【第三章】USW侵攻編Ⅱ-悪魔の侵攻-
スープレイガたちが単独で「十二支連合帝国」に侵攻してきた。蒼たちはそれに気づき、迎え撃つことに…
スープレイガは仲間を五人程引きつれていた。彼は単独行動を行ったのだ。今は人はあまり通っていない、深夜の時間帯だった。
彼らはとあるビルの屋上にいた。
「よ~し。着いたな。おいお前ら!準備は出来てるか?『感知能力』で霊力及び魔力を感知しろ!」
スープレイガがそう言うと皆『感知能力』を使った。『感知能力』は霊呪法の【全体捜索】と同系統の能力であり、霊力や魔力の強い者を感知できる。
「…五……十………十五人位か…まぁ、この周辺にいる奴らだけだからそれ以外にももっといるんだろうが…周囲ではざっとこんなもんか…よ~し、お前ら!少しでも霊力のある奴らは…基本、皆殺しだ!」
スープレイガがそう言うと皆は散開した。
蒼は部屋で考え事をしていた。どうすればいいかを考えていた。しかし、その時ー
「!…何だ?この寒気は?」
蒼は外に出る。その後、街を徘徊した。すると、上空に人影がいた。空に浮いていたのだ。
「あいつは…」
蒼は顔を歪ませた。何故なら気配があの悪魔たちと同じだったからだ。
そして、その人影は一気に蒼の元に降りてきた。
「よぉ、あんた、結構強そうじゃん?」
男はそう言った。見た目は痩せ細っており、眼に眼帯を着けていた。
「てめぇは何者だ?」
「俺はネルト・ユートルだ。宜しくな」
ネルトはそう名乗る。蒼は「天使」を呼び出した。
「行くぜ…【氷水天皇】!」
蒼はネルトと剣を交えた。ネルトは短剣を使っていた。
「【聖雨】!」
空から光の雨が降ってきた。そして、ネルトは身体全身を切り刻まれた。
「ぐっ…やるね!じゃあ、俺も本気出すよ!見せてあげるよ、俺の【悪魔解放】を!」
ネルトは短剣を構えた。
「掴め!【栄光魔手】!」
ネルトの短剣は消え、巨大な角が生えてきた。そして、身体も倍ほど巨大化した。身体の細さはそのまま保っているがかなり歪な姿見なっていた。何より、両手がかなり肥大化していた。そして、背中には小さな翼が生えていた。
「それが…【悪魔解放】…」
「ああ、そうだ。俺たち悪魔の使う【悪魔解放】は俺たちの本来の力を武器の形にした物。自分の魂を媒介にして武器として作り出す「天使」とは全くの別物だ」
ネルトはそう説明した。つまり、この【悪魔解放】が悪魔たちの本来の力なのである。
「行くぞ!」
ネルトは巨大な手を使い、蒼に襲い掛かる。
「【氷神業火】!」
蒼は刀身が赤くなった【氷水天皇】をネルトの手にぶつけた。しかし、皮膚が硬すぎて傷一つついていなかった。
「は!」
ネルトはもう片方の腕で蒼に襲い掛かる。蒼は手に押しつぶされてしまう。
「がぁ!」
蒼は立ち上がり、そのまま攻撃を続けた。しかし、全く、攻撃が通らない。
「その程度の攻撃で俺の身体を傷つけられるか!」
両手で一気に蒼に殴りつけた。
「ぐあああああああああああああ!!」
蒼はかなりのダメージを受けた。全身からは血が流れていた。氷で止血するが、ネルトの猛攻は続いた。
「逃がさないよ!」
動きは鈍いものの、一撃が大きい上に範囲がでかい。とても躱しきれなかった。
「霊呪法第六四番【瞬天歩】!」
【瞬天歩】で回避を図るもあえなく捕まる。
「躱させない!」
「ぐわあああああああああああ!!」
蒼は吹き飛ばされてしまった。
「くそ…【第二解放】を…いや…あれを使ったら俺は…【黒時皇帝】を使う?いや、あれも寿命を……やるしかない!【第二解放】!」
蒼は【第二解放】を使用した。髪は白髪になり、眼は両目が青色に、そして、純白の衣を纏っており、右肩から氷の翼が生えていた。
「【アルカディアの氷菓】」
蒼はそのままネルトの右腕を切り裂いた。そして、そのまま切られた腕は凍り付き、砕け散った。ネルトの切られた腕は血が飛び散ることは無く、あまりの冷気に傷口が凍り付いていた。
「な!?」
「時間がねぇんだ、終わらせる。【氷神滅却】!」
蒼の翼から吹雪が発生し、周囲には氷の華が出現し、ネルトに襲い掛かる。さらに、蒼の【氷水天皇】本体からも冷気が発生していた。
「ぬあああああああああ!!」
ネルトは凍り付き、そのまま、ネルトの身体が砕け散った。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
蒼はすぐに【第二解放】を解いた。髪は白黒交じりの髪に戻り、眼もオッドアイに戻り、服も元に戻っていた。
「何だよ…ネルト相手に随分手こずってたなぁ」
蒼はこの声を聞き、本能的にその方向に向いてしまった。
「久しぶりだな…天使!」
蒼の眼の前にいたのは因縁の相手、スープレイガだった。
美浪は蒼が家に出ているのを見かけたため、後を追ったが見失ってしまった。
「蒼君…何処に行ってもうたんや」
美浪がそう呟いていると、敵の気配がした。
そして、美浪は反射的に攻撃を躱した。
「ほう、やるわね」
「何やお前…」
「あたしはキアネル・フェル」
キアネルは神をかき分けながらそう言った。
「なんや…こいつ…」
「レオン様から皆殺しにしろって命令が来ててね…早速で悪いけど死んでもらうわ。魅せろ!【魅惑魔女】」
キアネルは【悪魔解放】を使用。すると、身体が鎧に覆われた姿をしていた。
「な…」
美浪が絶句していると、キアネルは美浪に襲い掛かった。動きがかなり速かった。
-なっ!速…
美浪は一瞬で吹き飛ばされてしまった。
キアネルは目にも止まらぬスピードで美浪をかく乱しつつ攻撃を続けた。美浪は気配で追うものの目が彼女の速度について行けず、攻撃が続いた。
このままでは埒が明かない。そう思った美浪は神獣化を使用した。
神獣化とは獣人族の中でもごくわずかな物しか使えない、獣人族の最強の術だ。基礎能力を格段に上昇させることが出来るのだ。
「へぇ…神獣化か…そんなの隠し持ってたのね…」
美浪はさらに【身体強化】を使用。キアネルに攻撃を仕掛けらる。
しかし、【悪魔解放】を使った、キアネルのスピードと戦闘能力は凄まじく、神獣化した美浪でさえ、ようやく互角に戦えるという有様であった。
いや、僅かだが、キアネルが勝っているように見えた。
お互いの拳が飛び交う。
「はぁ!」
美浪は重い一撃をキアネルに叩きこんだ。キアネルは苦悶の声を上げた。
「ぐっ!」
美浪は神獣化したことにより、五感が通常の何倍も研ぎ澄まされており、さらに、身体能力もケタ違いに上昇うしていたのだ。
しかし、キアネルは再び速度を戻し、美浪を攻撃し続けた。一撃一撃は大したことないが、動きが速く、連続で攻撃を受けている為、ダメージが徐々に蓄積していっていたのだ。
しかし、美浪はその巨体を生かし戦っていた。
美浪の今の大きさは三メートル程だ。その巨体から来る攻撃はかなりの攻撃範囲を誇っていた。
キアネルは身体が小柄且つ素早い動きをするが、五感が研ぎ澄まされている今の美浪はそこまで捉えることは難しくなかった。
しかしー
「甘く見るなああああ!」
キアネルは速度を加速させ、その反動により、一撃の威力を高めてきた。速度上昇による、目にも止まらぬ動きと、それにより、倍加された攻撃力は容赦なく美浪に襲い掛かった。
美浪は位置こそ感知できるが、あまりに速すぎて、身体が、キアネルの速度に追いつかない。
「があああああああああああ!」
美浪は全身から血が噴き出した。かなりのダメージを受けており、このままではマズい。
-何か手を打たないと、しかも、三分立っちゃってるし…このまま戦うとマズい。
神獣化は強大な力であるものの長時間の使用は身体に負担がかかる。
それでも美浪は三分だけなら負担が無く使えるがそれ以上戦うのは危険なのだ。
美浪は一瞬焦るが、このままでは駄目だと自分に言い聞かせた。
「どうしたの?勝負を諦めたの?」
キアネルが挑発をしてくるが美浪はそれを無視した。
-動きを感知するのではなく先の動きを読むんや。
美浪はキアネルの動きのパターンを予測していた。
高速で攻撃を仕掛けてくる相手は大概、動きのパターンが決まっている。美浪はそれを予測していた。
美浪は湊程頭脳明晰ではないが、戦いにおける彼女の頭の回転の速さは折り紙付きである。
美浪はキアネルの動きのパターンを読み切った。
「そこ!」
美浪はキアネルを思いっきり殴り飛ばした。
「何!?」
キアネルは廃工場にぶつかった。更に、美浪は追い打ちをかけた。
爪でキアネルを切り裂く。
「がは!」
「これで…終わりや!」
美浪が空中を舞い、口からブレスを放った。
「【蒼息吹】」
蒼いブレスがキアネルを焼き尽くす。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
キアネルは跡形もなく姿を消し飛ばされた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
美浪は元の姿に戻っていた。そして、激しく息を吐いていた。さらに、口から血を吐いた。
「がは…はぁ、はぁ…」
美浪は身体を埋めていた。美浪は長時間の神獣化をしていた為に身体が限界を迎えていた。
「まだ…気配が…四人位か…」
美浪は直感で敵の数と大体の位置を察知した。幸い、美浪の近くに敵はいないようだった。
「助けに…いかな…」
美浪は立ち上がろうとするが、起き上がることが出来なかった。
息が苦しい、自分の身体が自分のじゃないような感覚に美浪は襲われていた。
美浪の視界が暗くなっていく。
-私は…まだ…
美浪はゆっくりと意識を失った。
薊は一人で近くのコンビニで買い物をしていた。
「コンビニって便利ね」
薊はそう呟いていた。実際、薊はコンビニに行ったことがあまりない。
それだけでなく、薊はかなり、こういう、近代的なものに疎かった。
「二十四時間営業など正気の沙汰ではないわね…一体どうやって運営してるのかしら?」
薊は疑問をぽつりと漏らした。薊は不思議そうにコンビニを見つめていた。
そして、今の状況を再確認する。
「不思議な物ね…私がこうやって普通の日常を過ごすなんて…屍や狂も一緒に入れるなんて」
薊はそう呟いた。そう、薊はつい先日までテロ組織だったのだ。
そんな薊が普通に学校に行き、友達も出来、普通の暮らしが出来ていることを信じられずにいた。
いや、今でもこれは夢なんじゃないかと思う時がある。それほど、薊にとって今の時間が信じられないのだ。
そんな事を考えながら、薊は足を動かしていた。すると、妙な気配を感じた。
「そこにいるのは分かってるわ。出て来なさいよ」
薊がそう言うと現れたのは青色のジャンバーを着た男だった。見た目はヤンキー風の顔立ち手であり、首にネックレスを着けていた。緑髪と目が特徴の青年であった。
「気配は消したつもりだったんだがな…」
緑髪の男-フルールはそう呟いた。
「あなた…只者じゃないわね…何が目的?」
薊が問うとフルールはニヤリと嗤った。
「力のある人間は皆殺しだと命令が来ていてね…悪いが死んでもらうよ」
フルールはネックレスをかざした。
「降らせろ、【雹魔子】」
フルールは【悪魔解放】を使用、するとフルールの周囲に煙が包まれた。
やがて姿を現した。すると、フルールの手に標準サイズの鎌が両手に握られており、身体に白い聖職者が纏う衣を纏っていた。更にそれだけでは無い、牙が生えており、背中には悪魔特有の黒井翼が顕現されていた。
「それが…悪魔の力の解放…【悪魔解放】…」
薊は静かにそう呟いた。薊は悪魔の力の事はある程度知っていたが、この「十二支連合帝国」は悪魔と天使は存在しない。
つまり、悪魔の力を目にするのは声が初めてなのである。
「わるいが…すぐに終わらせる」
フルールが急接近した。そして、フルールが薊に鎌で攻撃を仕掛けた。薊は攻撃を躱すが躱した場所か雹が発生し、薊を貫いた。
「な…ぐぅ…」
薊は雹の攻撃を躱そうと試みるが、全てを躱しきれず、三か所ほど切られた。
「……氷の能力…蒼と同じ…」
薊はそう呟くがすぐに考えを改めた。確かに彼の能力は蒼と同系統の能力であるが、蒼の方が性能は明らかに上であった。
しかし、薊は考える。薊が得意なのは「暗殺」だ。直接的な戦闘は不得意だ。神器があれば直接的な戦闘が可能であったが、今、薊は神器を持っていない。
薊は毒を操る蛇の妖怪であるが、直接的な戦闘能力はお世辞にも高いとは言えない。
どうにかして、相手の裏を掻かないと薊には万に一つも勝ち目がなかった。
「行くぞ」
フルールは一気に薊に攻撃を仕掛けた。フルールが鎌を振れば振る程、雹が発生する。
雹の一撃一撃の威力は大したことないが、弾数が多い為、かなりの量の雹が薊を貫いた。
薊はそれをどうにかして裁くものの、攻撃はダメージは着々と蓄積していた。
薊が使っている武器は自身の毒を模って作ったナイフである。
ナイフは一撃の威力は弱いものの軽量で且つ小回りが利く為、応用性に富んだ武器である。薊は暗殺が得意なだけあり、ナイフの腕も一流である。
しかし、薊は今、有利とはとても言えない状況であった。相手は攻撃すればするほど雹で攻撃していく。だが、薊はナイフ一本でそれを退けている状態である。
薊は距離を取ってた愛誠を立て直そうとするも、フルールは距離を遠ざけようとは決してしない。遠ざけても遠ざけても、薊に接近する。
フルールは短期決戦を望んでいることが伺える。
しかし、それは薊も同じことである。だが、距離を遠ざけることが出来ず、薊は着実にダメージを受けていた。
服は身体中避けており、柔肌が露わになっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……く…」
行きつく暇もなく、フルールは攻撃を続ける。このままではジリ貧だ。
しかし、薊は毒を操る能力以外は特に使えない。精々、武器の扱いや知識に詳しいくらいだ。
-いや、待てよ…そうよ!鎌の弱点を利用すれば!
薊は何かを思いついたようだ。薊は攻撃を捌き続けた。しかし、やがて、尻餅をついた。
「これで終わりだ」
フルールは両手の鎌を思いっきり薊に振り上げた。
「…待ってたわ!」
薊はフルールの鎌の大振り、ナイフで鎌と鎌の間を取り、受け止めた。
さらにそのまま前転し、距離を取り、気配を消した。
鎌はその形状の都合上、一撃の殺傷能力が非常に低い。その為、決定的な一撃を与えるためにフルールは両手の鎌を同時に振り上げた。薊は両手の鎌をナイフで同時に防ぎ、その衝撃を利用して、距離を取り、気配を消した。
「…中々やる…だが…」
薊がフルールの後ろをついて攻撃しようとしたが、攻撃を読まれ、身体を切り裂かれてしまった。
「が…」
薊は倒れる。しかし、フルールは容赦なく、薊に切りかかろうとした。
その瞬間ナイフフルールの後ろからナイフが飛び出してきた。恐らく先程仕掛けたものだろう。
「甘い…俺もお前と同じ暗殺が得意なんだ。これくらい…」
フルールは三本ほど襲い掛かったナイフを全て弾き飛ばした。安堵したフルールだが、その油断が命取りとなった。
フルールは殺気に気付いたが遅い、薊は立ち上がり、ものすごいスピードでフルールの首筋を咬みついた。
薊はそのままフルールに鎌で切り裂かれ、数メートル程飛ばされた。
「ぐ…」
「…咬みついたくらいで…く!」
フルールは倒れ、口から血を吐いた。
「私の…毒は…神器に適応できるほどの毒よ…並みの悪魔なら…一撃でも十分な決定打になるわ…」
薊は再び立ち上がり、毒のナイフをフルールに投げつけた。そのナイフがフルールの右肩を貫いた。
「…私の毒は…神経毒でね…後数分で死ねるわ…」
「がはっ!があああ!」
フルールは苦しみ、悶えていた。今までで感じたことのない痛みを前にフルールは叫ぶしかなかった。
「油断…それがあなたの敗北を誘ったのよ」
そう、あくまで実力は遥かにフルールが勝っていただそう。しかし、最後の最後に油断をしたがために負けを誘った。
薊はどうにかして、フルールに油断を誘ったのだ。
「俺が…死んでも…スープレイガ様は…負けない…絶対に…ぜっ…た…い…に………」
フルールはそう言って息絶えた。薊の毒が完全に回ったのだろう。
「スー…プレイ…ガ…?一体誰の事を…?はっ…そう言えば、蒼が…そんな事…を…」
薊は蒼からスープレイガの話を聞いていた。
曰く、蒼に会うなりいきなり襲い掛かったという。幸いすぐに撤退したそうだが、相当の手練れだったそうだ。
薊はそのスープレイガがフルールを送り出した主犯格であると考えた。スープレイガの部下が一人とは思えなかった。
「この事を…他の人たちに伝えたいとこだけど…動けない…」
薊は先ほどの戦いのせいで既に限界を迎えていた。意識は辛うじて保っているものの、動くことは出来そうになかった。
「後は…任せるしか…」
薊はそう呟いた。
「がっ…は…」
湊は倒れこんでいた。突然、上空からの襲撃を受け、叩きのめされてしまった。
「ふぅ~。まずは一人」
男はそう呟いた。筋骨隆々の体型に白髪の坊主頭が特徴の男であった。
湊は反撃に転じようとするも、男の圧倒的な力の前に叩きのめされる。
「ぐあああああ!」
湊は身体中の骨が折られていた。
「意外としぶといな…まぁ、頭をぶっ潰せば…死ぬだろうさ!!」
男はそう言ってその巨大な腕で湊の頭を潰そうとする。しかしー
「【あああああああああああああああああああああああ!!!】」
絶叫が響き渡と思うと男に声の衝撃波が襲い掛かった。
「何だ?」
「あたしの可愛い後輩に手を出すなんて…いい度胸ね!」
遥がそう言い放った。澪も一緒にいた。
「かなりやり手っぽいね」
「何だ?貴様ら?わざわざ殺されに来たのか?」
男はそう言って二人に殴りかかった。しかし、二人は軽々と男の攻撃を躱した。
「お前ら…名は?」
「音峰遥」
「常守澪」
「俺は…ガーリオス・キリーだ!!」
ガーリオスが剣を抜いた。身の丈程の大刀であった。
「ここはあたしがやるわ!澪は湊を!」
「うん、分かったよ~」
澪は【流星神速】ですぐさま移動し、湊の元に駆け付けた。
「会長…」
「もう大丈夫だよ~。よく頑張ったね~、みっとん」
澪は湊の頭を撫でるが、湊は悔しそうな顔をしていた。
「俺…すぐにやられて…情けねぇ…」
「泣き言は後だよ!」
澪はそう言って湊を安全な場所へ移動させた。
「【ヘッドホンミサイル】」
遥はガーリオスに音のミサイルを放ったが、ガーリオスはそれを軽々と切り裂く。
「この程度か?」
ガーリオスは更に切りかかった。
遥は躱すだけ精一杯だった。それほど相手の攻撃は強力なのだ。
「もう、いい!!これで終わらせる!!ぶっ潰せ!【鎧騎士】!!」
ガーリオスは【悪魔解放】を使った。【悪魔解放】は悪魔の本来の力を解放する、悪魔なら誰でも使うことが出来る力である。
ガーリオスは身体全身に甲冑を纏っており、身体も倍ほど巨大化し、悪魔を象徴とする黒井翼も生えていた。更にそれに合わせて、大刀もさらに巨大化していた。
「それが…悪魔の力…」
遥は肌がビリつくのを感じた。想像以上の力を前に少し、驚いていたのだ。
-こんなのが五万といるんだから…悪魔はその名の通り恐ろしい種族ね…
ガーリオスが襲い掛かる。巨体の割にはかなりスピードがあり、攻撃範囲もケタ違いに広かった。
「喰らええええええええええ!!」
ガーリオスは大刀を振り上げた。すると、遥は直接切られていないのにその大刀の衝撃の余波により、ダメージを受けた。
遥の身体の所々に切り傷が出来ていた。
「く!【ヘッドホンバズーカ】!」
遥は巨大な音の大砲をガーリオスにぶち込んだが、甲冑により、身を守られているため無傷である。
「嘘…これでも、ヘッドホンで音を倍加させてるのに…」
遥は驚愕の表情を浮かべた。遥は自身の首に付けてるヘッドホンにより、音の力を倍増させているのだが、ガーリオスはそれでもほぼ無傷である。
「ふっ…貴様はここで屠る!」
さらにガーリオスは攻撃を続ける。このままでは遥は成す術なく敗れ去ってしまう。
ガーリオスの大刀が周囲の建造物を破壊していく。幸い、今、遥がいる場所は廃棄された場所の為、住民に被害は及んでいない。
「さてと…このままじゃあ、埒が開かないわ…【白雷諫叡】!」
遥は霊呪法を唱え、掌から巨大な白い雷を放った。
ガーリオスは少し、押され、転がるがすぐに立ち上がった。
「ふははははははははは!!やるな!!!そうでなくては!」
ガーリオスは再び、遥に大刀を振り上げた。振り上げるスピードが異常に速い。このままでは躱せない。
「【瞬天歩】!」
遥は高速で移動し、攻撃を躱した。遥は霊呪法を詠唱破棄だけでなく、呪法番号も破棄して、霊呪法を放てる。
しかし、その分、発動速度は上がるが威力が落ちる。それでも、遥の霊呪法はそれなりに強力であるが、ガーリオス相手には少々火力不足だ。
「だからと言って、霊呪法を放つのにこれ以上時間をかけて放つと向こうの攻撃をまともに喰らっちゃう…あんなの一発でも直撃受けたらアウトよ…」
遥はどうにかして頭を働かせたが、何も思い浮かばない。そもそも、遥は湊や澪の様な明晰な頭脳を持ち合わせていない。
決して遥の頭が悪い訳では無いが、やはりこういう状況になるとあまりいい案は出ない。
そう、「今の状態の遥」では確実に負ける。
-やっぱり…これをやるしかない…か…。
遥は何かの決心をするがその前に身体をガーリオスの巨大な腕に捕まれてしまった。
-しまっ…
遥は脱出を図ろうとするも動けない。
「これで終わりだ!」
ガーリオスは遥を持った腕を建物に激突させた。
「がはっ!!」
遥は頭から血が噴き出していた。想定外の距離から追いつかれた為、遥はそれを予測できずに捕まってしまったのだ。
「これで…終わりだ…」
ガーリオスがそう言うとガーリオスはめまいの様なものに襲われた。いや、厳密に言うのであれば、空と地上が反転したかのような感覚である。
「何だ!?こりゃあ!!」
ガーリオスは転び、遥を掴んでいた手からも力が抜け、遥は自由に動けるようになった。
「これは…」
「速く決めて!くるの幻術はそんなに長く保たないから」
そこにいたのは狂であった。狂がガーリオスに幻術に嵌めていたのだ。
「がああああ!!幻術か!!小癪な真似をおおおおお!!!」
ガーリオスは絶叫を上げていた。
「すーはー…ありがとう、くる。じゃあ、決めさせてもらうわ!」
遥がそう言うと遥のヘッドホンが形状を変えた。
遥のヘッドホンの名称は『ハンニバル』。このヘッドホンは退魔石と呼ばれる、魔族を払う特殊な鉱石と強力な魔族の霊力を固めて作られた特殊なヘッドホンだ。「天使」や「悪魔」程では無いが、それに準ずる性能はある。
そして、遥の『ハンニバル』はモードチェンジが可能であり、遥の霊力に準じて変化する。つまり、遥の霊力が強まれば強まる程、『ハンニバル』は無限に強くなれる。
『ハンニバル』の形状がマイクに変わって行った。
「【わっ!!】」
マイク越しに遥が声を出すと途轍もない音波がガーリオスに襲い掛かる。
「ぐ!?何だこの力は!?」
ガーリオスは驚愕の表情を浮かべた。しかし、狂の幻術を力ずくで振りほどき、遥に大刀を振り上げた。
「【破滅戯曲】!」
遥は音の竜巻を無数に発生させた。その音に竜巻がガーリオスに向かっていく。
余りの音波に甲冑が砕け散り、遥が発生させた音はガーリオスの耳に入り込み、内側から、ガーリオスの身体が破裂していった。
「こん…な…馬鹿…バカ…バカなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
ガーリオスの身体が破裂し、赤い海と化した。
遥はそのまま倒れこんだ。狂も力を使い果たしたようでへたれこんでいた。
「ありがとう、くる。おかげで助かったわ」
「別に…」
狂は照れたような顔をしていた。
遥はそのまま吐血をした。
遥は自身の武器であるヘッドホン、『ハンニバル』を使いこなせていない。
無理に力を使ったため、身体に負担がかかるのだ。
「大丈夫?遥ちゃん…」
狂は顔面蒼白になっていた。どうやら、今の遥の身を案じているようだ。
「大丈夫よ…ちょっと…無理しただけ…だから」
どう見ても大丈夫そうには見えなかったが、狂はどうすることも出来なかった。
狂はさらに屍たちの事も気になっていた。他にも霊力のぶつかり合いを感じた。単独犯とは思えなかったのだ。
「屍…薊…皆…お願い…無事でいて…」
狂は遥を抱えながらそう呟いた。
スープレイガは強者を求めていた。スープレイガは常に戦いを求めた。
理由などない。それは本能だ。
スープレイガは『アンタレス』に入ってもそれは変わらなかった。
いつしかスープレイガは「USW」の中でも特異な存在として認知されていた。
だが、スープレイガにとってそれはどうでもいいことだった。
そう、全ては、本能の為に。
「おい、…そんなもんかよ…」
蒼はスープレイガの圧倒的力の前に倒れ伏していた。
To Be continued




