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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第三章】USW進攻篇
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【第三章】USW侵攻編Ⅹー歩く死神(リッパー)ー

 苗木一夜は走っていた。この白と黒で構成された空間を。

 『闇魔殿オプスデラカストラ』、それがこの城の名称である。一夜は城の地図をパソコンで作りながら進んでいた。そして、一夜は周囲の気配を常に探っていた。


 一夜の使用しているパソコンは【アラメイ】と呼ばれるものであり、超高スペックのパソコンである。このパソコンを使い、周囲に微弱な電磁波を放っていた。

 この電磁波により、周囲の気配を察知することができる。それを使い、一夜は敵のいる場所を避けながら進んでいた。


「どうにか今のところは敵を避けられてはいるが…見つかったら僕の場合は終わりだぞ…」


 一夜はそう呟いた。実際、一夜は戦闘力はそこまで高くない。というか、今、『闇魔殿オプスデラカストラ』に侵入した六人の中では断トツで戦闘力が低い。

 一夜はこのまま慧留のいる場所に行けたら万々歳だと思ったが恐らく、その時までには敵に見つかってしまっているだろう。

 改めてその場のノリだけで別れたのを一夜は心の底から自身の愚直さを呪った。


「………マジでこのまま敵と遭遇しちゃったらどうしよう…」


 一夜は冷や汗をかきながらそう呟いた。一夜はかなり怯えていた。

 不安を募らせながら一夜は走り続けた。すると、大きな部屋がそこにはあった。


「ん…?何だこれは…?」


 一夜はそのまま向かっていった、そこにあったのは大量の『機械魔兵アガティ』であった。


「ほう、…どうやら、兵器の保管庫に来たようだね…」


 一夜はそう呟いた。これはラッキーだと一夜は思ったがその矢先-


「保管庫に来れば必ず出くわすと思ったわ…」


 声が聞こえた。その声の主は女性だった。


「マジか…敵がいた…ヤバいどうしよう…」


 一夜が絶望の声を上げていると女性は一夜に近づいて来た。


「どうも、『アンタレス』のへルビ・マークルよ」


 桜色のロングヘアーと緑色の瞳が特徴の女性だった。そして、黒を基調とした軍服を纏っていた。


「『アンタレス』の兵隊と会ってしまったか…」


 一夜は頭を抱えた。しかし、すぐに一夜は走り出した。


「逃がさないわよ!」


 へルビは刀を持ち、一夜に向かっていった。恐らく彼女の持ってる刀は「悪魔」であろう。

 一夜は走りながらパソコンをいじり始めた。一夜のやることは一つである。ここにある兵器を操る。一夜はその為にパソコンを弄り、アプローチをかけていた。


「何をするつもりか知らないけど終わらせるわよ打ち鳴らせ【雷女王バアル】!」


 へルビは【悪魔解放ディアブル・アーテル】を使用。背中から黒い翼が生え、首からは羽毛が生えていた。そして、全身はピンク色の和服を纏っていた。


「【悪魔解放ディアブル・アーテル】か!?」


 一夜は更にパソコンを弄る速度を速めた。しかし、へルビはそのまま、雷を発生させ一夜目がけて飛ばした。


「うわ!わわわ!」


 一夜は紙一重でどうにか交わしたがまだまだ雷が飛んできた。


「このままじゃあ持たないね…速くしないと!!」


 一夜はパソコンをずっと弄りっぱなしであった。しかし、逃げ道を塞がれてしまった。


「これで…終わりよ!」


 へルビは今までで一番の極大の雷を飛ばした。


「間に合えええええええええええ!!」


 一夜は巨大な雷を直撃で喰らった…と思われた。しかし-


「な!?」


 へルビは驚愕した。何故なら…


「ようやく、ここの『機械魔兵アガティ』を制御できた…」


 一夜の目の前には『機械魔兵アガティ』が立っていた。『機械魔兵アガティ』は雲形の異形な形をしている「USW」の魔道兵器である。また、自己学習能力もあり、一度受けた攻撃は学習してしまう。


「馬鹿な…『機械魔兵アガティ』を完全に制御するなんて…」


 へルビは驚愕の表情を浮かべた。へルビはすぐに攻撃を繰り出すが、全て『機械魔兵アガティ』がへルビの攻撃を弾き飛ばした。


「嘘…」


 へルビは青ざめていた。


「【機械制御エレクトロニック・システム】完了だよ」


 一夜がそう言うと『機械魔兵アガティ』がへルビに襲い掛かった。へルビは雷で迎え撃ったが、歯が立たなかった。

 『機械魔兵アガティ』はへルビに自身の足をぶつけた。へルビは躱しきれずに直撃した。


「きゃああ!」


 へルビは『機械魔兵アガティ』の足を振りほどき、一夜本体に攻撃を仕掛けた。しかし、一夜は【アラメイ】を操作し、『機械魔兵アガティ』を操作し、自身に回り込ませた。


「終わりだよ…!」


 一夜がそう言うと『機械魔兵アガティ』が足をへルビに突き立て、へルビの身体を貫いた。


「が…」


 へルビはそのまま倒れた。彼女の周りには血の花が咲いていた。


「ふぅ…何とかなったか…」


 一夜は一息ついた。どうにか、一夜の思惑通り、『機械魔兵アガティ』を制御できた。しかし、出来たのは一体のみだ。


「ここにある全ての『機械魔兵アガティ』とその他兵器を制御下に置いた方がいいね」


 一夜がそう言うと早速、一夜は『機械魔兵アガティ』とその他ここにある兵器を制御し始めた。


「うん、これなら、一時間もあればこの部屋の兵器は制御下における」

「そうはいかないわ」


 一夜がそう言うと声が聞こえた。またしても女性の声であった。


「!!」


 一夜は驚いた。敵が来たことに驚いたわけではない。敵の莫大な魔力に驚いたのだ。

 何故なら、一夜の考えが間違っていなければ、今一夜の前にいる敵の魔力はあのスープレイガと肩を並べるほどの魔力であったからだ。


「まさか…君は…『アンタレス』の幹部クラスかい?」


 一夜がそう言うと相手は答えた。


「ええ、そうよ。感がいいわね」


 一夜は敵の素顔を見た。見た目は茶色の髪と白いワンピースを身にまとっていた。瞳はたれ目気味でのほほんとした印象が目立つ。

 見た目は慧留や美浪とほぼ変わらない年であると一夜は思った。一夜の目の前にいるのは間違いなく少女であった。

 そう、彼女は『七魔人セブン・ドゥクス』の一人、アルビレーヌ・マジェルタスクだ。


「君は…一体…」

「これから死ぬあなたに名乗る必要があるの?」


 アルビレーヌはそう言うと一夜は「そうか」と言い、『機械魔兵アガティ』を動かし、少女に突撃させた。しかし、少女は鎌を取り出し、『機械魔兵アガティ』を一瞬で切り裂いた。


「何!?」


 一夜は驚愕の表情を浮かべた。


「だが、『機械魔兵アガティ』は再生機能がある。簡単には…」


 一夜がそう言うが『機械魔兵アガティ』はそのまま機能を停止させていた。


「無駄よ…私の力の前では『機械魔兵アガティ』は相手にならない。『機械魔兵アガティ』は魔力を受け止められる量が制限されてるのよ。私レベルの魔力となると受け止められる容量は『機械魔兵アガティ』には無い。見たところあなたの力は電子器具を操る力のようね。面倒な力…一瞬で終わらせるわ」


 アルビレーヌはそのまま鎌を持ち、一夜に突撃した。一夜は数匹の『機械魔兵アガティ』を動かした。しかし、全く歯が立たない。『機械魔兵アガティ』をを一瞬で切り刻み、粉々にしてしまった。


「……!!」


 一夜は何とか少女の攻撃を躱し、距離を取れたが、少女はそのまま一夜に接近した。


「霊呪法第二十八番【閃光雷賛せんこうらいさん】!!」


 一夜の身体から電撃が走り、光輝いた。アルビレーヌは驚き、目を一瞬瞑ってしまった。すると、目の前には一夜の姿はなかった。


「やれやれ、このまま逃げるとするか…」


 一夜はまだ、部屋の中にいた。しかし、出口付近にいたのですぐに出ることができた。しかし-


「逃がさない。舞い踊れ【人魚妃姫レビィ・ア・タン】」



 アルビレーヌは【悪魔解放ディアブル・アーテル】を使用した。

 アルビレーヌは水のバルーンに包まれた。やがて、バルーンが弾けた。アルビレーヌの姿が露になった。

 下半身は魚の尾のような形状をしており、茶色の髪も少し紫がかっていた。

 上半身のワンピースはそのまま残っており、腕には真珠で出来た数珠のようなものがついていた。


「あれが…『アンタレス』の幹部の【悪魔解放ディアブル・アーテル】か…」


 一夜はそう言いながら出口に向かっていた。しかし-


「逃がさないって言ったわよぉ…」


 のんびりとした口調でアルビレーヌが言うと一夜の周りに無数の泡が発生した。いや、一夜の周りだけではなかった。この部屋全体に泡が発生していた。


「な!?何だこれは!?」

「見ぃつけった」


 一夜が驚いているとアルビレーヌが高速で一夜の元に向かった。


「な!?」


 一夜の目の前にアルビレーヌがいた。



「【水泡死鎌スクマーテルア・ゴルドレーザー】」



 アルビレーヌが手から水で出来た鎌を瞬時に造り出し、一夜を切り裂いた。


「が…」


 一撃だった。たった一撃で一夜は倒された。一夜の周りには血の花が咲いていた。そして、周囲はアルビレーヌが発生させた泡と水で部屋が水のフィールドへと変わっていた。その水が一夜の血で赤く染まっていった。


「う~ん、思ったより呆気なかったわね~」


 アルビレーヌはそう呟いた。




 一夜が倒された事は霊圧で他の五人も気が付いた。


「苗木さん?」


 美浪はそう呟いた。美浪は一夜がやられたことを察知した。



「苗木の奴…やられやがったか!」


 屍がそう呟いた。


「アルビレーヌがやったようだな」


 グリトニオンがそう屍に告げた。


「何だと…お前と同じ『七魔王セブン・ドゥクス』ってやつか!?」

「ああ、そうだ。まぁ、これから死ぬ貴様に行ってもしょうがないがな…」


 グリトニオンがそう言って屍に攻撃を仕掛ける。



「苗木君…」


 薊は一夜の名を呟きながら走り続けていた。今は進むしかない。薊はそう思ったのだ。




「一夜ちゃん…」


 狂はそう呟いた。


「ん?よそ見かい?」


 ルッシュベルがそう言った。狂は激しく動揺したが今は目の前の敵に集中するしかない。


「行くよ!」

「うん、来るといいよ」


 狂はルッシュベルと交戦をしていた。






 蒼は立ち止った。


「蒼?どうした……の…!」


 ラナエルが蒼が立ち止ったことに疑問を持ったが蒼はすぐにラナエルを抱きかかえ、走り出した。


-一夜がやられた!くそ!今は…進むしかねぇ!一夜!無事でいてくれ!


 蒼はそう心の中で思いながら進んだ。今蒼にできることは先に進むことだけだ。それ以外の道はなかった。







 アルビレーヌは【悪魔解放ディアブル・アーテル】を解いた。下半身は元の足に戻り、髪の色も戻っていた。ワンピースのスカートが風によって少しなびいていた。


「はぁ、これで一人目っと。なんとなくここに来る人がいるかな~って予感はあったけど、まさか本当に来るなんて…いや~、私って無駄に感がいいな~!」


 アルビレーヌはそう呟いた。アルビレーヌは別にスープレイガやグリーフアルトのように好戦的という訳ではない。

 ただ、彼女は索敵能力が非常に高く、そしてよく、この城をふらふら歩く習慣がある。

 その為、アルビレーヌはこの城の地形を細かく把握している。恐らく、この城のすべてを把握しきっているのは彼女くらいだろう。


 アルビレーヌは魔道兵器の保管庫に来たのはただ散歩をしていただけなのだ。敵がいることも考慮してはいたが、まさか本当にいるとは思わなかった。


「……でも、全然大したことなかったね~。まぁ、『機械魔兵アガティ』を制御したことについてはびっくりしたけど」


 アルビレーヌはそう言った。実際、アルビレーヌは【悪魔解放ディアブル・アーテル】を使いこそしたがあまり本気は出さなかった。しかも、たった一撃で一夜を倒してしまったのだ。


「さてと、どうしよかな~。牢屋にぶち込んだ方がいいかしら~?そもそも生きてるのかすら分かんないし…それとも、ここで完全に始末した方がいいのかな~?流石に身体をバラバラにすれば確実なわけだし…でも、それはそれで面倒よの~」


 アルビレーヌはかなり迷っていた。そもそも、アルビレーヌは『七魔王セブン・ドゥクス』の中でもかなり穏健派である。他の者と比べると無暗に相手を殺そうとはしない。他の『七魔王セブン・ドゥクス』と比べて…の話だが。


「まぁ、このまま放置しても大丈夫でしょ!どうせ生きててもすぐに死ぬだろうし。私が手を下すまでもないね」


 アルビレーヌがそう言って一夜の前に立った。そして、一夜に跪き、祈るような構えをした。


「来世で幸せになることを祈るわ」


 アルビレーヌはそう言ってそのまま去って行った。アルビレーヌのワンピースは一夜の血で汚れてしまったが本人は気にしていない様子であった。

 アルビレーヌは自身が殺した相手に祈りを捧げるようにしていた。少しでも死んだ人が報われるように。

 アルビレーヌはそれがただの自己満足に過ぎないことも重々承知している。

 それでも、アルビレーヌは殺した人間に対して祈りを捧げている。少しでも救われるために。


「戦いはいずれ終わるわ…それまで…安らかに逝きなさい」


 アルビレーヌは歩きながらそう言った。







 薊とシャルトットは戦闘を続けていた。弓と拳銃の打ち合いであった。しかし、お互いに決定打が与えられない状態であった。


「防戦一方ですわね」


 シャルトットがそう言った。薊は気配を殺していた。シャルトットの隙を伺っていたのだ。しかし、シャルトットは隙を見せない。隙だらけのように見えて実は全く隙を与えていないのだ。


「そこですわ!」


 シャルトットは拳銃の引き金を薊のいるところ目がけて放った。薊は回避するもシャルトットに動きを読まれていた。


「終わりですわ!」


 シャルトットはそう言って引き金を引く。しかし、直前のところで薊は銃弾を躱した。そして、シャルトットを蹴り飛ばした。さらに、【毒華霊弓ドッカレイキュウ】の矢を打ち込んだ。


「【火弾魔人アモン】」


 シャルトットは【悪魔解放ディアブル・アーテル】を発動。シャルトットから火柱が発生した。シャルトットの姿が変化していた。服装が軍服からゴスロリに代わっており、片目に片眼鏡モノクルが装着されており、背中には悪魔特有の黒い翼が生えていた。


「………」


 薊は再び【毒華霊弓ドッカレイキュウ】を構えた。


「行きますわよ!!」


 シャルトットはそのまま向かっていった。薊はシャルトットの銃弾を躱しつつ、矢を放った。しかし、シャルトットもそれを躱していた。


「このままじゃ埒が明かない!」


 薊はそう言いながら、岩陰に隠れた。


「隠れても無駄ですわ!」


 薊は銃弾を躱し続ける。しかし、銃弾がとうとう、薊を捉えた。


「く!」


 薊は苦悶の声を上げた。シャルトットは空中で飛行しながら銃弾を打っている。さらに、自身の片眼鏡モノクルのおかげで薊を視認しやすくなっている。


「これで!終わりですわ!!」


 そう言って、シャルトットは銃弾を放った。薊の頭は貫かれた。しかし、薊の身体がそのまま霧散した。


「え!?」


 シャルトットは驚きの声を上げた。そう、シャルトットが打ち抜いたのは毒で出来た身代わりだったのだ。


「しまっ…」


 シャルトットが後ろを振り向くがもう遅い。薊は既にシャルトットを捉えており、毒の矢を連発で発車した。そのすべてがシャルトットに直撃した。


「がはっ!」


 シャルトットは血を吐いた。そして、【悪魔解放ディアブル・アーテル】が解け、倒れた。


「………」


 薊はそのまま先に進んでいった。


「私を殺さずに先に行くとは…屈辱ですわ…」


 シャルトットがそう言った。すると-


「やられちまったか…シャルトット…」


 声が聞こえた。男の声であった。そして、聞き覚えのある声であった。


「グリーフアルト様!」


 そう、彼は『アンタレス』の幹部である『七魔王セブン・ドゥクス』の一人である、グリーフアルト・ギアール。紫のロングヘアーと青色の瞳、ダークメタルな服装が特徴の男である。

 シャルトットは彼の部下である。『七魔王セブン・ドゥクス』は『アンタレス』内の者を部下にする権限を与えられている。シャルトットもその一人である。


「申し訳ございません…力及ばず…」

「あァ…気にしなくていい。取り敢えずてめぇはさっさと治療していけ。俺が送ってやる」


 グリーフアルトはそう言って、シャルトットを抱えた。そして、そのまま医療室に行った。


「おい、こいつの手当てを頼む」


 グリーフアルトがいきなり現れて、医療班が驚いていた。


「は…はい、分かりました」


 グリーフアルトはそのままどこかへ行こうとした。


「あの…どちらへ」

「どこでもいいだろ?」


 グリーフアルトはそう言い、去って行った。グリーフアルトは『七魔王セブン・ドゥクス』の中でも悪名高い。

 あのスープレイガと並ぶほどだ。その男が自身の部下とはいえ、負傷した者を運んできたことに医療班たちは驚いていたのだ。


「……すぐに治療を始める」


 医療班はそう言って、シャルトットの治療を始めた。






「面白れぇ…」


 グリーフアルトはそう呟いた。シャルトットはグリーフアルトの部下の中では優秀な方だ。

 その彼女があっさり倒されたことにグリーフアルトは興味を抱いていた。


「雑魚共とばかり思っていたが…そうでもねぇのかもな…」


 グリーフアルトは侵入者たちを探し、撃破することに決めた。そして、彼らの力を「奪う」為に。

 誤解されがちだが、グリーフアルトは強欲な性格ではあるが決して仲間を粗末にするような男ではない。

 彼は部下に対してはそれなりに待遇を与えている。その為、『七魔王セブン・ドゥクス』の中でも最も多くの部下を持っている。

 グリーフアルトが歩き出すとそこにいたのはアルビレーヌ・マジェルタスクであった。


「よぉ、マジェル」


 グリーフアルトの声にアルビレーヌが反応した。


「珍しいわねぇ。あなたから声をかけるなんて」


 アルビレーヌがそう言った。実際、二人が会話することなど滅多にない。


「お前確か、敵の一人と戦ったんだろ?どうだったよ?」

「なるほど…そう言う理由ね。別に大したことなかったわ」

「…そうかよ…で?敵の場所は特定できてんだろ?教えろよ」

「分かったわ…ちょっと待って」


 グリーフアルトが敵の場所を教えろというとアルビレーヌが索敵を始めた。


「向こうにいるわ」

「分かった!!」


 グリーフアルトはそう言って走って行った。


「相変わらずね…」


 アルビレーヌはそう呟いた。アルビレーヌは決してグリーフアルトを嫌っている訳ではない。ただ、興味のあることに没頭すると面倒臭くなる男なのだ。

 だからこそ、アルビレーヌは適当にあしらう様にしている。


「運しだいね~。彼が敵に会えるかどうかは」


 アルビレーヌは敵の大体の位置を特定したが、所詮は大体である。すぐに移動してしまう可能性がある。アルビレーヌは城を散歩する事が好きなのだ。


「さてと、次はどこを散歩しようかな~」


 アルビレーヌは軽やかな動きでどこかに消えていった。








「ふー、待っているというのも暇だなぁ…」


 ドラコニキルは珍しく退屈を感じていた。彼は平穏であれば何でもいいような男だ。その男が今の状況を退屈だと思っている。奇妙なものだ。

 ドラコニキルはどうも、このような状況下でゆっくりしていても落ち着けないようだった。


「ふー、仕方ない。直接出張るとするか…私が動けばこの煩わしい戦いもすぐに終わるだろう…」


 ドラコニキルは戦場に出ることを決意した。ドラコニキルはこのような不毛な戦いを速く終わらせたいのだ。


「カーシス様がツキカゲエルを使い、何を企んでいるかは知らんがとにかくこの戦いは終わらせなければな」


 ドラコニキルは戦場に向かっていった。







「皆…」


 慧留は夜空を見上げていた。もうじき日が昇る。一日の内四分の三が夜である「USW」でも残りの四分の一は太陽が昇る。

 慧留はどうしてこうなったのだという気持ちに襲われた。助けられる為にここに来た訳ではない。なのにどうして…


「私は…どうすれば…」


 慧留は自問をする。


「私は今、どうするべきなんだろう?」


 慧留は何も分からなかった。そもそも、何故カーシスは慧留を必要としているのか慧留には分かっていない。いや、目的は以前、カーシスの口から明かされた。古代兵器を復活させ、その為には慧留の力が必要だということを…


 しかし、慧留は疑問が拭えなかった。古代兵器を使えるようにするには何故、慧留の力が必要なのか?「USW」の力を持ってすれば他に方法があったのではないか?そう、慧留は思ったのだ。


 何か裏がある。そう思わずにはいられなかった。しかし、それが何なのかは慧留には分からなかった。

 蒼は今どうしているだろうか?無事なのだろうか?蒼だけでなく一夜や美浪たちも来てるのだろうか?

 慧留がドラコニキルに聞かされたのは蒼たちが慧留を助ける為にこの城に侵入した事くらいだ。

 何人くらいいるのかとか今どういう状況なのかは全く分からなかった。


「皆…お願い…無事でいて…」


 慧留は蒼たちが自分を助けに来たと報告を受け、心の底から喜びと不安が同時に湧き出てきた。

 自分を助けに来てくれた嬉しさと戦いで彼らが傷ついてしまうのではないかという二つの気持ちが湧き出てきたのだ。

 慧留はそんな自分に少しだけ嫌気が指していた。蒼たちを守る為に捕まったはずなのに助けに来てくれて喜ぶなんて…慧留はそう思ったのだ。


 そして、慧留は昔の事を少しだけ思い出していた。そして、思い出す度に…怖くなっていった。

 誰にも傷ついて欲しくない。死んで欲しくない。慧留はそう思ったのだ。

 そして、そのように考える度に「自分がもう一人いるような感覚」を感じるのだ。

 恐らくこれは気のせいだろうと慧留は思った。

 慧留のいるこの空間は全ての霊圧知覚をカットされている。蒼たちが今、どのような状況なのか慧留には分からない。

「お願い…誰も死なないで…」

 慧留はそう、願った。















「ふぅ~、あれから一週間か…」


 常守厳陣つねもりげんじんはそう呟いた。見た目は五十ほどだろうか、白髪の髪と枯れた雰囲気を持つ男であった。

 そして、閻魔弦地(えんまげんち)に代わり、十二支連合帝国の総帥を務めている男であり、常守澪つねもりみおの叔父でもある。


「そうですねぇ」


 黒宮大志くろみやたいしがそう言った。彼は厳陣の側近であり、千年以上の時を生きる吸血鬼の「真祖」なのだ。


「まったく…まぁ、過ぎたことは仕方ない。今は我々でこの国を何とかするしかない」


 厳陣はそう言った。ここ最近「USW」がこの国に進行しているという事がこの国に広まっており、それにより民衆は混乱している。それを収束させることが今の厳陣がやらねばならない事だ。


「まぁ、向こうは彼らに任せましょう。どちらにせよ、月影さん奪還はする予定でしたし」

「ああ、彼らを信じよう」


 二人がそんな話をしている。因みにここは十二支連合帝国本部である。名称は『四神天城シシンテンジョウ』。

 蒼もスープレイガとここで戦った後、ここに赴き修行をしていた。

 この『四神天城シシンテンジョウ』は四つの門と巨大な城で構成されており和風な城だ。

 面積はそれなりに広く、蒼もここにある庭園で兎神審矢とかみしんやと修行していた。

 厳陣と大志が二人で話しているこの場所は執務室である。


「失礼します」


 入って来たのは董河湊とうかわみなとであった。


「湊君か」

「はい、……時神君たちは…大丈夫でしょうか?俺たちも行った方が…」

「心配する必要はない。すでに手は打ってある」


 厳陣はそう湊に言った。


「それに、時神君や月影君が帰って来た時の為にここを安全にする事も重要な役目なのだよ。董河君」


 厳陣はそう湊言った。湊と澪、遥は「USW」には向かっていない。彼らは厳陣の計らいにより、「USW」には行かせてもらえなかった。


「澪と遥君は?」

「はい、「USW」の動向を調べています。後、私の方ですが、国民たちはどうにか落ち着きを取り戻しつつあります」

「流石湊君だね。恐れ入るよ」

「いえ、俺は何も…」


 厳陣が港を褒めると湊はそれを否定した。


「いえいえ、民衆を安心させるのは重要な力ですよ。あなたはその状況判断力と明晰な頭脳を駆使してそれをやってのけた。厳陣があなたを褒めるのも頷けます」


 大志はそう言った。実際、事態を収束したのは湊の活躍によるものが大きい。

 湊が必死になって、対応していたのだ。それこそ、この国中を回って対応していたのだ。


「まぁ、ここも安全とは言えませんからねぇ…もしかしたらここに攻め込んでくるかもしれない」

「そうだな…奴らの目的も不明なままだ。このままこちらに攻め込んでこなければいいのだがな…しかし、あのカーシスの事だ。何をしてくるか分からん」


 厳陣と大志が話していると湊は一つの疑問があった。


「カーシスって確か、光明庁の長官ですよね?彼と会ったことがあるんですか?」


「ああ、私と大志はあったことがあるよ。つかみどころの無い奴でな。何を考えているか分からん奴だ。とは言え、私も大志も一度会ったことがあるだけだがね」

「カーシスは何故、月影さんを拉致したんですかね?」

「彼の考えは分からないが、有力なのは恐らく彼女を使って何らかの計画を進めているのだろう。もしそうだとすれば何としてもそれは阻止せねばならない。もしかしたらこの世界を滅ぼしかねないことをするかもしれないからね。カーシスはそう言う男だ」


 厳陣はそう言った。湊は唖然としていた。


「まぁ、彼が狂気に満ちた人物であるという事は事実ですよ。ぶっちゃけ、彼は本当に人間かどうかも怪しいですしね」


 大志が笑顔を作りながらそう言った。


「人間かどうかすら怪しいってどういうことですか?」

「まぁ、彼はその…特殊でしてね…」


 湊が聞くが大志は詳しく教えてくれなかった。


「大志も私も彼の事はあまり深くは知らないんだ…知ってることがあるとすれば彼は人間だ。それは間違いないだろう。だが-」

「私と厳陣が分かってるだけでも彼は百年以上生きています。しかも、全く老化していない。何故なのかは分かっていないんですよ」


 厳陣が説明していた所を大志が付け足した。


「悪魔と契約したりとかしてるんじゃないですか?」


「それは我々も考えましたが、明らかに違いますね、あれは。彼の周囲に悪魔の気配が全く感じませんでした。私は千年以上生きています。契約悪魔の位置などの特定は出来ます。しかし、彼は人間でした。あらゆる手を使い、彼を調べましたが、彼は正真正銘の人間でした」

「でも、それだけ、異常な人物なら悪魔と何の関係が無いとは…」

「言えんだろうな…カーシスと悪魔には何らかの関係があるのは間違いない。しかし、証拠がない」


 カーシスの事は謎が深まるばかりであった。千年以上生きている「真祖」である大志ですらカーシスの事は把握しきれていないのだ。


「世の中は私ですら知らないことは山ほどあるという訳ですよ。まったく、情けない話ではありますが…」

「そうですか…」


 湊は黙り込んだ。






「それでは、失礼します」


 湊はそのまま執務室を出た。


「これからどうします?厳陣?」

「はっきり言って、彼らだけで月影君を奪還するのはきついだろう。増援を出すしかあるまい」

「よろしいので?この国も「USW」に攻め込まれる可能性がありますが…それでなくともこの国は未だ他の「四大帝国」とギクシャクしていますし…」

「仕方あるまい。彼らを失う方がこの国にとっては損失だ。しかし、大志の言う通り、あまり多くは増援は送れない。精々二、三人が限度だ」

「もうお決めになってるのですか?厳陣?」

「ああ、早速、四宮君と連絡を取ってくれ」

「分かりました」

「さて、「USW」よ、全面戦争と行こうじゃあないか」


 厳陣はそう言い放った。まだ、今の戦いは序章に過ぎない。更なる戦いが蒼たちに待ち受けているのだから-





 To Be continued

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