【最終章】使徒叛逆篇ⅩⅢーinvasionー
薊も他の者達同様、改造天使を封印して回っていた。
「数が多いわね…」
「で、あるなら…君はここで始末する」
「!?」
薊の目の前に現れたのは両眼を閉じている白髪の男であった。
「あなたは?」
「私は…ホイップ・ホイップ…以後、お見知りおきを…とは言え、あなたはここで死ぬのですが…【第二解放】」
「!?」
薊は傘を構えた。
薊の持つ武器は神器であり、【伊弉冉舞姫】であり、相手の致死量を操る事が出来る能力を有する。
「【雷帝天使】」
「!?」
ホイップは足が四足に増えており、まるでケンタウロスの様であった。
更に腕には雷を纏った鎗があった。
今までの雑魚の改造天使とは比べ物にならない霊圧であった。
「【雷帝の鎗】」
ホイップは身体に電気を纏い、薊に突進した。
「!?」
薊はどうにか攻撃を回避し、更にホイップの致死量を操作した。
「何だ…これは…」
ホイップはそのまま倒れた。
薊はホイップの血液の致死量を下げたのだ。
この世界の全ての物質は生物には有毒であるが身体に取り込める限界値、つまりは致死量が存在する。
その致死量が高ければ高い程その物質に耐性があるという事になる。
逆に致死量を下げれば対象の物質の耐性が落ちる事を意味する。
具体的に言えば水の致死量を下げれば本来十リットルが致死量でも数ミリリットルでも有毒になり得るという事だ。
「あなたの致死量を下げた…これで終わりよ」
薊はホイップに近付いて封印札を張ろうとした。
しかしー
「甘い」
ホイップは光速で身体を動かし、薊の身体を鎗で貫いた。
「ガハッ!?」
更に薊の全身から電流が走った。
幸い、薊は咄嗟にホイップの電気の致死量を上げていた為、即死は免れたがそれでも甚大なダメージを受けていた。
「ぐっ!?」
分からなかった。
ホイップは何故平然として動けたのかを。
「教えてやろう。俺の身体を全身電気に変換したからだ。恐らく貴様は俺の血液の致死量を下げたのだろうがそれら全てを電気に変換した。それで貴様の能力を無効化した」
薊が下げれる致死量は選んだ対象の一つだけ。
下げた致死量の対象を別の物質に変えられたら簡単に能力を破られてしまう。
「どうやら俺の電気の致死量を上げたみたいだが…それでももう…動けそうに無いな…」
「身体が…痺れて…」
薊はホイップからどうにか離れようとするものの、身体が痺れて思う様に動けなかった。
このままでは薊はホイップに殺されてしまうだろう。
動かなくてはならなかった。
しかし、身体が言う事を聞いてくれない。
「終わりだ」
ホイップは薊に止めを刺そうとした。
「はぁ…はぁ…」
アルビレーヌはかなり息を切らしていた。
ジャガとの戦闘は熾烈を極めており、殆ど互角であった。
「これは…ヤバイわね…」
「ヌオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ジャガはアルビレーヌに一撃を加えようとした。
その時ー
「【天時飛】」
ジャガは突然横に吹っ飛ばされた。
「!?」
「なっ!?」
ホイップは驚いていた。
何故なら自身の鎗が素手で何者かに掴まれているからだ。
「何そんなに驚いてんだよ?」
雷の鎗を掴んでいた男がそう言った。
「屍…」
そう、薊の窮地を助けたのは屍であった。
「貴様が…天草か…」
「ああ、まぁ、そんなとこだ」
「貴様…俺の雷の鎗を何故素手で掴める!?」
「素手?いや、素手じゃねぇよ、ホラ」
屍は自身の手袋に更に纏っていたモノを取り出した。
「なっ!?」
「そう、ゴムだ。俺は手袋に更にゴム手袋を仕込んでたのさ。ゴムは電気を通さない」
電気は通りやすい場所に移動する習性がある。
ゴムは電気を通さないというより、電気が通りにくい物質である為、電気側がゴムを避けて行ったという表現が適切である。しかしー
「俺の電気はそんじょそこらの電気とは訳が違うぞ!?」
「俺の作ったゴムはちょっと特別製でな…お前の電気なんか通さねぇよ!」
屍はそう言って右手を左腕に置いた。
そして、右手から骨で出来たジャベリンが生成された。
屍の扱う能力は錬金術である。
屍は自身の骨を錬金してジャベリンを造り出したのだ。
「行くぜ」
屍はそう言ってホイップに接近した。
「くっ!?」
ホイップは身体を電気に変えて屍に突進した。
しかし、屍はホイップの攻撃をジャベリンで受け止めた。
「バカな!?」
「だから言ったろ?お前の電気は通らねぇ!」
屍は腕にゴムを纏っている為、電気が外に逃げてしまう。
そして、屍はホイップの肩に触れた。
「【錬金崩壊】」
ホイップの身体はバラバラに弾け飛んだ。
そして、ホイップの身体はそのまま昇天していった。
「どうして…改造天使は…殺せない筈なのに…」
「俺の錬金術で改造天使の中にある天使の因子を分離した。奴等が不死身なのは天使の因子が埋め込まれているからなんだと」
薊は屍の言っている意味があまり分からなかったが屍自身もそこまで理解している様には見えなかったのでこれ以上この話は言及しない様にした。
「じゃあ、蒼達は?」
「ああ、それはー」
屍が薊を助けに行く数分前に遡る。
蒼達は現世に到着していた。
「一夜、今どういう状況になってる?」
「ちょっと待ってね…」
一夜はスマホで十二支連合帝国の状況を調べ出した。
「改造天使…と呼ばれる不死のゾンビ集団が神聖ローマ側にはいるみたいだね。死んだ者を生き返らせてそこから天使化させてるみたいだ」
「何だよ…そりゃあ…」
「ここは別れて行動した方が良いわね」
一夜の説明にプロテアがそう言った。
「そうですね、ここからだと…薊さんとアルビレーヌさんが近そうですね」
「なら、屍は蛇姫君の所へ、美浪君はアルビレーヌの所へ行ってくれ。それと、この改造天使を完全に殺せるのは屍の錬金術の崩壊の力だけだ。そこは覚えておいてくれ」
「分かった」
「はい!」
一夜がそう言うと美浪と屍はそれぞれの場所へと向かった。
「ま、そう言う事です」
美浪がそう言った。
「貴様は…何者だ」
「霧宮美浪です」
「まぁ、何者でもいい。貴様はここで死ぬのだからなぁ!」
「くっ!?」
ジャガが美浪とアルビレーヌに接近してきた。
「アルビレーヌさんは手を出さないで下さい。私一人で十分です」
美浪はそう言って地面に手を置いた。
「【神獣召還】!」
美浪は巨大な狼の獣を召還した。
「フェンリル」
そう、美浪の召還した獣は神を殺す化け物、フェンリルだ。
美浪自身もフェンリルと呼ばれる魔獣だが、このフェンリルは神獣のフェンリルだ。
美浪達の祖先と呼べる存在であり、美浪達フェンリルの守り神でもある。
「【狂犬神掛】」
美浪はフェンリルに乗ってそのフェンリルに霊力の鎧を纏わせた。
更に美浪はフェンリルと意識を一体化した。
これで、美浪はフェンリルを自在に動かす事が出来る。
「何だ…この…霊圧は…」
ジャガは美浪の強大な霊圧に恐れ戦いていた。
美浪の霊圧は自身とは比べ物にならないくらい強大であったからだ。
「ふざけるなあああああ!!!」
ジャガは美浪に巨大な岩を無数に飛ばした。
「【天時飛】」
「がっ!?」
ジャガは上半身を一撃で粉砕された。
美浪の時飛ばしで攻撃を全て回避された上に極大の一撃を美浪は放った。
「!」
アルビレーヌはジャガの下半身に封印札を張り付けた。
そして、ジャガは活動を停止した。
美浪は【狂犬神掛】を解除してアルビレーヌの所へと駆け寄った。
「成る程…こうやって封印するんですね」
「蒼達は今どこに?」
「今頃、改造天使の対処法でも考えてると思いますよ?」
「さて…これで改造天使の対策は完了だね」
一夜と蒼、慧留とプロテアは澪のいる場所にいた。
一夜以外は改造天使の動きを止めていた。
一夜は改造天使の一体に黒い物質を入れた。
すると、改造天使は粉々になって消えていった。
「一夜、何だよそれ?」
「何、ただの魔石だよ。天使の因子を除去するには悪魔の因子を入れるのが一番だ」
「悪魔っつっても、ドラコニキル達でも改造天使は倒せねぇって言うじゃねーかよ?」
「ああ、確かにそうだ。けど、改造天使だった筈のクラッカーはスープレイガは撃破していた。撃破出来た理由は二つ、一つはUSWは魔力に満ちた国だ。他の国と比べて魔力が濃い。それと…クラッカーは吸血鬼、つまり悪魔と近い種族で悪魔の因子を持っていたからだ。この二つの要因でクラッカーは倒す事が出来た」
USWの土地は悪魔の魔力を高める性質がある。
更にクラッカーは悪魔に近い吸血鬼だ。
この二つの要因でクラッカーは改造天使でありながら倒す事が出来た。
「僕が造ったこの魔石は悪魔の因子と魔力を強く含んでいる。屍からUSWの魔石をくすねとって正解だったよ」
一夜は三年前のUSWの戦いの後、屍が集めていたUSWの魔石をいくつか貰っていたのだ。
それと自身があの戦いの後集めた悪魔因子を組み合わせて今の魔石を造った。
これを使えば改造天使など取るに足らない。
「澪君!この魔石を皆に転送魔法で送って欲しいのと霊呪法で皆と会話を出来る様にしてくれ!」
「分かったよ」
澪は霊圧の感じる味方全員に一夜が造った魔石を送った。
そして、霊呪法で一夜と皆とで通信を取れる様にした。
『皆さん、こんにちは。苗木一夜です。知らない人もいるでしょうけど僕については取り敢えず置いといて…皆さんの近くに黒い石がある筈です。それを自身の武器にでも触れさせて下さい。石が武器に溶け込む筈です。そうすればその武器使えば改造天使を倒せる筈です』
一夜がそう言うと味方全員が黒い石を取り込み、改造天使に攻撃した。
すると、改造天使は一撃で粉々になり消えていった。
『おおー!スゲー!』
『これならやれる!』
様々な場所でそんな声が聞こえてきた。
「一体…どういう原理なの?」
プロテアが一夜に問い掛けた。
「今回、悪魔因子と魔石だけでなく、『デモンソウル』も入れている…」
「『デモンソウル』!?」
『デモンソウル』とはUSWが使っている燃料の一つであり、神聖ローマは『セラフブレン』、十二支連合帝国は『ギアグリセリン』と呼ばれる燃料を使っている。
ヘレトーアはそもそも自然のエネルギーを扱う国である為、その自然のエネルギーを燃料としても使っていた。
『デモンソウル』は人体や魔属に有毒であり、特に天使にとっては最大の毒でもある。
「この『デモンソウル』を含んだ魔石であれば、改造天使なんてすぐに倒せるだろう…だが…セラフィム騎士団はそんなに甘い相手じゃない」
そう、改造天使を倒せた所でこちらが不利なのは変わっていない。
改造天使の数は今でも数万以上おり、更にセラフィム騎士団はまだこの戦いが始まってから一人も倒せていないという状況だ。
「あー、あー、困るな~。こんなすぐに対策されちゃうなんてさ」
突然、一夜の後ろから声が聞こえた。
蒼達はここら辺の改造天使は既に全て倒しており、声の方向へと向いた。
「てめぇは…ワッフル!」
「久し振りだね~、フローフル♪」
「セラフィム騎士団か…」
「そうだよ(便乗)。さて…じゃあ…始めようかな」
ワッフルはそう言って腰に指してある棒を取り出した。
「払え、【箒木天使】」
ワッフルの棒は箒の様な形に変形した。
「ここは私がやるわ」
プロテアはそう言って鉄の剣を顕現した。
「分かった。気を付けろよ。そいつは植物の能力を使う」
蒼はプロテアにそう言い残して、一夜と慧留と澪と共に他の改造天使の掃討の為にここから去っていった。
「さてと…君が相手か…ホントーはフローフルとやりたかったんだけど…まぁいいや、君でも」
「どういう事?」
「まぁ、どうでもいいじゃあ無いか。僕の力はフローフルの言った通り、植物を操る能力だよ?この様にね、【天使の蔓】」
ワッフルは植物を地面から出現させそこから蔓を出現させ、プロテアに攻撃した。
しかし、プロテアは蔓を全て切り裂き、ワッフルに迫った。
「【鉄神剣眼】!」
「え?」
プロテアは左眼から血を流した。すると、ワッフルの周囲に無数の鉄の剣が出現し、ワッフルを貫いた。
「かは…」
ワッフルは身体中を貫かれ、口から血を吐いた。
「悪いけど、【第二解放】は使わせない」
そう言ってプロテアはワッフルに切りかかろうとした。
「【第二解放】」
ワッフルは【第二解放】を発動した。
「!?」
プロテアはワッフルから離れた。
ワッフルの箒が地面に吸い込まれた。
やがて地面から巨大な樹木が出現した。
「【命の七色樹】」
ワッフルの背中には緑色の翼が生えていた。
やがて、樹木からワッフルの掌に果実が落ちてきた。
「【生命の果実】」
「何?あれは…」
ワッフルは身体に刺さった剣を抜き、その果実を食べた。
すると、ワッフルの傷が回復した。
「ふぅ~、これが僕の【第二解放】の能力だよ♪この樹にある果実を喰らう事で力を出す事が出来る」
「変わった能力ね…」
「【生命の枝】」
ワッフルは樹木から枝を取り出した。
「さて…始めようか…イシュガルドの少女」
「フローフルが来たようね」
ルミナスはそう呟いた。
ルミナスはローグヴェルトと共に十二支連合帝国の人のいない場所で静観していた。
ルミナスはずっとこの時を待っていた。
蒼達が『世界宮殿』から戻ってくるこの時を。
「ローグヴェルト、行くわよ」
「畏まりました」
ルミナスは右手を掲げた。
「【召還】」
ルミナスは巨大な機械仕掛けの白い馬を召還した。
ルミナスのローマカイザーの霊術の一つ、【召還】は四代目皇帝であるフォトンが使っていた能力で好きな場所好きなタイミングで自身が契約している者を呼び出す事が出来る。
「ヴィングスゴルデクス」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
白い馬…ヴィングスゴルデクスは咆哮を上げた。
すると、空から光の扉が出現した。
あれこそが『世界宮殿』へと繋がる扉である。
ヴィングスゴルデクスは額から光の柱を出現させ、扉にくっ付けた。
「何だ?あれは?」
蒼は光の柱を見てそう呟いた。
蒼だけでは無い、他の皆も光の柱の事に気付いていた。
蒼と慧留と一夜は光の柱へと向かった。
「とうとう始まったみたいだね」
プロテアと交戦していたワッフルがそう呟いた。
「どういう事?」
「時期に分かるよ」
「感謝するわ…フローフル」
ルミナスが蒼達が来たのを察知してそう言った。
「何だと!?」
「あなた達がパルテノスへと行ってくれていたお陰で…扉を開きやすくなった」
「!?」
「私はこれから、『世界宮殿』へと向かうわ。追いかけたければ追いかけてくればいい」
ルミナスとローグヴェルトが光の柱へと入っていった。
すると、ルミナスとローグヴェルトは光の扉へゆっくりと吸い込まれていっていた。
「くそ!」
蒼は光の柱を刀で切り裂こうとしたが光の柱は蒼の攻撃を弾き飛ばした。
「ぐっ!?」
蒼はそのまま吹き飛ばされてしまった。
「この光の柱は私とローグヴェルトにしか入れないようにしてるわ。それでも…あなた達は追いかけられるかしら?」
ルミナスとローグヴェルトはそのまま扉へと入っていった。
そして、光の柱と扉は完全に消え去った。
すると、ヴィングスゴルデクスは咆哮を上げてどこかへと消え去った。
「くそ!」
また、追い付けなかった。
「一夜さん、どうします?」
「そうだね…今調べてる。『世界宮殿』に行く方法を…」
「そうはさせない」
「「「!?」」」
蒼達の前に敵が現れた。現れたのはアルダールであった。
「はは…参ったねこれは」
「光の柱を辿ってきて見れば貴様らがいた。悪いがここで消えて貰う」
「生憎、僕らはここで消える訳には行かないんだよ」
「全く…陛下の創る世界の邪魔をするなど…貴様らは愚かだな」
アルダールはそう言って本を取り出した。
「【第二解放】」
「!? 蒼、慧留ちゃん!ここは僕に任せて君達は取り敢えず四神天城に行ってくれ!」
「なっ!?でも…」
「あいつの能力は蒼もある程度は知ってるだろ?僕が適任だ」
「…分かった。行くぞ、慧留」
「う…うん」
蒼と慧留はそのまま一夜から去っていった。
「いいのか?貴様一人で」
「むしろ、一対一の方が君の場合はやりやすい」
アルダールの後ろから本棚が出現した。
そして、アルダールの背中には灰色の翼が生えていた。
「【愚者の本棚】」
「君の第二解放、【愚者の本棚】は君の天使が知っている能力を全て封殺する能力があり、更にその本に書かれた内容は現実になる。つまり、その力を使って味方同士で同士討ちさせるのが君の天使の基本戦術だ。ならば一対一の方がやりやすい」
「…私の天使の能力を全て把握してるのか!?」
「ああ、弱点もね」
「バカを抜かすな。弱点など…無い!」
アルダールは本に文字を書いた。
書いた内容はー
「君は自分の首をこれから切り落とす」
アルダールはそう言って剣を一夜の目の前に出現させた。
一夜はその剣を握り、自身の首に近付けた。
アルダールは相手を即死させる様な命令は無理だが自害させる命令をする事は可能だ。
一夜が自身の首を跳ね掛けたその時ー
「言ったろ?弱点も知ってるって」
一夜がそう言うと一夜のスマホが動き出し、アルダールに電撃を放った。
「なっ!?」
アルダールは放電の速さに対応しきれず一夜のスマホから放たれた電撃をまともに受けた。
「がっ!?」
すると、一夜に掛けられていた命令は解除された。
「ば…バカな!」
「君、僕の能力を全て把握したつもりでいたんだろうけど…僕は今まで…あまり直接戦闘に加わる事は無かった。だから、君は僕の能力を把握していても能力の使い方までは把握していなかった」
「!?」
「予め、このスマホには僕の霊呪法が時間差で発動する様に仕込んでおいた。君は君自身が知っているあらゆる能力わ無効化させる【無効化】を使う。だけど無効化される前に術を発動していれば君の力は無効化出来ないって訳さ。そして…知らない能力を無効化する事は出来ない…それが君の天使の最大の弱点さ」
そう、アルダールの天使は全智の天使、【全智天使】は検索すれば全ての事を検索出来る。
しかし、それは自身が検索しなければ検索は出来ないのだ。
確かに無尽蔵な情報がある。しかし、いくらアルダールでも天使の膨大な情報を一人で処理するのは不可能だ。
だからこそ、アルダールの天使は献策をかけなければ情報が出ない様になっている。
故にアルダールが調べていない事をされると対応が遅れるという欠点がある。
今までそんな事をされる事がアルダールには殆ど無かった。
アルダールは自身の天使の力を過信しすぎていた。故にそこを突かれた。
「まだだ!私はまだ…」
「君の能力はかなり特殊性の高い能力だ。だけど、君の素の戦闘力はセラフィム騎士団中最弱。僕でも十分相手に出来る程だ」
「舐めるな!」
アルダールは翼から霊力の羽根を放った。
これで隙を突いて再び命令を書き込めばアルダールの勝利だ。
一夜はアルダールの攻撃を回避した。
しかし、回避しきれずアルダールの攻撃を喰らってしまった。
「くっ!?」
アルダールは本に命令を書き込んだ。
先程の不意打ちは恐らく使えない。
アルダールは先程と同じ命令を本に書いた。
これで完全にアルダールの勝利だ。
「【命令】!」
しかし、一夜はアルダールの書いた命令通り動かなかった。
アルダールの能力は発動しなかった。
「!? どういう事だ!?」
「ま、そういう事だよ」
一夜が立ち上がって一夜の本に指を指した。
アルダールは自分の本を見た。すると、本に電流が走っていた。
「痛っ!?」
アルダールは本を手放した。
アルダールは後ろの本棚を見た。
すると、アルダールの後ろにある本棚も同様に電流を放っていた。
「どういう事だ!?これは…!」
「僕の意識の半分を電子化して君の天使に潜り込ませた。そして、君の天使…エンゲリアスの能力を封じさせて貰った」
「何!?」
「僕のこの能力…【感電転写】は僕のこの瞳…【電子人の眼】で見た対象の電気を宿しているモノに自分の精神を電子化して入り込む事が出来る。今までは精神全てを入り込ませる事しか出来ないから危なくてあまり使って来なかったんだけど、今回の修行で半分だけ意識を残して飛ばせる様になった」
「電気を宿してる?バカな!私のエンゲリアスは電気の属性では無いぞ!」
そう、アルダールの能力は概念系の能力…つまり闇属性に分類される能力だ。
電気は宿していない筈である。
「いいや、電気はあるよ。というより、僕が電気を君に飛ばした」
「!? まさか…」
そう、一夜は不意打ちでスマホから雷の霊呪法である【雷刀千本花】を飛ばした。
それにより、アルダールの持っていた本に電気が宿り、更に一夜はアルダールが出現させた剣にも電気を発生させ、アルダールのエンゲリアス全てに自身の精神を送り込んだのだ。
そして、そこから電気を発生させ、アルダールのエンゲリアスを機能不全に陥れた。
「それでも…エンゲリアスを乗っ取るなど!?」
「ああ、君のエンゲリアスが戦闘向けのエンゲリアスだったら厳しかっただろうね。君は自身のエンゲリアスが完璧だと思い上がった。だからこそ、エンゲリアスが乗っ取られるなんて考えもしなかっただろうね。その油断が敗けに繋がった」
一夜はフラフラになりながらそう言った。
意識を半分アルダールのエンゲリアスに移動させている為、意識はあっても上手く身体を動かせなかった。
「くっ!?」
アルダールは本を取り出し、一夜に命令を出そうと文字を書くが全く命令を受け付けなかった。
「さぁて…じゃあ〆に入ろうか…」
一夜がそのまま倒れた。
その瞬間、アルダールの後ろにあった本棚が独りでに動き出した。
本棚から本が出現し、本から文字が浮かんできた。
「!? 止せ!」
アルダールは【第二解放】を解除しようとするが解除が出来なかった。
「くそ!?」
アルダールのエンゲリアスは完全に一夜に乗っ取られてしまっている。
最早、アルダールの意思ではどうにもならない。
やがて文字を書き終えたのか文字が本の文字が明らかになった。
書いてあった内容は『今から落雷に打たれる』であった。
すると、本棚から電気が発生し、一気に放電した。
「ぐあああああああああ!!!!」
アルダールは一夜の発生させた落雷をまともに受け、そのまま倒れた。
すると、【第二解放】が解除され、一夜の意識も戻った。
「うっ…どうにかなったか…」
とは言え、事前にアルダールの能力を知っていなかったらヤバかったのは事実だ。
アルダールの能力は概念を操る強大な能力だ。
アルダール本人の能力が大した事が無かったのでそこを突く事で一夜はどうにか勝利出来たに過ぎない。
恐らく、他のセラフィム騎士団相手では一夜は手も足も出ずにやられてしまっていただろう。
一夜も手傷を負っている状態だ。しかし、グズグズはしていられない。
速く四神天城へと行かねばならない。
もう一度、『世界宮殿』へ行く為に。
もう、敗けは許されない。必ず勝ち、ルミナスの野望を止めて見せる。
一夜はそのまま四神天城へと向かった。
To be continued




