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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第三章】USW進攻篇
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【第三章】USW侵攻篇ⅩⅦー狂った嫉妬者(インビディア)ー

「そう?まだ気を抜いていい状況ではないと思うのだけれど?」


 アルビレーヌはそう呟いた。


「?何を…?」


 遥は疑問を浮かべた。すると、水の量が増えていることに気付いた。


「【無限水牢インフニトゥーム・カーセル】」


 アルビレーヌは自分事水の結界に閉じ込めた。


「が…」


 遥は息苦しさを感じていた。

 水の中では呼吸が一切出来ない。

 速めにケリをつけないと遥は負ける。遥は【無限水牢インフニトゥーム・カーセル】から抜け出そうとするが外に出ようとしても距離が縮まらない。


「無駄よ…この牢獄から抜け出すには私を倒すしかない。お仲間も一緒に水牢に入っちゃってるわよ…速くしないとその子も死んじゃうかも」


 アルビレーヌが言うと遥は薊の方を見た。

 確かに、水牢に入ってしまっており、このままではまずい。


「行くわよ!」

 アルビレーヌは遥に突進した。

 スピードが先ほどより桁違いに上がっていた。

 水の中は彼女の領域テリトリーだ。

 速力がアルビレーヌに軍配があるのは当然と言えた。

 逆に遥の動きは鈍っていた。

 遥の身体はアルビレーヌの【水泡死鎌スクマーテルア・ゴルドレーザー】により、切り刻まれた。

 攻撃力も先ほどより格段に上がっていた。


「く…が……がはっ!」


 遥は身体を切り刻まれているだけでなく、呼吸も限界に近づいていた。

 息の苦しさが時間が経つにつれ増していった。


-水の中だと音はよく通る筈……!


-【サウンドミサイル】


 遥は【サウンドミサイル】を放った。

 すると、【サウンドミサイル】は今までとは比べ物にならない速さでアルビレーヌに直撃した。


「ぐ…!あらら…水の中で有利なのは私だけではないという訳ね…まぁ、終わりだけどね!!」


 アルビレーヌはそう言うと姿が掻き消えた。

 【水光フラッシュアクア】だ。

 身体を分子レベルにまで分解させ、遥の元に近づき、確実に仕留めるというのがアルビレーヌが今やろうとしていたことだ。


「終わりよ!」


-そう来ると思ったわ…!【騒音指鳴サウンドスナップ】!


 遥は指をパチンと鳴らした。

 その瞬間、巨大な爆音がアルビレーヌに直撃した。

 水の中では音が伝わりやすい。

 普段の何倍もの【騒音指鳴サウンドスナップ】がアルビレーヌを襲った。


「くぅ!!」


 アルビレーヌはあまりの騒音に身体を怯ませた。その隙を遥は逃さなかった。


-【慟哭どうこくのシンフォニック・アレフ】!


 音の竜巻が発生した。

 ここは水の中なので瞬く間に巨大な水の渦となり遥事巻き込み、アルビレーヌを襲った。

 【無限水牢インフニトゥーム・カーセル】が完全に解かれた。


「はぁ…はぁ…」


 遥は片膝を着いた。もう立てるほどの体力は残っていなかった。


「く…」

 アルビレーヌも相当消耗していた。

 全身を音の攻撃により、切り裂かれており、さらに、耳からも出血が見られた。

 だが、遥と違い、まだ余力があるようだった。


「くそ…!ここ…まで…ね……」


 意識絶え絶えの遥がそう言った。


「まさか…ここまで…やるとはね…けど、もう終わりよ…」


 アルビレーヌは遥に近づいていった。

 【水泡死鎌スクマーテルア・ゴルドレーザー】で遥に津止を刺す気だ。


-身体が……動かない……


 遥は身体を動かそうとするが全く動かなかった。

 このままではやられてしまう。


「終わりよ!」

 アルビレーヌがそう言うと後ろから矢が飛んできた。

 アルビレーヌはそれを感知し、【水泡死鎌スクマーテルア・ゴルドレーザー】でそれを弾いた。

 矢を撃ったのは薊だった。


「はぁ、はぁ…」


 薊は生き絶え絶えながらも矢を放っていた。


「……まだ、動けて…」


 遥はアルビレーヌが薊に気を取られている隙に最後の力を振り絞った。


「【サウンド……ミサイル】……!」


 遥は【サウンドミサイル】を放った。

 アルビレーヌは反応が遅れ、直撃した。


「ぎゃふ……!」


 珍妙な声を上げてアルビレーヌはそのまま倒れた。


-嘘…?この私が……負け……


 アルビレーヌの意識はそこで途絶えた。

 そして、それを見た瞬間、遥と薊も力尽き、意識が途絶えた。






-別に何かが欲しかったわけじゃない。私は…羨ましかった。貧しくても些細な幸せを得ていた者たちを…

 アルビレーヌは悪魔の中でも貴族として生まれた。

 家は厳しく、なまじ、自身には悪魔としての才覚もあったため、周囲に期待と嫉妬が寄せられていた。

 アルビレーヌ自身はとても苦痛だった。

 「USW」では人間と魔族関係なしに教育を受ける義務があり、高校までは必ず行かねばならない。

 大学は限られた優秀でかつ金持ちしか行けなかった。

 アルビレーヌはまさに文武両道と言えるほどの優秀な悪魔であった。

 しかし、優秀な成績を残しても褒められず、ミスをすれば家族や親族からも蔑まれ、自由などどこにもなかった。

 子供の頃も、自身の強大な力により嫉妬を生み、いじめにもあっていた。

 いじめの内容もひどい者であり、バケツのトラップが仕掛けられていたり、机をボロボロにされていたり、集団で暴行されたりしていたりなどとにかくひどいものであった。

 アルビレーヌはその辛い生活から耐え続けていた。

 たった一人で…彼女に味方はいなかった。

 月日が経つにつれ、アルビレーヌの心は荒んでいった。

 そして、どうして自分だけ?と考えるようになっていった。

 アルビレーヌは頭の中に大量の負の感情が溜まっていた。


 【死ね!!】  【馬鹿者!!】 【お前なんか消えればいい】  【屑が!!】【新で詫びろお!!】


   【これくらいできて当然だ…うぬぼれるなバカが…】 【お前なんかいなくなればいい】


【あ、ごめんごめん、その机は誰も座る人いないと思ってたからwww】


                   【あ~、もう無理こっち来んな消えろ】


         【お前の居場所なんてどこにもねぇんだよば~か!】


-止めて…止めてよ…


 家族や親族の教育もエスカレートしていった。

 アルビレーヌは非常に優秀であった故のエスカレートであった。

 しかし、それでも親は彼女に対して冷徹に振舞い続けた。

 アルビレーヌは限界が来ていた。



 ある日、アルビレーヌは学校の帰りに少年と少女を見かけた。

 アルビレーヌはなんとなくその少年少女たちを追っていった。すると、村に着いた。

 「USW」にはいくつか村が存在するのだが村に住んでいる者は皆貧困の者たちである。

 「USW」の七割以上は都会であり、一定の地位についている者はここで住んでいる。

 残りの三割は貧困層である。この三割の土地は全て小さな村で構成されている。

 アルビレーヌは村に来るのは初めてであった。


-村か…さぞ貧しく辛い生活をしてるんでしょうね…


 アルビレーヌはそう思った。

 だが、アルビレーヌは村の周りを見た。

 貧しい暮らしではあるが遊んでいる子供たちは楽しそうであった。

 大人たちも畑仕事で辛い筈なのにどこか満ち足りた顔をしていた。

 家族たち皆が…いや、村全体が一つの暖かな家族のようであった。


「はあ?」


 アルビレーヌは素っ頓狂な声を上げた。

 自分は貴族だ。自分の方がいい暮らしをしている筈だ。

 いや、そうでなくてはならない筈だ。

 なのに何故、ここにいる者たちはこんなに幸せそうなんだとアルビレーヌは思った。

 アルビレーヌは怒りがこみ上げてきた。

 いや、もしかしたら嫉妬していたのかもしれない。

 暮らしが不自由でも、些細な幸せを得ているこの村を…そして、裕福な暮らしをしている筈なのに満たされない自分自身が惨めに思えてきた。


-…殺そう……壊しちゃおう…


 アルビレーヌは虚ろな瞳になり、自身の【悪魔ソロモン】の力を行使した。

 【悪魔ソロモン】は悪魔であればだれもが持っている物だ。

 だが、普段は【悪魔ソロモン】の使用は法律で禁止されていた。

 しかし、アルビレーヌはそんな事どうでもよかった。

 とにかく壊したかった。壊したくて壊したくて仕方なかったのだ。

 アルビレーヌはこの時、壊す事しか頭になかった。

 アルビレーヌは自身の【悪魔ソロモン】である、【人魚妃姫レビィ・ア・タン】を使い、村を大洪水に陥れた。


「うわああああああああ!!!」

「なんだこれはあああ!!!」


 村の人たちが叫ぶ。

 しかし、アルビレーヌはその恐怖の声がとても心地よかった。

もっと聞きたかった。

 アルビレーヌは逃げ惑う村の者たちを自身の鎌である、【水泡死鎌スクマーテルア・ゴルドレーザー】で切り刻んだ。

 ある者は首を吹き飛ばし、ある者は上半身と下半身を真っ二つにし、とにかくむごたらしい殺し方をしていた。


「やめて…助けて…」


 アルビレーヌは命乞いをする者も問答無用で殺した。

 大人だけでなく、幼い子供にまで手を出していた。


「ははははははははははは!!!死ね死ね死ね死ね!!!死ね!!!!死ね!!!みんな死ねええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」


 アルビレーヌは狂ったように叫んだ。

 やがて、村は赤く染まり果てた。

 アルビレーヌはすっきりしたような顔をした。

 だが、どこか悲しげであった。雨が降り出した。

 その雨がアルビレーヌを虚しい気持ちにさせた。




 その後、アルビレーヌは『アンタレス』により、身柄を拘束された。

 『アンタレス』の者がアルビレーヌを発見し、その村の惨状を間の当たりにした。

 アルビレーヌがやったことは明白であり、捕えようとした。だが、

 しかし、アルビレーヌの力は凄まじく、並の兵隊では歯が立たなかった。

 当時『七魔王セブン・ドゥクス』のリーダーであるシェパード・キルガたちを動員させた。

 『七魔王セブン・ドゥクス』の半数がアルビレーヌによって殺された。

 多くの犠牲によってアルビレーヌを拘束することに成功したが、『アンタレス』の被害は甚大であった。

 アルビレーヌの両親はアルビレーヌを捨て、逃亡を図ろうとしたが、すぐに捕まり、アルビレーヌと同様、拘束された。

 アルビレーヌの出生や生活環境を調べた光明庁はアルビレーヌは家庭環境による精神的負荷によって凶行に走ったと判断。

 光明庁長官であるカーシスはアルビレーヌの両親には終身刑を言い渡した。

 そして、カーシスはアルビレーヌと面会をすることにした。


 アルビレーヌは全身を拘束されていた。

 万が一、カーシスに何かあればこの国が滅びかねない。

 それを防ぐために、アルビレーヌを拘束したのだろう。

 カーシスとアルビレーヌの間にはバリケードも張られていた。かなり用心深くしていた。

 そもそも、カーシスがアルビレーヌと面会をしたいと持ち出した時は向こうも猛反対をしたが、カーシスが無理矢理押し通した。

 このような状況になるのも仕方ないと言えた。


「やぁ、アルビレーヌ・マジェルタスク君。気分はどうかな?」


 カーシスは笑顔でアルビレーヌに話しかけた。

 アルビレーヌはカーシスから目を逸らした。


「……」

「う~ん、まぁ、いいか。私が君に面談を持ちかけたのは他でもない。君にお願いがあってね…」

「………お願い?」


 アルビレーヌはカーシスの言葉に驚いていた。


「ああ、君のお陰で私の…いや、「USW」の最高戦力である『アンタレス』の『七魔王セブン・ドゥクス』が半数以上殺されてしまってね…まぁ、ちょうど『七魔王セブン・ドゥクス』は世代交代させようと考えていたんだが…君に『七魔王セブン・ドゥクス』の一人になって欲しい」

「な!?」


 アルビレーヌは驚きを隠せなかった。

 カーシスは犯罪者相手に自分の仲間になれと言ってきたのだ。驚かない筈もなかった。

 『アンタレス』に捕まった時、アルビレーヌは死も覚悟していた。それなのに…


「その為に君の罪を全て君の両親に擦り付けたんだよ…いやぁ、苦労したね…なんせ、マジェルタスク家と言ったら「USW」の上級貴族だ。そんな権力を持つ者に君の罪を擦り付けるのに苦労した…いくら、彼らが君に虐待をして精神的に追い込んでいたことが原因とはいえ、地位の高い人間を失墜させるには苦労するモノなのだよ…」


 カーシスがやれやれといった感じでそう言った。


「だからあなたに仕えろと?」

「そうだ。君は私がいなければ死んでいたか、一生牢獄の中だ。だから私に従え」


 カーシスは尊大な態度でアルビレーヌにそう言った。


「…私は死んでも良かったんです…だから、もういいですよ…殺すなり、一生牢獄に入れるなり好きにしてください」

「いいや、君は私の配下になってもらう。これは決定だ。拒否権は君には無い」

「何で…そこまで?私に力があるからですか!?」

「ああ、その通りだ。だが、もう一つ理由がある。それは君は必ず私に従うからだ」

「何をバカな…むしろ私は暴走する可能性があるのでは…」

「直に分かるさ…私の言葉の意味を」


 カーシスはそう言って立ち上がった。


「一週間後、向かいに来るよ。ではまた」


 カーシスはそのまま出て行った。


「くそ!!舐めやがって…あいつ…私があんな奴に…」


 アルビレーヌはそう叫んだ。

 しかし、アルビレーヌはそう言いながらも涙を流していた。


「…どうして?何で泣いてるの?嬉しい…筈…無いのに…」


 そう、アルビレーヌが流した涙は嬉し涙であった。

 アルビレーヌは自分が形はどうあれ必要とされた事に嬉しさを感じていたのだ。

 アルビレーヌはしばらくの間、泣いていた。




 一週間後、アルビレーヌは釈放された。

 カーシスの後ろにアルビレーヌは付いて行っていた。

 そして、牢屋を抜ける時、両親と会った。


「貴様のせいで私は終わりだ…」


 アルビレーヌの父がそう言った。


「親をこんな風にするなんて…この親殺し!」


 アルビレーヌの母がそう言った。


「………」


 カーシスはアルビレーヌをじっと見つめていた。


「私は…お前らをこうやって見下ろす事を望んでいた。お前らを殺したくて堪らなかった。けど、お前らのそのみすぼらしい姿を見て満足したわ…カーシスには感謝しないとね…」


 アルビレーヌがそう言うとカーシスはニヤリと嗤った。


「では、行こうか、アルビレーヌ。私たちが…『アンタレス』が君の新たな家族だ」


 カーシスは歩を進めるとアルビレーヌはそれについていった。



 アルビレーヌは自由を手に入れた。

 カーシスに外出の許可を取ることも珍しくなかった。

 カーシスはアルビレーヌの外出許可をすぐに快諾した。

 アルビレーヌは色々な場所をフラフラする事が好きになっていた。

 自分は自由になったという開放感を得る事が出来るからだ。

 しばらくして、新『七魔王セブン・ドゥクス』の顔合わせが行われた。

 アルビレーヌは対して興味が無かったので適当にやり過ごそうと思った。

 アルビレーヌは全員揃ってもそこら辺をグルグル歩いてた。それだけで落ち着いた。

 しかし、ドラコニキルが殺気を出すと、アルビレーヌは流石に動きを止めた。


-前のリーダーとは全然違う…


 アルビレーヌはそう思った。アルビレーヌはすぐにドラコニキルの指示に従った。



 顔合わせが終わり、アルビレーヌは真っ先にドラコニキルに話しかけた。

 カーシスのお気に入りであるという事を本人から聞いたからだ。少し興味があった。


「ねぇ、アンタ…」

「…アルビレーヌか…何だ?」

「カーシスとはどういう関係なの?どういう風に知り合ったの?」

「カーシス様と呼べ」

「カーシスでいいって本人言ってるから嫌よ」

「…まぁ、いい。話す程でもない。拾われた、それだけだ。お前も似たようなもんだろ」

「私の事は知ってるんだ…」

「まぁ、俺はリーダーだからな。メンバーの事は把握しとかないといけないのさ」

「テキトーそうに見えてマメなのね」

「いや、適当だよ?最低限の事をしてるだけさ」

「ふーん、変なの」

「それがリーダーというものさ」

「そっか…」


 アルビレーヌは話が一通り終えると「またね」とドラコニキルに言い、去って行った。


「変な奴」


 ドラコニキルはそう呟いた。



 アルビレーヌは別に話す事が嫌いではなかった。

 むしろ好きな方である。

 恐らく今の『七魔王セブン・ドゥクス』の中では一番対人能力が高いだろう。

 アルビレーヌが最も『七魔王セブン・ドゥクス』に溶け込めていた。

 あの性格に難のあるスープレイガですらアルビレーヌにだけは普通に話せていた。


「スープレイガさ~、もうちょっと仲良くやろうよ~」


 アルビレーヌがそう言う。


「ウルセー、話しかけるな。俺はお前が苦手って何べんも言ってるだろ?」


 スープレイガはそう言っているがスープレイガが『七魔王セブン・ドゥクス』内でまともに話せているのはアルビレーヌだけだ。

 他の『七魔王セブン・ドゥクス』に対してはスープレイガはロクに会話をしなかった。


「う~ん、でもドラコからスープレイガとまともに会話できるのお前だけだから何とかしてくれって言われてるし…」

「ドラコニキルの野郎…」


 実際、アルビレーヌ以外の『七魔王セブン・ドゥクス』はスープレイガと話す事すら出来なかった。

 大抵はスープレイガは無視をしていた。

 だが、アルビレーヌだけは無視しても全く引かなかった。

 というかいつの間にか会話してることが多く、心の中を見透かされてるようだった。

 スープレイガはそんなアルビレーヌを若干気味悪がっていた。

 スープレイガがアルビレーヌの事が苦手な理由がまさしくそれであった。


「レイはさ、どうしてそこまで戦いを求めるの?」

「ウルセー!てめぇに言う義理はねぇよ!」

「じゃあ、私の事ちょっと話すね。私はさ、両親がめっちゃひどい人でさ。虐待されてた」

「……」


 アルビレーヌが話し始めるとスープレイガは黙って話を聞いていた。

 彼が人の話を聞くことはまずない。

 にも拘らずスープレイガは聞いていた。


「私も戦いは好きだよ。あなたほどじゃないけど、自由を得る為に戦いは必要なものだし、勝つと相手に対して征服感を持てる。相手の事を支配したと思える」

「は…自分は自由を求めてる癖に他人を支配する事も好むか…あんた勝手な奴だな」

「うん、私は勝手で嫉妬深い悪魔だよ…私より幸せな人は許さない。だから、私は一つの村を滅ぼした。とても幸せそうだった。自分は親に虐待され、いじめもあってたのに…それが許せなくてね…」

「………」

「カーシスはそんな私を導いてくれた。嫉妬深くて罪深い私を…私が戦う理由は…今はそれかな」

「そうかよ…俺は親に捨てられたからな…お前の事は分からん」

「そっか…」


 スープレイガはアルビレーヌが黙ったことで落ち着かなくなり話し出した。


「…俺はコロシアムで育てれた。そこでは勝つことが全てで勝たなきゃならなかった。頂点に立つには勝つしかなかった」

「…それが…戦う理由?」

「…かもな…勝つ事でしか喜びがねぇ…」

「そっか…やっぱレイは私と似てるね」

「……なんでそう…………!」


 スープレイガは自分の事を話していた。

 その事を自覚した瞬間、アルビレーヌに乗せられたと思った。


「?どうしたの?」

「てめぇ………」


 スープレイガは顔を真っ赤にして去って行った。


「…変なの?」


 アルビレーヌはそう呟いた。



 それから孤立気味であったスープレイガはどうにか最低限の会話ができるようになっていた。

 それでも若干浮いてはいたが…(というか、今の『七魔王セブン・ドゥクス』は協調性がほぼ皆無であり、スープレイがはその中でも特にひどかったというだけで他の『七魔王セブン・ドゥクス』たちも大概であった)


「助かったよ、アルビレーヌ」


 ドラコニキルがそう言った。


「…別にいいわよ…私何もしてないし」


 アルビレーヌはそう言った。

 実際、アルビレーヌ自身、何故、スープレイガの態度が軟化したのか分かっていない。


「ああ、その事だが…」


『スープレイガ…どういう風の吹き回しだ?他の奴らと話せてたじゃないか』


 ドラコニキルがスープレイガに質問をした。


『あんま孤立すると…あの女が突っかかってくる』


 スープレイガは真顔でそう答えた。


「…だそうだ」

「何それ?」


 アルビレーヌは微笑を浮かべそう言った。

 アルビレーヌは自分の居場所を見つけられた気がした。

 だからこそ、カーシスのは感謝している。だからこそ、アルビレーヌは戦う事を決めた。








 アルビレーヌは意識を取り戻した。

 身体は傷だらけで耳からも血が出ていた。

 アルビレーヌは遥との戦いで負けたのだ。


「そっか…負けたか…私は……」


 アルビレーヌは寝転んだまま辺りを見回した。

 遥と薊が倒れていた。しかし、アルビレーヌは動けそうになかった。


「…さて…どうなるのかな~?これから」


 アルビレーヌはそう呟いた。

 アルビレーヌは周囲の魔力を調べた。残っているのはドラコニキルだけだった。


-ドラコ…後は任せたわよ。


 アルビレーヌはそう言って再び意識を失った。




 舞と屍は倒れてる遥と薊を発見した。

 その後、治療をし、遥はすぐに意識を取り戻したが、薊は気絶したままだった。


「屍と四宮先生…何で四宮先生まで…」

「まぁ、色々あってな…天草と音峰は常守と霧宮と合流しろ。私は蛇姫の容態を診る。かなりの重症じゃ…妾も集中したい」

「薊…」


 屍が薊の名を呼んだ。


「何じゃ?心配なのか?薊の事が?」


 舞は意地悪そうに屍に言った。屍は「な!?」と言った。


「…まぁ、心配するな…必ず助ける。先に行け」

「分かりました。行くわよ!屍!」


 舞がそう言うと遥が屍の手を掴み、走って行った。




 遥と屍はアルビレーヌのいた宮殿を抜け、夜の砂漠を走っていた。


「………」

「心配なの?」


 黙り込んでいた屍に遥が話しかけた。


「まぁ…な…」

「まぁ、あなたは薊との付き合い長いものね…心配もするか…でも、信じましょ!」

「ああ、そうだな」

「今日のあなた…いつもより張り合いないわね…」


 遥はいつもより元気がない屍に対し調子が狂うなと思った。


「…月影と時神には……感謝してるんだ…あいつらは俺たちを助けてくれた」

「…」

「だから、俺は決めたんだ!俺たちを助けてくれたあいつらを助けるってな!」

「…そうね、行きましょう!蒼たちを助けに」


 遥と屍はそのまま蒼のいる城に進んでいった。





「ここも、騒がしくなってきたな…」


 地下の祭壇でカーシスはそう呟いた。

 蒼がここに近づいている事にカーシスは気付いていた。


「トキガミアオ…やはり君は私の最大の障害になり得るか…それとも…」


 カーシスは慧留だけでなく、蒼にも注目していた。

 彼の特異な力を…


「ふ…まさか、同じ場所に≪特異点≫が二人も集結しているとはね…」


 ≪特異点≫とはこの世界から外れた存在である。

 この世界には運命の流れというものがあり、その流れを世界が流れる事によって世界を維持している。

 だが、どの世界にも異端者は存在する。

 例外が存在しない事などありはしないのだ。

 この世界から外れた存在である≪特異点≫が時神蒼と月影慧留だ。

 だが、カーシスは二人が≪特異点≫であると気が付いたのは最近の事だ。

 カーシスはずっと、≪特異点≫を探していた。

 この世界を変えるキーマンとなり得るからだ。

 しかし、カーシスは蒼を利用する気はなかった。

 何故なら彼は灰色だ。彼は何物にも染まらず、そして、染めない中立ニュートラルな存在であるからだ。

 しかし、慧留は違う。

 慧留は蒼には無い特別な力を持っている。

 そう、慧留には「ある素質」がある。


「彼女こそが相応しい」


 カーシスが言っている意味が何なのか…それはカーシスとアンタレスしか、分からない。


【とうとうこの時が来たのね】


「ああ、そうだ。とうとうこの時が来た」


 カーシスは「声」の主が誰か知っていた。

 原初の悪魔、アンタレスだ。


【我々の願いが叶うまで…もうすぐという訳か…】


 アンタレスはそう言った。

 声だけなので表情は読み取れなかったが嗤っているように聞こえた。


「この世界は…歪だ…」


 カーシスはふとそう思った。

 だが、カーシスにとって世界の行く末などに興味はない。

 彼が求めるものは…自分が生きている意味。


「私はようやく…私自身の生きる意味の答えに辿り着ける。長かった…三百年待った」


 カーシスはそう呟いた。

 いや、カーシス・ベルセルクという表現の仕方は間違いなのかもしれない。

 何故なら、それは彼の本当の名前ではないのだから。

 原初の悪魔、アンタレスを従え、三百年以上生き続けており…そして、自分の生きる意味を延々と求め続けている男…そう、彼の名は…


「私はクリフォト・ユールスナール。この世界を生きる罪人さ」


 カーシス…いや、クリフォトは自身の本来の名を口にした。

 クリフォトは悪魔と最初に契約を交わした人間だ。

 それはとても罪深い…故にクリフォトは一部からは『原罪者』と呼ばれていた。実際、彼は罪を犯し続けた。

 彼は悪魔の魅力に溺れ、その為に力を喰らい生きながらえ続け、自身は選ばれた人間だと驕り、悠久の時を気ままに過ごし、この世界に対し嫉妬し、自身の生きる意味を見出す事に非常に強欲であり、それを邪魔する者には怒りの裁きを与えた。

 そう、クリフォトは七つの罪を全て犯している、名実ともに『原罪者』であった。

 彼ほど罪深いものは果たしている者だろうか?


「私の元に来れるものなら来い…トキガミアオ…私の最大の障害になる貴様は何が何でも消し去ってやろう」


 クリフォトは嗤いながらそう言った。そして、いつまでも嗤い続けた。






 ドラコニキルは蒼の猛攻により、ダメージをかなり受けていた。

 ドラコニキルは立ち上がり、自身の長剣を空に突き立てた。


「ようやくやる気になったか?」


 蒼がドラコニキルにそう言うと「ああ」とドラコニキルは答えた。


「……怒り狂え」





 To Be continued

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