【最終章】使徒叛逆篇ⅩⅩⅩⅥー新しい世界ー
ー私はフローフルに愛されていた。
ルミナスはそれに気が付いていないだけだった。
見ようと思えば見えた筈なのに…
気付いた時にはもう遅くて…
ー世界を返さないと…
ルミナスは最後の仕事を行う事にした。
パルテノスを消し去り、あるべき世界へと戻す。全ての元凶、クロノスを消し去るのだ。
「今ある世界を消し去るというのか?いいのか?私が消滅すれば世界にある魔族達の力は緩やかに失われ、やがては有るべき星へと退化するのだぞ」
クロノスはそう言った。クロノスの言ってることは間違いでは無いのだろう。
だが、ルミナスには確信があった。
「世界にいる者達を舐めるな!彼等は…魔法や霊術が無くても…未来を切り開ける!」
「いや、人は脆い…その弱さゆえに私が生まれた」
「確かにそうなのかもしれないわね。けど…その弱さがあるからこそ、見えるモノだってある」
「本気か…バカか!?止めろ!」
クロノスが動揺する。
「貴方は…私と共に地獄へ堕ちるのよ…自身が神だと思い上がり、弄んできた貴方と…そして、貴方と同じ大罪を犯した私…共に地獄へ堕ちるのに相応しくない?」
「止めろ!いいのか!?あそこは救いがない…やがて完全に消滅してしまうのだぞ!」
「終わりの無い生なんて空虚なだけよ…」
ルミナスはそう言ってクロノスと共に何処かへと消え去った。
「止めろ!止めろろろろろほろろろろろろろろろろこここここて)こそねてまねのそへれー!!!!」
もう…何もなかった。
ルミナスとクロノスは…地獄…つまりは冥界よりも更に奥深くに落ちていき、業火に焼かれて完全に消滅していった。
「…………」
蒼は空を見上げていた。
慧留はローグヴェルトが回収し、緊急治療が行われていた。
蒼の氷により、死は免れたが危険な状態であることには変わり無かった。
だが、蒼にはどうすることも出来なかったし後は無事を祈るだけだった。
「………」
蒼は違和感を覚えていた。
そう、力が無くなっていく感覚だ。
今は緩やかで…当分力を失うことは無いのかもしれない。
だが、世界が変わろうとしていることは何となく分かった。
「俺は…俺のやったことは…果たして正しかったのだろうか…」
蒼がそう言うと意識が闇の中へと向かっていた。
「ここは…?」
「蒼!」
「慧留…」
蒼と慧留が暗闇に立っていた。
「フローフル…」
プロテアもいた。
プロテアだけではない、一夜、美浪、屍もいた。
「お前ら…」
「どういうわけか、気が付いたらここにいた」
「そういうこった。で?これはなんなんだ?」
「俺達にも分からねぇよ」
「でも、私達がここに集まってるってことは偶然では無いですよね?」
「その通りさ!」
上から光が現れ、何者かが現れた。
「アスディア!?」
「久し振りだね!君達!」
「まさかてめぇが俺達を呼び出したのか?」
「その通りだよ♪」
「何の様だ?」
「今は訳あって君達の精神に話し掛けてる。まぁ…まずどこから話せばいいのか…端的に言うとね…」
アスディアは深刻そうに告げた。
「数年後、君達の身体から…霊力、及び魔力が消失し、この世界から魔族がいなくなる。魔族も本来の姿に戻り、無から生まれた者は無へ、動物から生まれた者は動物へと帰る。君達は普通の人間に戻るだけだ…だけど…それによって失われる命も存在する」
「ちょっと待てよ…どうしてそんなことに…」
「ルミナスが神を殺したからさ。蒼と慧留がルミナスを倒した後、ルミナスは『世界宮殿』を破壊し、クロノスを完全に消し去り、道連れにした。それにより、この世界に魔力、霊力、魔族の概念が消滅し、元の世界に戻る…無論…概念の存在である僕も消滅する」
「なっ…」
「ルミナスは…君達ならそれでもなんとか出来るって信じてた。まぁ、ルミナスの判断は正しかったよ。そうしなければこの世界は滅びてたろうからね」
「世界を守る為に…彼女が死んだというのか…」
ルミナスは最後の最後で…世界を守って死んだ。
その衝撃的事実が皆に襲い掛かる。
だが、蒼と慧留はそこまで驚いてはいなかった。
「やっぱり…そうなんだな」
「うん…」
「時神、月影、どういう事だ?」
「俺は…自分の力がどんどん無くなっていくのを感じた」
「私も…蒼と同じ感じだよ」
「まぁ、今すぐ無くなるって訳じゃない。緩やかに消えていく。まぁ、僕はすぐに死ぬから…こうして君達に別れを言おうと思ってね」
「お前はとっくにルミナスに殺された筈だろ!?」
「パルテミシア十二神の中でも僕だけは『世界宮殿』と命が繋がっていて例え肉体が消滅しても魂だけは残るんだよ。まぁ、何もできなくなるのは同じだけどね…それに…『世界宮殿』はもう…滅びた。僕の命も終わりを迎えようとしている」
「アスディア…」
蒼は複雑そうな顔をしていた。
「お?普段は僕に対して邪険に扱うくせに、いざ僕が消えるとなると悲しんでくれるのかい?」
「お前には…借りがある…義理を通す前に死なれて…寝覚めが悪いんだよ…」
「ははは…そういうことか…いや…君は…いや、君達は…僕にちゃんと義理を返してくれたよ…」
「え?」
「僕はね…この世界が嫌いだった…ファンタジーで溢れてたけど…どこか虚ろで…空虚なこの世界が…君達はそんな空虚な世界を壊し、新たな世界を造り出した」
「けど…そこにお前はいねぇ!」
「いや…いるよ…君達の中にね。生きて…この世界の行く末を見れないのは残念だけど…僕の役目……は……どうやら…ここまでのようだ…フローフル…いや、時神蒼、月影慧留、その仲間達よ…辛いこと、悲しいこと、どんな絶望が君達に襲い掛かるか…正直僕には想像がつかない…けど、諦めるな!君達はいつでも、どんな時だって、不可能を可能にしてきた!魔法なんて無くても、君達は強い!生きて!生きて!自分の力で、未来を創って行くんだ!僕は…君達を信じている!」
アスディアがそう言うとアスディアの身体が消え始めた。
「最後の最後で…神様っぽいこと言うなよな…」
「ロクに今まで神様っぽいこと出来なかったからね、最後の最後でカッコつけたかったんだよ。どう?今の僕、イケてるでしょ?」
「ああ、最高にカッコいいよ…神様…」
蒼が素直にそう言うと、アスディアは笑顔を浮かべー
「さよなら…」
そして、アスディアは静かに消えていった。
世界は…滅びずに済んだ。
魔力や魔法の概念が失われ、四大帝国の概念も消え、元の世界へと戻っていった。
それにより、争いが生まれた国、平和になった国、様々な国があったけれど…
新たな世界の幕開けとなった。
To be continued




