【第三章】USW侵攻編Ⅷ―七人の将軍(ドゥクス)―
『七魔王』たちがカーシスに会議室に来るよう召集をかけられていた。
「どうやら、侵入者が現れたらしい」
「ここに侵入者?誰よ?そんな馬鹿なことしてる奴らは」
「それをここで話すんだろうよ」
「はぁ~、面倒くさい」
「………」
「けっ…」
「お前たち、少しは静かにしろ…」
『七魔王』たちはそれぞれぼやいているとドゥームプロモ・ドラコニキルが静かにするように促した。
そして、会議室のテーブルにそれぞれ腰かけた。
『七魔王』が全員揃うことはかなり珍しい。しかし、ここ最近は頻繁に集まるようになっていた。
『七魔王』は基本的にほとんどの者は個人主義が強く、皆バラバラである。しかし、ドラコニキルが形だけ統括している。ドラコニキルはあまり自分から事を動かすタイプではない為必要最低限の統括をしている。
『七魔王』が全員椅子に腰かけてしばらくして、カーシスがやって来た。
「やあ、『七魔王』諸君、集まってくれて礼を言うよ。敵襲だ。まぁ、まずは話をしようか」
カーシスは笑顔でそう言った。
ドゥームプロモ・ドラコニキルは真顔だった。ドラコニキルは黒髪のストレートヘアーと白と黒のオッドアイが特徴の男であった。
「敵襲か~。メンド」
ウルオッサ・テディベアがそう呟いた。白人の小柄な男性で緑色の髪と瞳が特徴の青年である。彼は『七魔王』の中でも面倒くさがりで有名な男であり、自分からは滅多に動こうとしない。
しかし、先日ウルオッサは十二支連合帝国に侵攻した。あの時は気まぐれで侵攻したが、その時戦った十二支連合帝国の者たちと戦った。恐らく、奴らだろうとウルオッサは思った。
「まぁ、そう言うな、ウルオッサ。我々に歯向かうものはそうはいない。楽しもうじゃあないか」
カーシスがそう言った。相変わらず読めない男だとウルオッサは思った。ウルオッサはカーシスの事をあまり信用していない。何を考えているかわからず不気味だからだ。信用していないというよりはもしかしたら苦手といった方が正しいかもしれない。
しかし、ウルオッサは自分に害が及ばないことでもない限り、他人を詮索しない。カーシスの目的などウルオッサにとってはどうでもよかった。
「で?敵はどのくらいいるのですか?」
グリトニオン・ニヒルはカーシスに尋ねた。グリトニオンはウルオッサと対照的で長身の黒人の男性であり、黒がかった赤髪が特徴である。
彼は『アンタレス』の中でも寡黙な部類に入る人物で忠実に任務をこなす男であり、ドラコニキルが『アンタレス』内で最も信用している男でもある。
「ああ、映すよ」
カーシスはそう言って『七魔王』たちが座っている長机から立体映像を映し出した。
「侵入者は六名。苗木一夜、天草屍、霧宮美浪、蛇姫薊、御登狂そして時神蒼」
「………!」
スープレイガは蒼の名前を聞いた瞬間、顔が険しくなった。スープレイガは蒼と二度交戦したが決着がつかなかった。スープレイガは蒼と決着をつけたいのだ。
彼は『アンタレス』の中でも好戦的な性格であり、ドラコニキルが最も頭を悩ませている青年でもある。金髪リーゼントと三白眼が特徴の白人の男である。
しかし、スープレイガは動こうとしなかった。スープレイガとて馬鹿ではない。今すぐにここから向けだそうとするとドラコニキルかカーシスに止められてしまうだろう。スープレイがはそれを分かっていた。だからこそ今は動かない。スープレイガは立体映像に写っている蒼を見ながら闘志を奮い立たせていた。
「何だ…?敵襲とかいうからどんだけ大勢でいるのかと思えば…只のガキ共じゃねぇかよ」
紫の髪の男がそう言った。彼はグリーフアルト・ギアール。紫のロングヘアーとダークメタルな服装が特徴の男だ。
彼は強欲な人物として知られており、特に金に目が無い。依頼料をやたら高くつけたりと、ドラコニキルにとってはスープレイガと同じくらい悩みの種でもある。
さらに彼もまた、スープレイガと同様、単独行動や個人主義が強い為、ドラコニキルは『アンタレス』のメンバーの中でも特にこの二人の扱いに困っていた。
「ただのガキ共ではないよ、グリーフ。彼らは十二支連合帝国の政府に立ち向かった実力者たちだ」
カーシスが言うとグリーフアルトの隣にいた女性が話し始めた。
「十二支連合帝国の…ああ、なるほど、仲間を助けに来たわけですね…ご苦労ね…」
彼女はアルビレーヌ・マジェルタスク。黒がかった茶色のセミロングが特徴の女性だ。目はたれ目でのほほんとした感じの印象が目立つ。服は白いワンピースを着ていた。アンタレスのほとんどの者は黒を基調とした軍服を着ているのに対し、アルビレーヌとグリーフアルテは全く違う服を着ていた。
「まぁ、そうなるね。だが、ツキカゲエルは我々が必ず守らなければならない」
カーシスはそう言った。カーシスは『七魔王』のメンバーには慧留を拉致した理由を話していた。
「古代兵器の「鍵」として彼女を使う…と申していましたね」
痩せ気味の男がそう言った。彼はルッシュベル・ルルルガル。灰色の髪と異常なまでに白い肌が特徴の男であった。
彼は『七魔王』の中でも何を考えているか分からない男だ。ミステリアスな雰囲気のせいか話す時は常に平坦な口調で話すせいか、いずれにしても読めない男である。他の『七魔王』がわりかし分かりやすい性格をしている為、余計にルッシュベルのミステリアスさが際立っていた。
「ああ、彼女はその為に必要なんだ。だから、君たちには彼らを撃退、もしくは拘束をして欲しい。まぁ、最悪殺しても構わないさ」
カーシスは余裕の表情でそう言った。
「了解しました。カーシス様」
ドラコニキルが席を立ち頭を下げた。
「だが、無暗にこちらから攻撃を仕掛ける必要はない。各自、自分の領地に待機し、そこで敵を倒せばいい。恐れるな。我等の前に…敵はいない」
カーシスは立ち上がり、手を前に出し、そう言った。
ドラコニキルは一人で「USW」の地下牢に行っていた。ある人物に会うために。
「入るぞ」
ドラコニキルはそう言って、とある部屋に入った。ドラコニキルが入ったこの牢獄は少し違ったものだった。普通の牢獄は狭く、何もな場所だが、この部屋は普通の牢獄よりも広く、椅子や机、ベッドまであった。そして、明かりまでついているなど、一通りの設備が揃っていた。
ドラコニキルもこの部屋に入るのは初めてであった。そもそも牢屋に行くこともそこまで多くはないし、最下層まで行く機会などなかった。
そう、ここは「USW」の地下牢の最下層であり、もっとも広い牢獄なのだ。
ドラコニキルはそこに幽閉されている少女を見た。月影慧留だ。
黒髪ロングと釣り目が特徴の少女だ。背は高くもなく低くもなく普通くらいの少女であり、見た目は普通の人間とほぼ変わらない。しかし、この少女こそ、カーシスが求めていた少女なのだ。
彼女は天使であり、【黒時皇帝】の眷属なのだ。カーシスは彼女の力をとある古代兵器を開くカギとして利用すると言っていた。
-まぁ、あの方が何をしようが俺は興味ないし、関係ないか。
ドラコニキルはそう思った。彼は自身の心の平穏を何よりも大事にする。逆に言えば面倒事にはなるべく手を出さない。ウルオッサのように面倒臭がりという訳ではない。ドラコニキルは何不自由なく、平穏に暮らしたいだけなのだ。その為ならどんなことでもする男だ。
「どうだ?居心地は?」
ドラコニキルが聞くが慧留は何も答えなかった。どうもこういうのは苦手だ。
「ふー、…何か言ってくれよ。困る」
ドラコニキルは困った顔をしていた。正直、ドラコニキルは彼女の扱いに困っていた。カーシスには「丁重に扱うように」と言われているからだ。
「何か用ですか?」
慧留が口を開いた。以外とそこまで恐怖している訳ではないようだった。
ドラコニキルは少し慧留の事を感心していた。
「ああ、お前に言っておくことがある」
ドラコニキルがそう言った。そう、ドラコニキルがここに来たのは慧留に伝えたいことがあったからだ。
「言っておく事?」
そして、ドラコニキルは話し出した。
「お前の仲間がこの『闇魔殿』に侵入してきた」
蒼たちは『闇魔殿』に辿り着いていた。
「やっと着いた!」
蒼がそう言うと一夜が「そうだね」と言った。皆、かなりの緊張感があった。
「行こう!」
美浪がそう言うと皆がコクリと頷いた。
「ラナエル、ここでお別れだ」
蒼が言うと「あ、うん」とだけ言ってラナエルは蒼たちの元を去って行った。
「じゃあ、まずはこの壁ぶっ壊すか!」
屍が言うと蒼が「ああ」と言い、腰につけてる二本の刀の内の白色の刀を取り出した。蒼の持ってる刀は「天使」と言われる天使だけが持っている武器である。
そして、蒼はその「天使」を振り上げる。
「どうして…蒼たちが…」
慧留はドラコニキルに尋ねる。分からなかった。何故、蒼たちがここにいるのかを。
「簡単だ。お前を助けるためだ」
ドラコニキルは至極当然のようにそう答えた。
蒼は『闇魔殿』の壁に穴をあけた。これでは敵に存在がバレていてもおかしくない。
「随分デカい音だったけど、気付かれてないかな?」
美浪がそう言うと一夜が冷静に答えた。
「いや、敵も馬鹿ではない。僕たちがここに来る前から既に僕たちの事に気付いてると見るべきだ」
「なら、早く中に行かないとね!」
一夜がそう言うと狂がそう言い、そのまま蒼たちは進んでいった。
ドラコニキルと慧留は向かい合っていた。
「私を…助けに…」
慧留がそう呟いた。慧留は驚愕の表情をしていた。蒼たちを巻き込まないために自分が来たというのに蒼から来てしまうとは。
ドラコニキルは黙っていた。遅かれ早かれドラコニキルが言うまでもなく、蒼が慧留を助けに来たという事実を知ることになっただろう。
それにも関わらずドラコニキルは慧留にその事を伝えた。
「そうだ。まぁ、貴様にこの事を言ったところで何になるという訳でもないが…一応な。話はそれだけだ」
ドラコニキルはそのまま去って行った。その去り際は慧留にとってまるで、地獄からのお告げを受けているようであった。
「蒼…」
慧留は天井を眺めていた。これからどうするべきかを…考えていた。
蒼たちは『闇魔殿』の壁に穴を開け、そこから場内に進入していた。中は暗く、ろくに前も見えなかった。
「おい!この城の地図はねぇのかよ!」
屍はそう一夜に言い放った。城の中がデカ過ぎて訳が分からなかった。
「どうやら、この城の地図は存在しないようだね」
「はぁ!?何でだよ!?」
「僕に言われても分からないさ。恐らく、ここにいる者たちは地図が無くともこの城の地形を把握しきれているんだろう。どんな手を使っているかは分からないがね」
一夜が冷静にそう言った。しかし、蒼たちは焦っていた。只でさえ、敵地に足を踏み入れているのにこれでは手付かずだ。
「取り敢えず、この暗さを何とかした方がいいですよ。前がろくに見えへん…」
美浪はそう言った。言葉遣いが安定しない奴だなと蒼は思った。どうでもいいことだが。
「う~ん。こういう時に湊君がいてくれれば助かるんだけどね…ないものねだりをしてもしょうがない…」
湊ならこの城の地形を把握しきれていただろう。この手の仕事は湊の管轄だ。しかし、彼は今はいない。
「蒼ちゃんの霊呪法で明かりを灯せないの?」
狂が蒼に尋ねる。
「無理だな。俺は攻撃系の霊呪法しか使えねぇし、細かい調整が下手なんだよ。だから、明かりを灯せるくらいの霊呪法は使えなねぇ。全く情けねぇ話だ」
蒼は自嘲するようにそう言った。そう、蒼が使える霊呪法は攻撃系しか使えない。さらに細かい調整も苦手な為、もし使用すれば辺りを吹き飛ばしてしまうだろう。
「………もうすぐすると広い部屋に着く」
薊がそう言ってきた。
「分かるのかい?」
「周囲の音と体温を感知して調べたわ」
「まるで蛇だね」
一夜がそう言った。蛇は周囲の音と体温感知を駆使してあらゆる地形を把握することができる。薊はそれをやっていたのだ。
そして、走るうちに明かりが見えてきた。そのまま走ると薊の言う通り、本当に広い部屋に着いた。
「流石だな」
屍は薊に賛辞の言葉を贈ると薊は少し顔を赤らめて屍から視線を逸らした。
「…さてと」
蒼がそう言うと皆、部屋の周りを見回した。白い空間だった。そして、蒼たちが通ってきた以外の道が全てで六つあった。
「どれが正しいんだ?」
屍が言うと薊は目を閉じた。
「………駄目、道のルートが多すぎるのと無数に入り組んでいてどれが正しいか分からないわ」
「じゃあ、どうすれば…」
「六つに分散しよう」
狂を始め、どうすればと迷っていたところ美浪がそう言った。
「な…!?そんな事出来る分けないだろ!?分散したらそれこそ敵の思う壺だ!ここは全員で虱潰しに調べるべきだ!」
蒼がそう言うと美浪は反論した。
「時間が無いんだよ…慧留ちゃんを見つけ出すには分散した方が効率は上がるよ」
「でも…」
蒼がそれでも食い下がるがそれを一夜が止めた。
「そうだね。手分けして探そう」
「…!?一夜まで!」
「蒼、僕たちが君について来ているのは君に守られる為じゃない。慧留ちゃんを助ける為に君とともに来たんだ」
「ま、そういう事だ。助けたいのはお前だけじゃない。気持ちは皆一緒だ。それに…あいつには…借りがある」
一夜と屍が自分の気持ちを蒼に伝えた。
一夜は慧留を助けたいと思っているのだ。興味のあること以外は基本的には無頓着な一夜ではこんなことをいう事は滅多にない。蒼は一夜の変化に驚いていた。
屍は慧留に『四大帝国会議』の事を言っているのだろうと蒼は思った。
「ま、分散した方が効率はいいでしょ。美浪ちゃんの意見に賛成だよ~」
狂が軽い感じでそう言った。狂も見た感じは緩い感じで振舞ってはいるが助けたいという気持ちは蒼にも伝わっていた。
「蒼君、君が私たちを傷つけたくないって気持ちは分かるよ。私たちを大切にしてるのも分かる。けど、私たちは慧留ちゃんを助ける為に来たの!あなたに守ってもらう為じゃないの!大丈夫だよ!私たちは死なないから!」
美浪がそう言うと薊がさらに続けた。
「みんなお互いの事を信じてるのにあなたは仲間を信じられないわけ?」
蒼は薊の発言を聞くと目をカッっと見開いた。
-そうだ、こいつらは慧留を助ける為に来たんだ。俺だけじゃないんだ、あいつを助けたいのは…
蒼は覚悟を決めた。みんな生きて帰れる。蒼はそう確信した。
「分かった。分散しよう」
蒼がそう言うと皆は首を縦に振った。
「皆……死ぬなよ!!」
「善処するよ」
「当然や!蒼君もヘマせんといてよ!」
「誰に言ってんだボケ!それはこっちの台詞だ!」
「同感ね」
「よ~し!皆!頑張ろう!!」
蒼がそう言うと、一夜、美浪、屍、薊、狂の順で蒼に返事を返した。
そして、蒼たちはそれぞれ別々の道に進んでいった。
「あれ~?蒼たちはどこに行ったんだろう?」
ラナエルはあの後、「ネオワシントン」から抜けようとしたが、蒼たちが気になってついて来てしまったのだ。
ここまで、蒼たちがいたのは辛うじて分かったのだが、蒼がどこに進んだかは分からなかった。
「う~ん、仮にどっか進めば蒼に会えずともその仲間には会えるけど…そうなったら面倒臭そうだな~」
ラナエルはそう呟いた。どうも蒼以外の者とは話し辛いとラナエルは思っていたのだ。まぁ、蒼が真っ先にラナエルを助けたから蒼をラナエルが気に入っているというのが大きいのだが。
「まぁ、考えてもしょうがないな!このままだとどんどん蒼から遠ざかっちゃうし!大丈夫!確率は六分の一…蒼とは絶対に会えない確率じゃない!!」
ラナエルはそう言って適当に道を進んだ。因みに六分の一は具体的な数字で表すと大体十パーセントくらいだ…よっぽど運が良くなければ会えないのだが…ラナエルはそんな事まったく気にしなかった。
「それにしても…真っ白な空間だな…」
蒼はそう呟いた。「ネオワシントン」事態が夜に包まれていたし、地下空間も真っ黒だった為、この『闇魔殿』は異彩を放っていた。蒼たちはあの後、六つの扉を前にして一人ずつ分散したのだ。故に、今蒼は一人だ。
蒼はあの時は皆の意見を聞き、分散するとは言ったが些か不安が残っていた。
「…死ぬなよ……」
蒼がそう言うと後ろから声が聞こえてきた。なので、後ろを振り向いた。するとー
「ああああああああああああああああああああああああああああああああおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
やって来たのはラナエルであった。物凄い速度で近づいていた正直、蒼は身の危険を感じていた。
「ラナエル!?」
蒼は驚愕の表情をしていた。ラナエルは『闇魔殿』を前にして別れた筈である。なのに何故ここにいるんだと蒼は思った。
蒼は足を止めた。ラナエルもそれと同時に足を止めた。
「はぁ、はぁ、はぁ、………やっと追いついた」
「何でここにいるんだよ!?」
蒼はたまらず声を上げた。ラナエルは余韻に浸っていたが蒼はそんな事お構いなしに質問をした。
「お前…あの後「ネオワシントン」を抜けたんじゃ無かったのかよ!?」
「ははは…気になってついて来たんだぞ!」
ラナエルが笑顔でそう答えた。どうやらついてきてしまったらしい。とんだお転婆娘だ。
「はぁ~、着いて来ちまったもんは仕方ねぇか…俺から離れんな…」
蒼がそう言っているとラナエルは蒼より先を進んでいた。
「速く行くぞ!蒼~!」
「言ってるそばから…」
蒼は頭に手を置きながらそう呟き、ラナエルの後を追った。
一夜は慎重に進んでいた。進んだ道をパソコンを使い、地図を作成していた。
「ふん。今のところはまっすぐのようだ」
一夜はそう呟いた。一夜も勿論今は一人だ。
「は~、それにしても勢いでかっこつけちゃったけど…僕事態の戦闘力は低いんだよな~」
一夜は過去の自分を激しく恨んだ。その場のノリで行動してはならないと自分が一番分かっている筈なのに…どうもああいうノリにはすぐに乗ってしまう一夜なのだ。
というかあの状況で断らない方が無理な話である。一夜はこう見えて空気や雰囲気は読める方なのだ。それに虱潰しに一つずつ回るより分散した方が効率がいいのもまた事実だ。
蒼たちも一夜の戦闘力の低さをもしかしたら失念していたのでは?と一夜は勘ぐってしまう。あるいは、修行と化してて強くなってるとか思われてるかもしれない。
確かに一夜以外は蒼が失踪してから鍛錬をしていたようだが、一夜はそれは一切してない。一夜がやったことと言えば、情報収集と【アラメイ】の使い方だけだ。
-さて、この二つがどれだけ生かせるか…そこに頼るしかないねこりゃ…
一夜は胸中でそう呟いた。
美浪はまっすぐに進んでいた。この道はどうやらかなり入り組んでる道のようで右に曲がったり左に曲がったりしている。
「ややこしい道やね」
美浪はそう呟いた。実際出口が見えない。
「それでも進まなきゃ!」
美浪はそう自分に言い聞かせそのまま進んだ。するとー
「この気配は…」
美浪は謎の気配を感知した。
「そこ!」
美浪は接近して気配がする方に攻撃を仕掛けた。
「感がいいね、気配を消していたんだが」
美浪の右手を掴みながら男がそう言った。随分大柄な男であった。
「早速、敵か…」
美浪はそう呟いた。
「やれやれ、マジで道が分からん…」
屍はそう呟いた。勢いよくみんなと別れたわけだが、屍は道が全く分からず、少々困っていた。
「この城がデカいのは分かってたが…まさかこうもややこしい構造をしていたとは…」
屍の今いる場所は細い一本道だけでなく、いろいろと分かれ道が枝分かれしており、どれがどれか全く分からなかった。
屍は適当に進んでいった。分かれ道も己の感にのみ従い、進んでいった。こうなってしまったら考えても仕方がない。適当に進んでれば道は開けるだろうと短絡的に屍は考えていた。
屍が適当に進んでいると大きい部屋に辿り着いた。
「お!?何かありそうな部屋に着いた」
屍がそう呟いた。しかし、この部屋、すべてが白に構成されており、ただただ、だだっ広いだけの部屋だった。
「ようこそ、「悪食の間」へ」
後ろから声が聞こえた。その声の主はー
「お前は…グリトニオンか…!」
「ほう、俺の名を覚えていたか。では改めて、『アンタレス』の幹部『暴食七魔王』グリトニオン・ニヒルだ」
グリトニオンが律儀に自己紹介をした。大柄な黒人の男であり、赤い髪が特徴の男だ。
身長は大体一九〇センチほどか、大柄な男ではあるが太っているわけではなくがっちりとした体形が特徴の男だ。
「ご丁寧にどうも。その『暴食七魔王』ってのが『アンタレス』の幹部の名称か?」
「…これから死ぬ気様にそれを知る必要があるのか?」
「舐められたもんだ」
屍はグリトニオンの対応に苛立ちを抱いていた。舐められるのは好きじゃない。
「まぁ、いいだろう。教えても減るものではないしな。『アンタレス』は『七魔王』という七人の幹部がいる。俺はその中で暴食を司っている。だから『暴食七魔王』というのは俺自身の肩書で『七魔王』が幹部たちの名称だ」
グリトニオンがそう答えると「なるほどね」と屍は返した。
「では、始めようか」
グリトニオンがそう言うと屍は溜め息をついた。
-まさかいきなり幹部が相手とはな…まぁ、あいつには借りがあるしな…さっさと返してやる!
グリトニオンは巨大な戦斧を空間から取り出した。
-あれがグリトニオンの「悪魔」…か?ってことは今回はあいつもマジって事か。
屍は地面に両手を置き、双剣を錬成した。屍が得意とする術、錬金術である。
「行くぞ!!」
グリトニオンが前に出る。屍もそのままグリトニオンに突進し、二人の武器が交えた。
狂は走るのが苦手だ。最初は走っていたものの体力が尽き、今はのろのろと歩いていた。
「つ…疲れた…取り敢えずゆっくり進もう…体力が持たない…」
狂は一本道をゆっくり歩いていた。この城はどうやら白で構成されている白のようだ。
「敵が現れませんように、敵が現れませんように、敵が現れませんように!」
狂はそうぶつぶつ呟いていた。今は結構疲れてるのでこのタイミングで敵は現れて欲しくなかった。いや、疲れてなくても出来れば現れて欲しくないが…
「空は闇、闇が僕を引き立ててくれる…」
そんな声が聞こえた。狂はそんな痛々しい発言をとても無視したかったが、そうも言ってられなかった。声の先に進んでいくと広い広間に辿り着いた。
「ようこそ、「幻惑の間」へ。『色欲七魔王』ルッシュベル・ルルルガルだ」
ルッシュベルが流暢に自己紹介をした。狂は痛々しい男だと思ったがそれと同時に只者ではないとも感じた。
「はぁ~、ついてないなぁ…よりによって敵の幹部に当たるなんて…」
「ほー、僕が幹部ということが分かるのかい?」
「まぁ、そんな大層な肩書を持ってるんなら幹部って勘ぐっちゃうよそりゃあ」
狂はそう言ったがそれだけではない。狂はこの男を見て先日交戦したウルオッサと同じ匂いがしたのだ。
「じゃあ、始めようか…」
ルッシュベルの頭から王冠が出現した。王冠は紫色で不気味なオーラを間とっていた。恐らくあれがルッシュベルの「悪魔」だ。
「上等だよ…!」
狂は戦闘態勢に入った。そして、両者ともに睨み合っていた。
薊は音を聞き分けながら道を探索していた。そして、そのまま奥へ奥へと進んでいた。
「何か気配を感じる…」
薊はそう言ってその謎の気配がする方向へ向かっていた。恐らく敵だろうから避けたいところではあるが、それで逃げ切れるとは考えられなかった。敢えて薊は謎の気配のする方へと向かっていった。
「まさか自分から向かってくるとはね…」
声が聞こえた。女の声だった。随分くたびれた感じの声であった。
「逃げられるとは思わなかったからね」
薊がそう呟くとクスクスと笑いだした。
「思い切りがいいこと」
女はそう言って薊に近づいて来た。薊が今いるのは暗い部屋であり、相手の姿はろくに見えなかったが女が近づいてきて顔が見えた。それは相手も同じようだ。
「あなたは?」
「わたくしは『アンタレス』の一人、シャルトット・ウール」
シャルトットはそう名乗った。紫の瞳と髪が特徴の女性であった。服は恐らく『アンタレス』の政府喰うだろう。
「蛇姫薊」
「へぇ、あなたがね。聞いてるわよ。侵入者の一人だってね」
「なら要件も分かるわね?」
「勿論、けど、答えはノーよ」
「なら、無理やり押し通るのみよ!」
薊は【毒華霊弓】を作り、シャルトットに向かっていった。
「威勢はいいわね」
シャルトットは二丁拳銃を持ち、薊を迎え撃った。
「ふー、始まったか…」
ドラコニキルは自宮で寝転がりながらそう呟いた。ドラコニキルは寝転がりながらも周囲の気配を探り続けている。
「時神蒼と苗木一夜だけはまだのようだな。まぁ、あの二人もいずれ戦うことになるがな」
ドラコニキルはそう呟いた。特に、時神蒼…あの男とはいずれ戦うかもしれないとドラコニキルは思ったのだ。根拠はない。ただ、何となくそう思ったのだ。
「はぁ~、まぁ、自分から動くのも面倒くさいし、出来ればあいつとは戦いたくないね…あの中で一番面倒臭そうだ…」
ドラコニキルは蒼の力に注目していた。それは今でもだ。彼の力は侮れない。そう考えていた。そんな面倒臭い相手とは戦いたくない。だからこそ、スープレイガの考えがドラコニキルは理解できないのである。
彼は常に強者を求めている。そんな面倒臭いことをよくやるとドラコニキルは思った。
「恐らくスープレイガはすぐにでも時神蒼の元へ向かっているだろうな…まぁ、スープレイガが相手なら流石に時神蒼もただでは済まないだろうし、弱ったところを俺が手を下すのもあり…か」
ドラコニキルは自身の平穏を脅かすものは一切容赦しない。不穏分子はなるべく速く、そして、手軽に摘んでおきたいところではあった。
「まぁ、それは後で考えるか…どちらにせよ、今はまだ戦局が動いていない。考えるのは戦局が動いてからでいい」
ドラコニキルはそう呟き、目を閉じた。
慧留は一人で空を見上げていた。その姿は助けを待つお姫様のようだった。慧留は普段の服装ではなかった。今は白いドレスを着ていた。ここに来た時に服装を変えるようにカーシスに言われてこのドレスが用意されたのだ。
「やあ、ツキカゲエル、いや、エル・マクガゥエインと言えばいいかな?やはり似合っているね、美しいよ」
カーシスが突然現れ、慧留の今の姿を賛美した。慧留は身構えた。
「そう身構えるな。別に命を取りに来たわけでではない。少し、私について来て欲しいのだよ」
カーシスはそう言うが相変わらず、慧留は身構えていた。
「私をどうする気ですか?」
「だから、今はついて来て欲しいだけだよ」
「………」
「う~ん、信用してもらえないかな?まぁ、当たり前か」
カーシスは頬を人差し指で掻きながらそう言った。慧留もこのままでは話が進まないと思ったのか「分かりました」と言った。
どうもこの男の考えが分からなかった。非常に不気味であった。
「来たまえ」
カーシスがそう言うと慧留はカーシスの元へとついていった。そして、カーシスは慧留に質問を始めた。
「君はなぜ、十二支連合帝国に?君はローマにいたんじゃないのかい?」
「答える気はありません」
「なるほどなるほど。では、なぜ、トキガミアオたちといたんだい?」
「それは蒼が襲われてる私を助けてくれたからです」
「ふむふむ、なるほど…では、君は……自身の力に気付いているかい?」
「自身の力?」
「君の力はとても強大なモノなんだよ。君の力はこの世界を変える事ができるほどの力だ」
カーシスは楽しそうにそう言った。慧留はカーシスの意図が読めなかった。
しかし、カーシスは思ったより気さくな人物のようだ。話し辛いわけではないし、愛想もいい、初期の蒼よりもよっぽど接しやすいと慧留は思った。…逆に彼の不気味さを引き立ててもいるわけだが。
「私を使って何をする気ですか?」
「ああ、私は別に君を殺そうという訳ではないんだ。君に見せたいものがあるのさ」
カーシスはそう言った。慧留は少し、震えていた。カーシスは何をするつもりなのか全く分からなかった。洗脳でもされるのだろうかと慧留は思った。
「…」
「心配しなくても君を洗脳する…なんてことはしないよ」
慧留の考えは見透かされていたようだ。慧留は余計に怖くなった。
「………着いたよ」
慧留は目の前の光景に驚いた。それは慧留にとって想像を絶するものだったからだ。
「これは?」
「これは…我が「USW」の所有する古代兵器だよ。君にはこれを起動してもらいたいんだ」
「ふざけないで!誰がこんな危険なものを…」
「君の「時を巻き戻す力」があれば、可能なはずだ」
「だから、争いに手を貸すような事…私は…」
「平和の為だよ…私も君と同じさ。平和な世界を作りたいのさ。だがね、綺麗事ばかりでは…正しいことだけではどうにも出来ない事もあるのさ。その為にも戦わなくてはならない。戦い、勝たなければ、平和は掴めない」
「そんなの…間違ってる!」
「………納得出来ないのは分かる。今すぐにしろとは言わない。君も時間が必要だろう。今は本当にこれを見せたかっただけなんだ」
「………」
慧留はカーシスを睨んだ。慧留は絶対に手を貸さない。そう思った。
「私も君を無理やり手を貸させたい訳じゃない。ゆっくり考えればいいさ。…では、戻ろうか」
カーシスが踵を返すと慧留もカーシスについていった。
-順調だ…
カーシスは胸中でそう呟いた。
To Be continued




