表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【最終章】天界叛逆篇
186/196

【最終章】使徒叛逆篇ⅩⅩⅩーdesireー

 蒼は今、現世と冥界の狭間でジェラートと交戦していた。

 ジェラートに勝てば本来なら現世に戻るまで数十年掛かるのを二、三年程に短縮させてくれるという事だ。

 蒼とジェラートは現在、互角の戦いを繰り広げていた。


「【黄金破弓(ケルビエル)】」

「【氷水天皇(ザドキエル)】!」


 ジェラートの矢を慧留は凍らせて消し飛ばしていた。


「このままじゃあ…埒が明かないね…【第二解放(エンゲルアルビオン)】」


 ジェラートは【第二解放(エンゲルアルビオン)】を発動した。

 ジェラートの背中に八つの金色の霊力の翼が生えており、巨大な弓が握られていた。

 前見た時より、姿が変わっていた。


「【滅弓矢(シェキナー)】」


 蒼は二振りの刀を重ねた。


「【再起動(ジプノータス)】」


 やがて、蒼の二振りの刀は重なり合い、白い鞘が出現した。


「【第二解放(エンゲルアルビオン)】」


 蒼の身体には黒い衣服に変化し、更に氷の羽衣が纏われていた。

 更に霊力でできた黒い翼が生えていた。

 右手には蒼色の刀、左手には黒刀を持っていた。


「【氷天黒救世楽園(アルカディア・メシアアリス)】!」

「!?」


 ジェラートは蒼のあまりの霊圧の高さに驚愕していた。

 蒼が強いのは知っていた…しかし、ここまで強くなっていたとは。

 というより、前に会った時より別人である。

 これは、最初から本気を出さないと簡単にやられてしまうだろうとジェラートは考えた。


「【吸霊矢(アブゾーブ・プファイル)】」


 ジェラートは周囲の霊力を取り込んだ。

 しかしー


「【氷水天皇の世界(ザドキエラ・ヴェルト)】!」


 蒼が地面に刀を置いた瞬間、この空間ごとジェラートが凍り付いた。

 蒼の氷はあらゆる生物、能力を停止させる能力があり、この空間の流れすらも凍り付かせた。


「くっ!?」


 ジェラートはどうにか氷から脱出したが左腕が氷にやられて壊死していた。

 だが、ジェラートは左腕に霊力の膜を張り、無理矢理左腕を動かした。


「【終焉の滅矢(ドゥームズデイ)】…!」


 ジェラートは極大の矢を放った。

 しかし、蒼はあまり慌てていなかった。

 蒼は黒刀を黒い弓に変形させ、更に右手の氷の刀から矢を造り出した。

 氷の矢から炎と雷が発生していた。


「【氷水天皇の炎雷矢(ザドキエラ・エクリクシス)】!」


 蒼は矢を発射した。

 すると、ジェラートの【終焉の滅矢(ドゥームズデイ)】が一瞬で掻き消え、ジェラートは吹っ飛ばされた。


「かはっ!?」


 一方的であった。

 ジェラートは蒼に手も足も出なかった。

 ジェラートが弱いのではない。

 ジェラートの戦闘能力は【天使親衛隊(フィーア・エンデ)】以上、ローグヴェルトと同格かそれ以上の実力がある。

 蒼が、強すぎるのだ。


「勝負は着いたぜ…お前の敗けだ…ジェラート」

「いや…まだ…まだ…」


 ジェラートはそう言って立ち上がった。


「これ以上はお前が…」

「フローフル…分かってるでしょう?私が最も得意な武器は…弓矢じゃないよ…弓矢に関しては…君の勝ちでいい。けど…」


 ジェラートはそう言って両手を広げた。

 すると、金色の弓が光輝き、二つに分断された。

 ジェラートの両手には金色のリボルバーがあった。


「フローフル…二丁拳銃なら…私は誰にも負けない自身があるよ」

「………」





「いた!?」


 フローフルはそう言って倒れた。


「ふふん♪私の勝ち♪」


 フローフルとジェラートは幼き日の頃、銃の撃ち合いをしていた。

 フローフルは弓矢の扱いはかなり慣れてきており、ジェラートとそこまで差は無かった。

 しかし、銃の撃ち合いをになると話は別であり、ジェラートはフローフルを圧倒し、フローフルはまるで歯が立たなかった。


「くっ…何で勝てねぇ!」

「フローフルは弓矢の扱いはそこそこだけど、銃になるとからっきしだね~」


 フローフルも別に銃の扱いが特別下手な訳では無い。

 だが、ジェラートは銃の扱いが相当慣れており、弓矢の時とは比べ物にならない。


「なら…今度は俺が弓矢を使う」

「それでも私が勝つけどね」


 フローフルとジェラートは撃ち合いをしたがやはりフローフルは如何なる手段を使っても銃を扱ったジェラートには勝てなかった。

 射撃の速度、タイミング、全てが桁違いであった。

 ジェラートは特に二丁拳銃を得意としていたのでフローフルも同じ様に二丁拳銃を使ったのだが二丁拳銃は扱いがかなり難しく、フローフルは二刀流を扱う事が多かったので同じ要領でいけると考えたのだが二丁拳銃と二刀流はまるで勝手が違っていた。

 むしろ、銃に関しては一丁の方が扱いやすいくらいであった。

 弓矢を使ってジェラートに挑んだがそもそも弓矢と拳銃では相性が最悪であり、弓矢は撃つまでに少し時間が掛かるが拳銃は六発までなら連続で撃て、弓矢は一発づつしか撃てないので機動力の面で完全に負けており、勝負にならなかった。


「ヂグジョー!!!」

「ふふん♪まだまだだね~」


 ジェラートは余裕そうにそう言った。

 この時、フローフルはどんな手段を使ってでも拳銃を使ったジェラートを必ず倒してみせると誓ったのであった。






「嫌な事を思い出させるな…」


 蒼はそう呟いた。


『どういう事だ?』


 アザゼルが蒼に訪ねた。


「あいつが最も得意なのは弓術じゃねぇ…見ての通り二丁拳銃が得意なんだよ」

『だが先程までお前が圧倒していただろう?ならば…』

「得意な武器とそうでない武器を使うのとでは天と地程に違う…特にあいつの場合はな…二丁拳銃使ったあいつに勝てた事は…少なくとも俺は一度もねぇし、ルミナスですらあいつと二丁拳銃の撃ち合いを避けてたくらいだ」

『なっ!?』


 そう、ルミナスが二丁拳銃以外の武器を使えば恐らくルミナスの方が上だろうがルミナスが二丁拳銃でジェラートも二丁拳銃の状態だと間違いなくジェラートが勝つ。

 だからルミナスでもジェラートと銃の撃ち合いを避けていたのだ。


「本当の戦いはここからって訳かよ」

「そう言う事だよ。これが…私の本当の力…【黄金天使の二丁拳銃(ケルビエラ・ツヴァイピストーレ)】」


 ジェラートがそう言って銃撃を放った。

 蒼はジェラートの放った弾を凍らせた。

 しかし、蒼の右肩に弾が命中していた。


「くっ!?」

「まだまだ行くよ!」


 ジェラートは銃撃を続けた。

 蒼は二振りの刀で銃撃を防ぐがやはり防ぎきれず身体のあちこちに命中していた。


『どうなっている!?』

「撃った弾の影にピンポイントで弾を仕込んでるんだよ。そのせいで次の弾の弾道が読めずに当たっちまう!しかもあいつの銃捌きによって変幻自在に弾の軌道を変えられる」


 しかもジェラートの撃った弾の威力はかなりのもので蒼の氷を軽々と貫通するだけの破壊力があった。


『さっきみたいに全体を凍らせれば…』

「それは無理だな…その気になればあいつは地面から…ここは地面はねぇけど下から銃弾を撃ってくる」


 蒼がそう言うと本当に地面から銃弾が放たれていた。

 蒼は攻撃を回避するも上には既にジェラートがいた。


「【無限黄金弾丸(シャキナー・メトライトバラ)】」


 光の弾丸が無限に放たれた。


「ぐぁっ!?」


 蒼は刀で弾を弾き飛ばし、凍らせたが間に合わない。

 無数の弾丸が蒼の身体を貫く。


「終わりだよ。【黄金天使の世界調和(ケルビエラ・ラグナロク)】」


 極大の弾丸が蒼に襲い掛かる。

 先程の【終焉の滅矢(ドゥームズデイ)】とは比べ物にならない破壊力であった。

 この暗黒の空間に光の歪みが生まれる程の極大の弾丸。

 これでは蒼もただでは済まない…


「はぁ…はぁ…」


 蒼はジェラートの後ろにいた。

 時間を止めてジェラートの後ろに回り込んだのだ。


「無駄」


 ジェラートは再び弾丸を蒼に当てた。

 しかし、ジェラートが貫いたのは氷の虚像であった。


「【超越神滅剣(エクシード・デーゲン)】」

「甘いよ」


 ジェラートは距離を取ろうとした。

 しかし、足もとは蒼によって凍らされていた。


「!」

「終わりだ!」

「君がね」


 ジェラートがそう言うと蒼の右手に銃弾が飛んできた。


「ぐぁ!?」

「【無限黄金弾丸(シャキナー・メトライトバラ)】」


 無限の弾丸が蒼に直撃した。


「なっ…まさか…」

「そうだよ…氷の虚像を撃ち抜いた時、既に二発撃って弾と弾をぶつけて君の氷とで反射させて君の右手を撃ち抜いた」

『人間業とか神業とかそんなレベルの話じゃない!?銃の扱いとかそういう範疇を越えてる!?』


 アザゼルの言う事は最もであった。

 ジェラートの場合、銃の扱いが上手いとか下手とかそんな次元の話では無かった。

 弾丸を文字通りいのままに自在に操っている。

 遠距離でもダメ、近距離でもダメ…今のジェラートに隙は無かった。


「やっぱり…こうなるか…」


 蒼は立ち上がった。


「まだやる気?」

「ああ…そのつもりだ。近距離がダメなら…撃ち合いしかねぇだろ!」


 蒼はそう言って氷の矢を造ってジェラートに向かって撃った。


「無駄だよ!」


 ジェラートはあっさりと蒼の氷の矢を打ち砕いた。

 しかし、蒼の姿がいつの間にか消えていた。

 恐らく、また時間を止めたのだろう。


「時は動き出す」


 蒼がそう言うとジェラート目掛けていつの間にか周りにあった氷の矢が放たれた。

 ジェラートは全てを撃ち落とした。しかし、死角からの矢は流石に回避しきれない。

 しかし、また銃弾の反射を使ってジェラートは死角からの矢を砕いた。

 蒼はその瞬間、霊呪法を放った。


「【氷零双翼刃(ひょうれいそうよくじん)】!」


 ジェラートは蒼が発生させた巨大な氷の刃翼を再び撃ち抜いた。

 すると、霧が発生し、視界が奪われた。

 だが、それは蒼も同じである。


「!」


 ジェラートは矢を察知し、矢を撃ち抜いた。

 蒼とジェラートはお互いに矢と銃弾の撃ち合いになった。

 時を止めているにも関わらずジェラートは蒼の動きについて来ていた。

 ジェラートの動体視力は完全にプロテア以上であった。

 蒼もジェラートも光速で動き回りながら撃ち合いの応酬が続いた。

 やがて二人は動きを止めた。

 ジェラートも蒼もお互いの顔に銃口を向けていた。

 氷の矢と光の弾丸はぶつかり合い、周囲に轟音が響いた。


「はぁ…はぁ…」

「はぁ…はぁ…」


 二人は殆ど互角の撃ち合いをしていた。しかしー


「がっ!?」


 やはり撃ち合いにはジェラートの方が軍配があった様だ。

 蒼の背中にジェラートの弾丸が撃ち抜かれた。

 蒼はそのまま倒れた。


「フローフル…どうあがいても撃ち合いで私を倒すのは無理だよ…」


 ジェラートがそう言った瞬間、ジェラートは違和感に気が付いた。


「え?」


 ジェラートの身体が動かなくなっていた。


「分かってたよ…撃ち合ってもお前には勝てないと…だから…負ける事にした」

「なっ!?」


 ジェラートの身体は氷の糸により拘束されていた。

 蒼は最初からこれを狙っていたのだ。

 蒼は最初(ハナ)から撃ち合いで勝てないと分かっていた。

 だから打ち合いと見せかけて矢に氷の薄い糸を仕込んでいたのだ。

 ジェラートが気が付かないギリギリの範囲で。

 そして、一通り終えた所で糸の場所に誘導して…


「こうなるって訳さ」

「くっ!?」

「遅ぇ!【超越神滅剣(エクシード・デーゲン)】!!!」


 ジェラートは蒼にバッサリと身体を切り裂かれた。


「うっ!?」

「はぁ!!!」


 蒼は二振りの刀を乱舞した。


「【黒氷天神刀(ハーゲルメラン・ヒメルサイフォス)】!!!」


 氷と黒い波動がジェラートに襲い掛かる。


「ぐぁ!?」


 ジェラートはそのまま吹き飛ばされた。


『やったか!?』

「いや、まだだ!」


 ジェラートは傷だらけになりながらも立ち上がった。


「まさか…これ程とはね…後…一撃撃つのが限界…か…」


 ジェラートはそう言って両手のリボルバーに霊圧を込めた。


『おい!ヤバイぞ!』

「分かってる!」


 とは言え、接近しても間に合わない。

 蒼は黒刀を弓の形に変化させた。


「行くぜ…」


 蒼は氷の矢を造り出し、霊圧を込めた。

 氷の矢と闇の矢を蒼は造り出した。


「ふぅ~ん…まだそれだけの力が…」


 ジェラートは余裕の表情をしていた。

 しかし、蒼もジェラートもかなり消耗しているのは確実である。

 この一撃で全てが決まる。


「【黄金天使の世界調和(ケルビエラ・ラグナロク)】!!!」

「【黒吹雪神矢(セラス・メラニアヴェロス)】!!!」


 氷と闇の矢と光の弾丸が放たれた。

 すると、巨大な爆発が起こった。


「ぐあああ!?」


 吹っ飛ばされたのはジェラートの方であった。


「ふぅ…」


 蒼は【第二解放(エンゲルアルビオン)】を解除した。

 そして、倒れたジェラートの元へと向かった。


「はあ~、とうとう…私が負けてしまった…」


 ジェラートはそう呟いた。

 負けるつもりなど毛頭無かった。

 全力で挑んだ。だが、蒼の前にジェラートは破れた。

 今まで本気を出して蒼に負けた事など無かった。

 蒼はジェラートの想像の遥か先にいた様だ。


「約束だ…」

「わーってるよ!約束は守る!それに…君はまだ本気を出してないみたいだし…完全敗北だよ!」


 ジェラートはそう言った。


「………」


 蒼はこの戦いの中で自分の力に違和感を感じていた。

 そして、蒼はその違和感が何なのかをジェラートの戦いで知る事が出来た。


「ルミナスの能力は…事象の上書き…君の力はそれに唯一対抗しうる…君ならもしかしたら…ルミナスを止めれるのかもしれないね」

「ジェラート…」

「まぁ、私は現世がどうなろうと知った事では無いんだけど…君にはまぁ…出来れば死んで欲しくは無いんだよね…だから止めたつまりだったけど…私じゃ止められないね。いいよ、約束は守る…ルミナスを…止めてみなよ」

「ちょっと待て…お前…ルミナスに洗脳されてないのか?」

「うん?私があの程度の洗脳に心を奪われるのでも?」


 どうやら、ジェラートはルミナスに洗脳されている訳では無い様だ。

 蒼の邪魔をしたのも単に蒼の身を案じての事の様だ。


『そんな事はどうでもいい!速くここから出るぞ!』


 アザゼルがそう言うと蒼も「そうだな」と答えた。


「ジェラート、早速で悪いんだが…」

「分かってるよ。私に付いてきて」


 ジェラートがそう言うと蒼は馬に乗り、ジェラートに付いていった。


「この空間は時間と空間が断絶されていてグチャグチャになってる…だから適当に進んでると自分がいる世界とは異なる時間軸に出る事になってしまう。フローフルは大丈夫だろうけど常人ならそうなってしまった場合、急速な時の流れに付いて行けずに死んでしまう」

「お前はその正しい道筋が分かるって訳か?」

「そういう事。さぁ…そろそろ見えてきたよ?」


 ジェラートがそう言うと光の門が見えた。

 ジェラートと蒼はその光の門へと飛び込んだ。


「ここは…」


 蒼とジェラートは現世に戻ってきた。

 ここは何もない平原であった。


「到着~」

「あれ…?身体の傷が消えてる?」

「あー、異なる時間軸に移動すると身体の傷が消えるんだよ。フローフルも冥界に来た時、その前に戦っていたルミナスにつけられた傷も消えてたでしょ?」

「あ…」

「さてと…日付は…あー、あれから二年経ってるね~」


 ジェラートはそう言った。

 二年…文字にすれば二文字だがとんでもなく時間が過ぎていた。

 ジェラートがいなければ数十年先の時間軸に来てしまう所だったので恐ろしい。


「ちょっと雪が降ってるな…つー事は今は冬か」

「二月下旬だね~」

「ここは…どこだ?」

「神聖ローマから十キロ程離れた場所だね」

「じゃあ、今からすぐにでもルミナスの所に行けるって事か」

「そうだね」

『ちょっと待て!その前に(ボク)の身体を探すのが先だよ!』

「後にしろ。今はそれ所じゃない」

『ふざけるな!(ボク)はこれ以上お前らの戦いに巻き込まれるのは御免だ!』


 アザゼルはそう言った。

 アザゼルはもうこれ以上関わりたく無い様だ。

 折角、念願の冥界から脱出を達成したのに下手すればまた殺される。

 アザゼルからすれば速く蒼の肉体から離れたいというのが正直な感想だろう。


「………」

『それに、君が無事にここに戻れたのは(ボク)のお陰でもあるんだぞ!最後の我が儘くらい聞いてくれ!』

「分かったよ!近くに使えそうな身体がねぇか探してやる!だが…ここら辺に無かったらそのままルミナスの所に向かう」


 そう言って蒼とジェラートはアザゼルの人柱を探す事にした。

 とは言え、そんな都合良く死体が見つかるとは思えないが。


「都合良く見つかりそうだよ?死体」

「え?」

「ここから数キロ先に街がある。その街はどうやら…壊滅している」

「は!?どういう事だよ!?」

「どうやら、世界のあちこちで空間の爆発が続いている様だね。ほら、ニュースにもなってる」


 ジェラートはそう言ってスマホを操作しながらそう言った。


「………取り合えず街に行くか」


 蒼はそう言って天使城(セラフィム・ヴァール)とは逆方向に進み、近くの街へと向かった。






 一時間程歩き、街に到着した。


「これは…」


 蒼とジェラートが見たのは壊滅した町であった。


「何で…こんな…」

「さぁ?ルミナスに聞けば何か分かるんじゃない?今この世界を統治しているのはルミナスなんだから」

「!? ルミナスがこれをやってるのか!?」

「さぁ?それは私にも分からないよ。ただ、神々ですら持て余していた『世界宮殿(パルテノス)』をただの半天使が完全に制御出来るのか…って話だよね」

『断言出来る。無理だな』

「アザゼル?」

『そもそも『世界宮殿(パルテノス)』は創造主である人が制御出来なくなり、仕方無くパルテミシア十二神が創られ、十二神揃って辛うじて制御出来ていた。だが、人々や魔族が愚かな争いをし、それにより十二神が死んでいった。その時点で彼等は『世界宮殿(パルテノス)』を制御しきれていなかった。それをルミナス一人で制御出来るとはとても思えない』


 そう、『世界宮殿(パルテノス)』はパルテミシア十二神が全員で辛うじて統制していたのだ。

 それが数を減らしていき半数以上減っていた時点で『世界宮殿(パルテノス)』の制御は出来ていなかった。

 過去にも現在発生している空間爆発の事例がいくつかあった。

 空間爆発が起こっているのはいずれもパルテミシア十二神の誰かが死んだ直後であった。

 第三次世界大戦が終わったのもこの空間爆発が世界各地で連続して起こり、四大帝国全てが戦えなくなったからだ。

 パルテミシア十二神は仲間が死んだ時点でこうなる事は分かっていたのだ。

 ルミナスが『世界宮殿(パルテノス)』を制御しようがしなかろうがいずれはこうなっていただろう。


「じゃあ、ルミナスが『世界宮殿(パルテノス)』を制御出来なくなってきてるから…」

「そう考えるのが自然だろうね。とは言え、一人で二年間、完全に『世界宮殿(パルテノス)』をコントロールしていたのは流石ルミナスといった所だね」


 この二年間の間、空間爆発は起こっていなかった様であり、空間爆発が連続で起こり出したのは最近の事らしい。

 それはルミナスが二年間、『世界宮殿(パルテノス)』を制御していた事に他ならない。


「ちょっと待てよ…でもおかしいだろ?十二人揃って初めて制御出来るんだろ?じゃあ、十二神(あいつら)はどうやって『世界宮殿(パルテノス)』を制御してたんだよ?」

『簡単だよ。彼等は五百年前から『世界宮殿(パルテノス)』を()()()()()()()

「は?」

「要するに、監視するだけに留めたって事だね。だからアスディア一人しか基本的に十二神はいなかった」


 千年前から五百年前まではパルテミシア十二神が『世界宮殿(パルテノス)』をコントロールしていた。

 しかし、ヘスティアが死んでからはコントロールが出来なくなり、それからは『世界宮殿(パルテノス)』のコントロールをしなくなり、世界に大きな乱れが無い限り、パルテミシア十二神は『世界宮殿(パルテノス)』に干渉しなくなったのだ。


『そもそも、十二神全員揃っても人々の欲望は抑えきれなかった…遅かれ速かれ、こうなってたさ』

「くそ…!何とか出来ねぇのか!?」

『全ての生命に終わりがある様に、この世界にも終わりがある。それがこの瞬間だった…という事さ』

「!」


 蒼はアザゼルが自身の身体から離れたのを感じた。

 そして、蒼とジェラートの近くにいた黒髪の少女が立ち上がった。


「よし…これで(ボク)の身体は手に入った。些かみすぼらしい格好だがまぁ、どうにかなるだろう」


 少女は片眼が隠れており、銀色の瞳が特徴的であった。


「おい、その子…」

「心配しなくてもこの子はもう死んでる。というか、この街の人間や魔族は皆死んでるよ。(ボク)はこの身体でこの世界が終わりを迎えるまで余生を過ごすよ」

「勝手に世界を滅ぼすな!」

「いやいや、このままだと確実にこの世界は滅びるよ?空間爆発が連続して起こってるんでしょ?(ボク)は最後の最後まで自由を謳歌するんだよ」


 そう言ってアザゼルは蒼とジェラートから去ろうとする。


「お前は…それでいいのかよ…やっと手に入れた自由だろ?それがすぐに無くなるなんて」

「終わりを止めるのは無理だよ。何かを創る事が出来てもそれを永遠にする事は出来ない。終わりがあるのなら…それを受け入れるしか無い」


 アザゼルは随分と冷めた発言をしていた。

 だが、アザゼルの言う事も最もであった。

 生き物は…いずれ死ぬ。それは人も魔族も同じだ。

 永遠…何て言葉は人が造り出したまやかしの言葉だ。

 この世界に永遠など存在せず、必ず終わりというモノは訪れるのだ。

 生物は自身の種族を繋ぐ為に次世代の子供を創り、繋げて来た。

 だが、それにもいずれは終わりが存在する。実際、絶滅した生物は何種類もいる。

 人や魔族もいずれはその終わりが訪れるのは変わり無い。

 要するに、速いか、遅いかだ。


「それでも…俺は自分からゼロにするのは嫌だな」

「相変わらず君の考えと(ボク)の考えは相容れないね」

「そう言えば君…四宮舞の時といい、女性を好んで取り憑くね」

「いや、それは今関係無いだろ!?」

「もしかして女性が好きとか?」

「違うわ!(ボク)が女だからだ!!!」

「「え?」」


 蒼とジェラートは驚いていた。

 ここき来て新事実発覚である。


「え?でも…お前…ボク…て?」

「一人称がボクの女なんていくらでもいるだろ!?」


 …いくらでもという事は無いだろうがいるにはいる。

 ルバートとかは一人称僕だし。


「いやでも…」

「とにかく(ボク)は女だ!…まぁ、男女関係無く色んな人に取り憑いてきたからたまに自分の性別忘れる事もあったけど」


 ぶっちゃけ男だと思ったいた蒼とジェラートは驚きを隠せなかったがまぁ、今はどうでもいい問題だ。


「とにかく!(ボク)はもう君達とは関わらない!ひっそりと過ごすよ。折角の自由を台無しにしたくないし………この子が見れなかったモノを…沢山見るよ」


 アザゼルも一応、自身の依り代に対して多少の憐れみを持っている様であった。

 アザゼルは本当にもう悪事を働くつもりは無さそうであった。


「アザゼル…ありがとな」

「いいよ礼なんて…気持ち悪っ!これで貸し借り無しって事で!もう二度と(ボク)の前に現れないでよ!!」


 アザゼルはそう言って蒼とジェラートの前から姿を消した。


「さてと…時間喰っちまった。速く行かねぇとな」

「そうだね~…あっ…」


 アザゼルが何かに気が付いた様だ。


「フロー…フル…?」


 蒼とジェラートの前に人影が見えた。

 蒼はその人物をよく知っていた。


「イン…ベル…?」

「フローフル!」


 インベルは蒼の元に駆け寄った。


「お前…!何で!?死んだ筈じゃあ!?」

「ああ…まぁ、色々あってな。戻ってきた。で?何でお前はここに?」

「ああ…ここに空間爆発が起こったって聞いたから調査に来てたんだよ」

「空間爆発…」

「ああ、最近、多発してるんだよ。昨日も世界各地で起こってたし…どうなるんだろうな?まぁ、ルミナス様がいれば問題ないとは思うけどな」


 やはり、インベルもルミナスに洗脳されている様だ。

 分かってはいた。だが…やはり思う所はあった。

 このまま『天使城(セラフィム・ヴァール)』に向かってもインベルは必ず蒼を妨害するだろう。ならばー


「インベル…俺は…これから『天使城(セラフィム・ヴァール)』に向かう…そして…ルミナスを止める」

「は?何言ってんだよ?フローフル?自分で何言ってるか分かってんのか!?」

「もし、俺の邪魔をするなら…お前を倒す」

「何でだよ!?何でルミナス様とお前が戦わなくちゃならないんだよ!?」

「あいつを止めるのが…俺の役目だ」

「行かせない…二年前と同じ思いをするくらいなら…俺はお前を動けなくしてでも止める!」


 インベルは二年前、蒼を守る事が出来なかった。

 もう、蒼を失いたくは無い。

 ルミナスが必ず今の事態を何とかしてくれる筈だ。

 だから、インベルは蒼を止めるのだ、蒼の親友として、仲間として。


「そうか…やっぱ…通してはくれねぇか…」


 蒼はそう言って刀を抜いた。


「じゃあよ…ここで決着も着けようぜ…」

「どうしてこうなるんだよ!?」


 インベルも剣を抜いた。


「【氷水天皇(ザドキエル)】」

「【炎竜天皇(カマエル)】!」


 蒼もインベルもエンゲリアスを解放した。


「ジェラート、お前はどうする?」

「私は取り敢えず『天使城(セラフィム・ヴァール)』に行こうかな?」

「じゃあ先に行っててくれ」

「………男と男の喧嘩だね。じゃあ、女の私には手出し無用だ」


 ジェラートはそう言って蒼とインベルの元から去っていった。


「行くぜ…インベル!」

「くっ!?」


 蒼とインベルの戦いが今、始まった。





To be continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ