は意に返さなかった。

「分かる訳ないじゃん、あなたの気持ちなんて。あたしは人の心を読める訳じゃないし。あたしは「君たちの言い分」は分かるって言ったのよ。君の事が分かるなんて一言も言ってないわ」

 澪のその言葉が雛澤の神経を逆撫でさせたのだろう。雛澤は怒り狂っていた。

「なら、貴様はここで死ねええええええええええええええええ!!!」

 雛澤は両手の剣を澪めがけて振り下ろした。しかし、澪は不敵に笑った。

「あたしは死なないよ」

 そう言って澪は自身の霊力を解放した。澪の身体から霊力が噴き出していたのだ。

 澪の霊力そのものが衝撃波となり、雛澤を吹き飛ばした。

「きゃあ!」

 雛澤は壁まで吹き飛ばされ悲鳴を上げた。

「よーし、身体は自由に動けるようになった。どうやら、その重力の技は効果範囲が限定されてるみたいだね。もう喰らわないよ。というか、喰らう前に終わらせる」

 澪はそう宣言した。

「ふざけないで!私は負けない!いえ、負けるわけにはいかない!」

 雛澤の神器が形を変える。神器には神器によって変形させられる度合いは異なるが、形を変形させるギミック機能が存在する。

 雛澤の神器が双剣から巨大な大砲に変形した。

「これで終わらせる、グラ…」

「【流星神速スタードライブ】」

 雛澤が技を発射する前に澪は動き出していた。【流星神速スタードライブ】はその名の通り流星の如く光速スピードで相手に突撃する技だ。

 澪は光のオーラを纏い、目にも止まらぬ速さで雛澤に接近し、腹部を思いっきり殴りつけた。

「がはっ!!」

 雛澤の身体は部屋の壁を突き抜けて吹き飛んだ。

「言ったでしょ?技を出す前に決めるって」

 澪はそう呟いた。澪は【天星魔法てんせいまほう】を使うことが出来る。【天星魔法】とはその名の通り星に冠する魔法であり、太古の人間が使ったといわれる「古代魔法」である。

 人間が使える代表的な呪術は「霊呪法」であるがそれ以外にも呪術は存在していたのだ。

 異能もその一つであるし、式神、古代魔法なども然りだ。しかし、霊呪法以外の呪術は天性の才能が問われ、使えるものは稀である。

 特に古代魔法は例外なく強力な術であり、それを扱える人間はごく一部と言われている。

「はぁ、はぁ、まだ…まだだあああ!!」

 雛澤は再び立ち上がった。そして、【重力縛中バインドグラビティ】で澪の動きを封じた。

「しまった!やっば!動けない!」

 澪がこの戦いで初めて焦りの声を上げた。

「これで、終わりよ!一人一殺!!死ね!【重力砕破グラビティ・アビス】!!」

 雛澤が最後の力を振り絞り、神器から極大の砲撃を放った。まともに喰らえばただでは済まない。どころか、学校が吹き飛んでしまう。

「【流星混沌旋風スターカオスストリーム】!」

 澪が右手の掌を前に向けて叫んだ。すると、澪の掌から惑星を模ったエネルギー弾が発射された。雛澤の【重力砕破グラビティ・アビス】と澪の【流星混沌旋風スターカオスストリーム】がぶつかり合う。

「ああああああああああああああああああ!!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 澪と雛澤は叫んだ。一瞬だけ、二人の力が拮抗していたが、澪の【流星混沌旋風スターカオスストリーム】が雛澤の【重力砕破グラビティ・アビス】を打ち砕き、その余波が雛澤に衝突した。

「ぐ…がはっ!」

 -そんな、この私が…負け…

 雛澤の神器は粉々に砕かれ、雛澤自身は意識を失った。



 攻め込んできた「アザミの花」の幹部四名を一宮高校生徒会が全員倒し、その内の一人、龍王天は死亡、他三人は魔道警察署に逮捕された。

 神器は西森叡が持っていた【知恵神クエビコ】しか、回収できなかった。

 あの一件から一週間経過していた。

「俺…今回何もしてない…」

 蒼はバツが悪そうにそう言った。今、蒼たちは一夜の自宅にいた。

 あの後、蒼は一夜を安全な場所に置く為、学校から遠くに避難していた。

 そしてその後、慧留たちの救援に行こうとしていた。しかし、蒼が駆けつける前に全て事が終わっていたのだ。

「ま…まぁ、勝てたんだし…」

 慧留が言うと蒼は黙り込んだ。

「まぁ、確かに今回何もして無かったのは蒼だけだったね。まぁ、そんな時もあって良いんじゃないかな?」

 一夜は蒼を茶化すようにそう言った。

「喧嘩売ってんの?」

 蒼は半切れ状態でそう言い放った。

「まぁ、取り敢えず、街は守れたけど…復旧には時間が掛かりそうね…」

 遥がそう言うと皆、微妙な表情になった。

「まぁ、速く奴らの根城を掴んで倒さないとね~。出ないとますます被害が拡大するわ」

 澪がそう言うと一夜が答えた。

「その心配はないよ。奴らの根城はもう掴んだ。さらに、魔道警察も動き出している。総力戦になるね」

「俺たちも行かねーとな!正直、魔道警察だけじゃあいつらは倒せない」

 蒼がそう言うと一夜は首を縦に振った。

「ああ、残念ながらそうだろうね。ただし、僕たちはあくまでも一般の学生だ。魔道警察が同行の許可を出すはずが無い。だから、「アザミの花」と魔道警察との戦争に乗じて戦いに参戦する必要がある」

「そんなのどうやって…」

 湊が問いかけると一夜は答えた。

「それについてはアテがある。大丈夫さ、何とかなるよ」

 一夜は不敵に笑ってそう言い放った。



「………龍が死に、叡、一山、奈々目までもがやられたか」

 天草屍はそう呟いた。

 そう、一週間前に屍は龍王天、西森叡、銀一山、雛澤奈々目を「例の天使使い」を倒すために送り込んだ。

 しかし、逆に返り討ちにされ、龍は死に、他の三人は国の魔道警察に捕まってしまった。

「予想外の事態になったわね、屍」

 後ろから女性の声が聞こえた。

 だが、屍は声の主が誰だかわかっていた。その女性の名は蛇姫薊。屍の側近であり、「アザミの花」の幹部、十二神将の統括長だ。つまり、組織のナンバー2だ。

「ああ、「天使使い」以外にも厄介な奴らがあの街にはいたということだろう。正直、侮っていたよ」

 屍は淡々とそう告げた。

「さらに、敵にこの場所が知られたわ。明日にでも魔道警察が攻め込んでくるでしょうね」

 薊は屍にそう告げた。

「まぁ、それは大した問題じゃない。もう、兵力は整っている。魔道警察も皆殺しにする予定だった。少し時期が早くなっただけさ」

 草薙剣の量産は完了し、一般兵にも神器は配られている。「アザミの花」の構成員は大体一万人ほどであり、かなり規模の大きいテロ組織だ。

 対して、魔道警察は総勢十万人程だ。数だけで言うと「アザミの花」は負けているが、「アザミの花」は構成員が全員魔族の為、一個体の単純な戦闘力は「アザミの花」が優勢なのである。

 それに、「アザミの花」掃討の為に他を手薄にしてまで、全ての魔道警察官を送り込むとは思えない。せいぜい、多くても三、四万程度だろう。

「それなら、勝機はある…どころか楽勝だ。神器の力を使える私たちならな!」

 屍はそう言い放った。

「やられた者たちの仇をようやく取れるのね」

 薊はそう呟いた。

「ああ、死んでいった者たちの無念を今ここで晴らす。龍、仇は取ってやる。哲、一山、叡、奈々目、必ず助け出す」

 屍が決意すると他にも人影が立っていた。

「残りの十二神将に召集を掛けたみたいだな、薊」

「ええ、なんせ、決戦だからね」

 屍が言うと、薊がそう答えた。

「いよいよ始まんのか。あの「天使使い」は来るのだろうか。来たら俺がぶっ倒したいとこだが…」

 赤島がそう言うと兎咬が同調した。

「ああ、仇は取る。だがな赤島、お前の不始末が原因なんだからな!」

「分かってるよ。だから、こうして、進んで倒そうっていうんじゃねーか」

 兎咬が赤島に突っかかり、赤島はそれに対しては謝罪していた。

「まぁ、私たちなら余裕だと思うよ」

 少女がそう言った。その少女は中性的な容姿をしているがどこか幼さが残った少女だった。

御登みと…お前はまた余裕ぶって…」

 御登が余裕ぶると兎咬は頭を抱えた。

「決戦は明日…気を引き締めないと駄目よ」

「ああ、湖の言う通りだ。だから御登、お前も…」

 湖が言うと兎咬も同調した。

「俺は戦うことが出来ればそれでいい」

「お前さんは相変わらずだな~、鉤爪」

 鉤爪がそう言うと赤島が呆れたように言う。

「ふっ…問題ないさ。バラバラの個性が噛み合ってこその組織だ。今のままでいい」

 屍が余裕そうにそう言った。

「そうね…私たちの力…見せてやりましょう。そして、この国は我ら「アザミの花」がいただく。そして、全ての魔族を救う」

 薊がそう言うと皆頷いた。

「さぁ、決戦だ。この戦いで勝利するのは私たち「アザミの花」だ」

 屍がそう言うと皆自分の持ち場に戻っていった。



 ここは魔道警察署。今、「アザミの花」殲滅の会議が行われていた。

『「アザミの花」は巨大人工島、十二支南島にいることが分かった!情報提供者は匿名だが、調査隊を向かわせた所、間違いなさそうだ。よって!彼らの殲滅作戦を行う!大規模な作戦になる。戦闘に参加してもらう人員は4万人!警察官の約三分の一を送ることになる!負けは許されない!』

 マイク越しで話していた。この男は阿部畜生あべちくしょう。魔道警察庁長官である。つまり、十二支連合帝国魔道警察の事実上の長である。

 十二支南島とはかつて、南鳥島と言われていた島であり、かつては岩がぽつんと立っているだけの島であったが、国内の漁業をする範囲を広めるために岩の周りを埋め立て、島にした。

 一見すると、インチキに思えるがこの島はかつて天然の島であったことは事実であり、何らかの理由で海に沈んでしまい、岩だけが残ったとされている。

 十二支連合帝国創設によって、更に島は発展し、今は一万平方キロメートルほどの人工島となっている。

 しかし、この島は十二支連合帝国の発展を象徴する貴重な場所であるため、観光目的で来るものはいるが、家を建てることは禁止されている。

 さらに、観光客が来る人数もかなり制限されており、年間数百人が来るか来ないかというほどの少なさだ。人が来るとき以外は基本的に警備もいないため、アジトを作るためには最適の場所と言える。

 ディスプレイに画像が表示された。十二支南島も建物が無いわけではない。一応、何か所か建物は観光客の為にいくつか建物が建てられている。それを利用してアジトをカモフラージュしていたのだろう。

「これほどのことをやってのける。さらに神器を強奪、利用するほどの組織…リーダーはかなりの切れ者だな」

 席に座っていた、佐藤がそう呟いた。実はこの情報を阿部に提出したのは佐藤なのである。

 佐藤は相手が名前は匿名にして欲しいという要望があったので、その指示に従ったのだ。そして、その匿名情報提供者はー

「苗木…まったく…アイツの情報収集能力には驚かされる…本当にただの高校生かよ…」

 佐藤はそう呟いた。佐藤と一夜は繋がりを持っていた。

 なぜこの二人が繋がりを持っているのかと言うと、かつて、苗木はとある事件に巻き込まれそこで佐藤と知り合い、二人で事件を解決に導いたからである。

 そこから、二人の関係が始まったのである。

『「アザミの花」は今もこの島にいると思われる。こちらも最大戦力で臨む!各自、早急に準備を済ませろ!明日の朝に出発する!以上、解散!』

 およそ、二時間に渡る会議が終わりを迎えた。しかし、佐藤は憂鬱になっていた。これからの戦いも勿論そうだが佐藤にとってはもう一つ問題があった。

「苗木に今度はどんな無茶な要求をされるか…ああ~、胃が痛ぇ…」

 佐藤はそう呟いて会議室を出たのだった。


 To Be continued


 フェアレーターノアール第6話、投稿しました。もう六話目か~。速いですね~。この十二支連合帝国篇も折り返し地点に来ました。後、もうちょっとでこの話は終わりですね。ですが、話自体はまだまだ続きます。後いくつかの長編を用意していますので。

 今回は湊、美浪、澪の活躍を書かせてもらいました。特に、この三人は見せ場後言う見せ場が無かったので、この機会に作れたのは嬉しく思います。

 いや~、しかし、この後どうなるんすかね?自分でも分かんないです。

 という訳で次回でようやく蒼君が活躍する、かも?

 では、またお会いしましょう!

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