【第三章】USW侵攻篇Ⅻー暴食(グーラ)ー
時神蒼とドゥームプロモ・ドラコニキルが向かい合っていた。ここは『闇魔殿』の「南場」だ。
蒼はドラコニキルの事を思い出していた。最初に会ったときは生徒会の仕事で徐霊をした時だ。二回目はスープレイガが攻め込んできた時だ。
あの時も一回目と同様、ドラコニキルとは顔を合わせるだけで終わっていた。
しかし、蒼はドラコニキルの事をスープレイガと同じくらいの売りに焼き付けていた。
何故なら、彼は蒼があった悪魔の中でも特に異質な存在感を放っていたからだ。根拠はない。だが、魔力、雰囲気から彼の異質さを感じずには蒼はいられなかった。
黒色のストレートヘアーと黒と白のオッドアイを持つ枯れた雰囲気を持つ青年だ。
「ドラコニキル!」
蒼はドラコニキルの名を呼んだ。
「ふー、俺の名を覚えていたか…名乗った覚えはないんだが…まぁ、いい。始めようか…」
ドラコニキルは長剣を抜いた。刃が黒く、峰は白で構成された変わった形状の長剣であった。恐らく、彼の使っている【悪魔】であろう。
「俺が使ってるこの刀や自身の力を封印している武器の媒体を【悪魔】という。これを使うという事は俺も今回は本気で戦うという事だ」
「何が言いたい?」
ドラコニキルの言葉の意味が理解できない蒼はドラコニキルに質問した。
「つまりお前はここで死ぬんだ。本気の俺に勝てるわけ無いんだからな」
「随分な自身だな」
「事実さ…俺に勝てるのは…あの方だけさ」
「その『あの方』って奴がお前を動かしてるって訳か」
「それはお前の判断に任せる」
「そうかよ!!」
蒼は刀を抜いた。蒼の使う武器は刀の形をした【天使】だ。正式名称は【天使】と言う。
蒼がこの事を知ったのは厳陣に聞かされた時だが。蒼の【天使】は青白い刀身が特徴の日本刀である。
「蒼…」
ラナエルが蒼の名を呼ぶ。
「ラナエル…下がってろ」
蒼はラナエルにそう言った。ラナエルは蒼の指示通り、後ろに下がった。
「ラナエル?」
ドラコニキルは何故かラナエルの名前を聞き、反応した。
「?」
蒼はドラコニキルの反応に不審に思ったがあまり気にしないことにした。
「ほう…向かい合っただけで分かるよ。君は強いとね…いや、今の君が君の本来の力か…」
蒼の霊力とドラコニキルの魔力がぶつかり合う。
「行くぞ!」
「来い!」
ドラコニキルと蒼の戦いが始まった。
天草屍とグリトニオン・ニヒルは激戦を繰り広げていた。屍はグリトニオンの戦斧を躱し続けていた。
現状、屍は防戦一方の状態である。
「どうした!?避けるだけでは勝てんぞ!!」
グリトニオンがそう言うが屍は攻撃を躱し続ける。グリトニオンは戦斧を振り下ろし、その衝撃で戦斧が地面に突き刺さった。
「今だ!」
屍は戦斧に触れた。これが屍の狙いであった。グリトニオンの【悪魔】を別の物質に錬金し、無力化させる。
そうすれば、屍は勝ったも当然だ。しかし-
「馬鹿が!!」
グリトニオンはそのまま戦斧を屍ごと持ち上げた。そして、屍を振り投げた。
「ぐ!」
屍は空中で体勢を立て直し、地面に着地した。
「?」
屍は自身が先ほどグリトニオンに触れた右手を見て疑問を浮かべた。
-さっき、錬金術を使ったはずだ。なのに何故?
「貴様の疑問を教えてやろうか?それは【悪魔】と持ち主は強くリンクしているからだ。これにより、【悪魔】には錬金術やその他の物質を返還する術は無効化する」
「なるほどね…それで…」
屍は何事もないようにそう言った。しかし、それは面倒だと屍は思った。
いや、覚悟はしていたが【悪魔】には錬金術が効かないとなると簡単には倒せそうにはなかった。
「行くぞ!」
グリトニオンは屍に接近していった。屍は地面に手を置いた。すると、地面から巨大な岩壁が出現した。
屍は錬金術の達人であり、有名な大妖怪、酒呑童子の子孫だ。これくらいの芸当は訳ない。
しかし、岩の壁もグリトニオンは一撃で粉砕した。
「ち!なんてパワーだ!一撃で粉々かよ!」
グリトニオンは『七魔王』の一人だあり、『アンタレス』屈指の実力者だ。簡単には勝たせてはくれまい。
屍は格闘戦に持ち込んだ。屍は錬金術だけでなく格闘スキルも高い。というか、格闘スキルだけなら、蒼や遥、澪よりも上だ。
屍は急接近して、グリトニオンの顎にアッパーを加えた。
「ぐ!?」
いきなり接近してアッパーを喰らったことに驚いたのかグリトニオンは驚きの表情を浮かべた。屍は右手をクイッと自分に寄せた。
「来いよ」
屍が挑発するとグリトニオンは向かっていった。
グリトニオンは戦斧という武器の都合上、攻撃がどうしても遅くなってしまう。
それでも、グリトニオンの攻撃速度は相当速い。しかし、屍の前では止まってるも同じである。
「うおおお!」
グリトニオンは攻撃を続けるが当たらない。そして、交わされる度に一発もらってしまう。
「しっ!」
屍はグリトニオンの脇腹を蹴り飛ばした。グリトニオンの脇腹を完全に砕いた。しかし、グリトニオンは立ち上がった。
「脇腹砕いたのにまだ動けるのかよ!?」
屍はグリトニオンの驚異的なタフさに驚きながらも攻撃を続ける。グリトニオンの大振りを躱す。
そして、グリトニオンの右腕にパンチを食らわせた。右手は間違いなく砕けた。
しかし、左手で戦斧を振り回す。それも屍は躱す。そして、グリトニオンの頬に蹴りを喰らわせた。
顔の骨の一部が砕ける音がした。さらに屍は接近して畳みかける。
グリトニオンは辛うじて立ち上がったが、屍はジャンプして、体重を乗せてグリトニオンの右足に蹴りを食らわせた。
さらにもう片方の足も両手で連続でラッシュを放ち、打ち砕いた。
さらに顔面に両手で瓦割をした。グリトニオンは全身の骨を砕かれていた。
「ぐぁ…」
グリトニオンは流石に立てなそうだった。屍が本格的に攻め始めてから屍が一方的にグリトニオンを圧倒していた。
「これだけぶち込めば流石に動けねぇだろ…勝負あったな。だが、気を失ってねぇのは大したもんだ。こんだけやっても倒れねぇなんて…」
屍がそう言うとグリトニオンは笑い出した。
「ふふふ…これだけあれば……十……分……だ……」
屍はグリトニオンの言葉に寒気を感じた。すぐにグリトニオンの顔面にパンチを叩きこもうとする。
「食い散らせ…【餓血蟲蠅王】…」
グリトニオンは【悪魔解放】を発動した。すると、赤い蒸気が発生し、屍を吹き飛ばした。
「ぐ!」
忽ち蒸気が消える。すると、グリトニオンの姿が現れた。
「なんだ!?そりゃあ!?」
グリトニオンの身体は一回りほど巨大化していた。
体色もより色黒になっており、右腕はバズーカの様な形状になっていた。
左手も巨大化していた。顔も鬼のような顔に変化していた。そして、背中には蠅の翼と黒い尻尾が生えていた。見た目は完全に巨大な蠅の化け物であった。
「さて、始めるか…」
グリトニオンは動き出した。動きはそこまで速くなかった。
むしろ、開放る前よりも遅くなっている。屍はグリトニオンの拳を躱し、彼の顔面に蹴りを入れた。しかし-
「な!?」
グリトニオンは微動だにしなかった。そして、そのまま屍の足を左手で掴み、右手のバズーカを屍に向けた。
振りほどこうとする屍であるが、グリトニオンの腕力が強すぎて抜け出せない。
「【暴食砲】!」
グリトニオンは右手から巨大な魔力砲を発射した。屍はその魔力砲に直撃した。
「ぐああ!!」
屍はそのまま吹き飛ばされた。さらに、グリトニオンは追撃を続けた。移動速度が先ほどより速くなっている。
すぐに屍のいるところに迫っていた。
「おおおおお!!」
グリトニオンは屍に両手で瓦割をした。
「が!」
屍は地面に叩きつけられた。
-どういうことだ!?スピードも上がってるだと!?こいつ…
屍は立ち上がり距離を取ったが、グリトニオンは屍を追いかけた。屍と速力が変わらなかった。
「馬鹿な!?その図体で俺とほぼ速力が変わらないだと!?」
屍は再びグリトニオンに拘束され、地面に叩きつけられた。
「ぐぅ!!」
「終わりだ!」
グリトニオンがそう言うとグリトニオンの尾が巨大化していき、口のような形に変化した。
「【喰骸】!!」
グリトニオンの尾が屍の右腕を食い千切った。
「ぐああ!!」
屍は絶叫を上げるも残りの左腕で、巨大な岩壁を錬成し、拘束から逃れた。
「ふふふ…行くぞ!!」
グリトニオンは先ほどよりさらに魔力が上昇していた。
「どうなってやがる!?さっきから魔力が上がり続けてる……どういうことだ?」
屍は数秒間、グリトニオンの力を分析した。グリトニオンの事を振り返っていた。するとある一つの答えに辿り着いた。
「まさか…お前……≪喰らう≫事で力を倍加させる能力か!?」
「…当たりだ。中々の分析力だな」
屍はグリトニオンの能力に気付いた。グリトニオンは【悪魔解放】を発動する前に屍にボコボコにされていた理由がこれだ。
解放前のグリトニオンは屍のダメージを≪喰らって≫いた。そして、さらに今、屍の右腕を喰らった事により魔力が倍加している。つまり…
「ダメージを受ければ受けるほど強くなる…さらに、生物を捕食する事でも強くなるって事かよ!?」
「その通りだ。俺は無敵だ!」
グリトニオンは屍に向かっていった。速度がさらに上昇していた。
「素手の攻撃はロクに通らない。ならば!」
屍は左手を地面に置き、槍を錬成した。そして、グリトニオンに攻撃をした。しかし、これまたダメージがロクに通らない。
「無駄だ」
「くそ!!」
グリトニオンは屍にラリアットを喰らわせ、吹き飛ばした。さらに、【暴食砲】を放った。屍に直撃した。
「ぬううううううう!!」
屍は大ダメージを受けていた。既に意識を失いかけていた。
「さて、貴様を喰らうとするか」
グリトニオンは【喰骸】を使い、屍を捕食しようとした。屍は全身を喰われる事こそ無かったが、左足を喰われてしまった。
「があああああ!!」
屍は地面に倒れ伏した。屍はどうするか考えた。
-どうする?このままじゃあ俺はあいつの養分だ…
屍は志向を巡らすが何も思いつかない。そうこうしてる内にグリトニオンが既に屍の前に来ていた。
「貴様を喰らえば終わりだ。俺の【悪魔解放】は解放前に受けたダメージによって大きさが変わるがここまで巨大化したのは久しぶりだったぞ。貴様は一滴残らず喰らいつくしてやる」
グリトニオンはそう言って【喰骸】を屍に向ける。
すると、屍は左手を使い、道中で拾った鉱物を槍に錬成し、【喰骸】を切り裂いた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
屍は立ち上がり、【喰骸】を左手に当て、錬金術を使用した。すると、欠損した左足と右手が復活した。
「何!?何故だ!?俺の身体を錬成するなど…」
「思った通り…身体から切り離せば錬成できた。…お前等悪魔の体構造は把握してる。後は、お前の身体から体の一部を切り離せば、このように錬成できる」
【悪魔】は持ち主とリンクしており、そこに見えないパスが通ってる為、錬成は出来ない。
しかし、【悪魔解放】を使用すれば悪魔は持ち主の魔力へと変換され、見えないパスが無くなる。
つまり、完全に同化するのだ。屍はその一部を道中で拾った鉱物により、切り離した。
それにより、切り離した物質のみ、錬成が可能となった。
新たに錬成された右手と左足は、赤黒かった。しかし、新たな右手と左足は莫大な魔力が放たれていた。
「行くぜ!【暴食暗鎗】!」
屍は鉱物で作った鎗に新しく錬成された右手の魔力を掛け合わせた。
すると、鎗が赤黒く変色した。鉱物は悪魔の魔力を吸収する性質がある。特に「USW」の鉱物は悪魔が多くいる為、その魔力を吸収している。
悪魔が鉱物を好む理由はその為である。魔力を帯びた特殊な鉱物を【魔石】と言う。
屍はその鉱物の性質を利用し、グリトニオンの一部を使い錬成した、右手と左足の魔力を鉱物に注ぎ込み、鉱物を変化させたのだ。
屍はグリトニオンに突撃した。
-く…先ほどより速力が上がっている…
グリトニオンは屍の身体を左腕で拘束したが、屍はグリトニオンの左腕を切り裂いた。
「何!?」
さらに屍はグリトニオンの身体に鎗を突き刺した。
「らああああ!!」
「ぐぅ!!」
グリトニオンは右手で防いだが圧倒的な力によって吹き飛ばされてしまった。
「ここまでやるとはな…」
グリトニオンは苦悶の表情を浮かべる。しかし再び、【喰骸】を発現させた。
グリトニオンには再生能力がある。喰らった魔力や霊力を回復に割り当てることができる。左腕も元に戻っていた。
「ちっ…マジでタフな野郎だ。けどなぁ、俺も負けられねぇんだよ!」
屍はそう言ってグリトニオンに突撃した。
「あ!?俺が学校生活!?」
屍は『四大帝国会議』の後、常守厳陣と会った。その後、屍は取り調べを受けていた。
さらに日数が経ち、屍と厳陣は『四神天城「シシンテンジョウ」』の執務室で話をしていた。
その後、「アザミの花」の大半が魔道警察官として生きる事となった。屍もそうするつもりであった。
屍は十二支連合帝国を変えたいと思っていた。その為に、魔道警察官になった方が手っ取り早かった。
にも拘らず、厳陣は屍に学校に行くよう勧めていた。
「君はまだ、十八程だろう…学校に行く方がいいと思ってね。君はまだ幼い。基本的な教養を学べる時期でもあるんだよ」
「そんなもん…俺に取っちゃあどうでもいいんだよ!!」
「学生生活でないと出来ない事もたくさんある。御登狂君と蛇姫薊君も学校に行く事を選んだよ」
「な!?あの二人が!?」
「君たち三人以外は学校に行けるような歳では無いから魔道警察官になってもらうが…君たちはまだ若い。学校で色々学んでから魔道警察官になっても遅くはあるまい」
「だけど…他の奴らは…」
「ボス…いえ、屍さん…あんたは学園生活をするべきだ」
厳陣と屍の会話に現れたのは赤島英明だった。
「英明…」
「私もボスには学校で生活していただきたいと思います」
「審矢…」
兎咬審矢もそう言った。
「なぁに、こっちの事は俺たちで任せてくださいよ」
「……ふっ」
赤島がそう言うと屍は少し笑った。
「私たちだけでは頼りないでしょうか?」
「いや………分かったよ…お前らがそう言うなら…」
屍は赤島と兎咬の意思を尊重する事にした。
「なら、決まりだね」
「ああ、で?俺はどうすればいいんだ?」
厳陣がそう言うと屍が厳陣に尋ねた。
「まず、君に入ってもらう学校は一宮高校だ。そこの生徒会に行きなさい。澪たちがそこに所属している。時神蒼君や月影慧留君もそこに所属している」
「………分かりましたよ。そこに行けばいいんですね?」
「君はどうやら、時神君と月影君が気になっているようだからね」
「…別にそう言う訳じゃ…」
屍は厳陣の言葉を聞き、何でもお見通しかよと思った。そう、屍は蒼と慧留が気になっていた。
蒼とは自分と似た者同士である事を自覚していた。蒼と戦った事で…
慧留は『四大帝国会議』で自分が守ろうとしていたものを最後まで守ってくれた。そんな慧留に恩を屍は感じていた。
始めは蒼と慧留、薊や狂くらいしか話していなかったが、学校生活は意外と悪くなく、生徒会の皆とは普通に話せるようになっていた。
屍は生徒会をそれなりに気に入っていた。
-そんな矢先に「USW」がやって来た。そして、月影を…
屍は慧留が攫われたと知るとすぐに助けに行く決意を固めた。蒼も同じ気持ちだと分かっていた。
だからこそ屍は今ここにいるのだ。仲間を助ける為に。「アザミの花」のリーダーで無くなろうとも屍の本質は変わらない。
屍は生徒会を家族と重ねるようになっていた。そして、彼は強く、今の場所を守りたいと思った。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
グリトニオンは右手を屍に向け【暴食砲】を放った。
しかし、屍は【暴食暗鎗】で【暴食砲】を切り裂いた。
「はああああああ!!」
屍はグリトニオンの右手を切り裂いた。しかし、【喰骸】を使い、屍の腹を抉った。
「ぐぅ!!」
屍は痛みを堪え、グリトニオンの腹に鎗を突き立てた。そして、身体を回転させ、貫通力を高め、自身の身体ごとグリトニオンの身体を貫通させた。
「がはぅ…」
グリトニオンの腹には大穴が開いていた。そこから大量の血が噴き出していた。しかし、グリトニオンは再生能力を使い、大穴を塞いだ。
「はぁ、はぁ…」
屍は限界が近づいていた。霊力はもう、ほとんど使い果たしていた。
【悪魔解放】状態の悪魔の身体の一部を錬金した事により、屍は相当霊力が消耗していた。
さらに、彼は素手で戦う時でも霊力を使用する為、霊力の消耗は計り知れなかった。今は、錬金した魔力を頼りに戦っている。
「どうやら、お互い、そこまで戦えそうにないな」
グリトニオンがそう言った。グリトニオンの身体はかなり縮んでいた。
というか、解放前とほとんど変わらなかった。どうやら、再生で相当魔力を使ってしまったようだ。
-次で…終わらせる!
屍はありったけの霊力を鎗に込めた。そして、右手と左足の魔力も込めた。
「うおおおおおおおおおお!!!」
「はああああああああああ!!!」
屍とグリトニオンはぶつかり合った。グリトニオンはもはや、【暴食砲】を打つ魔力は残っていない。なら、グリトニオンの取る手段は一つだった。
グリトニオンは【喰骸】を使い、屍を喰らおうとした。
そして、【喰骸】は屍の右手を噛み千切った。だが、グリトニオンはその瞬間、力が抜けた。
「何!?何故だ!?」
「あああああああああああああああああああああ!!!!!」
屍はそのままグリトニオンの脇腹を貫いた。そしてそのままグリトニオンを吹き飛ばした。
「が…」
グリトニオンはそのまま壁に激突した。そして完全に【悪魔解放】が解けた。
「馬鹿な…この俺が…」
「はぁ、はぁ、はぁ…」
屍は膝を着き、そして、そのまま倒れた。
グリトニオンが最後に屍を喰らって動きが逆に鈍ってしまったのは、食べたのが「屍の右腕」だったからだ。
屍の右手はグリトニオンの身体の一部である【喰骸】を使い、錬成した。つまり、グリトニオンの身体の一部である。
【餓血蟲蠅王】は自分と同じ属性の物を喰らうと力が落ちてしまう。
それにより、グリトニオンは最後に捕食をしたとき力を弱めてしまったのだ。
「……まだだ」
屍はそう言うが身体が動かない。屍はそのまま力尽き、倒れた。
「ドラコニキル…後は…頼んだぞ…」
グリトニオンも気を失った。
グリトニオンは物心ついた頃から「USW」の『アンタレス』として育てられた。
彼は与えられた命令を忠実にこなす。それだけが自身の存在意義であると思っていた。
任務で仲間が次々死んでいったが、グリトニオンはそれを苦とは感じなかった。
幼少の頃から戦いを運命づけられていた為か慣れていた。
やがて月日が経ち、グリトニオンは『アンタレス』の『七魔王』の一人として新たに選ばれた。
別に特に嬉しくはなかった。別にグリトニオンは出世したかったわけではない。いつも通りにするだけだと思った。
グリトニオンが『七魔王』になる頃は入れ替わりが激しい時期であった。
『七魔王』の入れ替わりは普段から結構激しいのだが、世代交代する時は特に激しくなる。
グリトニオンはその時期に『七魔王』に選ばれた。
この時は『七魔王』は総入れ替えをしていた。
グリトニオンは一番最後に『七魔王』に選ばれた。
グリトニオンが現『アンタレス』リーダー、ドゥームプロモ・ドラコニキルと初めて出会ったのがこの時だ。
「さてと、まぁ、知っているとは思うが『七魔王』はメンバーが全員変わった。だから、一人づつ自己紹介していくぞ~」
ドラコニキルは気の抜けた声でそう言った。グリトニオンは「こんなやつで本当に大丈夫か?」と思った。
因みにこの世代の『七魔王』は歴代最強と名高く、大いに期待されている世代でもある。グリトニオンはあまりそう言うことに興味はなかったが…
「ね~、僕寝てもいいですか?」
ウルオッサが気だるげにそう言った。
「駄目だ、終わってから寝ろ」
「やだ、メンドイ」
ウルオッサが寝だした。アルビレーヌはフラフラ歩きだすし、グリーフアルトはゲームをしていた。スープレイガはというと…
「なぁ、アンタ、何で無口なんだ?なんか喋れよ?」
スープレイガはグリトニオンに喧嘩を売っていた。速くも新『七魔王』はガバガバな状態であった。
「大丈夫なのか、これ?」
グリトニオンが珍しく、苦悶の声を漏らした。
グリトニオンは今の『七魔王』は歴代最強というだけでなく、色々、厄介なものが多い事も知っていた。
グリトニオンが知る限り、その中でもスープレイガとアルビレーヌは特にヤバいと思った。
彼らの出自はかなり異質なものであるから…
「おい、俺は今、自己紹介しろつったよな?」
ドラコニキルが殺気を放った。魔力を放出したのではなく、ただの殺気だ。
ウルオッサは飛び起き、アルビレーヌはフラフラするのを止め、グリーフアルトはゲーム機を落とし、スープレイガもドラコニキルの殺気に反応し、ドラコニキルを見て息をのんだ。
「ただ、一瞥しただけで…」
グリトニオンはドラコニキルの力に驚いた。
「うん、じゃあ、自己紹介ね。まずはウルオッサから」
「ワカリマシタ」
ウルオッサは怯えていた。
「……大した奴だ」
グリトニオンはドラコニキルを素直に称賛した。この男にならついていけるとグリトニオンはそう思ったのだ。
ドラコニキルは曲がりなりにも『七魔王』をまとめていた。
いや、彼は敢えて、他のメンバーを自由にしているよに見えた。
まとめさせないといけない時以外は基本的に好き勝手やらせている。
その癖、いざという時はドラコニキルを筆頭に統率力を見せ、無類の強さを見せた。
グリトニオンはそんなドラコニキルを見て不思議に思った。何故、バラバラなのにここまで統率を取れているのかと。
そして、ある日、グリトニオンはドラコニキルと二人で話をしていた。
「ふー、バラバラでいいのさ」
ドラコニキルはそう言った。
「はぁ…」
グリトニオンはあまり意味が分からなかった。グリトニオンが思う組織とは規律を守ることが重要な筈だった。
なのに、ドラコニキルはグリトニオンの思う組織の在り方の全く逆の事をしている。
なのに何故、ここまでこの『七魔王』は強いのか…グリトニオンは疑問で仕方なかった。
本来、グリトニオンはあまり疑問を持たないタイプである。だが、今回は珍しく疑問に思ったのでドラコニキルに聞いた。
「普段から無理に合わせる必要は無い。バラバラな個性を合わせてこその組織だ。まぁ、俺が細かい規律を一々強要したりするのが面倒臭いという理由もあるが…まぁ、そこらへんは適当だな」
ドラコニキルはそう言った。如何せん納得がいかないグリトニオンであった。
「やはり分からないな…」
「まぁ、お前も好きなようにやればいいさ、価値観を無理に押し付けて縛るのは俺はそこまで好きじゃないし、何より、俺は平穏であれば何でもいい」
ドラコニキルの言葉を聞き、グリトニオンは少しだけ、ドラコニキルの事を分かった気がした。
ドラコニキルは個を尊重する男なのだ。そして、その個とは自分も含まれている。
ドラコニキルは自身の平穏を望んでいる。だからこそ、彼は周りには最低限の事しか縛らない。本人がどこまで意図しているかは知らないがそれで統率は出来ている。
「少しだけ…あなたの事が分かりましたよ」
「…そうか」
グリトニオンはこの男なら自分はついていけると思った。グリトニオンはが他人にきょみを持ったのは初めての事だった。
ドラコニキルはそれほどにまでカリスマに溢れる男であった。
「………二人目か…」
カーシスはそう呟いた。彼は今までの戦いの全てを見ていた。
「このまま行けば侵入者は殲滅させられる…だが、ゲンジンの事だ。何をするか分からん」
カーシスは空を見上げながらそう言った。青空であり、太陽がさんさんと照らしていた。
「さて、少し、散歩に行こうか…」
カーシスは執務室を出た。向かった先は地下だった。
地下には主に地下牢がある。慧留を幽閉敷いているのもその場所だ。
しかし、カーシスが向かったのはそこではない。
「ここだ…全てが始まった場所」
カーシスが向かったのは地下の祭壇であった。
「ここは…原初の悪魔…『アンタレス』と契約したとされる場所だ。ここが…「USW」始まりの場所…」
ここはかつて、人間たちが魔族により蹂躙されていた頃の隠れ家でもあった。
しかし、クリフォト・ユールスナールが『アンタレス』とここで契約を交わした場所でもある。
「ここにいると…落ち着くよ…いい、やはりここは…」
周りは黒で埋め尽くされており、祭壇も不気味な雰囲気を醸し出していた。
とてもいいところとは思えなかった。しかし、カーシスはこの場所を心地よいと思っていた。
「少し-昔話をしよう。それは、魔族と人が手を組んだ話だ」
カーシスは一人でに語り始めた。
今から何百年も前、「USW」は悪魔たちに支配されていた。
人類は奴隷として売り買いされ、コロシアムで娯楽として人と人を戦わせるものもいた。
そんな中、クリフォトは悪魔と戦っていた。クリフォトは類稀なる霊呪法の才能と悪魔の力を使役する力が備わっていた。
クリフォト・ユールスナール。青がかった黒髪と赤い眼をした青年であった。
服は黒を基調とした軍服である。人間と悪魔の力は当時は一部の人間以外ロクに戦えなかった。
それにより、戦況は人間側が不利になっていた。
さらに、魔族は悪魔だけではない。他にも様々な魔族がいる。だが、その中でも特に手を焼いていたのは悪魔であった。
「この戦いは…いつまで続くのか…」
クリフォトはそう呟いた。クリフォトの両親は悪魔に殺されている。しかし、クリフォトは両親の顔を覚えていない。
物心つく前から死んでしまったのだから。
「俺は…何の為に生きている?戦う為か?なら、俺は死ぬために生きているというのか?」
クリフォトは自身の存在意義をずっと考え続けていた。そうでないと、自分が自分で無くなる気がしたから…
クリフォトは答えを探し続けた。その度に戦い続けた。悪魔を殺し続けた。
「ここもいつまでもつか…」
クリフォトは「ワシントン」のとある場所にある地下空間を隠れ家としていた。
ここにはクリフォトだけでなく、数百人もの人が住んでいた。
クリフォトは別に平和を望んでるわけではない。というか、平和を実現するのは不可能だとすら思っている。
何故なら、人も魔族も同じだ。平和を望みながらも、争いを望んでいる、矛盾に満ちた生き物だからだ。
人は平和だけでは生きていけない。それは魔族も同じなのではないだろうか?とクリフォトはそう考えていた。
だからこそ、クリフォトは自身の生きている意味を探し続けていた。
そんな自己矛盾の塊である人間が…自分自身が生きている意味を見つけ出したかったのだ。
「うあああああああああ!?!?!?!?!?」
叫び声が聞こえた。悪魔が攻め込んでいた。クリフォトは戦いに向かった。隠れ家の場所もばれた。ここも終わりだ。
クリフォトは悪魔を殲滅した。しかし、残りの人間は皆死んだ。
「終わりは……一瞬で来るものだな……」
クリフォトは天を見ながらそう言った。だが、悲しくはなかった。だが、何より虚しかった。
こんな世界で自分は生きている意味があるのかと。クリフォトは葛藤に襲われた。
これからどうする?いや、考えて何の意味がある?答えはあるのか?答えが無いのなら探す人用はあるのか?仮にあったとしてどう見つければいいんだ?いや、そもそも、今この瞬間も何も意味が無いのではないか?
クリフォトは考えるのを止め、一人でに歩き出した。
「生きるって何だ?罪とは…何だ?」
クリフォトはそう考えた。こんな時代だ。罪など犯したところで変わらないだろう。クリフォトはそう思った。
この世界には人を悪に導く七つの要因があるとされる。≪色欲≫、≪暴食≫、≪傲慢≫、≪強欲≫、≪嫉妬≫、≪怠惰≫、そして、≪憤怒≫の七つだ。
しかし、この七つの罪は人を悪に導く要因でありながらも、人に活力を与える原動力でもある。
色欲が無いという事は人と人が触れ合う愛を知ることができないという事、食べ物を食べないとなるとそれは死に直結する。
傲慢ではないという事は自分に自信が持てず重圧に押しつぶされる。
強欲でないという事は何も得ることができなく寂しくなる。嫉妬が無いという事は相手を羨んだり、競い合ったりする事はない。
怠惰でないという事は休む事が出来ず身も心も壊れる。憤怒が無いという事は誰かの為に怒る事が出来ない。
こういったように七つの大罪は人を悪に導く要因であると同時に人を導いてきたものでもあるのだ。ここでも、矛盾が生じているとカーシスは思った。
「世界は表裏一体…なら、俺は?」
クリフォトは何も分からなかった。一人でまたもや葛藤を始めた。そんな時だ。
「やあ、クリフォト君」
声が聞こえた。女性の声であった。黒く長いウェーブがかかったいる女性で白い装束を纏っていた。
「君は…?」
「私は『アンタレス』。悪魔の始祖よ」
クリフォトとアンタレスの出会いはここから始まった。
To Be continued




