【第三章】USW侵攻編Ⅶ-夜の迷宮(ダンジョン)-
「さてと…スープレイガの元に行ってやるか」
ドゥームプロモ・ドラコニキルはそんな事を呟いた。今日はスープレイガ・レオンジャックの謹慎が解ける日だった。
ドラコニキルは「USW」の光明庁の特殊部隊『アンタレス』のリーダーであり、黒髪のストレートヘアーと白と黒のオッドアイが特徴の青年である。
ドラコニキルはそのまま、地下牢に向かった。ドラコニキルはこの地下牢があまり好きでは無かった。この地下牢は重犯罪者も多数隔離されているからだ。空気が悪い。
-まったく、何故俺がこんな事を…世話の焼ける奴だ…
ドラコニキルはそう思っていた。スープレイガの突発的な行動はドラコニキルも頭を抱えるものであった。
スープレイガが監禁されている場所はこの地下牢の最深部だ。この地下牢は下に行けば行くほど、力の強い者たちが監禁されている。謹慎の身であるスープレイガも例外では無く、地下の最深部にいる。
「いるか、スープレイガ」
「ああ、待ってたぜ…」
スープレイガ・レオンジャックが返事をした。金髪のリーゼントと金色のギラギラした目が特徴の男だ。
「もう敬語を使う気にはならんか…」
「当たり前だ…あんたにはガッカリした…なぜそれほどの力がありながらあんな奴の言うことに従う?」
スープレイガはドラコニキルに問うた。スープレイガはドラコニキルの力を認めているからこそ、カーシスにドラコニキルが素直に従っているのが納得いかなかった。
「ふー、俺は平穏を求めるものだ。カーシス様に従っていればそれが一番の方法だ」
「何が平穏だ…只の逃げ腰じゃねーかよ」
「知らないのか?戦場は臆病な奴ほど生き残るというのだぞ?」
「知るかんなもん!俺は俺の獲物を殺す!!それだけだ!!!」
ドラコニキルとスープレイガはお互いの考えを言ったが言った所で分かり合えるはずもなかった。ドラコニキルとスープレイガは対極の人種だからだ。
ドラコニキルは無駄な争いは好まず、平穏に生きることを望んでいるが、スープレイガは闘争を望んでいる。自分の決めた獲物を殺さなければ気が済まない、本能に生きる男なのだ。
さらに、ドラコニキルはカーシスが気に入らなかった。
「カーシス様はお前の遥か上を行く御方だ。貴様が口を出すことではない」
「あんな奴がか?」
「ああ、そうだ。っと、俺はお前と口論をしに来た訳では無いことはお前も分かっているな?今日はお前の謹慎が解ける日だ」
「さっさと開けろ」
「言われなくとも開けるさ」
-クソガキめ…
ドラコニキルはそう思いながら鍵を開けた。
「ようやく出れたぜ…」
スープレイガは自身の金色の髪を触りながらそう言った。
時神蒼と天草屍、霧宮美浪、苗木一夜、蛇姫薊、御登狂は「黒門」を抜けた。そして、USWに足を踏み入れた。
「ここが…USW?」
蒼はそう呟いた。
「着いたかどうか分からんな…どうやらここは地下だ」
屍がそう言うと一夜も「そのようだね」と言った。
「え?どうして分かるんですか?」
美浪が聞くと屍は答えた。
「こんだけ広いのに窓が一つもないし、喚起する場所もない。どう考えても地下だ」
屍がそう言うと蒼たちは周囲を見回した。なるほど、確かに窓が一つもない。
蒼たちがいたのは真っ白い空間だった。周囲は白で埋め尽くされた壁のみがあった。
「どうやって地上に出ればいいかな?」
狂がそう言うと屍が地面に手を置いた。
「何をしてるんだい?」
一夜が言うが屍は答えなかった。
「駄目だな…俺の探知能力じゃあ、出口が見つけられない」
「なら僕の出番だね」
一夜はパソコンを弄りだした。
「そんなんで見つけられるの?」
狂はジト目でそう言ったが屍たちは黙って見ていた。
「この地下通路のマップは見つけた。後は僕たちの現在地を把握すれば…」
一夜がそう呟くと「嘘…」と狂は呟いた。
「恐れ入るよ…」
屍がそう呟いた。
「よし、現在位置も確保。うん、ここから五キロ先に出口がある。そこを目指そう。
「決まりだな。行くぞ!」
一夜がそう言うと皆は走り出した。
「それにしても、道が枝分かれしてるな…地下によくもまぁこんなややこしい構造の部屋造ったよな…」
「そうやね」
蒼がそう呟くと美浪が答えた。
「苗木、ここも道が分かれてるぞ」
「ああ、ここは右だ」
屍が言うと一夜が即答した。
「見えた、あれだ」
一夜がそう言うと大きな部屋に着いた。その先には階段があった。
「あの階段に登れば…」
「ああ、出口だ」
蒼がそう言うと一夜は答えた。しかしー
「やっぱただでは行かせてくれないか…」
「そうみたいね…」
屍と薊がそう答えた。
「おやおやおや、完全に気配を消していたつもりだったのですが…鋭いですねぇ」
そう言って現れたのは二人の人影だった。
片方は水色の髪をした三白眼の陰険そうな男、もう一人は薄緑の糸目の大男であった。
「はぁ~、しょうがねぇ、ここは俺が…」
蒼がそう言うと薊が蒼の額に肘を思いっきりぶつけた。
「ってえええええええええ!!何すんだ薊!!」
「ここは…私とくるでやるわ」
「何言ってんだ、そんな…」
蒼が止めに入ろうとするが屍が止める。
「大丈夫だ。アイツらは負けない。俺が保障するよ」
蒼は黙った見ていた。
「女二人だけで勝てるとでも?舐められたもんだ…」
「まぁ、いい、やろう。ローメル」
「ああ、そうするか、ジリウム」
水色の髪の男ローメルと薄緑の髪の大男ジリウムがそう言った。
「【毒華零弓】」
薊は自身の毒で弓を作った。紫色の弓であった。
「【鴉鴉有幻】」
狂は自身の周りに鳥の骨が浮かんでいた。
「何だ…?あれは?」
ローメルがそう呟いた。
薊はローメルに急接近し、毒の矢を放った。ローメルはそれを紙一重で躱した。
狂は鳥の骨をジリウムに放った。ジリウムはそれを素手で弾き飛ばした。
「…こんなものか」
ジリウムがそう呟き、霊力の塊を放った。狂はその一撃を躱せず、モロに喰らった。
「うっ…」
さらに、ローメルは薊の矢を躱した後、虚空を足で蹴り、薊に近づき、持っていた鞭で、薊を叩きつけた。
「痛…」
「やはり大したことなかったな!」
ローメルがそう呟くと、薊は引き続き矢を放った。ローメルは矢を躱し続けた。
「その程度の速力では当たらん」
ローメルは余裕の表情であった。
「………」
薊もまた表情を変えていなかった。薊は連続で矢を放っていたが、ローメルに矢が掠りもしない。
ローメルは鞭を伸ばし、薊に直撃させた。二、三発ほど喰らい、薊は距離を取る。
「俺の鞭は無限に伸びる!!これで終わりだ!」
ローメルは巨大化した鞭を振り下ろす。これをまともに喰らえば薊の身体は潰されてしまうだろう。
「………」
薊はローメルが鞭を振り下ろす前に矢を放った。
「ふ…貴様の矢など、躱せ…」
ローメルがそう言うとすでに矢はローメルの右肩を貫いていた。
「な!?」
ローメルの鞭の軌道が変わり、薊に直撃せず、全く違う方向に当てていた。
「【千本連雀】」
薊は千本を超える数の矢を放った。薊の弓である【毒華霊弓】が放てる連射弾数は千本だ。それをすべてローメルに放った。
「がはっ…何故だ。何故いきなり速力が…奴の矢のスピードは把握していたはず…」
ローメルがそう呟くとローメルは薊の狙いに気付いた。
-今まで矢の発射速度を緩めてたのか…!しかも俺が気付かないギリギリの範囲で…
ローメルは今までの薊の矢の速度を把握していた。しかし、その把握していた矢の速度は薊の全力ではなかった。
薊はわざと矢の速力を緩めて放ち続け、その速度に慣れたローメルの隙を突いたのだ。ローメルはそのことに気付いたがもう遅い。
薊は毒使いである。勿論、矢も毒でできている。ローメルは血を吐いた。
「がは!だが、この程度の毒では俺を殺しきれん!」
ローメルはそう言って、薊に急接近したが、薊は矢を地面に放ち、その矢が四散し、毒煙になり、薊は姿を消した。
「魔力の力で毒の力はある程度弱められる!この程度の毒など…」
ローメルはそう言った。確かに霊力や魔力で作られた毒は元が霊力や魔力のため、それらの力である程度相殺できる。
ローメルは言葉通り薊の毒を相殺した。薊の毒は相当強力なはずだが、それを完全に相殺するのはローメルが非常に強い悪魔であるということだ。
しかし、今は完全に薊のペースだ。ローメルは完全に後手に回っていた。
薊は毒を用いた戦い以上に気配を消して暗殺する能力が高い。ローメルは後ろを振り向こうとしたがもう遅い。薊は完全にローメルの背中を取っていた。
薊は毒で作ったナイフでローメルの背中を突き刺した。さらに、ローメルの首筋をその毒牙で噛みついた。
「がはっ!!」
ローメルは血を吐いて倒れた。いくら毒を魔力で相殺できるといってもここまで直接体内に毒を注ぎ込まれたら簡単には解毒は出来ないだろう。
「馬鹿な…」
ローメルはそう呟いていた。
「薊ちゃん流石だね~。よ~し!くるも!」
狂はそう言って、鳥の骨を飛ばした。
「この程度の攻撃が喰らう訳…」
ジリウムは霊力の塊を飛ばし、鳥の骨を粉砕しようとしたが、攻撃が「直撃したはずなのにそのまま通過してジリウムに直撃」した。
「何!?攻撃は当たった筈だ!何故だ!」
「考えてる時間ないよ」
狂はそう言って、今度は無数のナイフを顕現させた。そしてそれらが一気にジリウムに襲い掛かる。ジリウムは腰からメリケンサックを取り、それを拳につけた。そして、霊力の塊を放った。しかし、ナイフは一つも壊れずに霊力の塊に通過し、ジリウムに直撃した。
「何!?」
ジリウムは声を上げた。明らかにおかしい。ジリウムは狂の能力が全く分からなかった。全く見たことのない能力であった。
「くるの力はね、「幻術と現実の境界を操る能力」だよ」
狂はそう言った。ジリウムは訳が分からないといった顔をした。それもその筈だ。いきなり「幻術と現実の境界を操る能力」と言っても意味が分かる訳ない。
「くるは幻術を作り出した物質を幻覚に変えたり現実のものに変えたりすることができるんだよ」
屍はそう答えた。狂は自身の幻術を実体化させたり幻術に戻すことができる。狂は先ほどナイフを幻術で作り出したが、幻術で作り出したものなので狂の意思で幻術に戻し、相手の攻撃によって破壊されなくなる。
要するに自分の幻術で作ったものを自分の都合のいいように変えることができる能力である。
「さらに行くよ!【揺揺炎火之業】!!」
狂は炎の塊をジルウムにぶつけた。しかし、ジリウムは攻撃を躱した。そして、狂に接近し、重いっきる殴りつけた。
「ぐぅっ!」
狂はそのまま吹き飛ばされた。
「ならば話が早い!貴様の攻撃を躱して貴様自身を狙えばいい!」
「もう、遅いよ…」
狂は地面の一部分をマグマに変えていた。
「な…」
さらに、巨大な樹木が生えてき、ジリウムを捉えた。そして、樹木がジリウムをマグマに叩きつけた。
「ぐわああああああああああああああああ!!」
ジリウムは悲鳴を上げた。しかし、それだけでは終わらなかった。
「【闇夜鶯童童舞】!!!」
狂がそう言うと、マグマから黒紫の黒い手が無数に出現し、ジリウムを包み込んだ。そしてその瞬間、黒い霊力の柱が放出され、それによりジリウムは空中に打ち上げられた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ジリウムの身体は黒焦げになっていた。そして、そのまま地面に落下した。
「馬鹿な…」
「俺たちが…負けた………?」
ローレムとジリウムはありえないといった顔をした。そして、次の瞬間、地響きが起こった。
「何だ?」
屍がそう呟くと蒼が動揺した顔をしていた。
「おいおいおい…くるがあんな派手にやったからその衝撃のせいで…」
「いや、違うな」
蒼がそう言うとローレムがすぐに否定した。
「我々がやられるとこの地下空間は崩落するようになっている。お前たちは道連れだ」
ジリウムがそう言うと蒼たちは急いで出口に走っていった。
「「USW」の人形か…哀れな奴だ」
屍はそう吐き捨てた。
「「USW」の人形?ふ…それは違うな…」
ローレムがそう呟いた。尤も蒼たちは既に出口に向かっていた。ローレムの声は聞こえていなかった。
「そうさ…あの方は…カーシス様は我々にとって太陽だ。そして、ドラコニキル様は月…この二人が在る限り、我々は…」
ジリウムがそう呟いた。もう、蒼たちは見えなくなっていた。恐らく、脱出したのだろう。
「ふ、貴様らを道連れにできなかったのは残念だったが…まぁ、いい。死期が伸びただけだ。貴様らは…」
ローレムが呟く。そして、ローレムとジリウムが眼を閉じると完全に地下空間は崩落した。
ローレムとジリウムは崩落により完全に身体が潰され、息絶えた。
そこに階段があった。しかし、その階段は崩れ落ちた。そして、その崩れ落ちた場所から六人の者が出てきた。
「「「「「「ぶっふぁああーーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」
六人はそんな珍妙な声を上げた。脱出できたものの、全員口に砂が入り、それを吐き出していたのだ。
「ごほっ、ごほっ…何でこんな砂が…」
美浪はそう呟く。
「まったく、ひどい目にあった」
蒼がそう呟き、同時に辺りを見回した。夜だった。
「ここが…「USW」?」
薊がそう呟いた。
「どうやらそのようだな」
「あそこに城のような物が見えるよ」
屍がそう言うと一夜がそう答えた。
「確かに城だな…てか、デカすぎだろ、あれ」
蒼がそう呟いた。
「「USW」は「ネオワシントン」に『アンタレス』と本部がある。どうやらここが「ネオワシントン」のようだね。地図で現在位置を確認してるから間違いないよ」
一夜がそう言った。しかし、国の中枢がある場所だというのにずいぶん殺風景な場所だなと蒼は思った。普通は国の中枢となれば人がいっぱいいたり、街の風景も色鮮やかであることが多い。
しかし、ここ、「ネオワシントン」は全くそんなことはなかった。空は闇夜に包まれ、三日月は反転している。さらに、辺り一面は砂漠で砂の色も真っ白かった。あるのは蒼たちの目の前にある巨大な城のみだった。
「一応、申し訳程度に木とかサボテンがあるが…枯れているね…」
一夜がそう言うと薊はそれを否定した。
「いいえ、これは…」
そう言って薊は木に触り、枝をポキッっと折った。
「これ…鉱物で出来てるみたい…恐らくあのサボテンも」
薊がそう言うと屍はサボテンを触った。
「確かにこの質感…鉱物だな…」
屍はそう言ってサボテンをポキッっと折った。とてもサボテンの折れる音とは思えなかった。
「どうやら、ここの物質は基本的に鉱物で構成されてるようだね」
一夜がパソコンをいじりながらそう言った。一夜の新しいパソコン【アラメイ】は瞬時に地球の情報を検索できる。
それを駆使して一夜は調べていたのだ。しかし、【アラメイ】は情報量が半端なく、その情報の洪水を処理できる者で無ければ扱うことは難しい。
少なくとも今、【アラメイ】を扱うことができるのは一夜だけである。一夜は電脳世界に潜り込む能力と電子情報を見通し、処理する【電子人の眼】を使うことができる。これにより、【アラメイ】を扱えるだけでなく性能をフルに発揮できる。
「悪魔は基本的に鉱物を魔力源にする。「USW」は鉱物が盛んに取れる場所のようだね。さらに、この国は一日の四分の三が夜のようだ。悪魔は夜の方が力が発揮しやすい種族も多い。つまりここは、悪魔が住むには最適な土地というわけだね。まぁ、『アンタレス』クラスの悪魔は朝か夜かで力に大きな影響を及ぼす者はいないだろうがね」
一夜はそう説明した。
「聞いてるかい?蒼?」
蒼は城を見つめていた。
「あそこに慧留がいるって考えてもいいんだよな」
蒼がそう言うと一夜が答えた。
「だろうね…他に隠せそうな場所もない」
「ならさっさとあのバカ連れ出しに行くぞ!」
屍がそう言い放ち、薊も「うん」と同意した。
「待っててな慧留ちゃん!絶対に助けるからね!」
「うん、慧留ちゃんを助けに行こう!」
美浪と狂もそう言った。
蒼たちは巨大な城に向かって走り出した。…ちなみに屍は周囲にあるサボテンや木の欠片を採取していた。
蒼たちはずっと走りっぱなしだった。十時間くらいは走っていた。
走り続けて疲れたので蒼たちは休憩をしていた。
「おい…何で着かねぇんだ…あそこにあるのに…幻術とかじゃねーだろうな…」
寝転がっている蒼がそう言うと一夜がすぐにそれを否定した。
「いや、それは無い。ちゃんと反応はある。あれは本物だよ。距離感の問題だね。気になって僕も調べてみたんだけど…あの城のデカさは「十二支連合帝国」の四分の一程の大きさらしい。姿は見えるけどあまりに巨大すぎて距離が近いと僕たちが錯覚を起こしてるだけだよ」
「嘘やろ…こんだけデカい城作って何考えてるんやろ…あいつらは…」
美浪がそう言うと薊は「威嚇」とだけ答えた。
「どういう事?」
美浪が薊に質問すると狂が答えた。
「城はね、基本的に自分を誇示するためのものだから大きい方が相手を怯ませやすいんだよ」
狂がそう答えた。狂が解説したことに美浪はとても驚いていた。
「ん?美浪ちゃんくるの事馬鹿にしてる?」
狂がジト目で美浪を見ていた。美浪は目を逸らした。美浪は狂がめちゃくちゃ学力が低いことを知ってるのでその狂に教えられたのが意外だったのだ。
「あ!目逸らした!人は嘘つくと目を逸らすんだよ!」
「何でそういう事は知ってるん!?」
美浪はたまらず叫びをあげた。
「まぁ、どんな人間にも意外なところはあるものさ」
一夜がそう呟いた。
「釈然としないんですケド…」
狂は拗ねたようにそう言った。
「まぁ、いずれにしろ、城にたどり着くにはもうしばらく時間がかかるね…」
一夜がそう言うと蒼は立ち上がった。
「よし!じゃあ、行く…」
蒼が体を起こすと蒼は遠くを見た。よく見ると誰か倒れている。
「…あそこにだれか倒れてるぞ…」
蒼がそう言うと皆も頷き、その場所へ行った。
すると確かにだれか倒れていた。小さな少女だった。髪の色は水色だった。
「お~い、大丈夫か~?」
蒼が少女の肩を揺らしながら呼ぶ。
「おなかすいた~」
少女はそう呟いた。よく見ると背中に小さな黒い翼があった。
「お前…悪魔か?」
蒼がそう呟いた。このまま放っておくという手もあったが蒼の性格上放っておけなかった。
「おい、一夜、確か悪魔って鉱物をエネルギー源にしてたんだよな…」
「ああ、そうだが…」
「屍!お前、鉱物結構採取してたよな。ちょっとこいつに分けてやってくれねぇか?」
蒼がそう言うと屍が「仕方ないな…」と言って蒼に鉱物を一つ渡した。因みに屍はここの鉱物を百個以上採取していた。
-こいつ…何でこんなに鉱物を採取してんだ?
屍は気になっていたが、それよりも、倒れてる少女を優先すべきだと思った。よくよく周りを見渡せば、鉱物で出来たサボテンも木も無かった。
「おい、これ喰え」
蒼が少女に鉱物を差し出す。するとそれを見た瞬間、少女はそれにがっつき、食べ始めた。
「え…石を食べるの?」
狂がギョッとした顔で少女を見た。
「大丈夫か?」
蒼が聞くと症状は元気よく答えた。
「うん!大丈夫だぞ!!ありがと!お兄ちゃん!!」
少女はとても元気よく答えた。よく見ると紫の大きい瞳をしており、かなり幼い顔立ちだった。
「お前…名前は?どうしてここに?」
蒼が質問すると少女は元気よく答えた。
「わたしはラナエル・ミュウだぞ!いや~、食べ物が無くて困っていた所を助けてくれてありがと!お兄ちゃん!」
「そのお兄ちゃんって呼び方やめてくれないか?時神蒼って名前がある」
蒼は若干引き気味でそう言うとラナエルは首を縦に振った。
「うん!分かった!ありがとな!蒼!」
ずいぶん元気のいい子だなと蒼は思った。
「で?何でこんなところで腹空かせて倒れてたんだ?」
屍が聞くとラナエルは答えた。
「わたしは下級悪魔だからな~」
「なるほどな…」
蒼が納得したような顔をした。
「どういうこと?」
美浪が聞くと一夜が説明を始めた。
「この「USW」は階級制の国なんだ。この国は良くも悪くも魔族と人間の身分は対等なんだよ」
「対等?それっていいことじゃん」
狂はそう答えた。狂たちはかつて人間たちに迫害されていた身だ。人間と魔族の関係が対等なのはいいことのはずだと狂は思ったのだろう。
「対等ってことは力や実績のみで自分の地位を築き上げなきゃならないのさ。この国は力のあるものや国にとって有益な者は魔族や人間関係なしに評価されるが逆に言えば人間だろうが魔族だろうが力が無ければ虐げられるだけだ」
続けて蒼はそう答えた。
「うん、そうなんだよね~。それでもわたしはまだマシな方なんだよ…ついこの前は一人の人間が魔族五人がかりでリンチされてるところをわたし見ちゃったし…」
「魔族が人間を虐げる…私たちでは想像もつかないわね…」
薊がそう呟いた。屍や薊、狂からすれば立場が完全に逆転しているからだ。
「わたしは本当はここの者じゃなくて別の田舎町から来たんだ!」
「何で来たんだ?」
蒼が聞くとラナエルが話し出した。
「わたしはあちこちに放浪をしてるんだぞ。…わたしの家族は皆、死んじゃってるからな~。身体が弱かった上に身分も低かったから相手にされなかったんだぞ…わたしは上の奴らにコキ使われるのが嫌だったから逃げ出したんだぞ。そしてあれこれ五年以上旅を続けていたんだけどな~。食料は採取で基本的に手に入れてたんだけどな~この「ネオワシントン」は全然食べ物が無かったのだ」
「…そうか」
蒼はそう呟いた。家族が亡くなってもなお気丈に振舞っているラナエルを見て何か感じるものが蒼にはあったのだろう。
「何でこんなところに来たんだい?「ネオワシントン」は国の中枢、君の話が本当ならここに来るべきじゃないだろう?」
一夜の疑問は尤もだ。彼女は国にコキ使われるのに嫌気が指してあちこちを放浪していたはずだ。
「いや~、ははは…私は基本的に行き当たりばったりな上に方向音痴でな~。道に迷ってしまったんだぞ…「ネオワシントン」がまさかここまで何もないとは思ってなかったんだぞ…話にしか聞いたことなかったからな~、ここの事は…」
ラナエルはあっけらかんにそう言った。
「なるほど…ね…」
一夜はそう呟いた。一夜は基本的に用心深い性格の為、ラナエルの事は全て信用していなかった。
「助けてくれてありがとな!じゃあ、私はここで…」
ラナエルはそう言って去って行こうとしていた。しかしー
「…!おい!そこ危ないぞ!」
屍がそう言うと地面から『機械魔兵』が出てきた。
「『機械魔兵』か!」
ラナエルは『機械魔兵』に拘束されていた。蒼はすぐに向かっていった。
「蒼!」
一夜は叫んだが蒼はそのまま突っ込んでいった。
「【氷水天皇】!」
蒼は「天使」を解放した。蒼の操る「天使」、【氷水天皇】。その刀は水色の刃をしていた。
その氷の刀で『機械魔兵』の胴体を真っ二つにし、その衝撃でラナエルは拘束が解かれ、宙を舞う。蒼はすかさず、ラナエルをキャッチした。
「凍り付け!」
蒼はそのまま【氷水天皇】の力で『機械魔兵』を凍り付かせた。
凍り付いた『機械魔兵』はそのまま四散した。
「ありがとう…」
ラナエルは蒼を見つめながらそう言った。
「気にすんな」
蒼がそう言うと一夜たちが蒼の元の来た。
「全く君は…」
一夜がそう言うとさらに続けた。
「あの城から、東に進めば「ネオワシントン」から出られる。そこまでは僕たちも君と同行しよう」
一夜がそう言うと蒼とラナエルは目を丸くした。
「いいのか?」
「このままだと君は危ないだろう?また、あの『機械魔兵』が襲い掛かってくるかも分からないしね。それに蒼の性格上、君を野放しには出来ないだろうしね」
一夜がそう言うと屍が「確かにな」と笑いながら言った。
「…うるせぇよ」
蒼が小声で文句を言うと一夜が「事実だろう?」と言ってきた。
そして、蒼たちはそのまま、城に向かって再び走り出した。
カーシス・ベルセルクは夜空を見つめていた。蒼がかった髪と真っ黒な瞳、そして裁判服が特徴の男だ。
「闇はいい。すべてを優しく包んでくれる…」
カーシスが今いるのは執務室だ。
「我が城、『闇魔殿』に攻め込んでくるか…ふふふ…」
カーシスはそう呟いた。カーシスは既に蒼たちがここに近づいていることを知っていた。否、カーシスは最初から予測していたのだ。彼らが来ることを…
「いいだろう。連れ戻すといい。囚われの「姫」を…私はいつでも待っているよ…トキガミアオ…」
カーシスは不気味な笑みを浮かべた。
「私は全てを見通しているのだ…これから先の戦いを…ツネモリゲンジン…君がどんな策を練ろうが私には通用しない…覚悟しておくといい…」
カーシスは再び夜空を見つめていた。
To Be continued




