【第三章】USW侵攻篇ⅩⅢー侵攻(トモットス)ー
「やぁ、クリフォト君」
「君は?」
「私はアンタレス。悪魔の始祖よ」
クリフォトは困惑していた。
-悪魔の始祖??は??どういうこと???
「悪魔の始祖が何で俺に?」
「私は…七百年ほどこの世界にいるわ」
「聞けよ!」
「世界を一つにしたいの」
「世界を一つにぃ?意味が分からん」
「そうね、まぁ、かみ砕いて言うと私は世界征服がしたいの。征服欲を満たしたいのよ…」
「やっぱ悪魔か…」
「悪魔は皆そんなものよ…私はあなたを選んだのよ」
「俺を?」
「あなたには力がある。私はあなたと共に世界を一つにすることを決めたわ。あなたと契約することをね」
クリフォトはまるで意味が分からなかった。
「いいのか?もしそうしたら、俺は悪魔を滅ぼすぞ」
「いいのよ、私たちは喰らい合う為に存在するのだから…」
アンタレスは楽しげにそう言った。クリフォトはこの戦いがどのような結末になるかなんてどうでもよかった。
だが、アンタレスはクリフォトに契約を申し出ている。アンタレスはクリフォトにとって毒となるか、それとも-
「分かった。貴様と契約を交わそう」
クリフォトは迷うことなく答えた。すると、アンタレスはニヤリと嗤った。
「あなたならそう言うと思ったわ!さぁ!契約を交わしましょう!」
クリフォトとアンタレスはこの場所で契約を交わした。
クリフォトはアンタレスから様々な叡智を授かった。悪魔の力の使役を誰でもできる方法や、悪魔の【悪魔】の力についても。
クリフォトは【悪魔】の力を手に入れた。そして、その力を携え、軍隊を新たに作り出した。
さらに自身の兵隊に悪魔の力を与えた。悪魔の力を手に入れた人間たちの力は絶大であり、当時の悪魔たちは多く殲滅された。
その限られた悪魔たちは生き延び、クリフォトの軍門に下った。そして、人間と悪魔の超連合国「USW」が生まれた。
悪魔以外の魔族たちも全員クリフォトの軍門に下った。クリフォトは「USW」の王となった。
「さぁ…ここからだ」
クリフォトはアンタレスと共に「ある野望」を抱いた。それは-
「今はここまでにしておこうか。いずれ皆分かることだ」
カーシスはそう言った。そして、そのまま地下の祭壇から去って行った。
-戦いは繰り返される。歴史は繰り返す。私はそんな世界をゼロに戻す。
カーシス、いや、『クリフォト・ユールスナール』は一人でに歩き出した。
蒼とドラコニキルは刃を交えていた。力は拮抗しているようであった。
「【氷水天皇】!」
蒼は【天使】の力を使い、ドラコニキルは【悪魔】の力を使っていた。
「【黒閃光】」
ドラコニキルは長剣の切っ先から【黒閃光】を放った。
【黒閃光】は悪魔が使う基本技の一つだ。
蒼は【黒閃光】を躱し、霊呪法を唱えた。
「【氷魔連刃】!!」
蒼は厳陣のところで修業した時、【天使】の扱い方だけではなく、霊呪法の修業もしていた。
そして、霊呪法の技名だけで霊呪法を使用可能になった。
氷の刃がドラコニキルを襲う。ドラコニキルは【氷魔連刃】を全て打ち砕いた。
「…甘い」
ドラコニキルは間合いを詰め、蒼の肩に長剣を突き刺した。しかし、蒼はドラコニキルの長剣をズラし、ダメージを軽減した。
「ぐ!」
「………」
ドラコニキルは左人差し指を蒼に指し、【黒閃光】を放った。
だが、蒼は【黒閃光】を【氷水天皇】で受け止め、凍り付かせた。
「………ほう、力をつけたか。グリトニオンとの戦いのときが嘘のようだな」
「そいつぁ、どうも」
蒼はドラコニキルの言葉を軽く流した。
「貴様は何故、ここまで来た」
「んなもん決まってんだろ!慧留を助ける為だ!」
「それをあの女が望んでいなかったとしても?」
「当たり前だ!」
「どうしてそこまでする?そこまでする義理があるのか?」
「あるから来てんだよ!」
ドラコニキルは蒼たちが理解できなかった。これ以上の問答は不要だとドラコニキルは判断した。
「ふ…まぁ、いい。俺が貴様を殺せばいいのだからな」
「やれるもんならやってみやがれ!」
「威勢のいい奴だ」
ドラコニキルはそう言って長剣を空に突き立てた。
「来るか!」
蒼は身構えた。恐らく、【悪魔解放】を発動させる気だ。
「怒り狂え!……!!」
ドラコニキルは途中で言葉を止め、ドラコニキルの真後ろから飛んできた魔力の砲弾を切り裂いた。
「どうなってる?」
蒼はそう呟いた。どうやら、新手が来たようだ。しかし、ドラコニキルは魔力の砲弾を飛ばしたのが誰か見当がついていた。
「これは一体何の真似だ?スープレイガ」
ドラコニキルの後ろからやって来た。
「それはこっちの台詞だぜ…何、人の獲物勝手に取ろうとしてんだよ!」
「立場を弁えろ。これは貴様一人の喧嘩じゃない」
蒼はそのまま二人の様子を見ていた。蒼は何がなんだかわけが分からなかった。
「あんたを倒せば、そいつとやれるんだ。それとも引き下がるか?」
「ふー…」
ドラコニキルは溜め息をつき、魔力を大量に放出した。
「貴様が下がれ…」
「…断るぜ」
スープレイガがそう言った瞬間、ドラコニキルはスープレイガに切りかかって来た。スープレイガは腰にある刀を取り、ドラコニキルの刃を受け止めた。
「やれやれ、少しお灸を据える必要があるようだ」
ドラコニキルはそう言ってスープレイガの刀を押し込んだ。しかし、スープレイガも刀に力を込め、ドラコニキルの長剣を押していた。
やがて、スープレイガはドラコニキルの長剣を捌き、光弾を放った。
「【光銃弾】!」
ドラコニキルは体を捻り、【光光弾】を切り裂いた。その瞬間、ドラコニキルの姿が消えていた。
スープレイガはドラコニキルの居場所を察知した。
真上だ、ドラコニキルはスープレイガの真上にいた。ドラコニキルはスープレイガを長剣で頭部から真っ二つに切り裂こうとする。
しかし、スープレイガはドラコニキルの長剣を自身の刀で防ぎ、左の掌から【黒閃光】を放った。
ドラコニキルは【黒閃光】を喰らいながらも外の上空に退避した。
そして、後ろから攻撃を仕掛けたスープレイガの攻撃を捌いた。
スープレイガはその後、【黒閃光】を放った。ドラコニキルは一瞬で【黒閃光】を切り裂いた。
-おかしい、責める気が無さすぎる。何を考えている?
ドラコニキルは疑問に思っていた。本来のスープレイガはもっと攻撃的な攻め方をする筈だ。なのに何故…
「【王魔封印】」
「しまっ…」
ドラコニキルは彼の狙いに気付いた。スープレイガはドラコニキルの真下にいた。
彼に使用した【王魔封印】は悪魔を別空間に永久封印する封印術だ。
ガチで戦っても勝てないと判断したスープレイガはあらかじめこの場所に封印術を仕掛けており、ここにドラコニキルを誘導したのだ。
この【王魔封印】はクリフォトが作り出した悪魔を永久封印する魔術だ。悪魔には不老不死の者もいる。
そう言った厄介な悪魔を封印するためにクリフォトはこの魔術を作り出した。
スープレイガは何らかの方法でこの力を体得したのだろう。ドラコニキルは完全にスープレイガに油断していた。まさかここまでやってくるとは…
ドラコニキルの周りに黒い三本の鎗が発生した。その鎗がドラコニキルを貫く。
「…………クソ」
ドラコニキルはそのまま鎗ごと消え去った。
「………」
スープレイガは下でドラコニキルが消えたことを確認した。その後、蒼がスープレイガの後ろにやって来た。蒼の後ろにはラナエルもついて来ていた。
「何をした?」
「クリフォトが扱ったとされる悪魔を封印する魔術を使った。この力はどんな悪魔でも永久に別空間に閉じ込められる魔術だ。…だが、俺はこの魔術を完全に使いこなせていない。恐らく、今日中には別空間から脱出するだろうな…」
クリフォト…蒼はその名前を聞いた事がある。知識程度にしか知らないが、確か、「USW」の初代総帥であり、あらゆる悪魔を支配下に置いた、最強の人間である。
「そんな奴の力を…お前が…?」
「心配すんなよ、こいつは悪魔にしか効かねぇ…お前には使えねぇよ」
蒼はスープレイガの行動が理解できなかった。
「何で俺を助けた?」
「助けたぁ?勘違いするな!お前は俺の獲物だ!その獲物が横取りされそうになったからあいつの動きを止めた!それだけだ!」
「どうしてそこまで俺に拘る?」
「俺が獲物と決めたからだ!それ以上に理由はねぇよ!」
スープレイガはそう言った。やはり、蒼には理解できなかった。だが、どうやら…
「俺はお前と戦わなきゃならないってことだな…」
「そういうこった。決着をつけようぜ!」
蒼がそう言うとスープレイガはニヤリと嗤いながら答えた。
「ラナエル、下がってろ!」
「うん、分かった!負けたらダメだぞ!」
ラナエルは蒼にエールを送り、下がった。
天候は青空であった。辺り一帯は砂漠であった。そして、風が靡いた瞬間、蒼とスープレイガが刃を交えた。
薊は未だに走り続けていた。この『闇魔殿』はとてつもなく広い。
「いったいどこまであるのよここは…」
薊はそう呟いた。実際、今薊はどこにいるのかさえ、見当がついていないのだ。
一刻も早く、慧留を見つけ出さないといけないこの状況下で薊は少し、焦りを感じていた。
さらに、薊が焦る理由がもう一つある。
「美浪…くる……屍…!」
そう、一夜だけでなく、美浪や狂、屍の霊圧も途絶えていた。蒼の霊圧は未だ健在だが、薊は屍たちが気がかりであった。
「無事でいて…!」
薊は進むしかなかった。薊は相手のいる場所を正確に探知できない為、屍たちを助けに行くのは不可能だ。無事を祈るしかない。
薊は一つの部屋に辿り着いた。
「…ここは?」
「ここは私の部屋だよ~」
現れたのはアルビレーヌであった。大きいとも小さいとも言えない平均的な身長であり黒がかった茶色の髪とオレンジの瞳と白いワンピースが特徴の少女である。
「あなたは?」
「これから倒される人に名乗っても意味あるのかな~?あなた、あのメガネの仲間でしょう?」
「メガネ…一夜の事?」
薊は察した。この女が一夜を倒したのだと。
「ああ、あの子そんな名前だったんだ。まぁ、いいや、あなたも同じところに連れて行ってあげるわ」
アルビレーヌは背中に背負っている鎌を手に持ち、薊に向かっていった。
「!」
薊はアルビレーヌの攻撃を躱し、【毒華霊弓】を作り、矢を放った。しかし、アルビレーヌは矢を鎌で切り裂いた。
「…その程度?」
アルビレーヌは一瞬で薊の後ろに回り込んでいた。
-速い!
薊は【毒華霊弓】で防御するが、アルビレーヌの鎌に一瞬で切り裂かれた。
「!!」
薊はそのまま吹き飛ばされてしまった。
「その程度?」
アルビレーヌは攻撃を止めなかった。アルビレーヌがさっき薊の後ろに回り込む時に使ったのは【影移動】という、悪魔が使える高速移動の一つである。
特にアルビレーヌの扱う【影移動】は『七魔王』中最速である。
つまり、今存在している悪魔の中で彼女は誰よりも速いという事になる。
薊は距離を取り、再び【毒華霊弓】を生成し、矢を放った。しかし、アルビレーヌは矢を撃ち落とした。その隙に薊は自身の気配を消し、身を隠した。
薊は暗殺の達人であり、気配や殺気を殺したり、逆に殺気だけで相手を怯ませる事も出来る。
さらに、相手の後ろをついたり、トラップを仕掛けることも造作もない。
一見地味な能力であるが、とても高度な技術が要される貴重な能力であると言える。
薊は毒を扱う能力を持っているが当たらなければ何の意味もない。毒自体は強力であるが、当たらなければ効力を発揮しないのだ。
薊はあの武器を破壊する為の毒をいくつか放ったが、あの鎌は壊れる気配が全くない。
恐らく、あの武器を破壊するのはほぼ不可能であると薊は判断した。
なので最早、薊は気配を殺して、アルビレーヌの隙を突き、毒を直接ぶち込むしかなかった。
「はぁ…だから、私の前じゃ、隠れても意味ないよ…」
アルビレーヌはそう呟いた。そして、【悪魔】の名を叫んだ。
「舞い踊れ!【人魚妃姫】!」
アルビレーヌは【悪魔解放】を発動。
すると、アルビレーヌの身体が宙に浮いた。さらにそこから、水のバルーンに包まれた。
やがて、バルーンが弾け、姿を現した。下半身は魚の尾のような形状をしており、黒色の髪も少し紫がかっていた。
上半身のワンピースはそのまま残っており、腕には真珠で出来た数珠の様なものをつけていた。
薊はアルビレーヌの【悪魔解放】の美しさに目を奪われた。
彼女のその姿はまるで、童話に出てくる王子を待ち続ける人魚姫の姿そのものであった。
しかし、薊はアルビレーヌの後ろを取っていた。そのまま矢を放とうとする。
「バレバレよ」
アルビレーヌの身体は矢が当たる前に消えた。
「な!?」
薊は驚愕の表情をした。アルビレーヌは薊の真後ろにいた。
「見ぃつけた」
「!」
薊はすぐさまアルビレーヌから距離を取った。
「どうやって…」
薊は完全に気配を殺していた筈だ。すぐにバレる筈がない。なのに何故…
「周り、見てみて」
アルビレーヌがそう言うと、薊は驚いた表情をした。
「これは…」
辺り一面、水と泡まみれになっていた。水も感覚が全くなく、指摘されるまで地面に水があることに気付かなかった。
これら全て、アルビレーヌが【悪魔解放】によって発生させたものである。
「これが私の能力よ…私は半径百メートルに泡と水を発生させる。その領域内にいる敵を全て察知できる。さらに、敵のいる場所に瞬時に移動もできるのよ」
「嘘…」
薊は血の気が引いていた。だとしたら、薊との相性は最悪である。薊は気配を消すことに長けた魔族である。
アルビレーヌの力はそれらの力を完全に無効化してしまうものだ。恐らく一夜もこの力で倒されてしまったのだろう。
薊は移動速度はそこまで速くない。彼女の領域圏外に逃げる事はとても出来ない。逃げる前に追い付かれて終わりである。
-どうする?このままじゃ、勝ち目がない!
薊は思考するが何も思いつかなかった。
「【水泡死鎌】」
アルビレーヌは水と泡で鎌を生成した。巨大な鎌であり、古風な意匠が施されている。
アルビレーヌは薊のところまで一瞬で移動し、【水泡死鎌】を振り下した。
薊は躱そうとしたが左手を刈り取られてしまった。さらに、たった一撃で身体のあちこちに傷が出来ていた。
「ぐぅ!」
「あら?思ったよりす素早い…まぁ、けど…次は当てるわ」
アルビレーヌは薊に止めを刺そうとしていた。
-マズ…い…この…まま…じゃ……
もはや薊に打つ手はなかった。恐らく、トラップの類も彼女の前では通用しない。
というより、先ほどの一撃でほとんど動く事が出来ない。血が全身から溢れ出しており、もはや、意識すら保てない。
水と泡で構成されたアルビレーヌが作り出した空間が薊には美しく見えていた。
薊は完全にアルビレーヌに魅せられていた。地面の水を心地よくも薊は感じていた。
「綺麗……」
薊はアルビレーヌにそう言葉を漏らした。
「あら?敵に私の力を褒められたのは初めてね…素直に受け取っておくわ」
アルビレーヌはそう言って鎌を持ち上げた。そのままアルビレーヌは薊に鎌を振り下ろした。
「ったく!敵はどこにいやがるんだ!?」
グリーフアルトは苛立ちを覚えながら敵を探していた。こうも敵が見つからないとなると流石にイライラする。
「他の奴らは楽しくやってるってのによぉ!!」
グリーフアルトはそう言った。実際、まともに敵と交戦していないのはウルオッサとグリーフアルトだけだ。
しかも、ウルオッサは戦う気が全くない。敵を探して、全く見つからないのは彼ぐらいだ。
「ん?」
グリーフアルトは目を凝らせた。するとその先にいたのは、倒れてるルッシュベルと美浪と狂であった。
「何だよ…もうやられてんじゃねーかよ」
グリーフアルトはがっかりした。これでは戦えそうにない。
「…まだ生きてるようだなこいつら…ん~、まぁ、首を落とせば確実に死ぬだろ。ルッシュベル君よ、てめーの不始末は俺が拭ってやるよ」
グリーフアルトはそのまま近づいていった。
「誰だ?」
グリーフアルトは気配を察知した。そして、姿を現した。その人物は-
「てめぇは…」
そこにいたのは兎咬審矢と赤島英明であった。
アルビレーヌは薊に止めを刺そうとした瞬間、後ろからやってくる気配に気づいた。
「!」
アルビレーヌは【水泡死鎌】で防いだ。
-音系の術…
やって来たのは音峰遥であった。
「間に合ったわね…」
「だれ?あなた」
「音峰遥よ」
「侵入者の仲間?」
「まぁ、そんなとこ」
「ふ~ん」
「あなたは?」
「これから死ぬ人に名乗ってもねぇ~」
「大丈夫安心して。あたしは負けないから」
「いい度胸ね。けど、終わりよ!」
アルビレーヌは遥の後ろに回り込んだ。しかし-
「【ああああああああああ!!!】」
遥は大声を上げた。すると、周囲に音波が発生し、アルビレーヌを吹き飛ばした。
「がっ…」
アルビレーヌは壁に激突し、むせた。
「ふ~ん。ちょっとはやるみたいね。…『嫉妬七魔王』アルビレーヌ・マジェルタスクよ」
「大層な肩書ね。敵の幹部さんね」
遥はそう言って、ヘッドホンを取り付けた。遥のヘッドホンは【ハンニバル】と呼ばれる特殊なヘッドホンであり、音を増幅させたり、武器として使ったりも出来る。
「面白そうな武器ね。いいわ、相手になってあげるわ」
「そりゃあ、どうも!!」
遥とアルビレーヌの戦いが始まった。
「ほう?新たな侵入者か…侵入者の顔を見させてもらったがお前らはいなかった。増援か?」
「答える義理はない」
グリーフアルトの質問に兎咬は答えようとしなかった。
「まぁ、察しの通りだ」
「おい!赤島!」
赤島が答えると兎咬が文句を言ってきた。
「いいじゃねーかよ。減るもんでもねーし」
「…全く貴様は…減らないからと言っていう必要もないだろう!相手に色々バラすのはよくない事なんだぞ!分かってるのか貴様は!!大体貴様はだなぁ!」
「分かった分かった次から気を付ければいいんでしょお前の説教面倒くせぇんだよマジで」
「…おい、俺の事スルーするなよ」
赤島と兎咬のやり取りを見てグリーフアルト呆然としながらそう言った。
「…そうだな。貴様が只者ではないという事は分かる」
「ほう、見る目はあるようだな。『強欲七魔王』グリーフアルト・ギアールとは俺様の事だ」
兎咬がグリーフアルトにそう言うと機嫌が直ったのかグリーフアルトは流暢に自己紹介を始めた。
「へぇ、あんたが…」
「いきなり【七魔王】に当たるとはな…」
赤島と兎咬がそう言うとグリーフアルトは少し意外そうな顔をした。
「へぇ、俺のこと知ってんだ。お前ら、他人にあまり興味を持たないタイプだと思ってたんだが…」
「貴様に勝手に性格を決め付けられたくない!」
「…同感だな」
グリーフアルトがそう言うと兎咬と赤島は反発した。
「まず最初に嬢ちゃんとくるの回収だな」
「ああ、俺が駆け付けるまで持ちこたえろ!赤島」
「まぁ、お前が来るまでには終わってるかもしれんがな!」
「…来い!」
赤島と兎咬がそう言うとグリーフアルトも【悪魔】を構えた。彼の【悪魔】は手袋である。
兎咬が美浪と狂を安全なところに避難させにいった。赤島は素手でグリーフアルトに突撃した。
戦いの火蓋は落とされたのだ-
「……うん、計画通り」
カーシスがそう呟いた。計画はカーシスの思惑通り進んでいた。『七魔王』は仕事をこなしていた。……ウルオッサを除けば。
【…ウルオッサ…執務室に来なさい】
カーシスは念話でウルオッサに語り掛けてきた。ウルオッサはカーシスの声を聴き、目が覚めた。
カーシスの命令に背くわけにもいかない為、すぐに執務室に向かいやって来た。
「ウルオッサ、待っていたよ」
「…僕…なんか処罰されるんですか?」
「いつ誰がそんなこと言った?私は君に仕事を与えるために呼んだんだよ」
ウルオッサはカーシスの意図が分からなかった。
「一体何をするおつもりで?」
カーシスはニヤリと嗤い、答えた。
「これから、「十二支連合帝国」に侵攻する」
-な!?
ウルオッサは驚いた。
「なぜ、「十二支連合帝国」に?」
「「ある物」を得る為さ」
「「ある物」…ですか?」
「ああ、そうだよ。なに、君一人で行く訳ではないんだ。私も向かうし、『悪魔部隊』と『魔捜隊』も一緒だ。何も心配することはない」
カーシスがそう言うとウルオッサは頭に手を置いた。
-何て事だ!こうなるんだったらサボるんじゃなくて普通にここで侵入者と戦うべきだった!
ウルオッサは自分の愚かさに後悔した。サボった挙句さらに面倒臭い事になってしまったのだから。
まさか、カーシスが「十二支連合帝国」に攻め込むなんて思わなかったのだ。完全に失態である。
カーシスには狙いがあった。慧留を陽動として利用したのだ。慧留が拉致されれば必ず助けが来る。
そして、その目論見は叶い、今、「十二支連合帝国」は手薄の状態と言える。そこを叩くのがカーシスの狙いではあるが…
「私は別に「十二支連合帝国」を潰す事が目的じゃあない。用が済んだらすぐに帰るが…済ませてくれないのが彼らだからね」
カーシスはそう言って、常守厳陣と黒宮大志を思い浮かべた。
彼らは必ずカーシスの邪魔をしてくる。それに対抗する為、カーシスは備えていたのだ。
『七魔王』は「十二支連合帝国」の主戦力を抑えている。後はこちらが目的を達成させるだけである。
「さぁ、行こうか」
カーシスはそう言って、執務室に大きな空間の穴を開けた。『黒門』だ。この門を進めば「十二支連合帝国」に辿り着く。
「栄光を掴むのだ!進めえええええ!!」
カーシスがそう言うとカーシスが連れてきた全軍は『黒門』に入って行った。
「はぁ、やはり来たか…奴らは…何が目的だ…」
厳陣はそう呟いた。
「さぁ?直接聞けばよいのでは?」
「そう簡単に行くかね?」
大志の提案に難色を示す厳陣であった。
「ここは何としても守り抜きますよ」
常守澪がそう言った。
「ああ、任せた。ここにいる主戦力は君と黒宮だけだからね」
厳陣はそう言った。すると、上空に穴が開いた。戦闘にいたのはカーシスであった。
「来た!」
大志がそう言うと厳陣は魔道警察全部隊に命令を発した。
「「USW」の全軍からこの国を守れ!!!!!」
厳陣がそう言うと魔道警察全軍と澪、大志が動き出した。
「うん、いい朝の陽ざしだ」
カーシスがそう呟いた。カーシスはとても心地の良い表情をしていた。
「カーシス様。あなたはここで何を?」
ウルオッサがカーシスに疑問を聞くとカーシスは答えた。
「ああ、この「十二支連合帝国」のこの地域は霊力が莫大に溜まっている重霊地なのだよ。ここの霊力をいただく」
「奪ってどうするので?」
「「古代兵器を動かす」のに使う」
-は!?
ウルオッサは驚愕の表情をした。何故なら、古代兵器を動かす為に慧留を連れ出したと言っていた。なのに何故…
「ああ、ツキカゲエルを我が手元に置いたのは私の願いを叶える為、その為に、古代兵器を動かす必要があるのさ」
「だからそれを動かす為にあの女を攫ったんじゃ…」
「ああ、あれは嘘だ。本当の目的は別にある。まぁ、何れ分かるよ」
カーシスはそう言って嗤い出した。
訳が分からないとウルオッサは思った。しかし、いずれにしても戦うしかない。そうでなければ生き残れないのだから。
「分かりました。これ以上は聞かないです」
「よろしい…では、『悪魔部隊』と『魔捜隊』はこの街を散開!ウルオッサは町の中央へ!」
カーシスが命令をするとそれぞれの持ち場に着いた。
「う~ん、どうやら住民は避難させているようだね。こうなることは予測済み…と、喰えない男だなぁ、やっぱりツネモリゲンジンは」
カーシスはそう言って、『四神天城(シシンテンジョウ』』に向かった。
「この先に目的の物がある」
カーシスはそう言って『四神天城』の東門を通り抜けた。
ここの地形は大体把握している。カーシスは単独で向かっていた。
実際、敵はカーシスの部下たちが戦っている。ここはほぼ手薄と言っていい。
「やれやれ…ここを素直に通すと?」
カーシスの前に突如、大志が現れた。彼はここで待ち伏せをしていたようだ。
「ふ…力ずくでも通してもらうさ」
カーシスは二刀の刀を別空間から取り出した。
「若造が…」
「そこまで若くないよ。君ほど老けてはいないけどね」
大志がそう言うとカーシスは妙な返事の返し方をした。
「…?どういうことだ?」
「説明するつもりはないさ!」
カーシスは大志に向かっていった。
ウルオッサは指示通り、この街の中央部にいた。ウルオッサは相変わらず宙に浮いていた。
周りは青空が広がるばかりで何もなかった。地上はたくさんのビルや建物があった。
「「USW」とはつくづく違うな。この国は…なんか…変な感じだ」
ウルオッサはここに来た時は落ち着かない気持ちになる。前始めてきた時もそうだった。
ウルオッサは今まで、「USW」から離れる事は殆どなかった。いざ離れるとなると、この落ち着かない気持ちになることは度々あった。
だが、この「十二支連合帝国」は特にウルオッサを落ち着かない気持ちにさせる。
何故このような気持ちになるかはウルオッサには分からなった。
「まぁ、僕は僕の仕事をするまでさ」
ウルオッサはそう言い、短剣を持ち上げ、自身の【悪魔】の名を呼んだ。
「起きろ、【怠惰人形】」
ウルオッサは【悪魔解放】を発動。小柄で緑の髪と目が特徴だった彼だが、その姿は一変していた。
身体全身包帯に覆われており、頭には二本の角が生えていた。目は片目だけ包帯に覆われていないが、瞳の色が水色に変化していた。
髪もところどころ、包帯から出ており、その髪も水色に変色していた。
背中には黒い翼が生えていた。だが、その翼はかなり巨大であり、片翼だけでもウルオッサの身体を一回り大きくしただけの大きさはあった。
しかし、翼自体はボロボロであり、ところどころ穴が開いていた。
「【世界堕落】」
ウルオッサは翼を広げた。すると、空から魔方陣が現れた。その瞬間、あらゆる場所で異変が起きていた。
「何だ?あの魔方陣は?」
魔道警察官がそういうといきなり体の動きが鈍くなっていた。
「な!?これは…身体が…思う…様に…動かな…い…」
『悪魔部隊』や『魔捜隊』は動きが鈍っていなかった。
先ほどまでは拮抗していたが、魔道警察官は次々とやられていった。
「敵…の…仕業…か…」
『悪魔部隊』と『魔捜隊』は次々と魔道警察官を倒していった。
「ウルオッサ様の御力だ!この機を逃すな!」
カーシス側が優勢になり出した。
「な!?これは…」
大志が驚きの声を上げた。
「ウルオッサの【悪魔解放】の力だよ」
「…あの男のか?しかし、何故だ?影で防御してるはずなのに…」
「ウルオッサの【悪魔解放】の前にそれは通用しないよ。なんせ彼の力は強大だからね。リーダーであるドラコニキルとも肩を並べられる程の強さだ。彼の力は『アンタレス』の中でも屈指の強さなのさ」
カーシスが説明するも大志は攻撃を仕掛ける。しかし、動きが鈍っているせいで攻撃が当たらない。
「当たらないよ」
カーシスは大志の身体を切り刻んだ。大志の全身から血が流れていた。
「ぐ!」
「脆い…脆いね、真祖。この程度かね?真祖の力は?」
カーシスは嘲笑うかのように大志に語り掛けてきた。大志は為す術がなかった。
-このままでは負ける!頼む!誰か…あの男を…ウルオッサを倒してくれ!
大志がそう胸中で叫んだ。
澪はウルオッサの気配を感じた。ウルオッサのいる場所へと向かっていた。【流星神速】を使用して。
澪は赤い瞳を輝かせ、進んだ。この戦いを終わらせる為に。
蒼たちを助けに行けなくて残念な気持ちはあったが、彼らが戻ってくる場所は守り抜かなければならないと澪は思った。
「絶対に…終わらせる!」
澪はウルオッサのいる場所まで辿り着いた。
「おや?君は僕の力を受け付けないのかい?おかしいな…前は効いてた筈なのに」
「あなたの力は身体や霊力、魔力の力を低下させる能力でしょ?それを私の『天星魔法』で無効化してるのよ」
「それでも、やっと…と言った所だね」
ウルオッサは澪に指摘をする。確かにその通りだ。
澪は落ちた能力を無理やり引き上げているだけだ。本来の力とは程遠い。だが、戦える。
「それでも戦うよ!待ってる人たちもいる事だしね!」
澪の眼は迷いが無かった。
「へぇ…前に一回あった時とは別人だね。迷いが消えてる…はぁ~、面倒くさいな~。これじゃあ…」
ウルオッサは魔力を放出した。凄まじい魔力でった。これ程の範囲魔術を使いながらこれ程の力があるとは…
「本気でやらなくちゃあ、いけないね」
澪は本心では「USW」に蒼たちと共に行き、慧留を助け出したかった。
しかし、それが出来なかった。だから、この場所を審でも守ると決めた。
ウルオッサが迷いが消えてるというのはつまり、そういう事なのだろう。
「もう…負けない…ここは絶対守る!」
澪は決意を表明し、一本の杖を出現させた。金色に輝く美しい杖であった。【星神の杖】、この杖の名称である。
「やれやれ…「十二支連合帝国」の連中はどうしてこう、僕を面倒臭い気持ちにさせる…全く…疲れるしだるいし………本当…面倒臭い」
ウルオッサは再び、自身の巨大な翼を広げた。澪は杖を構えた。二人の戦いは静かに始まったのだ。
「USW」の「十二支連合帝国」侵攻が始まった。
To Be continued




