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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第四章】百夜亡霊篇
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【第四章】百夜亡霊篇Ⅱーgod of lifeー

 蒼、慧留、湊、アルビレーヌにウルオッサは舞の地下部屋に入っていた。蒼は約三年振りにここに来たがアルビレーヌとウルオッサはここに来るのは初めてであった。

 相変わらず、不気味な雰囲気のある場所であった。空は暗く、天井からは星々の様なものが見えていた。さらに、周囲には鉱物が沢山あった。

 悪魔は鉱物を餌としている者が多い。悪魔と近い存在である魔女もそれは例外ではない。舞の地下部屋に鉱物が大量にあるのはそれが理由だろう。

 実際この場所は魔力濃度が濃い。悪魔には非常に住みやすい場所であると言えるだろう。


「それにしても、ここだけ異質な感じだね~、こんな空間を一人で造るなんて…四宮舞は相当な化け物だね」

「ええ、三年前の戦いに彼女が前戦に出てたらと思うと…ゾッとするわ」


 ウルオッサとアルビレーヌはそう言った。実際、これだけの巨大な空間を造り出すには単純に魔力だけでなく、知識や情報処理能力が必要である。魔力の大きさにだけ頼らない舞の魔女としての技量の表れだ。


「さてと…なんか手掛かりがありそうなもん探すか」


 蒼がそう言うと皆は手分けして辺りを探った。

 しかし、手掛かりになるものは見つからなかった。


「なんか不気味な場所だね…」

「怖いのか?慧留?」

「別に怖くないよ!」

「ちょっとぉ~、イチャつかないでよ」

「「イチャついてない!!」」


 ウルオッサが茶化すと蒼と慧留が反論した。


「余裕ね」

「別に余裕こいてる訳じゃないと思うけど…」


 アルビレーヌが呆れていると湊が困ったような顔をした。

 辺りは鉱物があるばかりで手掛かりとなる物は無かった。


「ここにも何もないんじゃいよいよ手掛かりがないな…」

「一夜さんが別で調べてくれてるだろうけど…それも必ず見つけられるかどうか分からないしね…」


 蒼と湊は手詰まりになっていた。それに手詰まりになっているのは二人だけではなかった。


「う~ん、こっちもないよ」

「こっちもダメね」

「僕も~」


 残る三人も手掛かりが見つけられないようであった。

 ここは舞が造り出した空間。ここならもしかしたら手掛かりがあるのではないかと考えたが…


「そう都合よくいかないか…」


 蒼が溜め息を吐いた。

 その後も五人は引き続き、手分けしてこの空間を探索した。


「あれは?」


 湊がそう呟いた。湊の目線の先に篝火かがりびの様なものが見えた。すると、その篝火が湊に襲い掛かって来た。

 湊は篝火を躱した。すると篝火が爆発し、湊を吹き飛ばした。


「うわあ!!」


 湊は何とか無事であった。爆発に気付いた蒼たちは湊の元へ集まった。


「湊…!何があった!?」

「篝火が突然現れて、襲い掛かって来たんだ…」

「何だと…」


 篝火がまた発生し、今度は蒼たちにも襲い掛かって来た。


「【黒閃光オスキュラスレーゼル】」


 ウルオッサが黒いエネルギー弾を放った。悪魔が使う『魔歌マーニア』の一種、【黒閃光オスキュラスレーゼル】だ。

 篝火は吹き飛んだ。さらに、アルビレーヌが鎌から水を発生させた。


「はぁ!!」


 すると、小さな小人の様なものが姿を現した。身体はピンク色であり小さな少女のような姿をしていた。


「何だ?あれは…」


 湊がそう呟いた。異質な存在であった。ピンク色の小人は莫大な霊力を宿していた。


「ピンクの体色…この霊力…まさか…」


 アルビレーヌがそう言うとピンク色の小人は電気を発生させた。さらに、周囲の鉱物から鉄を生成し、蒼たちにぶつけた。


「【世界逆流レイウェルティ】」


 慧留は自身の『悪魔ソロモン』である【拒絶女王ルキフグス】を解放していた。紫色の錫杖の形をした『悪魔ソロモン』である。

 【世界逆流レイウェルティ】によって、ピンクの小人が発生させた電気は跡形もなく消え、鉄は元の鉱物の姿へと「巻き戻った」。

 慧留の【拒絶女王ルキフグス】の能力は「時間の巻き戻し」である。電気は発生する前の時間へ、鉄は鉱物だった頃の時間まで巻き戻したのだ。


「そう言えば、月影さんは時間の巻き戻しを使えるんだったね」


 湊は慧留の力を目の当たりにすることがあまり無かった為、忘れていたようだ。

 最も、蒼は「USW」の時、慧留と戦っている為、慧留の力がどれだけ恐ろしいか知っている。

 あの時も蒼は慧留に一対一で勝ったわけではない。蒼や屍を含め、五人がかりでやっと倒したのだ。正直、二度と慧留とは戦いたくないと蒼は感じていた。


「舞い踊れ【人魚妃姫レヴィ・ア・タン】」


 アルビレーヌは【悪魔解放ディアブル・アーテル】を発動した。下半身は魚の尾のような形状をしており、茶色の髪も少し紫がかっていた。上半身のワンピースはそのまま残っており、腕には真珠で出来た数珠のようなものがついていた。


「【水泡死鎌スクマーテルア・ゴルドレーザー】」


 アルビレーヌは水の鎌を造り出し、そのまま、無防備のピンクの小人に一撃を入れた。そのまま水が噴射し、ピンクの小人を岩に叩きつけた。


「やったか!?」

「止めて!その台詞!!フラグだから!!」


 蒼がそう言うとウルオッサがたまらず叫んだ。そう、こういう時に「やったか!?」などと言ったセリフを言うと相手はほぼ確実に生きているものだ。生存フラグというやつだ。

 だが、ピンクの小人は現れなかった。そこにあったのは人型の紙切れであった。


「何?これ…?」


 慧留がそう言って紙を手に取った。


「それは式神の札だね。そうか、さっきの小人は式神だったのか…」


 湊がそう言った。式神とはその名の通り、紙を介して霊獣などを召還するものである。

 紙を介して使用する為、耐久性が無いのが欠点であり、使用者も非常に少ないが、結界を作ったり、霊獣だけでなく武器を召還出来たり、応用性が高いのが特徴である。

 湊も式神を使って戦う。その為、この手の事は湊が一番詳しいのだ。


「だとしたら妙ね…さっきのは「USW」の四大神、生命の神「カネ」の筈だけど…」

「僕もそう思ったよ、物質に命を与えるあの力…間違いなく「カネ」の力だよ」

「「カネ」!?あれが…」


 アルビレーヌがそう言うとウルオッサも同じ事を考えていたようだ。


「ていうか、蒼、「カネ」が何か知ってるの?」

「ああ、聞いた事はある。「USW」の四大神の一体で生命を司る守り神だ。だが、守り神の式神なんて存在するのか?」

「しないよ。聞いた事もない。けど、考えられる事ならあるよ。恐らく、空の式神に守り神の霊力を転写して実体化させたんだよ。それなら、辻褄も合うと思うよ」


 蒼の疑問を湊は答えた。

 湊の予想で恐らく正しいだろう。式神に守り神の力を転写し、実体化させた。そう考えれば、あの式神が守り神であったことに説明がつく。


「取り敢えず、この式神は持って帰りましょう。何か手掛かりになるかもしれないわ」

「そうだな…これ以上調べても何も出てこなそうだし、時間も時間だ。戻るか」


 そう言って蒼たちはこの地下の部屋を後にした。








「さてと…何でこんな事になってるんだよ…」


 屍はカフェでそう呟いた。


「久しぶりに会ったのにそりゃないっすよ、屍さん…」


 赤島英明あかじまひであきはそう言った。赤色の髪と銀色の瞳が特徴の青年である。彼は「十二支連合帝国」の魔道警察官である。


「取り敢えず話を進めましょう…」


 兎咬審矢とかみしんやがそう言った。黒色の髪にブラウンの瞳をしており、ぼさぼさ頭をした青年だ。彼も赤島と同様、魔道警察官である。彼らが何故ここに一緒にいるのかというと…


「四宮舞について詳しく聞きたいと言ったからここに来たんでしょう?」


 蛇姫薊へびひめあざみがそう言った。紫のセミロングと蛇の様な瞳が特徴の少女である。彼女は十二支大学という全寮制の大学に通っていた。薊は大学に入るまでは蒼たちが住んでいる苗木日和なえきびよりに住んでいたが大学が全寮制という事で大学の寮に移ったのだ。

 屍は薊に舞の一件の事を話し、赤島と兎咬に連絡をつけていたのだ。


「私もいるんですけど~」


 御登狂みとくるがそう言った。黒髪ツインテールの小柄な少女である。彼女は薊と同じ大学に通っており、薊と一緒の寮に住んでいる。薊が屍の元に行くと言うのでついて来たのだ。


「で?英明、審矢、何か分からねか?」

「ああ、四宮舞については最近知った事ですしね~。こっちも情報少なすぎで困ってるんすよ」


 屍が尋ねると赤島が困った感じで答えた。赤島たちも舞の事は最近まで知らなかったらしく、捜査が難航しているようであった。


「魔道警察も手詰まりになってるのか…まぁ、当然と言えば当然だが…」

「てか、屍ちゃんは何で蒼ちゃんたちと同じ大学に行っちゃったんだよ!私たちと同じ大学に行こうと思うよね!?普通…」


 屍が顎に手を置くとくるがそう言った。屍、薊、くるはかつて同じ『アザミの花』にいた。付き合い自体は蒼たちより遥かに長いのだ。それにも拘らず、屍は薊とくると同じ大学に行かず、蒼たちと同じ大学に進学した。


「前にも言ったろ…俺は家が近い方がいいんだよ…それにこっちの暮らしに慣れちまって他のとこに住むのも抵抗あったしな…」


 屍がそう言った。薊とくるが通っている大学は屍が住んでいる苗木日和からかなり離れた場所にあり、屍はあまり通いたくなかったようだ。


「それだけの理由じゃないでしょ?」

「まぁ、そうだな。俺は魔道警察官になる気は無いからな。十二支大学に行ってもあんま意味無いんだよ」


 薊が尋ねると屍が淡々と答えた。


「魔道警察官にならないんですか!?」

「昔はあんなに警察官志望だったのに!?」


 赤島と兎咬は屍の答えに驚いた。屍は最初は一宮高校に入る事も嫌がっていた。速くに魔道警察官になろうとしていたのだ。それなのに今、屍は魔道警察官になる気は無いと言っている。


「俺は…世界を見てみたいんだ。この世界の事を知りたいんだよ。冒険家になりたいんだ」


 屍はそう言った。屍は日常の暮らしをしていくうちに自分のやりたい事を見つけられたようだ。


「そうか、なら止める理由はないな」

「ああ、屍さんがそう決めたなら」


 赤島と兎咬がそう言った。


「そうか…屍はもう、やりたい事を決めてるのね」


 薊が少し寂しそうにそう言った。今まで薊は屍と共にいた。それが大学に入って初めて別々の暮らしをした。そして、屍は自分の目標に進んでいっていた。それを少し寂しく薊は思っていたのだ。


「っと、話を戻さなくてはな。屍さん、四宮舞についてはこちらでも捜索を続けます。何かあればすぐに連絡します」

「ああ、頼んだ、審矢、英明も」

「任せな!」


 兎咬が話を仕切り直すと屍は返事を返した。赤島も返事を返した。


「では、俺たちは捜査の続きがあるのでこれで、屍さん、ご武運を」

「じゃあな、お前ら」


 兎咬と赤島はそのまま帰って行った。


「さてと…どうしたもんかな…」

「一味嫌後攻にある四宮舞の地下空間は?」


 屍が悩んでいるとくるがそう言ってきた。


「時神たちが既に調べたそうだ」


 屍がそう言ってそのまま蒼たちから聞いた話を説明を始めた。


「式神に…ね…で、その式神が四大神の一体「カネ」を模した式神…それって、他にも式神がいるかもしれないって事よね」

「ああ、その可能性は高いかもしれないな。四大神の一体って事は他に後最低三体はいるって事だな」


 薊がそう言うと屍がそう答えた。しかし、分からない。何故四大神を模した式神が舞の地下空間にあったのか…それが分からなかった。何かをしようとしているのだろうか?

 舞…いや、アザゼルの目的がさっぱり分からなかった。一体何をしようというのか…

 四大神を模造した式神…そんな話は聞いた事が無い。というより、四大神は本来、「USW」のとある祠で祭られている。その為、式神化する事は出来ないと言われていた。しかし、舞の中に四大神があるとなればそれは可能かもしれない。だが、方法が分からない。


「さてと…俺もそろそろ行くわ。時間取らせて悪かったな。じゃあな」


 ごちゃごちゃ考えても仕方ない。そう判断した屍は早々に店から出る準備を始めた。

 そして、屍はそう言って薊とくるの分の金を払ってその場を後にした。







 屍はそれから日比野大学にいた。特に調べる当てもなく、大学に何となく顔を出していた。

 屍はキャンパスを適当にフラフラしていた。そうしていると看板をじっと見ていた少女に目に止まった。何故ならその少女は知った少女であったからだ。


「音峰」

「屍!」


 そう、そこにいたのは音峰遥おとみねはるかその人だったのだ。かつて、屍と同じ高校に通っていた。そして、彼女は生徒会副会長だったのだ。桃色のツインテールと瞳が特徴の少女だ。


「何であんたがこんなとこに?」

「ええ、私で独自に四宮先生の事を調べてて、数日前に四宮先生がこの大学にいたという情報があったのよ」

「情報のソースは?」

「苗木君」

「苗木が?」

「苗木君から昨日いきなり電話がかかってきてね?それで調べて欲しいって言われたのよ」

「ふ~ん、そうか、俺もちょうど暇してたし手伝うぜ」

「助かるわ」


 二人はそのまま大学内を調べ始めた。


「それにしても、この大学バカでかいわね」

「マンモス校だからな」

「大学は名の知れたとこならそれなりにいるけど、ここまでのはそうは無いわね」

「ここは全国でも有数の名門大学って扱いらしいからな」

「そうね、日比野大学って言ったら行ける人はそうはいないものね」

「一宮大学もそれなりのとこらしいじゃねーか」

「まぁ、高校から言ってる人はエスカレーターで行けるのよね」


 屍と遥は話しながら辺りを調べていた。


「ねぇ、何で日比野大学に行こうと思ったの?あなた、何かやりたいことでもあったの?」

「別に…特に理由はねぇよ。ただ、受験勉強ってのをしたかったんだよ。で、蒼や慧留が日比野大学に興味があるって言ってたから俺もそこを受けようと思っただけだ」

「へぇ~」

「そう言うお前は何でエスカレーターで大学入ったんだよ。もっといいとこ狙えたんじゃねーのか?」

「私は特にやりたいことがある訳じゃないし、そのままでも問題ないかなと思っただけよ」

「意外だな、お前真面目だからそういうのも計画的に考えてる奴かと思った」

「私は規律とかに重きを置いてるだけよ。それに、自分の将来やりたい事を見つけるのは誰でもできる事じゃないのよ」

「そんなもんかね」


 屍は遥の話をぼんやりと聞いていた。屍はやりたいことが割と明確になっているので、やりたい事が見つからない者の事はあまり考えた事が無かった。

 屍は意外に思った。遥はしっかりしているイメージがあったので、先の事も計画的に考えているものと思っていたのだ。

 なのに、以外にも遥は将来やりたい事は特に考えてないようであった。


「俺はやりたい事はそれなりに見つけてる。だから、お前の感覚は分からねぇ」

「そう、普通の生活を送ってそこでやりたいことを見つけられた。それなら、あなたは日常を手に入れた買いがあったという事ね」


 遥は笑ながらそう言った。

 屍はかつて戦う事でしか生きる意味を見いだせなかった。いや、そうするしかなかったのだ。

 しかし、蒼たちと出会ってそれが変わった。普通の暮らしを得て、そこから屍はやりたい事や興味のある事を見つけられた。

 それだけでも、屍が平穏を手に入れた意味がある。屍をここまで導いたのは蒼たちだけではない。舞も含まれている。

 だからこそ屍は舞を助けなければならないと思った。


「自販機があるわね。喉乾いたから買ってくるわ。屍も何かいる?奢るけど?」

「いや、いい。自分で買う」


 そう言って遥が先に自販機に手を出した。その次に屍が自販機で飲み物を買った。

 因みに遥が買ったのはコーヒーであり、屍は緑茶であった。


「コーヒー飲まないの?」

「俺はコーヒー飲めねぇんだよ」

「おこちゃまね」

「うるせぇ!!」


 遥が屍を子ども扱いすると屍はキレた。子ども扱いされて気分がいい学生はいないだろう。


「手掛かりになりそうなものは無いわね」

「そうだな」


 二人は近くにあったベンチに座りながらそう言った。雑談をしながら調べていた為、当然と言えば当然かもしれないが…


「今度は真面目に捜査するか。後、聞き込みもしよう」

「そうね、何か知ってる人がいるかもしれないし」


 屍と遥はベンチから立ち上がり、そのまま二手に分かれて、捜索を続けた。










 一夜はずっとパソコンを弄りっぱなしであった。四宮舞に関する情報を徹底的に調べていた。日比野大学に舞がいるという情報をこのパソコンを介して入手したのでそこの捜索は遥に任せているが、他の手掛かりがないか一夜は探っていた。

 昨日、蒼たちが一宮高校を調べて、式神に襲われたという情報は本人たちから入手している。式神については湊が調べているという。

 まぁ、式神に関しては一夜より湊に調べさせるほうがずっといい。一夜はあれからずっと自分の家から出ていなかった。


「一夜さん、コーヒーここに置いときますね」

「ありがとう、美浪君。助かるよ」


 美浪が一夜の机にコーヒーを置いた。美浪が作ったものだ。美浪は一夜の昨日から一夜の家に来ており、彼のサポートをしていた。


「何か見つかりましたか?」

「う~ん、分かった事と言えば、四宮先生が百年前に「USW」にいたって事とアザゼルとの戦いに巻き込まれたという事だね。いや、これだけでもかなり進展していると言えるのだが…決定打になる物がない。これだけでは情報量が少ない。推測の域を出ないね」


 一夜はそう言った。そう、舞は百年前「USW」にいた。その時にアザゼルとの戦いに巻き込まれてしまったのだ。


「恐らく、この時に四大神、アザゼル、四宮先生の間に何かあった…と考えるのが妥当なところだね。だが、さっきも言った通り、推測の域を出ない。それに、何故、四大神を模した式神が一宮高校の四宮先生の地下空間にあったのかも謎のままだしね」

「まだまだ分からない事だらけですね」


 先はまだ長い…と言った所だろう。とはいえ、ここで美浪に出来る事は殆どない。だからと言って手掛かりも無いのに闇雲に捜索したところで時間の無駄である。

 出来る事が殆どないというのも困った話である。


「ところで…美浪君は何故僕の手伝いを?蒼たちのところに行くものと思っていたが…」

「一夜さんをボッチにするのもかわいそうと思いまして」

「別にボッチじゃないよ!!気にしてないよ!!要らないよそんな同情!?」

「またまたぁ、寂しい癖に…私が来てくれてちょっと嬉しかったでしょう?」

「何それ恩着せがましいよそう言うのいいからそもそも僕はボッチじゃない友達を作らないだけだ何かと友達関係を作るのは面倒くさいからねというか僕の勝手だろうそれに僕は魔道警察や色々なところで関係を持ってるから別に気にしてないしそう言う関係の方が便利だから君にそう言うのをとやかく言われる筋合いはない」

「うわぁ、何かボッチの言い訳臭いんですけど…」

「ねぇ!?僕の話聞いてた!?」


 一夜は堪らず叫んだ。とはいえ、一夜がやたら早口で且つ饒舌に自身の事を話し出していたので、ボッチである事の言い訳に聞こえなくもなかった。

 だいたい、世間は冷たいものである。ボッチは社会から疎まれがちである。ボッチという理由だけで周囲から憐みの目を向けられる…というか社会不適合者扱いされる事すらもしばしばある。変に同情される。「同情するなら自分からボッチに話しかけろ屑が!」と言いたいものである。


「聞いてましたよ。苗木さんが自分がボッチである事を多少気にしてたという事は」

「だから気にしていないと言っているだろ!!……いや、もういい面倒だ。これ以上不毛な争いはお互いの為にならない。というか君、僕に対してえらく辛辣だね…」

「そんな事ないですよ。親しみがあるからこそこういう会話ができるんですよ」

「………そう言うモノなのかい?」


 一夜は納得できないと言った顔をした。一夜は蒼と出会うまではロクに同年代の者と話したことが無い為、よく分からなかった。


「ん?これは…」


 一夜は東京全域のマップを表示した。すると、いくつかの場所に妙な霊波反応があった。そして、その内の一つが一宮高校、もう一つが日比野大学にあった。


「どうしたんですか?苗木さん?」

「……美浪君。一宮大学へ行こう」

「え?いきなりどうしたんですか?」

「いいから、すぐに準備を始めてくれ。置いて行くよ」


 一夜はパソコンを持って服を着替え始めた。


「え?ちょっ…待ってくださいよ」


 美浪は一人で準備を始めた。







 蒼と慧留は大学を休んでいた。湊の家にいたのだ。勿論そこには、湊本人とアルビレーヌとウルオッサもいた。

 湊は個室で式神を解析していた。蒼たちは隣の部屋で待っていた。


「大学や住む必要なかったんじゃないの?君ら一応学生だろう?」

「こんな状況じゃ呑気に学校に行ってられないよ」

「ああ、まったくだ」


 ウルオッサが気だるげに慧留と蒼のサボりを指摘すると慧留と蒼は反論した。


「まぁ、この状況だしね…仕方ないわね」


 アルビレーヌが落ち着いた感じでそう言った。そんなアルビレーヌを蒼はぼーっと見ていた。


「?何?蒼君?私の美しさに見惚れた?」

「いや、そんなんじゃねーよ。何つーか、「アンタレス」の奴らは正確に癖のある奴が多いのにお前は普通だなって思ってな」

「ああ、そういう事…ってそれ結構失礼じゃない?」

「本当の事だ」

「いや、それマジで失礼だからね。これだからガキは嫌なんだよ」


 アルビレーヌと蒼が話しているとウルオッサが文句を言った。


「蒼は相変わらず誰に対しても遠慮がないね」

「いいだろ?別に…」

「良くないから言ってるんだよ?あくまでもこの人たちは私たちより年上なんだから」

「お前も遠慮がない気がするんだが?慧留?」

「ああ、エルはいいのよ」

「うん、王女は王女だからね」

「なんじゃそりゃ…」


 蒼は慧留とアルビレーヌ、ウルオッサの言い分が納得いかなかった。どうも「USW」は慧留の事を特別視しているようだ。

 まぁ、一時的にとは言え慧留は「アンタレス」の事実上のリーダーとなった時期があった。当然と言えば当然かもしれないが…やはり蒼は納得いかなかった。


「一つ気になったんだけど…」

「何だ?」

「エルと蒼君ってその…付き合ったりしてるの?」

「いや、別にそんな関係じゃないぞ?」

「うん、どうしてそういう風に見えるの?」

「ほえ?」


 アルビレーヌが呆然とした顔をした。蒼と慧留は「何を言ってるんだこいつは?」といった目でアルビレーヌを見ていた。


「これが恋愛脳って奴なのか?」

「う~ん、どうなんだろ?私にも分からないよ」


 蒼と慧留は凄く困った顔をしていた。アルビレーヌは非常に呆れた顔をしていた。一方、ウルオッサは非常に眠そうにしていた。


「………この子たちって結構鈍感なのね…」

「まぁ、そういう事に興味なさそうだよね~、二人とも。ふぁ~~」


 ウルオッサは眠たげにしていた。


「アルビレーヌは彼氏とか好きな人はいるの?」

「へ??」


 慧留がアルビレーヌに質問するとアルビレーヌは素っ頓狂な声を上げた。


「確かに、女王や時神君に聞いときながら自分の事は教えないってのは不平等だよね~」

「ウルオッサ…あなたね…」


 アルビレーヌが忌々し気にウルオッサを見つめた。


「で?どうなんだよ?アルビレーヌ?」

「……………いない……というか、いた事ない……です………」


 蒼が尋ねると泣きそうな顔でそう言った。慧留と蒼はとても切ない気持ちになった。


「というか、アルビレーヌの年齢で彼氏一回も出来た事ないってヤバいよね~もしかして、一生独身かもね!!ははははは~!!」


 ウルオッサがアルビレーヌをバカにすると蒼と慧留は血相を変えてアルビレーヌを見た。


「ウルオッサ…生きて帰れると思うな…」

「え??いや、冗談だよ??な~にを本気に……」


 ウルオッサは冷や汗をかいていた。というかめちゃくちゃ焦っていた。それもそうだろう、今のアルビレーヌは誰がどう見ても鬼神の如き形相であった。

 蒼と慧留もめちゃくちゃビビっていた。この二人がここまでビビるのもかなり珍しいだろう。

 アルビレーヌはそのまま拳骨でウルオッサをぶん殴った。


「あべしっ!?」


 ウルオッサはそのまま気絶した。


「えっと…なんかゴメン」


 慧留が震えながらそう言った。蒼はアルビレーヌに視線を合わせなかった。今すぐにでもここから抜け出したかった。


「お~い、解析は終わったよ~。ってあれ?どういう状況?これ??」


 湊が扉から現れたが、湊は今の状況が読めていなかった。

 アルビレーヌと一切視線を合わせようとしない蒼、見てはならないものを見てしまった…そんな顔をしている慧留、何故かめちゃくちゃ怒ってるアルビレーヌ、気絶しているウルオッサと……全く状況が読めなかったのだ。


「いや…何でもないんだ…マジで……てか頼むからこの事については触れるなマジで………察してくれ」

「ああ、うん…分かった…」


 蒼が話題を変えて欲しそうに言うと湊は何となく察したようですぐに返事をした。








 To Be continued

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