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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第三章】USW進攻篇
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【第三章】USW侵攻篇ⅩⅩⅠーラ・フィーニスー

 蒼と慧留は目の前にいる立体映像ホログラムのルミナスと対峙していた。


「さぁ、始めましょう…」


 ルミナスは虚空から刀を顕現させた。その刀は純白でありかなり長かった。

 あの刀は太刀だ。太刀とは戦国時代に主流となった刀であり、リーチの長さが特徴の武器である。

 しかし、長さゆえにそれなりに重さがあり、時代が進むごとに日本刀が主流になっていった、という経歴がある。

 彼女が使うあの太刀は間違いなく【天使エンゲリアス】だ。

 蒼と慧留はルミナスの不気味な霊力に押し潰されそうになっていた。彼女はとにかく「異質」なのだ。

 何らかの力が働いているのではと思うほどにルミナスは「異質」な霊力を放っていた。

 例えるならば、空の上に海があるような感覚であり、とにかく不気味であった。


「慧留…来るぞ!」

「うん!」


 ルミナスは蒼と慧留に接近した。慧留は【冥界創造プラエテート】でルミナスの周りに武器を発生させ、その武器が一斉にルミナスに攻撃を仕掛けた。

 蒼はその瞬間にルミナスに切りかかった。タイミングは完璧であった。しかし-


「な!?」


 蒼は驚愕の声を上げた。何故なら、蒼の刀を二本とも、左手だけで受け止めていたからだ。

 ルミナスは蒼の左肩をバッサリと切り落とした。それにより、蒼の左手足が削ぎ落された。


「そんな…」


 慧留がそう言った瞬間、ルミナスは姿を消していた。


-消え…!?


 慧留はルミナスに左肩を切られた。そのまま、慧留は倒れた。その倒れた拍子に、『万物の古鍵』を落としてしまった。ルミナスは『万物の古鍵』を手に取った。


「さてと…もう帰るわね…」


 ルミナスはそう言った。いくら蒼と慧留が手負いの重症だったからとはいえ、【天使エンゲリアス】を解放せずに二人を一瞬で倒した。

 ルミナスは底が見えない戦闘力を秘めていた。


「はぁ…はぁ…待て…」


 蒼は薄れていく意識の中、ルミナスを呼び止めた。


「フローフル…あなたは今、左肩、左手足を失っているわ。今のあなたは何も出来ないわ。用は済んだわ、さようなら、フローフル…あなたは安然に暮らすといいわ」

「ふざ…けるな…!」


 蒼はルミナスを睨みつけた。


「ふ…まだ、そんな眼が出来たのね…「あの時」の事…そんなに忘れられない?」


 ルミナスは蒼に問いかけた。


「あの時?」


 慧留は二人の会話の内容が理解できなかった。だが、これだけは分かる。

 蒼とルミナスの二人には何かがある。そして、蒼は「神聖ローマ」から逃亡している身だ。

 そうなった理由があのルミナスにあると慧留は確信していた。


「俺は……お前に…!!」

「勝つ?とでも?無理ね…今のあなたは仮に万全の状態でも私には勝てないわ。だって…私は…この世で…最も強いのだから」


 ルミナスは断言した。ルミナスは「神聖ローマ」の皇帝。そこからは自身に満ち溢れていた。

 これが女王の威厳というやつなのだろうかと慧留は思った。


「待て!」


 声が聞こえ、ルミナスは声のする方向へ向いた。声の主は舞だった。


「四宮舞…他にもいる…」


 ルミナスがそう言った瞬間、周囲にどんどん人が来ていた。一夜、薊、狂を始め、ドラコニキルも来ていた。


「わらわらと…」


 ルミナスは愉快そうにそう言った。


「ルミナス・アークキエル・ローマカイザー…あなたがなぜ…ここに?」


 舞が問いかけた。


「話す事は無いわ。もう…時間だしね…さようなら…愛しい我が子たち…」


 ルミナスはそう言って消えていった。


「ふー、一体何がどうなっているのか…」


 ドラコニキルは訝し気にそう言った。


「話は後じゃな…」


 舞がそう言った。舞は蒼たちの治療を始めた。







 「USW」との騒動は収束に向かっていた。

 蒼たちは「USW」の病院で治療を受けていた。しばらくしたら蒼たちは「十二支連合帝国」に帰還する予定だ。

 慧留も一緒に「十二支連合帝国」に戻る事になった。光明庁長官はドラコニキルが臨時でなる事になった。

 新しい長官が決まるまでドラコニキルが長官代理になる。

 「十二支連合帝国」と「USW」の騒動は「ヘレトーア」にまで広がり騒ぎになったが何故か、「神聖ローマ」が「十二支連合帝国」と「USW」の後ろ盾となった為、そこまで大きな騒ぎにはならなかった。

 蒼たちは動けるくらいにまでは回復しており、蒼は今、病院の庭園にある椅子に座っていた。

 ここも「USW」のはずだが、ネオワシントンとは随分景色が違っていた。

 庭園には緑と花畑で広がっており、眩しい太陽が照っていた。ネオワシントンとは百八十度違う。


「やっほー、蒼君」


 やって来たのはアルビレーヌだった。


「あんたは…」

「アルビレーヌよ」

「俺に何の用だよ…」

「知りたくてね…スープレイガとドラコニキルが興味を持ったあなたの事を…」

「何だそれ…」


 蒼はアルビレーヌの意図が全く分からなかった。


「帰るんだよね…もうじき…」

「そうだな…なんか、今思えばあっという間だった」

「そんなものよ…まさか…こんな展開になるなんて私、予想してなかったし」

「そうかよ…」


 蒼とアルビレーヌは何気ない会話を続けた。


「じゃあ、私行くね」

「もういいのか?」

「ええ、何となく分かったしね…あなたの事」

「?」

「じゃあね、蒼君」


 アルビレーヌはそのまま去って行った。


「よく分からない奴だ…」


 蒼はあっけらかんとした顔でアルビレーヌを見た。






 一夜は病室でパソコンを弄っていた。

 今回の件の報告書を作成していたのだ。すると、病室に誰か入って来た。ドラコニキルだ。


「やあ、珍しいお客さんだ」


 一夜は挑発するようにそう言った。


「ふー、体調はどうだ?」


 ドラコニキルは一夜に自身の様子を聞いた。


「問題ないね」

「そうか…」

「何か用かい?」

「いや…大した用じゃない…」

「蒼の事でも知りたいのかい?」


 一夜がそう言うとドラコニキルは眉を少し動かした。


「図星だね…まったく…蒼は人気者だね。まぁ、いいさ。光明庁長官殿と話が出来るなんて事…そうは無いからね」


 一夜は楽しげにそう言った。


「あくまでも俺は代理だがな…時神蒼…奴を動かすものは何だ?あいつには…得体の知れない何かがある…俺にはそんな気がする…」


 ドラコニキルは疑問に思っていた。蒼は何故あそこまでの力があり、あれほど強い意志があるのか。それがただただ疑問であった。


「さぁね…だが、蒼には不思議な力があるのは確かだよ。彼には仲間を守りたいという気持ちが強い…彼を動かしているのはその想いだよ。少なくとも僕はそう思っている」

「そうか…」


 ドラコニキルはそう言って部屋を出ていこうとした。


「もう、行くのかい?」

「ああ、これ以上ここにいるのも貴様に悪いしな」


 ドラコニキルはそう言って去って行った。


「よく分からないね…彼は彼で…」


 一夜は両手を上げてそう言った。






 屍は一人で病院の中にある自販機で飲み物を買っていた。

 そんな時、隣にスープレイガがいた。どうやら彼も飲み物を買いに行っていたようだ。


「よう…」

「…おう…」


 屍が声をかけるとスープレイガはぎこちない顔で返事をした。


「お前も飲み物買いに来たのか…」

「まぁな…」

「てか、意外だな…俺の事覚えてたんだな…てっきり忘れてるかと思ったぜ…」

「名前は知らん。だが、顔は覚えてる」


 屍がスープレイガを茶化す様に話しているとスープレイガは素っ気ない返事をした。


「じゃあ、ちゃんと自己紹介しないとな。俺は天草屍、どうぞお見知りおきを」


 屍はそう言って手を出した。スープレイガは何故か…というかかなり、ぎこちない様子だった。


「ス…スープレイガ・レオンジャックだ…」


 スープレイガは目を横に向けながら手を伸ばした。そして、二人はそのまま握手をした。


「お前ってさ…結構照れ屋?」

「ウルセー!!」


 屍がスープレイガにそう言うとスープレイガは堪らず叫んだ。


「これで仲良くなったと思うなよ!絶対だかんな!!」


 スープレイガはそのまま走り去っていった。


「ふ…意外と恥ずかしがり屋なんだな…」


 屍は少し笑いながらそう言った。


「さてと…部屋に戻るか…」


 屍はそのまま部屋に戻って行った。







 ウルオッサは病院の屋上に来ていた。ここの病院の寝心地は最高なのだ。

 ウルオッサはここで寝る事を楽しみにしていたのだ。

 しかし、先客がいた。屋上にいたのは薊だった。


「あなたは確か…どうしてここに?」

「それはこっちの台詞だよ…何でここにいるのさ…」


 薊がウルオッサに尋ねるがウルオッサは逆に薊に質問をした。


「風に当たりたかっただけよ…」

「じゃあ、僕は勝手に寝させてもらうよ」


 薊とウルオッサがそれぞれ答えた後、ウルオッサは寝転がった。


「思ったけど…あなたって怠け者ね」

「そーだよ。僕は怠け者だよー。働きたくない、働きたくないでござる」


 薊が言うとウルオッサは適当に流した。


「その割には、言われた事はそれなりにするのね」

「まぁ、最低限の事はしないと怒られたり、生活させてくれないからねー。世の中ブラックだね~」

「やるべき事をやらないと駄目になるからわ」

「真面目な人の考えそうな事だねそれ」

「真面目じゃなきゃ生きていけないよ、普通」

「いや、それだけじゃ報われない事もある。僕は最低限の事をして、普通に暮らせればそれでいい」

「それ、普通に贅沢だし難しいと思うけど?」

「いちいちうるさいな~、寝れないじゃないか」

「別に今寝る必要ないじゃない」

「この時間帯に寝るから気持ちいいんだよ。だからここに来たんだよ。それなのに君がいるからゆっくり寝れない…台無しだよ…まったく」


 薊とウルオッサは話がかみ合ってるのか噛み合ってないのかよく分からない会話をしていた。


「なんか…疲れた」


 ウルオッサがそう言うと薊も黙り込んだ。そして、ウルオッサはそのまま眠りに就き、薊も経ったまま寝ていた。






 狂と美浪は二人で「USW」の町を歩いていた。町の風景は非常に賑やかなもので人間も魔族も関係なくいた。


「人がいっぱい…」

「そうだね…」


 狂と美浪は人の多さに圧倒されていた。周囲にはたくさんの店があり、ネオワシントンとは雰囲気がまるで違った。


「お前たちは…」


 そう言って現れたのはグリトニオンとグリーフアルトだった。


「どうも…」

「こんなところで何をしている?」


 美浪が挨拶をするとグリトニオンが尋ねてきた。


「ちょっと、街を回ろうかなって」

「それなら、お勧めの店を案内してやるよ!ついて来な!」


 グリーフアルトがそう言って狂と美浪の手を引っ張っていった。


「おい!グリーフアルト!!」


 グリトニオンはグリーフアルトの名を呼び、追いかけていった。

 やがて、店に到着した。


「ここだ!」


 グリーフアルトはそう言って店に入って行った。狂と美浪、グリトニオンもその店に入って行った。


「おっちゃん!四名だ!」


 グリーフアルトがそう言い、そのまま四人は席に座った。店の内装は西洋風であり、かなり、個性的な店であった。


「全部俺が奢ってやる。好きなのを選べ。俺はここの常連なんだよ」


 グリーフアルトが高らかにそう言った。


「そう言えば、グリトニオンさんとグリーフアルトさんはどうしてここに?」

「アルトでいいぜ」

「俺もグリーでいい。長くて面倒だろう」


 グリーフアルトとグリトニオンはそう言った。


「そうですか…」

「じゃあさ、アルトとグリーは何でこの街にいたの?」


 美浪が返事を返すと狂が二人に質問をした。


「順応早!」

「かかかっ!いいねぇ!!そういうノリ好きだぜ!俺はよ!!」


 美浪がそう言うとグリーフアルトは愉快そうに笑った。どうやら、グリーフアルトは普段は陽気な性格の様だ。


「俺たちは二人で買い出しに行っていたんだ」


 グリトニオンがすぐに答えた。


「へ~、仲良いんですか?」

「いや!良くない!!」


 美浪の質問にグリーフアルトはあっさりと答えた。


「え~?」

「まぁ、良くはないな…だが、最初はもっと酷かった」

「どれくらい酷かったかというと、皆、単独行動ばっかり取ってたし、リーダーの言う事もロクに聞かなかったな~。最初から聞いてたのはこいつとアルビレーヌぐれーだ」


 グリトニオンとグリーフアルトは昔を懐かしも様にそう言った。


「仲良さそうなのにね~」


 狂がのほほんとした感じでそう言った。


「そうか?お前らの方が中良さそうだぞ?」


 グリーフアルトはそう言った。


「人によって見方は違う…という訳か…」


 グリトニオンは複雑そうな表情をしながらそう言った。


「まぁ…俺も盗賊だった時よりかは協調性とやらはついたかもな」

「アルトって盗賊だったの?」


 興味津々に狂が聞いて来た。


「ああ!こう見えても凄腕の盗賊だったんだぜ!…今は『アンタレス』のメンバーだけどな」

「どうして盗賊から国の警察組織に入ったんですか?」


 美浪は疑問に思った。盗賊といえば普通に犯罪者だ。それが何故国の為に働いているのか美浪は気になったのだ。


「入らされたんだよ。俺は当時の『アンタレス』に追い詰められて刑務所に入れられた。その時にカーシスが俺を勧誘してきたんだ。それで、『アンタレス』に入った」

「へぇ~、そんな事が…他の人たちもそんな感じなんですか?」

「ああ、そうらしいな。俺は元から『アンタレス』の構成員だったが…」

「てか、お前だけじゃね?今の『七魔王セブン・ドゥクス』で最初から『アンタレス』にいたの」

「…そうだな……」


 グリトニオンは真顔で返事をした。グリーフアルトは愉快そうに話していた。

 美浪はグリトニオンとグリーフアルトは見た目と印象がかなり違うと感じた。

 グリトニオンは見た目通り素っ気ないが、普通に話せるし、グリーフアルトは陽気な感じで気のいい性格だ。


「話ばかりしてないで注文も決めろよ!」


 グリーフアルトは速く注文するよう促した。


「くるはこれがいい!」


 狂は元気よくそう言った。


「よし!じゃあ、さっさと頼むぞ!!お~い!おっちゃん!!注文決まったから来てくれ!!」

「おい!俺はまだ決まってないぞ!?」

「速くしなきゃ!」


 グリーフアルトが注文をしようとする中、グリトニオンと美浪は慌てて注文するものを選んだ。







 澪と遥は二人で夜道を歩いていた。


「それにしても色々ありすぎたね~」


 澪はぼ~っとした感じでそう言った。


「そうね…取り敢えず、慧留は帰ったら説教ね…」

「あ~、はいはい、そうですね~」


 遥が半ギレの中、澪は面倒臭そうに返事をした。


「『世界宮殿パルテノス』…運命を決める神殿…」


 生徒会一同は蒼と慧留から『世界宮殿パルテノス』の話を聞いた。

 『世界宮殿パルテノス』によって運命が決められているという事を。


「あたしは…『世界宮殿パルテノス』は正しいものだと思う。世界を維持する為にはバランスを…均衡を保たないといけないわ…」


 遥はそう言った。遥と澪は『世界宮殿パルテノス』の事を否定するつもりは無かった。

 むしろ正しいと思っている。しかし-


「それで納得できない人もいる。えるるんとかはそう。まぁ、あたしは世界の行く末と描きにできるほど器が大きいわけじゃないからね~。正直、想像できないよ…」


 澪は表情を曇らせながらそう言った。


「珍しいわね…あなたがそこまで考え込むなんて…」

「そりゃあ、あたしもたまには考えるよ…」


 遥と澪が話していると目の前に人影がいた。ルッシュベルだ。


「…!どうも…」


 ルッシュベルは二人に挨拶をした。


「どうも」

「どうも~」


 二人もルッシュベルに挨拶をした。


「散歩ですか?奇遇ですね。僕もなんですよ」


 ルッシュベルは笑顔でそう言った。遥と澪はルッシュベルを掴み所の無い人物だと思った。


「では、僕はここで、またお会いしましょう」


 ルッシュベルはそのまま去って行った。


「『七魔王セブン・ドゥクス』の中で彼が一番謎カモ…」

「そうね…」


 澪がそう言うと遥も同意した。











「時神君たちが戻ってくるって本当ですか!?」


 湊は厳陣にそう言った。

 ここは『四神天城シシンテンジョウ』の執務室であり、周りには書物がたくさん置かれており、厳陣は椅子の腰かけていた。


「ああ、明日には戻ってくるそうだ」

「良かった~」


 湊は安心してその場にへたり込んだ。


「一時はどうなるかと思いましたけどね…」


 後ろに現れたのは大志だった。大志も一安心と言った顔をしていた。


「だが…これで全てが終わった訳ではない」

「ええ、四宮さんの報告書によると「彼女」が「USW」に現れたようですからね…」


 厳陣と大志は訝し気な顔をしていた。


「湊君、君はもう帰りなさい。明日ここに戻ってくるはずだ。その時にまた来ればいい」

「わかりました。失礼します!」


 湊はそのまま去って行った。


「さて…これからが大変だ」

「そうですね」


 厳陣と大志は窓から夜空を見上げた。








「二人ともご苦労じゃったな」


 舞が赤島と兎咬に労いの言葉をかけた。


「ああ、しばらくは休ませて欲しいね」

「そうだな…もうしばらくはこんな戦いは御免だ」


 赤島と兎咬はくたびれたようにそう言った。


「とはいえ、まだまだやる事は残っているぞ?」

「はぁ~、嫌になるわ…後始末は結局俺たちだかんな~」


 赤島はぼやいた。


「まったくだ。しばらくはあいつらの顔を見たくないな」


 兎咬は憎々し気にそう言った。


「さてと…妾は帰りの準備をしなくてはならん…お前たちも早く休め」


 舞はそう言って二人の元から去って行った。


「「はぁ~~~~~」」


 赤島と兎咬は深い深い溜め息を吐いた。








 蒼たちは今、『夜魔殿オプスデラカストラ』の前にいた。ここで舞が『黒門ニゲル・ゲート』を開こうとしていたのだ。


「ふー、じゃあ、また…我らが女王よ」


 ドラコニキルがそう言うと慧留が照れたような顔をした。


「止めてよ…私は…この国の女王でも何でもないし……けど…」


 慧留はさらに続けた。


「約束するよ…またいつか、ここに戻る」


 ドラコニキルは目を見開いた。


「そうか…」

「蒼~~~!!!蒼もまた遊びに来るんだぞー!!!!」


 デカい声でラナエルは蒼に言った。


「ああ、また来るよ」


 蒼はラナエルに返事を返した。


「時神!!また俺と勝負しろ!!今度は絶対勝つ!!」


 スープレイガが蒼の胸ぐらを掴んでそう言った。


「ああ」

「けっ…」


 蒼が返事を返すとスープレイガは手を放し、そのまま去って行った。


「まったくあいつは…」


 ドラコニキルは呆れたようにそう言った。

 因みに『七魔王セブン・ドゥクス』全員が蒼たちを見送りに来ていた。


「じゃあな~、グリー!アルト!」

「また遊びに来いよ!くる坊!」

「いつでも来るといい」

「お前らいつの間に仲良くなったの!?」


 狂がグリーフアルトとグリトニオンに挨拶をすると二人は返事を返した。そして、その状況に屍はとても驚いていた。


「ははは…」


 そんな光景を美浪は笑いながら見ていた。


「皆!帰る準備は出来たわね!?」

「そろそろ行くよ~」


 遥と澪が皆に呼びかける。


「じゃあな、ドラコ」

「ああ、またな、時神」


 蒼とドラコニキルはお互いに別れの挨拶をした。


「『黒門ニゲル・ゲート』が開いたぞ!行くぞ!」


 舞がそう言うと真っ先に赤島と兎咬が入って行った。蒼たちもそれに続いた。













 『黒門ニゲル・ゲート』を抜け、蒼たちは『四神天城シシンテンジョウ』に到着した。


「時神君!皆!」


 真っ先にやって来たのは湊だった。


「湊!?」


 蒼は声を上げた。


「常守総帥…黒宮さん…」


 厳陣と大志が現れると慧留が呟いた。


「お帰り、皆。無事でよかった」

「…といいたいところですが…今後は勝手な行動は慎むように!」


 厳陣と大志はそう言った。


「「すみません」」


 蒼と慧留がそう言うと皆も頭を下げた。


「まあ、いいだろう…今は無事を喜ぼうじゃないか」


 厳陣はそう言った。


「俺たちはさっさと始末書書かねーとな」


 赤島はそう言って城に戻って行った。


「俺もだな…はぁ~」


 兎咬も溜め息を吐きながら城に戻っていった。


「あたしと澪も生徒会の仕事があるから戻るわ」

「んじゃね~」


 遥と澪も去って行った。


「え?え?え~~~!?皆さっさと帰っちゃうの~!?」


 湊はがっくりとした顔をした。


「みんな疲れてるんだ…休ませてくれ…」

「てことで、くるたちも帰るね~」

「…また」


 屍と狂と薊もそそくさと帰って行った。


「悪いな…湊…お前も休めよ」


 蒼がそう言うと湊は「はぁ~」と溜め息を吐きながら自宅に帰って行った。


「妾も学校で起こったゴタゴタを解決せねばならん。という事で妾もここで」


 舞も学校へ向かった。


「蒼君も慧留君も帰りなさい」

「そうさせてもらいます」


 厳陣がそう言うと一夜は同意し、蒼と慧留と帰って行った。








「ふ~、この部屋に来るのも久しぶりな気がする」


 蒼はそう言った。蒼は自宅に戻っていた。蒼の自宅はいつもと変わらなかった。

 苗木日和はいつもと変わらなかった。蒼はベッドで寝転がっていた。

 今すぐにでも寝そうだったが…ベランダで風に当たりたいと思い、ベランダに行った。

 すると、隣に慧留がいた。慧留もどうやら風に当たりに来たようだ。


「ん?蒼…」


 慧留は蒼も名を呼んだ。


「ああ…慧留か…」


 蒼も慧留の名を呼んだ。


「ここに戻るの…なんか久しぶり…」

「そうだな…」

「二度と戻って来る事は無いと思ってた。けど、戻ってこれた…」

「…」


 慧留がそう言うと蒼は黙って聞いていた。


「そうだ…蒼には…一番に言っておこうと思ってたんだ…」


 慧留はそのまま続けた。


「蒼…私…数年後には「USW」に戻ろうと思う」


 慧留がそう言うと蒼は目を見開いた。


「私ね…知っちゃったんだ…クリフォトやアンタレスが…「USW」の人々がどんな思いで生きてきたのか…だから…私は…その思いを大事にしていきたいの!だから…」

「いいんじゃねーか?」


 慧留が話を終える前に蒼は慧留の言葉を素直に受け入れた。


「え?」

「お前がそうしたいんだろ?なら…それでいいんじゃねーか?」


 蒼はそう言った。蒼は…慧留の気持ちを汲む事にした。


「蒼らしいね…」


 慧留は笑いながらそう言った。


「けど、他の奴らにも言っとけよ。それは絶対だ!」

「うん!」


 蒼がそう言うと慧留は頷いた。


「皆…出会ったら必ず別れの時は来る…けど、別れても…繋がりは消えたりなんかしない!皆どこかで繋がってる!」


 蒼がそう言うと慧留は「うん」と言って頷いた。


「だから、お前はお前が選んだ道を迷わずに進め」


 蒼はそう言った。蒼は何となく、慧留がこうなる事が分かっていた。

 そして、自分はどうするべきなのか…蒼にはもう分かっていた。


「じゃあ、おれもお前に言いたいことがある。一度しか言わねーからな!よく聞け!」


 蒼はそのまま続け、言葉を口にした。


「俺はお前と出会えてよかった。お前がいたから俺の世界が変わった」

「え?」


 慧留は顔を赤くしながら蒼を見た。


「何だよ?」


 蒼が顔を赤くしながら慧留に問いかけた。


「もう一回言って?」

「もう言わないって言っただろ!!」


 蒼は堪らず叫んだ。慧留は悪戯っぽく笑った。慧留は本当は聞こえていたし、伝わっていた。蒼の気持ちが…

 蒼と慧留は二人で夜空を見上げていた。









 蒼と「USW」との戦いは一先ずは終焉を迎えた。しかし、戦いはまだ終わっていなかった。









「陛下…」


 ローグヴェルトが頭を下げた。


「ただいま、ヴェル。これからは私も全戦に出るわ」


 ルミナスがそう言うとローグヴェルトは驚きの表情をした。


「よろしいので?」

「構わないわ。そろそろ、私も戦わなければならない頃合いですからね」


 ルミナスは嗤いながらそう言った。


「『セラフィム騎士団』は?」

「そうね、すぐに招集をして頂戴…多分急な召集だから全員集まるのは無理でしょうけど、集まった騎士団員だけでやれるわ」


 ルミナスはそう言い切った。


「では…この国を統一する準備が整った…という訳ですか…」


 ローグヴェルトがそう言うとルミナスは「そういう事よ」と言った。


「ですが、あなた一人で大丈夫なのですか?」


 ローグヴェルトはそこを懸念していた。今まで、誰も「神聖ローマ」の内戦を完全に収めれた者はいない。

 いくらルミナスが歴代皇帝で最強と謳われているとは言え、ローグヴェルトは些か不安であった。


「心配ないわ…あなたもいる事だし…」


 ルミナスはそう言い放った。


「私は全てを手に入れる。世界の平和の為に…」










  -USW侵攻篇 THE ENDー






 これにて、【第三章】は終わりです。長かったです。なにせ、第一部の区切りですからね。

 次は少し外伝をやろうかなと思ってます。前後編の短編です。神聖ローマについて少し書こうかなと思っております。蒼や慧留の出身地でありながら書かれる事が殆ど無かったのでここで出した方がいいかなと。

 第二部は今以上に色々なキャラが登場します。話も半分は終わっていますのでここからどんどん終わりへと向かっていきます(多分)。

 予定では十一章で完結させようと考えてます(全然半分じゃない)。

 それではまたお会いしましょう!

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