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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【最終章】天界叛逆篇
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【最終章】使徒叛逆篇ⅩⅧーelements burstー

 蒼とインベルとアポロはミルフィーユに突っ込んでいった。

 ルミナスの所へ向かおうとしていた蒼達に突如、セラフィム騎士団の最上位である天使親衛隊(フィーア・エンデ)の一人、ミルフィーユペテルギウスが蒼達に立ちはだかる。


「【風聖剣(ヴィンド・デーゲン)】!」


 ミルフィーユは風の剣で蒼達に切りかかった。


「【天使強化(サリエル・ヘーベン)】!」

「【炎天血剣(ブルート・デーゲン)】!」


 アポロがインベルと蒼を強化して、インベルは炎の剣でミルフィーユの風を飲み込み、巨大化してミルフィーユへと帰ってきた。

 ミルフィーユはインベルの攻撃を上空へ飛んで回避した。


「【氷魔天刀(シュネー・デーゲン)】!」


 蒼がミルフィーユのいる場所に氷の斬撃を放った。

 ミルフィーユは風の剣でガードするがガードしきれず、地面に落下した。


「アンタの能力は風…風は火に弱い」


 インベルがそう言った。

 そう、インベルの能力は炎を扱い、ミルフィーユは風を操る。

 五大属性には優劣があり、インベルの扱う炎は水に弱いが風に強い。

 圧倒的な力の差があれば相性を覆されるが同レベルの技と技とがぶつかれば、当然ながら相性が有利な方が勝る。


「ふぅ~、やっぱり、三対一はきついね~」


 ミルフィーユが嬉しそうにそう呟いた。

 そして、ミルフィーユの霊圧が上昇した。


「やべぇ…来るぞ!」

「言われなくても!」

「ええ」


 蒼とインベルとアポロは構えた。


「【第二解放(エンゲルアルビオン)】!」


 ミルフィーユは【第二解放(エンゲルアルビオン)】を発動した。

 風で出来た翼に頭上に天使の輪っかがあった。

 そして、周囲に風の竜巻が無数に存在していた。

 無限の風により全てを破壊するミルフィーユの【第二解放(エンゲルアルビオン)】。


「【朧弦月(おぼろげんげつ)風騎士宮殿(ラファエル・パラスト)】」

「くっ!?」


 蒼達は久し振りに彼女の【第二解放(エンゲルアルビオン)】を見た。

 相変わらずの凄まじい霊圧であった。


「「「【第二解放(エンゲルアルビオン)】!!!」」」


 三人共すぐに【第二解放(エンゲルアルビオン)】を発動した。

 そうしなければやられるのは目に見えていたからだ。


「【アルカディアの氷菓】!」


 蒼の身体に白い衣が纏われており、背中には氷の翼に歪な形をした輪っかがあった。

 更に右手には真っ白い刀が握られていた。


「【天炎緋血(カマエル・ブラッド)】!」


 インベルの背中には四つの赤い翼が生えていた。

 更に赤い剣は巨大な銃に変化していた。


「【死滅天使の空間(サリエル・グエム)】」


 アポロの背中に紫色の翼が生えており、更に額に第三の目が開眼していた。

 銃剣も巨大化しており、近接戦闘に特化した形となっていた。

 全身に紫色の羽衣が纏われていた。


「三人の【第二解放(エンゲルアルビオン)】…流石に…壮観ね」

「お世辞をどうも」

「お世辞なんかじゃ無いわよ、フローフル。君達は強い。だから、私が全力で叩き潰す!」


 ミルフィーユはそう言って手を動かし、風を操った。

 ミルフィーユは手を使って周囲にある風を自在に操る事が出来る。


「【氷魔天刀(シュネー・デーゲン)】!」


 蒼はミルフィーユの風を凍り付かせた。

 しかし、ミルフィーユの風は凍らせただけでは止まらなかった。

 氷を力業で破った。


「【突風吸引(ヴィンド・アブソーブ)】!」


 ミルフィーユは風の竜巻を蒼達の前に出現させ、その吸引力で蒼達の動きを止めた。


「くそ!?何て吸引力だ!?」

「体が…動かない…!」

「くっ!?」


 ミルフィーユは動かなくなった蒼達の隙を逃さなかった。


「【無限乱風(ヴィンド・ツァルロス)】!」


 ミルフィーユは更に無数の竜巻を蒼達に叩き付ける。


「【炎魂砲撃(ゼーレ・カノーネ)】!」


 インベルはミルフィーユの無数のたつまきに炎の砲撃をぶつけた。

 すると、インベルの炎の砲撃は勢いを増し、ミルフィーユへと襲い掛かった。

 ミルフィーユは砲撃を回避しようとするもインベルの炎の砲撃はミルフィーユの風の力で勢いが増しており、回避しきれなかった。


「くっ!?」


 ミルフィーユは体勢を立て直して再び風を使って攻撃した。


「いくらやっても同じだ!【炎魂砲撃(ゼーレ・カノーネ)】!」


 再びミルフィーユの攻撃をインベルは打ち消し、更に巨大な一撃へと変化し、ミルフィーユに襲い掛かる。


「それはどうかな?」


 ミルフィーユは既に蒼達の後ろに回っていた。

 自身の風の力とインベルの炎でミルフィーユの姿を眩ませて既に後ろに回っていたのだ。


「!?」


 ミルフィーユは手から風を放った。


「【神烈風衝(ヴィンド・スターテン)】!」


 蒼達は攻撃を回避しきれず全員手傷を負った。


「くっ!?」

「ちぃ!?」

()っ!?」


 蒼達は再びミルフィーユと距離を取った。

 その際、インベルは巨大な銃を身の丈程の大剣に変形させていた。


「相性が良いからって油断しすぎだよ。そんなんじゃ、三人でも私には勝てないよ」


 ミルフィーユはそう言って竜巻を再び蒼達にぶつけた。


「行くわよ!インベル、フローフル!【死滅拘束(サリエル・バインド)】!」


 アポロは銃剣からミルフィーユに特殊光弾を飛ばした。

 しかし、ミルフィーユはアポロの光弾を回避した。


ー入った!


「おらあああ!!」

「でりゃあああ!!」

「!?」


 ミルフィーユはいつの間にか蒼とインベルに身体を斬られていた。

 先程ミルフィーユがいた場所にアポロがいてアポロがいた場所にミルフィーユがいた。

 考えられる事は一つだ。


「空間を…入れ替えた?」


 ミルフィーユがそう呟いた。

 ミルフィーユは風の剣を両手に作り、蒼とインベルの剣を受け止めていた。

 そう、アポロは距離は決まっているものの、任意で指定した対象の空間を入れ替える事が出来る。


「【天界交換(サリエル・ツェントラーレ)】」


 アポロは再び空間を入れ換えた。

 ミルフィーユの後ろからアポロが切りかかってきた。


ーなっ!?一体何を入れ替えて…


 ミルフィーユは気が付いた。

 何を入れ替えてもいいのだと。

 アポロは…ミルフィーユの作り出した無数の竜巻と自身とを入れ換えたのだ。


「【死滅天使神剣(グエム・デーゲン)】!」


 ミルフィーユは思いっきり背中を切り裂かれた。

 しかし、ミルフィーユは咄嗟に身体を捻ってアポロの剣のダメージを逃がした。

 しかし、その隙を蒼とインベルが逃す筈が無かった。


「【氷魔天刀(シュネー・デーゲン)】!」

「【炎天血剣(ブルート・デーゲン)】!」


 ミルフィーユに氷の刃と炎の剣が同時に襲い掛かる。

 これはミルフィーユも回避しきれず直撃した。


「くっ!?」


 ミルフィーユは自身に風をぶつけ、無理矢理、蒼達から距離を取った。

 そして、ミルフィーユはそのまま態勢を立て直した。

 ミルフィーユは全身血塗れになっていた。


「ふふ…やっぱり、三対一はきついわね…」


 蒼もインベルもアポロも強くなっていた。

 しかもアポロのあの空間を入れ替える技はミルフィーユは見た事が無かった。

 恐らく、ミルフィーユが知らない所で習得していたのだろう。

 アポロだけではない、インベルも蒼もミルフィーユの想像以上に成長していた。

 向こうは手傷が負っているだけに対してこちらは既にボロボロであった。

 このままでは間違いなくミルフィーユが敗北を喫するだろう。


ー仕方無い…あれをやるか…


 ミルフィーユは何かをするつもりだ。

 蒼達はミルフィーユの霊圧の質が変わった事に気が付いた。

 すると、周囲の竜巻が完全に消えた。


「何だ?」

「何かをするつもりみたいね」

「その前にぶっ倒す!」


 蒼達はミルフィーユに攻撃を仕掛ける。

 しかしー


「無駄」


 ミルフィーユは両手から光のビームを発射した。


「無駄だぜ!【炎魂砲撃(ゼーレ・カノーネ)】!」


 インベルは大剣を巨大な銃に切り替えて炎の砲撃を放った。

 しかし、炎の砲撃は一瞬で分解された。


「!?」


 蒼達はどうにかミルフィーユの攻撃を回避した。


「何だ…今のは?」

「これは…ヤバイかもな…」


 インベルが驚愕している中、蒼はそう呟いた。


「どういう事?フローフル?」

「どうやら…ミルフィーユは今から本気を出す所らしい」

「そういう事」


 蒼がそう言うとミルフィーユは笑顔でそう言った。


「この能力を使うのは本当に久方振りだよ…セラフィム騎士団に入る時のいざこざ以来だ…」


 ミルフィーユはそう言って両手から風の剣を顕現させた。

 ただし、ただの風の剣では無かった。

 風だけでなく、光の様なモノが纏われていた。


「フローフル…何なんだ?ミルフィーユのあの能力…少なくとも風属性攻撃じゃなかったぞ?」

「あれは恐らく…霊魔結合だ」

「霊魔結合?という事は…風以外の属性が混ざってるって事?」

「ああ、見た所、風、火、水、土の四属性が混ざってる」

「流石はフローフル。いい観察眼だね…そう、私の今の攻撃は四大元素を司る四つの属性を混ぜてる。分子属性…とでも名付けようかな。この攻撃を受けたモノは分子レベルで分解される。どんなモノでもね」


 ミルフィーユの能力は蒼が予測した通り、霊魔結合によるモノだ。

 霊魔結合は誰にでも出来るモノでは無い。

 属性を別々に扱う事は大して難しい事では無い。

 しかし、複数の属性を同時に使い、新たな属性にするとなると話は別であり、複数の属性を混ぜて新たな属性を生み出す事を霊魔結合と言う。

 この霊魔結合を扱える者はそうは多くは無い。

 ミルフィーユはこの力を蒼達に見せた事が無かった。

 と言うより、ミルフィーユがこの力を使うのは数十年振りなのだ。

 ミルフィーユがこの力を使わなかった事には理由があり、一つはこの力を使うと大抵一撃で殺してしまう為、戦いを楽しめないからだ。

 そしてもう一つは単純にこの力が余りにも危険過ぎるからだ。

 見ての通り、あらゆる物質を触れただけで問答無用で分解してしまう。

 間違いなく最強の霊術の一つである。


「どうする?フローフル?」

「とにかく、あいつのあの技は喰らったら終わりだ。戦いが長くなるとそれだけ俺達が不利だ。一気にカタを着けるしかねぇな」

「どうやってやるつもりよ?」

「とにかく、あいつの動きを止める」


 蒼がそう言うとアポロは何か分かった様な顔をした。


「そう言う事ね」

「いや、どういう事だよ?」

「とにかく、インベルと俺で突っ込む!」

「ちょっ!?マジかよ!?」


 蒼とインベルがミルフィーユに接近した。


「ちょっとそれは愚作じゃないかな?【分滅風剣(ウムビルデン・ヴィンド)】!」


 ミルフィーユは両手の剣で蒼とインベルに攻撃した。


「【虚神(きょじん)】!」


 蒼は霊呪法でミルフィーユの前に盾を作った。

 インベルは直前に大剣をガンモードに変形し、火炎放射を放った。


「【炎神放射(ヴェルメ・フランメ)】!」


 しかし、ミルフィーユが切り裂いた場所は粉々に分解された。

 蒼の作った盾もインベルの炎も一瞬で分解された。

 更にミルフィーユは両手から霊圧を放っていた。


「出来れば死なないでね、【風滅裂傷(ヴィンド・ラディーレン)】!」


 巨大な斬撃が蒼とインベルに襲い掛かる。

 恐らくこの斬撃も喰らえば一撃で終わりだ。


「【死滅拘束(サリエル・バインド)】!」


 ミルフィーユは後ろにいたアポロに気が付いていた。

 ミルフィーユはアポロの特殊光弾を素手で粉々に消し飛ばした。


「インベルとフローフルで正面切ってその隙にアポロの【死滅拘束(サリエル・バインド)】で拘束…バレバレだよ」

「それはどうかしらね?」

「何?……!?」


 ミルフィーユはアポロの狙いに気が付いた。

 特殊光弾はフェイクだ。

 アポロの本当の狙いはミルフィーユの斬撃を切断する事だ。

 アポロはミルフィーユがこちらを向いた瞬間に【死滅天使神剣(グエム・デーゲン)】で蒼とインベルを襲う斬撃を切断したのだ。

 アポロの【第二解放(エンゲルアルビオン)】の能力は空間切断。

 それにより、ミルフィーユの斬撃を切り裂けたのだ。

 特殊光弾を喰らえば問答無用で喰らった相手は拘束される。

 だからこそ、ミルフィーユはアポロを最も警戒していたのだ。

 警戒していたのが逆に仇となった。


「【氷魔天刀(シュネー・デーゲン)】!」

「【炎天血剣(ブルート・デーゲン)】!」


 蒼とインベルの極大の一撃がミルフィーユへ直撃した。


「くっ!?」


 ミルフィーユは足から風を発生させて蒼達から距離を取った。

 しかし、直後にミルフィーユは片膝を付いていた。

 蒼とインベルの攻撃により、ミルフィーユはかなりのダメージを受けていた。

 ミルフィーユが本気を出してここまで追い込まれるのは本当に久方振りであった。

 蒼とインベルの直接攻撃にアポロの空間切断能力によるサポート。

 ミルフィーユが感服するほど見事なコンビネーションであった。


「後少しだ!」

「油断するな!インベル!」

「分かってるよ!」


 蒼とインベルがミルフィーユに突っ込んでいった。


「本当に強くなったね…ならば…私も本領発揮と行きますか」


 ミルフィーユがそう言うとミルフィーユの姿が掻き消えた。


「!? インベル!」


 蒼がインベルを引っ張り、投げ飛ばした。

 そして、蒼はミルフィーユの剣を受け止めた。


「へぇ…大した反応速度だね…けど…」


 蒼の刀はミルフィーユの剣によってヒビが入っていた。


「ちぃ!」


 蒼は氷を出現させ、ミルフィーユと距離を取った。

 蒼の刀はそのまま折れた。

 しかし、蒼の刀は氷を発生させて元の形に戻した。


「……速いわね」

「風属性の力で高速移動したんだ。風属性は他の属性と比べて攻撃速度に優れてる」


 七元属性にはそれぞれ特徴があり、光属性は生物に直接干渉する、闇属性は概念に干渉するという特徴があるが残りの五大属性にも無論特徴はある。

 火属性は攻撃力に優れており、重火器と相性がいい。

 雷属性は相手に麻痺の追加効果を与え、相手の動きを鈍らせる事が出来る。

 水属性は汎用性に優れ、他の属性と同時に使ったり応用がしやすい。

 土属性は防御力に優れており、風属性は速さに優れている。

 ミルフィーユの得意属性は風属性であり、本来のミルフィーユは高速戦闘を得意とする。


「さぁ…終わらせるよ!」


 ミルフィーユは蒼達に突っ込んでいった。

 ミルフィーユの狙いはアポロだ。

 アポロのサポートがかなり厄介なのでそれを真っ先に潰そうという魂胆だ。


「狙いは分かってますよ…ミルフィーユ先生!」


 そう言ってアポロはミルフィーユと自身の空間を入れ換えた。


「!?」


 アポロは最初からミルフィーユの狙いを分かっていた。だからこそ、空間の入れ換えが上手くいった。


「はああああ!!!」

「おらああああ!!!」


 蒼とインベルはミルフィーユに攻撃を仕掛けた。


「甘いよ!」


 蒼はミルフィーユの攻撃を回避したがインベルは回避しきれず左手をミルフィーユの剣により消し飛ばされてしまった。


「ぐっ!?」

「インベル!」


 しかし、インベルは右手でミルフィーユの腕を掴んだ。


「!?」

「へへ…話さねぇよ!」


 ミルフィーユがインベルの右手を切り飛ばそうとすると蒼が刀から氷を放ち、ミルフィーユの腕を凍らせた。


「【死滅拘束(サリエル・バインド)】」

「!?」


 ミルフィーユは蒼の氷を消し飛ばし、アポロの攻撃を回避しようとした。

 だが、一歩遅かった。

 ミルフィーユにアポロの特殊光弾が命中し、ミルフィーユの動きが拘束された。


「フローフル!インベル!」

「分かってんよ!【炎天使滅剣(カマエラ・デーゲン)】!」

「【氷魔天刀(シュネー・デーゲン)】!」

「【死滅天使神剣(グエム・デーゲン)】!」


 三方向からミルフィーユ目掛けて刃が飛んできた。

 全ての刃がミルフィーユに当たった。


「くっ…は…」


 ミルフィーユは炎の剣、氷の刃、闇の剣を同時に喰らい、そのまま倒れた。


「はぁ…はぁ…」

「くっ…」

「やったわ…」


 蒼達はどうにかミルフィーユを倒す事が出来た。

 しかしー


「ぐはっ!?」


 アポロが血を吐いて倒れた。

 更にインベルも相当ダメージを受けていた。


「インベル!アポロ!」

「フローフル…あなたは先に…進みなさい」

「…!?」

「そう言うこった…俺達は一足先にリタイアだ。心配すんな…こっちにはアポロがいる…死にやしねぇよ」


 アポロは回復の力も持っている。

 取り合えずアポロは意識があるようだし回復は出来るだろう。


「分かった…じゃあ…俺は先に行く」


 蒼はそのまま先に進んで行った。


「行っちゃったか…まさか…この私が…負けるなんてね…」

「!?ミルフィーユ!?」

「驚かなくても大丈夫だよ、インベル。私はもう、動けない」

「………」

「君も…アポロも…そして…フローフルも…成長したモノだね…」


 ミルフィーユは感慨深そうにそう言った。


「うっ…」


 アポロは脇腹に空いた大穴を塞いだ後、インベルの治療を始めた。

 アポロも自身の回復を完全には終えていないがインベルが危険な状態なのは目に見えているのでそちらを優先したのだ。


「私は…ルミナスの目的なんて…どうでもいいわ…ただ…戦えれば…それで良かった…君達は…強くなった…それだけで私がルミナスの計画に付き合った価値はあったよ」

「私達からすればいい迷惑だったわ」

「全くだ…やる事成す事メチャクチャだなアンタ」

「ふふ…そうかも…ね…」

「その傷で意識を失わないなんて…やっぱり化け物ですね」

「なまじ強いと中々気絶出来なくてね…私はどうやらここまでみたいだね…私はゆっくりとここで倒れているとするよ」

「そうしてくれ」


 インベルはミルフィーユにそう言った。

 ミルフィーユがこれ以上立ち上がったらアポロもインベルも阿鼻叫喚である。

 こうして、ミルフィーユは蒼、インベル、アポロの三人掛かりを相手に敗北した。

 だが、敵はまだ残っている。蒼達の戦いはまだ、始まったばかりなのだ。






 蒼は作り替えられた『世界宮殿(パルテノス)』を走っていた。

 見れば見るほど、前とは違った構造になっているのが分かる。


「アスディア達の霊圧が感じねぇ…まさか…本当に…」


 蒼はミルフィーユからパルテミシア十二神が全滅した事を知らされた。

 霊圧を全く感じないという事はつまりはそういう事なのだろう。

 蒼が今感じるのは仲間達の霊圧とセラフィム騎士団の霊圧だけだ。

 今回、蒼は殆ど無傷で尚且つ本気を出さずにどうにか勝利出来た。

 こちらが三人掛かりであったのが大きいし何よりアポロとインベルがミルフィーユと相性が良かった、そして、蒼達三人がミルフィーユの戦術をある程度把握していた事が大きい。

 相手がミルフィーユで運が良かったと言えるかもしれない。

 他の天使親衛隊(フィーア・エンデ)が相手なら更に苦戦していたかもしれない。

 まぁ、ミルフィーユの性格上、自ら望んで蒼達の所へ向かった可能性が高いが。


「何だ?あれは」


 蒼は光の柱を見つけた。


「貴方がここにいるって事は…ミルフィーユは負けたのね」


 現れたのはルミナスであった。


「ルミナス!?」

「今の私に攻撃しても無駄よ。立体映像(ホログラム)だもの」

「なっ!?」


 蒼はルミナスの言葉に驚愕した。

 どこからどう見ても本物のルミナスにしか見えなかった。

 立体映像(ホログラム)にしてはあまりにも精巧すぎる。


「アスディアは…どうした?」

「聞かなくても分かるでしょう。まぁいいわ。教えてあげる。アスディア・ゼウス・パルテミシアは…私が殺した…そして…私がこの世界宮殿(パルテノス)を完全に掌握したわ」

「………」


 やはり、蒼の思った通りであった。

 想定していた中でも最も最悪な展開になっていた。

 ルミナスが世界宮殿(パルテノス)を支配したという事はこの世界を手に入れたも同然である。

 ならば、目の前の立体映像(ホログラム)の様に無から有を造り出す事など造作も無い事なのだろう。


「私に会いたければ貴方の目の前にある光の柱に足を踏み入れればいいわ。そうすれば自動的に上空の城へ転送される」

「やけに親切じゃねぇの?わざわざ招き入れるなんて」

「貴方は再び立ち上がった…立ち上がってしまった…そうなれば私が自ら貴方を下すしか無いわ。今度こそ…貴方の心を完全に折る」

「はっ!やれるもんならやってみやがれ!」


 蒼はそう言った。

 今までの蒼とは違う。今度はもう、負けない。

 蒼はルミナスに勝つ。

 蒼は一人の力だけでは無い、皆の力でルミナスを倒すと決めたのだ。


「相変わらず威勢だけは良いわね。いいわ…貴方を…いえ、貴方達を待っていて上げるわ」


 ルミナスはそう言って消えていった。

 どうやら本当に立体映像(ホログラム)だった様だ。

 恐らく世界宮殿(パルテノス)を支配した事による影響だろう。

 だが、そんな事は関係ない。

 蒼は一人で戦っているのでは無い。

 蒼は皆の力でルミナスを倒すと決めたのだ。

 一人が駄目なら皆でルミナスを倒す。蒼はそう決めたのだ。

 蒼以外も必ずルミナスの元へと来る。


「待ってろ…ルミナス」


 蒼はそう言って光の柱へと足を踏み入れた。

 すると、蒼の姿は完全に消えていった。






「止まって」


 プロテアが美浪と慧留にそう言った。


「どうしたの?プロテア?」


 慧留とプロテアと美浪は南へと向かっていた。


「誰かいるわ。出てきなさい!」


 プロテアがそう言うと何者かが出てきた。


「俺はジェジェ・ジェルルティーガ…天使親衛隊の一人だ」

「じゃあ、敵って事だね」

「そういう事だ。ルミナス様は敵を全力で排除しろと命令されている。よって貴様等を排除する」


 ジェジェはそう言って剣を抜いた。


「どうやら…やるしか無いみたいやな…」

「うん、私達は三人いる…私達に利があるよ!」


 美浪と慧留がそう言った。

 確かに三対一、慧留達が圧倒的に有利であった。

 戦いとは必ずでは無いが数が多い方が勝利する事が多い。

 一人兵力がいるだけ…それだけで力となるのだ。

 数の力というのは案外馬鹿にならないモノがあり、人間は集団で行動する事で大きな敵を倒していった。

 それは今も昔も大して変わりは無い。


「ふん…砂利が三人ならば大した問題では無い」

「行ってくれるわね。なら、あなたはその三人の砂利にやられる事になるわ」

「成る程…ここまで来ただけあって強い物言いだな」


 ジェジェはそう言って慧留達を見つめた。

 何故だろう、慧留達はジェジェがとてつもなく不気味に思えた。

 普通に喋ってる、一見すると他の天使達と変わらない様に見えるがジェジェの瞳には光が無く、まるで死んでいる様なのだ。


「気付いている?二人とも」

「そうね、何かおかしいわ」

「うん、まるで魂が無いみたいや。けど、見覚えがあります」

「どういう事?美浪」

「USWであいつと似た様な敵と戦いました。後で澪さんが教えてくれました。その敵はルミナスによって洗脳されていたと…言ってました」

「じゃあ、あいつもそうって事?」

「多分そうだと思うよ。ジェジェって確か私の記憶によると反乱軍の一人でとてもルミナスに…神聖ローマに着くような男じゃないよ」


 慧留は神聖ローマ出身であった。

 なのでジェジェの事も少しは知っていた。

 ジェジェは反乱軍の代表格であり、ルミナスに着くなど有り得ない。

 ルミナスに何かされたと考えるのが普通だろう。


「取り合えず…あいつを倒しましょう」

「そうだね」

「はい!」


 プロテアがそう言うと慧留と美浪は頷いた。






To be continued

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