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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第二章】四大帝国会議篇
20/196

EXTRA-一宮高校校内探索-

 天草屍あまくさしかばねたちが一宮高校生徒会に入ってしばらくし、屍が校内を見たいと言い出したのだった。

「この学校ってさ。七不思議とか無いのかよ?」

 天草屍あまくさしかばねはそんな事を言ってきた。紺色の髪と片目隠れ、紺色の瞳が特徴の少年だ。かつては『アザミの花』という、テロ組織のリーダーであったがわけ合って今は一宮高校にいる。

「興味ねー」

 時神蒼ときがみあおは素っ気ない感じで返事をした。白黒交じりの髪に青と薄ピンクのオッドアイが特徴の少年だ。彼も一宮高校の生徒だ。

「七不思議…くるも興味あるぞ!」

 御登狂みとくるは蒼とは逆に興味津々と言った感じだった。中性的な顔立ちと黒髪のお下げのツインテールと紫の瞳が特徴に少女だ。彼も屍同様『アザミの花』の元構成員であったが屍と共に一宮にいる。

「七不思議って何?」

 月影慧留が疑問を浮かべていた。黒髪ロングに釣り目の凛とした感じの少女である。しかし、そんな大人っぽい見た目とは真逆でかなり子供っぽい性格をした少女でもある。この一宮高校の生徒である。

「その名の通り、学校の七つの不思議な事がある事。全てを知った者には不幸が訪れると言われているわ。まぁ、都市伝説みたいなものね」

 蛇姫薊へびひめあざみは淡々と説明をした。紫の髪とセミロングと蛇のような目が特徴の少女である。屍や狂と同様、『アザミの花』の構成員であったが、生徒会に所属している。

「へえ~、薊詳しいね」

 慧留が目を輝かせながら薊に近寄って来た。薊は少し、嫌そうな顔をしていたが、慧留はまったく気にしなかった。

「それなら…噂で聞いたことがあるよ。理科実験室に怪しげな物音がするらしいよ…七不思議の一つらしい」

 苗木一夜なえきいちやがそう言った。アッシュブロンドの髪にメガネが特徴の胡散臭そうな少年である。彼もまたこの一宮高校の生徒である。

 そして、ここにいる六人は皆、一宮高校の生徒会メンバーである。最初は四人しかいなかったが今は十人まで増えていた。

 今は蒼と慧留、屍と薊、一夜と狂が生徒会室に集まっていた。他の四人は今日は来ていなかった。毎回全員が集まれるわけではなく、今日のように全員集まらない日も多い。

 今の時期は夏。七不思議を始めとした怪談日和と言えるだろう。魔族の存在でオカルトなどの存在は廃れていってはいるがこういうのは今でも根強く残っているものである。

「面白そうだな…行ってみるか!」

「おー!行く行く!!」

「面白そうだね!」

 屍がそう言うと狂と慧留のテンションがマックスになった。

「じゃあ、勝手に行って来い」

「私も…面倒ごとは嫌よ」

 蒼と薊は嫌がっていた。

「さて、僕はそろそろ帰るよ」

 一夜が帰りの準備を始めた。

「え?一夜さんは行かないの?」

「ああ、ちょっと、今日は用事があってね…じゃあ、楽しんできなよ」

 慧留が尋ねると一夜はすぐに生徒会室から出ていった。

「じゃあ、五人で行きましょうか!」

「俺は行かないって言ったぞ!?」

「私も頭数に入れないでよ!」

 慧留が宣言をすると蒼と薊は文句を言ってきた。

「ええ~?いいでしょ!!薊ちゃんも蒼ちゃんも行こう!!」

 狂が薊に引っ付きながらそう言った。薊は仕方なさそうに「分かったわよ」と言った。その後、蒼も四人から視線を向けられ、耐えきれずに「分かったよ」と両手を上げた。

 こうして、五人の校内探索が始まったのであった。





「さて!ここが理科実験室だな」

 時間は夜の十時を過ぎていた。こういうのは夜の方がいいと屍が言い出し、夜に学校に忍び込んだのだ。

「たく…これで誰かに見つかったら全部屍のせいだからな」

 蒼は嫌そうな顔をしながらそう言った。

「でも、たまにはこういうのもいいじゃん」

 慧留は眼をキラキラさせていた。屍といい、慧留といい、意外と好奇心が旺盛の様だ。それに巻き込まれた蒼と薊はいい迷惑だった。

「じゃあ、入るよ」

 狂がそう言って実験室のドアを開けた。辺りには実験器具がたくさんあり、不気味な雰囲気を醸し出していた。しかし、これといって、変わったことは無かった。

「何も無いわね」

 薊はそう言った。なんだか、薊は若干震えてる気がしないでもなかったが蒼は黙っていた。

「何か音が聞こえる!」

 慧留が指を指してそう言った。確かに耳を澄ませると小刻みに何かの音が聞こえた。

「なんかあるか?」

 屍は期待に胸を膨らませていた。そんな屍を見て、蒼は呆れていた。

 音のする場所へ近づいて行った。すると、そこには扉があった。

「そう言えば、実験室は部屋が二つあったんだったな。入るか」

 蒼はそう言ってさっさと済ませようと言わんばかりに扉を開いた。すると、大量の骸骨が動いているのが見えた。蒼はその瞬間、「バタン!」と大きな音で扉を閉めた。

「…帰ろう」

 蒼がそう言うと屍が逃げようとする蒼の肩を掴んだ。

「…何すんだ屍?」

「いやいや…何でお前すぐに帰ろうとすんだよ…中に何があった?」

 屍は蒼に尋ねた。

「大量の骸骨が動き回っていた」

「そうか…そりゃあ、面白そうだな…くる!開けろ!」

「あいあいさー!」

 狂が思いっきり扉を開けた。すると、扉の先は大量の骸骨が動き回っていた。そして、骸骨がこちらの存在に気が付いたようで目を輝かせてきた。その形相は中々恐ろしく、屍や狂も顔が引きつっていた。薊と慧留に関しては泣きそうな顔をしていた。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」

 大量の骸骨が蒼たちに襲い掛かって来た。

「「「「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」」」」」

 蒼たちは一目散に逃げていった。

「何あれ!?怖すぎなんですけど!?マジ無いわーー!!」

 蒼が訳の分からないテンションで叫んだ。

「何あれ!?マジでオバケ出た!?」

「いいやいやいやいやいやいやいや!!ありえねぇ…!!何だあれ!?」

 狂と屍も同様に叫んでいた。

「というか、屍もくる酷いよ!!私たち置いて一目散に逃げるなんて!」

 慧留が二人に文句を言った。そう、屍と狂は残り三人より早くに逃げ出したのだ。言い出しっぺがこれである。因みに彼らは走りながら会話をしている。

「知るかんなもん!とにかく逃げるぞ!!まだ追いかけてやがる!!」

 屍がそう言うと蒼は後ろを確認した。確かに骸骨の軍団が未だに追いかけていた。やばい、マジもう帰りたい。

「………」

 薊は無言で徐々に速度を上げており、蒼たちよりも速く逃げていた。

「おい!薊!!待てよおい!!」

 屍がそう言うも薊はさらに速度を加速させた。

 五人はそのまま逃げ続けた。









「はぁ…はぁ…何とか撒けたか…」

 蒼が息を切らしながらそう言った。因みに今彼らがいるのは中庭であった。どうにかして骸骨の大軍を巻いた蒼たちはこの中庭で一休みしていた。

「まったく…酷い目に合ったよ…」

 慧留がそう呟いた。

「あれは幻…あれは幻…あれは幻…あれは幻…あれは幻…」

 ぶつぶつと薊は言っていた。よっぽどトラウマだったらしい。

「おい…大丈夫か?」

 蒼は薊に声をかけた。

「え?あ…うん…大丈夫よ…」

 薊は若干強がった感じでそう言った。明らかに無理をしているように見えた。

「あまり無理すんなよ?帰るか?」

 蒼がそう言うと薊は首を横に振った。

「ビビってない…大丈夫よ」

「いや、けど…」

「大丈夫よ」

「………分かりました」

 蒼は薊に根負けした。本当は薊が帰りたいと言って蒼はその薊を見送るとか適当な理由をつけて帰るつもりだったのだが…意外と頑固な奴だった。しかし、今回、聞いた七不思議はさっきの骸骨に関する事だけだ。このまま帰れると蒼は思った。しかし、その矢先…

「そう言えば、中庭にも七不思議があるらしいぞ」

 屍がそう言った。

「え?何で屍知ってるの?」

 狂が疑問に思い屍に尋ねた。

「夜まで時間があっただろ?それまでに俺なりにこの学校の七不思議を調べてたんだ。そんで、夜中にこの中庭に長い時間いるとどっかに消えてしまうらしい」

 屍はそう言った。蒼は頭に手を置き溜め息を吐いた。蒼はせっかく帰れると思っていたのでとても落胆した。

「今は…0時だね」

 慧留はスマホから時間を確認した。

「そう言えば…ここに来てからどれくらい時間経つ?」

 薊が尋ねた。

「大体三十分くらいだ」

 蒼がそう答えた。蒼は小まめに時間を確認していた為、間違いない。

「え?何これ?」

 狂がいきなり声を上げた。すると、蒼たちの身体が発行し始めた。

「身体が…光ってる?」

 慧留がそう言った。

「まさか…」

 蒼は顔を真っ青にしてそう言った。

「ああ、七不思議の一つかもしれない…ワクワクするな!」

「お前は少しは反省しろ!!」

 蒼がワクワクしている屍に怒鳴りつけた。

「「「「「うああああああああああああ!!!!」」」」」

 蒼たちはそのまま姿が消えた。









 蒼たちは中庭にいた時、突然光り出し、どこかに飛ばされてしまった。

「ここは?」

 蒼は周囲を見回した。周りは黒い壁があり、明かりの蝋燭があった。

「皆いる?」

「ああ、いるぞー」

「くるもいる!」

「いるわ」

「ああ、いる」

 慧留が呼びかけると蒼と狂、薊と屍は返事をした。取り敢えず、皆無事の様だ。

「しっかしここどこだ?」

 屍が頭を掻きながらそう言った。こんな時に湊がいたら助かるのだが…

「取り敢えず、出口を探しましょう」

 薊はそう言って歩き出した。蒼たちもそれに付いて行った。

「蒼…これは一体なんだと思う?」

「恐らく、転送魔法の一つだな。一定時間、転送魔法の領域内にいると自動的に指定された場所に飛ばされる仕組みだな」

 慧留が蒼に疑問を言うと蒼はすぐに答えた。誰が仕掛けたか知らないが蒼の解釈で間違いはなさそうである。七不思議の一つが転送魔法がらみとは…七不思議もザルだなと蒼は思った。

「所で薊、お前、出口の場所分かるのか?」

「問題ないわ、周囲の音を察知すれば、道の構造はある程度は把握できるわ」

 蒼の質問に対し、薊は淡々と答えた。

「まるで蛇だな…」

 蒼はそう呟いた。

「まぁ、とは言っても薊は道筋を探知できるだけであって董河みたいに周囲の罠なんかは察知できねぇから慎重に…」

 屍がそう言った瞬間、ガチッという音が聞こえた。屍の足元から…

「おい、屍…」

 蒼がジト目で屍を見た。すると、後ろから何かが来る音がした。巨大な岩の球であった。しかもものすごい速度でこちらに近づいていた。

「「「「「!?」」」」」

 蒼たちはダッシュで前に走って行った。

「屍ちゃん!言ってる傍から引っ掛かるなんてブーメランだよ~!!」

 狂が屍に文句を言いつける。こればかりは他の三人も狂の言葉が正論だと思った。

「おい!これどうするんだ!?加速の勢いが凄すぎて俺や屍の霊力じゃあ止めきる前に皆ぺしゃんこだぞ!?」

 蒼は焦りながらそう言った。蒼は氷を操る天使を使う。しかし、今目の前にある岩は転がる加速によって高熱になっており、蒼の氷では防ぎきる前に岩の球が追い付いてしまう。

「うあああああ!」

 慧留は泣きそうな顔をしていた。

「ここを右!」

 薊がそう言うと皆、右に回った。すると、そこには道があり、岩の球は蒼たちを通り抜けていった。

「あっぶね…お前ら…くれぐれも気を付けてくれよな…」

「「「「お前が言うな!!!!」」」」

 屍が注意喚起すると四人に突っ込みを受けた。何というブーメラン…最早、フリとしか思えなかった。

「因みにさっきのは七不思議の一つ、岩玉回転というらしい…」

「七不思議でも何でもねーだろそれ!?ただのトラップじゃねーか!!」

 屍が解説をすると蒼は堪らず声を上げ突っ込みを入れた。最早、今の屍に元『アザミの花』のリーダーとしての面影はなかった。キャラ崩壊もいいところである。

「つべこべ言ってないで進むわよ」

 薊はそう言って歩き出した。蒼たちはそれに再び、付いて行った。

「本当にここはどこなんだろう?」

 慧留はそう言った。すると、薊が答えた。

「ここは、どこかの地下みたいね」

「地下?」

「ええ」

「どうして分かるの?」

「まぁ、周囲に窓などは無いし、体温も地上より低いからね」

「そんなことまで分かるの!?」

 薊がそう言うと慧留は驚いた。蛇は舌で体温感知して相手を補足したり、音で周囲の位置を特定できるという。薊が使っているのはその能力だろう。蒼が薊の事を蛇のようだと言ったのは案外間違っていなかったりする。というかここまで来たら最早、蛇女だ。

「ふひ~、ちょっと疲れた…休憩しようよ~」

 狂が壁にもたれかかった。すると、壁がガチャッといい、へっこんだ。

「「「「「へ?」」」」」

 五人が声を上げると足場がいきなり消えた。

「「「「「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」」」」」

 五人は声を上げて、そのまま落下した。

「これは七不思議の一つ、「奈落の底」だー!!」

「だから、七不思議関係ねーよ!これ!!ただのトラップだろ!!!」

 屍がまた開設を始めると蒼は堪らず叫んだ。まさか、このまますべてトラップという落ちではないのだろうな…

「落ちる落ちる落ちるーーー!!」

 狂が叫んだ。「誰のせいでこうなったんだ!」と蒼は叫びたくて仕方なかったが、押し黙り、「天使」を出した。

「【氷水天皇ザドキエル】!!」

「痛!」

 蒼が「天使」を発動させると地面に氷の足場が発生した。慧留以外は綺麗に着地できた。慧留だけ着地に失敗し、苦悶の声を上げていた。氷の足場を高くし、元の位置に戻った。

「何とか戻れたわね」

 薊がそう言った。蒼は既に精神的にくたびれそうだった。

「よーし!先に進むぞ!!」

「「おーーー!!!」」

 屍が人差し指で前に指を指して、言うと慧留と狂が声を上げた。

-何でこいつらこんなに元気なの?

 蒼は疑問で仕方なかった。薊も呆れた様子だった。

「何か…もう帰りたい…」

「奇遇ね…私もよ…」

 蒼と薊は溜め息を吐きながら、三人の後について行った。









 蒼たち五人はしばらく歩き続けた。今のところは大した異常はなく進めていた。ここまで順調だと逆に怖くなる。

「薊…あとどれくらいだ?」

「もうすぐ出口ね…それにしても、この地下道路…かなり入り組んでいるわ…」

 蒼の質問に薊は淡々と答えた。

「お前も大変だな…」

「そんな事は無いわ…まぁ、疲れはするし、私もそこまで活発って訳じゃないからあの二人についていけない事もあるし…けど、退屈はしないし…ね」

 薊は少し楽しそうに答えた。

「そうかよ…」

「蒼もかなりのお人好しよね…なんだかんだ言って頼み込まれたら断れないじゃない…あなたなら、このまま逃げる事も出来た筈なのに…」

「うるせーよ」

 薊に図星を突かれて蒼は適当に流した。

「まぁ…私は今がそれなりに楽しいわ。私と屍と狂を始め、『アザミの花』の皆を導いたのは…間違いなくあなたよ…感謝してるわ…ありがとう。ずっと言おうと思ってたんだけど…言えなかったわ」

 薊はそう言った。薊は自分から話すことはあまりないので蒼は少し驚いていた。

「大袈裟だ。それに、俺だけの力じゃねーよ」

「それは分かってるわ。でも、導いて売れたのは間違いなく、あなた」

 薊は蒼の眼を真っ直ぐ見て、そう言った。蒼は少し顔を赤くしていた。

「ねぇ~、出口までどのくらい?」

 慧留が薊に尋ねてきた。

「このまままっすぐ進めばその着くわ」

 薊がそう言った。しかしー

「「「「「な!?」」」」」

 出口を目前にして、その先には足元が針に覆われていた。これではまともに通る事は出来なかった。

「お!?これは七不思議の…」

「(イラッ)」

 蒼はとうとう業を煮やし、【氷水天皇ザドキエル】で辺り一面を銀世界に変えた。無数の針は凍り付き、砕け散った。

「「「へ?」」」

 薊以外の三人はそんな素っ頓狂な声を上げた。しかも、辺り一面がものすごく寒くなっていた。

「寒!寒いよ!蒼!!」

 慧留がそう言った。

「はっくしょん!!おい、時神!なんとかしろ!」

 屍もぼやいた。

「寒い~~」

 慧留もかなり寒そうだった。後ろにいた薊も声には出していなかったもののかなり寒そうであった。

「俺は寒くねー」

「それは、お前には耐性があるからだろ!?俺らは寒いんだよ!」

 蒼がそう言うと屍は反論した。氷の力を扱う能力者は大概の場合、寒さに耐性を持っている事が多い。氷の力を使う際、冷気と一体化する必要がある為、っ気本堤に氷使いは寒さに耐性がある。まぁ、当たり前と言えば当たり前の事なのだが…

「てか、ここまでする必要なかっただろ…」

 屍は非常に残念そうな顔をしていた。

「さ・っ・さ・と・出・る・ぞ!!」

「「「はい…」」」

 蒼がものすごい形相でそう言うと屍と狂と慧留は小声で返事をした。

「………」

 薊は蒼たちを見て少しだけ笑っていた。







「ようやく…出れた…」

 蒼たちは出口に辿り着き、外の空気を吸っていた。出口にあったのは蒼が先程いた場所とは違う場所の学校の中庭だった。学校の中庭は東、西、南の全てで三か所あり、蒼たちが最初にいたのは東の中庭であり、今いるのは美浪の中庭である。

「という事は…私たち…今まで学校の地下にいたって事?」

 慧留がそう言った。そう、蒼たちは先程の転送魔法で学校の地下に転送されていたのだ。恐らくは親友者を閉じ込める、或いは妨害する為に仕掛けられたものだろう。

「この学校…色々おかしいよ…」

 狂が呆れた顔でそう言った。確かにこの学校は色々と謎すぎである。しかも、このトラップのせいで一般生徒にまで巻き込まれているとあっては本末転倒である。

「あ、俺帰るわ…」

「私も帰るわ」

 蒼と薊はダッシュで学校から出ていった。

「蒼、薊?」

 慧留は蒼と薊を見て疑問符を浮かべた。

「こんな時間に何をやってるのじゃ?」

 四宮舞しのみやまいが慧留、狂、屍の前に現れた。四宮舞、ここの学校の教師であり、一宮高校、最年長の魔族だ。本人は種族的には妖怪だと言っているが、謎が多い人物でもある。黒い髪と人形の様な顔立ちとゴスロリ姿が特徴の女性である。

「「「へ?」」」

 三人はそんな声を上げた。

「あああああ!!!蒼ちゃんと薊ちゃん!!こうなる事分かってて…」

 蒼は直感で…薊は舞が近づいている事を分かっていた。だから、二人は見つかる前に逃げ出したのだ。

「さて…貴様ら三人はしばらく、説教タイムじゃな…こんな遅くまで学校で何をしておった!?」

 舞が形相を変えて切れた。

「何で俺らだけなんだよ!?蒼と薊もいたのに…」

「あやつらは見てないぞ?何を言っておる?」

 舞が怒りのボルテージが着々と溜まっていた。

「蒼~、薊~…ヒドイよ…」

 慧留も涙目になっていた。

「くる…帰りたい…」

 舞の説教はそのまま延々と続き、慧留と屍、狂の三人は心が折れそうになった。










「ふ~、何とか逃げ切った」

 蒼はそう呟いた。蒼と薊は舞の気配を感じ取り、さっさと逃げた。ただでさえ疲れているのに、説教まで喰らってはたまったものではない。怒られるにしても今日怒られるのは、嫌だった。

「そうね…まぁ、後が怖いけど…」

 薊はそう言った。薊の言ってることは尤もだった。マジで後が怖い。

「まぁ、こうやって抜け出すのも悪くないんじゃないかしら?」

 薊は悪戯っぽく笑い、そう言った。今日の薊は妙に表情が豊かだった。

「珍しく楽しそうだな」

「そうかしら?まぁ、たまにはこういうのも悪くないわ」

「そうか…まぁ、たまには…な…」

 蒼は自分の中で、たまにはいいかと思い、納得した。

「それにしても…今日の蒼は色々忙しかったわね…」

「あいつらのせいだ」

 蒼もどちらかというと口数が多い方ではない。薊があまり喋らないからそれで霞みがちだが、蒼もかなり大人しい方だ。しかし、今回は屍の奇行や狂のドジなどに振り回されっぱなしだった。

「少なくとも、今回でお前ら三人の印象は変わったわ。後、あの学校がますます不気味に思えてきた」

「そう…」

 蒼がそう言うと薊は適当に返事を返した。

「もうちょいで着くな」

「ええ、そうね…明日が少し面倒そうね…」

 薊は少し憂鬱そうに呟いた。

「まあ、明日のことは明日考えないとな」

 一方、蒼は開き直った様子であった。

「意外とそういうとこは前向きなのね」

「………空元気って知ってる?」

「…………納得」

 薊は蒼の言葉に妙に納得してしまった。どうしようもない事をグチグチ考えるより、開き直った方が楽だ。そう思う時もあるだろう。

「着いたな。じゃあ、お休み」

「お休み」

 薊は蒼に返事を返した。

 蒼と薊は同じ苗木日和というマンションに住んでおり、一夜が経営している魔族が住んでいるマンションだ。今は大分払拭されたが、この「十二支連合帝国」の人間は魔族に対する迫害が凄まじかった。それにより、一夜は自身の信頼できる仲間を吸う人集め、作ったのがこの苗木日和だった。蒼と薊だけでなく、慧留は勿論、屍や狂、美浪もここに住んでいる。

 蒼と薊はそのまま自分の部屋に帰って行った。








 慧留と屍、狂は舞の説教から解放され、帰宅していた。時間は深夜の三時であった。

「まったく…酷い目に合った…時神のヤロー…覚えとけよ…」

「薊の事は怒らないんだ…」

 慧留が屍にそう言うと屍は顔をしかめた。

「駄目だよ~、慧留ちゃん!屍ちゃんは薊の事が大好きだから怒れないんだよ!」

「くる!てめぇ!!」

 狂が屍の事を暴露すると屍はキレた。

「ふ~ん、なるほど~」

 慧留も悪戯っぽく呟いた。

「べ…別にそう言うのじゃない!!」

「照れなくていいのに~、青いね~」

「うるせー!!」

 慧留が屍を煽ると屍は少しいじけた。

「今日は楽しかったね~!昔ならこんな事するなんて、考えられなかったよ~」

 狂が感慨深そうにそう言った。そう、屍と薊、狂はテロ組織だった。こんな平穏な生活が送れるなど、本来ならあり得ない事だった。

「そうだな…俺としたことが…珍しくはしゃいじまった」

「今日の屍は酷かったよ…蒼が呆れるくらいにはね」

「マジで!?あいつ呆れてたの?」

 屍は蒼の事を全く気遣っていなかったようだ。慧留は屍の事を呆れた顔で見た。

「蒼と薊が逃げ出した気持ちも分かるよ…」

「なんだそりゃ…」

 慧留の言葉の意味があまり屍には分かっていない様子だった。

「また、こういう事が出来たらやりたいな~」

 狂は楽しそうにそう言った。懲りない子だなと慧留は思った。

「そうだな…皆でこうやってワイワイやるのも悪くねぇな」

-まぁ、楽しんでるからいっか。

 慧留は楽しそうな屍と狂を見て、少し安心したようだ。彼らもやっぱり、自分たちと変わらないんだなと慧留は思った。

「慧留ちゃんは楽しかった?」

 慧留がそんな事を考えていると狂が無邪気な笑顔で慧留に今日の事を聞いて来た。

「うん、楽しかったよ。私もこういう事やってみたかったし」

 慧留はそう答えた。慧留はこういう普通の生活に憧れていた。禁止されている事をやって、先生に叱られる。こういう事を体験する事も慧留にとっては嬉しい事だった。きっと、屍と狂も同じ気持ちだろうと慧留は思った。

「なら、良かった。まぁ、月影は終始ノリノリだったもんな。全く…時神と薊にも見習ってもらいたいぜ…」

「そうだよね~」

 屍と狂はそんな話をしていた。確かに、慧留は屍と狂のノリに最後まで付いて行っていた。蒼と薊は面倒臭そうにしていたが…

「お、そろそろ家だな……帰るか…」

 屍がそう言うと、三人ともそれぞれのマンションの部屋に戻って行った。








 薊はベッドで一息つき、狂の事を思い出していた。今日は楽しかった。そう思えた。『アザミの花』の頃はこんな事は考えられなかった。だからこそ、思う。今のこの居場所を強く守りたいと。

 薊は蒼を始めとした生徒会と交流を深めるにつれ、心境の変化が見られた。

「私も…変わってきてるって事なのかな?」

 薊はそんな事を言いながらベッドに寝転がった。そして、そのまま眠りに就いた。






「はぁ~、さっさと寝るか」

 屍は自宅に戻り、すぐに寝る準備を始めた。屍は今日は終始楽しんでいた。自分でも信じられないくらい。『アザミの花』にいた頃は…自分がリーダーだから、しっかりしないといけない。そう思っていた。だが、生徒会に入って、そんな事を考える必要は無くなった為か、ハメを外す事が多くなっていた。言うなれば、今の屍がある意味、本当の屍と言えるのかもしれない。

 だが、流石に、屍自身も今日は調子に乗りすぎたと少しだけ反省していた。

「さて、寝るか」

 屍はそう言ってベッドに向かっていった。







「ふふふ~ん、ふふふ~ん♪」

 狂は楽しそうに部屋で鼻歌を歌っていた。狂は今日の学校探索がさぞ、楽しかったようだ。

「また…こういう事が出来たらいいな~」

 狂はそう呟いた。狂は一人で人形遊びをしていた。それでは味わえない楽しさというのを狂は味わった気がする。

 狂は誰かと一緒に何かをする楽しさに気付いたのだ。世間的には当たり前なのかもしれない。しかし、狂にとってそれはとても尊いものだった。

 蒼たちと出会って、狂も変わった。初めは学校に行くのが嫌で嫌で仕方なかったが、今はそれなりに楽しく過ごせている。今なら思う。学校に通えてよかったと。そして-

「屍ちゃんや薊ちゃん、蒼ちゃんや慧留ちゃんに出会えてよかった」

 狂はそのまま歌い続けた。






 THE END

 番外編です。まだ続きます。今回の屍はめちゃくちゃはっちゃけてましたね。多分こっちが素なんだと思います。蒼と薊は結構ドライなところがあるので屍には苦労させられるでしょうね…まぁ、だからこそウマが合うとも言えますが…

 もうしばらく番外編を続けます。お付き合いください。それでは。

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