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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第三章】USW進攻篇
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【第三章】USW侵攻編Ⅰー悪魔の囁きー

夏に入り、蒼は学校生活に慣れてきていた。さらに、屍、薊、狂が新たに生徒会に加わっていた。そんな中、蒼たちが生徒会の仕事をしている時、奇妙な人物に遭遇する。

「United State of the World」、通称「USW」。この国はかつてはアメリカ合衆国と呼ばれていた国であり、通称も今とは違う「USA」であった。「USA」は数々の奇跡を起こし、超大国となった。

 魔族が跋扈する前はその圧倒的な軍事力により、事実上、世界の頂点に立っていた。

 魔族を支配するようになってからも「十二支連合帝国」、「神聖ローマ連邦大帝国」、「ヘレトーア帝国」などの帝国により四大帝国の一括りにされているものの依然として最強の国の一角であることには変わりない。

 それに、「十二支連合帝国」と「ヘレトーア帝国」は軍事力はそこまで高くはない。特に「十二支連合帝国」は以前の四大帝国会議の騒動により、力がかなり衰えていた。

 それでも、有能な人物が総帥になったため力を取り戻してきているが、仮に力が戻っても「USW」には勝てないだろう。それほど、「USW」は高い軍事力を誇っている。

 しかし、「神聖ローマ連邦大帝国」は「USW」に負けず劣らずの軍事力を誇っている。ここ最近は内戦が多く、国が乱れ勝ちだが、『セラフィム騎士団』を台頭に高い軍事力を持っている。

 「USW」が建国されたのは二〇〇年前であり、四大帝国で最も最初に出来た国である。

 その頃は初代USW総帥クリフォト・ユールスナールが国の政治を務めていた。しかし、五代総帥である、ナマ・ケモノから国の政治はその他の者たちに任せきりとなり、傀儡総帥と化した。

 一十代総帥であるタブラス・エント二オンも他の者に政治を任せている怠け者であり、傀儡政治の象徴とまで呼ばれている。

 ナマ・ケモノの代から権力の大半を光明庁が掌握していた。

 その時に発足されたのが光明庁率いる特殊部隊『アンタレス』である。

 

 


 一学期が終わり、蒼たちは夏休みに入っていた。月影慧留つきかげえる御登狂みとくるは期末試験で赤点を取ると補習をやらされることを知り、時神蒼ときがみあおたちに勉強を教えてくれるよう頼み、蒼たちは勉強を教え、赤点は免れた。

 そして、今は八月に入っていた。気温は四十度近くあり、かなり暑かった。


「あっち~、死ぬ~、てか何で俺の部屋のクーラー壊れてんだよ!」


 蒼はそうぼやいていた。蒼の部屋のクーラーが昨日壊れたのだ。修理に出しているものの戻ってくるのは明後日だそうだ。


「蒼~、速く学校に行くよ~。生徒会は一応夏休みの活動もあるんだから~」


 慧留は蒼に呼びかけると蒼は気だるげに準備を始めた。学校にはクーラーがある。ただそれの為だけに蒼は今、学校に行こうとしている。


「じゃあ、行くか…」


 蒼はそう言って慧留と共に学校に向かった。



 生徒会は全員で十人いる。蒼はその内の一人である。蒼は元神聖ローマ連邦大帝国第四王子であり、今はとある理由でここ、「十二支連合帝国」に住んでいる。因みに蒼は白黒交じりの髪に薄ピンクと青色のオッドアイが特徴の少年であり、天使と人間のハーフである。

 慧留も蒼と同様、生徒会のメンバーだ。彼女も蒼と同じ神聖ローマ連邦大帝国の人間だ。長い黒髪が特徴の少女である。しかし、彼女は蒼と違い、王族という訳では無く、熾天使第三位である【黒時皇帝ザフキエル】の眷属だ。


「時神君、月影さん、おはよう!」


 笑顔で挨拶をしてくる爽やかな少年は董河湊とうかわみなと。鈍色の髪と爽やかな雰囲気が特徴の生徒会のメンバーである。


「おはよう。蒼君、慧留ちゃん」


 霧宮美浪きりみやみなみも湊同様、二人に挨拶をした。水色の髪のセミロングが特徴の少女である。彼女は蒼と慧留同様、人間ではなく、狼の妖怪であり、蒼たちのいる苗木日和なえきびよりと言うマンションに住んでいる。


「意外と遅かったのね」


 蛇姫薊へびひめあざみがそう呟いた。彼女も生徒会だ。紫のセミロングと蛇の様な瞳が特徴の少女である。ついこの間まで、魔族が集うテロ組織、「アザミの花」のメンバーであったが、今は生徒会に所属している。因みに蛇の妖怪だ。


「まぁ、会長と副会長はまだ来てないけどな」


 天草屍あまくさしかばねはそう言った。彼は「アザミの花」のリーダーであり、紺色の頭と目隠れが特徴の男だ。しかし、薊と同様、生徒会に属している。酒吞童子と呼ばれる大妖怪と呼ばれる一族であり、錬金術を得意とする。


「くる、速くおうち帰りたい」


 狂はそう呟いた。彼女も生徒会のメンバーであり、黒髪ツインテールの小柄な少女である。彼女も「アザミの花」のメンバーであったが、屍と薊同様、今は生徒会に身を置いている。

 屍と薊、狂は蒼たちと同じ、苗木日和に住んでいる。


「まぁ、二人は忙しい身だ。多めに見てもいいんじゃないかな?」


 苗木一夜なえきいちやがそう言った。彼は蒼とは昔からの友人であり、アッシュブロンドと眼鏡が特徴の男である。そして、魔族の保護を目的とした施設、苗木日和の創設者である。


「それにしても、クーラーは素晴らしい!心が洗われるようだ」

「大袈裟な奴だな」


 蒼がクーラーに涼んでいると屍が呆れの声を漏らした。


「まぁ、蒼の家のクーラー今壊れてるしね」


 慧留がそう言うが、蒼と屍は口論をしていた。


「何が大袈裟だよ!てめぇはクーラーの有難みが分からんのか!」

「いや、だって俺クーラーいらんし、てか、そんな些細な事でそこまで一喜一憂できるってお前は幸せもんだな…」

「んだと…」


 蒼と屍は生徒会に一緒にいる事が増えてから他愛のない口論が増えていた。喧嘩友達に近い関係であった。


「皆いるねー、関心関心」


 音峰遥おとみねはるかがそう言いながらやって来た。桃色のツインテールが特徴の少女だった。


「一人くらいサボってても良かったんだよ?」


 澪がそう呟くと遥が澪の頭に軽くチョップをした。


「いた!何するのさ!」

「五月蠅い!さっさと入るわよ!」


 遥と澪はそのまま入って行った。

 常森澪(つねもりみお)は黒髪赤目が特徴で長い髪を括っていた。


「じゃあ、始めようか」

「何を?」


 屍が訪ねる。イマイチ要領を得ない。


「悪霊退治!ここの生徒会はそういう仕事をすることがあるって言ったでしょ?」

「あ~、あったなそんな設定、てか誰も覚えてないですよそれ…」


 遥がそう言うと蒼がとんでもないメタ発言をした。


「設定とか言うな!速く行くわよ!」


 遥がそう言うと生徒会全員が準備を始めた。


「さてと…ここが「十二支連合帝国」か」

「ああ、まぁ、あまり観光している時間は無いぞ、グリト二オン」

「分かってますよ。ドラコさん」

「ならいい、行くぞ」


 黒人の男と白人の男はそんな会話をしていた。

 黒人の方の男はグリト二オン・ニヒル、「USW」光明庁特殊暗殺部隊『アンタレス』のメンバーだ。赤髪のオールバックであり、厳つい印象を受けるが、落ち着いた感じの男である。

 白人の方はドゥームプロモ・ドラコニキル。彼もまた『アンタレス』の一人だ。黒髪のストレートヘアーと釣り目の白と黒のオッドアイが特徴の青年だ。

 二人はそのまま、ある場所へと向かっていた。



 ここはトウキョウ警察署。罪を犯した人間や魔族が捕らわれている場所である。

 そして、元十二支連合帝国総帥の閻魔弦地えんまげんちを始め、彼に関わった多くの人間も収容されていた。

 前回の四大帝国会議でテロを企てた彼らはその罪で捕まったのだ。閻魔がこの世に姿を現すことはもう無い。


「チクショ~~~~~~。アイツら~~。殺してやる!殺してやる!はははは…私がこんなところで生涯を終えると思うな…!迎えが来るまであと少し…」


 そう閻魔が言っていると一人の人影が現れた。


「遅いぞ!速く私をここから出せ!」

「はい、分かりました」


 ドスッ!


「はぇ…」


 閻魔は自分の腹を見た。すると、ナイフが刺さっていた。


「今すぐここから出してあげますよ…この世のしがらみからね…」


 人影はそう近づきながら言った。牢の鍵は開いていた。恐らくその人影が開けたのだろう。


「き…貴様は…一体…」

「別に…どうだっていいじゃないですか…私の事など…あなたは…死ぬんですから」


 そう言って閻魔に刺さっていたナイフを引き抜いた。


「がはっ!」


 閻魔は苦しみ悶えた。


「今楽にしてあげる…さようなら…閻魔弦地」


 閻魔は人影の顔が見えた。女性だった。

「た…助け…」


 そのまま閻魔は首を切り裂かれ、絶命した。


「な…これは…」


 グリト二オンが驚いた表情をしていた。


「閻魔弦地が殺されている」

 グリト二オンとドラコニキルはトウキョウ警察署の閻魔弦地のいる場所に来ていた。

 二人はこの警察署に潜入し、彼の釈放を条件にこの国の情報を聞き出そうとしたのだ。しかし、その前に何者かに殺されたようだ。


「ふー、自業自得とは言え、このえげつねぇ殺し方は流石にな…」


 ドラコニキルはそう答えた。死体は四肢を切断され、身体全身切り刻まれていた。相当、彼に恨みがあったことが伺える。

「まぁ、このままじゃ、すぐに見つかる。ここを出るぞ、もう一つの仕事もあるしな」


 ドラコニキルはそう言うとグリト二オンは頷き、二人は刑務所から脱出した。



 蒼たち生徒会は今、古びた館にいた。


「何だこれは…」

「今に出そうなんですけど…」


 屍と薊は顔を引きつらせながらそう言った。おい、お前ら妖怪だろ…


「今日はここにいる霊を除霊することよ、そこまで難しくないわ!まぁ、ちょ~っと不気味ではあるけど」

「くる、遥ちゃん!ここに住みたい!」


 遥がそう言うと目を輝かせながら狂はそう言った。

 狂は悪夢を見せる暗闇が好きな魔族であり、この様な場所が好きなのである。


「駄目よ!除霊が目的なんだから…」

「え~、遥ちゃんの意地悪…」

「めんどくせぇ…こんな屋敷凍らせちまえば…」

「それは駄目だよ、蒼…この手の幽霊は原因そのものを何とかしないと解決しないよ」


 蒼がそう言うと慧留がそう言った。確かにこの手の幽霊は場所を壊したくらいでは離れない。慧留の言うことももっともだ。


「取り敢えず、本体を探そう。そうしないと始まらない…」


 湊がそう言うと美浪も同意した。


「そうやね」


 湊は霊呪法を唱えた。


「霊呪法第一五〇番【全体捜索ぺスキス】」


 湊のいる地面から地図が表示された。


「すぐ近くにいるよ!と言うか、目の前!それ!」


 湊が札を投げつけた。すると、少年の幽霊が出てきた。


「あれが…その幽霊か…」


 一夜がそう呟いた。


 幽霊は基本的に生前に大kな未練があるケースが一番多い。この少年の幽霊もそうなのだろう。


「取り敢えず行こ~」


 澪がそう言うと皆幽霊少年の所に行った。


「君たちは?」


 幽霊少年が聞いてくると蒼は答えた。


「お前を成仏させに来た」

「まぁ、成仏させられるのは俺だけだけどね」


 湊がそう言った。湊は式神を操ることが出来る。式神は陰陽師の家系であることが大半であり、成仏の心得も知っている。


「とは言え、何でここにいるのかを聞く必要はあるけどね」

 湊は続けて言った。


「僕…人間に殺されて魔族だからっていう理由で…」


 幽霊少年はそう答えた。この霊が出るようになったのは約一か月前だそうだ。その頃は魔道警察官が多くの魔族を殺し回っていた時だ。その時に殺されたのだろう。そして、幽霊となった。


「そうか…でも、もう大丈夫だ、お前を殺した奴は今、法の裁きを受けている。君は納得しないかもしれないけど…奴らは罰を受けている。この国も変わってきてる。俺が言うんだ、間違いない。だから、君は安心して成仏をするといい」


 屍はそう言った。屍は魔族に対しては非常に優しい。いや、屍は相手の事を思いやれる優しい青年なのだ。これが彼の本来の姿なのだ。


「この国は…変わってきてる。あなたの命はもう、戻ってこないけれど…私たちを信じて欲しい」

「くるもあなたがこのままさまよい続けて欲しくないな…未練を残したままここに居続けるのは辛いし、何より…寂しいよ」


 薊と狂がそう言った。すると、幽霊少年は三人に問いかけた。


「本当に?」


 三人は首を縦に振った。


「そっか…じゃあ、もう僕は何も心配しなくてもいいんだ…」


 幽霊少年はそのまま消えようとしていた。幽霊は専門の者に成仏してもらうという手があるが、この様に未練が断ち切られれば幽霊は自然に成仏をする。


「ありがとう。さようなら…」


 やがて、幽霊少年は消えていった。


「終わったわね…」


 遥がそう言った。


「ああ、そうだな」


 蒼が切なげに言った。


「改めて、犠牲になった人たちは戻ってこないんだなって思ったよ」


 慧留は悲しげにそう言った。


「でも、進まなきゃあいけない。僕たちは」


 一夜がそう言うと皆は首を縦に振った。


「三人共、ご苦労様~」


 澪がそう言うと三人は澪に対して素っ気ない態度を取った。


「まだ、打ち解けきれてないのかな?まぁ、何とかなるか」

「見つけた…」


 そんな声が聞こえた。すると、屋敷の屋根に二人の人影が見えた。


「誰だてめぇら?」


 蒼が聞くが二人はそのまま何も答えず、屋根から降りた。


「俺は『アンタレス』のグリト二オンだ」


 グリト二オンが名乗ると蒼たちは絶句した。


「「USW」のお偉いさんが俺たちに何の用だよ」


 屍が問いかけるがドラコニキルがそれに答えた。


「別に…貴様に用がある訳では無い。と言うか、ツキカゲエル、トキガミアオ、オレの顔を忘れたか?」


 ドラコニキルが蒼と慧留がそう問いかける。


 そう、彼は四大帝国会議の時、蒼と戦っていたスープレイガを止めた男だった。


「てめぇが…あの時の…」


 蒼と慧留は絶句した。


「オレが…『アンタレス』のリーダー、ドゥームプロモ・ドラコニキルだ」


 ドラコニキルが名乗るとグリト二オンが前へ出た。


「我らは…十二支連合帝国を危険な国だと判断した。だから、この国の領土を奪う」

「はぁ?そんなの、はいそうですかなんて言えるかよ。それにお前らはこの国を保護しようとしてたじゃねーかよ」

「それは魔族を保護するという意味だ。この国でお前たちは要注意対象だ。邪魔はしないで欲しいが…もし邪魔をするようであれば、消さなくてはいけない」


 蒼はすぐに「天使」を構えた。


「ふー、仕方ないな。相手をしてやれ、グリト二オン」


 ドラコニキルが言うとグリト二オンは蒼たちに襲い掛かった。

 グリト二オンは斧を持っていた。


「それがお前の「悪魔」か?」

「ほう、「悪魔」を知っているのか」


 蒼とグリト二オンは刃を交えた。しかし、蒼はグリト二オンの力に押されていた。


「何!?力が強ぇ!」


 蒼はそのまま吹き飛ばされた。


「時神!」


 屍たちは蒼の元に行こうとするがドラコニキルが行く手を阻む。


「どけ!」

「俺と戦えば死ぬのはお前だぞ」


 ドラコニキルはそう言い放った。

 屍は錬金術を発動させようとしたが、その前にドラコニキルに蹴り飛ばされてしまった。


「ぐぅ!」

「屍!」


 薊も駆け寄り、攻撃を仕掛けるが素手で止められてしまった。


「この程度か?」


 他の者たちも一斉で迎えるが、ドラコニキルは彼らを軽くあしらった。


「ふー、君たちと俺では勝てないよ」


 そう言ってドラコニキルは刀を抜いた。とても長い刀だった。恐らくあれは長剣だ。


「まぁ、精々楽しませてくれ」


 ドラコニキルは悠々と長剣を構えた。


「【第二解放エンゲルアルビオン】!」


 蒼の身体に白い衣が纏われ、眼も青色に髪も白髪になっていた。


「【アルカディアの氷菓】」


 そして、蒼はグリト二オンの左腕を凍らせ、そのまま切り裂いた。


「何だと!?」


 グリト二オンは驚愕の声を上げた。しかし、そのまま怯むことなく片腕で蒼と対峙した。

 蒼が【第二解放エンゲルアルビオン】を使用してからは蒼が押していた。しかし、グリト二オンも片腕を失いながらも蒼と互角に渡り合っていた。


 -くっ…これが「天使」の二段階目の解放か…想像以上にやる…


 グリト二オンは蒼の刀を弾いた。


「思った以上にやるな…なら…いいだろう…私も見せてやろう!」


 グリト二オンは戦斧を掲げた。


 -何か来る!


 蒼はそう直感した、その瞬間ー


「ぐぅ!がは!」


 蒼は頭を抱えた。そして、血を吐いていた。


「蒼!?」


 慧留は蒼の様子を見て驚きの声を上げた。

 グリト二オンは驚いた表情をしたが、蒼のその隙を見逃さなかった。グリト二オンは蒼の身体を自身の斧で切り裂いた。


「ぐああああああああ!」


 蒼は絶叫を上げた。


「蒼!」

「来るな!慧留!」


 慧留はそのまま足を止めた。


 -蒼の様子がおかしい。


 蒼はそのままやられ続けた。

 しかし、その時、グリト二オンの周囲に炎が発生した。


「何だ…これは…」

「やれやれ…間一髪だったな」


 現れたのは赤島英明あかじまひであきであった。白髪のツンツン頭が特徴の青年であり、屍太刀同様「アザミの花」の構成員であったが、現在は魔道警察官である。


「赤…島…」

「おいおい…随分なやられっぷりじゃねーか、天使」

「貴様…そいつの仲間か?」


 グリト二オンが訝し気に赤島を見ていた。


「ああ、まぁ、そう何のかな?まぁ、お前を始末すりゃあ関係ないだろ?」


 赤島はグリト二オンに突っ込んでいった。赤島は身体に炎を纏った。赤島は炎を自在に操ることが出来る。


「く…面倒だな」


 グリト二オンがそう言うとドラコニキルが戻ってきた。


「ドラコさん」

「少々、面倒な奴が来た」


 ドラコニキルがそう言うとその先にいたのは生徒会だけでは無かった。兎咬審矢とかみしんやもそこにいた。紺色のツンツン頭が特徴の青年である。


「逃がさんぞ!」


 兎咬は霊力で出来た剣と盾を構えていた。兎咬は自身の霊力を物質に近い形状に変え、それを戦闘に使用できる能力を持っている。


「ふー、魔道警察官まで出てきたんじゃ面倒だ、引くぞ」


 ドラコニキルが空間に裂け目を作った。


「逃げる気か!?」


 兎咬が追いかけようとするが、二人は空間の中に入って行き裂け目はそのまま閉じた。


「また来る…いずれな…」


 ドラコニキルがそう言って去って行った。


「逃がした…か…」


 赤島がそう言って倒れている蒼を担いだ。



 蒼は真っ白な世界にいた。そこは何もなくただ白が広がっている。それはまるで光の様で…


「ここは…」


 蒼は辺りを見回した。すると、突然、もう一人の自分が現れた。


「何だあれは…俺?」


 蒼は身構えた。しかし、相手は動かない。そして、もう一人の蒼は次第に黒い時計の姿に変わった。


「あれは…そっか…あれは…俺の寿命を現してるんだな」


 蒼はそう直感した。蒼は「天使」の力を完全にコントロール出来ていない。未完成のまま力を使いすぎたため、身体に限界が近づいていたのだ。

 しかも、それだけでは無い。蒼は天使と人間のハーフである。人間にとって、「天使」の力は強すぎるのだ。

 そのせいもあり、蒼の寿命が縮まり続けているのだ。さらに、蒼の使っているもう一つの天使である、【黒時皇帝ザフキエル】はその能力の性質上、使えば使うほど、持ち主の寿命を減らしてしまうという代償が存在する。

 そのせいか、【黒時皇帝ザフキエル】を使う者、その眷属は他の天使と比べ、短命の者が多い。しかし、あくまで、他の天使と比べての短命であり、最低でも人並みの寿命は生きれている。

 しかし、蒼は半分人間である。人間と魔族の子どもは例外なく高い戦闘能力を誇るが、常人より早く死ぬことが多い。

 天使は通常五百年から千年ほど生きると言われている。その中で人並み以下の寿命はあまりに短い。蒼は残された時間があまり長くないことを悟った。

 「アザミの花」たち、十二支連合帝国政府との戦い。蒼はこの短期間でかつてない程の「天使」を解放していた。特に【第二解放エンゲルアルビオン】は自身の寿命低下に直結していた。

「恐らく…このままじゃ…夏終わる頃には死んでるかもな…俺」

 蒼はそう呟いた。この事態を脱するにはどうすればいいか…蒼には分からなかった。



 蒼は自分の部屋で目が覚めた。そこにいたのは慧留と一夜、屍と薊、狂であった。


「俺は…そっか…負けたんだな…俺。まさか…赤島に借りを作っちまうとはな…」


 蒼がそう言うと慧留は涙目になっていた。


「蒼…何か隠してるよね?」

「……分かっちまうか~。なら仕方ねぇ、話すか…実は俺、もう、そこまで寿命はねぇんだ。多分…夏終わる頃には…死んでる」


 蒼がそう言うと皆が凍り付いた。


「は?何言ってんだよ?時神?冗談きついぞ?」

「事実なんだよ…俺は元からそんなに長く生きられないんだよ」


 そして蒼は自身の身体んことを話した。


「つまり、今まで「天使」の力を酷使しすぎたせいで…」


 薊がそう言うと皆暗い顔をした。


「俺も…正直驚いてんだ…ここまで早く進行してるとは…思わなかった…後、十年位は死なないつもりだったんだけどな…」


 蒼がそう呟いた。


「あと十年って短すぎない?」


 狂がそう言うと蒼は冷静に答えた。


「魔族と…特に天使と人間のハーフは…常人より遥かに死ぬのが速いんだ…長生きでも人並みぐらいかな。まぁ、これは例外だ…四十行く前に大体の奴は死ぬ」

「何で…?何で目の前に死が近づいてるのにそんなに冷静でいられるの?」


 慧留が分からないと言いたげだった。


「仕方がないんだよ…。そう…決まってることだから…」

「力の制御が不完全だから寿命が余計に縮まってんだよな?」


 屍が問いかけると蒼は「ああ」と答えた。


「じゃあ、お前が死ぬまでに力を制御すれば、今すぐに死ぬことは無くなるんじゃねーか?」

「さっき、例外があるって言ったな…その例外が自身の力を制御した奴。そいつは人間と同じくらいは生きられたらしい。まぁ、最近制御できるようになった奴は一人だけだ。それほど難しいんだよ、「天使」の力を制御するってのは…しかも、俺は所有「天使」が二体いる。二体分制御できないと意味がない」


 蒼は辛らつな言葉を言った。


「どうやって、コントロールすりゃいいか分かんねーんだよ。そいつに聞いたこともあるけど、人それぞれ制御に仕方が違うから教えられないって言われて…」

「俺なりに「天使」を探ってみるわ。何か方法が分かるかもしれない」


 屍がそう言った。


「私も、協力するよ!」


 慧留もそう言った。


「まぁ、僕も君の短命については何とかするつもりだったしね。時期が早まっただけだね」

「てか、一夜は知ってたんだ。蒼ちゃんのこと」


 狂がジト目でそう言った。


「………ありがとな、皆」


 蒼はそう言った。


「てめぇに死なれちゃ目覚めが悪いんだよ…君には借りがある」

 屍はそう言った。


「私も蒼を助けたい。今の私の世界があるのは蒼のお陰だもん」


 慧留がそう言うと蒼は天井を見上げていた。



 ここは「USW」本部の地下室である。『アンタレス』が所有している部屋の一つであり、大人数で集まる時はここで集まることが多い。今、かなりの人数がこの地下室にはいた。


「ただいま戻りました、カーシス長官」


 ドラコニキルがそう言った。


「お帰り、ドラコ。成果を聞かせてくれ」


 カーシスがそう答えた。彼はカーシス・ベルセルク。『アンタレス』の現統治者である。青がかった黒髪が特徴であり、法服を着用していた。彼がこの「USW」の実権を掌握しており、事実上のトップである。


「かしこまりました…」


 ドラコニキルは長剣を抜き、地面に突き刺した。そして、音が響いた。音を聞いた瞬間、ドラコニキルの記憶が頭に浮かんだ。

ドラコニキルの「悪魔」の能力の一つであり、太刀を突き刺す音を聞いた者に自身の記憶の一部を共有することが出来る。


「そして、撤退したという訳か…」

「はっ…これ以上事を荒立てるのは得策では無いと考えていたので」


 ドラコニキルがそう言うと「甘いな」と言う声が聞こえた。そして、声の主の名をドラコニキルは呼んだ。


「スープレイガ」


 スープレイガ・レオンジャック、それがこの男の名だ。金髪のリーゼントが特徴の男だ。彼は先の戦いで蒼と戦っている。そして、蒼に興味を持ったのだ。


「俺なら皆殺しにしてる。つか、グリト二オンに関しちゃあボロボロじゃねーか。負けて帰りましたって行ってるようにしか聞こえねぇよ!」

「………」


 グリト二オンは黙っていた。


「止せ、スープレイガ。ここでとやかく言っても無意味なだけだ」

「………分かりましたよ」


 スープレイガがそう言うとカーシスが話を戻した。


「まぁ、エンマゲンチが死んだことが聞けただけでも良しとするさ。これは色々と使えそうだ。ご苦労だった。ドラコ」

「有難うございます」

「さてと…では今日は解散だ。皆、ご苦労だったね」


 そう言って『アンタレス』は解散した。




「カーシス長官…」


 ドラコニキルがそう言った。


「ああ、…まだだ」


 カーシスがそう言うとドラコニキルは「そうですか」と返した。


「これから…この世界を懸けた戦争が始まるのだな…」

「はい」

「ああ、期待しているよ」


 カーシスが嗤いながらそう言った。




 スープレイガは一人で歩いていた。そして、ニヤリと嗤った。


「天使…お前は俺の獲物だ…渡さねぇ…」


 スープレイガは目をギラギラさせていた。

 スープレイガは先ほどの会議で不満が溜まっていた。

 ドラコニキルたちの詰めの甘さに頭に来ていたのだ。


「甘い…甘すぎるぜ…俺は必ず…あいつを仕留める。必ずだ」


 そして、スープレイガは自分の部下を招集した。


「話はさっき言ったとおりだ…行くぜ!」


 スープレイガは部下を引き連れ、十二支連合帝国に独断で攻め込みに行ったのである。





 To Be continued

 【第三章】に突入しました。この話は最初から考えていたお話でこの話はこの物語の折り返し地点でもあります。その為、今までの話の中で最も長くなると思います。色々と明らかになるのでお楽しみに。それではまた!

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