【第三章】USW侵攻編Ⅺ―色欲(ルッスーリア)―
御登狂は『七魔王』の一人『色欲七魔王』ルッシュベル・ルルルガルと交戦していた。
「【鴉鴉有幻】!!」
狂はルッシュベルに攻撃を仕掛けた。しかし、ルッシュベルはそれを躱し続けた。
「うん、悪くないね」
ルッシュベルはそう言って右人差し指を狂に指した。そして、人差し指の先端から黒いビームが放たれた。【黒閃光】だ。【黒閃光】とは、悪魔が使う基本的な技の一つだ。悪魔なら基本的に誰でも使うことのできる技だ。
狂は【黒閃光】を躱そうとしたが躱しきれず、左手に当たってしまった。
「痛!」
狂はそう言いながら再び幻覚を作り出した。狂は幻覚を実体化させる能力がある。制約や制限は存在するが…
「【常闇地獄蝶華】!」
狂は無数の黒い蝶を召還した。その蝶は霊力の鱗粉をばら撒きだした。すると、ルッシュベルの身体が解け始めた。
「な!?」
ルッシュベルは流石に驚き、声を上げた。さらに、手から刀が出てきて、その刀がルッシュベルの顔を貫く。
「があああああああああああ!!」
ルッシュベルは絶叫を上げた。しかし、ルッシュベルはあることに気付いた。
「これは…」
ルッシュベルはそう呟くと頭の冠が光り出した。すると、ルッシュベルの身体は元に戻っていた。
「嘘!?まだ十秒も経ってないのに!?」
狂はかなり驚いた顔をしていた。
「僕に幻覚は効かないよ。悪手だったね!」
ルッシュベルがそう言うと再び冠が輝きだした。すると、狂の眼に光が無くなり、身体がフラフラになっていた。
-何?これ?気持ち悪い…いや、気持ちイイ…
狂は膝をついた。
「僕の力の前では全ての生き物は僕の思うがままさ」
ルッシュベルがそう言い放った。そして、ルッシュベルは狂に近づく。ルッシュベルは狂の目の前に立ち、狂の額に右人差し指を向けた。【黒閃光】で狂の胴体を吹っ飛ばす気だ。
「これで終わりだよ」
その時、ルッシュベルは謎の気配を感じた。その瞬間、ルッシュベルに岩が飛んできた。ルッシュベルはそれを躱した。
「誰だ?」
ルッシュベルがそう尋ねるとルッシュベルの右横に大穴が開いていた。恐らくそこから誰かが岩を飛んできたのだろう。
「何かやばそうな気配がしたから来てみたけど…来て正解やったみたいやな」
現れたのは霧宮美浪であった。
美浪は『魔捜隊』から、服を奪った後、走り続けていた。
「それにしてもここはとてつもなく広いな…どないしたもんやろ…?」
美浪は野生の感を頼りに進んでいた。美浪を始めとした獣人系の魔族は鋭い五感が備わっており、それを頼りに進んでいた。しかし、ただの直観である為、当然、感が外れる事もある。
「ここは土地慣れもしてへんからな~。どうも、道が分からへんわ…」
美浪はそうぼやいていると、美浪は近くの霊力を察知した。
「この霊力は…くるちゃん?……もう一人のは魔力…くるちゃん、もしかして、誰かと戦って?」
足を止め、そう呟いた。距離はそう遠くない。というか恐らく美浪に右側の壁の向こうだ。
「………よし!行こう!」
美浪は狂を助ける決意固め、壁を突き破った。
「これまた厄介そうなのが来たね…」
ルッシュベルはそう呟いた。一方、美浪は周囲を見回していた。そして、ルッシュベルを見た。はいいっろの髪と異常に白い肌とやせ細っているのが特徴の男だ。
「くるちゃん!」
美浪は狂を見つけるとすぐに狂の元に向かった。しかし、ルッシュベルが立ち塞がる。
「行かせないよ」
美浪はルッシュベルを潜り抜け、狂を抱えてルッシュベルから距離を取った。
「大丈夫!?くるちゃん!!」
美浪は狂を揺らした。
「はぁ~~~」
しかし、狂は未だに気持ち良さそうにしていた。
「起きろ!!」
美浪は思いっきり、狂の頭を叩いた。
「痛い!!」
狂は目が覚めた。
「良かった…起きた」
「ここはどこ?あれ??何で美浪ちゃんがいるの??」
狂は若干混乱しているようであったが、ルッシュベルを見るとすぐに今までの事を思い出した。
「そうだ!あいつに何かされたんだった!!」
「何をされたの?」
「う~ん。なんか気持ちよかった記憶しかないんだよね~」
美浪が狂に尋ねるも狂自身も分からないようであった。
「分かる必要はないさ!」
ルッシュベルはそう言って再び冠から光を放った。しかし、美浪は危機を察知し、目を瞑り、距離を取った。さらに、そのまま「神獣化」し、目を瞑ったままルッシュベルに向かっていった。美浪の『神獣化』は使うと美浪自身が巨大な狼の姿になる。一時的に身体能力を何倍にも引き上げる力だ。
「!!」
ルッシュベルは驚きの表情を浮かべた。すぐに回避しようとするが間に合わない。目を瞑っているにもかかわらず、美浪は正確にルッシュベルの位置を特定しており、美浪の爪がルッシュベルを切り裂いた。
「ぐ!」
ルッシュベルはそのまま吹き飛ばされた。美浪はすぐに「神獣化」を解いた。「神獣化」の長時間の使用は今の美浪には難しかったからだ。
「………この感覚…まさか…」
美浪はそう呟いた。美浪は敵の能力をなんとなく理解した。
「やるね…」
ルッシュベルは姿を現した。全身が血まみれになっていた。しかし、その血のせいで彼の白い肌が目立ち、余計に不気味さを引き立てていた。
「あなたの力は…「フェロモン」ですね」
美浪はそうルッシュベルに言った。
「「フェロモン」???」
狂は疑問の声を上げた。
「「フェロモン」は簡単に言えば、相手を引き付けるものだよくるちゃん」
「フェロモン」とは基本的には異性を引き付けるためのものである。動物や魔族の種類によって「フェロモン」は異なる。それをルッシュベルは自在に奴ることができるのだ。
「ご名答。感がいいね、君」
ルッシュベルはそう呟いた。
「やれやれ、困ったな。君と僕とでは相性最悪だね…というか、君、獣人族だね。道理で感がいいわけだ」
ルッシュベルはそう呟いた。
「あなたの力はその冠の光を見ることで作用するみたいね。その冠の光を見た者に自動的に「フェロモン」をまき散らす。逆に言えば冠が光ってる時にその冠を見なければ、「フェロモン」をまき散らす事は出来ない」
「またまた、ご名答だ。参ったな…このままでは僕は勝てそうにない…」
ルッシュベルは両手を上げながらそう言った。
「カラクリが分かればもう怖くないわ」
美浪がそう呟くとルッシュベルはニヤリと嗤い出した。
「そうだね、僕の力を見破られ、対抗策まで立てられてしまった。「このまま」じゃ、勝てないね、僕は」
美浪は訝し気な表情をしながらルッシュベルを見た。
「美浪ちゃん!あいつはまだ、本気を出してないよ!」
「そうみたいですね。…魔力が上がって来とる」
ルッシュベルは楽し気だった。久しぶりに歯ごたえのある敵と遭遇できて嬉しかったのかもしれない。ルッシュベルは好戦的という訳ではないが、今まで歯ごたえの無い敵とばかり戦って来た為か自分でも意外な意外なほど高揚感に満ちていた。
「さぁ!踊ろうか!!征服しろ!【色魔人】!!」
ルッシュベルは【悪魔解放】を使用した。すると、ルッシュベルの周囲に紫のオーラが発生し、ルッシュベルを包んだ。しばらくして、ルッシュベルは姿を現した。
「「な!?」」
美浪と狂は絶句した。何故なら、ルッシュベルの魔力が膨大に上がっているだけでなく、姿が異形なものになっていたからだ。
上半身は裸であり、下半身はクジャクの羽毛のようなもので覆われていた。さらに両手ともこれまたクジャクの羽のようになっていた。さらに、頭部にはインディアンの様な意匠を施された王冠になっていた。目元も紫の模様が浮かび上がっており、唇も紫色になっていた。そして、後ろには巨大な蛾の持っているような翼が生えていた。
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
ルッシュベルがそう声を上げると大量の粉をまき散らした。
「…!これヤバいよ!!」
狂がそう言うと美浪は狂を抱えて粉を躱した。しかし、粉はどんどん広がっていっていた。このままでは部屋中が粉に包まれてしまう。
「躱しきれない!!」
「ああ、この粉は【快楽鱗粉】…この粉を浴びれば忽ち快楽に支配され、そのまま昇天させる…愛の粉!!」
ルッシュベルがそう言い放った。
「う!!」
「美浪ちゃん!?【嵐風天天流月】!!」
狂が巨大な竜巻を発生させ、【快楽鱗粉】を吹き飛ばした。しかし、美浪は粉を少し、吸ってしまったようだ。
「あ~~~♡気持ちい~~♡」
「しっかりして!!美浪ちゃん!!」
美浪は目を虚ろにさせながらそう言っていた。狂が思いっきり拳骨を叩きつけたが美浪は正気に戻らない。
「な!?こうなったら!!」
狂は美浪に幻術をかけた。
美浪は今、紫色の空間にいた。この空間にいるだけでとても気持ちよかった。
「あ~~~~♡」
美浪はそんなあられもない声を上げていた。このまま昇天してもいい…美浪はそう思った。気持ちいい、気持ち良すぎる。
美浪は身体が熱くなっていくのを感じた。そして、身体が軽くなっていった。そろそろ昇天する頃らしい。美浪がそう思っていると突然、あたりが暗くなった。
「あれ?」
美浪が呆けた声を上げるとその瞬間、得体のしれない黒い化け物が出現した。さらに、美浪の真下から、黒い手が無数に出現し、美浪を地面に引きずり込む。
「いやーーーーー!!!!」
美浪は絶叫を上げた。しかも、黒い腕に掴まれた場所から身体が溶け出していた。とてつもない苦痛が美浪に襲い掛かる。美浪はそのまま地面に引きずり降ろされる寸前で…あることに気付いた。
-そうだ!ここは…
美浪は完全に正気を取り戻した。
「ん…」
美浪は目に光を取り戻し、目を覚ました。
「良かった~」
狂がそう呟いた。狂は幻術を美浪にかけて精神的に苦痛を与えることで正気を取り戻させたのだ。
「ありがとう、助かった…」
美浪はそう呟いた。しかし、粉はまだ、広まっていた。狂の力でどうにか防いではいるが時間稼ぎにしかならない。
「私の愛を受け入れないとは…愚かにも程があるぞおお!!身の程を知れええええええええええええええええい!!!」
ルッシュベルは絶叫を上げた。ルッシュベルは自身の力を防いでいる二人に苛立ちを覚えたようである。
「私の愛を受け入れられない愚か者共~~、神に逆らう背徳者共が~~!!僕の!!愛を!!!!受け入れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
ルッシュベルがさらに粉をまき散らす。
「美浪ちゃんはあいつを直接やって!粉はくるが防ぐから!」
「うん!」
美浪はルッシュベルに突撃した。ルッシュベルはこの『幻惑の間』の中央を飛行し、【快楽鱗粉】をまき散らしている。美浪は粉に構わず向かっていった。
「【嵐風天天流月】!!」
狂は『実体化幻術』を使い、美浪の周りに竜巻を発生させた。
狂の使用する『実体化幻術』は狂自身がイメージした幻術を実体化させる能力である。
イメージしたものを実体化できる強力な術だが、魔力の消耗も激しく、自身の想像を超える者は実体化できない。
狂が発生させた風により、【快楽鱗粉】を防いだ。
そして、美浪はそのまま近づき、【神掛】を発動。美浪の身体から霊力の膜が発生した。
美浪の使用した【神掛】は自身の身体に神を取り憑かせる術であり、それにより自身の戦闘能力を上げる術だ。
この術も虚力な術であるが、取り憑かれた神により、身体が支配される危険性がある危険な力でもある。
美浪に取り憑いている神は強力な部類に入る神である。なおのこと取り憑かれて支配される危険性があった。
しかし、美浪は【神掛】を使った、勝つために。
「はああああ!!」
美浪はルッシュベルに殴りつける。しかし、ルッシュベルは美浪の一撃を右手で防いだ。
「僕の力が粉だけと思うな!!!」
ルッシュベルはそう言って、翼から棘を発生させ、美浪の身体を貫いた。
「ぐぅ!」
「勿論、その棘も快楽の力があるよ」
ルッシュベルは【快楽棘】を放った。しかし、美浪は自身の舌を噛み切り、快楽の力に耐えた。
「え…【炎帝火延之園】!」
美浪の身体に炎が纏われた。その力と自身の【神掛】の力を掛け合わせ、美浪はルッシュベルに突撃した。
「はあああああああ!!」
「があああああああああ!!!!!」
美浪は思いっきりルッシュベルを吹き飛ばした。ルッシュベルは火達磨になり、壁に激突した。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「まだだ…」
ルッシュベルは立ち上がった。
「嘘!?あれを受けてまだ…」
狂は驚きの表情をした。
「【快楽絶棘】!!!!」
ルッシュベルは全身から紫の棘を発射した。
「!!」
「【嵐風天天流月】!」
美浪は霊力の膜を、狂は竜巻を発生させ、攻撃を凌ごうとしたが、棘の破壊力が凄まじく、美浪の霊力の膜を、狂の発生させた竜巻を貫通し、全身に【快楽絶棘】が刺さった。
「ふふふ…はははははははははははははははは!!!!これで終わりだ!!ははは!気持ちいいだろ!?終わりだ!!この僕をここまで追い詰めるとはね…そこまでは褒めてあげたいところだけど…僕の愛を受け入れず、逆らった君たちは!!ここで死ぬのが筋というものだろぉおおおお!?!?!?!?!?!?」
ルッシュベルは狂ったようにそう言い放った。
「くあ~~~~♡」
「はぁ~~~♡」
美浪と狂がだらしのない声を漏らしていた。今までの快楽の力よりさらに強力であった。
「まぁ、気持ちよくイけるのであれば…君たちにとってもいいことなんじゃないかな??苦痛の死は恐ろしいからねぇ!」
ルッシュベルはそう言い放った。生物にとって死は恐ろしいものだ。
死を恐れる理由はいくつかあり、人それぞれ違ってくると思うが、「死んだ後どうなるか分からない」、「死ぬことは苦痛である」、死を恐れる者の理由の大半がこの二つであることがほとんどだ。
ルッシュベルはそれを理解していた。だからこそ今のような言葉が出てきたのだ。
「快楽のままに逝けたのなら、それは幸せなことだ…君たちはようやく、僕の愛を受け入れてくれたようだね。嬉しいよ」
ルッシュベルはそう言って、美浪の首を掴み、美浪を投げ飛ばした。さらに、後ろにいた狂の首も掴み、投げ飛ばした。二人は並んで壁にもたれついていた。
「気持ちい~~~~」
「最高~~~~~~」
美浪と狂は目を虚ろにさせながらそう言った。完全に快楽に支配されていた。ルッシュベルはさらに、二人を【快楽棘】を使い、美浪と狂を壁に貼り付け、その後、羽のようになっている自身の両手を鞭のよう振るい、二人をひたすらビンタした。
「どうだ?気持ちいだろ!?気持ちいだろ!!!そうだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ルッシュベルは愛を二人に本気で与えているつもりなのだ。はた目から見たらただの如何わしい行為である。
しかし、二人は完全に快楽に支配されている為、全てが気持ちよく感じてしまっていた。
「もっと、して~~~~~♡」
「………」
「はぁ、はぁ、そうかそうか…」
二人は昇天する寸前であった。しかし、ここでルッシュベルは手を止めた。
「…?」
ルッシュベルは狂を不審に思い近づいた。その瞬間-
「がああああああああ!!!」
ルッシュベルの頬が焼けていた。
「解除するのに…時間かかっちゃった…」
狂は棘を全て取り、立ち上がった。美浪の棘も全て外した。狂は美浪に幻術をかけ、無理やり起こした。
「う…」
「目が覚めたね」
「何故だ!?何故…」
ルッシュベルが疑問を浮かべていた。
「あなたの力は「快楽」…なら、幻術で苦痛のイメージをずっと植えつけ続けていればいいんだよ」
「まさか…僕の能力を理解した時から、君はずっと自身に幻術を!?」
「そうだよ…苦痛のイメージをずっと頭の中で植えつけてた。でも、それすらも一瞬で消し去れるほどの快楽だったよ…お前の能力は…とても恐ろしい能力だよ…」
「馬鹿な!?快楽で死ぬことを逃れる為に態々(わざわざ)苦痛を自身で与え続けていたのか!?マゾヒストか、貴様は!?」
「あなたには理解できないでしょうね。快楽だけが幸せやと勘違いしてるあなたには」
美浪が立ち上がった。焦ったルッシュベルは再び攻撃を仕掛けようとした。
「ルード…」
しかし、ルッシュベルのいる地面には黒い穴が開いていた。
「な!?何だこれは…」
「【闇夜鶯童童舞】!!」
ルッシュベルは黒い手に包まれ、動きを封じられた。
「があああああ!!!」
ルッシュベルは脱出しようと抵抗するが、美浪が攻撃を仕掛けようとしていた。
「【狼砲】!!」
美浪は右手にありったけの霊力を込め、ルッシュベルに叩きつけた。
「ガッ…」
ルッシュベルは短く声を上げ、倒れた。
「「「「「「!!」」」」」」
『七魔王』のメンバーはルッシュベルがやられたことを察知した。
「ふー、とうとう、こちらの『七魔王』がやられたか…いよいよ急がないとね…」
ドラコニキルはそう言って、走り出した。表情には出していないが内心、ドラコニキルは焦っていた。『七魔王』が一人でもやられたことはここ数年で記憶にない。その一人がやられたのだ。動揺もするというものだ。
「やれやれ、面倒くさい」
ドラコニキルはそう呟いた。
「おいおいおい!マジかよ!?ルッシュベルの奴…やられやがったか…」
グリーフアルトは楽しげに呟いた。グリーフアルトは嬉しいのだ。『七魔王』を倒すほどの強者がいるという事に。「奪いがい」があるというものだ。
「さぁ、俺をどこまで楽しませてくれる?侵入者!!」
グリーフアルトは速力をさらに上げ、気合を入れながら走り出した。
「うおおおおおおおおおお!!!待ってろよおおお!!!侵入者!!!」
グリーフアルトは叫びながら向かっていった。……その様はただの阿呆にしか見えなかった。
「ルル君…」
城内を散歩していたアルビレーヌもルッシュベルがあやられたことを察知した。今まで楽しげに散歩していたアルビレーヌだが、ルッシュベルがやられたと知ると表情が変わった。
「どうやら、お気楽気分で戦えなくなくちゃったみたいだね」
アルビレーヌがそう呟いた。アルビレーヌは出来ればこのまま気ままに散歩していたかった。しかし、『七魔王』の一人が破れてしまった以上、それも出来ない。
「はぁ、じゃあ、取り敢えず、ここから一番近い敵を探そう」
そう言ってアルビレーヌは方向を変え、歩き出した。
「ZZZZZZZZZZ」
ウルオッサはずっと眠っていた。しかし、すぐに目を覚ました。
「ふぁ~、一人やられちゃったか~。まぁ、誰かがやってくれるでしょうよ」
ウルオッサはそう言ってすぐに眠りについた。
正直面倒臭い。寝ていたい。働きたくない。働きたくないでござる。そんな感情がウルオッサを支配していた。
勝手にしてろよとウルオッサは思った。
スープレイガは蒼をずっと探していたが見つからない。そもそも、この城はデカすぎなのだ。
「くそが!!あいつどころか敵一人見つかんねーじゃねーかよ!!」
スープレイガは業を煮やしていた。スープレイガは索敵はあまり得意ではないし、何より方向音痴だ。この城の事も全く把握してない。
「アルビレーヌに頼み込むべきだったか…でもなぁ…」
スープレイガはアルビレーヌが苦手であった。彼女は何を考えているか一番読めないのだ。
先ほどやられたルッシュベルはミステリアスな雰囲気を醸し出してはいるが彼はただの鬼畜ドSだとスープレイガは知っている。
しかし、彼女だけは何を考えているか分からない。その癖、スープレイガの考えはアルビレーヌはお見通しのようで、蒼を探しに行こうとした時、「そんなに侵入者が気になるのぉ」と言ってきた。
正直、話し方もスローペースで気色悪いとスープレイガは思った。
「まぁ、いいや…面倒臭ぇから壁ぶっ壊しながら進むとするか…ドラコニキルに獲物を取られかねないからな!」
スープレイガはそう言い、壁を壊しながら進んでいった。スープレイガは分かっていた。
『アンタレス』のリーダーであり、『七魔王』の王でもある、ドゥームプロモ・ドラコニキルは蒼に興味を抱いていることを。
だからこそ、スープレイガはドラコニキルが蒼を見つける前に見つけ出す必要があった。
「待っていろ!時神蒼!!お前は俺の獲物だ!!!!」
スープレイガはそのまま進んでいった。
ルッシュベルは元の服装に戻っていた。【悪魔解放】が完全に解けたのだ。
美浪と狂が見事『色欲七魔王』であるルッシュベル・ルルルガルに勝利したのだ。しかし-
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「うぅ…く……」
美浪も狂もボロボロであった。もはやこれ以上戦えるような状況ではなかった。先ほどの戦いで「快楽の力」を受けた二人はかなり肉体的、精神的ともに消耗していた。
「ぅぅ…」
-助けなきゃ…慧留ちゃんを…
狂は慧留を助けたいと思っている。ルッシュベルの言う通り、快楽が全て解決してくれるならそれでもいと狂は思った。
しかし、それだけでは絶対に何とかならないことがあった。狂はそれを分かっていた。
苦痛を得た先にしか得られないものもあるという事を。狂はそれを蒼や慧留たち生徒会がそれを教えてくれた。狂はそう思ったのだ。
やがて狂は完全に意識を失った。狂はルッシュベルの「快楽の力」に抗う為に自身の脳内に苦痛のイメージを植え付け続けていたのだ。
その影響で精神に限界が来ていたのだ。さらに全身はルッシュベルの「快楽の棘」により重傷を負っていた。
「くるちゃん…」
美浪は立ち上がり、先に進もうとしたが思うように体が動かない。美浪は接近戦で戦っていた為、狂より外傷がひどかった。
さらに、狂同様、精神にもかなりダメージを受けていた。意識は辛うじて残っていたが保ちそうにない。
-慧留ちゃんは…助けを求めてるよね…絶対に…
美浪は孤独を知っている。一人で捕らわれる事の悲しみを…慧留にそんな思いをさせないようにしなければならないと、美浪はそう、考えていた。
「慧留………ちゃん……………………今……………………行く…………………から………」
美浪はそのまま力尽きた。
「ルッシュベルがやられたか…」
カーシスは青空を見ながらそう言った。今、「USW」は昼だ。夜が明け、太陽が地上を照らしている。
カーシスは太陽を見ながらグラスを揺らしていた。
「たまに見る青空も風情がある」
カーシスは戦況は未だ五分五分であると判断した。一見、『アンタレス』側がリードしている。
『七魔王』がやられたのが一人に対し、向こうは三人やられているのだ。どう考えても、カーシス側が勝っているのは事実である。
「ツネモリゲンジン…そして、クロミヤタイシ…彼らは何をするか分からんからね…まったく、喰えない者たちだ…」
カーシスは計画を次の段階へと進めようとしていた。全ては自身の願いの為に…
「空は常に変化を続ける。それはまるで人の心のように」
人の心は簡単に移り変わるものだとカーシスは理解していた。だからこそ、カーシスは自身の願いをかなえるために動いているのだ。全てを終わらせるために。
「終焉の時は確実に近づいている。終わらせよう…全てを…」
カーシスは席を立ち、グラスを太陽に向けた。
「陛下」
『頂点者』が陛下の名を呼んだ。
「何?」
ここは神聖ローマのとある一室。陛下と『頂点者』が会合していた。
「「USW」についてでが…」
「放っておきなさい」
「…! しかし…」
「「心配」なのは分かるけれど…まぁ、大丈夫でしょう…それに…彼が先に私の目的を達成させるかもしれないしね…」
陛下はそう『頂点者』に言った。
「………分かりました」
「それより、私たちは内戦を収めるのが先です。私が動けばすぐに終わるものを…」
「陛下が動かれるとただの粛正になります。それは…一方的な暴力にしかなりません」
「そうね…だからこそ私はここで座している…それに切り札は簡単に切るものではない。一秒でも早く収めることを期待します」
「畏まりました」
『頂点者』は部屋から出ていった。
「ふぅ…カーシス…いえ、『アンタレス』よ…あなたが私の宿願を先に叶えるか…それとも…あなたが止めるのかしら?フローフル」
陛下はニヤリと嗤った。
「!!」
「………蒼?」
蒼は狂と美浪の霊圧の異常を察知し、足を止めた。ラナエルは蒼の心情を知る由もなかった。
「美浪…くる…」
今蒼がいるのは『闇魔殿』の「南場」だ。
この城は七つの巨大な宮殿と中央にそびえ立つ巨大な城で構成されている。
宮殿の合間合間には通路があり、蒼は今、南東のエリアにいる。中央の城のすぐ近くにいた。
「ほう…仲間の危機に気付くとは…意外とマメな奴だな」
蒼の後ろから声が聞こえた。そして、聞き覚えのあるその声は…
「お前は…!」
そこにいたのはドゥームプロモ・ドラコニキルであった。
To Be continued




