表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第一章】十二支連合帝国篇
3/196

【第一章】十二支連合帝国篇Ⅱーアザミの花ー

 苗木一夜なえきいちやの計らいで学校生活を送ることになった主人公、時神蒼ときがみあおと天使の少女、月影慧留つきかげえる

 そんな中、蒼と慧留はクラスメートの董河湊とうかわみなとに生徒会に入って欲しいと誘いを受けた。

 話を聞きに生徒会室に行くことになった、蒼と慧留。しかし、そこで二人は波乱を巻き起こすことにー!?

「ここが現場か…」

 蒼は今一宮児童公園に来ていた。昨日の夜に一夜が見つけ出し、そして、今日の放課後に蒼と慧留をここに呼び出したのだ。

「これは、神器によるもので間違いなさそうですね」

 慧留がそう告げた。冷静のように見えるが慧留はかなり動揺していた。公園の地面には数多の血痕と傷跡があったのだから。一夜の話によると殺されたのは29歳無職の男だそうだ。

遺体は無残に切り刻まれていたらしく、今警察が遺体を詳しく調べているらしいがこれはどう考えても神器による殺害であることは明白だった。

「切り口がかなり特殊だったからね。神器の攻撃で間違いないだろう。それにしても、この町にまで神器による被害が出るとは…」

 一夜は淡々とそう言った。

「前、俺たちが遭遇した神器を使ってたやつと同じ奴らか?それとも…」

 蒼は疑問を持っていた。しかし、一夜はそれを否定した。

「それは無いね。蒼たちが倒した奴らは警察が捕り抑えた。因みに今は取り調べ中だ」

 一夜が冷静に蒼に告げた。

「で?そいつは何か情報を持ってたのか?」

 蒼が一夜に質問した。

「いや、これと言って有力な情報は得られなかったよ。分かったのは何者かが神器を流通してるってことだけだった。奴は神器を人からもらったと言っていたが、誰からもらったのかはよく覚えていないらしい」

 一夜は蒼に淡々とそう答えた。

「そうか…まぁ、これ以上被害を拡大させるわけにもいかんだろ。俺も時間がある時は捜索させてもらうぜ。まぁ、心配しなくても学校にはなるべく行くようにはする。ここで下手な行動を取るのは得策とは言えないしな」

 蒼がそう言うと慧留も続いて話してきた。

「そうだね。今は地道に捜査するしかないよね」

「まぁ、ここでいつまでも喋っているのもあれだからさっさと退こう」

 慧留が話し終えると一夜がそう言った。

「そうだな…」

 蒼がそう言うと三人は現場から離れた。


「それにしても…何で慧留はあれが神器による攻撃だって分かったんだ?一夜も現場に俺たちが着くまで詳細を教えてなかったぞ」

 蒼が疑問に思い、慧留に問いかけた。今三人は自宅に帰える途中なのである。

「それは僕も気になるね」

 一夜も乗っかってきた。

「私は魔力の流れが目で視認出来るんですよ。人によって魔力の流れも違いますし、さっきの公園では神器が纏う独特の神気を感じたんで神器によるものだと分かったんです」

 慧留はそう二人に告げた。

「へ~。だから、あの時も初見で神器使いって分かったのか…」

 蒼は驚いたようにそう口にした。

「霊力の探知能力が高いんだね…でも、それが出来るならあの時も玉兎を捕まえることも出来たんじゃないかな?」

 一夜がそう慧留に質問するが慧留はそれを否定した。

「それは無理です。私が感知出来るのは眼に映っている対象だけですから」

「なんか地味な能力だな」

 蒼がそう告げると慧留は拗ねた子どものように蒼に文句を言ってきた。

「どうせ私は何にも役に立たないよーだ!蒼はいいよね…勉強もできるし強いし」

「別に役立たずとまでは言ってねーだろ?ったく…何拗ねてんだよ…」

 蒼は呆れるようにそう言う。

「君の方が慧留ちゃんの数倍ひどいけどね」

 一夜がジト目で蒼にそう告げた。

「んだと…」

 蒼がそう言うと更に一夜は続けた。

「まぁ、人の行いを見て我が身を振り返ろってことさ」

 一夜がそう言うと蒼は抗議しようとしたが口喧嘩では勝てないので蒼は身を引いた。

「まぁ、明日から調査開始だな」

 蒼がそう告げると二人は頷いた。

「僕はあっちだから…また明日」

 一夜がそう告げる。

「ああ、また」

「今日はお疲れ様でした。それではまた明日」

 蒼も慧留も別れの挨拶をし、三人はそれぞれの家に帰って行った。


 翌日、蒼は気だるげに目を覚ました。

「やっぱ、朝は慣れないな…」

 すぐに身支度を済ませ外に出るとそこには慧留が既に待っていた。

「遅いよ、蒼」

 慧留がそう告げると蒼は抗議をした。

「今からでも余裕で間に合うだろうが!」

「はいはい、分かったから速く行こう」

 そう言って慧留は蒼を適当にあしらい学校に向かった。


「おはよう、時神君、月影さん」

 湊は二人に挨拶をした。

「おう」

「おはよう、湊君」

 蒼と慧留が順番に挨拶をした。

「相変わらず素っ気ないな~時神君は。月影さんを見習った方がいいよ。敵作っちゃうよ~」

 湊が蒼にそう言うと蒼は不服そうな顔をした。

「ウルせー。このクソナルシー」

「ひどいな!?まぁ、確かに俺は結構イケメンの部類だからそういうこと言われても仕方ないけどね!」

「うぜぇ、死ねよ、クソが」

 蒼が毒舌を湊に吐いた。

「蒼…いい加減その口の悪さ直しなよ…」

 慧留が蒼にジト目を向ける。

「そう言えば…二人は部活とか考えてるの?」

 湊は突然二人に聞いてきた。

「いや、メンド臭えーし考えて無い」

「興味はあるけど…この学校二年生から部活始める人がほぼいないって聞くしやりたい部活もないし…」

 蒼と慧留が順番に答えた。

「そっか…もし良かったら生徒会に誘おうかと思ったんだけど…」

 湊がそう答える。

「生徒会?お前生徒会なのか?」

 蒼がそう答えた。

「うん、そうだよ」

 湊はそう答えた。

「何で俺らを生徒会に誘うんだよ…他当たれよ…」

 蒼は呆れたようにそう言った。

「生徒会は人手不足なんだよ。全員で四人しかいないんだよ。この人数で生徒会を運営するのはちょっときつくてね」

 湊が落ち込み気味にそう言った。

「何でそんなに少ないの?人数制限無いよね?生徒会は」

 慧留がそう言った。

「何でお前は生徒会に人数制限が無いことを知ってんだよ」

 蒼が純粋に疑問に思ったので慧留に聞いてきた。

「興味があったからちょっとパンフレットを見たんだよ。軽くしか見てなかったから生徒会がそんなに人数がいないのは知らなかったけど…」

 慧留がそう答えると湊は話を続けた。

「実はね…この学校の生徒会はある程度霊的能力がある人じゃないと長続きしなくてね。俺たち生徒会が適性のある人をスカウトした人しか入れないようになってるんだよ。その手の活動をしないといけないことが多いからね。君たちはそれなりの霊的能力を持ってるみたいだから打ってつけだと思ったんだけど…駄目かな?」

 湊は蒼と慧留に聞いてきた。

「嫌だね、メンドクサイ。何で俺がそんな…」

 蒼はすぐに断った。しかし、慧留は悩んでる様子だった。

「ねぇ、話をもうちょっと聞いてみようよ。すぐに断るのも何かあれだし…」

「駄目なもんは駄目だ。なら、お前だけ入ればいいだろ?」

 蒼は慧留の意見を一蹴した。

「ねぇ湊君、生徒会に入って何かメリットみたいなのってある?」

 慧留が港に聞いてくる。

「そうだな…大学進学にかなり有利になるね。指定校推薦とかね、後は…この学校の生徒会、国の中枢に強く繋がってるらしいからその手の情報を入手することは可能だよ。まぁ、僕はあまりそういうのは興味無いから情報に関しては手を出してないけど」

 それを聞いた瞬間、蒼の表情が変わった。

 -国家の情報か…この国の事を知れるチャンスだ。これを逃す手はねぇ。

「分かった。話は聞いてやる」

 蒼はそう答えた。

「助かるよ~。じゃあ、詳しい話は放課後にね」

 そう言って湊は自分の席に戻った。


「じゃあ、生徒会室に案内するよ」

 湊が笑顔でそう言うと二人はそれについて行った。

 しばらくすると生徒会室と書かれた文字が見えた。

「ここだよ。失礼します」

 湊が扉を開ける。

「お~、湊か~。おっつ~。って誰この子たち?」

 一人の女子生徒が聞いてくる。

「生徒会に入りたいという希望者です」

 湊が答えた。

「へ~。何年?」

 女子生徒が聞く。

「二年です」

 湊は答えた。

「へ~、珍しいね!っと、自己紹介がまだだったわね。あたしは音峰遥(おとみねはるか)。一応この学校の生徒会副会長で三年生よ。宜しくね」

 音峰遥はそう名乗った。彼女はかなり小柄な少女だった。

慧留は大体蒼の肩ぐらいの身長であるが、この遥は更に小さく、慧留の首元ぐらいの身長しかない。顔もかなり童顔であり、瞳はドングリのように大きく桃色の瞳をしている。

髪はツインテールの桃色であり、その髪型のせいで余計に子どもっぽくに見える。さらに、首元にピンク色のヘッドホンを付けていた。しかし、不思議と貫禄のある少女でもあった。

「家の学校は二年から課外活動始める人少ないからね~、転校生でもね。まぁ、歓迎するわ!っと、名前聞いてなかったわね。お名前は?」

 遥はそう言って、二人に名前を聞いてきた。

「時神蒼」

「月影慧留です」

 二人は自己紹介をした。遥はかなり上機嫌になっていた。

「うんうんうん!いいねいいね!あたしは嬉しいよ。こんなかわいい子たちが来てくれるなんて!二人は霊的能力はどの程度あるの?」

 遥は質問をしてきた。その質問に答えたのは湊だった。

「月影さんはよく分からないですけど、時神君はかなり高度な霊呪法を使えます。分かってるだけでも二〇〇番台の霊呪法を使えます」

「二〇〇番台!?すごいね…他には?」

 遥は驚きつつ質問を続けた。

「俺は一応、攻撃系と移動系、防御系に拘束系の霊呪法は全部使える」

 蒼は答えた。

「え?どの番台でも?」

 遥は質問した。

「ああ、九〇〇番台まで全部使える。まぁ、今言った奴以外は使えないけどな」

 遥はかなり驚いた顔をした。

「それでもすごいわ、全体の六割以上の霊呪法を使えるってことだもの。私は一応この学校では二番目に霊呪法を使えるけど七〇〇番台までのしか使えないもの」

 遥がそう言うと蒼は驚いていた。

「七〇〇番まで全部使えるってことか?」

 蒼は驚きの顔をした。

「うん、そうよ。因みに会長は九九九全部の呪法を使えるよ」

 遥は淡々と答えた。蒼は驚愕の顔をした。

 -俺が使える霊呪法の数は大体六〇〇ぐらいだぞ!俺より使える術が多いのかよ!本当にこいつら普通の高校生かよ!

 蒼はそう胸中に呟いた。霊呪法を七〇〇番まで使える人間など人類全体の一割程度と言われている。全て使える人間など五人いるかいないかと言われているのだ。そんな人間が学校に二人もいるとなっては蒼が驚くのも無理はないことだった。

「まじかよ…こいつぁ驚いた。あんたすげぇんだな…」

 蒼は遥にそう呟いた。

「時神君、一応私はあなたより歳が上な訳だから敬語は使わないと駄目よ」

 遥が表情を変えてそう言ってきた。

「はぁ、何でそんなことしないといけないんだよ。めんどくせぇ…」

 蒼がそう言うと遥は仕方がないと言いたげな顔をした。

「なら、力ずくで分からせるしかないみたいね。表へ出な」

 蒼は割りと挑発に乗るタイプだ。

「上等だ!」

「「えええええええええええええええ!!」」

 あまりの急展開に慧留と湊は声を上げた。



 蒼たち四人は体育館に来ていた。蒼と遥が決闘することになったのだ。因みに体育館の鍵は生徒会が管理しているため普通に入れた。

「学校の鍵管理してるとかどんだけの権力持ってんだよここの生徒会は」

 蒼はそう呟いた。

「そう、生徒会はこの学校の代表、基本的なことくらいしっかり出来てもらえないと務まらないわ」

 遥がそう言いっ放った。

「そうかよ…」

 蒼がそう呟いた。

「じゃあ、始めるわよ。そっちから攻撃していいわよ」

 遥は右手を動かしながらそう言った。

「舐められたもんだな…じゃあ遠慮なく行くぜ!霊呪法第二四五番【氷魔蓮刃(ひょうまれんじん)】!」

 蒼は遥が挑発するとすぐさま霊呪法を放った。すると、遥の周囲の地面から無数の氷の刃が出現した。【氷魔蓮刃】は蒼の得意技である。

「へ~。こんなすごい【氷魔蓮刃】は初めて見たわ。けど、まだまだね、霊呪法第二五〇番【風霧かぜぎり】」

 遥が霊呪法を唱えると辺りは霧に包まれ、遥の身体が霧化した。

「なっ!霧化する霊呪法を使えんのかよ!?」

 蒼は驚きながらそう言った。蒼はこの手の霊呪法は使えないので驚いていたのだ。

「だが、霧化してるってことは分子に干渉する技は効果があるはずだ!霊呪法第三五九番【冬懺零覇とうざんれいは】!」

 蒼が霊呪法を唱えた瞬間吹雪が発生し、辺り一面が凍り付いた。【冬懺零覇】は辺りの分子運動を止め、凍らせる技だ。しかしー

「残念!一歩遅かったわね!【縛十光輪ばくじゅうこうりん】!」

 蒼の後ろから遥が現れ霊呪法を放った。どうやら、蒼が【冬懺零覇】を出す一瞬前に術を解いたようだ。

「なっ!?霊呪法第六四番【瞬天歩しゅんてんぽ!】」

 しかし、蒼は寸での所で【縛十光輪】を空中を飛んで躱した。

 -この女…霊呪法の発動スピードが異常に速い。詠唱破棄だけならともかく術名だけで霊呪法を放つだと!?

 霊呪法を放つには三つの呪文が必要である。詠唱、呪法番号、そして術名である。これら全てを唱えると高い威力の霊呪法が使える。

 しかし、詠唱破棄という、術の発動を短縮する技術も存在する。実際、ほとんどのものは詠唱破棄で霊呪法を使っている。何故なら、高速戦が多い実践戦闘において、詠唱を唱えるのはタイムロスとなり相手に隙を付かれやすいからだ。

 蒼も隙がある瞬間にしか詠唱はしない。しかし、呪法番号と術名は唱えないと霊力が定まらず、通常は霊呪法が使えない。にも関わらず、遥は術名だけで霊呪法を放っている。しかも、かなり高い威力で。

 霊呪法同士の戦いはいかに素早く、尚且つ高威力の呪法を使うかで勝負が決まる。特に素早く術を出すのは最も重要と言える。しかし、発動スピードは圧倒的に遥が圧倒している。蒼は遥の霊呪法を食い止めるのに精一杯だ。

「霊呪法の発動スピードが遅れてるわよ。【竜激鎗りゅうげきそう】」

 遥はすぐさま霊呪法を放った。これまた術名だけで放った。

「霊呪法第二一四番【虚神きょじん】!」

 蒼はすぐさま防御の霊呪法を唱えたが結界が展開するスピードが遥かの【竜激鎗】より僅かに遅かった。【竜激鎗】は蒼の身体を掠めた。蒼は【竜激鎗】の余波で吹っ飛ばされた。

「蒼が押されてる…音峰さんすごい…」

 慧留がそう呟いた。

「くっそ!こうなったら!霊呪法第五〇九番【白雷諫叡びゃくらいかんえい】!!!」

 蒼が空中で霊呪法を唱えると巨大な白い雷が出現し、遥に向かって放たれた。

「五〇〇番台の霊呪法!?何考えてんだよ時神君は!?」

 湊がことの重大さに気付いて叫んだ。遥もこの霊呪法はマズいと思ったのだろう。すぐさま防御の霊呪法を唱えた。

「霊呪法第五二〇番【三重虚神さんじゅうきょじん】!」

 遥が霊呪法を唱えた瞬間遥の周囲に巨大な盾が三重になって顕現された。この霊呪法は【虚神】の強化技だ。みごと、蒼の霊呪法を凌ぎ切った。

「もう、終わりにするわよ。霊呪法第四一〇番【しろがね八卦牢はっけろう】。霊呪法第二一番【連雀千れんじゃくせん】」

 遥が二連続で霊呪法を放った。【銀ノ八卦牢】は光の板で相手を拘束する霊呪法であり、これにより、蒼の身体を拘束、そして、【連雀千】は霊力の針を数千本飛ばす技である。【銀ノ八卦牢】により拘束された蒼はこの術を躱せるはずもなく、【連雀千】が全弾命中した。蒼は気絶し、空中から落ちた。

「おっと。危ない危ない。う~~ん。ちょっとやりすぎたかな~?」

 そう言って遥は地上に落ちかけた蒼の身体を受け止めた。霊呪法使い同士の戦いは遥の圧勝という形で幕を終えた。

「蒼!」

「時神君!」

 慧留と湊はすぐに蒼の元に向かった。

「ひどいケガ…今すぐ直します!」

 慧留がそう言って蒼の身体に両手を置いた。すると、傷が治っていっていた。いや、厳密には「元の形に巻き戻ってる」ように見えた。

「すごい…これだけの傷をほとんど治すなんて…」

 湊が驚いたように呟いた。

「いいえ、これしか取り柄が無いんで…」

 慧留がそう言うと遥が眉間に皺を寄せた。

「あなたのその術は回復術じゃない…その術は「時間回帰」よ。信じられない人間がそんな力を使えるなんて…あなた一体何者なの?」

 遥が慧留に問い詰めた。「時間回帰」はその名の通り「時間を巻き戻す」能力だ。人間は素手で使えるのは例外はあるものの基本的には霊呪法のみでありそれ以外の術は使えないはずなのだ。そして、霊呪法に「時間回帰の術は存在しない」。つまり、あれは人間の使う技では無い。

「そっ…それは…」

 慧留が戸惑っていたその時、蒼が目を覚ました。

「ここは?」

 他の三人はそのことに気が付いたようで話を途中で中断した。

「大丈夫、蒼?」

 慧留は心配そうに蒼に聞いてくる。

「君は副会長にボコボコにされて気絶してたんだ。その傷をほぼ全部月影さんが治してくれたんだよ。お礼を言った方がいいよ」

 湊は蒼にそう告げた。

「そうか…負けたのか、俺は。ありがとな、慧留」

 蒼は冷静にそう慧留に告げた。

「勝負は私の勝ちよ。この後どうしないといけないかは言うまでもないわね?」

 遥は蒼に向かって高圧的な態度を取りながらそう言った。

「………。すみませんでした」

 蒼はあっさりと負けを認め遥に誤った。すると、遥はいつもの調子に戻し、蒼に接した。

「意外と物分かりがいいわね、助かるわ。目上の人間に対してはちゃんと敬語使いなさいよ。分かった?」

「…。分かりました」

 蒼がそう遥に言った。

「それと、無暗やたらに強力な霊呪法を使わないこと!威力が凄まじくて周りにも危険な上に消耗も激しいからすぐにガス欠になるわよ」

 遥は蒼に警告をした。

「分かりました。気をつけます」

 蒼はあっさりとそう遥に言った。

「っと、さっきまでの話に戻そうか…慧留、あなたはいったい何者なの?」

 一段落したのも束の間、遥は話を戻した。

「どういうことだ?」

 蒼が問いかける。すると、答えたのは湊だった。

「月影さんは君の傷を治したんだけど、その力を副会長は「時間回帰」だと見てるみたいなんだ。まぁ、確かにあれだけの傷を一瞬で治しちゃってたから普通ではないと俺も思うけど…」

「なっ!?」

 蒼は焦っていた。副会長は慧留が人間でない可能性が高いと思っているのだ。

 しかも、それは正しい、何故なら慧留は天使であり、しかも熾天使第三位の【黒時皇帝ザフキエル】の眷属なのだ。

 【黒時皇帝】は時間に関する能力が使えると言われており、恐らく慧留が使った力もその類だろう。

 もし、慧留が天使だとバレたらマズい。蒼と慧留は国籍上では人間ということになっている。

 一般人や生徒に知られるだけでもマズいのに、この国の中枢と繋がっているこの学校の生徒会に知れたら、下手すれば最悪、この国で殺処分される可能性がある。

 蒼はこの場をどう切り抜けるか考える。しかし、何も思いつかない。まさか、転校三日目で早くも正体が露見しかかるとは思ってなかった蒼はかなり焦っているのだ。

「まぁ、どうでもいいか…」

 遥はあっさり慧留を言及するのをやめた。

「「は?」」

 青と慧留は素っ頓狂な声を上げた。

「この学校…結構その手の「訳アリ」が多いしね。あまり、聞かないであげるわ。でも、慧留、その力を人前で使うのはおススメしないわ。今の私みたいにあなたのことを聞いてくる輩が出てくる」

 遥は慧留に注意をした。

「は…はい。すみません」

 慧留はすぐさま誤った。

「分かればよーし!それでは改めまして、生徒会にようこそ!歓迎するわ!」

 遥は笑顔で二人を迎え入れた。


「そう言えば、遥さんと湊君以外の二人は来てないんですか?」

 慧留が遥に聞いてきた。今、四人は体育館での一件が終わり、生徒会室に戻っていた。

「二人は今日来てないわ。普段はいることが多いんだけど…」

 遥はバツが悪そうにそう言った。

「残りの二人も人間なんですか?」

 蒼は遥に質問した。

「会長は人間よ。でも、もう一人は人間じゃないわ。まぁ、またの機会に紹介するわ」

「へ~、ちゃんと人間以外も生徒会にいるんですね。てっきり全員人間かと…」

「まぁ、全体の九割が人間だかね~。そう思うのも無理はないか…」

 蒼の感想に遥は淡々と蒼に言葉を返した。

「てか、時神君。敬語普通に使えてるじゃん。最初からそうすりゃあ良かったのに…」

 湊は呆れるように蒼を見た。しかし、突っかかるのも面倒なので蒼は無視した。

「生徒会に入るにはどうすればいいんですか?」

 慧留が遥に聞いてきた。

「生徒会メンバーの一人以上の推薦と会長と私が立ち会ってる時に入部希望の紙をくれればそれでオッケー」

 遥は慧留にすぐに答えを返した。

「それだけですか?てっきり承認があるのかと…」

「高校なんだし、そんな堅苦しいものじゃないわよ」

 慧留が呟くと遥が言葉を返してきた。

「国家機密の情報も閲覧出来るのにそれだけで本当にそんなんでいいんですか?」

 蒼が聞いていた。

「ああ、それについてだけど…あまり見ることはおススメしないわ…色々面倒なことになるし…どうしても知りたいならあたしと会長に許可を取る事。それは守ってね…後、これは言うまでもないと思うけど情報漏洩だけは絶対厳禁よ」

 遥は機密情報について軽く説明した後、蒼に注意した。

「何で、そんなものを生徒が見れるようになってんだよ…」

 蒼は呆れたように疑問を投げかけた。

「それは私も詳しくは分からないわ…というか、そもそも、そんな情報調べようとしないしね、誰も」

 遥は淡々とそう答えた。

「まぁ、いずれにせよ、このままじゃあ生徒会に入ることは出来ませんね。明日伺います」

 蒼はそう言って生徒会室から出る準備をした。

「私もこれで」

 慧留もそう言って生徒会室から出る準備をした。

「またね。時神君、月影さん」

「じゃあね~。慧留、蒼」

 湊と遥が二人を見送った。


 湊たち生徒会と別れた後、蒼と慧留は帰宅していた。

「そう言えばさ、普段刀はどうしてるの?」

 突然慧留が聞いてきた。

「ああ、俺の場合は異空間にストックしてる」

 蒼はそう答えた。

「ああ、なるほどね!熾天使は皆基本的に簡単な空間術が使えるんだったね。私は眷属だから使えないけど…」

 慧留がそう言う。すると、慧留が鋭い顔つきになった。

「?どうした、慧留?」

 蒼が訝し気に聞いてくる。

「変な気配がする…これは…『神器』!」

 慧留がそう答えると蒼は驚いた顔をした。

「蒼!伏せて!」

 慧留が叫んで蒼を押し倒した。すると、さっきまで蒼がいた場所に傷跡が出来ていた。

「どこだ!?」

 蒼は周囲を見渡した。蒼は索敵能力がかなり低いため敵を見失いやすいのだ。

「!蒼!あっち!」

 慧留が真上に指を指した。すると、慧留が指した指の方向から人影が見える。

「見つけた!霊呪法第七八番【烈風水れっぷうすい】!」

 蒼は敵の影を見つけ、すぐに霊呪法を放った。【烈風水】はその名の通り水と風を発射する霊呪法だ。しかし、攻撃を切り裂かれた。それどころか蒼の肩まで切り裂かれていた。

「なっ!?嘘だろ!?」

 蒼は驚いていた。敵の神器の力が強いというのもある。しかし、それ以前に蒼は先ほどの戦いで霊力を消耗していたのだ。

「ほ~~う。この『草薙剣くさなぎのつるぎ』の一撃を受けても立っていられるのか?大した奴だ」

 男はそう言ってきた。

「てめぇは何者なにもんだ!」

「ああ、俺は片桐要かたぎりようだ」

 蒼が問い詰めると片桐は自分の名前だけ名乗った。

「何が目的だ?」

「これから死ぬ奴に言ってどうする?」

 片桐はそう言って答えた。片桐は中華服を身に付けており大柄な男だった。

「そうだな…俺がお前をとっ捕まえれば問題ねぇ!【氷水天皇ザドキエル】!」

 蒼が天使の名を呼ぶと蒼の手から刀が出てきた。【氷水天皇ザドキエル】は蒼の操る天使だ。

「ほう…そいつは紛れもなく天使だな。お前いったい何者だ?」

 片桐はそう蒼に尋ねるが蒼はそのまま刀を片桐に振るった。

「相手のこと聞く前にまずは自分からだろ!ボケが!!」

「それもそうだ」

 片桐は冷静にそう言った。その瞬間、蒼は空中にいる片桐に攻撃を仕掛けた。片桐はそれを捌いた。二人の攻防戦は続いた。しかし、確実に蒼が押していた。

「【聖雨ハイリッヒレーゲン】!」

 蒼がそう言った瞬間、空から光の雨が降り出した。【聖雨ハイリッヒレーゲン】が片桐に降り注いだ瞬間、片桐の身体に傷が生まれた。【聖雨】はその水に触れたものを切り裂く裁きの雨だ。

「ぐっ!かはっ!」

 片桐は膝をついた。勝負は決した。蒼の勝ちである。

「公園の事件もてめぇの仕業か?」

 蒼は片桐に問いかける。

「ああ、「我々」がやった」

 片桐はそう答えた。

「我々?どういうことだ?」

 蒼がそう言った瞬間、慧留の声が聞こえた。

「蒼!敵がもう一人来るよ!」

「何!」

 蒼は後ずさった。その瞬間、片桐の前に新手の敵が現れた。

「赤島さん。助かります」

 片桐はそう言った。

「おいおい、片桐、ボロボロじゃねーか。なっさけねーな」

 赤島はそう吐き捨てた。

「申し訳ありません」

 片桐は赤島に詫びた。

「まぁ、いい。お前がやったのか?片桐を」

 赤島は蒼に聞いてきた。

「だったら?」

 蒼は赤島を挑発するように答えた。

「まぁ、今は戦う気はねぇよ。騒ぎは大きくしたくねぇ。【草薙剣】のテスト使用も出来たし、今日はもう十分だ」

 赤島は片桐を連れて撤退しようとしていた。

「待て!逃がすと思ってんのかよ?」

 蒼が赤島に言う。

「おいおい、俺ぁ、お前を見逃してやるって言ってんだぜ?ありがたく思えよ」

 赤島が蒼にそう告げた。

「ふざけんな!」

 蒼はそう言って赤島に突撃した。しかしー

「しかたねぇな。神器、【天照アマテラス】」

 赤島が神器を解放した。神器【天照】は炎の神器で形はコンバットナイフの形をしていた。赤島がナイフを振った瞬間赤い炎が蒼を襲った。

「ぐあっ!」

 蒼は炎に吹き飛ばされてしまった。

「悪く思うなよ。ああ、そうだ。片桐を倒した餞別だ。俺たちの事を少し教えてやろう」

 赤島はそう言うと蒼は赤島のいる場所を見つめた。

「俺の名は赤島英明あかじまひであき。組織、「アザミの花」の構成員だ」

 赤島はそう答えた。

「何…だと…?」

 蒼は息絶え絶えの状態でそう呟いた。

「じゃあな、天使さんよ。もう、俺たちに首を突っ込むなよ。次は殺す」

 そう言って赤島は姿を消した。



「派手にやられたね…蒼」

 今、蒼と慧留は一夜の自宅にいた。

「赤島とか言う奴…ただ者じゃなかった…恐らくアイツは組織の幹部格だ」

 蒼は冷静にそう言った。

「彼は本当に【天照アマテラス】を使ったんだね」

 一夜は再び蒼に質問した。

「ああ、間違いねぇ。あれは確かに神器だった。しかも、俺が今まで見た神器とは段違いの性能だった。教えてくれ、あれは一体何なんだ?」

 蒼は一夜の質問に答えると一夜に質問をし返した。

「まず、【天照アマテラス】からだね。【天照アマテラス】はこの国の最高の神器、『聖天十二神器』の一つだよ。その中でも上位に食い込む強さがある、炎の神器さ。この『聖天十二神器』は本来国が管理していてね。ここ「十二支連合帝国」は昔から平和主義を謳っていてね。神器の全ては国が管理していて、法隆寺で保管していて誰も使えないようにしているんだよ。だから、この国で神器使いがいるのは本来在り得ないのだよ。しかし、二か月ほど前『聖天十二神器』の保管場所である、法隆寺が『アザミの花』に襲撃され、神器を強奪されてしまったんだよ」

 一夜がそう答えると次に慧留が質問してきた。

「『アザミの花』って何なんですか?」

「『アザミの花』は十年前から存在する、テロ集団だよ。国に対する報復を謳っている組織だが、目的は一切不明、正直かなり厄介な組織だ。この日本を中心にテロを起こしていて、幾度も国は彼らの壊滅を目論んだがことごとく失敗。そして、今に至るんだよ」

 一夜はそう答え、更に続けた。

「だが、『聖天十二神器』はそう簡単に扱える代物じゃない。他の神器とは段違いに意思の力が強いからね。単純な力だけでなく持ち主との相性も重要になってくる。それを意図も簡単に操るとは…「アザミの花」はかなり大きな組織のようだね」

「これからどうすれば…「アザミの花」のこともそうだけど、学校は学校でちょっとマズいことになってるし…」

 慧留が頭を抱える。蒼も沈んだ顔をしていた。

「何かあったのかい?」

 一夜が尋ねる。

「じ…実は…」

 蒼は今日、学校で起きたことを話した。


「馬鹿だろ…君たちは…」

 一夜はジト目でそして、蔑むように言ってきた。

「「返す言葉もございません」」

 二人は同時に一夜に対して言った。

「蒼…目上の人に敬語使うとかこの国では当たり前の事なんだ。君の故郷はどうか知らないがね。それが原因で副会長と喧嘩になってボコボコニされて、そのせいで慧留ちゃんの正体がバレかけるって…転校してまだ三日目なのに何やってるんだ…」

 一夜は心底呆れてる様子だった。

「は~、まぁ、これが蒼にとっていい薬になったと思えばいいかな。よし!僕も生徒会に加入するよ。人で不足…なんだろ?」

 一夜は眼鏡をクイッと動かしそう言った。

「まじで?いいのかよそれで…」

 蒼は不安になりながら聞いた。

「生徒会に入れば君たちを監視しやすいしね。それに、今の君たちの状態を放っておくわけにもいかない。生徒会の皆には僕が話をつけないとね」

「どういうことだ?」

 一夜が説明していると蒼が質問してきた。

「一宮高校自体、詳しいことは不明だが何らかの関係があるみたいなんだよ。副会長に慧留ちゃんの力に目をつけられたんじゃあバレるのも時間の問題だ。ならいっそ、生徒会の皆には全部話して、黙っていてもらうしかない」

 蒼の質問を即座に一夜は答えた。

「やっぱり、そうなるんですね…」

 慧留は微妙な顔でそう言った。

「生徒会の四人は言わば全員がこの国のトップクラスの実力を持ってるエリートたちだ。副会長の音峰はああ見えて鋭い眼力を持っているからね。すぐに慧留ちゃんのこともバレるだろう。だから、いっそ、全部話して交渉するしかない。そのためにも僕は必要と言うわけさ」

 一夜は誇らしげにそう言った。

「けど、生徒会メンバーの推薦が無いと入れないぞ生徒会」

 蒼はジト目で一夜に突っ込みを入れた。

「それについては問題無い。君たちが僕を推薦すればいい。君たちが生徒会に入った後にね。生徒会に入ったその瞬間から推薦権が与えられるからね」

 一夜は蒼にそう言った。

「なるほど…その手がありましたね。やっぱりすごいですね、一夜さんは」

 慧留が一夜に感心したようにそう言った。

「あまり褒めないでくれよ。照れるじゃあないか。…所で蒼、僕には敬語を使わないのかい?」

 一夜が慧留に褒められたことに照れながらそう言った。

「は?俺とお前は幼い頃の付き合いだろ?敬語使う必要とかあんの?」

 蒼は今までで最も冷たい口調でそう言った。

「あ…ですよねー」

 一夜が覚めたようにそう言った。


To Be continued

 三話目の投稿、終わりました~。いや~、どうなるんでしょうね?これ?

 ついに今回の敵集団が出てきましたね!その名も「アザミの花」。はい、今回は敵キャラが…と言うか幹部キャラが非常に多いです。恐らく、これ以上、敵組織の幹部が多いことはないと思います。タブンネ。

 てか、蒼君は毎回の如く、誰かと衝突してますよね…もっと、上手いこと世渡りできたらいいのにね…

 そして、何気に今回、慧留ちゃん頑張ってましたね。彼女はこれからもっともっと活躍させる予定です!

 さらに、今回、遥ちゃんも登場しましたね。彼女も活躍しますよ!勿論!後、湊君もね。ただ、ちょっと湊君は苦労人になるかも…

 今回は敵組織の紹介と生徒会のあれこれを書きました。蒼たちだけでなく、「アザミの花」にも注目してくれればなと思います!

 次はとうとう、本格的にこの物語の本筋が語られます。全部じゃないけどね。

 それでは、またお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ