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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【外伝】ローマ統一篇
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【外伝】ローマ統一篇後編ー王の瞳ー

 ルミナスとジェジェが目を合わせていた。

 ルミナスは反乱軍の主犯格であるジェジェ・ジェルルティーガのアジトに単独で侵入していた。

 ジェジェがエーテルグラジオンという魔法を使用しよとしたが、ルミナスの【無絶結界アピロ・ディアウス】によって完全にジェジェの企みを阻止された。


「私は負けるわけにはいかんのだ!」


 ジェジェはルミナスに刃を向けた。

 ジェジェの【天使エンゲリアス】は日本刀であり、小太刀の二刀流であった。

 ルミナスは自身の【天使エンゲリアス】を普通の剣の長さに調節し、ジェジェに迎え撃った。

 ルミナスの【天使エンゲリアス】は長さを調節をすることが出来、ルミナスの剣は通常の長さになっていた。


「ふ!」


 ルミナスは凄まじい速度で剣をふっていた。


-な!?速い!!


 ジェジェはルミナスの剣戟に対応しきれていなかった。

 ジェジェは霊力を駆使した戦い方の方が得意であるのだが、今は【絶縁結界アピロ・ディアウス】によって霊力の使用が出来ない状態である。

 それでもジェジェの体術はかなりのものである。反乱軍のリーダー格の者が体術でも弱いわけがない。

 だが、ルミナスが単純にそれを遥かに上回っていたのだ。

 ルミナスは顔色一つ変えずに剣を振るっていた。ジェジェは防ぐだけで精一杯だった。

 これだけ高速に動いているのにルミナスは息一つ乱していなかった。どころか剣の速度がだんだん速くなっていっていた。


「もう少し速くすれば…」


 ルミナスはそう言ってさらに剣戟の速度を速めた。すると、ジェジェの右肩にルミナスの一撃が入った。


「ぐ!?」


 ジェジェはルミナスに攻撃を当てようとするがルミナスはジェジェの攻撃を悉く躱し、全く当たらなかった。

 ジェジェが大振りをした瞬間、ルミナスは後ろに回り込み、ジェジェに再び一撃を加えた。


「な!?」


 ジェジェはそのまま倒れた。しかし、態勢を立て直し、ルミナスから距離を取った。


「三百年以上生きる俺がよもや貴様の様な若造にここまでやられるとはな…」


 ジェジェは吐き捨てるようにそう言った。ジェジェは素手で百の軍人を屈服させるほどの膂力を持っている。

 格闘戦術はかなりのものだ。しかし、ルミナスはそれの遥か上にいっていた。


「力あるないは年齢では測れないわ。私はこの世で最も強い。この程度の事は出来て当然なのよ」


 ルミナスは当たり前のようにそう言い放った。

 ルミナスにとって今回の戦いも前座でしかない。出来て当然のようにしか考えていない。

 ルミナスは問答無用で全てを掴む暴力的なまでの力があった。力の差は歴然であった。


「ふざ…けるなああ!!」


 ジェジェは二刀の短剣をルミナスに振るった。しかし、ルミナスはすれ違い様にジェジェの両肩を切り裂いた。


「遅いわ…」


 ルミナスはすれ違い様にジェジェをまたしても切り伏せた。ジェジェはそのまま倒れた。


-な…こんな事が…


 ジェジェは絶望していた。ルミナスの想像以上の力に。【無絶結界アピロ・ディアウス】を発動させたというだけでも信じられない事なのにさらに剣術でもルミナスは圧倒的な力を持っていた。

 全てにおいて完璧、ルミナスは全てにおいてジェジェを圧倒していた。


「これで終わりかしらね」


 ルミナスはジェジェを見下ろしながらそう言った。最早、勝負はついていた。誰が見ても結果は明らかであった。

 しかし、それでもジェジェは立ち上がろうとした。

 だが、立ち上がろうとすると傷口から血が噴き出し、身体の力が奪われていった。


「まだ…だ…。まだ、俺は……」


 ジェジェはルミナスを睨みつけていた。






 ジェジェはかつて、天使の中でも最強を誇った。

 今より三百年前、ジェジェはたった一人で戦い続けていた。何故戦うかなど理由はなく、ただ生きる為に当時はジェジェは戦っていた。

 やがて、ジェジェは天使の中で頂点に立ち、天使の王となった。

 しかし、その百年後、ローマカイザーにより、ジェジェは失墜した。ジェジェは王の地位をローマカイザーの当時のリーダーであったヤハヴェ・アークキエル・ローマカイザーにより完全に奪われた。


「この私が…貴様の様な若造に…」


 当時のヤハヴェはジェジェよりかなり若かった。当時の彼は三十歳ほどであった。

 彼は十歳の頃に兵を率い、そこから急成長していき、ジェジェを上回る力をつけていた。

 そう、一言でいうならば、ヤハヴェは天才であった。


「若さで力量は測れんよ。王になった事で強くあり続ける事を忘れてしまった貴様はもう、王ではいられないな」


 ヤハヴェはそう吐き捨てた。

 そう、ジェジェは王になった事で独裁的な政治を行い、弱き者を虐げる事しかしなくなってしまっていた。

 強者と戦う事が長い間無かった為、ジェジェはいきなり現れたヤハヴェにより、今、地に這いつくばっている。

 ジェジェは途方もない屈辱感と敗北感を味わった。自身より遥かに若く、幼いヤハヴェに圧倒されてしまった事に。

 しかし、ヤハヴェはジェジェにあまり興味がない様子であった。何と言ったらいいのだろうか…ヤハヴェは王になる事よりもさらにその先を見据えている様な気がしたのだ。

 ジェジェはヤハヴェの眼を見て何となく察した。彼に自分の事など眼中にないのだと。ジェジェは歯を食い縛った。

 ヤハヴェがジェジェの事に対して眼中にないと察した瞬間、更に屈辱的な気持ちになったからだ。


「貴様は…何が目的だ…何を成そうとしている…」


 ジェジェはヤハヴェに問いかけた。ジェジェはヤハヴェが見据えていたその先が何となく気になったのだ。

 そう、単純な疑問だ。ジェジェは敗北感と屈辱を抑え、問いかけた。


「全てを一つにする。その目的の為に私は動いている。そう、神に選ばれた…この私がな」


 ヤハヴェはそう言い放った。ジェジェは眼を見開いた。


-訳が分からない。


 ジェジェはそう心の中で思っていた。

 今の一言で彼の言葉の意味が分かるものはどれくらいいるのだろうか…?

 恐らく彼の意図を本当の意味で理解できるものなどいないだろう。

 そもそも、神に選ばれたからなんだというのだ。

 この世界では神はそこまで崇高な存在という訳ではない。

 魔族や空想上とされていた生き物が当たり前のように跋扈するこの世界では神など珍しくもなんともない。

 確かに神は広義的には『三大皇族』の一角を担ってはいるが神の大半は力の弱い者だ。

 人間の神に対する信仰心が現在ではかなり薄まっている。それは当然の事と言える。

 今や神や魔族は目に見えるぞんざいになっているのだから。

 神は人間の強い信仰心が力の動力源としている者が殆どであり、強大な力を持つ神など極一部である。

 その神に選ばれたからと言って何がそんなに凄いのかジェジェには分からなかった。

 しかし、ヤハヴェにとっては神に選ばれている事に対して誇りを持っているようだ。

 実際にヤハヴェは強大な力を持っている。

 さらに、彼は異質な雰囲気と力があるのもまた確かであった。長い黒色の髪に黒装束の衣服。

 これだけでも彼の異質さは際立っていた。しかし、ジェジェにとって最も目を引いたのは瞳であった。

 黒い瞳の中心部に翼の様な紋章が両目に浮かび上がっていた。この瞳から異質な力をジェジェは感じ取っていた。

 ヤハヴェが持つその眼は『オプタルテオス』と呼ばれる瞳である。王の眼であり、この眼を持つ者はこの時代ではヤハヴェだけである。この眼は持つ者によって使用する能力が違う。

 ヤハヴェの場合は相手の未来を視る事が出来る「未来予知」を行使する事が出来た。ヤハヴェがジェジェを討つ事が出来たのもこの眼の力によるものが大きい。


「貴様の栄光はここで終わりだ。我が悲願の礎となるがいい」


 ヤハヴェがそう言うとジェジェは霧を発生させ、そのまま逃げていった。今のままではヤハヴェの配下にされてしまう事になるとジェジェは考えたからだ。再び、自身が覇権を取り戻す為にジェジェはヤハヴェから逃げたのだ。


「ふ…面白い…貴様がどこまで足掻けるか…楽しみだ。だが、遅かれ早かれ、我らが貴様を討つ事になる。それまで首を洗って待っているがいい」


 ヤハヴェはそう呟いた。ヤハヴェはいずれはジェジェが自身の軍門に下る事を予言していた。



 その後、ヤハヴェは「神聖ローマ大連邦帝国」を建国した。

 しかし、ヤハヴェは数年後、病に伏し、そのまま病死してしまった。ヤハヴェの子どもであった、フェリスト・アークキエル・ローマカイザーが新たな皇帝として君臨した。

 しかし、その後も国を存続させる事は出来ていたものの、ジェジェとの因縁は決着がつく事は無く、「神聖ローマ」で内乱が多いのはこの頃からであり、ジェジェが内乱の原因であったといえる。

 そしてその後、「第三次世界大戦」が勃発した。

 その戦争がなぜ起こったのか…ここで語るにはまだ早い。いずれ…何れ分かる時が来る。









「さてと…久しぶりね…ジェリー…」


 エクレアは今、『天使城セラフィムヴァール』から少し離れた平原にいた。

 『オリヴィア』と『エギル』の部隊が『天使城セラフィムヴァール』に突入しようとしていたところ、エクレアが『エギル』を、『オリヴィア』がフランが相手をしていた。


「ああ、久しぶりだな…ローマカイザーに魂を売るとは…」

「違うわ…私は魂を売った訳じゃないわ。私は…私自身の正義の為に動いているのよ」

「正義…か…貴様とは同志だと思っていたが…」

「ええ…私もよ……けど、ここは通すわけにはいかないわ」

「貴様も元は≪聖選出アウスヴェーレン≫の被害者だろう!?諸悪の根源であるローマカイザーに何故味方する!?」


 ジェリーはエクレアに問いかけた。

 そう、エクレアはかつてローマカイザーの≪聖選出アウスヴェレン≫の被害者である。

 ≪聖選出アウスヴェレン≫は「第三次世界大戦」の終戦後に完全に撤廃されていた。

 この「第三次世界大戦」の混乱に乗じてローマカイザーから逃げた者たちも存在した。

 それが『ギシン』のリーダーであるノヴェルト、『エギル』のリーダーであるジェリー、そして、エクレアだ。その他、多くの者たちが逃げ出していた。

 その逃げ出した者たちが反乱軍となり、「神聖ローマ」の長きにわたる内乱が続く結果となったのだ。


「今の皇帝に可能性を感じたからよ」

「ローマカイザーの皇帝などただの独裁者だ!だからこそ、我々がこの世界を…」

「それを言うならジェジェも同じじゃない?」

「ああ、そうかもな…だがローマカイザーに服従するくらいなら俺はジェジェにつく!」

「そう…なら、私たちは戦わなければならないようね。【呪縛紫鎖ガブリエル】!」


 エクレアの周囲から紫色の鎖が無数に発生し、ジェリーに向かっていった。ジェリーはその鎖を全て躱した。

 紫の鎖は全てエクレアの【天使エンゲリアス】だ。


「【魔天使タブリス】」


 ジェリーも【天使エンゲリアス】を解放した。ジェリーの【天使エンゲリアス】は紙の形をしており、無数の髪がエクレアに襲い掛かる。

 しかし、エクレアは鎖で全て紙を叩き落とした。

 さらに鎖は速度を増し、ジェリーに再び襲い掛かった。

 ジェリーは攻撃を躱しながら自身の【天使エンゲリアス】で攻撃を続けた。見たところ二人は互角の戦いをしていた。

 お互い、かつての仲間同士である。お互いの力はある程度知っている。故にお互いに手詰まりになっているのだ。


「【聖霊弓ハイリッヒ・ヴェリオス】」


 エクレアは『聖唱ヴィーゲンリート』を使用した。

 『聖唱ヴィーゲンリート』とは天使が扱う呪術である。人間が扱う『霊呪法』の様なものである。

 因みに悪魔は『魔歌マーニア』を使用する。【黒閃光オスキュラス・レーゼル】などがそうだ。

 【聖霊弓ハイリッヒ・ヴェリオス】は天使が扱う【聖唱ヴィーゲンリート】の中でも最も基本的な技である。

 その名の通り光の矢を発射する呪術だ。

 無数の光の矢がジェリーを襲う。

 【聖霊弓ハイリッヒ・ヴェリオス】がジェリーに全て直撃をする。


「まだだぁ!!」


 ジェリーは【天使エンゲリアス】で「矢」を防ぎ、無数の紙が襲い掛かる。


「【呪縛紫鎖ガブリエル】」


 鎖が襲い掛かり、ジェリーの身体を拘束した。


「がぁ!」

「終わりよ…」


 勝負はついた。このままエクレアはその気になればジェリーを絞め殺す事も出来る。


「戦いはもう終わる…」










「まだやるの?」


 ルミナスは倒れたジェジェを見下ろしてそう言った。

 ジェジェは立ち上がった。


「おおお!!!」


 ジェジェはそのまま突撃したが、ルミナスは思いっきりジェジェを吹き飛ばした。


「ぐああああ!!」


 ジェジェはアジトの外まで吹き飛ばされた。周囲は暗くなっており、闇のみが広がっていた。


「【縛十光輪ばくじゅうこうりん】」


 光の輪がジェジェを縛り付けた。結界の外に出ていた為、ルミナスは普通の霊呪法を使えていた。


「な!?霊呪法…」


 ジェジェは驚愕の表情を浮かべた。霊呪法は人間しか扱えない筈である。


「私は「雑種」だから使えるのよ」

「「ハーフエンジェル」か!?」


 ジェジェはそう言った。「ハーフエンジェル」…それは人間と天使の間に生まれる者の名称である。数は非常に少なく、謎が多い存在である。


「さてと…あなたは「私の軍門に下ってもらうわ」」

「何だと!?」


 ルミナスの瞳が白色に変わった。すると、ジェジェは「脳が無くなる感覚」に襲われた。そして、「意識が変わった」。

 ジェジェはルミナスに跪いていた。

 ルミナスの瞳は【白王眼アスプロ・ロウユ】。能力は無の力。ルミナスはジェジェの意識を破壊した。

 そして、ジェジェの中に新たな人格を入れこんだ。

 それがルミナスの眼の力だ。しかし、この眼も無尽蔵の使えるわけではない。

 目の見えない者には通用しないのは勿論、霊力や魔力の強い者には効かない。

 さらに、眼の力を知られてしまった場合、その者には【白王眼アスプロ・ロウユ】は効かなくなってしまう。

 以上のように非常に制約の多い眼でもある。

 ジェジェも相当な霊力を持っている為、【白王眼アスプロ・ロウユ】をはじめから使う事は出来なかった。

 その為、ジェジェをルミナスは追い詰めたのだ。

 ジェジェの魂は完全に【白王眼アスプロ・ロウユ】によって魂を無にされた。


「霊呪法第六二九番【八神網羅はちがみもうら】」


 ルミナスは霊呪法を唱えた。【八神網羅はちがみもうら】は指定した範囲に自身の声を伝達する情報伝達の為の霊呪法だ。


「聞け!貴様ら反乱軍のリーダー、ジェジェ・ジェルルティーガは我が軍門に下った!!『オリヴィア』、『ギシン』、『エギル』、『ミネルヴァ』…我に従え!!!!」


 ルミナスは高らかにそう宣言した。











 内乱は終わりを告げた。

 ノヴェルト、クラッカー、ジェリーは処刑台に縛り付けられていた。

 ジェジェは赤紫色の『セラフィム騎士団』の装束を着ていた。

 そう、ジェジェは『セラフィム騎士団』の十三人目の構成員となっていた。

 内戦終了後、四つの反乱軍は全員拘束された。残りの反乱軍を制圧するのもそうは遠くはないだろう。


「ジェジェ!どういう事だ!?我々は志を共にした同志では無かったのか!?」

「…………」


 ノヴェルトがジェジェにそう言った。ジェジェは処刑を見物していた。

 ジェジェは虚ろな目で処刑人三人を見続けていた。まるで死んでいるようであった。

 いや、実際その通りなのかもしれない。何故ならジェジェの魂は跡形もなく消滅してしまっているのだから。

 この処刑には反乱軍の大半が見物に来ていた。否、厳密にはここで一気に攻め込もうとしていた。その機会を伺っていたのだ。

 ルミナスは反乱軍の野郎としている事が分かっていた。その上で、ルミナスは放逐していた。

 ルミナスは処刑台の壇上に上がった。


「あなたたちを殺すのは惜しいわ…ジェジェのように私の軍門に下ってくれないかしら?」

「断るわ!敵に情けをかけられるくらいなら死んだほうがマシよ!」

「同感だな…またあの奴隷の様な生活を送らされるなら死んだほうがマシだ!貴様!!ジェジェに何をした!?」


 ルミナスが勧誘をするとクラッカーとジェリーが断った。すると、見物していた反乱軍たちが声を上げて叫び出した。


「何を…………したと思う???」


 ルミナスが邪悪な笑みを浮かべた。

 普段は天使の様な顔をしているルミナスだが、今の顔は悪魔……いや、魔王のそれだった。ルミナスの眼が白くなり始める。


「貴様…!」


 ノヴェルトが声を上げた。クラッカーとジェリーが苦悶の声を上げた。


「私に従え!!」


 ルミナスは【白王眼アスプロ・ロウユ】を発動させた。すると、ノヴェルト、クラッカーとジェリーは眼が虚ろになった。


「「「分かりました。我が王よ」」」


 三人が口を揃えてそう言った。すると、反乱軍たちが驚愕の表情を浮かべた。


「何をした?」「洗脳か?」「どうなってる?」


 あらゆる方向にそんな声が聞こえた。


「あなたたちは私に従う他ないのよ。さぁ、ここにいる全ての反乱軍たちよ!私に従え!!!」


 ルミナスはそう言うと反乱軍たちはルミナスに跪いた。


『仰せのままに、我が王よ』


 ルミナスは邪悪な笑みを浮かべた。

 そんなルミナスをローグヴェルトは陰で見つめていた。



 -こうして、「神聖ローマ」は完全に統一する事の成功した。







「「神聖ローマ」…それは過去の名…私はこの国の名を、「ローマ合衆国」と改名するわ!」


 ルミナスは大々的にそう発表した。

 ローマを統一したその日にルミナスはそう言った。反乱軍は全員、ルミナスの配下となり、「ローマ合衆国」はさらにその勢力を増大させていた。

 統一する前の時点で「USW」と同等の戦力であったが、完全のローマを統一した今となっては「USW」をはるかに上回っているだろう。

 さらに、「USW」はカーシスの死によって勢力が縮小している。

 名実ともに「ローマ合衆国」が世界の事実上の頂点となったといえる。






「陛下…」

「ああ、ローグヴェルト…」


 ルミナスとローグヴェルトは『天使城セラフィムヴァール』の『王の間』で話していた。


「「眼」を…使ったのですね」

「ええ、この「眼」の事を知っているのはあなただけだものね…」


 ルミナスはそう言った。そう、【白王眼アスプロ・ロウユ】の事を知っているのはローグヴェルトのみ。それ以外の者は『セラフィム騎士団』すら、ルミナスの眼を知る者はいない。


「勘のいい者はおかしいと思い始めていますよ」

「……信じるだけの愚者ばかりでは無くて何よりよ」


 ルミナスはそう言い切った。この「眼」を使えば、おかしいと思われるのはルミナスとて分かっていた。


「私は事実上、世界で最も強くなったわけね…まぁ、まだ計画の半分も終えていないけど…」

「動くのですね…ついに」

「ええ、あなたにも協力してもらうわよ、『頂点者エンピレオ』」

「仰せのままに」


 ルミナスは前を見据えていた。自分の願いを叶える為に。ローマの統一は前哨戦に過ぎない。


「この国の『シュトラール』、十二支連合帝国の『シュトラール』後、一つで『シュトラール』は全てそろうわ。けど、まだ……それだけでは『世界宮殿パルテノス』へは行けないわ…」


 『シュトラール』はあくまできっかけに過ぎない。それだけでは『世界宮殿パルテノス』へ行く事は出来ない。


「私はあなたにどこまでも付いて行きますよ」

「ええ、そうでなくては困るわ。ついてこれないのなら振り落とすわ!」


 ルミナスはフローフル・ローマカイザーの事を思い出していた。ルミナスと同じ「ハーフエンジェル」だ。ルミナスが最も愛し、そして、最も恐れている男でもある。

 ルミナスの異母姉弟きょうだいであり、元「神聖ローマ」の第四皇子であり、今は「十二支連合帝国」にいる。


「何故、フローフルの居場所をとっくに特定しているというのに放逐しているのですか?」


 そう、ルミナスは「十二支連合帝国」で起こった『アザミの花』の一件から既にフローフルが「十二支連合帝国」にいる事は分かっていた。

 しかし、フローフルに対して何も干渉せず、「USW」の一件までフローフルと会う事はしなかった。


「気まぐれよ…ただの…殺そうと思えばいつでも殺せるわ。……あの子を騎士団に戻るよう言っても断るでしょうしね」


 ルミナスはそう言った。実際、「USW」の一件でルミナスはフローフルを圧倒した。そして、フローフルは『セラフィム騎士団』を裏切った。いや、もっと言うなれば、ルミナスと決別した。ルミナスにとってそれは耐えがたい苦痛であった。


「彼はあなたにとって最も沖い障害となると思うのですが?」

「そうかもしれないわね…けど、今はまだ手を出すべきではないわ。フローフルに関しては全てが終わった後で何とかするわ」


 ルミナスはそう言った。

 フローフル・ローマカイザー…今は時神蒼ときがみあおと名乗っている。そして、多くの仲間がいる。

 迂闊に彼に手を出すのは得策ではない事もまた事実である。

 「USW」の戦力が分散している状況だったとはいえ、彼らはたった十数人で「USW」の最高戦力である『アンタレス』の『七魔王セブンドゥクス』を倒している。そして、『七魔王』やカーシス…いや、クリフォトを超える力を手にしたエル・マクガヴェインを倒している。

 エル・マクガヴェイン…確か、「神聖ローマ」の元衛生兵だった。ローグヴェルトの友達でもある。彼女もまた、蒼と同様、この国を逃亡している。今は月影慧留と名乗っており、今は蒼と共にいる。

 ルミナスはエルに嫉妬しているのかもしれなかった。自分はフローフルといる事が出来ないのに彼女は常にフローフルと共にいる。


「まぁ、いいでしょう…あと少し…あと少しなのだから…」


 ルミナスはそう呟いた。そう、ルミナスはあと少しで動き出す。そうは遠くないだろう。全ては、自身の願いの為に。

 フローフルとはまた、戦う事になるかもしれない。だが、自身の邪魔をすれば彼でも容赦は出来ない。叩き潰すまでだ。

 彼には新しい仲間が出来たようだ。

 ルミナスはフローフルの仲間たちを大体把握していた。エル・マクガヴェインだけではない。

 今のフローフルの仲間の中で最も付き合いの長い苗木一夜なえきいちや

 元『アザミの花』のリーダーにして、今はフローフルと親友のような関係を築いている天草屍あまくさしかばね

 フローフルの最初の道しるべとなった董河湊とうかわみなと

 人狼でありながら神の力を扱う事が出来る霧宮美浪きりみやみなみ

 屍同様、元『アザミの花』の構成員の蛇姫薊へびひめあざみ御登狂みとくる

 そして、フローフルを始め、彼らをリーダーとしてまとめ上げていた常守澪つねもりみお音峰遥おとみねはるか

 ルミナスは蒼の周囲を最低限把握していた。彼らがルミナスの障害となる可能性があるからだ。

 いや、今のところはまだ障害と呼ぶにはあまりにも小さすぎる。だが、これから障害となるかもしれない。

 だが、今は彼らの事より、この国の事が優先だ。何としてもルミナスは自身の目的を達成させなければならない。


「時は近い…さぁ、始めましょう」


 ルミナスは憎たらしいほどの青空を見ながらそう言った。



















 いつかは分からない。だが、それなりに時間が経っているのではないだろうか…?ここはどこか分からない。暗がりの場所であろうか?

 とにかくこの世界には闇しかなかった。そこには二つの球の様なものが漂っていた。この世界がなぜできているのか?まぁ、今はそんな事はどうでもいいだろう。分かっているのはここではたから見たら小さな争いが起きている…というくらいしか認識できないかもしれなかった。


「さぁ、ーー。貴様を頂く…」


 右側の球がそう言った。それが誰だか分からない。分かるのは不気味な雰囲気を醸し出している事くらいだ。


「とうとう…この時が来てしまったか……」


 左側の球がそう言った。

 声からして恐らく女性だろう。だが、この者も顔がよく見えない。分かる事と言えば、何かに抗おうとしている事くらいだ。


「百年待った…とうとう、始まる」


 右側の球がそう言った。ようやく始められる…待ち侘びたと言わんばかりの台詞であった。


「貴様の好きにさせると思うのか?」


 左側の球がそう言った。だが、強がっているだけでありその声はどこか弱弱しかった。限界が近づいている事は誰が見ても明らかであった。


「ふふふ…ここまで来て強がるか…その胆力だけは認めてやりたいところだが……もう、終わりだ」

「そうじゃの…もう、妾も限界のようじゃ……じゃが、妾を…いや、貴様を止める者が必ず現れる。生成首を洗って待っているんじゃの……アザ………」


 右側の球と左側の球がそう言うと、右側の球から黒いオーラの様なものが発生し、左側の球を覆いつくしてしまった。


「………頼んだ………ぞ……神……月………な……………」


 左側の球がそう言いのこして、闇に飲み込まれてしまった。


「身体は……貰った………これでようやく百年前の続きがやれる」


 右側の球がそう言ってどこかに消えていった。そして、この闇の空間は完全に消え去った。










 Chaputar End

 ローマ統一篇はこれにて終了です。前後編なのでかなり短くなりました。

 ここに出てきたキャラクターたちも勿論本編に登場します。どころかこれから重要な役割を担う者たちばかりです。

 もうお察しかもしれませんがルミナスは現在作中最強のキャラです。まぁ、モチーフになったキャラもあのお方だし(笑)とにかく、ルミナスはとにかく強く恐ろしいキャラという事を意識して書いてます。なんたって蒼の義姉ですからね。

 というわけで、ここで物語は半分終わりを迎えました(物語が半分終わったというだけで章の半分が終わりという訳では無い)。これからどんどん物語も進んで行きますのでこれからもよろしくお願いします!それでは!次回にお会いしましょう!次回から第二部突入です!

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