【最終章】天界叛逆篇ⅩⅠーfadeー
蒼達は第七階層の修行を終え、それぞれ別れて修行をしていた。
美浪は第八階層、屍は第九階層、一夜は第十階層、プロテアは第十一階層、慧留は第十二階層、そして蒼は最上階である第十三階層で修行をしていた。
「うん、かなりやるようになったね」
ランクルが美浪に対してそう言った。
この第八階層は森の様な場所であった。
ここで美浪は三日程修行をしていた。
辺りの樹木が多く倒れていた。
「つ…疲れ…まじた…」
「もう…大丈夫そうだね」
ランクルはそう言った。
「ありがとうございました…」
「それにしても…スゴいね…ここまでやるなんて…」
「いえ…そんな事は…」
「流石は神獣の一種、フェンリルなだけはあるね」
「…確か…ランクルさんがその神獣を産み出したんですよね」
「うん?まぁ、そうだね。私達パルテミシア十二神は魔族の源流をそれぞれ産み出してるからね」
「それが巡り巡って…今の事態になった」
「そう、これはある意味、 私たちの自業自得なんだよね~」
そう、パルテミシア十二神の産み出した天使により、このパルテノスは存亡の危機に立たされていた。
「そろそろ、第六階層に行こうか」
「はい」
そう言って美浪とデメテルは第八階層へと向かった。
「ふぅ~、ここまで良くやったな」
「そりゃあどうも」
アウスと屍は息を切らしていた。
ここは第九階層、辺りは魔法陣が多くあり、色々な道具や化学物質があった。
それはまるで研究所の様な場所であった。
「これで俺がお前に教える事は何もねぇ」
「何かベタな台詞だな」
屍はアウスの台詞にそう言った。
「その手袋…大事にしろよ」
「分かってるよ」
屍は青色の手袋をしていた。
この手袋はアルダメルクリーが新しくなった武器だ。
要するに屍の新しい武器である。
この手袋があれば自在に物質を錬金出来る。
「それにしても…てめぇがここまで大きくなるとはな…何か感慨深いぜ…」
「大袈裟な奴だな」
屍はアウスのオーバーリアクションに呆れていた。
「なぁ?アンタは…ルミナスのやろうとしてる事、どう思うんだ?」
「あ?ルミナス?そうだな…あいつのやろうとしてる事…か…」
屍からすればパルテミシア十二神がルミナス達をどう思ってるのか少しだけ気になっていた。
「まぁ、俺にとってはあいつらが何をしようが興味はねぇ。ただ、世界の秩序を乱すあいつらの行為は許される事じゃねぇ。そんだけだ」
案外あっさりしているなと感じた。
アウスはどうやらかなり達観した考えを持っている様だ。
屍ははっきりと彼等を否定するのかと思った。
だが、アウスはそれをしなかった。
パルテミシア十二神は見た感じ考え方も価値観もバラバラだ。
だから、今の意見はアウス一人の意見に過ぎないのだろう。
「じゃあ、第六階層に行くぞ」
「ああ」
屍とアウスは第六階層へと向かった。
「よし、終わったな」
「はい」
ジェネミと一夜は修行を終えた。
ジェネミのいる第十階層は多くのパソコンがあり、まるで会社の様であった。
「あの、ジェネミさん」
「? 何だ?」
「あなたは…この先の戦いの未来が見えますか?」
ジェネミは予言を司る神だ。
だから、一夜はこの先の未来をジェネミなら見えているのではないかと思ったのだ。
「今回の戦い…私の眼を以てしても、見えなかった。だから…お前がその先の未来を見ろ」
ジェネミは他力本願な発言をした。
「そう、ですか。ならジェネミさんは神聖ローマは正しいと思いますか?」
「それは分からん。奴等にも奴等の正義があるのだろう。その正義を否定する事も出来ん。だが、我々にもここ、パルテノスを守る使命がある。我々はパルテノスに動かされているに過ぎない。だが、お前は違う」
「どういう事ですか?」
「未来とは…一つではない。枝分かれしていて多くの未来がある。それはお前も十分分かっているだろう」
「………」
「その未来を…自身の望む未来を掴むのは…自分自身だ。お前には…それが出来る」
未来とは己で掴むもの。
新たな未来を掴むのは己自身だ。
「私は…お前達の先の未来が希望で溢れる事を信じている」
「そう…ですか…」
一夜はそう言って立ち上がった。
「さて…では行こうか」
「はい」
そう、ここで立ち止まっている訳には行かない。
皆と共にあるために、一夜は立ち止まってはいられないのだ。
きっと皆も修行を終えている頃だろう。
一夜は皆よりも弱い。
だが、それでも出来る事は必ずある。
一夜は自分に出来る事を精一杯やろうと決めたのだ。
一夜とジェネミは第六階層へと向かった。
「はぁ…はぁ…」
「まぁ、こんな所か。新しい『眼』には慣れたか?」
プロテアは眼を見開いた。
プロテアの左眼に変化があった。
プロテアの左眼は十字架があったが更にその十字架が重なり合い、万華鏡の様になっていた。
右眼の方にはさして変化は無かった。
プロテアは視力が低下しており、あの回復の温泉に浸かっても視力が回復していなかったのだ。
プロテア自身の眼が既に限界を迎えた為、新しい眼を移植する必要があった。
プロテアは武器の入っていたという玉手箱を開け、中身は眼球が入っていた。
初めは嫌がらせかと思ったがイシュガルによってそれは違うと分かった。
イシュガルはイシュガルドの眼を回収していた様でプロテアの弟であるイデスの眼と玉手箱に入っていた眼球を解け合わせ、イシュガルはプロテアに眼を移植した。
つまり、プロテアの今の両眼は弟のイデスの眼なのだ。
イシュガルドの身体は特別であり、死んでもその後の腐敗する速度がかなり遅く、イデスの眼も腐敗せずに残っていた。
これにより、プロテアの両眼は失明のリスクが無くなった。
「全く…その眼を開眼しただけでも驚きなのにここまで使いこなすとはね」
「それでも…あなたを倒しきる事は出来なかった」
「いや、俺は本気を出したさ。けど君は倒れなかった。十分だよ」
「あなたは…もしこの世界が無くなったら…どうする?」
「いきなりだな」
「答えて」
プロテアが何故こんな事を問い掛けたのか…それはプロテアにも分からない。
だが、プロテアはイシュガルドの人間であり、そのイシュガルドはほぼ滅びた。
イシュガルは滅びをどの様に思うか、それが気になったのかもしれない。
「始まりがあれば…いつかは終わりが来る。この世界だってパルテノスだって…いつかは滅びるのかもしれない。けど…そこにはまた、新たな始まりがあるんじゃないのか?俺は、その始まりを信じたい」
「………そう」
プロテアはイシュガルの言葉を聞いて何となく納得がいった気がした。
始まり、終わり、この二つは必ずやって来る。
それは速いか遅いかの違いなのかも知れないけれど、けどその先の事を信じたい。
イシュガルもまた、一人の生き物なのだ。
「聞きたい事はそれだけか?」
「ええ」
「じゃあ、行こうか」
「ええ。一応、鍛えてくれた事には礼を言うわ」
「ああ。君のその眼…大事にするんだね」
「言われなくても分かってるわよ。これは…弟の眼なんだから」
そう、プロテアが手に入れたこの新しい光は何が何でも閉ざす訳にはいかなかった。
プロテアは改めて、自分には色々なモノが託されている事を再認識した。
「よし、じゃあ行こうか」
「ええ、皆が待ってるわ」
イシュガルとプロテアは第六階層へと向かった。
「やっと…この体操服から卒業出来るわ…」
「……君も気にしてたんだね」
「ようやく、ここまで来たか」
「はぁ…はぁ…」
ここは第十二階層、この階層はとにかく真っ黒の世界であった。
圧倒的闇、ここには光はなくただ闇だけがあった。
「ここまでだな」
「はい…」
「お前のその力…使い方を間違えるな。その力はあらゆる事象を意図も簡単に変えてしまう恐ろしい力だ」
「分かってます…」
ガルディアはそう言った。
ガルディアがそう言うという事はそれだけヤバイ力である事を意味している。
「ガルディアさんは…ルミナス達のやり方を…どう思いますか?」
「知らんな。俺の役目は冥界の守護だ。俺達のやっている事が正しいのか…それは俺にも正直分からん。だがな、人の正義とは人それぞれだ。俺がどれだけ間違っていると否定しても向こうは感情でそれを否定し続けるのさ。だからこそ、感情というのは厄介なモノでな」
「………」
「だが…だからこそ新しく生み出せる事もある。この世界はバランスによって保たれている。感情は確かに化け物になるが逆に救いになる時もある」
「それは…何となく分かります。私も…そうでしたから」
そう、慧留は感情任せにパルテノスを滅ぼそうとした事があった。
だが、蒼が…友がそれを止めてくれた。
辛い事も多くあったが楽しい事もたくさんあった。
だからこそ、仲間の尊さ、心の素晴らしさというモノが知れた。
「今度は俺が貴様に問おうか。貴様はかつて、このパルテノスを潰そうとした事があるな?今はどうなんだ?」
「このパルテノスのシステムは…正直、正しいとは思えません。人の運命を…心を制御するなんて…そんなのは間違ってます。けど…力尽くでここを壊せてもそれが平和に繋がるとはどうしても思えないんです。だから…力ではなく、行動で…このパルテノスのシステムを変えていけたらいいと私は思います」
「そうか…いい答えだな。俺が辿り着けなかった答えに…お前は辿り着いた訳だ」
「え?」
かつて、慧留と同じようにガルディアはこのパルテノスのシステムに納得いかなかった。
今は自身の立場もあり、そういうモノだと割り切っていた。
そう、ガルディアは抗う事を諦めてしまったのだ。
答えを…見つける事が出来なかった。
だが、今ガルディアの目の前にいる少女はガルディアには辿り着けなかった答えに辿り着き、それを予感させてくれる。
過去を変え、未来を変えうる…そんな予感をさせてくれるのだ。
「何でもない。ただの独り言だ。そんな事より、速く準備を済ませて第六階層へ行くぞ。そのダサい体操服からもおさらば出来る」
「私、この体操服をそんなダサいとは思いませんでしたよ?他の皆は凄く嫌そうでしたけど…私はこれはこれで、気に入ってるんですよ」
慧留は笑顔でそう言った。
「そうか、素直で無垢だな…貴様は」
ガルディアはそう言って後ろを振り向いた。
「行くぞ、これからが…本当の戦いだ」
「はい!」
「それと…万が一の事があれば、そうなってしまえば君次第だ」
「………分かりました」
ガルディアと慧留は第六階層へと向かった。
「うん、及第点」
「くっそ!いつもはチャラいだけの癖に辛口だな!」
ここは第十三階層、パルテノスの最上階である。
蒼は大の字になって倒れており、アスディアも座り込んでいた。
ここはパルテノスの入り口の時と同じだ。真っ白だ。
ただただ真っ白で何もなかった。
確かにこんな何も無いところにずっといたら退屈に感じるのもムリは無いかもしれない。
「全く…先が思いやられるよ」
「うるせぇ!……なぁ?一つ聞いていいか?」
「? 何だい?」
「俺って…お前の子孫…なんだよな…ルミナスも…」
「というか、ローマカイザーの天使全て僕の子孫だね」
「そのローマカイザーが世界を滅ぼそうとしてる訳だよな」
「そうだね」
「じゃあ全部てめぇのせいじゃねぇか!?」
蒼は突然起き上がり、アスディアを殴り飛ばした。
「ぶふぇ!?」
「ふざけんじゃねぇよ!?プラネット・サーカスの時もそうだ!ロキはてめぇの分身だったんだろ!?全部の元凶てめぇじゃねぇか!?」
「いや、ロキの事は僕がここを統治する為に必要だったんだよ!…まぁ、後始末を押し付ける事になったのは認めるけど…」
「しかもそれだけじゃねぇ!『万物の古鍵』を造ったのもてめぇだし俺らが関わった事件の原因の殆どがお前らパルテミシア十二神が根幹で関わってたじゃねぇかよ!?」
そう、そもそも『万物の古鍵』を作ったのは他でもないアスディアなのだ。
アスディアは時間、想像、空間の三つの『万物の古鍵』を創った。
創った理由としてはこの現世の重霊地を安定させるという目的があったのだがロキとして身体を切り離す時、そのロキに古鍵の一つと融合してしまうという失態をやらかしており、挙げ句それが原因で第四次世界大戦が勃発する遠因にもなっていた。
更に神器の元となった十二支連合帝国の神々を創ったのはアスディアの息子であるアレスであり、閻魔が神々の力を悪用して神器や混獣を作る事となった。
閻魔一族はそもそもアレスを信仰して作られた一族であり、悪に憑かれた一族だ。
その閻魔一族を作る原因になったのもアレスであり、アレスは戦争好きな神であり閻魔はそのアレスの力で全てを捩じ伏せるその姿に魅せられていたのだ。
USW、四大神事件では悪魔を産み出したのはガルディアであり、原始の悪魔であるアンタレスはガルディアの娘なのだ。
言ってしまえばこの事件もガルディアの尻拭いとも取れなくもない。
イシュガルドは勿論、元の原因がイシュガルにあるし、ヘレトーアの戦争はパルテミシア十二神に原因があった訳では無かったがイシュガルとの決闘は言わずもがなだ。
蒼の過去、ケルビエルの事件、第四次世界大戦、そして今回の神聖ローマの件も元を正せば全ての原因はアスディアを筆頭としたパルテミシア十二神なのだ。
「それに…てめぇ嘘つきやがったな!?ヤハヴェが五百年前どころか千年前から存在してるしセラフィムなんていなかったんじゃねぇかよ!?」
「いやいや…そのヤハヴェの二つ名がセラフィムでそこから取られてるんだよ」
「嘘吐いた事には変わりねぇだろ!?」
「いやいや…僕らも決して悪気があった訳じゃ無いんだよ?」
「悪意のある悪行か善意のある悪行かの違いだ!しかも後者の方が性質悪いんだよ!」
「だからこうして君達に手助けをしてるんじゃないか!」
「ふざけんなよ!?全部俺達含む現世にぶん投げやがって!それでも神かよてめぇは!」
「ごめん!ごめんなさい!全部僕らが悪かったからそんなに怒んないでよ!!」
「うるせえ!これでもまだ足りねぇんだよ!」
「だから謝ってるじゃないか!?僕にだって…このパルテノスに逆らってみたかったんだよ」
「…けっ…それで多くの人達に迷惑掛けてたら世話ねぇな」
「…そうだね。僕なりに…このパルテノスのシステムを変えたかったんだよ…」
そう、アスディアは最初の頃はこのパルテノスの存在を受け入れていた。
だが、それが受け入れられなくなっていった。
それが決定的になったのはパルテミシア十二神の一人であり、妻でもあったヘラと息子のアレスが第三次世界大戦で死んだ時だ。
この二人の死はこのパルテノスによって決められた死であった。
全ての運命がこんなオモチャ箱で左右されてしまう。
それがアスディアにとっては苦痛で仕方が無かった。
だが、アスディアはここの守護者である。
このパルテノスを変える事など許されない。
「もしかしたら…僕は期待してるのかもしれないね…君なら…君達なら…この間違ったシステムを変えてくれるかもしれないって」
「俺に期待されても困る」
「それもそうか…」
アスディアは空を見上げながらそう言った。
ここの空は白い、何もない、真っ白な世界。
アスディアはこの白くて何もない世界に色を付けたかった。
「さて…そろそろ行こうか。皆も今頃第六階層に行ってる頃だ」
「ああ………」
「何だい?」
「一応、礼は言っとく。ありがとな」
「ふっ…君にしては随分素直だね」
アスディアはそう言って光の階段から降りていった。
蒼もそれに続いた。
ここは第六階層。
ここは多くの服がある場所である。
蒼が到着する頃には全員到着していた。
「フローフル…やっと来たのね」
「悪い、遅れた」
「遅れた分、強くなった見てぇだな」
「そうだね」
「うん」
「ああ」
「じゃあ、新しくなった服を着ようか」
アスディアがそう言うと皆それぞれの服に着替えた。
「やっとあのダサい体操服からおさらばだな」
屍は紺色の和服を着ていた。
身軽でかなり動きやすい服である。
「ふぅ…やっぱり、こういうのが一番落ち着く」
一夜は白いシャツとズボンであった。
一件薄そうな見た目だがかなり頑強な作りになっている。
「何かモンハンで新しい装備を新調した気分やね」
美浪はテンション高めにそう言った。
美浪の服装は白を基調にした軍服の様なデザインで下はスカートになっていた。
「ようやく、普通の服を着られるわ」
プロテアは銀色のゴスロリ衣装であった。
更に左眼には黒色の眼帯が装着されていた。
「わぁ!可愛い!」
慧留はノリノリで服を着ていた。
慧留の服は黒を基調とした制服の様だった。
「まさか…つかやっぱりこうなんのか…」
蒼は不服そうにそう言った。
何故なら、蒼の今の服装はセラフィム騎士団にいた頃に着ていた軍服と同じであったからだ。
白を基調とした水色の軍服であり、水色の装飾も施されていた。
「蒼、今ならセラフィム騎士団に紛れ込めるんじゃないかい?」
「うるせぇ!茶化すな一夜!つか、お前のその服装いつもと変わってねぇじゃねぇかよ!」
「僕はこれが一番落ち着くんだよ」
蒼と一夜は軽口を叩き合っていた。
「やっぱ、十二支連合帝国なら和服だしな」
「ゴスロリが一番しっくりくるし」
屍とプロテアがそう言った。
「美浪ちゃん凄く似合ってるよ!」
「ホンマに!慧留ちゃんも凄く似合ってるよ!」
「えへへ…」
慧留と美浪はお互いの服装を誉め合っていた。
これぞガールズトークだな~とアスディアは染々と思いながら見ていた。
「さて…これから君達は現世へ戻る」
「え?ここで奴等が来るのを迎え撃つんじゃないの?」
「彼等は必ず再び現世に侵攻する筈だ。その為に君達は戻るんだ」
イシュガルはそう言った。
「もし、ここが攻め込まれた場合、我々で神聖ローマを叩く」
「もし…お前らがやられたら?」
蒼がアスディア達に問い掛けた。
「その場合は…君達に、このパルテノスを任せる。君達に…未来を託す」
アスディアはそう答えると他の五人もこくりと頷いた。
「さぁ!決戦の時は来た!君達は立派に成長した!戻るんだ!現世へ!」
アスディアがそう言うと蒼達はアスディア達に背を向け、下に降りて現世へと戻っていった。
第一階層に既に光の門を作ってある。
そこを渡れば現世へとすぐに辿り着ける。
「ふぅ…彼等…強くなったね…」
「ああ…」
「私達も…若者の成長にしんみりする歳になっちゃったか~」
「いや、それはもうとっくになってんだろ!?」
「そうだな…」
アスディア、イシュガル、ランクル、アウス、ジェネミがそう言った。
「フン…」
ガルディアはそのまま自分の階層へと戻ろうとしていた。
「ガルディア?」
「一足先に帰らせて貰う」
ガルディアはそう言って去った。
「全く…素直じゃないね…」
アスディアがそう呟いた。
「全くだ」
アウスがそう続いた。
「さぁ…僕らも神聖ローマを迎え撃つ準備をしよう」
アスディアがそう言うと皆、自分の階層へと戻っていった。
「時は満ちたわ。ローグヴェルトはここで私と共に待機、それ以外の者達は十二支連合帝国に侵攻する」
「何故…また…」
「他の四大帝国の戦力が十二支連合帝国に集まっているわ。彼等は私たちを妨害する可能性がある。芽は潰しておくに越した事は無いわ」
フランの質問にルミナスは淡々と答えた。
ならば前のタイミングで他の四大帝国を殲滅すれば良かった。
なのに何故今回まで待ったのか。
それはパルテノスへ行くための扉を固定させる為にルミナスが扉の制御を行う必要があったからだ。
実際、今日までルミナスは扉の固定に集中していた。
「先手を撃たれる可能性は…」
「その前に攻め込む。まぁ、彼等に先手を撃てる程の余裕は無いとは思うけれど…」
ルミナスはそう言った。
実際、他の四大帝国はかなり疲弊しており、恐らく態勢を建て直すだけでも手一杯の筈だ。
「とにかく、今は他の三国を完全に潰す。そして…パルテノスを制圧する」
ルミナスがそう言うと他の騎士団達は十二支連合帝国へと向かっていった。
「ローグヴェルト…最後まで…私に付き合って貰うわよ。これで最後になるのだから」
「御意」
ルミナスがそう言うとローグヴェルトはこくりと頷いた。
「さてと…」
ルミナスが後ろを振り向くと地面から大量の改造天使が出現していた。
セラフィム騎士団達はこの改造天使の存在は知っているがどの様にして造られているのかは把握していない。
改造天使の数はパッと見ただけでは数えきれなかった。
「およそ十万の改造天使…少し多く造りすぎた気もするけど…これで私達の負けは無いわ」
改造天使達は再び地面に潜っていった。
「これで…最後の戦いになる…」
ローグヴェルトはそう呟いた。
戦争…人間が起こす最も愚かな行為…
世界の平和を、安寧を望みながらも争う。
人のこの矛盾した感情は果てしなく業の深いモノだ。
「もうすぐ…もうすぐで…全てが終わる」
十二支連合帝国に大量の改造天使が出現した。
「ついに来たか…」
「ちょっ!?予想より速くねぇか!?」
十二支連合帝国にいた者達は驚いていたがそんな悠長な事も言っていられない。
「さて…暴れるか…」
スープレイガはそう言って走っていった。
他の皆もそれぞれ敵と交戦していた。
相手は不死の改造天使だ。
この改造天使を対処する方法は現在の所、封印術を施して相手の動きを止める以外の方法が無い。
「思ったより数が多い…」
「そうね…これは…」
薊とくるも既に改造天使と戦闘が始めていた。
「改造天使…話には聞いてたけどこれ程とはね…」
ミルフィーユが遠くを眺めながらそう言っていた。
何せ本当に何をやっても死なないのだ。
身体を木っ端微塵にしても再生する。
不死の身体、無限の霊力…それが十万体いるのだ。
いくらミルフィーユでも死なないゾンビを永遠に相手にするのは勘弁だった。
味方側で本当に良かったと心底思った。
とはいえ…これだけの改造天使…一体どうやって造り出したのか…そもそもどの様な材料で造られているのか。
ミルフィーユはルミナスに対してよく分からない人物だと思った。
とにかく考えが全く読めないのだ。
世界を統一して、その先に何を見据えているのか…彼女のやろうとしている事が全く読めない。
だが、ミルフィーユにとってそんな事はあまり興味が無かった。
今のミルフィーユにとっての一番の京見は蒼達がどれだけ強くなったか、それだけだ。
強者との戦いはそれだけでも楽しいものだ。
まあ、蒼はルミナスにコテンパンにされた訳だから心が折れてないとも言えなかったが…ミルフィーユは知っている、蒼がこの程度で心が折れないという事を。
「随分と楽しそうだね~、ミルフィ…」
「ええ…楽しみよ…どうしたの?君から話し掛けるなんて…珍しいわね、ワッフル」
「ボクだってたまには話すさ…普段はあまり喋らないけどね…」
ワッフルは普段は無口であり、あまり喋らない。
だが、話す事が苦手という訳では無く、単に自分から積極的に話さないだけだ。
「ワッフル…あなたはこの戦い…楽しい?」
「ボク、君みたいに戦いが好きって訳じゃ無いからね。この戦争を楽しんでるのは多分ミルフィだけだよ」
「そうかな?まぁ、どうでもいいか」
「なら、聞かないでよ…まぁボクはなるべく目立つ行動はしないようにしないとね…死ぬの…嫌だし」
そう言ってワッフルは去っていった。
ドラコニキルは改造天使を封印して回っていた。
簡単に倒せる相手ではなく相手を弱らせてから封印札を貼って封印するという古典的方法で封印していた。
「ふー、まさか…ここまでの数とはな」
ドラコニキルはそうぼやいていた。
「やれやれやれやれ…どうも…こんにちは」
ドラコニキルは後ろを振り向いた。
明らかに他の改造天使とは違う人物が現れた。
その人物は黄色と黒のオッドアイと紅色の髪が特徴の男であった。
「お前は…誰だ?」
「それがしは…ピータ…ピータ・アルクリエ…貴様を殺しにやって来たのだ」
「お前も改造天使か?」
「ああ、その通り、それがしも改造天使だ…だが…それがしの改造天使は一味違うぞ…【天空天使】」
「!?」
ピータの両手からジュルが出現した。
「?」
「【第二解放】」
ピータは【第二解放】を発動した。
ピータは巨大な白い鳥の様な姿になっていた。
「全く…勘弁して欲しいな…こんなデカブツをどうしろと…」
ピータはドラコニキルに突進で攻撃した。
ドラコニキルはピータの攻撃を回避した。
ピータの突進は風圧を纏っており、一撃でも食らえば致命傷は避けられないだろう。
「こうなったら…俺も本気を出すしか無いな…怒り狂え、【黒龍魔王】」
ドラコニキルは【悪魔解放】を発動した。
ドラコニキルは全身に白い服を纏っており、服には大きな十字架模様があった。
両手足は黒ずんでおり、頭には龍の骨の様なモノを被っていた。
瞳は赤くなっており、背中には龍の黒い翼が生えていた。
「【ペンドラゴン】」
ドラコニキルは右手から黒炎の長剣を造り出した。
これはドラコニキルの武器である【ペンドラゴン】だ。
ドラコニキルはピータを黒炎の長剣で切り裂いた。
すると、ピータの身体から黒炎が発生した。
「ぎゃあああ!!!!」
ドラコニキルはピータを眺めた。
ピータはすぐに黒炎を突風で払った。
「何!?」
ドラコニキルの黒炎をピータは意図も簡単に消し去った。
ドラコニキルの黒炎はあらゆるモノを燃やし尽くし、それは概念にすら影響を与えるのだ。
その黒炎をピータは意図も簡単に消し去ったのだ。
これは一筋縄では行かないだろう。
「まさか…俺の黒炎をこうも簡単に消し去るとはな…」
ドラコニキルは忌々しげに呟いた。
やはり、改造天使を名乗るだけあって強い。
「ならば…貴様が炎を払う前に俺が焼き尽くすまでだ」
ドラコニキルはそう言った。
To be continued




