【最終章】使徒叛逆篇ⅩⅩⅦーhell break 2ー
「感じる…感じるよ~」
ジェラートがそう呟いた。
ジェラートは今、天使城にいた。
ジェラートはルミナスの支配から逃れていた。
逃れていた理由としてはルミナスが世界宮殿の力を発動させる前に別空間に逃げていたからだ。
ジェラートは誰かに支配されるのは御免なのでルミナスの支配から逃れたのだ。
「魂を変えるだけが世界宮殿の抜け道じゃないんだよん♪」
ジェラートは意気揚々とそう言った。
「それにしても驚いたな~。フローフルが冥界に落とされたなんて…」
そう、ジェラートは蒼が冥界に落とされた事に気が付いていた。
ジェラートは以前、自身の能力で冥界へと行った事がある。
その時はすぐに出ていったのだがそこに蒼がいるとなれば話は別だ。
だが、困った事がある。
「私の能力…私一人しか移動出来ないんだよね~」
そう、ジェラートは異世界を渡る能力があるがそれは自分自身にしか使えない。
だが、それでも出来る事はある筈だ。
「ふふ…私と蒼の仲だし、助けて上げようかな~?」
ジェラートはそう言って夜の景色を眺めていた。
ジェラートは夜空を見るのが好きであった。
特に、満月が出ている時はもっと好きだ。
夜空にある月を眺める事で自分の願いが近付いている様な気がしたからだ。
ジェラートの目的は自分一人しかいない異世界に行き、自由気ままに暮らすという実に怠惰な目的であった。
ジェラートはそもそもが誰かと接するのが嫌いなのでその様な目的を持つようになったのだが、蒼は別だ。
蒼はジェラートが心を許している数少ない人物だ。
ジェラートが信用している者は蒼とインベルくらいのモノだ。
その蒼が今、冥界に閉じ込められている。
それを助け出すのもまぁ、悪くは無いだろう。
いい、いや、楽しい暇潰しにはなりそうであった。
「久し振りの冥界…フローフルと会うのも楽しみだな~」
何故、ルミナスや慧留には蒼が生きている事を知らないのにジェラートはそれを感じ取れているのかと言うとジェラートは色々な異世界を回っており、冥界にも足を踏み入れた事があるからだ。
だからこそ、ジェラートはルミナスにも感知出来なかった冥界にいる蒼を感じ取る事が出来たのだ。
「でも、何でフローフルは冥界に飛ばされたんだろ?まぁ、そんな事はどうでもいいか」
ジェラートはそう言って金の長剣を抜いた。
「【黄金破弓】」
金の長剣が黄金の弓に変化した。
そして、ジェラートは弓を虚空に撃った。
すると、虚空に空間の穴の様なモノが出現した。
「さて…冥界へとレッツラゴー♪」
ジェラートはそう言って空間に入っていった。
「さて…やるか…」
蒼は【氷水天皇】を解放しており、クリフォトも両手に銀色の剣を持っていた。
現在、蒼、クリフォト、アザゼルの三人は大量の冥界審判者達のいる場所にいた。
アザゼルは訳あって蒼の中に入っている。
審判犬や般若の様な巨人もいれば無数の腕を持つ鬼神もいた。
「お前のそれ…」
「ああ、【アンタレス】だ。ツキカゲエルに付いていたのに戻った…だからその時点で私の目論み通りに行かなかった事を悟っていたんだよ」
「なのに俺に聞くだけ聞いたのかよ…いい趣味してるぜ」
「そんな事より…さっさと始めよう」
クリフォトはそう言って銀色の双剣を振り上げ、一撃で数体の冥界審判者を粉々に吹き飛ばした。
「さてと…冥界犬だけじゃないね…阿修羅に巨人もいる…」
「本当にここにいるんだろうな…」
蒼も【氷水天皇】を振るい、冥界審判者を倒していた。
「【悪魔剣圧】」
クリフォトは双剣を振るい、冥界審判者を薙ぎ倒していた。
クリフォトの最大の力はその莫大な魔力だ。
クリフォトの魔力の総量は恐らく、今の慧留の二倍はある。
それだけ、クリフォトの魔力は膨大なのだ。
三年前は力が衰えていた筈だが今のクリフォトは蒼が会った時よりも強くなっている気がした。
「なぁ?アンタ前より強くなってね?」
「いや、戻っただけさ。私は三年前は魔力が衰えていたからね。冥界に落ちて、ここにいる内に魔力が戻ったのさ」
この冥界は魔力の濃度が非常に濃い。
ここにいるだけで魔力や霊力が上昇するのだろう。
だが、それは冥界審判者も同じ事だ。
「全く…デタラメな野郎だ」
「今の君にだけは言われたく無いね。【(デトラヘレ・デモニオ)】」
クリフォトは阿修羅を双剣で切り裂いた。
すると、阿修羅はクリフォトの双剣に吸い込まれた。
更にクリフォトは剣を振るうと双剣から無数の腕が出現し、冥界審判者達を押し潰した。
「なっ…何だよそれ…」
「私の能力は相手の能力を吸収して奪う能力さ。ただし、奪える容量は決まってるから自分の魔力以上のモノは奪えないが奪った能力を消して容量は増やせるから便利な能力さ」
クリフォトは斬った対象の能力を奪い、それを自在に扱う事が出来る。
三年前の蒼との戦いでは使わなかった…いや、使えなかった。
あの時のクリフォトは魔力が衰えており、蒼の能力を奪えるだけの魔力が無かったのだ。
おまけに蒼はエンゲリアスを二つ持っている。
エンゲリアスとは天使の心臓とも言える。故にエンゲリアスを奪うだけでも相当な容量を持っていかれる。
それを二つも持っているとなるとクリフォトでも奪えなかったのだ。
つまり、クリフォトと蒼は相性が最悪だったのだ。
その状態でもクリフォトは蒼を相手に善戦していたのでやはり三年前の時点でも相当な実力者であった。
ー味方になると頼もしい事この上無いな…
まさか、蒼もクリフォトと共闘する時が来るなど夢にも思わなかった。
それはクリフォトも同じだがクリフォトと蒼はどんどん冥界審判者達を撃破していった。
「【絶死切断】」
無数にいた冥界審判者達が一瞬で消し飛ばされた。
「「!?」」
『やっぱりいた』
蒼とクリフォトは突然の事態に驚いていたが唯一察しがついていたアザゼルのみは驚いていなかった。
「まさか…君がここにいるとはね…時神蒼\(^o^)/」
「久し振り…でも無いか?ロキ?」
「いや、久し振りなんじゃあ、無いかい?( ̄▽ ̄;)」
そう、無数の冥界審判者達を一瞬で蹴散らしたのはかつて蒼が敵対していたプラネット・サーカスのリーダー、ロキ・カオストリクスタシアであった。
ロキは前の第四次世界大戦を引き起こした張本人であり、多くの大戦の元凶でもある大罪人だ。
やはりというべきか、この冥界に放り出されていた様だ。
「パルテミシア十二神が全滅したのは感じ取っていたが…まさか君がここに来るなんてね?m(。≧Д≦。)m。一体どんな悪行をしたのやら?( ̄▽ ̄;)」
「てめぇと一緒にすんな!ルミナスに負けて気が付いたらここにいたんだよ」
「成る程…トキガミアオとアザゼルが言っていた男は君の事か…」
「君は…クリフォト…それに時神の中にアザゼルもいるね…これは面白い\(^o^)/!かつての敵同士が手を組んでいるとは!アハハハハハハハハハハハハハハ!!!!(*´∀`)(*^▽^)/★*☆♪」
ロキは面白おかしくそう言った。
ロキは黄色の髪に黄色と赤のオッドアイ、そして頬に涙のペイントがある、ピエロ衣装の青年である。
ロキは人を小バカにした様な話し方をよくする男で何を考えているか読めない男だ。
蒼が敵対していた敵の中でも最も胡散臭く、信用出来ない男でもある。
この男によって人生を狂わされた者は数知れず、プロテアやエスデスは彼によって人生を狂わされたと言っても過言ではない。
だが、ロキは空間を操る能力を扱う。この冥界から脱出するにはロキの協力が必要不可欠なのだ。
「ロキ、俺達はアンタに会う為にここに来た」
「よく、ここが分かったね?(*´∀`)」
『お前はよく、冥界審判者達と戦っているのは知っていた。だからお前を探すのは大して苦労しなかった』
蒼の中にいるアザゼルがそう言った。
成る程、伊達に情報収集をしている訳では無さそうであった。
アザゼルがいなければロキを見つけ出すのは困難だっただろう。
「で?僕に何の様かな?用事が無かったら僕なんかと会おうとしないだろ?(*´∀`)」
「単刀直入に言うよ。トキガミアオ達の脱出に協力してくれ」
「あぁ…そう言う事か…(^^)」
ロキは苦笑しながらそう言った。
「で?どうなんだい?」
「断るね。僕は今の生活に満足している。なのに…なぁんで僕が人助けをしなきゃあならないのさ( ´△`)」
「やっぱりそうかよ…」
蒼は何となく、ロキが断る様な気がしていた。
そもそもロキは蒼が今まで戦ってきた敵の中でも特に何を考えているか分からない男だった。
しかし、それでも、蒼と敵対していた事は変わらない。敵対していた相手にいきなり協力を申し立てられても断るのが普通だろう。
「僕はここで自由気ままに暴れられている。だのに…何でそんな事をしなくちゃあ、ならないんだい?\(^o^)/」
「そうか…ならば力尽くでやるしか無さそうだね」
クリフォトは双剣を構えた。
「君達ももの好きだね~( ´△`)。何故そこまで時神蒼に協力する?( ̄▽ ̄;)」
『利害の一致だ勘違いするな』
「てめぇは地上で何が起こっているのか、大体の予想はついてんだろ?」
「ああ、パルテミシア十二神が死に、時神蒼がここにいるという事は…つまりはそういう事なんだろうね( ´△`)。世界はどうやらルミナスの手に堕ちた様だ。君からしたらバッドエンドだね~(*´∀`)。だけど!僕にとっては関係無い!だって『世界宮殿』の支配は冥界までには届いてないからね(*^▽^)/★*☆♪」
そう、どうやら『世界宮殿』の効果範囲は冥界まで届いていない様だった。
まぁルミナスは冥界に干渉してないので当たり前と言えば当たり前なのだが。
「じゃあ、力尽くでやるしか無いね」
「はぁ…流石に君達が相手だと骨が折れるよ(;゜゜)。そんなに地上に戻りたいのかい?(T▽T)」
「当たり前だ…俺は…ルミナスを止めなきゃならない!」
「あっ、ふーん。僕には関係無いね♪それにしても…君は何度も何度もルミナスにやられてるのによく心が折れないね。その諦めの悪さは正直引くよ。ゴキブリ並かって言うね」
「ゴキブリでも何でもいい。俺はルミナスを止めて…世界を元に戻す」
「世界を元に戻すねぇ…そうやって自由に世界を変えるのは…結局君も僕らとやってる事変わらないよ?(*´∀`)」
「何が言いたい?」
「そのままの意味だよ。僕らプラネット・サーカスは世界を変えようとした…けどそれは君らに阻止され、今度は神聖ローマが動き出し、そしてルミナスが世界を征服した。だが、時神蒼、今度は君が世界を変えようとしている」
「元に戻すだけだ」
「同じだよ。元に戻す…言い方を変えてるだけで今ある世界を変化させているという事には変わり無いね」
ロキは淡々とそう答えた。
ロキの言っている事は正しい。
蒼のやろうとしている事は今の世界に対する反逆行為だ。
元に戻すと取り繕っても結局その事には変わり無いのだ。
「それでも…俺はルミナスを認められない」
「何故?ルミナスの世界は平和だろう?君がいない方がいいんじゃない?( ̄▽ ̄;)」
「今は…平和かもな…けどその平和もいずれ無くなる」
「何故そう言い切れる」
「自分一人だけが支配する世界…そんな世界は長く続かない。一人の力なんてたかが知れてる。ルミナスでもいずれそれが出来なくなる」
「根拠がないね。それはあくまで君の机上の空論だよ」
「必ずそうなるさ。だからこそ、そうなる前に止めないといけない」
「………君は…ここに来るまで何を見た?」
ロキがそう訪ねた。
「この世界の歴史だよ」
蒼はそう答えた。
ロキは気付いていた。
蒼がここに来るまで何かがあった事に。
「どういう事だい?」
クリフォトは二人の話の意味が分からなかった。
「ここに来るまで…いや、眼が覚めるまでって言った方がいいか…この世界の千年の歴史を見ていた。混沌戦争で勝利したクロノスはパルテミシア十二神を創り、そして自身は眠りについた」
「そこまでは私も知っている」
「クロノスは眠りにつき、一人でこの世界の運命の流れを管理していた。不眠不休、永遠にな。それはとてつもない重荷だった」
「だからこそ、クロノスは世界宮殿の支配権をアスディアに譲渡し、そしてその過程で僕が生まれた。やはり見ていたんだね」
『ルミナスも…そうなるというのか?』
「分からねぇ…けど、神々でさえ、完全に操れない世界をルミナスが操れるかどうかは分からねぇって事だ」
「だがルミナスはその神々を倒した。問題ないのでは?」
「大切なのは力じゃねぇ…強い心だ」
「神を倒す程だ。それなりに強い心は持っているだろう?」
ロキはそう断言した。
しかし、蒼はロキの言葉に反論した。
「いや、それは無い。確かにあいつは普通の人間や魔族に比べれば強大な精神力を持ってるだろうな。だが、あいつには欠落してるもんがある」
「欠落?」
「あいつは…人生に一度も敗けた事が無い。だから、一度敗けただけであいつは脆く崩れ去る」
「それだけかい?それはあまりにも根拠が弱すぎる気がするが…( ̄▽ ̄;)」
「一度も敗けた事が無い奴がいざ敗けるとなると脆いもんだ。動揺し、何も考えられなくなる。それがあいつの付け入る隙になる」
世界をコントロールするというのは簡単な事では無い。
必ず歪みが生まれる。
そして、神々ですらミスを犯した。
今までミスをした事の無いルミナスはそんなミスを対応しきる事が出来るだろうか。
答えは否だ。失敗してからの建て直しは簡単な事では無い。
ルミナスにさそれが出来ない以上、必ず限界が来る。
「そうか…そうか…ならば…ルミナスの泣きっ面が見れるかもしれない…という事かな?」
「それはどうかな…俺には分からねぇよ」
「しかし…可能性はある…という事だね(*´∀`)」
ロキはとても下卑た笑みを浮かべた。
「いいだろう…協力してやるよO(≧∇≦)O。ルミナスには散々やられた怨みもあるからね…彼女の泣きっ面を見れるのであれば僕は協力を惜しまないよ。それに…君の絶望した顔をまだ見れてない。それはそれでつまらない…」
ロキはそう言った。
ロキはかつて、蒼の絶望した顔が見たいと言っていた。
しかし、今はどうだ。蒼は絶望などしていなかった。
蒼は少しでも希望がある限り絶対に諦めないのだろう。
ならば、その希望を与えるだけ与えてそして成す術が無くなるその時、真に絶望する時だ。
あわよくば、ルミナスだけでなく、蒼が絶望する姿が見れるかもしれない。
そう、ロキは考えたのだ。
「ならばさっさと塔を探そう」
「いや、探す必要など無い」
ロキがそう言って虚空に右手を薙いだ。
すると、ロキの目の前にネルヘルカの塔が出現した。
「持ってくれば良いだけだ」
ロキは空間を切り取ってネルヘルカの塔を持ってきたのだ。
最早、何でもありな能力だ。
『さっさと塔に入るぞ』
アザゼルがそう言うと蒼、クリフォト、ロキはネルヘルカの塔の中に入っていった。
そして、ネルヘルカの塔の最下層に辿り着いた。
「思ったより簡単に帰れそうだな」
蒼がそう呟いた。
「いや、むしろ…大変なのはこれからだよ?O(≧∇≦)O」
ロキが愉しげにそう言った。
「どういう事だ?」
「ここから現世までどのくらい距離があると思う?帰るまでメチャクチャ時間が掛かる」
ロキがそう言った。
「え?ど…どのくらい??」
『速くても十数年は掛かると思った方がいい』
「なっ!?」
アザゼルの発言に蒼は驚愕した。
「思ったより掛かるんだね」
クリフォトも少なからず驚いていた。
「何だい?もしかして三日とかそこらで行けるとでも思ったのかな?(*´∀`)」
「いや、だって俺がここに来てからそんなに月日は経ってねぇだろ!?」
「そりゃそうさ。ここに来る時、君達は堕ちて来たんだもの。冥界から現世に戻るには昇らなければならない。時間も掛かるよ」
ロキが冷静に説明した。
「しかも、時神蒼が思っている以上に時間は経ってるよ。君が負けてから現世では既に半年が経ってる」
「はぁ!?」
「冥界と現世では時間の流れ方が全く異なっているんだよ。君にとっては一日も経っていない様だが現世ではそれだけの時間が経過している」
『空間の調整が必要なのも、単に歪みだけでなく、時間の流れが現世と冥界では異なるからそれを固定化しないと私達が時間の急激な変化に耐えられずに死んでしまうからなんだよ。まぁ、君の場合は時間を操る能力があるから問題ないかもしれないけど私は別。道中で私が死ねば君は現世と冥界の狭間にさ迷い、二度と戻れなくなる。だからロキが必要だったんだよ』
ロキとアザゼルの説明を聞き、蒼は気が遠くなりそうであった。
すぐにでも戻れる…それはどうやら甘えであった様だ。
「時間を少しでも短縮する方法は無いのか?」
「無いね。そこは諦めたまえ\(^o^)/」
ロキが真顔でそう言った。
『では早速、ゲートを開く!』
アザゼルがそう言うと蒼の身体から黒い靄が出現し、天井に穴が空いた。
「【境界固定】」
ロキがアザゼルの造り出したゲートを固定させた。
「さてと…これでお別れだね、トキガミアオ」
「アンタは来ねぇのか?」
「今更…現世に未練は無いよ。私はここで、君とツキカゲエルの未来を見ているとするよ」
「そうかよ………一度しか言わねぇから聞き溢すなよ。………ありがとな」
「礼などいらないよ。そうだ、これに乗るといい」
クリフォトはそう言って黒い馬を召喚した。
「これは?」
「私が愛用していた天空馬だよ。本来なら白い馬なのだが私の魔力を受けて黒色になっているがまぁ、問題ないだろう。これで少しでも速く着けるといいね」
「クリフォト…」
「私に出来るのはここまでだ。後は君次第という訳だ。ああ、それと…ツキカゲエルによろしく」
「…分かったよ」
蒼は天空馬に乗った。
「あまりゆっくりしないで欲しいな」
「分かったよ!」
蒼は天空馬を動かし、ゲートを潜っていった。
すると、ゲートは消滅し、完全に閉じた。
「良かったのかい?ここから出なくて」
「言ったろ?僕はあのガキと寄生虫と違って、現世に未練は無いんだよ。この世界に満足している。そういう君こそ、現世に戻れば良かったんじゃ無いかな?」
「私の役目はもう、終わっている。死人がしゃしゃり出ても意味は無いさ。後は…今を生きる者達に全てを託すよ」
「………少し、意外だね」
「何が?」
「君は現世の未来はどうでもいいと考えていると思ったんだけどね」
ロキの言う通り、クリフォトは自身が生きた証を残したかっただけでその先はどうでもよかった筈だ。
なのに、今のクリフォトは現世の未来を案じている様にロキは見えたのだ。
「少し前までは…そうだったかもね…けど…人は変わるモノさ。そういう君だっていくらトキガミアオやルミナスの泣きっ面を見たいからという理由だけで協力する様な人物では無かったと思うが?」
「いや…僕は何も変わってなどいないよ。単なる気紛れだよ( ̄▽ ̄;)」
「なら、私も同じさ。ただの気紛れ…作り話の様に戦いに敗けただけで勝った方にコロッと味方になる様な事など有り得ない。ただの利害の一致だ」
そう、そう簡単には変わらない。
「そうかい…なら…僕も見届けるとするよ…時神蒼が…ルミナスが…これからあの世界がどんな風になっていくのかを…」
「その前に…この世界が保つと良いけどね」
そう、ガルディアがいない今、冥界を固定する者がいない。
しばらくすればこの冥界は消えてしまう。
「ならば…簡単な話さ…誰かが新たなこの冥界の統制者になればいい」
「ははは…随分と大きく出たね」
だが、それはそれで面白いかもしれない。
柄にも無く、クリフォトはそう思った。
蒼と蒼の身体の中にいるアザゼルは天空馬で黒い空間を駆け抜けていた。
「本当に真っ暗だな。進んでる気がしないな」
『いや、確かに進んでいる。後少ししたら着くかもな』
「十数年は掛かるんじゃねぇのかよ!?」
『言い方が悪かったな。俺達が戻る場所が六、七年って事だ。異なる時間軸に出てしまうという事だ』
「通常の時間軸に行く事は出来ねぇのかよ?」
『無理だな。時間にも波がある。その波を逆らって行くのは不可能だ』
ーこんな所にいたのか…わざわざ来て損しちゃった
「!?」
蒼はそんな声が聞こえたので後ろを振り向いた。
すると、そこにいたのはー
「ジェラート!?」
「久し振りだね~、フローフル」
『こいつは…ジェラート・ローマカイザー!?』
そう、ジェラートは空中飛行しながら蒼の横にやって来た。
「せっかく助けに行こうとしたのにこれじゃあ無駄足だね」
「わざわざ助けに来てくれたのか?」
「うん、まぁね。けど…助けは必要無かったか」
ジェラートは異なる世界に自在に移動する能力がある。
その能力を使い、ここまで来たのだろう。
「まぁ、このまま行けば十数年の現世に行っちまうけどな」
「あー、そうか…私みたいに自在に時間軸まで移動出来る訳じゃ無いんだ」
「? お前は平気なのか?」
「うん、私は時間も自在に行き来出来るよ」
「なら、俺達にその力を使えないか?」
「え?不可能じゃないけど…でも私と同じ様にってのはちょっと無理」
「じゃあ、どんだけ短縮出来る?」
「二、三年位かな?」
ジェラートがそう言った。
それなら十数年掛かるより余程マシである。
「ならそれをやってくれ」
「別にそれは構わないよ…けどね…もうルミナスに歯向かうのは止めた方が良いかもね」
「どういう事だよ?」
「彼女が世界を支配している。もう、彼女を止められない。もし…君が彼女の元へ行けば間違いなく今度こそ死ぬだろうね。もしそうなる様だったら私は君を力尽くでもルミナスの元へ行かせない。行かせられない」
「そうかよ…まぁ、それでも俺は行くけどな」
「じゃあ、君の言葉も聞き入れられない」
「そうか、じゃあ、仕方無ぇな。このまま行く事にする」
蒼はそう言った。
確かに時間を短縮するのは悪い話では無いが蒼はルミナスと戦わなくてはならない。
「はぁ…分かったよ。君は恐らくどうなろうともルミナスと戦う…ならば…私を倒してみなよ。私を倒す事が出来たなら、時間を短縮しよう」
「ここで戦うのかよ…」
「当然だろ?」
『なっ!?どうしてこうなるんだよ!?』
「そう焦るな、アザゼル。勝てば十数年から二、三年まで時間を短縮出来るんだぞ?」
『俺はそんな事はどうでも良いんだよ!現世に戻れれば!』
「生憎俺はそうは行かねぇんだよ。だからここでジェラートを倒す」
蒼はそう言って馬から降りた。
そして、二つの刀を構えた。
「そうか…どうしても戦うって言うんだね」
ジェラートは金色の剣を抜いた。
『なっ!?何だこいつ!?メチャクチャな霊圧だ…こんなの…勝てる訳が…』
アザゼルはジェラートの霊圧に驚愕していた。
しかし、それも無理は無い。
蒼だって少からず驚いている。
ー前までとは桁が違う…恐らく…ルミナスに迫る霊圧だ…!
そう、今のジェラートの霊圧は天使親衛隊は愚か、ローグヴェルトよりも高い霊圧を誇っていたからだ。
これが…ジェラート・ファイ・ローマカイザーの真の力である。
「成る程な…全力でやらねぇと勝てねぇ…て訳か」
「全力でやろうと勝てないよ。今の私は君より強い」
『ちょっ!?ここは逃げた方がいいぞ!時神蒼!』
「ダメだ。あいつはどこまでも俺を追ってくる。逃げ場なんてねぇんだよ」
そう、ジェラートは今の様に異世界を自由に渡る事が出来る。
どちらにせよ、蒼がルミナスと戦う決意を固めている以上、ジェラートを倒さなければジェラートは蒼を止めようと蒼に挑んで来るだろう。
ならば、ここでジェラートと決着を着けておいた方が良いのだ。
『くっ…思い通りに行かないモノだな…』
アザゼルはそう呟いた。
そもそもアザゼルは現世に戻りたいだけなのにこんな死ぬ思いをしなければならないとは予想していなかった。
それは当然だ。異世界に行ける者などそうはいない。
だからアザゼルにとってジェラートがこんな所に現れたのは完全に想定外であった。
『時神蒼…貴様が死ねば私も死ぬ…何がなんでも勝て!』
「最初からそのつもりだよ!」
「言っておくけど…手加減して貰えるなんて思わない事だね…殺すつもりで行くよ…!」
ジェラートはそう言って蒼に接近していった。
蒼もジェラートに近付き、二人の刃が交錯した。
To be continued




