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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【最終章】天界叛逆篇
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【最終章】天界叛逆篇Ⅹーrootsー

 蒼達は第五階層へと辿り着いた。

 蒼、屍、慧留、美浪、一夜、屍の六人は辺りを眺めていた。

 古い建物であり、まるで鍛冶屋の様であった。


「何か職人の家って感じだな」


 屍がそう言った。


「ヘパイストスは職人気質な人だったからね~」


 現れたのはランクルだった。


「知ってる?武器にはね…魂があるんだよ…」

「は?何言ってやがる?」


 ランクルの言葉に屍は意味が分からないといった様子だが蒼はランクルの言っている事を少しは分かっていた。

 蒼の武器であるエンゲリアスには魂がある。

 蒼はその魂と出会っている。


「蒼君、それだけじゃないよ…確かに蒼君や慧留ちゃんの場合はそうかもしれないけど、武器には造った人の魂が込められているんだよ。大なり小なりね」


 ランクルは更に続けた。


「だから…モノを粗末に扱うのはダメだよ?こ~んな雑な使い方して壊しちゃうんだもんね」


 ランクルは右手に蒼の二振りのエンゲリアスの残骸、左手には慧留のソロモンを持っていた。


「なっ!?」

「いつの間に…」


 更にそれだけでは無かった。

 ランクルは蒼と慧留の武器を宙に浮かせ、更に両手から屍のアルダメルクリー、一夜のスマホ、プロテアの鉄の剣の欠片。更には美浪の肉片を持っていた。

 それら全てを宙に浮かせた。

 恐らくランクルの霊力によって浮かせているのだろう。


「う~ん、何時だったかな?まぁ、それはそんなに重要じゃないからいいよ…別に…」


 ランクルがそう言って両手を叩くと宙に浮いてた武器達がぶつかり合い、粉々に砕けた。


「「「「「「!?」」」」」」


 すると、粉々になった武器は再構成され、何人かの人形が出現した。

 蒼のエンゲリアスは二振り持っているので蒼だけは二体のエンゲリアスがいた。

 その姿は青い女性と黒い少女が蒼の目の前に出現した。

 蒼が何度も見てきたザドキエルとザフキエルだ。

 慧留の目の前には小さな少年がいた。慧留の相棒、ルキフグスだ。

 プロテアの前に現れたのはイシュガルと瓜二つの姿をした青年であった。

 プロテアの力がイシュガルに由来するモノである為当然の事だった。

 一夜の前に現れたのはは何の特徴もない雷を纏った人形であった。

 屍の前に現れたのは機械が混じった鬼であった。

 屍のアルダメルクリーは十二支連合帝国の神器、イザナギノミコトと屍の霊力で作られている影響だろう。

 美浪の前に現れたのは狼を擬人化した様な姿をした人形であった。


「なっ!?何だよ…これ…!?」

「え?何って…君達の武器の魂だよ?怒ってるんだよ!粗末な扱い方するから…だから…君達はこれから…武器の魂と語り合ってね♪」


 そう言ってそれぞれの武器の魂が蒼達に襲い掛かった。

 この空間では武器の魂を具現化する事が出来る。

 そして、その武器を従わせる事が出来れば武器を造り直す事が出来る。

 だが、それが出来なければ…最早語るまでも無いだろう。


「さぁて…楽しくなってきたね…」






「逃げられたわね…」

「…申し訳ございません…!」


 ルミナスがそう呟き、フランが謝罪した。

 ここは神聖ローマ、天使城(セラフィム・ヴァール)

 ここではフラン、エクレア、インベル、アポロが前の戦いで配置されていたのだが、インベルとアポロに隙を突かれて逃げられてしまったのだ。


「まぁ、あの子達に抜けられても特には支障は無いわ。ただ、払う埃が増えてしまったのは頂けないけど…まぁ、仕方無いわ。あの子達は元から裏切る事なんて想定内だったし」


 そう、インベルとアポロは蒼の友人であり、五年前のローマ聖戦の戦犯達だ。

 それでもルミナスは敢えてインベルとアポロをセラフィム騎士団から除名せずに置いていた。

 彼等は戦力としては役立ったので殺す訳にも行かず、更に追放したらしたで蒼と合流していた可能性が高かった。

 なので監視も含めて手元に置くのが一番良かったのだ。


「まぁ、彼等は十分に役立ったわ。門の完成まで…あと少しだしね」


 ルミナスは空を見上げた。

 空には光の門があり、ぐにゃぐにゃと動いていた。

 門の固定が完了するまでまだ時間が掛かりそうであった。


「今残っているセラフィム騎士団は…ローグヴェルト、フラン、エクレア、ジェジェ、ミルフィーユ、アルダール、ワッフルね…思ったより減ったわね…案外向こうもやるモノね」


 十二人いたセラフィム騎士団が今は七名まで減っていた。

 ルミナスは皇帝ではあるがセラフィム騎士団では無い。

 セラフィム騎士団の士気を取っているリーダーはローグヴェルトだ。

 アポロとインベルは離反し、この時点で二人抜けた。

 だが、それを差し引いても三人も倒されるとは思わなかった。


「まぁ…彼等は我々の中でも余り強い方では無いのですがね…」

「それでも甘く見ていたわ…殺せても精々一人だと思ってたから…特に改造天使の貴重なサンプルを失ったのは少し面倒ね…」


 ルミナスはそう言って歩き出し、地下までいった。

 フランは報告を終えたのでルミナスから去っていった。

 ルミナスは地下へとやって来た。


「悪かったわね、ローグヴェルト。待たせてしまって」

「いえ」


 ルミナスとローグヴェルトは地下にあったモノを見た。

 それは大量の実験体であった。

 この地下にある実験体達は全員、改造天使であった。

 改造天使とは人為的に天使以外の魔族や人間に天使の因子を入れ、天使に改造された者達だ。


「ここにいる改造天使は…大体何体だったかしら?」

「確か…()()()()()()()()

「その中でも【第二解放(エンゲルアルビオン)】を使える改造天使は?」

「残念ながら…五体程しか…」

「五体もいれば十分よ…」


 ルミナスは笑みを浮かべた。

 そう、吸血鬼であるクラッカーがセラフィム騎士団におり、更に天使しか扱えない筈の【第二解放(エンゲルアルビオン)】を扱えたのはここで改造天使に改造されたからだ。

 ルミナスはローマカイザーの霊術の一つである【輪廻転生(メテンソーマトーシス)】を使い、死んだ魔族や人間を生き返らせ、そこから改造天使に改造していたのだ。

 クラッカーは唯一、殺さずに造って成功した成功体でいい実験体だと思ったのだが…


「本当に…クラッカーは惜しかったわ…まぁ、いいわ。どうせ、消耗品なんだし」


 ルミナスの【輪廻転生(メテンソーマトーシス)】は何も無尽蔵に人や魔族を生き返らせる事が出来る訳では無い。

 生き返らせる為には大量の霊力と魔力が必要であり、更に生き返らせる対象の死体が必要だ。

 つまり、死体を木っ端微塵にしてしまった厳陣や原型を留めずに死んだグリーフアルトやグリトニオンなどは転生させる事が出来ない。

 また、『世界宮殿(パルテノス)』以外の場所に封印されている者や魂が完全に消えた者も転生出来ない。

 つまり、四大神に完全に魂を喰わせた四宮舞、オーディンにより魂を喰われたプラネット・サーカスを始め、オーディンの生け贄にされた者、また、魂が完全に消滅したエスデスも生き返らせる事が出来ない。

 しかし、ルミナスはハーフエンジェルであるが故に魔力を持たない上にこんな数十万の者達を生き返らせる程の霊力は流石に持っていない。

 ならば、どうやってこれだけの数を生き返らせたのか。

 それは『万物の古鍵(シュトラール)』を利用したのだ。

 『万物の古鍵(シュトラール)』天使と悪魔、そして、神の力で満たされている。

 つまり、魔力も霊力も莫大に秘めているのだ。

 それを培養すればこの様に多くの死者を甦らせ、改造する事が可能だ。

 ローグヴェルトもルミナスにより生き返り、天使に改造された改造天使であり、どの個体よりも強い最強の改造天使だ。


「彼等は…私の創る世界の為の礎よ…」


 ルミナスはそう呟いた。

 そう、この世界で何かを成そうとすれば、必ず犠牲が出る。

 だが、その犠牲の出る戦いもルミナスが『世界宮殿(パルテノス)』を奪えば全て終わる。


「ローグヴェルト…貴方は私の剣よ。その役目…最後まで全うして貰うわよ」

「勿論です」


 ローグヴェルトの心は変わらない。

 この絶望にまみれた世界に一筋の光がある。

 それがルミナスだ。ルミナスはこの世界に光を与えてくれる救世主だ。

 ローグヴェルトはそう、信じていた。






「は~い、皆お疲れ様~」


 ランクルがそう言った。

 蒼、慧留、プロテア、一夜、屍、美浪は全員倒れていた。

 だが、どうにか自分の武器を従わせる事が出来た。

 蒼の武器達はそのまま消えていった。


「おい!消えたぞ!?」

「大丈夫だよ、後で渡すから。じゃあ、今度は第六階層だね~」


 ランクルはそう言って光の階段を作った。


「アンタは?」

「いや、私はここで君達の武器を完成するまで待たないとだしね☆」

「そういう事かよ」

「使われる武器の気持ち…少しは分かったかな?」

「ああ、少しはな」


 ランクルの質問に蒼は答えた。

 まぁ、美浪の場合は徒手空拳だけど。


「じゃ、行ってらっしゃい~」


 ランクルは陽気に蒼達に手を振った。

 蒼達は階段を登っていった。


「それにしても…武器の気持ち…なんて考えた事無かったな~」

「そうだね…僕もだ。他の皆は?」


 屍と一夜は使う武器が武器なので考えた事が無いのは無理無いだろう。


「私、そもそも素手やし…」


 美浪は小声でそう言った。


「私もあまり考えた事は無かったわね」


 プロテアも同じ様だ。

 まぁ、武器なんて普通は意思を持ってるなんて誰も思わないし無理も無い事なのかもしれない。


「フローフルと慧留はどうなの?」

「エンゲリアスは普通に意思があるからな。会話もした事あるし」

「私もあるよ。会話した事」


 蒼も慧留も武器に意思がある事は知っていた。

 まあ、二人の場合は他の人達とは勝手が違うが。


「そうか…確かにエンゲリアスには魂があるというのは聞いた事があるね。でも、慧留ちゃんの場合はソロモンに分類されるんじゃないのかい?ソロモンはあくまでも自分の力の核を封じてるだけだから遺志は無いって聞いた事があるが…」

「慧留はただの悪魔じゃねぇ…堕天使だからな…天使と悪魔…二つの性質を持ってると考えるのが妥当だろう」


 蒼がそう言った。

 確かに蒼の言う通りなら辻褄も合う。


「まさか、自分の武器にこうもコテンパンにされるってのもいい気分はしねぇな」


 まぁ、屍の言う事も尤もではあった。

 今まで慣れ親しんでいたと思っていた武器がいきなり襲い掛かってくる。

 これはあまりいい気はしないだろう。

 まぁ、だからこそ武器の偉大さが分かるというモノだが。


「要するに物は大事にしろって事よね。いい教訓になったわ」

「そ…そうですね~。私の場合は素手なんやけど…」


 物を扱う。

 それが出来たのは人間だけだった。

 しかし、人間と同じ様に地勢を持った魔族もまた、物を扱っていた。

 物を扱う…それは生きていく上では欠かせないものである。

 恐らく、一度手に要れた便利な物を一度手放すとそれなしでは生きては行けないだろう。

 故に物は大切に扱う必要があり、なるべく壊さない様に扱うべきであろう。


「物を大事に…か…」


 慧留はそう呟いた。

 何か思うところがあったのかもしれない。


「もうすぐで着きそうだな」


 蒼がそう言うと第六階層に到着した。


「これは…服?」


 そう、ここには大量の服があった。

 そして、蒼達の前にガルディアがいた。


「ようこそ、待っていたぞ。随分と時間が掛かった様だな。服もボロボロだ」

「服って事は…ようやくこのクソダサ体操服から卒業出来んのか!」

「いや、確かにここでは服を作るがこの修行を終えるまでは貴様の言うクソダサ体操服からは逃げられんぞ」

「ダニィ!?」


 ガルディアの無慈悲な言葉に屍は驚愕した。


「全く…一体いつから…そのクソダサ体操服から卒業出来ると錯覚していた?」

「今だよ!」


 そんなどこかで聞いた事のある台詞をガルディアは言ってすぐに屍は突っ込みを入れた。


「突っ込みだけは一人前だな」

「うるせぇ!」

「で?具体的には何すればいいんだよ」

「貴様らは…ここで服を作って貰う。自分でな」

「「「「「「へ?」」」」」」


 …ここに来てから修行らしい修行をあまりしていない気がする。

 今度は服作りって…


「自分の身体の身を守る為のモノだ。自分で作るのは当然だ」

「くっ…妙な説得力…!」

「た…確かに!」


 慧留と美浪はなんか納得してるっぽかった。

 後プロテアも。


「具体的にはどうすんだよ?」

「貴様等…服の作り方も分からんのか。授業でやっただろう」

「簡単なやつしかやってないし、もう忘れてるんですけど!?」


 美浪の尤もな突っ込みをした。

 というか、今時服が破けても新しいのに買い換えるのが当たり前だし裁縫なんか殆どしている者などいないだろう。


「これだから現代っ子は…」


 ガルディアは呆れた様にそう言った。

 何だか侮辱された気分で腹が立つ。


「私、現代っ子じゃないのだけど」


 プロテアはそう呟いた。

 プロテアは人間でありながらこの六人の中では断トツの最年長であった。


「そうだったな…貴様はイシュガルドの人間だから年の取る速度が遅いんだったな。見た限り同年代にしか見えなかった。そうか要するに貴様はロリバb…」

「それ以上言ったら例え神であろうとも殺すわよ…」


 プロテアは今まで見たことの無い様な形相でガルディアを睨み付けた。


「何故俺は彼女に殺意を向けられているのだ?」


 ガルディアは本気で何故プロテアが怒っているのか分からない様であった。

 ガルディアはガルディアでちょっと変わってるなと一同は思った。


「まぁいい。まずは生地選びだ」






「おーい澪、何か分かったか?」


 インベルがそう澪に言った。

 インベルと澪は図書館にいた。

 先の戦いでも図書館は何とか無事だった。


「さっぱり。そっちは?」

「全然」

「というか、君仮にも神聖ローマの人でしょ?なんか分からないの?」

「俺とアポロは信用されてねぇからな~。あんまり情報は与えてくれなかった」

「ベルチン全然使えないね」

「ベルチンって何だよ!?変なあだ名付けんな!」

「あっ、怒るとこそっちなんだ」


 使えない発言に関しては怒っていない様だ。

 澪的には怒る所はそこじゃないと思うんだけどなと思った。

 まぁ、人のキレるポイントなんて人それぞれなんだなと思う事にした。


「俺が知ってる事と言えば、ルミナスはローマカイザーの霊術って奴を全部使えるって事とあいつは初代から九代目までのローマカイザーの皇帝の記憶を有してるって事くらいだ」

「ローマカイザーの霊術?」

「ローマカイザーの皇帝が使えた特殊な霊術だよ。全部知ってるって訳じゃないが中には死人を生き返らせる能力もあるらしいぜ」

「死人を…生き返らせる?」

「ま、そんな都合のいい術があるわけねぇから何らかのデメリットとかもあるだろうぜ」


 死人を生き返らせる。

 この言葉を聞いて澪は少し取り乱してしまった。

 自分の死んだ親友も…音峰遙も生き返らせられるのかと思ってしまったのだ。

 だが、インベルの言うようにそれではあまりにも都合が良すぎるので何らかのデメリットがあるのは確実だろう。


「もう一つの…記憶の保有ってのは?」

「どうも、歴代ローマカイザーの皇帝は皇帝の座を継承した時、今までのはローマカイザー達の記憶が流れるんだと。……そう言えば…ルミナスが豹変したのは継承の儀式を終えてからだったな」


 そう、ルミナスがいきなり豹変したのは継承の儀式を終えてからなのだ。

 その継承の儀式で彼女に何かがあった…という事なのだろうか。


「おーい、ちょっと来て~」


 突然やって来たルバートが澪とインベルを呼んだ。

 ルバートの隣にはメラルもいた。


「ちょっと分かった事があるんだ」


 ルバートはそう言って澪とルバートをどこかへ連れていった。


 ルバートはインベルと澪を検視室へと連れてきた。

 ここにルバートが拘束した神聖ローマの兵士を解剖していた。

 因みにその兵士は今、強力な麻酔で眠らせている。

 ここには黒宮とアポロ、ドラコニキルもいた。


「こいつの身体に…天使の因子が組み込まれていたんだ」

「天使の因子?」

「こいつは元は獣人族なんだよ。なのに天使の因子が組み込まれてる」


 ルバートがそう言った。

 これが、美浪が以前に言っていた改造天使というやつか。


「しかもこいつ…」


 ルバートはメスで神聖ローマの兵士の腹を切り裂いた。


「!?」


 それを見た澪達は少し驚いたがすぐに異変に気が付く。

 そう、ルバートがさっき切り裂いた筈の傷がミルミルと治っていたのだ。


「これは…」

「そう…この生命力…さっき、頭を切り飛ばしても首を跳ねても再生したんだ。向こうの兵力が衰えなかった理由だろうね」


 つまり、神聖ローマの雑兵は全員改造天使だったという事になる。

 更にその改造天使は不死身のゾンビだという。


「でも…ミンミンと戦った改造天使は死んでたよ?」

「不死身じゃ無かったって事?」

「少なくともUSWにいた改造天使はそうだったよ」

「そっか…なら何か違いがありそうだね…」

「その違いが何かは分からないけどね」

「改造天使…か…」


 アポロは忌々しげに呟いた。

 恐らく、天使以外の魔族や人間を片っ端から改造したのだろう。


「けど…おかしいわ。他の兵士達は特に改造された形跡は無かった…」


 神聖ローマにはおよそ五万程の兵士達がいるが全員改造された形跡は無かった。

 そもそももし改造されたのであれば行方不明にくらいはなる筈だ。

 それが無かったという事はー


「神聖ローマ以外の人間や魔族…或いは元反乱軍を改造してる可能性があるな…」


 インベルはそう言った。


「それだけじゃないわ、ルミナスには死人を生き返らせる力もある…それを利用して改造天使を量産してる可能性もあるわ」


 アポロはそう続けた。

 インベルとアポロの予想が当たっていたらそれは最悪だ。

 不死のゾンビ集団が何千何万と向こうにはいる可能性があるのだ。


「要するに黒宮みたいな不死が敵になる…というのか…それは…面倒だな…」


 ドラコニキルの言う事も最もだ。

 不死のゾンビが相手ではこちらからはどうしようもない。


「まぁ、その場合は処理の方法が分かるまでは封印するしか無いよね…」


 ルバートがそう言った。

 まぁ、ゾンビが相手ならそれをするしか無いだろう。


「取り合えず、対処法をこっちでも調べてみるよ。後、メラル、封印札の準備をして。出来るだけ沢山集めて」

「わっ、分かりました!」


 メラルはそう言って外へ出ていった。


「思ったより…ヤバイ事になりそうだね」







「はー、やっと作り終えた…」


 蒼達はどうにか服を作り終えた。


「貴様等はもっと細かく丁寧にやるという事を覚えねばな」

「アンタ細かすぎなんだよ!」


 蒼がガルディアそう言った。

 生地を選ぶ時からガルディアはかなり細かく支持を出していたしミシンで縫う時も何から何まで細かく指示しており、とにかく時間が掛かってしまった。


「全く…その程度では先が思いやられる」

「アスディアがアンタを面倒臭がる理由が少しだけ分かった」


 蒼はそう皮肉を口にした。

 ガルディアは色々と性格が細かすぎる。


「でも…ちょっと楽しかったけどね」

「そうやね」

「まぁ、たまにはこういうのも言いかもね」


 女子三人は結構ノリノリであった。

 しかし、男子三人は特に蒼は生来の雑な性格が相まって中々上手く出来なかった。


「あまりのんびりもしていられんぞ。次で一応は最後だ。次の第七階層を終えれば個別で修行だ」

「やっとかよ~。長過ぎなんだよ」

「下準備の大切さが分かっただろう」

「下準備の面倒臭さは痛い程分かったよ!」


 屍がそう言った。

 まぁ、何事も準備というのは面倒なモノだ。

 因みにこの部屋はアフロディテが使っていた部屋だ。


「次はエリシアが使っていた部屋だ」

「!?」


 蒼はエリシアの名前を聞いて顔色が変わった。


「そう言えば時神蒼、貴様はエリシアの教え子だったな」

「ああ」

「ならば、覚悟するんだな。次の階層はそれなりに覚悟がいるからな」


 ガルディアはそう言った。

 ガルディアがそう言うという事はそれなりにヤバイのだろう。


「じゃあ、前半戦最後の修行だ。行ってこい」


 ガルディアはそう言って光の階段を作った。

 蒼達はその光の階段に進んでいった。

 そして、第七階層に辿り着いた。


「ここは…」

「ようこそ、第七階層へ」


 現れたのはアスディアであった。

 まぁ、消去法的にこの階層に現れるのはアスディアである事は皆予想はしていた。


「さてと…君達に修理した武器を渡すよ~」


 そう言ってアスディアは全員に玉手箱を手渡した。


「は?玉手箱?」

「その箱に霊圧、或いは魔力を込めれば、武器が出てくる。けどね…その前に君達にはやらないといけない事があるのさ」


 アスディアは更に続けた。


「この場所を見て、どう思う?」

「なんか…グチャグチャした世界ですよね…時間と空間が定まっていない感じ」

「慧留ちゃんの言う通り、ここは空間と時間が定まっていない。故にこんなおかしい構造をしているのさ」


 アスディアはそう言った。

 確かにモノが逆さまに置かれていたり、空間が定まっておらずグチャグチャであった。


「ここでは君達に自分のルーツ、つまり過去を振り返って貰う」

「過去?」

「そう、君達に過去を振り替えって…そこから自分の力の在りかを見つけて貰う」

「随分とアバウトな内容だな」

「そう、アバウトだからこそ…これが難しい…」


 アスディアはそう言った。

 成る程、そう簡単には行かない様だ。


「じゃあ、始めようか!」


 アスディアがそう言うと蒼達の意識は闇へと消えていった。






 血塗られたローマカイザーの歴史。

 ローマカイザーという名が誕生したのは今から五百年前だ。

 それ以前はローマカイザーと呼ばれていなかった。

 ローマカイザーの初代皇帝であるヤハヴェは千年前から存在している原初の天使だ。

 パルテミシア十二神は全員、何らかの魔族の種族を産み出している。


 ヘスティアは人魚。

 ヘパイストスは妖怪。

 アレスは土地神。

 アルテミスはエルフ。

 ヘラはゴーレム。

 エリシアは精霊。

 アフロディテは魔獣。

 ランクルは神獣。

 アウスは機械族。

 ジェネミは電子生物。

 イシュガルはイシュガルド。

 ガルディアは悪魔。

 そして、アスディアは天使を産み出した。


 ヤハヴェはアスディアと人間の女性との間に生まれた子供であり、生まれつき綺麗な翼が生えていたという。

 天使というだけあり、不老長寿であり、何百年も生き続けた。

 やがて、ヤハヴェが生まれてから五百年の年月が経ち、ヤハヴェの寿命が来た。

 だが、ヤハヴェには野望があった。

 自分をこの世に産み落とし、棄てたアスディアに報復するべく、『世界宮殿(パルテノス)』を我が物にしようと画策した。

 しかし、それは寿命で叶わないと悟り、子孫を残し、記憶を継承させていくという形を取った。

 そして、記憶が伝承して生まれたのが二代目ローマカイザーであるライトである。

 そこから寿命が来る度に記憶を伝承していった。

 そして、神聖ローマという国が発足されたのは五代目皇帝であるディユの時であった。

 記憶は継承し、受け継がれていったが二代目から九代目までは『世界宮殿(パルテノス)』を支配する事など興味が無く、誰も『世界宮殿(パルテノス)』に攻める皇帝はいなかった。

 受け継がれるのはあくまでも記憶だけで意思までは縛る事は出来なかったのだ。

 それに神聖ローマはむかしから内乱が多発しており、とても『世界宮殿(パルテノス)』へと攻め込む余裕も無かった。

 十代経過したヤハヴェの遺志は完全に消滅しており、最早記憶というデータが引き継がれるだけとなった。

 そんな時にルミナスといういつざいが現れた。

 彼女は何よりも白く、純粋な心を持っていた。

 故にこの世界を憂いていた。

 このルミナスこそ、『世界宮殿(パルテノス)』を支配する事が可能とする存在であった。

 ローマカイザーの霊術を全て継承し、神聖ローマを統一、更に他の四大帝国を事実上攻め落とし、歴代皇帝最強と謳われている。

 ルミナスは今、ヤハヴェの宿願を果たそうとしている。

 だが、ルミナスにとってはそんなモノは興味がない。

 ただ己の正義を貫く為に動く。

 そう、つまり蒼もルミナスも…ヤハヴェの…もっと言うとアスディアの末裔なのだ。

 過去を振り返り、未来を予感させる。

 それが歴史だ。

 歴史は長い。

 そんな長い歴史に比べれば…人の命などほんの一時の微睡みに過ぎない。

 全ての魔族は…『世界宮殿(パルテノス)』に…パルテミシア十二神に産み出された小さな存在だ。

 その歴史に…今、新たな一ページが刻まれようとしていた。

 ルミナスはが歴史を変えるか、はたまた蒼がそれを阻止するのか。

 それとも…違う未来があるのか…それは誰にも分からない。

 だが、それぞれの思いが交錯し、一つの戦いがこれから始まるのは事実だ。

 誰が正しいのか、誰が間違っているのか…それは人によってそれぞれ違ってくるのだろう。

 だが、それでも世界は…歴史は動き続ける。

 その果てしない時の流れの中の小さな一幕に過ぎない。

 それでも、今生きている人達にとってはその一時の時の流れは大切なものであって…

 蒼とプロテアは…この世界の命運を左右する運命の二人…という事だ。

 全ての事に始まりがあるように、全ての事には終わりが必ずある。

 それは…速いか遅いか…その二つだけだ。

 運命は動き出す、時神蒼とルミナス・アークキエル・ローマカイザーの二人が…その運命の歯車を動かす。





To be continued

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