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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第三章】USW進攻篇
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【第三章】USW侵攻篇ⅩⅧー静かなる怒り(イーラ)ー

「……怒り狂え【黒龍魔王サタン】」


 ドラコニキルは【悪魔解放ディアブル・アーテル】を発動。すると、黒い火柱が発生し、ドラコニキルを包んだ。黒い火柱は城の天井を貫通し、ドラコニキルは空に移動していった。

 蒼はすぐさまドラコニキルを追いかけ、空を飛んだ。


-高い…どこまで行くつもりだ!?


 蒼はずいぶん空に昇った。大体今蒼とドラコニキルがいる場所は標高二千メートルほどの場所だ。

 そこでようやくドラコニキルは止まった。未だに火柱は発生したままであったがその火柱も消えた。

 そして、ドラコニキルの姿が露になった。

 全身、白い服で覆われており、服には大きな十字架の模様があった。手足は両方とも真っ黒で黒ずんでおり、頭にはドラゴンの骨の様なものを被っていた。

 瞳は赤くなっており、まるで吸血鬼の様な瞳であった。背中にはドラゴンの翼が生えていた。

 髪は短くなっており、平均的な男性の髪の長さであった。


「ふー、この姿になるのも…何年振りか…」


 ドラコニキルはそう呟いた。


「……【第二解放エンゲルアルビオン】」


 蒼も【第二解放エンゲルアルビオン】を発動した。


「【ワルプルギスの夜】」


 全身黒い服で覆われていた。さらに巨大な翼が二つ生えており、周囲には歯車の様なものが浮いていた。歯車と歯車は黒い線で繋がっており、瞳はオッドアイから両目とも黒色に変化していた。頭上には歪な形をした輪っかがあった。


「行くぞ」


 ドラコニキルがそう言うとドラコニキルは右手に長剣を創り出した。真っ黒な長剣であった。ドラコニキルの長剣【ペンドラゴン】だ。ドラコニキルは一瞬で蒼の前に移動した。


「!!」


 蒼は【黒時皇帝ザフキエル】で防御しようとするが、一瞬で【黒時皇帝ザフキエル】が発火し、黒い炎が発生した。

 このままでは【黒時皇帝ザフキエル】が燃え尽きてしまう。蒼は【黒時皇帝ザフキエル】を振り払って炎を消した。

 だが、その隙にドラコニキルの【ペンドラゴン】によって肩を切られてしまった。さらに、切った先から黒い炎が発生した。


「ぐぅ!!」


 蒼は悶えるがドラコニキルは攻撃を続けた。


「くそ…【時間停止クロノデザイン】!」


 蒼は時間を止めた。蒼以外のすべての時が止まっている。蒼を包んでいた炎も止まっていた。蒼はどうにか黒い炎から抜け出し、ドラコニキルの切りかかろうとした。しかし-


「【命王天凱フォルトゥーナ・インケルタ】!」


 ドラコニキルの身体が燃えだした。黒い炎に覆われた。その瞬間、ドラコニキルが動き出した。


「何!?」


 蒼は時を止めていた。にも拘らず、ドラコニキルは動き出した。ドラコニキルは蒼の【黒時皇帝ザフキエル】を【ペンドラゴン】で受け止め、逆に切り裂いた。


「ぐぅ!【時間加速クロノシュネル】!」


 蒼は自身の時を加速させたがドラコニキルは蒼の動きを捉えていた。【悪魔解放ディアブル・アーテル】により、ドラコニキルの動体視力が上がっていた。


「甘い」


 ドラコニキルは蒼の身体を切り刻んだ。蒼の身体は燃え上がり黒い炎に包まれた。

 蒼は再び、【時間停止クロノデザイン】で時を止め、炎から脱したがすぐにドラコニキルは【時間停止クロノデザイン】から抜け出し、蒼に襲い掛かった。


-こいつ…俺の時間操作が効かない!?


「違うね…効いてはいる。だが、俺の黒炎は全てを燃やす。それが概念だとしてもな!」


 ドラコニキルの能力は燃やす能力だ。全てを燃やす。

 それが仮に時間を操る能力だとしても。蒼はドラコニキルに押されていた。


「【三重虚神さんじゅうきょじん】!」


 蒼は霊力の巨大な盾を展開したが一瞬で燃やし尽くされた。

 さらに、ドラコニキルは【ペンドラゴン】で蒼の脇腹を貫いた。


「がは!」

「これで終わりだ!」


 ドラコニキルは【ペンドラゴン】を横に振った。

 蒼の腹を切り裂くつもりだ。蒼は咄嗟に【時間停止クロノデザイン】を発動。時を止め、脇腹に刺さっていた【ペンドラゴン】を抜いた。

 しかしやはり、ドラコニキルは【時間停止クロノデザイン】が解ける前に動き出しており、蒼を切り裂いた。


「ぐ!」


 蒼は【第二解放エンゲルアルビオン】を解いた。すると、蒼は元の姿に戻っていた。


「諦めたのか?」

「馬鹿言うな。むしろ逆だ」


 蒼は【黒時皇帝ザフキエル】をしまい、もう一刀の刀を取り出した。【氷水天皇ザドキエル】だ。


「…【第二解放エンゲルアルビオン】」


 蒼は【氷水天皇ザドキエル】の【第二解放エンゲルアルビオン】」を発動させた。







 蒼と【氷水天皇ザドキエル】は【黒時皇帝ザフキエル】の空間に行った。蒼は【天使エンゲリアス】を二刀所持している。

 その為、蒼の中には二体の守護天使が住み着いている。蒼は【氷水天皇ザドキエル】との対話は成功したものの【黒時皇帝ザフキエル】の対話は成功していない。


「蒼、わたくしが出来るのはあなたをここに連れて行くだけよ」

「ああ、分かってる」


 【氷水天皇ザドキエル】がそう言うと、蒼は返事をした。そして、蒼は周囲と目の前を見た。辺りは黒い空間に覆われていた、真っ黒な空間だ。

 そして、目の前に小さな少女の姿があった。髪は黒髪のツインテールであり、和服を着ていた、勝気そうな少女であった。


「お前が…【黒時皇帝ザフキエル】…」

「余に話しかけるな!余は貴様と話しとうない!大人しく、余の養分になれ!」

「それが御免だからお前と話しに来たんじゃねーかよ」

「知るか!余は貴様と協力など決してせん!もし…余の力が欲しいのなら…エリスを……返せ!!」


 【黒時皇帝ザフキエル】がそう言うと蒼は妙に納得した様子であった。


-やっぱりか…


 蒼は理解した。彼女は…【黒時皇帝ザフキエル】は本当の主の元に帰りたいのだ。エリス…その名は蒼は知っていた。メシア・エリシア…蒼の姉…の様な人だった。

 蒼より一つ年上の女性で、蒼に生き方を教えてくれた。

 蒼にとってはかけがえのない人だ。だが、今は……もうこの世にいない。彼女は元『セラフィム騎士団』の最年少のメンバーでもあった。


「お前が……お前が!!エリスを奪った!!!貴様さえいなければ…エリスは死ななかった!!」


 蒼は【黒時皇帝ザフキエル】の言葉を黙って聞いていた。そうだ、蒼は彼女を守れなかった。

 エリスは誰よりも平和を愛した天使であった。無駄な争いは決してせず、蒼に生き方を教えてくれた。


「何故だ?何故…エリスは貴様に余を託した!?余は…エリスを奪った貴様が……っ!!」


 【黒時皇帝ザフキエル】は泣いていた。蒼は目を閉じた。


「ああ、俺は…あいつを…守れなかった…いや、そうじゃない…あいつが死んだのは…俺のせいだ」


 蒼は過去の事を思い出していた。六年前のあの時を…そして、「あの女」の事も…


「貴様は…よくものうのうと余の前に現れたな…貴様は…ここで殺す!!」


 【黒時皇帝ザフキエル】は刀を構えた。


「エリスは…優しい奴だったよ…誰よりも…多分、お前にも…優しかったんだろうな…」


 蒼は目を開け、真っすぐ、【黒時皇帝ザフキエル】の方を見た。


「俺は…もう、誰も失いたくない!その為にも、お前の力が必要だ。俺に力を貸してくれ!」

「断る!!」


 蒼の言葉に耳を貸さず、【黒時皇帝ザフキエル】は向かっていった。【黒時皇帝ザフキエル】は自分の刀で蒼の心臓を貫いた。

 蒼はそもそも躱す気が無かった。蒼は【黒時皇帝ザフキエル】の刀を持ってる方の手を掴んだ。


「……」


 刀から蒼の想いが流れ込んできた。【黒時皇帝ザフキエル】はそれを見ていた。


「【黒時皇帝ザフキエル】…俺は……エリスの…あいつの想いを…無駄にしたくねぇんだ…あいつがお前を俺に託した事も…無駄にしたくねぇんだ!!」


 蒼は叫び交じりのそう言った。


「……!」


 【黒時皇帝ザフキエル】は驚いて刀を引き抜こうとしたが、蒼は【黒時皇帝ザフキエル】の手を放さなかった。


「俺は……『皆がいるこの世界が…好きだから』」

「………!」


 蒼がそう言うと【黒時皇帝ザフキエル】は動揺した。

 そう、蒼が言ったその言葉は…エリスが【黒時皇帝ザフキエル】にいつも言っていた言葉であったから…


「………ふん!」


 【黒時皇帝ザフキエル】は刀を引き抜いた。


「がはっ!」


 蒼は血を吐いたが、どうにか意識を保っていたし、立ててもいた。


「フローフル…エリスの言葉を信じてやる。貴様ではなく、エリスの言葉をだ!」

「…ああ、ありがとう」


 【黒時皇帝ザフキエル】がそう言うと蒼は礼を言った。


「取り敢えず解決したようね」

 【氷水天皇ザドキエル】が蒼と【黒時皇帝ザフキエル】の前に現れた。

「ザドキエル…」

「……」

 【黒時皇帝ザフキエル】と蒼は【氷水天皇(ザドキエル)】を見つめた。


「まったく…世話の焼ける子ねあなたは…」


 【氷水天皇ザドキエル】がそう言うと蒼は【氷水天皇ザドキエル】と【黒時皇帝ザフキエル】の関係は割と良好そうであることに驚いていた。


「【氷水天皇ザドキエル】…【黒時皇帝ザフキエル】…」

「ようやくね…ようやく、本来の力をあなたに渡せる」


 【氷水天皇ザドキエル】はそう言った。


「本来の力?」

「ええ」


 そう言って、【氷水天皇ザドキエル】は蒼の心臓に自分の刀で貫いた。

 蒼は全く痛みを感じなかった。さらに、蒼の腹に【黒時皇帝ザドキエル】が自分の刀で突きさした。


「刀を通じてあなたに伝わる事でしょう」

「エリスの事を裏切ったと判断したら、あなたを殺すんだから!」


 【氷水天皇ザドキエル】と【黒時皇帝ザドキエル】がそう言うと蒼の目の前が真っ白になった。





「【アルカディアの氷菓】」


 蒼は【氷水天皇ザドキエル】の【第二解放エンゲルアルビオン】を発動した。蒼の瞳は両目ともサファイアの様な水色になっていた。

 髪は白くなっており、全身白い衣に覆われていた。

 そして、背中には水色の翼が生えていた。今までは片方にしか翼が生えていなかったが今は両方とも生えている。

 そして、五芒星の形をした輪っかが頭上に出現していた。


「ほう…報告で見た【第二解放エンゲルアルビオン】とは随分姿が変わっているな…」


 ドラコニキルはそう言った。ドラコニキルは蒼の【アルカディアの氷菓】を映像で見た事がある。その時と筈型と雰囲気が異なっていた。


「行くぞ…」


 蒼はドラコニキルに接近した。ドラコニキルは【ペンドラゴン】で蒼に攻撃を仕掛けた。


「貴様のその【天使エンゲリアス】の力は氷の力だ!氷では炎に勝てん!」


 蒼の【氷水天皇ザドキエル】が【ペンドラゴン】の力によって黒炎に包まれた。しかし-


「何!?炎が消えただと!?」


 ドラコニキルの【ペンドラゴン】は触れたものを発火し燃やし尽くす。しかし、その黒炎は一瞬で掻き消えた。


「【聖水刃ハイリッヒネリウム】」


 蒼の【氷水天皇ザドキエル】から水が溢れ出てきた。そして、その水が巨大な刃となりドラコニキルに襲い掛かった。


「ぐぅ!!」


 ドラコニキルは【聖水刃ハイリッヒネリウム】をまともに喰らい、左肩を切られた。さらに蒼は追撃を続けた。ドラコニキルはどうにか蒼の追撃を躱し凌いだ。


「そう簡単にはいかねぇか…」


 蒼は【氷水天皇ザドキエル】構えなおした。


「……その水…ただの水ではないな…聖水か…」


 そう、蒼の使う【氷水天皇ザドキエル】は氷と聖水を使う能力だ。

 聖水はその名の通り、魔を払う力を持つ特殊な水であり、天然でも入手可能だが数が限られている貴重な物でもある。

 退魔の際に使われ、特に悪魔に対して有効な水でもある。

 聖水は霊力を吸う事で効力を発揮し、霊力が協力であればあるほど、強大な力を発揮する。


「ああ、そうだ…俺の【氷水天皇ザドキエル】は『慈愛』を司る天使だ。清めの力に長けてる」

「ふー、貴様らしからぬ力だね」

「…かもな」


 蒼はドラコニキルに接近した。ドラコニキルは【ペンドラゴン】に魔力を込めた。


「はああああああ!!【豪炎乱舞イグニス・コロナ】」


 ドラコニキルは黒炎の衝撃波を放った。黒炎は空を覆いつくし、蒼に襲い掛かる。

 その黒炎は蒼に直撃した。聖水の力を持つ蒼であるが、それでも今放ったドラコニキルの炎は中々消えなかった。


「く…【聖水刃ハイリッヒネリウム】」


 蒼は黒炎を搔き消した。だが、蒼の全身が焼け爛れていた。

 蒼は聖水を放ちながらドラコニキルに接近した。ドラコニキルも【ペンドラゴン】から黒炎を放つが全て蒼の聖水により掻き消された。


-ふー、相性が悪すぎる…


 聖水は殆どの悪魔が苦手としている。

 実際、『七魔王セブン・ドゥクス』でも、聖水に耐性があるのは聖属性の力を使うスープレイガだけだ。

 蒼は彼との戦いでは【氷水天皇ザドキエル】の【第二解放エンゲルアルビオン】を使わなかった理由は単純に相性が悪かったからだ。

 恐らく、【氷水天皇ザドキエル】で挑んでいたなら蒼はスープレイガに負けていただろう。

 そもそも、聖水を扱えるのは人間と天使のみであり、その中でも聖水を完全に扱えるのもは数える程しかいないだろう。

 ドラコニキルと蒼の攻防は続いた。接近戦は殆ど互角であった。だが、押しているのは明らかに蒼であった。そもそも、ドラコニキルは悪魔の炎を扱う。聖水を扱う蒼とは相性が最悪もいいところである。


「【聖洪水ワッサーヴォーゲン】!」


 蒼は【氷水天皇ザドキエル】から大量の聖水を発生させ、ドラコニキルを飲み込んだ。

 そして、蒼は自らが発生させた聖水に入り、聖水の力を乗せ、ドラコニキルに重い一撃を与えた。

 ドラコニキルは空から砂漠に落ちた。ドラコニキルは身体を起こそうとするも中々立ち上がれない。


「くそ…!なんて様だ……!」


 ドラコニキルは蒼の力に圧倒されていた。

 蒼も地上に落下し、砂漠に足をつけた。蒼は身体全身ボロボロであるものの、かなり余力があった。


「………」


 蒼は黙ってドラコニキルの様子を見ていた。ドラコニキルはどうにか立ち上がった。


「はぁ…はぁ…くっ…」


 ドラコニキルは再び、【ペンドラゴン】を構えた。


「【黒炎天魔剣イグニルム・グラディウス】」


 ドラコニキルの【ペンドラゴン】から今までにない黒炎を纏っていた。

 一見、大きな炎が出ていないように見えるが、魔力の密度が段違いである。ドラコニキルは蒼に接近し、刀を振り上げた。

 蒼はヤバいと思い、その攻撃を躱した。すると、蒼が嫌その場所は大地が切り裂かれ、黒炎が放たれた。周囲にあった木々や鉱物は一瞬で溶けて消え去った。

 蒼はドラコニキルに攻撃を仕掛ける。だが、【ペンドラゴン】と【氷水天皇ザドキエル】の刃が交わった瞬間、蒼の【氷水天皇ザドキエル】が砕かれた。


「な…!?」


 蒼は驚きを隠せなかった。今まで蒼は【天使エンゲリアス】を折られたことが無かった。その【天使エンゲリアス】をドラコニキルは折った。


「終わりだ!!!」


 ドラコニキルは蒼の身体を切り裂いた。今までとは比べ物にならない一撃であった。


「ぐああああああああああああああああ!!!!」


 蒼は吹き飛ばされ、さらに、蒼から黒い火柱が発生した。


「は…【聖雨ハイリッヒレーゲン】!」


 蒼は自分の周囲に【聖雨ハイリッヒレーゲン】」を発生させ、黒炎を掻き消した。

 しかし、蒼の身体は黒ずんでいた。全身が相当焼け爛れており、左目の周囲には痣が出来ていた。


「ぐ…」


 蒼は再び立ち上がった。そして、折れた【氷水天皇ザドキエル】を氷で無理やり修復した。


「氷で修復したところで気休めだ…諦めろ…」

「いいや、これで終わらせる」


 蒼は翼を広げた。


「俺の【氷水天皇ザドキエル】は氷の刀…霊力がある限り、氷で何度でも創り直せる」


 蒼はそう言って、霊力を込めた。


「【聖水十字架クヴェール・クロイツ】」


 蒼の【氷水天皇ザドキエル】は十字架の様な形なった。

 そして、蒼は【氷水天皇ザドキエル】を天に突き上げた。すると、十字架の剣の形をした【氷水天皇ザドキエル】はさらに巨大化した。


「ちぃ!」


 ドラコニキルは攻撃を躱そうとする。


「………」


 蒼は【氷水天皇ザドキエル】を振り上げた。ドラコニキルは攻撃を躱せず、直撃した。


「がっ…」


 ドラコニキルの【ペンドラゴン】は粉々に砕かれ、右半身が吹き飛んだ。ドラコニキルは城の壁に激突した。

 蒼はドラコニキルのいる方向へ歩き出した。蒼はドラコニキルのいる所に辿り着いた。


「………ま……だ……だ……」


 ドラコニキルはそう言って左手で長剣を生成しようとする。しかし、その前に【悪魔解放ディアブル・アーテル】が解けてしまった。


「………」


 蒼は黙ってドラコニキルを見ていた。そして、再び、【氷水天皇ザドキエル】を構えた。

 ドラコニキルは元に戻った長剣を杖代わりに蒼に近づいた。ドラコニキルは蒼を睨み続けていた。蒼はその眼を何よりも恐ろしく思ったのかもしれない。


-一体何が…あいつをここまで…


 蒼は疑問を浮かべていた。ドラコニキルは決して好戦的という訳ではない事は蒼もなんとなく分かっている。何か目的があるようにも見えなかった。

 にも拘らず、何故そこまでドラコニキルを動かしているのか、蒼は分からなかった。

 蒼が疑問を浮かべていると蒼の後ろから足音が聞こえた。


「ドラコ…もう…止めて…」


 その足音は蒼を通り過ぎ、ドラコニキルの目の前にいた。ラナエルだ。ラナエルは泣きながらドラコニキルに嘆願した。


「お願い…ドラコ…これ以上…無理しないで…!」

「……!」


 ドラコニキルは目を見開いた。そこにいたのはドラコニキルが知っている小さくて弱い少女の姿ではなかった。


-そうか…俺が見ない間に…


 ドラコニキルはそのまま気を失った。






 ドラコニキルはごく平凡な村に生まれた。

 貧乏ながらも平穏に暮らせていたからドラコニキルは満足だった。平穏に生きる、ドラコニキルはそれ以上の事を求めなかった。

 同じ村に変わった者が住んでいた。同じ悪魔だった。名前はラナエル・ミュウ。ドラコニキルと彼女が出会ったのは村でたまたますれ違っただけ…特別な出会い方はしておらず、ごくごく普通の出会いであった。

 二人はすぐに仲良くなった。しかし、ラナエルは忌み子と言われていた。ラナエルは村を転々と回っていたそうだ。その理由はラナエルがいると大災害が起こるかららしい。

 ラナエルは村の隅っこで暮らしていた。ラナエルの両親はこの村に辿り着いた時に亡くなった。身体が弱かったようだ。

 だが、ドラコニキルは酔狂な人物であった。そんなラナエルと普通に接していた。

 ドラコニキルは一人で暮らしていた。両親は物心つく前に亡くなっていた。理由は分からない。興味もなかった。

 だが、ドラコニキルはラナエルに対して妹のように接した。本当の…妹のようだった。


 しかし、しばらくして、村はかつてない災害に襲われた。

 突然、村に大きな竜巻が発生し、村を焦土に変えてしまった。生き残っていたのはドラコニキルとラナエルだけ…

 ラナエルとドラコニキルは二人で旅をした。

 だが、ラナエルと一緒にいるだけで、周囲に落雷が落ちてきたリ、巨大な砂嵐に襲われたりとラナエルと一緒にいるだけでドラコニキルは災害に巻き込まれた。そして、何故か、ラナエルだけ災害の被害を全く受けない。


「私…いない方がいいのかな?」


 ラナエルがそう言い出した。


「いや、お前は自分の力を制御できてないだけだ…大丈夫だ、俺が何とかする」

「……」


 ドラコニキルはそう言うがラナエルは黙っていた。


 やがて、ラナエルはドラコニキルを置いてどこかに行ってしまった。

 自分の力でドラコニキルを巻き込みたくなかった。だからこそ、ラナエルは一人で彷徨う事を決めた。

 ドラコニキルはとても悲しんだ。自分の…妹のような存在が…突然いなくなってしまった事を…そして、ドラコニキルは完全に平穏な暮らしが出来なくなっていた。

 ドラコニキルは当てもなく旅をしていた。その時、カーシスと出会った。ドラコニキルはその時、「USW」のテロリストの起こした事件に巻き込まれ、一人でテロリストを全滅させた。カーシスとはその時に出会った。


「やあ、私と共に来ないか?」


 カーシスがそう言うとドラコニキルは考えた。そして-

 ドラコニキルは『アンタレス』に入隊する事に決めた。そして、自身が取り戻す事を望んでいた平穏な暮らしも出来ていた。だが、それでもラナエルの事が気がかりだった。

 ドラコニキルはラナエルの居場所を調べた。そしてその消息が掴めた。その時ラナエルは自分とどら鬼キルガ住んでいた村に戻っていた。

 ラナエルは村の跡地を見に行ったのだ。




「ひどい有様…わたしのせいなんだよね…」


 ラナエルは村の跡地を見て悲しんだ。


「ラナエル!」

「!」


 ラナエルは後ろを振り返った。そこにいたのはドラコニキルであった。


「ドラコ…」

「ラナエル…やっと見つけた…五年ぶりだな…」

「来ないで…!」

「ラナエル…」


 ラナエルはドラコニキルを拒絶した。


「お前は俺が何とかする!頼む、俺と来てくれ!俺は『アンタレス』に所属してる。そこでお前を保護して貰えば…」


「わたしのせいで大勢死んだ!これ以上、ドラコを巻き込めない!わたしは…一人で生きていくの!!」


 そう言ってラナエルはドラコニキルの元へ去った。それ以来、二人が会う事はなかった。

 ドラコニキルはずっと後悔していた。あの時、ラナエルを無理にでも引き止めれなかった事を…





「ドラコニキルは…大丈夫か?」


 蒼はラナエルに尋ねた。


「うん…取り敢えず…大丈夫…身体も修復したし……蒼……本当はね…わたし…ドゥームに会う為にここに来たんだ…」


 ラナエルはそう言った。


「え?」

「わたし…自分の力を制御できるようになって…こうやって誰かを助ける為の力も手に入れた。ドゥームと離れて五年間…わたしは色々なものを見たんだ…だから…ドゥームはね、わたしの事を心配してくれてた…だから、謝りたかったんだ…」

「だから、俺について来たのか…」

「うん、蒼は優しいから…」

「…そんな事…ねぇよ…」


 蒼はラナエルの気持ちを聞き、少し納得した。ラナエルはドラコニキルの治療を一先ず終えた。


「次は蒼だぞ…」

「ああ、頼む」


 ラナエルはそのまま蒼を治療した。



「………」


 ドラコニキルは目を開けた。


「よう、起きたかよ…ドラコニキル」


 蒼がドラコニキルに声をかけた。


「時神蒼」


 ドラコニキルが蒼の名を呼ぶ。


「ドラコ~~~~!!」


 ラナエルはドラコニキルの抱きついた。


「痛えええええええ!?ってラナエル…」


 ドラコニキルは絶叫した後、ラナエルの名を呼んだ。


「二人の会話の邪魔して悪いが…ドラコニキル…てめぇに聞きたいことがある。慧留のいる場所を聞きたい」


 蒼がドラコニキルに質問をした。


「俺が嘘を言う可能性があるぞ」

「いいから答えろ…」


 蒼がドラコニキルをまっすぐ見た。やがて、ドラコニキルは息を吐き、話し出した。


「月影慧留は本城の地下牢に幽閉されている」

「本城ってどこだ?」

「さっき俺と貴様があった場所が本城だ」

「そうか…分かった」

「本当に信じるのか?」

「嘘なのか?」

「いや、嘘ではないが…」

「分かった。じゃあ、俺はもう行く。ラナエル、ここでお別れだ」


 蒼がそう言うとラナエルはお礼を言った。


「うん、ありがとう、蒼。またいつか」

「ああ、また会おう!」


 蒼はそう言うと本城に向かった。


「ふー、行ったか…あのバカが…気を使ったつもりか…」


 ドラコニキルはそう言った。蒼はドラコニキルとラナエルを気遣ってさっさと一人で向かっていったのだ。


「あの…ドラコ…五年前の事はごめんなさい…あなたはわたしを心配してくれてたのに…」


 ラナエルはドラコニキルに頭を下げ、謝った。ドラコニキルはラナエルの頭を撫でた。


「…気にしてないよ。こうやって、わざわざ謝りに来てくれたんだ。もう、いい」


 ドラコニキルはそう言った。








「ここが地下牢か…」


 蒼は本城の地下牢にいた。一通り探し回ったが慧留の姿は見当たらなかった。


「ドラコニキルが嘘をついてるとは思えなかった。てことは、どっかに移動させられたのか」


 この地下牢は相当広かった。蒼が澪としている可能性もあったが、今の蒼は感知能力は人並み程度にはついている。ここら一帯を探しつつ、霊力を探った。しかし見つからない。


「一体どこに…」


 蒼がそう言った瞬間、蒼に頭痛が襲いかかってた。

 そして、慧留の気配を察知した。だが、妙な感じだった。蒼は慧留は「今はこの世界にはいない」気がした。だが、蒼は慧留の気配のする方向へ向かっていった。

 地下牢の奥にさらに、見えない扉があった。


「何だこれは?」


 蒼は扉を刀で切り裂き、先に進んだ。


「何だこれは!?」


 蒼は辺りを見回した。周りの景色が非常に幻想的だったからだ。まるで宇宙空間の様な景色であった。


「そうか…とうとう、ここまで来たか…トキガミアオ」


 声が聞こえた。聞き覚えの無い声だった。


「誰だ!?」


 蒼は目の前にいる人影を見た。声の主は間違えなくその人影であった。


「やあ、私は…カーシス・ベルセルク」


 蒼はその男を見た。蒼がかった黒髪と黒い法服を纏ってた。不気味な雰囲気を纏っている男であった。


「あんたが…「USW」光明庁長官…」

「私の事を知っているのかね?」

「逆にアンタの事を知らねぇ奴の方が珍しいが?」


 蒼はそう言った。実際、光明庁は「USW」の中でも有名であり、カーシスの事は世界中が知れ渡っている。


「それもそうか…で?何の様だい?」

「んなもん決まってんだろ?慧留を返せ!」

「心配しなくていい。いずれ戻ってくる」

「何だと?」

「それまでここで待つといい」

「ふざけんな!てめぇを倒して力尽くで吐かせてやる!」


 蒼は【天使エンゲリアス】を抜いた。


「ふ…まぁ、そう言うな、トキガミアオ、いや、フローフル・ローマカイザー」


 カーシスはそう言った。すると、蒼は驚いた顔をした。


「!?お前…何で俺の名を…」

「ああ、知っているとも。君は神聖ローマの第四皇子にして、現皇帝陛下、ルミナス・アークキエル・ローマカイザーの実の弟だという事をね」

「な!?」


 蒼は絶句した。カーシスは全てを知っていたのだ。蒼の素性を…


「君とエル・マクガウェインには注目していた。≪特異点≫としてね」

「≪特異点≫?」


 蒼は疑問を浮かべた。


「そう、今の時代は世界の転換期と言える。何故なら、≪特異点≫が三人も存在しているのだから…私は三百年ほど生きているがそんな事は無かった。何か意味があるのかもね」

「三百年?あんた…本当に人間か?」

「ああ、人間だとも。どこにでもいる、ありふれた普通の人間さ」

「アンタ…何者だ?」


 蒼が尋ねるとカーシスはニヤリと嗤った。


「隠す必要もないか…私のカーシス・ベルセルクは偽りの名だ。本当の名は…クリフォト・ユールスナール」

「………」

「あまり驚いているようには見えないね」

「ああ、アンタは得体が知れなすぎる。なんか納得しちまったわ。大方、アンタは四宮さんと同じ、悪魔と契約して長寿になってる。そうだろ?」

「ご名答。意外と鋭いね」


 カーシスが愉快そうに嗤った。


「あんたは「USW」の創始者だろ?そんなアンタが…何を企んでるんだ?」

「さぁね…」


 カーシスとぼけたような返事をした。


「そうかよ…」


 蒼はクリフォトに【天使エンゲリアス】を向けた。


「はぁ…さて、始めようか…しばらくの間、足止めさせてもらうよ…」


 クリフォトはそう言って双剣を虚空から取り出した。


「【悪魔ソロモン】か…」

「ああ、まぁ、私のは普通の【悪魔ソロモン】とは異なるがね…」


 そう言ってクリフォトは目が赤くなった。そして、背中から巨大な翼が生えてきた。そして、背中から血が噴き出してきた。


「悪魔と契約を交わした代償か…」


 蒼はそう呟いた。今のクリフォトの姿はおぞましい姿であった。まさしく、悪魔のそれであった。


「行くよ…【アンタレス】」





 To Be continued


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