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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第三章】USW進攻篇
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【第三章】USW侵攻篇ⅩⅥー強欲(アバレィティア)ー

 赤島と兎咬は【強欲七魔王アバレティア・セブン・ドゥクス】グリーフアルトと交戦していた。

 グリーフアルトは【悪魔解放ディアブル・アーテル】を発動し、兎咬に突っ込んでいっていた。


「ぐ…」


 兎咬はグリーフアルトの右の攻撃を躱したが、グリーフアルトの狙いはそこではなかった。


「【魔略奪マギナスナッチ】」


 グリーフアルトの右手が巨大化した。すると、赤島と兎咬の霊力が奪われ始めた。


「なんじゃあ…こりゃあ…」

「ここから一端離れるぞ!霊力をどんどん奪われている!」


 赤島と兎咬はグリーフアルトから離れた。その後、兎咬はポケットに入っていた煙田まで姿をくらませ姿を消した。

 【魔略奪マギナスナッチ】を発動している間はグリーフアルトは動けないようだ。


「逃げたか…まぁ、いい。残りの霊力も奪いつくしてやるぜ」


 グリーフアルトは赤島と兎咬を探しに行った。




「奴の能力は…相手の霊力の略奪…か…だが、効果範囲は五メートルと言った所か…もう一度あれされたら終わりだぞ…相当霊力を奪われてしまった」

「だな、しかも、見つかるのも時間の問題だぞ…どうする?」

「……」

「……」


 赤島と兎咬は黙り込んだ。そして、赤島が話し出した。


「よし、俺に考えがある」

「言ってみろ」




「さて…と…多分、あそこだな」


 グリーフアルトはそう言って右手を突き立てた。


「【奪返スナッチ・カウンター】」


 グリーフアルトは奪った霊力の砲撃を放った。放った先から赤島が出てきた。


「行くぞ!!」

 赤島はグリーフアルトに突撃した。

 赤島は身体を発熱させた。赤島は身体の温度を上げ、身体に炎を纏い、身体能力を増強させる能力を有している。


「なんじゃそら!」


 グリーフアルトはそう言って右手を赤島に向けた。しかし、赤島はグリーフアルトの右手を躱した。


「おら!」


 赤島はグリーフアルトを殴りつけた。すると、グリーフアルトの身体が燃えた。


「ぐ!…あっつ…!!」


 グリーフアルトは悶えたが、すぐに、炎を消した。【魔奪略マギナスナッチ】で全て吸収した。


「今だ!」


 赤島はグリーフアルトを拘束した。


「離せ!」


 グリーフアルトは赤島の霊力を奪い始めた。赤島は力が抜けていった。


「赤島…よくやった。後は任せろ」


 兎咬は巨大な霊力の牙を出現させた。兎咬は『霊凝術レイギョウジュツ』を使う事が出来る。

 その名の通り霊力を固めて霊力を飛ばす術だ。今、グリーフアルトは赤島の霊力を奪うのに集中している。兎咬の霊力を奪っている余裕はない。


「【魔天牙マテンガ】!」


 兎咬が作り出した爪が赤島ごとグリーフアルトを切り裂いた。


「ぐあああああああああ!!!!」


 グリーフアルトは絶叫を上げた。グリーフアルトはそのまま吹き飛ばされた。


「いって…マジで俺事やりやがって…」


 赤島は息絶え絶えでそう言った。赤島は動けない様子であった。グリーフアルトに霊力をほぼ奪われたのが原因だろう。


「赤島…よくやったぞ…」

「相変わらず上から目線だな…てめぇは…」


 兎咬が赤島にそう言うと赤島が微妙そうな顔をした。


「まだだぁ!!」


 グリーフアルトは叫んだ。すると、赤島と兎咬はグリーフアルトの方を見た。


「正直…舐めていたぞ…ふ…俺はもう限界だ…が……てめぇらを道連れには出来るぜ…」


 グリーフアルトはそう言った。そして、赤島と兎咬はグリーフアルトの魔力が異常増大していることに気付いた。


「まさか…あいつ…自爆する気か!?」


 赤島がグリーフアルトの意図に気付きそう言った。赤島は動こうとしたが身体が動かない。

 恐らく、奪った赤島の霊力も組み込まれている。このままだと、赤島と兎咬どころか、倒れている美浪と狂まで吹き飛んでしまう。


「くっそおおおおおおおおおおおお!!」


 赤島が叫んだその瞬間、兎咬がグリーフアルトの元へダッシュした。そして、グリーフアルトの身体を掴み、グリーフアルトを押し込んだ。


-俺も随分…お人好しに…


「兎咬ぃ!!!」


 赤島が叫んだ瞬間、グリーフアルトは爆発した。爆風が赤島たちを襲う。

 煙で姿が見えなくなった。赤島も霊力を奪われすぎたせいで気を失いかけていた。もう、もたない。


-くそ…


 赤島はそのまま気絶した。




「これは…」


 舞は驚きの声を上げた。舞と澪と一夜は美浪と狂、赤島と兎咬のいる場所へ到着した。


「ひどい有様ですね」


 一夜がそう呟く。


「まったくじゃ…相当派手にやったようなじゃの。まぁ、皆無事のようじゃが…」


 舞はすぐに美浪と狂、赤島と兎咬の治療を始めた。

 治療が終わった。最初に目覚めたのは美浪だった。


「ここは?」

「ミンミン!目が覚めたみたいだね!」


 澪が嬉しそうにそう言った。


「これは…一体…」

「まぁ、かくかくしかじかなんだよ」


 澪が美浪に事情を説明した。


「え!?「USW」が攻めてきたんですか!?」

「うん、攻め込んだ理由は不明なんだけどね…」


 二人が話していると狂が次に目を覚ました。


「生きてる…」

「目が覚めたか、御登」

「魔女の人…」

「その魔女の人って妾の事か?妾の名前ぐらい覚えろ、御登」


 狂が舞の名前を覚えてないと知った舞は狂に文句を言った。


「って、ヒデちゃんとシンちゃん。何で倒れてるの!?てか、なんでここに…」


 狂が倒れてる兎咬と赤島を見て驚いていた。


「この二人は単に重傷を負っているだけでなく、霊力も大量に奪われておる。目を覚ますのに時間がかかるやもしれんな…」


 舞がそう言った。


「しかも、僕たちが来る前、ここで魔力による大爆発があったんだよ。爆発の被害がこの程度で済んでいるのは奇跡だよ…」


 一夜がそう言った。恐らく、兎咬はグリーフアルトが自爆する直前、自身とグリーフアルトの周囲に霊力の膜を張ったのだ。それにより、爆発の被害を抑え込んだのだ。


「後は時神と蛇姫と音峰と…後、天草もか。まぁ、霊力を探ったところ、蒼は大丈夫じゃな。蛇姫と音峰はも無事のようじゃ…天草は少々危ないかもしれんのぉ」

「常守君と四宮さんと美浪ちゃんは先に行ってください。ここは僕と狂で診ときます。赤島も兎咬も動けそうにないですし…なにより、時間が無い」


 一夜がそう言うと舞が頷いた。


「分かった、では、任せたぞ!苗木、御登。霧宮、常守、行くぞ!」

「「はい!」」


 舞が澪と美浪に言うと二人は返事をし、先に行った。


「行っちゃったね」

「うん」


 一夜が言うと狂は頷いた。


「そう言えば、僕ら、あまり話したことなかったよね?」

「そうだっけ?まぁ、話す機会もそんななかったしね」

「ははは…そうだね…」

「ねぇ…いっちゃんと蒼ちゃんってさ、いつ知り合ったの?長い付き合いなんでしょ?」

「唐突だねぇ…まぁ、知り合ったのは五年ほど前だよ。ちょっと、色々あってね…」

「それ以上は聞かないであげる。なんか訳ありっぽいし」

「気が利くね、では、お言葉に甘えさせてもらうよ。それにしても奇妙なものだね。かつて僕たちは敵同士だったのに、今となっては共に友を助ける関係になるなんて…」

「そうだね…まさか、私が学校に行く事になるなんて想像してなかった」

「…「運命」ってのは本当にあるのかもしれないね」 

「え?いっちゃんぽく無いんだけど…そのセリフ…気持ち悪いよ…いっちゃんが使うと」

「え?ひどくない?そのいいよう…」

「だって本当にキモイんだもん」


 一夜はやれやれと言った顔をした。狂は意識が戻らない赤島と兎咬に目を向けた。


「心配なのかい?」

「うん、ちょっとね…ちょっと前までは一緒に行動を共にしてた仲間だったわけだし、今も仲間であっることは変わらないから…」

「…優しいんだね…君は」

「別に…そんなんじゃないよ」


 一夜が言うと狂は照れた顔をした。


「ねぇ、この戦いが終わったら…また、前みたいに戻れるよね?」

「…それは分からない。変わらないものなんてない。この世界は常に変化を続けている。僕たちが慧留ちゃんを助け出せたところで前のような関係に戻れるかどうかは分からない。蒼と慧留は自国を逃亡している身だしね」

「じゃあ、何の為に今、戦ってるの?」

「それは…人それぞれ違うんじゃないかな?いや、僕たちは慧留ちゃんを助けようというのは同じだけど、どうして助けたいかはそれぞれ違う。君は自分の信じた通りにすればいいよ」

「でも、いっちゃんは元に戻れるか分からないって…」

「まぁ、それは僕の考えだからね~。君が信じたものを否定する材料にはなり得ない」

「いっちゃんは…何考えてるか分からないよ…」

「…よく言われる」

「どうして、いっちゃんは慧留ちゃんを助けようとするの?」


 狂は尋ねた。一夜は何を考えてるか分からない。

 こう思っているのは恐らく今日だけではないだろうと狂は思った。だから、聞きたかったのかもしれない。


「蒼を…変えてくれた人だから…かな?」

「蒼ちゃんを?」

「ああ、蒼は自身の見る世界が狭かった。だが、慧留ちゃんと出会ったことで世界が変わったんだよ。彼は変わった。彼女によって。だからかな?」

「そんなに蒼ちゃんの事好きなの?」

「どうかな…まぁ…僕と蒼の関係は恐らく、君と屍の様な感じだよ…多分」

「私としかちゃんか…そうか…なら、納得…」


 狂は一夜の言葉に納得したようだ。


「信じよう。蒼たちを」

「そうだね…蒼ちゃんとしかちゃんなら…きっと…」


 一夜と狂はそう呟いた。






 蒼とラナエルは執務室に向かっていた。


「……」


 ラナエルはどこか落ち着かない顔をしていた。


「ラナエル?大丈夫か?」

「大丈夫!大丈夫!なんでもないぞ!」


 ラナエルがそう言うと蒼は「そうか」と言ってそのまま執務室の扉を開けた。


「待っていたぞ…時神蒼」

「やっぱここだったか…」


 蒼は目の前にいた男を知っていた。ドゥームプロモ・ドラコニキル、『アンタレス』のリーダー格の男だ。

 白と黒のオッドアイと黒髪ストレートヘアーが特徴の男である。


「っと、その前に…やっぱりお前だったか…ラナエル」


 ドラコニキルがそう言うとラナエルはビクッと反応した。


「ラナエル?」

「久しぶりだね」

「……そう…だね…ドゥーム…」

「…どういうことだ?」

「俺とその子は同じ村に住んでいたんだよ。そして…俺たち二人は村を捨てて逃亡した。もう、十年以上前の話だよ」

「村を…捨てた?って、ちょっと待て、ラナエルは五年前に村を出たって言ってたぞ!矛盾してるじゃねーか!?」

「ああ、五年前というのは…半分本当だ。なんせ、ラナエルは俺から離れていったんだからな」

「どういう事だ?」

「ふー、そうだね…少し話そうか…」


 ドラコニキルはそう言って話し出した。


「俺とラナエルは同じ村に住んでいた。ごく平凡な村だった。しかし、色々あって今に至る…」

「………」

「………」

「………え?終わり?」

「ああ、そうだが?」

「いや、その先の話が重要じゃねーか?」

「………さぁ、始めようか」

「……って無視かよ!?」


 ドラコニキルは長剣を抜いた。


「まぁ、いいか…ラナエルに直接聞けばいい」


 蒼は刀を抜いた。


「蒼…ドゥームは炎系統の【悪魔ソロモン】を使うよ」

「分かってる。ラナエル、下がってろ」


 蒼がそう言うとラナエルは下がった。


「行くぞ…」

「ああ!」


 蒼とドラコニキルは睨み合い、刃を交えた。






「さて…っと!」


 アルビレーヌが【水泡死鎌スクマーテルア・ゴルドレーザー】を遥に振りかざした。遥は【サウンドミサイル】で攻撃を防いだ。


「おっと、厄介ね…」


 アルビレーヌは姿を消した。すると、遥の後ろを取っていた。


「これは…」


 遥はアルビレーヌの鎌を掴んでそのまま【サウンドミサイル】を放った。

 アルビレーヌは攻撃を受けたが耐えきり、遥をそのまま切り裂いた。


「まだまだぁ!」


 遥は自身のヘッドホン、【ハンニバル】をマイクに変化させた。

 彼女の武器である【ハンニバル】は武器の形状を変える事が可能であり、攻撃能力を高める事が出来る。


「【慟哭どうこくのシンフォニック・アレフ】!」


 遥の前に空気の竜巻が発生し、その竜巻がアルビレーヌを襲う。


「うわ…これを喰らうと流石にやばいわね」


 アルビレーヌがそう言うと、音の竜巻はアルビレーヌに直撃した。

 部屋の壁が吹き飛び、外の景色が露になった。外は夜空に包まれており、月光が輝いていた。


「これで終わりよ」


 アルビレーヌが遥の後ろに突然現れた。しかし、遥はアルビレーヌの動きを読んでいた。遥はアルビレーヌの鎌を掴んだ。


「【円音波サウンドサークル】…あなたのその瞬間移動のカラクリ…なんとなく分かったわ」


 遥はそのまま、音を出し、アルビレーヌを追撃しようとするが、アルビレーヌは咄嗟に遥の顔面を蹴り飛ばした。

 遥は吹き飛ばされてもすぐに立ち上がった。


「あなたのその瞬間移動…自身の身体を分子化させて高速移動する能力ね」

「……」


 遥が言うとアルビレーヌは黙り込んだ。


「やっぱり…あたしの【円音波サウンドサークル】はあたしの周囲に音波を出して、その領域内に入ったものを探知するわ」

「なるほど…それで私の【水光フラッシュアクア】を見抜いたって訳か」


 アルビレーヌは感心したようにそう言った。アルビレーヌは自身の身体を分子レベルにまで分解し、相手に気付かれずに移動する事が出来る。


「カラクリが分かればこっちのモノよ!」


 遥がそう言うとアルビレーヌはニヤリと嗤った。


「そうかしら?まだ、気を抜いていい状況ではないと思うのだけれど…」


 アルビレーヌはそう呟いた。








 舞と美浪と澪は悪食の間にいた。そこにいたのは倒れていた屍とグリトニオンであった。

 舞はすぐに屍の治療を始めた。屍は片腕と片足を失っており、さらに、全身もボロボロであった。

 舞は医療系の魔術をそれ慧なりに使えた為、何とか屍の身体を完全修復することに成功した。


「く…」


 屍は目を覚ました。


「魔が覚めたようじゃの」

「あんたは…魔女の…」

「全く…どいつもこいつも…人の名くらい覚えろ…」

 舞が呆れたようにそう言った。

「何で…常守とあんたがここに…それに霧宮まで…」

「色々あってね…」


 澪がおチャラけた様にそう言った。


「他はどうなってる?」

「苗木と御登は赤島と兎咬と共に待機中じゃ。音峰は蛇姫のところにいる。因みに敵と交戦中じゃな。時神はこの城の一番デカい宮殿にいる」


 屍が状況を聞くと舞は淡々と答えた。


「これからどうするつもりだ?」

「取り敢えず、ハルちゃんのとこ行くよ、何かヤバそうだし…」

「そうか…なら、俺も行く」


 屍がそう言うと三人とも頷いた。


「ここからは二手に分かれるぞ。妾と天草で音峰と蛇姫のところへ、霧宮と常守で時神のところに行く。それでいいな?」


 舞がそう言うと残りの三人が頷いた。


「では、行くぞ!」


 そう言って、舞と屍は遥と薊のいるところへ、美浪と澪で蒼のいるところに向かっていった。








 舞と屍は遥と薊のいるところを目指していた。後、数分ほどで着くだろう。


「あんた…一体何者なんだ?「USW」の奴らしか知らない【黒門ニゲル・ゲート】の開け方知ってたり、魔女だったり…しかも、あんた、ただの魔女じゃねーだろ?いや、「十二支連合帝国」にも魔女はいるけど…あんた程力を持った魔女は「十二支連合帝国」内じゃ見た事ねぇ…」

「………」


 屍が舞に尋ねるが舞は黙っていた。


「まぁ…話したくねぇならそれでもいいけど…」


 屍がそう言うと舞が口を開けた。


「妾は正真正銘、「十二支連合帝国」の者じゃ…昔、人間じゃったこともあった…まぁ、百年前の話じゃがな…」

「百年前って…」

「そうじゃ…その時までは妾も普通の人間じゃった。じゃが…その時を境に妾は魔女になった」

「………百年以上生きる魔女が「十二支連合帝国」内にいたとはな…道理でな…」


 屍がそう言った。一概には言えないが魔族は長生きしている者ほど強大な魔力を保有している。

 「真祖」である黒宮大志もそうだ。彼は千年以上生きている。それにより、莫大な魔力を持っている。


「言っておくが、これ以上は話す事は無いからな」

「ああ、分かってるよ」

「貴様、言葉遣いがなっていないな…」

「はいはい、分かりましたよ…四宮さん…」

「貴様と言い、苗木と言い、何故妾の事を「先生」と呼ばんのだ」

「先生に見えないからだろ?」

「何じゃと!?」

「いや、何でそんなに驚くんだよ?」


 舞が珍しく驚いていたので屍は少しびっくりした。


「妾程、教師っぽい者は学校におらんじゃろうに」

「あんたみたいなロリババアのどこが教師っぽいんだよ!?アホかあんたは!?」

「だあああれがロリババアじゃ!誰が!!貴様妾をおちょくるのも大概にしろ!!」

「見た目どう見ても幼女じゃん!あんたは!!しかも、黒いゴスロリなんか着やがって!!中二病患者か何かかあんたは!?あんたのその見た目でどうやって見れば教師に見えるんだよ!?眼科行くか精神科行くかどっちかした方がいいんじゃないですかね?」

「何じゃと貴様ぁ!?」


 屍が舞に言いたい放題言うと舞がたまらず叫んだ。


「それにしても、百年以上生きてるのに独身って…悲しくないんですか?まぁ、そんなゴスロリ姿を公衆の面前で堂々と歩ける変人なんて…いくら美人だからって引かれるわな~」


 屍がそう言うとブチッという音が聞こえた。


「ふふふふふ…貴様…妾の地雷を踏んだな?いい度胸じゃな…うんうん…」


 舞は嗤っていたが屍はそんな舞を不気味そうに見ていた。


「四宮さん?」

「全く、妾も舐められたものじゃの…貴様の様なチキンにそんな舐めた口を聞かれるとはの」

「誰がチキンだ!?ふざけんな!」


 舞はそう言って屍を睨んだ。目は血走っており、屍は一瞬怯んでしまった。


「ふん…成程…おい、天草…耳を貸せ」


 舞がそう言うと屍は舞に耳を傾けた。そして、舞が屍の「ある事」を話した。


「ななななななななななななななななななななな!?何でてめぇそんな事知ってんだ!?」

「さぁて??何故じゃろうなぁ??まぁ?貴様も年頃なわけなじゃし?仕方ないのぉ?じゃが妾は口が軽いからのぉ~?うっかり、蛇姫あたりに言ってしまうかもしれん」

「お願いします絶対に誰にも言わないでください!!いや!!マジで頼む!!許してぇええええええええええええええええ!!」


 舞がとぼけたように屍に言うと屍は舞に必死に言わないように懇願した。








「蒼は…大丈夫ですよね…」

「大丈夫だとは思うけど…まぁ、急ぐ事に越したことないかもね…」


 美浪が澪に尋ねると間の抜けた返事を澪はしていた。


「慧留ちゃんのいる場所もロクに分かってないし…」

「そうだね…てか、気配を探ってるけど…えるるんの気配が全くないんだよね…霊力が探知できない場所にいるのか…あるいは…」


 澪は顔を曇らせていた。


「「USW」の目的は何なんでしょう…?」

「さぁね…それが分かれば苦労しないよ…」


 澪も美浪も敵の目的が全く掴めなかった。慧留を使って何をしようというのか…二人には想像がつかなかった。


「そう言えばさ…ミンミンは『世界聖宮パルテノス』って知ってる?」

「『世界聖宮パルテノス』…ですか?確か…この世界とは別の空間にあるとされる異空間ですよね?でも、『世界聖宮パルテノス』って存在するんですか?神話によくある作り話って聞いてますけど…」

「『世界聖宮パルテノス』は実際に存在するって話だよ~、本当かどうかは分からないけどね…いやね、あの一番デカい城あるじゃん…あれがね…似てるんだよね~、あたしが昔見た絵本の城に」

「似てる?」

「その本はね、『世界聖宮パルテノス』にまつわる絵本なんだよ。その城と作りが似てるんだよ」

「偶然じゃないですか?」

「ううん、あの独特な構造は簡単に真似して作れるものじゃないよ…多分……偶然じゃない」

「…そもそも、『世界聖宮パルテノス』って何ですか?」

「あたしもね…よくは知らないんだけど…まぁ、今の人間に『世界聖宮パルテノス』という単語を知らない人は殆どいないんじゃないかな?一応、授業で習うし…けど、肝心のどんな所かを知ってる人はいないんだよね~、あたしもよく知らないし…」

「澪さんは…ここの人たちなら何か知ってっるというんですか?」

「多分ね…少なくとも親玉は何か知ってるかも?」

「疑問形!?」

「だって確証が無いんだもん。ま、取り敢えず、速くアオチーを助けに行こ!」


 澪はそう言ってスピードを上げた。


「待ってくださいよ~!」


 美浪はそう言って澪を追いかけていった。








 ドラコニキルはその独特な長剣を振るっていた。

 刃が黒、峰が白で構成された独特な長剣であった。ドラコニキルが扱う【悪魔ソロモン】だ。

 一方、蒼も二刀の刀を振るっていた。一刀は限りなく透明に近い水色の刀、もう一刀は真っ黒な黒刀。

 二刀とも蒼が扱う【天使エンゲリアス】である。


「【氷魔連刃ひょうまれんじん】」


 蒼は霊呪法を唱えた。すると、ドラコニキルのいる地面から氷の刃が飛び出してきた。

 それら全てをドラコニキルは切り裂いた。蒼はその隙を突き、ドラコニキルの後ろを取る。

 だが、ドラコニキルは蒼の動きを読み、長剣で蒼の一撃を凌いだ。


「【黒閃光オスキュラス・レーゼル】」


 ドラコニキルは【黒閃光オスキュラス・レーゼル】を放った。蒼はそれを切り裂いた。


「まだだ、【剥拳デスペーガー】」


 ドラコニキルは左手の拳から黒い波動を放った。蒼はそれらもすべて弾き飛ばした。

 しかし、弾き飛ばした後の隙を突かれ、無防備な場所に入られた。


「しま…」


 ドラコニキルはそのまま蒼を切り裂こうとした。


「!」


 蒼の前に魔力の盾が出現し、ドラコニキルの一撃を凌いだ。


「これは…」


 蒼は何もしていない。蒼本人も驚いていた。


「お前の仕業か…ラナエル」


 ラナエルは防御系の魔術を使い、蒼を守ったのだ。


「やれやれ…俺はお前の相手をしている暇はないんだ。眠ってもらおうか」


 ドラコニキルは狙いを蒼からラナエルに変えた。


「!!」


 ラナエルは驚き、身構える。しかし、ラナエルの目の前には既に蒼が立っていた。


「ふ!」


 蒼はドラコニキルの一撃を弾いた。


「ドゥーム!わたしは…あなたと蒼が戦って欲しくないの!」


 ラナエルが蒼越しでドラコニキルにそう言った。


「ラナエル?」

「ラナエル…そうはいかない…俺はそいつを始末するよう命を受けている。邪魔立てするなら貴様でも容赦はしない!」

「何で!?…分っかないよ!!」


 ラナエルが叫ぶと蒼がラナエルの前に出た。


「蒼!」

「ラナエル…助けてくれてサンキュー。けど…お前がどう思ってようが…あいつは止まらねぇ。俺も止まれねぇ…下がっててくれ」


 蒼がそう言うとラナエルが下を向いた。


「うん…分かった」


 そう言ってラナエルは蒼とドラコニキルから離れた。


「おい…お前…ラナエルとなんかあったのか?」


 蒼がそう言うとドラコニキルは困った顔をした。


「ふー、貴様には関係ない事だろう?どうでもいいことを気にするな…」

「……それもそうか…」


 蒼とドラコニキルは再び戦いを続行した。力はほぼ互角であった。


-こいつ…、前より強くなってる!?


 ドラコニキルは蒼の力が上がっていると感じていた。実際そうなのかもしれない。蒼は前より確実に力をつけていた。

 蒼はまだ、【氷水天皇ザドキエル】と【黒時皇帝ザドキエル】の力を扱いきれていなかった。

 それをスープレイガやドラコニキルとの戦いを通じて力を扱えるようになっていたのだ。

 ドラコニキルが蒼の力が伸びてると感じているのはそれが理由なのである。


「ふー、力をつけたな…時神蒼」

「何か前にも言われた気がすんだけど…」

「あの時よりさらにだ…スープレイガとの戦いでさらに強くなったか…やれやれ…このままでは俺がやられてしまうな…」


 ドラコニキルは溜息交じりにそう言った。実際、今の蒼にドラコニキルはかなり手を焼いていた。

 それほどにまで蒼はドラコニキルにとって手の付けられない存在になっていた。


「何故だ?なぜそこまでしてあの女を助けようとする?あの女はお前にとってなんだ?」

「はっ…お前とラナエルの事を俺が聞いて適当に流したくせに俺の事は質問攻めか…勝手な野郎だ…」

「…それもそうか…」


 ドラコニキルは蒼の言い分に納得し、それ以上は質問しなかった。


「何だ?やけに素直だな」

「いや、これから俺がお前を殺すんだ…聞いたところで無意味と思っただけだ」

「上等じゃねーか…」


 ドラコニキルは挑発じみたことを言うと蒼はそのままドラコニキルの向かっていった。

 蒼とドラコニキルの戦いは蒼が明らかに押していた。


「【聖雨ハイリッヒレーゲン】!」


 蒼は【聖雨ハイリッヒレーゲン】を放った。上空から光の雨が降り注ぐ。

 ドラコニキルはその雨をまともに喰らい、ダメージを受けた。


「く!」


 ドラコニキルは体勢を立て直したが先ほどまで目の前にいた蒼がどこにもいなかった。


「【黒刃葬破シュバルツ・シュベート】!」


 蒼は【黒時皇帝ザフキエル】から黒い波動を放った。ドラコニキルはその一撃も直撃を受けた。蒼がドラコニキルを圧倒していた。


「ぐは!」


 ドラコニキルは横たわり、血を吐いた。全身血まみれになっていた。


-ふっ…これ程とは…俺も覚悟を決めねばならんようだな…


 ドラコニキルは立ち上がった。蒼はドラコニキルの姿を静かに見つめていた。








 To Be continued

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