【最終章】使徒叛逆篇ⅩⅩⅩⅡー再会ー
「さてと~、彼等は元気にやってるかな~」
ここは冥界、ロキとクリフォトはこの冥界に残り、現世の様子を眺めていた。
「何だ、君も気になってるんじゃあないか」
「クリフォト…君もいたのか…」
「当たり前だ…トキガミアオを送り届けたのだ。そう簡単に世界が崩壊してはつまらない」
「だけど…君の想定より…遥か速くに侵食が進んでる様だ」
「まぁ、こうなることは最初から分かっていた。『世界宮殿』は誰にも操ることは出来ない…例え、何人もの神がいようともね」
そう、今現世では『世界宮殿』暴走による世界崩壊が進んでいた。
ロキは勿論、クリフォトもルミナスが『世界宮殿』を支配した事典でこうなることは分かっていたのだ。
「世界は…どうしようもなく不完全だ。それを無理に完全へと近付けようとするとどこか綻びが出る」
「その綻びは大きくなり、やがて…世界の全てを呑み込む。今の様にね」
「クリフォト…君は本当に…時神蒼と月影慧留がこの滅びの運命を止められると言うのかい?」
「私には分からないよ。私は預言者じゃない。未来のことなど分からない…だけど、新しい未来を切り開くのは、いつだって本気で夢を追い求めている者だ」
「君にしてはやけに情熱的なことを言うね」
「事実さ。私にはそれが無かった。だから、敗れた」
「随分と悲観的だね」
ロキとクリフォトの二人は空を呆然と眺めながら話していた。
運命…というものが本当にあるのなら、クリフォトとロキが負けてここにやって来ることは必然だったのかもしれない。
そして、蒼を現世へ導くことすらも…
「どっちにしろ…私達の役目はもうない。後は…新たな世代の者達が未来を切り拓くのを見届けるまでさ」
「僕はそんなことは御免だね。僕はやりたいようにやる。まずは…この冥界でも支配しようかな」
「随分と大それたことを言うね。それを叶えるにはどれだけの時が掛かるのやら」
「君もさっき言ったろう?何かを叶えることが出来る者は本気で夢を追い求めている者だと」
「そうだね…だが、一人では限界がある。だからこそ、自身の足りないモノを補う何かが現れ、それに惹かれていくのだと今になって思うよ」
「かつてのUSWの独裁者とは思えないね。負けて心変わりでもしたのかい?」
「どうだろうね…」
そんなこと…クリフォトに分かる訳が無かった。
自分の変化なんて自分では中々気が付かないモノだろう。
他人に言われてやっと自覚することの方が多い筈だ。
少なくとも、クリフォトは自分が変わった…などという自覚は無かった。
変わるモノ、変わらないモノ…様々であるが、それでも…クリフォトは…
「私が変わったと言うのなら…それはきっと…彼等に出会ってしまった…からだろうね」
そう、人は変わる…同じ場所にはいられないから…
「変わる…変わらない…下らないね…僕は僕のやりたいようにやるだけさ。僕のやることは今も昔も変わらない」
「好きにするといいさ。私は知ったことでは無い」
「言ってくれるね…まぁ…今は…結末を見てみたい…という気持ちが僕にはある」
「奇遇だね…私もだ。トキガミアオとツキカゲエル…彼等二人がどの様な結末を迎えるのか…私は楽しみで仕方無いよ」
「君と気が合うなんて…僕も末期かな」
ただの気まぐれ…それだけだ。
ロキは何も変わってなどいない。
クリフォトもロキも同じ蒼のだった。しかし、目的も信念もまるで違っていた。
少し違えば、ロキとクリフォトが敵同士になっていたのかもしれない。
今回はたまたま、二人の利害が一致し、協力したに過ぎない。
「この冥界は時は流れず、空間は捻れ、何もかもが規格外の虚無の世界…この世界に来た者は絶望しか無い」
「…と、皆思い込んでいる」
「実際、そうだよ」
「だが、僕はそうはならない。この冥界を支配する…必ずね」
「それに…意味などあるのかい?」
「意味?意味など無い。イチイチ何かをするのに理由なんて求めてたら何も出来ない」
「君の理論ではそうかもしれないが…戦いには理由が必要だ。理由の無い戦いなど何の利益もない…ただの潰し合いだ」
「僕は…その潰し合いに価値を見出だしている」
「君の最も恐ろしいのは力ではなく…その思考回路…ということか…」
「言ってくれるね…僕に言わせれば君も十分イカれてるよ」
そう…なのかもしれない。
二人ともイカれてる…ある意味、ロキの言ったことは的を射てるのかもしれない。
だが、今となっては無意味な語らいだ。
そもそも、二人がこうして話していることにも果たして意味があるのやら。
「そうか…まぁ、いい。私は…彼の…いや、彼等の結末をゆっくりと見届けるとするよ」
「そうだね…僕らには時間は無限にある。だがどうする?もしかしたら、君の思惑通りにはならないかもしれない…月影と時神は死ぬかもしれない…いや、それどころか世界が消えるかも」
ロキはニヤリと嗤いながらそう言った。
実際、蒼と慧留がルミナスを止めなければ世界は崩壊する。
ロキにとってはどうなろうが知ったことではないが、クリフォトはそうではない筈だ。
何故なら、世界が滅びるということは、クリフォト自身が見出だした慧留が死ぬということを意味するのだから。
「そうだね…そうならないことを祈るよ」
「悪魔の王が神頼みとは…」
「私は…人間だよ。弱くて卑しくて…卑劣な手段を使わなければ生きてはいけない、弱い…人間だよ」
クリフォトはそう呟いた。
「はぁ…はぁ…」
「これは…ちょっとだけ…ヤバイかも…いくらなんでも多過ぎ…」
ローグヴェルトとジェラートの二人でどうにかして食い止めていたが、流石に兵力の数が多過ぎる。
神聖ローマ、USW、ヘレトーア、この三大国の総力が二人に襲い掛かっているのだ。
その数は数十万にも登り、いくら二人でも圧倒的な数の力には抗えない。
それでも二人で半数近い兵力を減らしたが最早限界が近かった。
「ようやく…か…これで…終わりだ!」
フランがそう言うと兵士達が一気にローグヴェルトとジェラートに襲い掛かる。
「【氷魔連刃】」
ローグヴェルトとジェラートの周囲の地面から無数の氷のやいばが出現し、兵士達を蹴散らした。
『!?』
一同は驚愕した。
ただ、一人を除いて。
「遅いよ…フローフル…」
ジェラートがそう言うとローグヴェルトとジェラートの前にフローフル…時神蒼がやって来た。
「なっ…フローフル…だと…?」
「どうやら…間に合ったみたいだな…」
ローグヴェルトだけではない、フランやUSW、ヘレトーアの者達も驚愕していた。
「生きて…いたのか…」
「まぁ…そういうことだ…【再起動】」
蒼は二つの刀を重ねた。
「【第二解放】」
黒い衣服に氷の羽衣、霊力でできた黒い翼が展開されていた。
右手には蒼色の刀、左手には黒い刀が握られていた。
「【氷天黒救世楽園】!」
多くの兵士達が蒼に襲い掛かる。
「【氷菓神刀】!」
蒼は一瞬で多くの兵士達を吹き飛ばした。
『ぐあああああああ!!!!』
たったの一撃で殆どの兵士達がやられた。
「馬鹿な…」
「時神のヤロー…前より強く…!」
スープレイガが歯軋りしていた。
「ジェラート…慧留は城の中か?」
「ああ、慧留は今、城の中にいる筈だ」
答えたのはジェラートではなく、ローグヴェルトであった。
「そうか…」
「行くんだね?」
「ああ…」
蒼は天使城に向かおうとする。
「待て!フローフル!」
しかし、ローグヴェルトが蒼を呼び止めた。
「ローグヴェルト…」
「お前の起こした戦争で…俺は一度全てを失った…!俺は…お前を許すつもりは…ない!」
ローグヴェルトは蒼がきっかけでおこしたローマ聖戦で一度命を落とし、慧留と離れることとなった。
ローグヴェルトはこの時、全てを失った。
だが、ルミナスによってローグヴェルトは生き返り、再び歩み出した。
この時、ローグヴェルトはルミナスの歩む道こそが正しいと思っていた。………いや、そう言い聞かせていたのかもしれない。
もし、再び全てを失ったら…そう思うと…
「………」
「だが、慧留は…お前と共に歩み、変わった!あいつは…お前を友と言った!だから…今回だけだ…今回だけ…俺は…慧留が信じるお前を信じる!必ず…慧留と共に戻って来い!」
ローグヴェルトはそう叫んだ。
「俺の仲間にも…アンタと同じことを言ってたよ」
蒼は笑いながらそう言った。
そしてー
「ああ、絶対…生きて帰る。慧留と一緒にな」
蒼はそう断言して、天使城へと向かっていった。
「君にしては、随分と飾り気の無い、ストレートな物言いだったね」
「別に…普段から意識していた訳ではない」
そう、かつてはローグヴェルトは自分のやるべきことが…分からなくなっていた。
だが、慧留と戦ったことで、少しだけ…自分のやるべきことが見えてきた気がした。
ローグヴェルトは今まで、ルミナスに従うだけであった。
自分では何も考えず、ただただ、人形のように、命令に従っているだけだった。
慧留と戦って…それからローグヴェルトは自分が何をすべきかとずっと考えていた。
そして…一つの答えに辿り着いた。
「俺は…あいつの…慧留の夢を共に追い掛ける…俺自身のやり方で」
誰かに従う訳でもない、ローグヴェルトは自分の意思で、決めたのだ。
自分の道は自分で決めるモノだ。用意された道筋を辿っていても自分の満足の行くモノには絶対に辿り着けない。
「蒼は…不思議だよ…」
「そう…かもしれんな…あいつは誰かを変えていく力があるのかもしれないな…」
そう…蒼の歩いていった道が…軌跡が…慧留を…多くの人々を動かしてきた。
そして、今へと繋がっている。
世界とは一本へと繋がっていく。最初はバラバラでもやがて一つへと繋がっていくのだ。
進んできた道は必ず繋がっていく。
「セラフィム騎士団は…確か皇帝の為に全てを捧げ、皇帝の為に死ね…そんな掟があったね」
「………」
セラフィム騎士団はローマカイザー皇帝を守る為に作られた組織だ。
ならば、セラフィム騎士団は皇帝の盾であり、剣でもあり、踏み台でもある。
皇帝さえ生きていれば、何度でもやり直せる。だからこそ、セラフィム騎士団さ皇帝を絶対に守らねばならない、そんなルールだ。
「けど…皇帝を守っても…この状態だよ…ならば…皇帝の存在意義って何だろうね?」
ルミナスは今や世界を崩壊へと導く者となってしまっている。
本来、戦いとは、自分が生き残る為に戦うモノの筈だ。
なのに、自分が死ぬ為に…彼等は戦っている。
それが、例え、自分の意識したことで無かったとしても。
暴走は止まらず、更に激しさは増していき、最悪の結末を迎えようとしている。
終わらせなければならない、誰も好きで世界の終わりを望んでいる筈がない。
「掟とは…自分の存在意義ののようなモノだと思っていた。掟を守っていれば自分は大丈夫だ。逆に破れば安寧を失われると…そう思っていた。だが…違った」
「何が言いたいの?」
「掟とは…法とは自分を守る為のモノなんかじゃない。自分を…戒める為のモノ。自身が悪に走らない様にする為のモノだと…」
そう、掟を守った所で自分を守ってはくれない。
何故なら、掟を…ルールを定めるのは人を戒める為、社会に皆が協調して生きていく為のモノなのだから。
その掟が間違っているのなら、或いはそこに穴があるのなら、守ってはくれない。
掟とは己が正しく進める様にする、地図の様なモノだ。
何事にも完璧など存在しない。どんなことも不完全であり、間違いや過ちは必ず存在する。
ならば、掟にも間違いは必ずあるのだ。
その間違いを正し、変えていくのも、また掟であり、人間が…いや、この世界に意思を持つ者達が誰もが出来る力なのだ。
だが…完璧で無いことは不完全で曖昧で…不気味で歪なモノなのかもしれない。でも不完全で曖昧で…不気味で歪であるからこそ、そこから生まれることだって必ずある。
「俺は…希望が必ずあることを信じたい。今はそう思う。希望を持つことが間違いだと言うのならそれはそうなのかもしれない。けど、俺は信じ続ける」
「そう…君、変わったね…けど…私は変わらない。私はこの世界に希望があるとは思えない。今はフローフルに協力してるけど、私の思いは変わらないよ」
「そうか…」
「何だよ?」
「いや、本当にただの気まぐれで協力してるだけなのかと思っただけだ」
「私をそんなツンデレキャラみたいに思われても困るんだけど」
ジェラートは嫌そうな顔をしながらそう言った。
まぁ、確かに今までのジェラートなら、蒼がいたとしても協力さえしなかっただろう。
ジェラートも少しだが変わりつつあるのかもしれない。
それは小さな変化かもしれないがそれはやがて大きな変化となっていく。
誰も劇的な変化をする者などいないのだろう。
少しずつ、少しずつ、変わっていき、それがやがて大きくなっていく。
それが、変わっていく…という事なのだろう。
成長していく…という事なのだろう。
この世界は変化していく。変化の無い世界は停滞した世界…何も無いのと同じだ。
それは…とても退屈で…とても嫌で…だからこそ、人は明日を求めるのだろう。
進むことを止めないのだろう。
ローグヴェルトとジェラートは青空を見つめていた。
蒼は天使城の中へ入っていた。
そして、ルミナスの霊圧を辿って進んでいた。
ルミナスだけではない、慧留の霊圧も感じる。
二人の戦いは既に始まっていると思っていいだろう。
「慧留…ルミナス…」
蒼は今までのことを思い出していた。
フローフルにとっての全ての始まりは雪原でのエリシアとの出会い、そこから全てが始まった。
フローフルはルミナスと出会い、ルミナスとフローフルの運命はここから大きく変わっていった。
インベルやアポロ、師匠であるミルフィーユと出会って、力を付けていった。
しかし、様々な思惑、憎しみ、妬み色々な思いが重なり、ローマ聖戦が起こり、多くの人が死に、フローフルはジェラートに助けられたが死んだも同然であった。
やがて、フローフルは十二支連合帝国へと逃げ込み、時神蒼と名前を変え、新たな道へと進む事となった。
そして…蒼の運命を大きく変える出会いがあった。月影慧留…彼女との出会いだ。
昔の友であった一夜と三人で協力して学校生活を過ごす、常森澪を始め多くの人達と出会った。
しかし、平穏は訪れなかった。天草屍率いる「アザミの花」と十二支連合帝国が全面戦争となった。
その後、屍と協力して閻魔率いる十二支連合帝国の中枢と戦うこととなった。
更に月日は経ち、屍達が仲間となりその後すぐに慧留がUSWに拉致され、USWと全面戦争となった。
それから三年の時が経ち、蒼は新たな道を模索している中、アザゼルが四宮舞を利用して悪事を働いていた。
しばらくしてプロテア・イシュガルド達、イシュガルドの過去を知り、蒼と慧留はそれぞれ奔走する事となった。
その後、イシュガルドの因縁に決着を着けるべく、ヘレトーアへと向かった。
それからしばらくしてパルテミシア十二神であるイシュガル・ポセインドン・パルテミシアがプロテアを巡って争う事となった。
イシュガルの件の決着後、蒼は自身の過去を話す事となった。この時、蒼は初めて慧留達を本当の仲間と思えたのかもしれない。
その後、プラネット・サーカスの一人である擬流跡土が蒼達に襲い掛かる。そして、十二支連合帝国は壊滅した。
これにより、史上初の四大帝国の連合組織が作られ、プラネット・サーカスを迎え撃った。勝つことは出来たが多くの者達が仲間となり犠牲となった戦争であった。
そして、今から二年前、ルミナスが世界に挑んだ。蒼達はそれを止めようとしたが結局止められず世界を支配され、蒼は冥界へと放り込まれた。
蒼はその後、かつての敵達と力を合わせ、冥界から脱出に成功し、仲間達とも合流した。ただ一人を除いて。
「慧留…必ず…お前を助けにいく。お前はここで死んでいいタマじゃねぇ」
そう、蒼は知っている。慧留の強さを蒼は知っている。慧留は誰よりも強い心を持っていることを。
「だからもう…負けない…」
慧留とルミナスとの戦いが続いていた。
今の所、ほぼ互角に戦っていた。
「ルミナス…」
「慧留…!」
慧留は悲しそうな顔をしていたのに対し、ルミナスは怒りに燃えていた。
この戦いに果たして意味などあるのだろうか。
「何よ…その眼は…!私を…哀れんでるつもり!?貴女は…いつもそう…私を見る時…私を哀れむ様な眼で見る…!」
ルミナスは今まで誰かに羨まれることはあっても哀れまれたことなど無かった。
慧留はルミナスが今まで出会った者の中で誰にも該当しない異質な人物であった。
「別に…哀れんでるつもりな無いよ…けど…君の気持ち…分かるよ」
「同じよ!分かったような口を利くな!」
「貴女はずっと一人で…蒼が唯一の救いだった…その蒼はいなくなった…貴女は…一人になってしまった」
「黙れ…!」
「貴女はずっと…ずっとずっと…!助けを求めてた!だから…私が君を…!助けるんだ!」
「うるさい!うるさい!貴女が私に出来ることは、世界の為に死ぬことよ!!!!」
ルミナスがそう言って慧留に斬りかかる。
その時ー
「【氷水天剣】!」
氷の斬撃がルミナスに襲い掛かるがルミナスは氷の斬撃を消し飛ばした。
「え?」
慧留はそう呟いた。何故なら…慧留の目の前に現れたのはー
「あ…お……」
時神蒼が慧留とルミナスの前に現れた。
「フローフル…生きてたのね…」
蒼は慧留の方を見た後、ルミナスの方を見た。
「ああ、まぁな。それにしても…どうした?ルミナス?随分と顔色が悪いぜ?」
蒼は煽る様にそう言った。
「貴方には関係無いわ」
「あるね。お前はいつもそうだ…一人で何でも出来てしまうから…誰かを頼ろうとはしない」
「私は全てを掴める。だからこそ、私一人で…」
「やっぱ、お前はバカだな!」
「何ですって…」
「無理なら…誰かを頼ればいいんだよ。助けを求めてるなら…差し伸べられてる手に手を伸ばせば良いだけだ。お前にはそれが出来ない…誰かを頼るのが怖いからだ」
「フローフル…私は過去は切り捨てた。もう一度私の邪魔をするなら…私は貴方も慧留も殺す!」
「俺は死ぬつもりもねぇし、慧留も殺させねぇ。そんでもってお前も助け出すさ」
蒼は笑顔でそう言った。
何だろう、今の蒼に、焦りが全く感じない。
これから世界の命運が掛かっている。にも関わらず、蒼は非常に冷静であった。
「蒼…」
「慧留…力を貸してくれ。二人であいつを止める!」
「それは構わないけど…何で蒼は生きて…」
「話は後だ。速いとこケリつけねぇと、世界が危ないしな」
蒼はそう言って刀を構えた。
よく分からないが慧留は今の蒼をとても頼もしく感じた。
今までの蒼は焦ることが結構あったし、いつも必死でイッパイイッパイな感じだった。
だが、今の蒼は必死なのはそうなのだろうが焦りや焦燥感を一切感じなかった。
「慧留、その…何だ…心配かけて悪かったな」
「全くだよ…ほんっと…」
慧留は蒼に近付きー
「生きてるなら生きてるって速く言ってよ!二年間どこほっつき歩いてたんだよ!」
慧留は蒼の頭を殴り付けた。
「はぁ!?」
蒼は驚愕の声を上げ、ルミナスですら呆気に取られていた。
というか、あの慧留が蒼を殴ったのは初めてかもしれない。
「悪かったよ!それについては後で話すから!」
「絶対だよ!」
蒼と慧留はルミナスの方を見た。
ー何故…何故なの…?何故…慧留なの…?蒼の隣にいるのは…
ルミナスは怒りの形相を浮かべていた。
ルミナスの方が蒼のことを思っていた筈だ。
なのに、蒼は慧留の所にいる。
蒼だけではない、慧留の周りにはいつも仲間がいる。
ルミナスは慧留の周りに多くの仲間がいる幻覚が見えた。
かつて、慧留の敵だった者達ですら、慧留の後ろにいる様に見えた。
ルミナスはどうだ。ルミナスの後ろには誰もいなかった。誰一人として…いなかった。
慧留も最初は一人だった。だが、蒼と出会い、一人では無くなっていった。
多くの繋がりが生まれた。
ルミナスはずっと一人…一人で居続けることこそが…この世界の憎しみを全て自分一人で受け止める…それが正しいことだとルミナスは思っていた。
ルミナスは蒼さえいれば、何も要らない。そう…思っていたのに…
ーこの…この私が…誰かを…慧留を羨んでいるというの?
そう、常に変化するのがこの世界で、魔族で、人間であるのなら、ルミナスも変化を続けるのだ。
ルミナスも…変わり始めていたのかもしれない。
だが、ルミナスはそんなことを認めたくなかった。
ルミナスは…月影慧留を…否定したい!
「時が流れ…変わり続けるのがこの世界の摂理…けど…私は変わらない…フローフル…いえ、時神蒼、月影慧留…貴方達を殺して私は闇の世界に踏み込むとしましょう…」
ルミナスはそう言って剣を構えた。
「悪いけど、お前の思う様にはならない。何故なら…お前も俺達の所へ…連れて帰るからな!」
「そうだよ!私達は君を絶対に助ける!救って見せる!」
二人の言葉は祈りの様にも誓いの様にも感じられた。
確かに、彼等には見えない力があるのだろう。
それは、ルミナスの思っているより大きくて強大なモノなのかもしれない。
だが、慧留は今まであらゆる事に負けたことは無いし、この先もない。
今、ルミナスはかつてない程にまで負けの一歩手前まで追い込まれてはいるが、結局は勝つのはルミナスだ。
最強はルミナス、全てを掴むのはルミナス。
この世の勝利者は…たった一人…たった一人なのだ。
生き残った者が勝利し、負けた者が死ぬ。
弱肉強食、この世の唯一絶対の摂理、だからこそ、ルミナスは絶対に負ける訳には行かない。
ルミナスを出し抜く事など、例え神であったとしても出来はしない。
実際、ルミナスは神を撃った。
その神を撃ったルミナスがたった二人の魔族に負ける筈などない。
負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。勝利するのは私。
「私には未来が見える!!!絶対に負けない!!!!!」
これが本当に、ルミナスとの最後の戦いだ。
To be continued




