【最終章】使徒叛逆篇ⅩⅩⅢーThe end of revolutionー
ー俺は…死んだのか?
水滴が地面に落ちる音が聞こえる。
身体が重い、暗い、何も無い…
何も…思い出せない。
何故だ…何故こうなった…
そう…この世界を…変えたかっただけなのだ。
この…失うしか無い…絶望のこの世界を…
それの何が間違っているというのだ。
何も…何も無い…何も…
「!」
ローグヴェルトは眼を覚ました。
「やっと起きたね…ローグ…」
ローグヴェルトの隣に慧留がいた。
ローグヴェルトは倒れていた。
「っ!?」
「分かるでしょ?私も君も…もう動けない。動くと死ぬよ」
慧留はそう言って空を見上げていた。
慧留と倒れていた。
ローグヴェルトも慧留も全身血塗れであった。
慧留とローグヴェルトはここで戦っていた。
お互いの信念の為に…譲れないモノの為に。
そして結果、お互いに倒れ、相打った。
「何故だ…何故お前はそこまでこの世界を守ろうとする?何故…俺の邪魔をする?」
「前にも言ったでしょ?この世界は…皆…必死で生きてる…それを無闇に変えるのは…間違ってるよ」
「それはもう聞いた…俺は…」
「君が…助けを求めてたから…」
「何を…」
「君だって…本当はずっと…悩んでたんでしょ?自分のやろうとしている事が本当に正しいか…だから…私に挑んだんでしょ?」
「知ったような事を…」
「分かるよ…だって…友達だしね」
そう、慧留とローグヴェルトは友達だった。
なのに、五年前からすれ違い、互いに殺し合う事になってしまった。
元々二人は目指すモノは同じであった。
だが、この世界が…運命が二人を引き離した。
運命とは気まぐれでそして残酷なモノだ。
「だから…君も私の事…分かるでしょ?」
「………」
ローグヴェルトが初めて慧留と出会ったのは十年前の時だ。
その時の慧留は常に暗い表情をしていて、どこか悲しそうであった。
ローグヴェルトはそんな慧留を何故か…気になる様になっていた。
ローグヴェルトは親を知らずに騎士団に入れられた。
ローグヴェルトは慧留と出会うまで一人であった。
しかし、慧留と出会い、そして共に戦う事で二人には友情が生まれる様になった。
慧留も変わっていき、明るい本来の性格に戻っていった。
そして、ローグヴェルトは気が付いた。
慧留には…人を動かす力があるという事を。
ローグヴェルトには無い力を慧留には持っていた。
だからこそ、ローグヴェルトは慧留を尊敬すると同時に慧留を妬む様になっていった。
ローグヴェルトは死に、そしてルミナスの手で復活した。
だが、慧留はその時には神聖ローマから抜け出していた。
ローグヴェルトは慧留に追い付こうとしていたのだ。
慧留とは違うやり方で。
だからこそ、自身のスヴェールという名を捨て、慧留と同じマクガヴェインを名乗る様になった。
慧留は十二支連合帝国にいると知るがローグヴェルトは敢えて慧留と会う事を避け続けた。
久し振りに慧留を見てローグヴェルトは気が付いたのだ。
慧留と自分は異なる道を見つけたのだと。
そして、必ず争う事になるだろうということを。
ローグヴェルトはルミナスにこの世界の事を聞かされ、ローグヴェルトはこの世界に絶望した。
慧留も同じ様にこの世界の事を知り、一度は絶望するが、立ち直り、新たな道を模索し始めていた。
そう…慧留とローグヴェルトは異なる道を歩むのは明白であった。
ローグヴェルトは神聖ローマから逃げ出す事も出来ない事は無かっただろう。
仮に自分が死ぬ事になるとしても逆らう事は出来たのだ。
だが、ローグヴェルトはそれをしなかった。
慧留とは違う道を進むという事を決めたからだ。
そして、ローグヴェルトはこの世界に不満を持っている以上に、慧留の力にコンプレックスを持っていた。
ローグヴェルトの根底にあるのは慧留だった。
「ローグ…君が傷付くと…私も傷付いたみたいになるんだ…多分、友達ってそういうのじゃないかな?」
「………」
「私は君に憧れてた…一人だった私に…手を伸ばしてくれた…私にとっては君は英雄だった…」
ー違う…逆だ…俺がお前を羨ましかったんだ…
ローグヴェルトは思う。
慧留には自分には無いモノを持っていたから…
「はっ…ははははは…」
「? 何がおかしいの?」
「はぁ…しょうがねぇな…」
「?」
ローグヴェルトは清々しい顔でこう言った。
「俺の…負けだ…」
「そっか…私…やっと君に勝てたんだね…」
慧留は笑顔でそう言った。
慧留はローグヴェルトに越える事を目標にしていた。
その目標に達する事が出来たという事なのだろう。
「何言ってんだよ…やっぱり…バカなのは相変わらずだな…」
「そう言うローグだって…頑固なのは相変わらずじゃん!」
「俺は頑固じゃねぇ…一度決めた事は曲げないだけだ!」
「それを頑固って言うんだよ!」
「んだと?いっ!?」
「うっ!?」
二人は大怪我をしているのだ。
大声で話すと身体が痛むのは当然であった。
二人は怪我をしている事を忘れて大騒ぎしていた。
「時神蒼は…ルミナス陛下を倒し得るのか?」
「分からない…けど…蒼ならきっと…」
「そうか…お前がそこまで言うのか…面白い男だな…時神蒼は…」
慧留とローグヴェルトは疲れてしまったのかそのまま気を失った。
慧留とローグヴェルトの長い因縁はこうして終わりを迎えた。
「【破滅の王剣】」
ルミナスは巨大な光の剣を作り出し、蒼達に放った。
以前、蒼を一撃で倒した一撃だ。
一発一発が相当な威力を誇っていた。
「くっ!?」
屍はルミナスに近付いた。
屍は基本的に相手に近付かなければ攻撃出来ない。
「無駄よ」
ルミナスは屍に剣を振った。
屍はルミナスの予想外のスピードに驚愕していた。
ー速い!?
屍は【時崩】を発動させようとするが発動出来なかった。
「貴方の時間停止は物質にしか働かない…私の…いえ、エンゲリアスは生きている。貴方の時間停止は全く効かないわ」
「くっ!?」
蒼からエンゲリアスの事を少し聞いていたがやはり本当に生物に近い性質の様だ。
屍の時間停止はルミナスには一切効かない。
「はぁ!」
ルミナスの上からプロテアが斬りかかってきた。
しかし、ルミナスは左人指し指だけでプロテアの剣を止めた。
「!?」
「貴女如きの剣で私が斬れるか」
ルミナスは人指し指から霊圧を放ちプロテアを吹き飛ばした。
「くっ!?」
今度は蒼がルミナスの左側から、美浪がルミナスの右側を攻めた。
「【天時飛】!」
「【雷鳴氷刀】!」
美浪はルミナスに殴り掛かり、蒼は氷に雷を纏わせ、ルミナスに斬りかかった。
しかし、ルミナスは身体を捻って上へ飛び、左手にも光の剣を出して蒼と美浪の右肩に剣を突き刺した。
「うっ!?」
「がっ!?」
しかし、蒼はルミナスの剣を凍らせ、更に美浪に刺さっていた剣も凍らせ、ルミナスの動きを止めた。
「!?」
ルミナスの目の前には既に屍がおり、屍はルミナスに触れようとしていた。
「【錬金崩壊】!」
ルミナスは左足に光の剣を顕現させ、足で剣を動かし、屍の右手を切り落とした。
「ぐあっ!?」
屍は諦めずに左手でルミナスの頭を掴もうとした。
しかし、左手もルミナスの左足の剣で切り落とされた。
「まだだ!」
屍は予め糸を錬金しており、その糸が屍の切断された右腕と右手が繋がり、ルミナスの左肩に屍の右手が落ちた。
屍は相手に触れる事で相手の身体を分解させる事が可能だ。
どうやらルミナスにも効果があった様だ。
「!?」
「終わりだ!」
「【極楽鳥花】!」
ルミナスは屍に霊呪法を放った。
ルミナスは無数の白い鳥を放ち、屍を吹き飛ばし、更に右腕を粉々に消し飛ばした。
ルミナスの霊呪法は並の霊呪法よりも強力であり、恐らく世界最強の霊呪法の使い手であろう。
フローフルや澪も達人クラスの霊呪法の使い手だがその二人が霞むレベルでルミナスの霊呪法はレベルが高い。
「がはっ!?」
しかし、ルミナスの身体に屍の腕が一瞬触れていた事でルミナスの身体にダメージを受け、ルミナスは血を吐いていた。
ルミナスは両手の氷を砕こうとするが蒼の氷が非常に強く外せそうに無かったので両手を背中の翼で切断した。
ルミナスは蒼達から一旦距離を取った。
「くっ!?」
ルミナスがアスディア以外の相手に傷を負った。
蒼と美浪はすぐに立ち上がり、屍の方へと行った。
見た所、屍は相当な重傷を負っていた。
「屍!」
「屍さん!」
屍は完全に意識を失っており、戦闘不能になっていた。
だが、どうにか死んではいない様であった。
「ふっ…少しはやるみたいね…けど…無意味よ」
ルミナスの両手が物凄い勢いで再生した。
蒼達は驚愕していた。
さっきまで与えたダメージがいきなり再生すれば誰でも驚くであろう。
「「「なっ!?」」」
更に内部の傷も完全に修復されていた。
さっきまで与えたダメージが完全に水の泡となっていた。
「私は無限に再生するわ…霊力が尽きないか…或いは木っ端微塵にでもされない限りね」
ルミナスのローマカイザーの霊術の一つである【無限再生】だ。
ルミナスにダメージを受けると無限に再生を続ける能力で本人の霊力が尽きるまで再生を続ける。
「美浪!」
「うん!」
美浪は狼の姿になり、プロテアがその狼の身体に鉄を纏わせた。
美浪とプロテアは鉄の狼の頭の部分にいた。
【神狼・鉄巨兵】、美浪の【狂犬神掛】にプロテアの【鉄神巨兵】を組み合わせた技だ。
「へぇ…面白い能力ね…」
ルミナスが笑みを浮かべながらそう言った。
ルミナスが恵美を浮かべるのは結構めずらしい事であった。
「行くわよ!フローフル!」
「ああ!」
プロテアと美浪、蒼はルミナスに向かっていった。
しかし、ルミナスは余裕の表情を崩さなかった。
「けど…どれだけ小細工をしようが無駄よ」
ルミナスは光の剣を伸ばして鉄の狼に攻撃をした。
相変わらず強力な一撃であった。
「!?」
だが、ルミナスの攻撃を鉄の狼は完全に防ぎきっていた。
その隙に蒼はルミナスに攻撃した。
流石のルミナスでもこの状況を回避しきる事は不可能である。
「【超越神滅刀】!」
極大の刃がルミナスに襲い掛かる。
ルミナスは左翼で蒼の攻撃を防ごうとしたが防ぎきれず左翼ごと左腕を切断された。
しかし、蒼のあの一撃によりヴィングスゴルデクスは一撃で粉々になったのに対してルミナスは左翼と左腕が吹き飛んだだけである所を見るとルミナスの翼は相当な防御力を誇っているのは明らかである。
やはり、ルミナスを倒すには一筋縄では行かないのが現実であった。
「くっ!?」
ルミナスは一歩後ろに下がった。
しかし、既に鉄の狼がルミナスの後ろを取っていた。
ーいつの間に…!?そうか!時を飛ばして!?
「【天乃宝玉】!」
「【鉄神剣眼】!【鉄万化眼】!」
ルミナスの周囲に無数の鉄の剣が出現し、ルミナスを貫いた。
更に鉄の狼から放たれた霊力の砲撃に鉄の剣が取り付けられており、【天乃宝玉】が強化されていた。
ルミナスは【天乃宝玉】をまともに食らった。
「!?」
ルミナスの右手足と先程修復された左翼も吹き飛んでいた。
更に蒼はルミナスの上空から斬撃をルミナスに放った。
「【超越神滅刀】!!!!」
ルミナスは上半身と下半身を分断された。
ルミナスはまたもや追い込まれていた。
アスディアに追い詰められるのは想定内であったが蒼達にここまで追い込まれるとは正直思いもしなかった。
蒼達の成長が想像以上だった。
伊達にアスディア達パルテミシア十二神の元で修行していた訳では無かったのだ。
ルミナスはこのままでは負けてしまうだろう。
ルミナスは覚悟を決めた。
「………【神の天誅】」
ルミナスの身体は光輝いた。
そして、世界が創り変わろうとしていた。
「ここは…」
ルミナスは一人、白い世界にいた。
ここはルミナスの精神世界だ。
精神世界には何度か入った事があるが、無意識にこの精神世界に入り込むのは久し振りの事であった。
ルミナスは自身の力を完全に使いこなしている。
無意識に精神世界に入る事などそうそう有り得ない。
何者かが干渉している可能性が高かった。
「私は…フローフル達と戦って…」
そう、ルミナスは蒼達と戦い、そして追い詰められた。
なので、本気を出そうと自身のローマカイザーの霊術を使おうとしたらここにいた。
「ルミナス…お前はもう…眠れ」
目の前にいたのはルミナスと白色の髪に白い瞳を持った青年であった。
ルミナスと違って髪の長さは短かった。
恐らく、この男がルミナスを精神世界に引きずり込んだ犯人だろう。
「そう、貴方が…ヤハヴェ…起源の天使…」
「ああ…ようやく…この世界を手に入れる時が来たのだ…私の野望が叶う…」
「だから、こうしてローマカイザーに張り付いて今まで過ごしていた訳ね」
「ああ…だが…ようやく…お前の身体を奪い、そして私が…『世界宮殿』を支配する!」
そう、ヤハヴェはこの時の為に、ローマカイザーの皇帝達に自身の記憶を継承させて来た。
自分が…この世界を支配する為に。
「寄生虫如きが…私の身体を乗っ取れると?」
「元々ローマカイザーは私が作り出した!私の為に存在し、私の為に死ぬ運命だ!」
「下らない…下らないわね。何でもかんでも自分一人が独占したいだけ…」
「それは貴様も同じだろう。フローフルを自分のモノにしたいだけだ」
「違うわね…確かに…私の行動原理はそこよ。けど…それだけじゃないわ…私は…思い出の中にいたいのよ」
「?」
「明日なんていらない…ずっとずっとずっと…幸せな夢を見続けたいのよ…この世界を固定させる事でね」
「それは支配する事と変わらない」
「いいえ…私は貴方とは違う。私はこの世界を正すだけ…貴方みたいに自分のモノにしたいだけじゃないわ」
「端から見たら同じだ」
「それでも…私は貴方を認めない」
「もういい。貴様は眠れ」
ヤハヴェが指をパチンと鳴らした。
すると、ルミナスは意識が無くなっていくのを感じた。
恐らく、ヤハヴェの能力だろう。
「うっ!?」
「貴様がローマカイザーである以上、私の呪縛からは逃れられない。もういい貴様はよくやった。今までの出来損ないのローマカイザーと違ってな」
ヤハヴェはそうルミナスに告げた。
実際、ルミナスは神聖ローマを統一し、そして『世界宮殿』を制圧した。
ルミナスでなければ恐らく出来なかっただろう。
「出来損ない…?それは…違う…わ…ね…」
「?」
ヤハヴェはルミナスの言葉の意味が分からなかった。
そう、ヤハヴェにはルミナスの言葉の意味など分かる筈など無かった。
ルミナスは確かに一人で世界を成し得ようとしている。
端から見ればヤハヴェのやろうとしている事も、ルミナスのやろうとしている事も、大して変わらないだろう。
だが、ルミナスは理解しているのだ。
己だけの力でここまで来た訳では無いのだ。
今までのローマカイザーの歴史があったからこそ…ここまで来れたのだ。
誰の力も信じず、感謝もせず、都合の良い時だけ利用するヤハヴェとはルミナスは違う。
「まぁいい。これで終わりだ」
ヤハヴェはルミナスに手を近付けた。
「!?」
ヤハヴェは驚愕の表情をした。
何故なら自身の胸にルミナスの左腕が突き刺さっていたからだ。
「やっぱり…貴方はバカね…」
「何…だと…」
「私の身体を…そう簡単に明け渡す訳無いでしょう?」
「何故だ…何故…私の呪縛に抗える訳…」
「誰の足元も見ずに、独り善がりな貴方には分からないでしょうね…まぁけど…教えて上げるわ。ただただ単純よ。私が…貴方より強いからよ!」
ルミナスがそう言うとヤハヴェの身体のあちこちに風穴が空いた。
「がっ!?」
ヤハヴェは訳が分からなかった。
ヤハヴェはアスディアの血を色濃く受け継いでいる。
それに対してルミナスはアスディアの末裔であり、ヤハヴェ程アスディアの力を受け継いでいない筈だ。
それなのにルミナスは自身の力だけでヤハヴェを捩じ伏せ、今正にヤハヴェを倒そうとしている。
「貴方の役目はもう終わってるのよ…既に死んだ亡霊が…私の前に立つな!」
ルミナスはそう言ってヤハヴェを吹き飛ばした。
「がっ!?」
ルミナスはヤハヴェに再び近付く。
「くっ!?」
ヤハヴェはルミナスから逃げようとした。
「何故だ…どこで間違えたのだ!?私は…私は…!」
「貴方の間違い…そんなのはたった一つよ。私を産み出してしまった事よ」
ヤハヴェは恐怖した。
今までヤハヴェは恐怖した事など無かった。
ヤハヴェにとっては全てが自分の野望を達成させる為のモノであり、ヤハヴェは相手の精神と記憶を自由に支配する能力で全てを支配してきた。
だが、ヤハヴェにも寿命が存在していた。
だからこそ、ヤハヴェは自身の能力で記憶や経験を後世に継承させ、頃合いを見て乗っ取ろうと画策した。
しかし、今のこの状況はー
「皮肉なモノね…乗っ取ろうとしてたのに…逆に乗っ取られるなんてね…」
ルミナスは薄ら笑いを浮かべながらそう言った。
ルミナスの力はヤハヴェの想像を遥かに越えていたのだ。
ヤハヴェはルミナスに術を何度も掛けたがルミナスはヤハヴェの術を意図も簡単に霊圧だけではね除けていた。
「バカな!?私の術が全く効かないだと!?」
「ヤハヴェ…貴方の如何なる術を使おうが…私の前では全くの無力よ…貴方のその力…確かに強大なモノだったわ…もし、私が貴方の術を使えなければ貴方に負けていたわね」
「まさか…貴様は…ローマカイザーの霊術を…私の術まで自在に使えるのか!?」
「私はローマカイザーの霊術を全て扱える…貴方もそれくらい知ってるでしょう?まぁ、貴方の力の全てを使えるとは思ってなかった様ね…今まで使ってこなかったからね」
ヤハヴェの能力である【継承】には後世にローマカイザーの記憶を継承させる以外にも隠された能力があった。
それが他人の記憶と精神のコントロールだ。
「『世界宮殿』の力は【継承】の上位互換とも言える能力よ。だから貴方は『世界宮殿』の支配に拘っていた。けど、私は貴方の力を使えた。だから貴方の能力を無効化も可能よ。それに…貴方の【継承】は操れる人数に限界がある。だからこの世界を征服出来ず、自身の子孫を利用しようとした…けど残念ね…誰かに寄生して…そして私を乗っ取ろうと考えた時点で貴方の負けだったのよ」
「私を…殺すのか?私は!貴様らの先祖!この世界の天使の始祖…!神だぞ!?その私を殺すのか!?」
「神が誰かを利用するなんて滑稽ね…私は生憎、無神論者でね…神なんて信じてないのよ…私が『世界宮殿』を乗っ取った理由もそれだしね」
そう、ルミナスは神など信じてなどいない。
神は…実在する。しかし、今存在する神は所詮肩書きでしか無いのだ。
そして、その最強の神々すら、ルミナスは降したのだ。
ルミナスは神など信じない。いや、ルミナスこそが神なのだ。
「貴方にしても、他のローマカイザーの皇帝にしても一つの力に頼り過ぎなのよ。けど私は違うわ。ローマカイザーの霊術以外にも多くの力を扱える…様々な文献を見て、研究してきた。貴方は【継承】以外の能力はからっきしなのは分かっているわ…つまり…貴方はここで終わりなのよ」
そう、ヤハヴェを始めとしたローマカイザーは自身のローマカイザーの霊術を使っているだけで他の術を使えなかった。
特にヤハヴェは自身の術だけでどうにかなっていたので他の術を使う必要が無かったのだ。
しかし、ルミナスは違う。
ルミナスはあらぬる術を扱う事が出来る。
ローマカイザーの霊術は勿論、エンゲリアス、霊呪法も使いこなし、それ以外にもあらゆる術を使用できる。
それだけではない、ルミナスは研究も欠かさず行っており、頭の回転も凄まじく速い。
故にルミナスは敗北を一度もせず、ここまで上り詰めたのだ。
「楽して漁夫の利を得ようとした貴方の姿は実に滑稽ね…過程を求めず、結果のみを求め続けた貴方のその愚かさに相応しい罰を与えましょう」
「何を…するつもりだ…」
「貴方は死なない、殺さない、だからといってこのまま見逃しもしないわ。私の中で永遠にさ迷い続けるのね」
ルミナスがそう言うとヤハヴェの世界は真っ黒になった。
「なっ!?何だ??これは…!!!」
ヤハヴェは辺りを見回した。
しかし、何も無かった。
「うっ!?」
ヤハヴェは何者かに後ろからナイフで刺された。
ヤハヴェはそのまま命を落とした。
「!?」
筈だった。
しかし、ヤハヴェは生きていた。
しかも、身体は完全に無傷であった。
ヤハヴェは再び黒い空間にいた。
「一体…何がどうなって…」
いきなりヤハヴェの心臓に矢が刺さった。
何者かがヤハヴェに矢を放ったのだ。
更に矢がヤハヴェ目掛けて飛んでいき、ヤハヴェは全ての矢をその身に受けて絶命した。
「ふざけるな…何がどうなっているんだ!?私は…何回殺されるのだ!?」
「永遠に殺され続けるわね」
ヤハヴェの前にルミナスが現れた。
ヤハヴェはまた殺された筈なのに生き返っていた。
そして、やはり、ヤハヴェは黒い空間にいた。
「どういう事だ!?何をした!?」
「何、貴方を無限に殺し続けて無限に生き返らせる作業を延々とやってるだけよ。だから、貴方は生きも死にもしない…終わりがない無限地獄。死んだ方がマシだったと思える位の絶望が貴方に襲い掛かるわ…他人を利用し、結果に固執した貴方に相応しい罰でしょう?」
「ふざけるな!速く…速く元に戻せええええええええええええ!!!!」
「いいえ…元に戻る事は無いわ…貴方はここで永遠に死に続ける。それが貴方の罰よ」
それからヤハヴェは何度も死に続けた。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も…
死に続けた。
世界が…切り替わる。
To be continued




