【最終章】使徒叛逆篇ⅩⅩⅩⅠーVerräter noir 3ー
「はああああ!!!」
「らああああ!!!」
蒼とインベルは刃を交えた。
しかし、押しているのは蒼であった。
インベルの炎は蒼の氷により全て凍らされていた。
「くそ!」
「インベル…」
「フローフル!ここから先はゼッテー行かせねぇ!」
「ああ、わざわざ通してくれ…なんて野暮なことは言わねぇよ!【第二解放】!」
蒼は【第二解放】を解放した。
白い衣に氷の翼が展開されていた。
「【第二解放】!」
インベルも【第二解放】を解放した。
赤い炎の翼に巨大な赤い大剣が握られていた。
「【アルカディアの氷菓】!」
「【天炎緋血】!」
蒼とインベルは再び激突した。
しかし、圧倒しているのは蒼の方であった。
蒼の刀はインベルの大剣に触れた瞬間、インベルの大剣を凍り付かせていた。
「くっ!?【炎天血剣】!」
インベルは大剣から炎を発生させ、蒼の氷を溶かし、そのまま斬りかかった。
「【氷菓天刀】」
しかし、蒼はインベルの身体を凍り付かせた。
「………」
蒼はそのままここから離れようとした。
「待て!」
しかし、インベルは蒼の氷を炎で溶かし、大剣を巨大銃に変化させていた。
「【炎魂砲撃】!!!」
インベルは巨大銃から炎の砲撃を放った。
「【氷零双翼刃】」
蒼は霊呪法で完全にインベルの一撃をガードした。
「ふざけんなよ…フローフル…手ぇ、抜いてんじゃねぇよ!!!」
インベルはそう叫んだ。
そう、インベルは気が付いている。
蒼が本気で戦っていないことを。
インベルにとって、それが一番許せないのだ。
「俺は手を抜いてるつもりはねぇよ」
「嘘つけ!終始余裕そうな顔しやがって!今すぐにでもそんな顔出来ねぇ様にしてやるよ!」
インベルは蒼と昔は互角だった筈だ。
なのに、今となってはここまで差が開いてしまっている。
インベルはそれが何よりも嫌なのだ。
だからー
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
インベルは大剣に変え、蒼に突っ込んでいった。
蒼はインベルの攻撃を刀で防いだ。
しかし、蒼はインベルを凍らせようとしてもインベルの炎は凍ることは無かった。
「!?」
逆に蒼の衣服が燃え始めていた。
蒼はすぐにインベルから離れた。
そして、蒼は自身の衣服を燃やしている炎を凍り付かせた。
「もっと…もっとだ!」
インベルはそう言って蒼に斬りかかる。
蒼は霊呪法を駆使しながらインベルの攻撃を防ぐ。
ーインベルの奴…どんどんパワーが上がってやがる!?
そう、インベルの力がどんどん強くなっているのだ。
インベルの炎の力の力は活性化。
炎が燃えれば燃える程、本体の力を増大させる。
全てを停止させる蒼の力とは対となる能力だ。
「【炎焔血帝剣】!!!」
インベルの強烈な一撃が蒼に襲い掛かる。
蒼はインベルの一撃を防ぎきれず後方に吹き飛ばされた。
「くっ!?」
更にインベルは炎をチャージし、炎の砲撃を放った。
「【炎帝王血大砲】!!!」
「!?」
蒼はインベルの砲撃をまともに受けた。
「はぁ…はぁ…」
インベルも流石に力を使い果たしたのか片膝をついた。
「やるじゃねぇかよ…インベル…」
「!?」
蒼はインベルの炎を完全に凍らせていた。
「嘘…だろ…」
インベルは全力で攻撃した。
なのに、蒼の身体には殆どダメージが無かった。
「本気を出さなかったら今のはちょっとヤバかったな…だからこそ…全力でお前を倒す。【氷天黒救世楽園】!!!」
蒼は二振りの刀でインベルに攻撃した。
インベルは反応することすら出来ず、エンゲリアスを折られ、そのまま吹き飛ばされた。
「が…」
インベルはそのまま意識を失った。
取り敢えずは、命に別状は無い筈だ。
「悪いな、インベル…俺は…ここで止まる訳には行かないんでな。先に行かせて貰うぜ」
蒼はそう言い残して天使城へと向かっていった。
「くっ…流石にこの数はキツいな…」
ローグヴェルトはセラフィム騎士団、更にはUSW達を相手にしており、更に増援にヘレトーアの神官、ルバートまで来ていた。
ローグヴェルトは間違いなく、一対一ならばまず負けることは無い。
だが、ローグヴェルトの能力の都合上、数によるごり押しに弱い欠点がある。
慧留に敗れたのもそれが原因でもあるのだ。
「そろそろ…終わりが見えてきたか」
「さっさと終わらせるぞ!」
フラン達が一斉にローグヴェルトに襲い掛かる。
「………っ」
しかし、フラン、エクレア、ミルフィーユの三人は謎の弾丸に撃ち抜かれ、吹き飛ばされた。
「なっ!?」
他の者達が動揺した。
「随分と手こずってるね~。加勢しようか?」
「そうして貰えると助かる…」
やって来たのは…ジェラートであった。
「ジェラートだと!?」
「うあっは~、またまた厄介なのがやって来たね~」
ルバートがそう呟いた。
「それにしても…これだけの数を一人で相手にしてたなんて…セラフィム騎士団元団長さんも無謀だね~」
「そうするしか手段が無かったのでな」
「随分とバカなことをするようになったじゃん?それも…月影慧留の影響?」
「かもしれんな」
「そっか…で?この絶望的状況をどうする?取り合えず三人は不意打ちで倒したけど、それでも数に圧倒的に差があるよ」
「それでもやるしかない」
「そうだね…あっちが量ならこっちは質さ♪」
「それにしても…お前も『世界宮殿』に支配されていなかったんだな」
「まぁね…あー、それと君達に朗報。フローフルがもうすぐここに来るよ」
「!? 死んだ筈では…」
「まぁ、色々あってね…取り合えず生きてるよ」
蒼は二年前のルミナスとの戦いで死んでいる筈だが…まさかあの状態で生きていたとは。
「そうか…ならば尚更奴が来れるように道を作ってやらねばな」
「はー、やっぱりそうなるのか…」
「まさか…あなたと共闘する時が来るなんて」
「それはこっちの台詞だよ。ぶっちゃけ、私達、敵対フラグばっかり建ててたし」
ジェラートがよく分からない発言をしていたが取り合えずローグヴェルトは目の前の敵に集中することにした。
「さぁ、始めようか!パーティの時間だ!」
「パーティね…そんな楽しいモンじゃねーがな!」
ジェラートとローグヴェルトは目の前の敵達と戦い始めた。
「どんどん敵が増えていくね…これは休む暇は無さそうだ」
そう、戦いが長引く程、増援はやって来る。
幸い、十二支連合帝国の者は殆どいなかったが、それでも相当の数であった。
「一気に叩き潰したい所だが…」
「そうだねー。じゃあ、一気に叩こう」
ジェラートがそう言って銃撃を空に目掛けて放った。
「【終焉乃一撃】」
金色の弾丸が空を貫き、そこから黒い穴が出現した。
「なっ!?」
ドラコニキル達は驚愕した。
その黒い穴に多くの者達が引き寄せられ、その瞬間に黒い穴が爆発した。
『ぐああああああああ!!!!』
多くの兵士達がそのまま吹き飛ばされ倒れた。
「メチャクチャするな…お前は…」
「これくらいやらないと一掃出来ないんだよ。君の能力は確かに強力だけど集団戦には向かなそうだし」
「お見通しという訳か…」
「さてと…今ので半分くらい倒したけど、強い奴等は殆ど残ってるね」
ジェラートはそう呟いた。
そう、まだまだ敵の数は多いのだ。
言ってしまえばジェラートとローグヴェルトは神聖ローマ、USW、ヘレトーアの全軍を敵に回しているようなモノだ。
十二支連合帝国はいない。誰かが止めてくれているのかもしれない。
数の力はどんな力にも勝る恐ろしい力だ。
どんなに優れた能力を持っていても数の力にも掛かれば全て押し潰されてしまう。
「いくらお前でもそう長くは保たないだろう」
「悔しいけどそうだね…流石にこの規模の兵力を片付けるのはきついね…けど…時間を稼ぐことなら出来るよ!私達のやることはなるべく時間を稼ぐこと!」
「そうだな…あいつらの為にもな」
そう、慧留は今、ルミナスと戦っているのだ。
そして、蒼もその戦いに参戦しようとしている。
ローグヴェルトのジェラートに出来ることはその二人の道を作ってやることだ。
「それにしても…意外だな」
「え?何が?」
「お前は誰かの為に戦うような奴には見えなかったのでな」
「さらっと酷いこと言うね、ローグヴェルト。………ま、そうだねー、私は面倒なこと嫌いだし、誰かに手を貸すのはあんや好きじゃないけどー、フローフルは別なんだよねー」
「フローフル…時神蒼…慧留とお前を…いや、世界を変えた男…」
そう、ローグヴェルトを元に戻したのは慧留だが、その慧留を変えたのは蒼だ。
蒼には不思議な力がある…ローグヴェルトはそう感じずにはいられなかった。
蒼はこれまで慧留を始め、多くの人々の心を変えてきた。
それはジェラートも例外ではなくそして、その力が今、大きな変革をもたらそうとしている。
この世界の変革…ルミナスとはまた違う世界が…そんなことを予感させてくれる。
とは言え、蒼本人はそんな大それたことは考えていないだろうが。
蒼の生き様が、軌跡が…多くの人の心を動かし、そして今尚色々な人々の心を動かしている。
蒼は今、この世界に必要な存在となっている。
暴走して、自信でもどうすればいいのか分からなくなっている、ルミナスを止める可能性がある唯一の存在。
時神蒼と月影慧留、この二人がこの世界を導く二人となるだろう。
ルミナス一人ではそれができない。いや、一人で何もかも全てをこなすなどということは誰であっても出来ないのかもしれない。
それが例え、あらゆることに負けたことが無いルミナスであってもだ。
だからこそ人は他人を頼り、そして力を合わせて今まで戦ってきた。
魔族だってそれは例外ではない。魔族だって心を持っていてそんな人間の心から生まれてきたのだから。
人も魔族も関係ない。それぞれの信念を持って、今日を生きている。
他者の為に変われるのが人間だ。ならば、魔族にだってそれが出来る。
ルミナスだって、変わることが出来るかもしれない。
「さぁ、僕らはどうにかしてあいつらを止めないとね」
「言われなくても分かっている」
ローグヴェルトとジェラート二人をもってしてもこの数を全員倒しきることは不可能だ。
だが、それでも時間稼ぎには十分になる。
ならば、ローグヴェルトとジェラートのやることは一つだ。
出来る限り時間を稼ぐことだ。
「我ながら…損な役回りになったな~」
「今更嘆いても遅いぞ」
「分かってるよ…」
ジェラートは溜め息混じりにそう言った。
こうなってしまっては仕方がない。
ジェラートは出来る限りのことをするしかない。
そもそも、どうしてこうなった?
最初からこんなことに巻き込まれるなんて望んでいなかった筈だ。
やはり、蒼がそうさせているのだろう。
ジェラートは別世界の空間に行くことが可能だ。
こんな面倒なことをせず、逃げていればいいだけの話だ。
だが、ジェラートはそうはしなかった。
蒼が必死でこの世界を守ろうとしている。
ジェラートにこの世界に何の執着も無かったが蒼がこの世界を守ることを望んでいる。
蒼だけではない、この世界に生きる者達は皆、この世界に抗って生きている。
ジェラートも最初はそんな者達を見て、無意味だと諦観していたが蒼と出会い、それが変わっていった。
生きていれば人は変わるもの…ジェラートも例外ではなかった。
ジェラートも蒼と出会い、変わっていった者の一人なのだ。
蒼を見ていると、自分も共に戦いたい…そう思わせる程の何かが蒼にはあるのだ。
だからこそ、ジェラートは陰ながら蒼を助け続けていたのだ。
そして…今回だって…
ー自分のやっていることが本当に正しいのかなんて…誰にも分からない。ならば、自分の信じる道をとことん進むしかない!
そう、何が正しいのか、間違っているのか、それは後にならなければ分からない。
いや、永久に分からないことだってあり得る。
もしかしたら、今、蒼や慧留達のやっていることだってもしかしたら間違っているのかもしれない。
それでも、ジェラートはローグヴェルトは二人を信じると決めたのだ。
ジェラートとローグヴェルトは敵をどんどん倒していっていた。
しかし、それでも数は減らず二人に襲い掛かる。
だが、二人はその程度では決して諦めない。
「俺は…絶対に諦めん!」
「私もだよ…約束…したからね…」
ここは、十二支連合帝国。
十二支連合帝国も神聖ローマで騒ぎになっていることは知っているが動けずにいる。
それは何故かと言うとー
「結界はいつまで持ちそうだ?」
「分からないわね…取り合えず今の状態を続けるしか無いね」
屍と澪はそう言った。
そう、澪、屍、美浪、プロテアの四人で十二支連合帝国全域に結界を張っており、十二支連合帝国から国外へ移動出来なくなっていたのだ。
彼等もまた、ルミナスにより洗脳されていたのだが、慧留の力で元に戻すことが出来た。
そして、彼等なりに出来ることを考え、その結果が十二支連合帝国民全員の足止めだ。
十二支連合帝国の者が神聖ローマに来ないだけでも向こうはかなりの戦力を削げる筈だ。
「だけど…このままずっとは流石にきついよ…」
「そうね…霊力がいつまで保つか…」
美浪とプロテアがそう言った。
十二支連合帝国全域に結界を張るだけで相当な霊力が消耗するというのにそれをたったの四人で半日以上も張り続けていた。
しばらくは大丈夫だが、あまり長くなると保たない。
「苗木!何か打開策は見つかりそうなのか!?」
「今探しているよ…」
一夜は今の状況を打破する為の方法を考えている。
ただ考えているだけでなく、自身の能力を使って平行世界に干渉して方法を探っていた。
一夜も結界を張るのに協力してくれればより、長く張っていられるがそれでは何も生まれない。
だから一夜にはこの状況を打開する為の策を考えて貰っていた。なのだが…
「おかしい…平行世界に干渉出来ない」
「? どういうこと?」
「昨日までは出来たんだが…いや…違う…これは……!」
一夜は驚愕の表情を浮かべていた。
「どうした?」
「干渉出来ないんじゃない…無くなっているんだ…平行世界そのまのが…」
「は!?どういうことだよ!?」
「つまり…どういう…ことなんですか…?」
屍も美浪も一夜の言葉の意味が分からなかった。
「滅んでる…そういう訳ね」
「え?」
「プロテアの言う通りだよ…他のこの星の平行世界が完全に消えているんだよ」
「いや…は!? 何でそんな…」
「僕に分かる訳が無いだろう…しかも一つや二つじゃない。何千通りの平行世界が急速に崩壊を始めている…」
一夜がそう呟いていると澪が何かに気が付いた様だ。
「ねぇ?ここから…十キロ当りから…大地が削り取られてるんだけど…」
『な!?』
世界は…崩壊を始めていたのだ。
「まるで…全てを飲み込むブラックホールみたいな…」
「まさか…他の平行世界もそれで…」
「間違いないだろうね…どうやら、『世界宮殿』の影響は平行世界にも影響を与えている様だ。『世界宮殿』の暴走による世界崩壊は他の平行世界にも影響を与え、全ての平行世界が滅ぶ前にどこかの世界で『世界宮殿』の暴走を何とかしないと…完全に世界が滅びる…!」
「そんな…」
「一回でいいのか?」
「ああ、いずれかの世界のどれか一つの『世界宮殿』の暴走を止めれば他の『世界宮殿』がそれに連動する筈だ。この崩壊も…連動している様だからね…」
「それでも…あまり時間が無いだろ!?」
「そうだね…幸い、ここには当分侵食は広まらなそうだけど…それでもこのペースだと後半日後には世界中が崩壊してこの星は…影も形も残らないと思う」
どうやら、あまり悠長にはしていられないらしい。
「一夜!残ってる平行世界にヒントは無いの!?」
「やっている!だが、そもそも残っている平行世界が見つからない!もしかしたら残っているのはここだけかもしれない!」
そう、一夜はずっと残っている平行世界を探していたのだがその僅かな糸口すらも見つからないのだ。
このままではこの星は完全に平行世界ごと消滅してしまう。
世界の終焉は近いのだ。あまり悠長にはしていられない。
「クソ!月影が必死で戦ってる時に…!俺達は何も出来ねぇのかよ!?」
「屍…」
誰も屍を諫める者はいなかった。
それも当然だ。気持ちは皆、屍と同じであったからだ。
慧留の元に今すぐにでも助けに行きたい。
だが、今の彼等はこの十二支連合帝国全域に結界を張り、ここにいる国民達を足止めするだけで精一杯なのだ。
何かをしようにも何もしてやれないのが現状なのだ。
「ここにいたのね」
「!? 薊…!」
「あなたたちが結界を張っていたのね…この結界のせいで、ルミナス様を助けにいけない…悪いけどあなた達には眠っていて貰うわ。あなた達は結界を張る為に身動きが取れない…安心して、命までは取らないわ」
「クソが!」
絶対絶命だ。
薊は暗殺や隠密行動のスペシャリストだ。
屍達にバレない様にここまで近付くのは可能であった筈だ。
このままでは本当にやられてしまう。
実際、屍達は結界を張っているせいで技は愚か、身動きすら取れない。
「! これは…!」
「一夜?どうしたの!?」
「な…嘘…だろ…そんな…!」
「だからどうした!?苗木!?」
「他の平行世界で…蒼が生きている…いや、異空間から突然表れて…まさか…!」
一夜はこの世界全域の霊圧をスマホを使って計測した。
そして、蒼の霊圧を見つけた。
「蒼の霊圧を感じる…!生きている!蒼は今、神聖ローマにいる!」
『!?』
一同は蒼の生存を知り、驚愕した。
「蒼が…生きてる…」
薊も驚いていた。
「取り合えず、蒼をここに呼ぶ!」
「そうだね、取り合えず状況の説明をアオチーにもしないと!」
一夜はそう言ってスマホを介して蒼に連絡を取った。
『一夜…お前なんで…』
「蒼!生きていたのかい!?良かった…本当に…」
『うお!?』
「蒼、君のいる場所にワープゲートを開くから取り合えずそこに来てくれ!」
『ああ、分かった』
「澪君」
「分かったよー」
澪と一夜の能力を合わせ、蒼のいる場所にワープゲートを造り出し、そして、そこから蒼がやって来た。
「蒼…!」
「蒼!」
「時神!」
「フローフル!」
プロテアは蒼に抱き付いてきた。
「プロテア…皆…」
「良かった…本当に…」
「悪い…心配掛けた…」
「本当に…生きて…」
薊も嬉しそうな顔をしていた。
「蒼!確認するけど…ルミナス様の所に行くつもりじゃないでしょうね?」
「ああ、そうだ。俺は…ルミナスに会いに行く!」
「そうはさせない!湊!くる!」
「蒼ちゃん!生きてたなんて」
「時神君…」
薊の後ろから湊とくるが現れた。
「ち…こいつらは洗脳されてるんだったな…」
蒼は改めてジェラートの言っていたことを思い出した。
この世界は大半の者がルミナスによって支配されているのだ。
「蒼!取り合えず彼等を止めてくれ!」
「なっ?」
「後で事情は説明する!」
「分かったよ…このままじゃ話にならなそうだしな!」
蒼はそう言って【氷水天王】を抜き、薊、くる、湊を凍り付かせた。
「な…」
「終わったぜ」
蒼がそう言って刀を鞘に納めると氷が砕け散り、薊、くる、湊は倒れた。
「相変わらず凄まじい力だね…」
「で?今はどういう状況だ。俺は戻ってきたばっかだから詳しく知らねぇんだ」
一夜が事の全てを説明し終えた後、蒼も自身のことを説明した。
「まさか…あのカーシスとアザゼル…ロキまでも力を貸すなんて」
「ま、アザゼルはビビって逃げたがな。ま、危害を加える感じじゃなかった。いざとなれば俺が今度こそ完全に消し飛ばす」
「それにしても…よく戻って来れたね…」
「そうだな」
「随分と冷静だね。今の状況を分かっているのかい?」
「ああ、けど…ビビっててもしょうがねぇ。俺のやることはやっぱ一つだ。ルミナスを止める」
「勝算はあるのか?」
「ああ、まぁな」
ーフローフル?
プロテアだけ、気が付いていた。今までの蒼と少し雰囲気が変わっていることに。
いや、確かに目の前にいるのは時神蒼、フローフル・ローマカイザーだ。
だが、まとっている空気が決定的に違うのだ。
「プロテア?」
「!? 何でもないわ」
「よし!じゃあ…速く行かねぇとな」
「もう一度、僕と澪君で空間を繋ぐよ。座標はコントロール出来たから天使城前に行ける筈だ」
「…何か何でもありだな…お互いに」
蒼は遠い目でそう呟いた。
一夜と澪がいれば世界中どこでも行き放題なのだ。
そりゃ、蒼だって遠い目になるだろう。逃げ場が無いわけだし。
「う…蒼…」
「蒼ちゃん…」
「時神君…」
どうやら、薊、くる、湊の三人は目を覚ました様だ。
彼等は凍らせて気絶させただけなので外傷は見られなかった。
「あれ?何で私達ここにいるんだっけ?」
「そう言えば…」
「……分からないね?」
彼等の様子が明らかにさっきまでとは違っていた。
「もしかして…」
「洗脳が解けてる!?」
プロテアと一夜はそう結論付けた。
「月影だけじゃなくて、時神も!」
「やっぱり…そうか…」
蒼はそう呟いた。
「蒼?」
「って、時神君!?何で!?」
「ちょ…湊驚きすぎ」
「そりゃあ、驚くよ!生きてたの!?」
「ああ、まぁな」
「そっか…そっか…」
湊はそのままへたりこみ、「良かった…」と呟いた。
「二年間どこほっつき歩いてたんだよ!蒼ちゃん」
「悪い、今は急がねぇと行けねぇんだ!」
「そう、なら速く行きなさい」
くるが疑問を問い掛けるが蒼は急がないといけないので構ってられない。
それを察したのか薊も素直に蒼に先に行く様に促した。
「サンキュー。薊」
「ありがとう…か…それはこっちの台詞よ」
「え?」
「時神、薊とくる…そんでここにはいない「アザミの花」のメンバー達を代弁して、俺の言葉で伝える」
「屍?」
「俺達は死ぬ筈だった。或いはテロリストであり続けてただろうな。俺達は間違った道に進もうとしていた。それを引き留め、共に歩いてくれたのは…お前だ!お前が俺達を助けてくれた。だから俺はお前の近くでお前を守るって決めたんだ!俺達は友達だからな!」
「………」
屍は今まで蒼に言えなかった本心を今、初めて語った。
いや、今までも屍と蒼は良き関係であった。しかし、こうして面と向かって本心を打ち明けることは一度も無かった。
だが、こうして面と向かって言われると改めて本当の仲間だと感じる。
繋がりとは、運命とは、全てが繋がっていて…とにかく…それはとても大切なモノで…それでいて不思議なモノである。
そんな不思議な…見えない糸を蒼は感じた気がしたのだ。
目に見えない繋がり、それは歪で曖昧で…今にもすぐにほどけそうだけど…それなのにとても強い。
強いようで脆く、脆いようで実に強い。それが、それこそが繋がりというモノなのかもしれない。
「それは…僕らも同じだよ」
「うん!」
「フローフルが、慧留が、私達をこうして繋げてくれている」
「だから…僕達全員の言葉を受け取ってから、この先の戦場に向かってくれ」
そして、一夜、屍、プロテア、美浪、湊、薊、くるは全員、同じ言葉を口にした。
ここにいる皆は気持ちは同じだ。
自然と皆、同じ言葉を発した。
『絶対に生きて戻って来い!!!!』
蒼は改めて自分は多くの仲間達に助けられていることを感じた。
だからこそ、守りたい。救いたい。
そして、その仲間達から「生きて戻って来い」と言っている。
きっと、蒼と慧留が生きて戻って来なければ彼等は悲しむだろう。
だから、蒼は絶対に死ぬ訳には行かない。必ず、慧留と共に、帰るんだ!
「ああ!」
蒼はそう言って薊と一夜が造り出したゲートを潜っていった。
そして、ゲートは完全に消滅した。
「屍…随分と赤裸々に告白したわね」
「うるせぇ!言うタイミングがここしか無かったんだよ!」
「照れ屋だねー、しかちゃんは」
「うるせぇよ!お前らの分まで代弁したんだろが!」
「そうね、蒼には本当に感謝してるわ」
「ああ、だから、こんな恥ずかしいこと言わせたあいつは、後でボコボコにしてやる!」
「…そだね!」
そう、屍は勿論、ここにいる皆は蒼が無事に帰ってくることを信じている。
蒼だけではない、慧留も一緒に戻ってくるということも信じている。
彼等のやっていることは神への叛逆だ。
そう、蒼、慧留、一夜、美浪、屍、プロテア、彼等全員を色で例えるならば黒だろう。
多くの敵とぶつかり合うことでその者達を仲間にして行き、仲間を味方に付け、混ざり合い、そして何物にも負けない黒となった。
そう、彼等は黒なのだ。
黒い者達による神への叛逆。
神への叛逆を許された唯一の希望。
絶対的白である神に対して絶対的黒でいや、絶対的黒達により、その絶対的白を染め上げていく。
蒼ならば、いや、蒼と慧留、そしてその仲間達ならばそれが出来る。
ここからだ、ここからー
【黒者達の叛逆】の始まりだ。
To be continued




