【最終章】使徒叛逆篇ⅩⅦーWhiteー
アスディアとルミナスは『世界宮殿』の最上階で戦っていた。
アスディアは神具、【雷帝神鞭剣】を使って、ルミナスは第二解放、【裁きの白天翼】を使って戦っていた。
アスディアの神具は雷の長剣に変わったり雷の鞭に変化したりと変幻自在の神具であった。
ルミナスは背中の白い翼から白い剣、【破滅の王剣】を使い、アスディアに攻撃していた。
白い雷と白い剣がぶつかり合っていた。
現在の所、二人の力は殆ど互角であった。
「やれやれ…どうやら…このままでは埒が空かないね」
「そうね。さっさと勝負を着けたい所ね」
「よく言うね…君、全く本気を出していないじゃないか」
「それは貴方もでしょ?」
ルミナスは白い長剣を振った。
すると、辺りの建物が真っ二つに切り裂かれた。
「やれやれ…【白雷天滅】」
白い雷がルミナスに襲い掛かる。
しかし、ルミナスは翼でガードし、そのまま霊呪法を放った。
「【極楽鳥花】」
ルミナスは無数の白い鳥をアスディアに放った。
しかし、アスディアは【雷帝神鞭剣】を鞭の様に形を変え、ルミナスの攻撃を完全に防いだ。
「【蒼緑雷撃】」
アスディアは無数のプラズマを放った。
アスディアの扱うプラズマ属性は雷属性の派生属性であり、強力な属性の一つである。
ルミナスは翼で攻撃を防いだがルミナスの身体にプラズマが僅かに侵入し、ルミナスの動きが鈍った。
「くっ!?」
「【雷神の剣】!」
ルミナスはアスディアの斬撃を回避しきれず、左腕と左翼を切り落とされた。
「………」
ルミナスは人生で初めて攻撃を喰らった。
厳陣の時は攻撃しても無駄だという事を分からせる為に敢えて攻撃を受けた。
しかし、今回は違う。あくまでも手を抜かずに戦い、ましてや腕を切り落とされたのは初めての事だった。
「ふぅ~、ようやく一撃だね♪」
「そうね…まぁ、貴方もだけど」
ルミナスがそう言うとアスディアの右肩が切り裂かれていた。
さっきの今でスレ違い様に斬撃を与えたのだ。
「全く…可愛いげが無いね…」
アスディアの右肩の傷が既に治癒していた。
アスディアはあらゆる攻撃を受けても一瞬で回復する事が出来る。
「貴方がその程度の傷を回復出来るのは知ってるわ。けど…それは私も同じよ」
ルミナスの左翼と左腕はいつの間にか治癒していた。
ルミナスのローマカイザーの霊術の一つ、【無限再生】だ。
ルミナスの霊力が尽きない限り、ルミナスが死ぬ事は無い。
「やれやれ…お互いに再生持ちか…これは厄介だ」
「そうね…さぁ?どうするのかしら?」
「これは…どうやら本気を出すしか無さそうだね…」
アスディアから雷だけでなく風も発生していた。
「それが…天嵐ね」
「そこまでお通しか…この能力はガルディアにしか見せた事が無いんだけどね…」
アスディアの天嵐は風、雷、光の三つの属性を霊魔結合して作り出した属性だ。
アスディアの最強戦術であり、アスディアのみが使う事が出来る特殊な力だ。
この力は天候をも操る事が出来る。
空が雨雲に包まれた。この『世界宮殿』には雨が降ることなど有り得ない。
しかし、アスディアの力により雨雲を発生していた。
「【嵐天候】…この力の基本戦術だよ。空を操り、雷や嵐を巻き起こす」
空には既に落雷と嵐が渦巻いていた。
ルミナスはアスディアの強大な霊圧に少し驚いていた。
「大した霊圧ね…おまけに天候という概念すらも操るその能力…」
「驚くのはまだまだこれからだよ。【天雷白虎】」
雷が白い虎の形となり、更に風を纏ってルミナスに襲い掛かった。
「【破滅の王剣】!」
ルミナスは巨大な長剣を生成し、雷に攻撃した。
「無駄だよ」
しかし、ルミナスは雷を防ぎきる事は出来ずまともに攻撃を受けた。
「ぐっ!?」
ルミナスの白い長剣は落雷により一瞬で砕かれ、ルミナスは風により全身を切り刻まれた。
しかし、ルミナスは翼を展開して体勢を立て直した。
「さぁ、どんどん行くよ【天風朱雀】」
今度は白い風で出来た鳥が出現し、更に白い稲妻を纏っていた。
ルミナスは翼を展開して攻撃を回避しようとするも風の勢いが強すぎて回避出来ない。
ーまさか…これ程とはね…
ルミナスは風に飲み込まれ、再び身体を切り刻まれた。
「かはっ!」
ルミナスは全身が傷だらけになり、更に吐血もしていた。
ルミナスの再生が追い付いていなかった。
ーこのままでは不味いわね…
「更に…【雷神玄武】!」
白い風と雷で出来た象の足がルミナスを踏み潰した。
「これで止めだ。【天稲妻青龍】!」
アスディアは自身の剣から白い風と稲妻の龍を出現させ、ルミナスに叩き付けた。
この龍は全ての事象を喰らい尽くす。
時間や空間すらも喰らい尽くし、全てを無に帰す。
「いえ…私はまだ終わらないわ」
「いや、君はここで終わりだよ」
ルミナスはそのまま風と稲妻の白い龍に飲み込まれた。
ーああ…これ程の力を…私が今まで闘った敵の中で最も強い…それは認めるわ
ルミナスはアスディアの力を改めて思い知っていた。
楽に勝てるなどとは最初から思ってはいなかったがまさかこれ程の力があるとは予想外であった。
流石は主神…この世界で最も強い最強の神。
だが…ルミナスは更にその先を征く。
ルミナスはローマカイザーの霊術を全て受け継いでいる。
ローマカイザーに自身の記憶を伝承する初代皇帝ヤハヴェの【継承】。
あらゆるモノを盗む事が出来る二代目皇帝ライトの【強奪】。
自身の霊力が尽きない限り、無限に回復が続く三代目皇帝ルクスが扱う【無限再生】。
自身と契約した物や動物、果ては人物も自在に好きなタイミングで召喚出来る四代目皇帝フォトンの【召喚】。
自身の剣の技術を向上させる五代目皇帝ディユの【神速剣術】。
モノに魂を入れて自分の思いのままに操る事が出来る六代目皇帝リヒトの【傀儡操演】。
死んだ者を蘇生させる事が出来る七代目皇帝リングの【輪廻転生】。
眼を合わせた者の精神を破壊、洗脳する八代目皇帝シャインこ【白王眼】。
味方に自身の霊力を渡す九代目皇帝ヤハヴェラの【霊力伝達】。
ローマカイザーの皇帝は皆、この様に特殊な霊術を扱う事が出来た。
ならば、ルミナスも勿論、その霊術を使えるという事になる。
そして、ルミナスはその力を解放した。十代目皇帝ルミナスのその力の名はー
「【神の天誅】」
ルミナスは光り輝いた。
「!?」
そして、アスディアの龍を掻き消した。
「何だい?それは…」
「これが…私の本当の力よ」
ルミナスの額に第三の眼が開眼していた。
更に白い翼も四対から六対…計十二翼の翼が生えており、その翼のあちこちに無数の眼があった。
ルミナスの瞳も変化しており、一つの眼球に瞳が三つあった。
「【白翼天使の無限神眼】…これが私の…真の【第二解放】であり…第七のトロンペーテ。今まではこの力を制御しきれなくて使えなかったのだけど…今やっと…貴方との戦いで私が死に掛ける事で完成したわ」
「何?その主人公補正みたいな力…洒落にならないね…」
アスディアはルミナスの霊圧に驚愕していた。
単純に姿の異質さと霊圧の高さはさる事ながら、アスディアの奥の手を一撃で吹き飛ばした。
「【天雷白虎】!」
アスディアは雷と風で出来た白い虎を出現させた。
その白い虎がルミナスに突っ込んでいった。
「【天白炎眼】」
ルミナスの翼の無数の瞳が白い炎を出現させた。
その炎が白い雷と風の虎を掻き消し、更に白い炎は大きくなり、アスディアに向かってきた。
「技を吸収して巨大化してるだと!?」
アスディアは雷を放ったが結局、雷は燃やし尽くされ、更に白い炎は勢いを増してアスディアに襲い掛かる。
アスディアはルミナスの白い炎により左半身が吹き飛んだ。
「がはっ!?」
アスディアはすぐに身体を再生させようとするも更に白い炎が襲い掛かり、アスディアの全身が穴だらけになっていた。
「ぐっ!?」
「無駄よ…貴方がいくら無限に再生出来ても…再生するモノが残っていなければ無意味よ…」
アスディアの霊力は実質無限であり、ほぼ不老不死だ。
だがいくら不老不死でも身体が欠片も残らなければ当然死ぬ。
ルミナスの白い炎は火、風、光の三属性を霊魔結合しており、あらゆるモノを燃やし尽くす事が出来る。
それは概念や現象にも有効であり、更に技を吸収して巨大化する。
「【天稲妻青龍】!」
アスディアはさっきより巨大な雷と風の白い龍が出現し、ルミナスに攻撃した。
しかし、ルミナスは翼の眼から白い炎を発射し、一瞬でアスディアの技を消し飛ばした。
ーやれやれ…ここまで強いとはね…
アスディアは悟った。
自分はここで死ぬという事を。
間違いなく、アスディアはここで死ぬ。
いや、パルテミシア十二神は今日、ここで死ぬ。
この戦いは間違いなくルミナスの勝ちだ。
まさか、こんなにも呆気なくやられるとは思いもしなかった。
いや、思わない様にしていたという方が正しい。
ルミナスはローマカイザー最強である。
それだけではない、ルミナスはこの世のあらゆる才に愛され、アスディア達の持つ神の力も備わっている。
今のルミナスの力はまごうこと無く神の力。
ルミナスは人と天使の間に生まれたハーフエンジェルであり、神の力も宿している。
人の力、天使の力、そして神の力を持つルミナスは最早ハーフエンジェルに収まる存在ではない。
今のルミナスは謂わばゴッドエンジェルと呼べるべき存在である。
天使とは元来、神の使いであった。故に天使という名で呼ばれていた。
しかし、その天使が今、神を越えた。
「貴方はこの世界を千年間見据えてきた…けど…もうそれも終わりよ。貴方はここで終わる」
「その様だね…ふふふ…やっぱり…僕では君には勝てなかったか…何か…情けないな…」
「パルテミシア十二神は全員死んで貰うわ。貴方たちが生きていてはこの『世界宮殿』は完全に支配出来ないからね」
この『世界宮殿』はパルテミシア十二神が支配権を持っており、殺さないとその支配権を奪う事が出来ない。
ルミナス達は最初からパルテミシア十二神を殺すつもりで来ていた。
ルミナスの力は想像を遥かに越えていた。
アスディアはもう、後は蒼達に託すしか無くなった。
いや、アスディアはある意味、こうなる事を望んでいたのかもしれない。
アスディアは『世界宮殿』を千年間守っていた。
そして、自分のやっている事に何一つ疑問を持たなかった。
しかし、仲間が次々と死んでいき、そして最愛の人であったセレナーデとその息子であるオルフィスが亡くなった時、アスディアは分からなくなった。
自分は一体、何のためにこの『世界宮殿』を守っているのか。
疑問は膨れ上がり、果たしてこの『世界宮殿』を守る意味があるのか、アスディアはそう思う様になった。
そして、アスディアは生きる意味が分からず、死にたいと思う様になった。
しかし、アスディアは無限に身体を再生する生命力で満ちていた。
ルミナスの様に欠片も残さずに木っ端微塵に出来る程の力で亡くてはアスディアは殺せないしましてや自殺も不可能だった。
もう、アスディアは抵抗するつもりは無かった。
敗けが確定している戦いに今のアスディアは足掻く気にはなれなかった。
「これで…終わりよ」
ルミナスが翼にある瞳から白い炎を発射した。
ー後は頼んだよ…フローフル…このオモチャ箱をどうするか…それは君達次第だ。
ルミナスの放った白い炎がアスディアを焼き尽くす。
アスディアはその瞬間、走馬灯が見えた。
今までの千年間の思い出が頭を高速で過る。
まさか、アスディア自身、自分がこんなベタな死に方をするとは思っても見なかった。
アスディアの身体が徐々に白い炎によって掻き消える。
その時、アスディアの眼には二人の幻影が写っていた。
ーセレナーデ、オルフィス…
ーアスディア…今まで…お疲れ様
ーさっさと行くぞ!
アスディアはセレナーデとオルフィスに手を引かれた。
ーああ…後は…生きてる皆に任せるさ
アスディアの身体は完全に塵一つ残らず消し飛び、完全に絶命した。
アウス、ジェネミ、ランクル、イシュガルの三名はフラン達、天使親衛隊によって殺された。
彼等は全員血塗れになって横たわっていた。
「やはり…強かったな…」
「そうだね…」
「ミルフィ…貴様にしてはあまり楽しそうでは無かったな。戦いは好きな筈だろう」
「別に…気分ってのもあるでしょ」
ミルフィーユはフランの問いにそう答えた。
「上ももう終わってる様ね…これで…私達の今回の任務も終了ね」
エクレアは草臥れた様にそう言った。
「では、我々も上へ向かおう」
「………」
フランがそう言うとミルフィーユ、ジェジェ、エクレアは黙ってフランに付いて行き、上へと向かった。
ここは第十二階層。
ここでは上半身と下半身を分断されたガルディアが横たわっていた。
「全滅……か……」
ガルディアは自分以外のパルテミシア十二神が完全に絶命したのを感知した。
そして、自身の命の灯火も尽きようとしていた。
ガルディアはローグヴェルトに成す術無く破れ去った。
ローグヴェルトの力は凡百の天使の力など比べ物にならない程遥か先へと行っていた。
後は…蒼達に全てを託すしか無くなった。
ガルディアはかつて、この『世界宮殿』を否定した事があった。
この世界に…全てが決められた虚無の世界…それがどうしてもガルディアは認められなかった。
だが、それでもそれが自分の役目だと無理矢理納得した。
そうするしか無かったのだ。
しかし、結局こうなった。
ガルディアはもしかしたら…自分の本当の意思から…この世界から逃げていただけだったのかもしれない。
そんな弱い意思では彼等神聖ローマに敗けるのは必然と言える。
アスディアはもしかしたら、こうなる事を最初から分かっていたのかもしれない…ガルディアはそう思った。
この世界の行く末を最後まで見れないのは残念だが、どうやらパルテミシア十二神はここで滅びを迎える様だ。
始まりがあれば必ず終わりもある。
パルテミシア十二神の終わりが今日だった。ただ…それだけの事だ。
ー後は…全て任せるぞ…
ガルディアはそのまま完全に息を引き取った。
これで…パルテミシア十二神は神聖ローマ合衆国によって完全に壊滅させられた。
ルミナスは第十三階層の奥へと行った。
そこにあったのは水晶に囚われた、一人の人間であった。
この、『世界宮殿』を創造した人間…クロノス・パルテノス。
クロノスはここで自身の造り出した今の世界を安定させる為に『世界宮殿』の今のシステムを造り出し、自身がそれを管理していた。
そうしなければ現世の魂のバランスが崩れ、世界の崩壊を招くからだ。
しかし、今目の前にいるクロノスはもう、意思のないただの装置となっていた。
クロノスはもう…死んでいるのだ。だが、それでもこの『世界宮殿』は機能し続けているのは特殊な水晶で霊力と魂だけはあの身体に残っているからだ。
ルミナスはクロノスの心臓に自身の長剣を突き刺した。
「クロノス…貴方の造ったこの欠陥だらけの世界はもう終わるわ…私が新たな世界を創造する」
ルミナスはそう呟いた。
だが、当然ながらクロノスに返事が無い。
既に死んでいるのだから当然と言えるが。
「ふっ…死んでも尚私を嗤うか。結構なご身分ね!」
ルミナスはクロノスの身体を水晶ごと真っ二つに切り裂いた。
するとクロノスの身体は分解し、そして再構築されていった。
ルミナスの目の前に出現したのは白色の四角い物質であった。
その物質は細かい意匠が掘られていた。
ルミナスはその四角い物質を拾った。
「これが…『世界宮殿』の核…」
ルミナスはニヤリと嗤った。
この物質は『世界宮殿』の元となった核であり、この物質さえあればこの『世界宮殿』は愚か現世すらも全て思いのままに操る事が可能だ。
「けど…現世の全ての魂を縛るのには時間が掛かりそうね…その前に…」
「ルミナス陛下」
やって来たのはローグヴェルトだった。
「来たのね…ローグヴェルト」
「はい…とうとうやったのですね。おめでとうございます」
「まだ浮かれるのは速いわ。まだ完全に目的は達せてはいないわ」
そう、あくまでもルミナスは装置を手に入れただけだ。
ルミナスの目的はその先に在るのだから。
「さぁ、『世界宮殿』よ!まずはこの世界から造り変えようかしら!」
ルミナスがそう言うと『世界宮殿』が崩壊を始めた。
「どうやら…出口は近いみてぇだな…」
蒼達はもうすぐで『世界宮殿』へと到着する。
現在、蒼達は現世と『世界宮殿』を繋ぐ異空間を通っており、出口は既に見えていた。
「もうすぐ着くよ!」
慧留がそう言うと出口を皆通っていった。
「なっ!?何だよ…これ!?」
屍がそう呟いた。
そう、何故なら…
「ここが本当に『世界宮殿』…何ですか?」
美浪も驚愕していた。
無理もない。蒼、慧留、屍、プロテア、屍今はここにはいないが一夜もこの『世界宮殿』に一度行った事がある。
だからこそ、ここがどういう地形なのかはある程度は知っていた。
しかし、明らかに蒼達が知っている『世界宮殿』では無かった。
いや、真っ白い世界というのは同じなのだが形が明らかに違っていた。
蒼達が知っている『世界宮殿』は言うならば周囲に多くの建造物と大きな巨大なエンタシスの造りの宮殿があった。
しかし、今回の『世界宮殿』は周囲に白い建造物が多くあるのは同じだが形が変わっている上に上空に巨大な城が浮遊している。
「あの上空の城にルミナスがいるって考えていいんだよな?」
「そうでしょうね…他にそれらしい場所もない」
「よし!じゃあ、さっさと行こうぜ!」
「まずは何人かで別れて行動しましょう」
蒼、プロテア、屍がそう言うとアポロが別れて行動する事を提案した。
確かにあの城への侵入方法が分からない上に集団で行動しては敵の格好の的となるのでその方がいいだろう。
そして、『世界宮殿』がここまで形を変えたという事はあまり考えたくない事だがアスディア達がやられてしまった可能性があった。
というか、そうとしか考えられなかった。こんな事が出来るのはパルテミシア十二神以外だとルミナス以外考えられなかった。
つまり、蒼達でこの事態を何とかしなければならない…という事だ。
「じゃあ、俺とアポロとインベルは北へ行く」
「私は美浪ちゃんとプロテアとで南に行くね」
「俺は薊とくるとで東だな」
「では、俺とウルオッサ、スープレイガとアルビレーヌは西へ行こう」
蒼、慧留、屍、ドラコニキルがそう言うとそれぞれのメンバーが散って探索を始めた。
蒼達は北、慧留達は南、屍達は東、ドラコニキル達は西へと向かった。
「なんか、この三人で行動するのも久し振りだな~」
「そうね、でも気を抜いては駄目よ」
「言われなくても分かってんよ!」
「アポロの言う通りだぜ、インベル。油断するな」
「結局俺ばっか責められるのかよ!?」
インベルはアポロと蒼の言葉に心が折れそうであった。
昔からこんな感じだから最早慣れっこであるが。
「それにしても…こんだけ『世界宮殿』形状が変わってるなんてな…」
「それだけの力をルミナスは手に入れたって事でしょ?気に入らないわね」
「アポロはルミナスの事、嫌いだもんね」
「ええ、嫌いよあんな奴。異母姉妹って思うだけでムカムカするわ」
アポロは昔からルミナスの事があまり好きでは無かった。
何でも完璧にこなすルミナスが気に入らなかった。
アポロも才能が無かった訳では無かった。
しかし、ルミナスの前では全ての天才は凡才へと成り下がる。
しかもアポロは、ルミナスの良くも悪くも純粋な性格が更に気に入らなかった。
「でも、フローフルは違うよね?」
「まぁ、そうね」
「照れてやんのー」
「うっ、煩いわね!?」
珍しくアポロがインベルに言い負かされていた。
「全く…こんな時だってのに緊張感のねぇ奴等だな」
「いや、あなたは一々面倒臭いのよ。何よ、一回負けた位であんなに落ち込んで」
「あー、それ思った。ホント豆腐メンタルだよね」
「てめぇら…」
蒼はアポロとインベルに言い負かされていた。
蒼は「一回だけじゃねぇ」と言いたかったが面倒な事になるのは目に見えているので言わない事にした。
「相変わらず、君達三人は仲がいいね」
「「「!?」」」
蒼達は声の方向へと向いた。
そこにいたのはー
「ミルフィーユ…」
「ミルフィーユ先生…」
「ミルフィ…」
そう、蒼達の目の前にいたのはセラフィム騎士団、天使親衛隊の一人、ミルフィーユ・ペテルギウスだ。
蒼、インベル、アポロの師匠でもある。
「そこを通してくれ」
「ダメだよ。命令だ」
「俺達とアンタの仲だろ!?」
「それでもダメだよ。私達はセラフィム騎士団。ルミナス陛下の命令は絶対よ。なのに…君達ときたら…こんな所まで来るなんてね…」
「どうしも通してくれねぇのか?」
「残念だけど…それは無理ね…それに…私は楽しみにしてたんだよ?君達と本気で戦える事にね!」
ミルフィーユは剣を構えた。
どうやら、本気で蒼達を倒しに行くつもりだ。
「関係ねぇ!押し通るだけだ!」
「ええ」
「おう!」
蒼とアポロとインベルは剣を構えた。
ミルフィーユと戦うのは久し振りだ。
蒼達三人とミルフィーユ一人での戦いは何度かした事があるのだが、蒼達はミルフィーユに一度も勝利した事が無い。
だが、それは五年前の話だ。
今は違う、蒼達は成長したのだ。必ず、ミルフィーユを倒す事だって出来る。
蒼は自身の左手を見た。どうやら灰化は止まっている様だがあまりあの力を使うのはよろしくないだろう。
今回の戦いはなるべく使わずに勝ちたいというのが本音だ。
しかし、今回インベルとアポロがいるとはいえ相手はあのミルフィーユだ。
ミルフィーユはかつてのセラフィム騎士団内でフランに次ぐナンバーツーの実力があると言われている実力者だ。
それに、ミルフィーユは一度も蒼達に全力を見せた事が無い。
ミルフィーユの能力と【第二解放】はある程度知っているのだがミルフィーユの実力はまだまだ未知数であるというのが現状だ。
「いいねいいね♪そうこなくっちゃ」
「悪いけど楽しむとかそういうのは無理なんで」
「言うようになったね、インベル」
「そうやって子供扱い出来るのも今の内ですよ」
「君は相変わらずだな~、アポロ」
「俺は…もう絶対に負けねぇ!アンタは…俺が…いや、俺達が倒す!」
「じゃあ、君達の力とやらを見せて貰おうかな?フローフル!!」
ミルフィーユは霊圧を放った。
やはり、ミルフィーユの霊圧は相当なモノであった。
これは気が抜けそうには無かった。
「ああ…言われなくても見せてやる!行くぜ!インベル、アポロ!」
「おう!」
「ええ!」
蒼達も霊圧を解放した。
「【氷水天皇】!」
「【炎竜天皇】!」
「【死滅天使】!」
蒼は氷の刀、インベルは炎の剣、そしてアポロは紫色の銃剣を構えた。
「ふふ…懐かしい光景ね。君達とよくこうして戦ったね…けど…今までは本気で戦った事が無かった。君達がどれだけ強くなったのか…見せておくれ!【風騎士皇】!」
ミルフィーユは風の剣を蒼達に向けた。
ミルフィーユは蒼達を見て、幼かった彼等を思い出しつつ、彼等の成長に少しだけ感傷に浸っていた。
彼等三人が成長し、強くなっているがこうやって剣を構え合うだけで分かった。
それをルミナスは少しだけ嬉しそうにしていた。
自身が鍛え上げた者達が成長した姿を見るというのも悪くは無いモノだなとミルフィーユは感じていた。
「さぁて…強くなったっていうのが見かけ倒しだけじゃない事を祈るよ!」
「少なくとも、お前の思い通りにはならねぇよ!」
「俺達は今度こそ…アンタを倒す!」
「越えさせて貰います!ミルフィーユ先生!」
蒼とインベルとアポロはミルフィーユに突っ込んでいった。
セラフィム騎士団最強最大の師弟対決が今、始まった。
To be continued




