【最終章】天界叛逆篇Ⅸーpaltemiciaー
慧留の演説を終え、どうにか士気を取り戻し、USWからプロテア、澪、黒宮、美浪が帰還した。
更にドラコニキル、スープレイガ、アルビレーヌ、ウルオッサも来ていた。
彼等は四神天城跡地にいた。
「月影さん、ありがとうございます。あなたのお陰で最悪の事態は避けられました」
黒宮が慧留に頭を下げてお礼を言った。
「いえ…私はそんなに大した事は…」
「いえ、あなたは世界の人々の心を動かした…私含めてね…正直、私は厳陣が死んで…どうすればいいか分からなくなっていました…ですが…厳陣の夢は…まだ続いている…」
黒宮は厳陣が死んだ事実を知った時、傷心をしていた。
厳陣と共に夢を誓ったのにその同士が半ば死んでいった。
どうすればいいか、分からなくなっていた。
だが、悩む必要など無かったのだ。
厳陣と同じ夢を受け継ぐ少女が、今、黒宮の眼の前にいたのだ。
ならば、黒宮のやる事は一つだ。
厳陣が繋いでいった夢を守る事。
「それにしても…ついこの前まではひょっ子だったのに…随分と大きくなったな…慧留」
「うん、ありがとうドラコニキル」
ドラコニキルの言葉に慧留は素直にお礼を言った。
「さてと…じゃあ、これからどうするか考えようぜ!」
インベルがそう言った。
「て言うか、その二人は神聖ローマの天使でしょ?信用していいの?」
ウルオッサがそう言った。
確かにインベルもアポロも神聖ローマの天使だが彼等は蒼の友達である。
「こいつらは俺の仲間だ。もしこいつらが裏切る様な事があれば俺の首を跳ねればいい」
蒼がウルオッサにそう言った。
ウルオッサも蒼がそこまで言うのだから一応は信用する事にした。
まぁ、他人からしたら二人の事情など知らない訳であるから疑うのも無理は無い。
「さて、じゃあ話を進めようか」
ルバートがそう言った。
ヘレトーアの人々も来ていた。
「その前にこの子の紹介をしないとね」
ルバートはそう言って青色の長い髪と瞳を持った小さな少女が来た。
「新しいセクラム教神官のハーフエルフのメラルだよ」
「よ…よろしくお願いします…」
どうも控えめな感じの少女であった。
こんなんでセクラム教は大丈夫なのだろうか?
「大丈夫大丈夫!実力は確かだから!」
「というか…ハーフエルフか…珍しいね」
一夜がそう言った。
ハーフエルフとは人間とエルフの間の子供でエルフがそもそも稀少な魔族なので更に珍しいという事になる。
「彼女は生まれつき強い生命力で満ちててどんな怪我も一瞬で治す事が出来るんだよ」
「え!?じゃあ、慧留と屍を元通りにする事は!?」
慧留は半身不随になっており、屍は内蔵がズタズタで戦える様な状態では無かった。
「あっ…えっと…はい、治せ…る…と思います!」
メラルは顔を赤くしながらそう言った。
どうやら恥ずかしがり屋の様だ。
「じ…じゃあ、治しますね」
メラルが慧留の足に手を置こうとした瞬間ー
「ちょっと!待ってくれたまえ!!!」
そんな声が聞こえ、上から何か降ってくる音がした。
『!?』
一同は全員驚愕した。
そして、彼等は姿を現した。
全員で六人いる様だった。
「お前らは…パルテミシア十二神!?」
蒼がそう言うとここにいる皆は驚愕した。
「現世に来んのも久しぶりだなおい!」
銀色の短髪と瞳、右耳に複数のピアスを着けている男がそう言った。
服装は軽装のロック風の服であった。
彼はアウス・ヘルメス・パルテミシア。パルテミシア十二神の生き残りの一人で錬金術を司る神だ。
「アウステンション高いよ~」
そう言ったのは瑠璃色のセミロングと瞳を持った中肉中背の少女であった。
更に緑色のワンピースを着ていた。
彼女はランクル・デメテル・パルテミシア。豊穣を司る神である。
「それにしても、ここはボロボロだな…」
銅色の長い髪と瞳を持ち、中性的な容姿をしていた女性がそう漏らした。
また白衣の様な服を着ていた。
彼女はジェネミ・アポロン・パルテミシア。予言を司る神である。
「どうやら、アスディアが言っていた者たちは全員無事のようだな」
茶髪で普通の髪の長さであり、青白い瞳と航海士を思わせる白い服を着ていた男がそう言った。
彼の名はイシュガル・ポセイドン・パルテミシア。『世界宮殿』の第二権力者であり、海と大地を司る神である。
「やれやれ…これは責任重大だぞ?アスディア」
黒い宗教服と黒く長い髪と黒目の三白眼が特徴の青年がそう言った。
彼はガルディア・ハデス・パルテミシア・『世界宮殿』の第三権力者であり、イシュガルの兄だ。
「ガルディアは何で僕にそんなに冷たいの?優しくしてよ?」
白金の宗教服を来た男がやって来た。髪は金髪であり、三つ網で長く、瞳は白かった。しかし、瞳のハイライトはきちんとあった。
彼の名はアスディア・ゼウス・パルテミシア。『世界宮殿』のリーダーであり、最高神でもあり、また、ガルディアとイシュガルの弟でもある。
「お前ら…何でここに!?」
「ああ、それはね?君達を『世界宮殿』へ連れていく為だよ?」
「は!?」
「あ、厳密にはフローフル、慧留ちゃん、プロテアちゃん、一夜君、屍君、美浪ちゃんの六人を連れていく」
「ちょっ!?展開が読めねぇ!いきなり出てきて何言い出すんだよ!?」
「奴等が『世界宮殿』に攻めてくるまで時間がある。それまでにお前達六人をセラフィム騎士団と互角以上に渡り合えるまで鍛え上げる」
ガルディアがそう言った。
「それに…フローフルのエンゲリアス、まだ治って無いんだろ?恐らく、ルミナスの力のせいで回復を阻害されてる。だが『世界宮殿』へ行けば治す事も出来る。いくらハーフエルフが回復能力に優れているとは言え、この二人を治すにはかなり骨が折れるだろう。他の人達の治療にその霊力を回すべきだ」
ジェネミがそう言った。
確かにメラルの力があれば屍と慧留の身体を治療出来るだろうが相当霊力を消耗する筈だ。
それよりもメラルは他の治療が行き渡っていない者達の治療に専念すべきだろう。
「それだけではない、月影慧留と天草屍の治療もこちらで行える」
「そういう事さ♪」
「何で俺達六人だけなんだ?」
「君達じゃないと僕らの修行に耐え切れないからさ」
アスディアがそう言うと蒼達は顔を強ばらせた。
要するにそれだけヤバイ修行だという事だ。
「プロテア…君、『眼』を使い過ぎて失明寸前だろう。君の視力を回復させないといけない」
「…また、私は戦える様になるの?」
「それは、お前次第だ」
「なら、私はあなたに付いて行くわ、イシュガル」
プロテアは『世界宮殿』へと行く決心を固めた。
「アウス…アンタに弟子入りする時が来たみたいだ」
「おう!だが…俺は厳しいぜ、屍!」
屍も『世界宮殿』へと行く決心を決めた様だ。
「私は…もっと強くなれますか?」
「それは、貴女次第だね、けど、想いの強さがあれば出来ない事は無いよ」
美浪も『世界宮殿』へと向かう決心を固めた。
美浪は皆と共に歩いて行きたい。その為にももっと強くならなくてはならなかいなからだ。
「月影慧留…貴様の覚悟の程は先程の演説を聞いていたから分かる。貴様のその覚悟…素晴らしいモノだ。俺は君を高く買っている」
ガルディアはそう言っていた。
どうやら、慧留はガルディアにかなり期待されている様であった。
ならば、それに答えない訳には行かなかった。
「はい、よろしくお願いします!ガルディアさん!」
「ああ」
慧留が決意を固める中、ジェネミと一夜は向かい合っていた。
「まさか、またあなたの元で修行をする事になるとは」
「言っておくが、次の修行はあんな生温いモノではないぞ?分かっているな?」
「勿論、望む所です!」
蒼とアスディアは向かい合っていた。
「君、てっきりルミナスにボロ負けして凹んでるのかと思ってたけど…そうでも無さそうだね」
「生憎、俺はお前の思い通りにはならないんでな!」
「いや、嬉しい誤算だと思ってね。フローフル、君も勿論、彼等と同じく、僕の元で修行をするんだよね?」
アスディアが蒼に問い掛けた。
実際、アスディアの言う通り、ルミナスにボロ負けして傷心していたのだがアスディアに弱味を見せるのは蒼にとっては御免である為、強がった。
「いや無理無理お前と修行とか」
「はい!?」
「いやだって俺、一時的にとは言えお前の弟子になる訳だろ?普通に嫌なんですけど」
「何で皆僕に対してこんなに冷たいの!?じゃあ、君は『世界宮殿』に来ないのかい?」
アスディアは涙目になりながらそう言った。
正直、それでは困る。ぶっちゃけこのままでは蒼はまたルミナスに瞬殺されるだろうし。
「俺はアンタの元で修行をするんじゃねぇ…アンタを利用するのさ」
「へぇ?そう言う事、言うんだ?」
アスディアは面白そうにそう言った。
まぁ、素直じゃ無いのも蒼らしいと言えば蒼らしいとアスディアは思った。
そして、アスディアは後ろを振り向いた。
「いいだろう。じゃあ、今すぐに行くよ」
アスディアはそう言って光の扉を開いた。
「ああ」
蒼が頷くとプロテア、一夜、慧留、美浪、屍が蒼の所に集まった。
「じゃあ、君達全員、この扉に入って」
アスディアがそう言って扉の向こうへと行った。
続いてイシュガル、ガルディア、アウス、ジェネミ、ランクルが続いて門へと入っていった。
「じゃあ、行ってくる」
「ええ、お気をつけを」
蒼がそう言うと黒宮が返事を返し、蒼、慧留、プロテア、一夜、屍、美浪の六人は光の門へと入った。
「さて…我々も出来る事をやりましょう」
黒宮がそう言うと全員頷いた。
門へ入った後は一瞬だった。
一瞬で出口へと辿り着いた。
「ここが…『世界宮殿』…」
蒼は呆気に取られた。
蒼だけではない、一夜、屍、美浪、プロテアも驚いていた。
唯一慧留だけはそこまで驚いてはいなかった。
彼女はかつて、この『世界宮殿』を見た事があるからだ。
白い、圧倒的に白い世界であった。
周囲にはいくつかの建造物があるがどれも真っ白であり、空が青い事を除けば全てが白で構成されていた。
「ここが『世界宮殿』第一階層だ」
「第一階層?」
ガルディアがここの事を言うと屍が疑問を投げ掛けた。
「『世界宮殿』は全てで十三階層あるんだよ。まぁ、君達が向かうのはそれぞれ違う層だよ。まぁ、しばらくは六人一緒だけどね」
続けてアスディアが説明をした。
「この階層は『世界宮殿』の入り口でかつてはメンバーの一人であったアレスが有していた」
「階層ごとに一人一人部屋割りがされてるって事ですか?」
「そう言うこった」
イシュガルが説明し、美浪が答えを言うとアウスが頷いた。
「エリシアは…」
「ああ、心配しなくてもエリシアの階層はちゃんと行くよ。その時また話すよ」
アスディアが歩き出すと他の十二神も歩き出した。
「まずは、第二階層だ。見ての通り、ここには何も無い」
ジェネミがそう言った。
アスディアの眼の前に階段が現れ、その階段に全員上った。
すると、第二階層に到着した。
建造物が全て真っ白なので距離感がおかしくなりそうだった。
眼の前にあったのは浴場であった。
「へっ?」
「お前達、温泉に入れ」
「「「「「「へ?」」」」」」
突然、アウスが訳の分からない事を言い出した。
「いや、修行の前には身体を休めないと」
さも当然の様にランクルはそう言った。
「ここはかつてヘスティアが使っていた浴場なんだよ~。あっ、言っとくけど混浴だよ~。私達神にとって性の問題なんて下らない事だからね~」
「マジですか…」
ランクルの言葉に一夜は呆然とした。
まぁ、神だからそこはしょうがない。
「と言う訳で服を脱げ」
イシュガルがそう言った。
「うーん、思ってたのと違ーう!!!」
一夜は思いっきり頭にあった手拭いを水面に投げ捨てた。
「何言ってるんですか?一夜さん、気持ちいいですよ?」
美浪が湯船に浸かりながらそう言った。
因みにプロテアも慧留も美浪もいた。
女子勢は全員バスタオルで身体を隠していた。当然ですね。
蒼と屍に関しては泳ぎ回っていた。
「蒼!屍!風呂場で泳ぐな!」
「いや、こんだけ広いと泳ぎたくもなるって。なぁ、時神」
「ああ、温泉で泳ぐってのをやってみたかったんだよな~。毎回人が多いからな~」
「違うだろ?こういう時はきつい修行を乗り越えてそこから強くなるみたいな展開が常識だろう!?他の皆はそんな展開を望んでいる筈なんだよ!」
「あー、確かにそれはあるかもしれませんね~」
屍の言葉に美浪は間抜けな感じで納得した。
まぁ、確かに絶望的状況の中での修行は辛く険しいモノでなくてはならないだろう。
なのに今は何だ?温泉に浸かって極楽気分を味わっているだけだ。
こんな事で仮に強くなったとしても誰も納得しないだろう。
楽して強くなるなど王道から掛け離れている。
「って…屍…あなた…」
「ん?何だよプロテア…」
「普通に泳げるの?あなた、身体を動かすのが困難だったんじゃないの?内蔵がズタズタになってて」
「!? あっ、ホントだ!つか、身体が軽い!」
屍の身体は普通に動けるまで回復していた。
いや、いつも以上に身軽な気すらした。
「もしかして…慧留も?」
「………」
慧留は足を動かした。
すると、普通に立てていた。
「!? 立てた!治ってる!治ってるよ!」
「このお湯…もしかして…」
「そういう事だ」
蒼達の間に突然イシュガルが現れた。
「ぬぁ!?」
蒼は突然現れたイシュガルに驚いた。
「ここの温泉は回復効果があってな…それと霊力を上昇させる作用もある。まぁ、並の者がこの温泉に入れば霊力が高まり過ぎて内蔵が破裂するがな」
「………え?」
イシュガルの言葉に一夜は驚いた。
「当たり前だろう。この温泉は一見、至れり尽くせりの効果だがそんな都合のいいモノがあるか。君達が平然としていられているのは君達の霊力が高く、身体に溜めておける容量が多いからだ」
「他の五人はともかく、僕はそこまで霊力は無いと思うんですけど?」
「そうだな…俺もそう思ったんだが…苗木一夜…君には彼等には無い何かがあるんだろうな…」
ー他の皆には…無い何か?
一夜は疑問を浮かべた。
どうやら、一夜は本来ならこの温泉に耐えられる筈が無いという事だ。
それでも平然としているのだから何か理由があるのだろう。
「まぁ、そういう事だ。ここに君達を連れていったのは何もくつろがせる為では無い。これからの修行に備える為だ。何事にも準備は必要だからな」
イシュガルがそう言うと全員一応は納得した様だ。
「じゃあ…今はくつろぐのが仕事って訳か…」
屍がそう言って湯船に浸かった。
慧留も再び湯船に浸かっていた。
「言っておくが十数えるまで出ちゃダメだぞ?」
「子供じゃねぇんだよ!?」
イシュガルのアレな発言に屍は突っ込んだ。
「? そうなのか?俺はアスディアからそう教わったんだが…」
「あいつの言ってる事を一々信用してんのかよお前」
蒼は呆れる様にそう言った。
「というか、何であなたまで普通に入ってるのよ」
「いや、一応、この階層の監督役は俺なのでな」
「えー、こういう時って普通、ジェネミさんとかデメテルさんが監督役ですよね?男の裸なんて誰得なんですか?」
「霧宮美浪…君、神に対してその発言は不遜だぞ」
美浪がイシュガルに容赦の無い言葉をぶつけた。
まぁ、確かに美浪の言う通り、この場合の監督は女性というのがお約束というモノだろうが、残念ながらそんな事は無い。
「よし、時間が経てば次の階層に行くぞ」
イシュガルがそう言った。
次は第三階層に着いた。
慧留と屍の傷は完全に回復しており、自由に身体を動かせる様になっていた。
全員白い軽装の服を着ており、一人一人に胸の辺りに名札が貼ってあり、それぞれの名前が書かれていた。
「ねぇ?これ…何とかならなかったの?まるで小学生みたいなんだけど…」
「時には初心に戻る事も大事だ」
「いや、初心に戻るってそういう意味じゃねぇよ!?」
プロテアが苦悶を言っているとジェネミが訳の分からない事を言い出し、蒼はそれに突っ込みを入れた。
どうやらこの階層の監督はジェネミである様だ。
「よ~し、じゃあ、お前達は初心に帰って今から一時間休むぞ~」
「いや、初心の意味分かってます!?」
ジェネミの言葉に対して今度は慧留が突っ込みを入れた。
「けど、ただ休むだけじゃダメだ。辺りの風景、景色を感じながら休め。でないと…困るのはお前達だ」
「突っ込みを全てスルーですかそうですか」
美浪は諦めた様にそう言った。
「休むのは大切な事よ。休める時に休まないといざという時に本気を出せないからね。ほら、とっとと休みなさい」
ジェネミはそう言って寝転んだ。
他の皆も寝転んだ。
この階層はちゃんと何というか自然豊かであった。
鳥はいっぱい飛んでるしどうぶつも多くいる。
それに辺りには野原が広がっており、綺麗な花も咲いていた。
更に近くには滝もあり、水の流れる音も聞こえてきた。
「綺麗な景色だね…」
「そうだな…」
慧留がそう言うと蒼もそう呟いた。
「けど…ここ…かなりの自然エネルギーで満ちてるわ」
「自然エネルギー?」
「私は…イシュガルドは…自然のエネルギーを使って戦うわ…だから分かる」
「ふーん、そういうモンか」
プロテアがそう言うと屍が適当に流した。
どうやら、ここは今までの階層とは造りが特殊の様だ。
「そう、ここは多くの自然エネルギーと生命エネルギーに満ちている。ここに来るだけで体力が回復していく」
ジェネミはそう言った。
どうやら、ここで休む事にも理由があった様だ。
「けど、ここのエネルギーは危険なモノでもある。エネルギーを取り込み過ぎると幻術世界に閉じ込められる。ちなみにここはアルテミスが使っていた階層よ」
「物騒ですね…」
ジェネミの言葉に一夜は震えた。
「まぁ、君達なら大丈夫だ…取り合えず今は休め」
…あんな物騒な事を言われて休めとは中々の鬼畜である。
「うわっ!」
美浪はそんな声を上げた。
他の皆もそれに驚いて起き上がり美浪を見た。
美浪の間に動物達が集まっていた。
「君は動物に近いから動物に好かれるのだろうな」
ジェネミは真顔でそう言った。
パルテミシア十二神は皆よく分からない性格をしているなと蒼は思った。
蒼の知る限りではガルディアが一番の常識人だ。
彼は常にこんかメンツといると気心が耐えないだろうなと思った。
「さて…じゃあ、第四階層だな」
ジェネミはそう言って立ち上がり、他の者達も立ち上がった。
第四階層は旅館の様な場所であった。
そこには豪華な食事が用意されていた。
因みにここはヘラが使っていた部屋でもある。
「腹が減ってはなんとやらだ!とにかく食え!」
アウスがそう言ってきた。
この階層の監督は彼の様だ。
…食べるだけだけど。
因みにこれ全部、アウスが拵えた食べ物だそうだ。
見かけに寄らず料理がかなり上手い様だ。
「和食だけでなく洋食もあるんやね…」
「まぁ、そりゃそうだろ」
美浪がそう言うと屍がそう返した。
「ねぇ?蒼って何が好きなの」
「刺身、お前はどうなんだよ」
「私は…お肉」
「太るぞ」
「蒼…デリカシー無さすぎ」
蒼と慧留はご飯を食べながら会話していた。
蒼は昔から刺身が好きで慧留は牛肉が好きだった。
「へぇ~、君は辛いものが好きなんだね」
「そういうあなたは味噌汁が好きなのね」
一夜は味噌汁、プロテアは辛いものが好物である。
「ちゃわむしちゃんとあるな」
「シチュー頂きます」
屍はちゃわむし、プロテアはシチューが好物である。
皆それぞれ自分の好物を食べていた。
「皆いい食いっぷりだな!関心関心!」
アウスは愉快そうにそう言っていた。
まぁ、アウスはこのまま終わらせる気は無いのだが。
「じゃあ…お前らは俺が指定したやつを食ってもらうぞ」
「え?」
アウスがそう言うと屍が声を上げた。
「蒼はセロリ、慧留はチョコレートパフェ、プロテアはもずく、屍は納豆、一夜はキムチ、美浪は鶏肉」
「「「「「「え?」」」」」」
アウスが指定した食べ物を食べる様に言われた六人は全員物凄く嫌そうな顔をしていた。何故ならー
アウスが今指定したのはそれぞれの苦手な食べ物だからだ。
「てめぇらを観察してどれが苦手な食べ物か大体把握した。好き嫌いは良くねぇな」
アウスの言葉を聞いて皆汗を流していた。
「そうか…蒼、セロリ苦手なんだね」
「てか野菜全般苦手だ…中でもセロリは…つか、一夜はキムチダメなんだな」
「ああ、辛いのが苦手でね…」
一夜と蒼はかなり嫌そうな顔をしていた。
「つか、は!?お前女なのにパフェ食えねぇの!?」
「甘いものがダメなんだよ!何なの!?女の子は甘いの食べれないとダメなの!?ていうか、屍だって納豆食べれないって何!?十二支連合帝国出身なのに納豆食べれないの!?」
「いや、納豆苦手な奴は多いだろ!?」
「パフェが嫌いな女子もいるよ!!」
どうやら屍は女子は必ず甘いもの好きという先入観があっただけに慧留の甘いものが嫌いという事実に驚いたのだろう。
慧留は慧留で屍の納豆が嫌いな事に対しても思う所があった様だ。
「もずく…」
「鶏肉…」
プロテアも美浪もかなり嫌そうな顔をしていた。
「鶏肉が苦手なのね…意外ね」
「そういうプロテアこそ、もずくが苦手なんて意外やね」
「鶏肉が食べれないのに…その大きさ…くっ!?」
プロテアは自分の胸元と美浪の胸元を見比べて悔しげな顔をしていた。
…お察しください。
「オメーら、好き嫌いは誰にでもあるがな、克服しねぇとな!好き嫌いを克服出来ねぇようじゃあ、これからの戦いに勝つのは無理ってモンだ」
アウスがそう言ってきた。
確かにアウスの言葉には妙な説得力があった。
「…食べるしか…無さそうだな…」
「そうだね…」
「うん…アウスさんの言う通り…ちゃんと嫌いなモノも食べないと…これからの戦いに勝てないよ」
「ええ…私は…もずくなんかに屈したりはしないわ!」
「わ…私だって…鶏肉なんかに…!」
「お…俺だって…!」
「いやお前らどんだけ食べたくねぇんだよ…」
蒼、一夜、慧留、プロテア、美浪、屍の反応を見てアウスは呆れていた。
それにしてもこの食事の様子を少し観察しただけでそれぞれの嫌いな食べ物を割り出したアウスは流石と言うべきだろう。
「じゃ…じゃあ…行くぞ…」
「うん…」
蒼はセロリを、一夜はキムチを、慧留はチョコレートパフェを、プロテアはもずくを、屍は納豆を、美浪は鶏肉を食べた。
「うっ!?」
蒼は我慢してセロリを食べた。
セロリの臭いがきつくて悶えそうになるが我慢した。
「ふぬん!」
慧留は珍妙な声を漏らしながら食べた。
あまりの甘さに気持ち悪く、吐きそうになるがどうにかして食べていた。
「………酸っぱい…」
プロテアはもずくを吸うように食べた。
酸っぱくて舌がおかしくなりそうだった。
「うう…」
美浪も鶏肉を食べていた。
油がかなり気持ち悪かったがそれでも食べていた。
「うっぷ…」
屍も納豆を食べていた。
口の中がネバネバする上に独特の苦味が身体全身に襲い掛かる。
「がはあああ!!!」
一夜はキムチを食べて火を吹いていた。
甘いものはそれなりに好きな一夜だが辛いものは苦手なのでこのダメージはデカイ。
「お前ら一々リアクションが面白ぇな…」
アウスが苦笑混じりにそう言った。
「きつかったぜ…」
「うう…吐きそう…」
「やっぱり…もずくには勝てなかったわ…」
「鶏肉…強い…」
「納豆…きょうの所は引き分けに…がふっ…」
「全く…僕とした事が…辛いものを食べて火を吹くなんてベタな事を…」
皆死にそうな顔をしていた。
嫌いな食べ物を食べたくらいで大袈裟である。
リアクション芸人か。
「うっし!まぁ、及第点だなー!んじゃ!次の階層に行くぞ~。次は第五階層だ!次の階層はちょっと面倒だぞ?」
「今でも十分ダメージ受けたけどな」
「今度の階層は…ヘパイストスが使ってた階層だ。こいつは武器を造るのを生業としていた神だ」
アウスの説明から蒼達は次にやる事が大体察しがついた。
「次の階層ではお前らの武器を修理、強化する」
「え?でも私、武器無いですよ?」
「美浪は美浪でやらないと行けない事があるから一緒に第五階層だ」
アウスがそう言って立ち上がった。
どうやら、武器が無い美浪も第五階層へ行く必要がある様だ。
「ようやく、修行らしくなってきたね」
「そうだな…」
蒼達は気合いを入れ直していた。
今まではなんかふざけた感じが強かったがようやく修行らしい修行が出来そうであった。
まぁ、慧留も屍も身体の回復がされているので今までのは遊びでもただただくつろいでいただけでなく、修行の準備という目的があったのだが。
「お前ら、こっからが本当の修行だ。根を上げるんじゃねぇぞ」
「分かってるよ」
「勿論!」
「ああ」
「当然よ」
「はっ、はい!」
「おう!」
蒼達はそう言って次の階層、第五階層へと向かった。
To be continued




